桜舞う星   作:サマエル

2 / 14
出撃! 花の華撃団!!

さくらと別れてすぐ、秀介は目的地の大帝国劇場に向かった。

兄の話によれば、ここがこの星の侵略者に対抗する機関らしい。

劇場が防衛組織というのも変な話だが、兄曰く

 

「行ってみれば分かる」

 

という事なので、とりあえずは行ってからという事になる。

 

「(凄い人だかりだ………。上野公園と変わらないや………)」

 

ちょうど芝居が終わった頃らしく、玄関口から続くロビーは観客でごった返していた。

 

「えっと………支配人室だったよね………」

 

このまま突っ立っていても邪魔になるので、秀介はさっさと目的の場所に急いだ。

 

「ここか………」

 

目の前の扉には縦に支配人室と読む札があるため、ここに間違いないだろう。

そして扉越しに伝わってくる威圧感。

少しでも変な真似をしようものなら即刻叩き斬られるような、そんな気さえした。

 

「(間違いない…、この奥に兄さんの言っていた人がいる。)」

 

秀介は、緊張とともに扉をノックした。

 

「失礼します」

 

すると…、

 

「おう、遅かったじゃねえか」

 

「………」

 

秀介は一瞬、目の前の光景に固まってしまった。

たしか兄の話では、この大帝国劇場の支配人にして、帝国華撃団の総司令の米田一基中将が、自分の上司となる人物である。

当然、それなりの風格と威厳を漂わせる人物を想像する。

しかし目の前の人物は、秀介の想像と掛け離れた人物だった。

昼間から酒をあおり、既にかなり呑んでいるらしく顔が赤い。

だが、秀介が不思議に思ったのはそんな事ではなかった。

 

「(この人………、酔っ払ってない。)」

 

「何だ、豆鉄砲喰らったみてぇな顔してよ」

 

いかにも酔っ払いの口調で言ってくるが、その割には滑舌がよく噛んでない。

目線も、しっかりと秀介を捉えている。

秀介は、目の前の米田中将であろう人物に話し掛けた。

 

「何故、酔われている振りをなさるのですか?」

 

「………、なんだ気付いたのか。ちぇ、つまんねぇなあ」

 

すると、米田は悪戯が失敗したように残念な顔をした。

 

「だが、この俺の演技を見破ったって事ぁてめぇか。奴の弟はよ」

 

「奴とは………、ゾフィー兄さんの事ですか?」

 

「おうよ。俺とあいつは、昔ながらの戦友だったからな」

 

「戦友………。そういえば兄さんも話していました。かつて地球で、ともに戦った者がいると………。」

 

「ああ、まさしくそれだ。………で、おめぇの名前は?」

 

米田に聞かれ、秀介は周囲の気配を確認して答えた。

 

「ジャック………、この星では御剣 秀介と名乗る事にしています」

 

「御剣 秀介………。けっ、奴と同じでいいセンス持ってやがるぜ」

 

「その事ですが司令………」

 

秀介がそう言いかけた時、米田が右手でそれを制した。

 

「わかっている。この事は、他言無用だ」

 

その言葉に秀介は、安心の表情を浮かべた。

 

「で、おめぇの仕事なんだが………。」

 

米田は机の中の分厚い資料を取り出すと、パラパラとめくりはじめた。

 

「そうだな………、裏方全般を手伝ってくれや」

 

「………へ?舞台のですか?」

 

「ああ。ちょうど人手が欲しくてな。大道具とかその辺りを頼むぜ」

 

「はあ………」

 

しっくり来ないが、こういうのは余計な口出しをしないのが定石。

秀介は無理矢理そう納得して、支配人室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか裏方とは…、ここも人手不足なのかなぁ…?」

 

そうぼやきつつ廊下を歩いていると、秀介はちょうど曲がり角のところで誰かとぶつかった。

 

「アタッ!」

 

「キャッ!」

 

声からして女性と判断し、秀介は慌てて謝罪を述べる。

 

「す、すみません!よそ見していたもので………!」

 

「いえ、こちらこそごめんなさい!」

 

その聞き覚えのある声にハッとした秀介は、女性を改めてよく見た。

艶やかな黒髪と赤い袴姿は確か………。

 

「あ、貴女は………、さくらさん!?」

 

「え………?………!!秀介さん!何でここに!?」

 

「僕の台詞ですよ!」

 

なんとぶつかった女性は、ついさっき上野公園で脇侍なる機械を倒した、真宮寺さくらだった。

思いがけない再会に、二人はしばらく立ち尽くしたままだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

一通り裏方の仕事をこなしたのち、秀介とさくらは紹介のために、ほかの関係者が集まるという大帝国劇場2階のサロンに呼ばれた。

 

