ヤマトin艦これ   作:まーりゃん000

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私より後に書き始めた友人は、私より遥かに多い文字数を描き、私より先に完結させてしまいました。流石としか言えません。
響が大天使過ぎて私の中で彼の作品の中の響は銀髪から鱗粉のごとき輝きを振りまく大天使響です。

読者の方々から多くの期待を頂きながらもエタっていたこと、申し訳ありませんでした。
そして、これからの更新を期待をさせてしまうような今回の更新ですが、次回更新は未定です。
何故今回の話が書き上がったのか自分でも不思議なくらいです。
申し訳ございません。



それはそうと秋の神通さんの浴衣グラはご覧になられたでしょうか? 私普段とは違う、髪を上げた神通さんは美しく、そのうなじを優しくなでたいよ思ったものです。しかしながら秋の神通さんはそんな女らしさだけではありません、その魅力は中破絵にありました。こちらを強い眼光で見つめる常在戦場の神通さん――しかし一方で胸の谷間、白い腿といった私たちの目を奪って返さないその美しさに私は轟沈です。bob神に召されるなら本望です。
秋と言えば、意外な刺客もおりました。
球磨ちゃんです。「意外に優秀な球磨ちゃん」の「意外ってなんじゃこるぁ!」の球磨ちゃんは何と申しましょうか、「ほら、なにしょぼくれてるクマ? 早く行くクマー!」とでも言いたげな幼馴染感にあふれておりました。素晴らしい、あんな幼馴染が欲しかったと思わざるを得ません。
時機を逸しているせいで正直自分でも今更何を言っているのかという感がぬぐえませんが、ただ一つ言えることは、絵師とは斯くも偉大なものなのですね……。


第11話

 

 執務机に置かれた電気スタンドが照らす彼女の資料を手に持って、私は長いことそれを眺めていた。

 けれども、喉の渇きを覚えてそれを机の上に置く。そして随分前に退出させた妙高が入れてくれたお茶を啜った。

 お茶は冷え切っていたけれど、喉を潤すにはちょうど良かった。こくりと飲んで、硬くなった体を伸ばす。

 ふう、と一息つくと気持ちが楽になって、袋小路に入り込んでいた思考がするりと抜けだしたような気がした。

 

 

 そうして、ちらり、と再び彼女の資料に目をやる。

 既にそらんじられるほどに読み込んだ資料だったが、そこに記された内容はそれでもなお信じられないほどに圧倒的な性能だった。

 圧倒的――いや、恐るべき、というべきかもしれない。

 彼女の主砲たる48サンチ陽電子砲は、その一撃が掠めただけでもあの長門が沈むというのだ。

 横須賀鎮守府の栄えある第一艦隊旗艦。伊豆諸島奪還作戦においても常に先頭に立ち、味方を庇い、数々の砲弾をその身に受けてなお沈まなかった長門がだ。

 それは、彼女を縛り付けることは不可能ということを意味する。

 彼女は何者にも縛られることはない――星すら砕く「波動砲」という兵器を持っていながら。

 

 彼女についての報告書に、嘘や何らかの誤りを含んでいて欲しいと思う自分は情けないだろうか。

 けれど実際、報告書が真実かどうか確証は得られていないのだ。

 この報告書を作成したのはヤマトさんの妖精さんであり、彼女の味方だ。

 鎮守府の妖精さんたちは圧倒的な技術格差に阻まれ、艤装の解析は出来ていない。

 もし確かめようとするのであればヤマトさんに実際に艤装を動かしてもらうしかないのだけれども……それは奇跡的に首輪をつけることが出来た猛獣を、再び自由にするに等しい行為だ。

 今の状態はある意味最善だ。彼女と艤装が離れている以上、如何に性能が圧倒的であろうとそれが振るわれることはない。

 

