窓付きが異世界から来るそうですよ?   作:一反目連

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2.胡蝶の夢(こちょうのゆめ)

黒ウサギに連れられコミュニティに向かったのは()()()()()だけだった。

 

そして、残る二人―――逆廻十六夜と窓付き―――は、()()()()()()()()()()ために別行動を取っていた。

 

その二人は、いや窓付きは現在―――

 

「「ごめんなさい………」」

 

―――十六夜と蛇神を(しか)っていた。

 

時は(さかのぼ)る――――

 

  ★   ★   ★   ★   ★

 

―――逆廻十六夜は窓付きを手に持ちながら、(すさ)まじい速度で走っていた。

 

「―――よしっ、到着だぜ!」

 

轟音(ごうおん)を立てて着陸する。目の前には大河が流れているのを確認して満足そうに(うなず)くと、十六夜は窓付きを手放した。

 

「くぺっ」

「おい、窓付き大丈夫か?女性として出しちゃいけないような声出ちゃってるぞ」

「い、十六夜の、せい、でしょ………」

 

強烈(きょうれつ)(グラビティ)を受けたせいで弱りきって、声を出すのも精一杯な体で窓付きは反論する。

 

「悪かったな。でも、お前って異世界(ここ)に投げ出された時は結構平気そうにしてたよな?あの時も相当苦しかったかと思ったが………」

「その、時は、『エフェクト』を使ってたから、まだ、大丈夫だった、それに、今回は、その時より、苦しかった………」

「『エフェクト』、ねぇ……お前が変身したアレのことか?」

「スー、ハー……。大体合ってる。正確にいうならアレ―――『★まじょ★』は、『エフェクト』の一つ」

「ふーん、そうか………」

 

興味ありげに、いや事実興味があるのだろう。十六夜は窓付きをまじまじと観察する。

 

「よし、窓付き。他の『エフェクト』見せ―――『む?我の領域(なわばり)に何かが来たと思ったら脆弱(ぜいじゃく)羽虫(ニンゲン)共じゃったか』―――あ?」

 

声のした方を向くと、白くて長いモノ―――身の丈三〇尺強はある巨躯の大蛇が(そび)え立っていた。

 

「オイオイ、窓付きよ。どういう訳だか知らないが()()()()()()()()()()鹿()()()()()()()?どういう事だろうなぁ?」

 

窓付きの『エフェクト』を見ようとするのを邪魔されて不機嫌になった十六夜が相手を馬鹿にする。

 

『ほぅ?只の羽虫かと思えば、どうやら力の差も(わか)らない、()(ほう)蛆虫(うじむし)だったようだな?』

 

一瞬(いっしゅん)静寂(せいじゃく)、そして―――

 

「『あ゙ぁ゙?』」

 

(にら)み合う一人と一匹。

 

「ヤハハ、力の差の判ってない大蛇(笑)が何馬鹿な事を言ってんだ?(ひね)(つぶ)すぞ?」

『我を(だれ)じゃと思ってその大口を叩いているのかは知らんが、我は水神の眷属(けんぞく)の蛇神じゃぞ?空を飛べる羽虫にも(おと)る、地を()うしか能の無い蛆虫(ごと)きが何故(なぜ)我を捻り潰すなど()(まよ)いごとを言えるのじゃろうなぁ?』

「オイオイ、(あま)(つよ)がるんじゃねぇよ。弱く見えるだろ?」

蛆虫(こぞう)程度の節穴(ふしあな)では我の余りの強靭(きょうじん)さに現実逃避(げんじつとうひ)したくなるのも仕方(しかた)ないのぅ』

 

これまた一瞬の静寂。

 

「『上等(じょうとう)だ(じゃ)、表へ出ろ』」

 

(すで)に表に出ている事に気付かない程に気が立っている一人と一匹。だからこそ、気付かなかった―――

 

「―――ねぇ」

「『(なん)だ(じゃ)!邪魔(じゃま)する………』」

 

「ちょっと、そこに正座しようか」

 

―――『チェーンソー』を手に持ち、返り血を浴びている窓付きの(はな)っている、その強烈(きょうれつ)怒気(どき)に。一人と一匹にはその言葉に(さか)らうという選択肢は与えられてなかった。

 

  ★   ★   ★   ★   ★

 