 まあはっきりと言ってしまえば、彼女の存在は私の手に負える存在ではないのだ。私がどうこう考えるより、さっさと上層部に資料を上げて指示を仰ぐべきだろう。

 ――そう分かってはいるのだが、私はとっくに上層部に送っていて然るべき書類を、未だこの机に放り投げている。

 

 何故か。

 もし彼女の存在を上層部が知れば、彼女はたぶん不幸になる。そう思ったからだ。

 

 上層部を信頼していないわけではない。艦娘という少年兵に等しい存在を認めている上層部ではあるが、腐っているわけではない。

 いや、一部にそういった存在もいないではないが、大半は艦娘という存在を苦々しく思っている。「何故、幼い彼女たちが戦わなければならないのか」と。

 それは鎮守府や艦娘に対する厚遇からも見て取れる。彼らは常識的なのだ。

 だが、その常識的な判断をするなら、星を砕ける存在を野放しにできるだろうか?

 

 ヤマトさんの行く末の想像は色々と可能だけれども、そこにヤマトさんの意思は存在しないことだけは断言できる。

 彼女が持つ力はあまりにも強大で、それに比べると、ヤマトさんという個人はあまりにもちっぽけだ。

 

 それでも深海棲艦との戦いを有利にすることが出来るのならば、1人の少女の意思が抑圧されることなど、本当にちっぽけなことだろう。

 例えその命と引き換えだったとしても、それで深海棲艦を殲滅できるのならば。そうでなくとも、その命の数よりも多い命を救えるのならば。軍人ならば彼女を犠牲にするべきなのだろう。

 

 けれども私は「提督」だった。

 

 ふと思い出すのは、美味しそうにカレーを次々と平らげていた笑顔の彼女。

 神通に怪我をさせたかもしれないと考えて顔を真っ青にしていた彼女。

 トマトが嫌いらしい、彼女。

 

 私は湯呑に残っていたお茶を飲み干して立ち上がり、執務室の端にある硝子戸のついたサイドシェルフへと歩み寄る。

 そして琥珀色の液体を湛えた瓶と2つのグラスを取り出して、執務室を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜である。

 既にだいぶ夜も更けており、良い子は寝る時間であるのだが、しかし私は悪い子なので起きている……というか、単に昼寝をし過ぎて眠くならないだけなのだが。

 

 営倉に入れられてから3日。たかが3日というべきか、されど3日というべきか。ただただ何もせずにいるには長すぎる時間だった。

 一度やって来た妖精さんには「罰を受けているのだから差し入れはいらない」と強がってここには来ないよう言い聞かせたのだが、本ぐらいは持ってきてもらえば良かったかなと後悔したのもだいぶ前。

 何度か青葉たちが来てくれて話し相手になってくれてはいたが、皆それぞれやることもあるし、俺の長すぎる暇を潰せるほど話し続けたわけでもないのだ。いや青葉たちと話すのは楽しいけどね。

 そういうわけで寝るしかやることが無い俺は素直に爆睡し、結果夜になって目が冴えているという訳である。

 そしてやることがあるなら俺は昼寝なんかしていないわけで、当然俺は何をするでもなくベッドから窓の外に広がる夜空を眺めていた。

 

 まあ、夜空を眺めるのは結構好きだ。冬の朝、日も登る前からバイトへ行っていた俺はオリオン座を眺めながら自転車を漕ぎ、電柱にぶつかった覚えがある。

 特に冬の空は静かに澄んでいて、星の輝きを眺めていると心が心地よい冷えに包まれていた。

 今ここは冬ではないが、海が近いせいか明かりもなく、星の輝きは元の世界よりもその数を増している。

 

「綺麗だなぁ……」

 

 夏の星座は何があっただろうか。

 星を眺めるのは好きだったが、特に星座について調べたことは無かったから小学校の頃に習った有名どころの星座ぐらいしか覚えてないし、正確に夜空で形を追えるのは本当にオリオン座くらいのものだ。