(まった)く………十六夜に(いた)っては非力(ひりき)な女の子を僻地(へきち)へ連れていった挙句(あげく)放置して、異形(いぎょう)のモノに(おそ)われた時は流石(さすが)に死ぬかと思ったよ?」

「いや、お前の何処(どこ)が非力―――」

「なにか?」

「―――いや、ナンデモナイデス」

「それに白雪(しらゆき)にしても出会って間もない人を()()り馬鹿にして、(しか)もそのまま(いか)りに身を任せて喧嘩(けんか)()()けるなんて………」

「……出会って間もない蛇神に脅迫(きょうはく)するのは―――」

「問題でも?」

「い、いや!何も問題無いのじゃ!」

(よろ)しい」

 

浴びた返り血を洗い終えると窓付きは十六夜と蛇神―――聞くと、白雪と言うらしい―――に説教(せっきょう)をし(おえ)えると、手頃(てごろ)な岩に(こし)()ける。

 

「(小僧!何なのじゃ、先程のモノは!?彼奴(あやつ)の持っていた道具からは()()()()()()()()()()()()()()()()を感じたぞ!?)」

「(俺にはアレがチェーンソーを模した強力なチカラだということと、恐らく窓付きの持つ『エフェクト』という奴だという事しかわからなかった。一体何者なんだ、窓付き………)」

「……(この身体になって、少し短絡的(たんらくてき)になったかな……やっぱり体が子供だと性格も体に引っ張られるのかな?)」

 

「やっと見つけましたよお馬鹿さまぁぁ………って、何なのデスカ、この空気は」

 

思案顔(しあんがお)の岩に腰掛けた窓付きと、顔を寄せて小声で何かを話している蛇神と十六夜。その光景に黒ウサギは目を白黒させた。

 

(しばら)くして、黒ウサギが落ち着くと尋問(じんもん)を始めた。

 

()(かく)………一体何が合ったのですか?」

 

「蛇神が喧嘩を吹っ掛けた。(あと)、窓付きが激怒(げきど)した」

「小僧が喧嘩を吹っ掛けた。そして窓付き怖い」

「十六夜に引っ張られて辺境(へんきょう)へ、そのまま十六夜と白雪が口喧嘩(くちげんか)する。その間に私が異形のモノに襲われて、私が二人に説教をした」

 

「成程、さっぱり意味がわからないのデス……」

 

口々に言葉を重ねる三人に対して(なか)ば呆れたかのような声を出す。

 

「言ってる事はわかるのデスが、理解できません。何故窓付きさんは蛇神サマに説教なんて出来たのデスカ?」

「ん?私がその時偶々(たまたま)返り血を浴びていて、武器を持っていたからかな?」

「偶々で返り血なんて浴びるものなのデスカ!?」

 

驚愕(きょうがく)の表情を『(わざ)と』顔に浮かべて思案する黒ウサギ。

 

「(どういう事デス?返り血を浴びて平然とするその精神、とてもじゃありませんがまともな人格をしているとは思えれません。しかし、狂人という雰囲気を纏っている訳では無い………)」

 

「あ、そっか。『チェーンソー』は『()()()エフェクト』だから白雪も恐れたんだ」

 

窓付きは、『殺傷系エフェクト』で倒せないモノを沢山知っている。しかし、それは夢の中だからだ。そのエフェクトが現実になったとき、強力過ぎる程に強力な道具となって現れることになる。窓付きはそこまで認識できていなかったのだ。

 

「オイ、今窓付き、殺傷『系』って言ったよな?もしかして、複数個あのチェーンソーみたいなのがあるのか?」

 

恐る恐る尋ねる十六夜。それに対して窓付きは「う〜ん、と」と考える仕草をしたあと、

 

「だから……合計6種類、かな?」

「マジかよ………」

「まぁ、その内5個は()()()のエフェクトなんだけどね」

 

「「「お前(窓付きさんは)(お主は)娘がいるのか(デスカ)!?」」」

 

なんとなしに言ったその言葉は、爆弾だった。




今回出てきたエフェクト 3/115

チェーンソー
登場作品:ゆめ2っき
・チェーンソーを手に持つ
 ・誰かを斬りつけれる
 ・一部の邪魔なオブジェクトを壊せる
 ・偶にお金が手に入る

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