 少しの間思い出そうと頑張ってみるが、長いこと利用されなかった記憶はどっかに行ってしまったらしく、仕方ないので自分で作ってみるかとひときわ輝きの大きな星を探し始めたところで、ドアがノックされる音が静かな部屋に響いた。

 

 こんな夜更けに誰だろうか、と不思議に思いながらもベッドに座ったまま「どうぞ」と口に出す。というかそもそもこんな時間に営倉を訪れていいのか。

 そう疑問に思う俺の視線の先で扉を開けて入ってきたのは、

 

「和子提督!?」

「しー。夜なんだから静かにね」

 

 思わず声を上げた俺に、和子提督は何かのビンを持った右手の人差し指を口に当て静かにするよう促す。

 それに従って俺は黙る。見れば、左手にはグラスやペットボトルがはみ出たアイスペールを持っている。

 どこか見覚えのあるそのセットについて俺が尋ねる前に、和子提督が口を開いた。

 

「こんばんは。突然だけど、一緒にお酒飲まない?」

「……はい?」

「よし。飲み方はどうする? これしか無いから水割りにしてもいいけど……」

「す、ストレートで……じゃなくてそうじゃなくてですね?」

 

 ストレートで、と言った瞬間嬉しそうにした和子提督の右手で掲げられているのは、ガラスのビンに入った琥珀色の液体。

 見たことのない銘柄だが、恐らくはウイスキー。どうやらこの提督、可愛らしい見た目に寄らず酒好きらしい。

 和子提督は戸惑う俺の傍に寄ってきて、強引にロックグラスを押し付ける。星の輝きに照らされたグラスは控えめの装飾だが薄く透明で、一目で高級なものなのだろうと見て取れた。

 

「私ね、もっとお互いのことを知るべきだと思うの」

 

 きゅ、とコルクを抜いた音。そう言って和子提督は俺のグラスに琥珀色の液体を少しばかり注ぐ。ふわりと華やかな香りが鼻をくすぐった。

 そしてベッドの脇に腰掛けて、自分のグラスにも注ぎながら笑顔を浮かべて言葉を続ける。

 

「私はね、実はけっこうお酒が好きなの。こういうウイスキーとかをちびちび飲むのがね」

 

 皆の前では飲まないようにしてるんだけどね。と、和子提督は言う。

 確かに意外な側面だ。けれどもっと意外なのは、こうやって和子提督がフランクに話しかけてくれていることだった。

 最後に和子提督に会ったのは営倉に入れられる前に執務室で会話した時だった。その時は微かな怒りを湛えた厳しい表情をしていたから、こうやって今目の前で小さく笑みを浮かべて話しかけてくれることは意外で――嬉しかった。

 

「はい、かんぱーい」

 

 グラスを掲げる和子提督に合わせて、俺もグラスを持ち上げる。

 そうして俺たちはグラスに口を付けた。口に含んだ瞬間、強く鼻に抜ける、フルーツさえ思わせるような華やかな香り。舌を痺れさせながらも広がる微かな甘み。琥珀色の液体は喉に心地良い痛みを残して通り過ぎ、お腹を温めてくれる。

 じんわりとアルコールの余韻を感じている舌を動かして、感想を口にする。

 

「……美味しいですね」

「結構イケる口と見た。だめよー? その歳で飲み慣れてるなんて……って何歳だっけ?」

 

 飲ませた人が何を言うのかと思うが、明らかに嬉しそうな和子提督を見ているとそんな言葉は出てこない。

 まだアルコールが回ったわけでもないだろうに、何だか俺まで嬉しくなってきた。

 

「お酒は飲めますよ?」

「ほんとうにー?」

「もちろんです」

 

 少なくとも精神的には、と心の中では付け加えさせてもらう。どこから湧いてたのか知らないが、肉体的には微妙なラインのような気がするし。

 元々じゃれあいみたいな問答だ。「ならいいわよね」と和子提督はグラスを空ける。

 

「じゃあ、ヤマトさんは何が好き?」

「そうですねぇ……とりあえず、私もウイスキーは好きです」

「友よ」

 

 和子提督はいきなり輝いた顔を近づけてきて。俺の空いている手をがしっと掴み振る。

 無駄に力強い。同好の士がいたことが余程嬉しかったらしい。

 まあ飲んでください、と俺が空けたグラスに注いでくれる。お返しに注げばどうもどうもと言い、俺はいえいえと返す。

 

「ウイスキー談義はまた今度じっくりするとして……他には何かある?」

「甘いものは好きですし……あと、神通さんとか」

 

 その瞬間、すー、っと和子提督が俺から距離を取った。

 その素早い引きっぷりに、実際空いた距離以上に精神的な距離が空いた気にさせられる。

 

「ヤマトさんってもしかして……そういう人?」

「いえその、ちが……ちが……あれ? 違わない……?」

 

 考えてみれば女性の体で女性が好きというのは「そういう人」で間違いはない。いや俺にとっては違うのだが、他人から見れば間違いなくそうだ。

 否定しきれなかった俺を見て和子提督は立ち上がり、

 

「じゃあ……」

「いえいえ待ってください! 本当にそういうのではなくてですね!」

 

 立ち去ろうとする和子提督を慌てて引き止める。内心は置いといて全力否定する。

 そうすると、本気では無かったららしい和子提督はすぐに戻ってきて元の位置に腰掛けた。

 

「まあ冗談は置いといて……神通が好き?」

「はい。青葉さんや祥鳳さんも好きですし、妙高さんも好きですよ」

 

 皆の名前を挙げれば、意外そうに和子提督は眼を開く。

 

「あまり接する時間もなかったと思うけど……」

「そうですね。でも、あちらもそのはずなのに私に会いに来てくれました」

 

 これは本当の気持ちだ。

 ほんの少ししか接していない俺のために、わざわざ営倉までやってきてくれるのだ。みんなとても良い子で、好ましいと思う。

 まあ単純に会う前から好感度が振り切れていたというのは無きにしも非ずなのだが。

 

「そっか……うん、それは良かったかな」

 

 和子提督は、何故だか深く頷く。

 俺はそんな和子提督を見ながらグラスを傾け、ところで、と声をかける。

 

「和子提督こそ、何が好きなんですか?」

「私? 私はウイスキーが好きでしょう? あとは、そうねぇ……」

 

 んー、と少しばかり悩んで、

 

「……不知火とか?」

 

 

 

 とりあえず、お約束として距離を取っておいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 冗談よ冗談、いやいや敢えて不知火さんを出すあたり本気っぽい、だって不知火が一番付き合いが――と、一通りお約束の如く言い合った後も、和子提督とお酒を飲みながらいろいろ話した。

 意外なことに和子提督は「ヤマト」について聞いてこなかった。聞いてくるのは俺についてばかりで、お酒のせいもあって、随分いろいろ話したように思う。

 一応記憶喪失ということになっていたにも関わらず自分のことをべらべらと喋った俺だったが、それを和子提督は指摘しなかった。まあ、今更と言えば今更だった。

 代わりに、和子提督も色々話してくれた。佐世保鎮守府の提督の愚痴や、出来が悪くも可愛い後輩の提督の話。初めて不知火と会った時の話であるとか、まあ色々だ。

 

 さて。

 まあ、そんな話をつまみにお酒を飲めば、それはそれはお酒が進む。

 お互いにお酒が好きであったし、何だかお互い色々と赤裸々に話しているうちに加減というものを失っていたと思う。

 水を飲みながらではあったが、ウイスキーをストレートで飲み続け、お互いにグラスが空けば相手に注いでいた。 

 そんなことを続けていれば2人とも酔い潰れるのは必然であり――

 

 

 

 翌日。

 普段の時間になっても現れない和子提督を探しにやってきた妙高に叩き起こされ、2人して二日酔いに耐えながら説教を受けることになるのだった。

 

 


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