「(なんだか女の人ばかりだなぁ………。)」

 

軽く周囲を見渡し、秀介は心の中で居づらさを感じていた。

自分と米田中将以外は全員が、いわゆる年頃の女性なのだ。

疎外感を感じるのは当然である。

 

「さて、見ての通り我が帝国華撃団・花組に二人の新人が加わった。自己紹介を頼むぜ」

 

先程の支配人室と違い、いかにも軍人らしいたたずまいで言う米田に言われ、先に秀介が名乗った。

 

「本日より、帝国華撃団・花組に配属されました、御剣 秀介と申します。どうかお見知り置きを………」

 

すると、それに反応するようにさくらが緊張混じりに口を開いた。

 

「あ、お、同じく花組に配属されました、し、真宮寺さくらです!よ、よろしくお願いいたします!」

 

「………いたしませんわ」

 

さくらの自己紹介が最後まで終わらない内に、二人に視線すら向けずに紅茶を飲んでいた女性が遮るように言った。

紫色の着物をギリギリの辺りまではだけさせ、肩の辺りで短く切り揃えられた茶色の髪と左目の泣きぼくろが印象的な女性は、ティーカップを戻すとさくらに横からの冷ややかな視線を向けた。

 

「高々この程度の人数で、何をあがっていらっしゃるの?そんな事でこの帝劇の舞台に立てるとお思い?」

 

「すみれ、出会い頭に失礼を言うものではないわ」

 

「マリアさん、私は真実を申していてよ」

 

マリアと呼ばれた女性の制止を無視して、すみれと呼ばれた女性はさらに上からの物言いを続けた。

 

「だいたい貴方、この帝国華撃団一のトップスター神崎すみれ様と同じ舞台に立つ事が、どれほど素晴らしい事かお分かり?」

 

「すみれ、自己紹介が終わったなら黙ってて頂戴」

 

「………もう、仕方ありませんわね」

 

マリアと呼ばれた女性に咎められ、ようやくすみれは高飛車な物言いをやめる。

それを確認すると、マリアと呼ばれた女性が自己紹介をはじめた。

 

「私はマリア=タチバナ。この帝国華撃団の隊長よ。二人とも、よろしくね」

 

マリアはすみれと違って外国人らしく、短い金髪と黒いコートが印象的な、冷静な人物だった。

 

「さあ、アイリス。貴女の番よ」

 

マリアに促されて出て来たのは、まだ10歳にもならないような小さな少女だった。

 

マリアと同じ金髪にピンクのリボンが愛らしい少女は、にこやかな表情で二人に笑いかけた。

 

「アイリスで~す。この子はジャンポールっていうの。よろしくね!」

 

そう言ってアイリスは手に持った熊のぬいぐるみの手を動かした。

 

「クスッ、よろしくね、アイリス」

 

「それに、ジャンポールも」

 

「以上が花組のメンバーだ。普段は帝国劇場の役者として、舞台に立ってもらっている」

 

米田がそう言うと、さくらは初耳だったのか驚いた。

 

「ええっ!?………って事は、あたしも舞台に立つんですか!?」

 

「おう、言ってなかったか?」

 

「聞いてないですよ!え?という事は………」

 

「早速、次の芝居に新人として出てもらうわ」

 

「ええ!?じ、じゃあもしかして秀介さんも………?」

 

マリアの一言にさらに驚き、さくらは秀介に視線を向ける。

 

「いや、秀介は裏方全般をやってもらう。なあ秀介?」

 

「ええ、いつの間にか………」

 

本人にばれないように非難の視線を米田に向けて呟く。

 

すると、すみれが突然口を挟んだ。

 

「お待ちになって。私聞いてませんわよ?」

 

すみれはさくらを指差すと続けた。

 

「今度のお芝居で、私は脇役。にも関わらず、こんな新人の大根役者を主役に上げるだなんて、納得いきませんわ!」

 

「む………」

 

さすがに目の前で悪く言われたからか、さくらは言い返しはしなかったがジト目ですみれを見ていた。

 

「あら、新人のくせに文句でもおあり?」

 

「………ありません」

 

ジト目のままさくらが答える。

すると、見かねたマリアが仲裁に入った。

 

「すみれ、今後はさくらも私達の一員なんだから、仲たがいは止めなさい」

 

「………まあ、初対面ですし、今回はマリアさんの顔を立てて差し上げますわ」

 

さすがに多勢に無勢と思ったのか、すみれはそう言って足早にサロンを離れた。

 

「………まあ、こんな感じだが、頑張ってくれや」

 

「は、はい………」

 

「努力します………」

 

つまりはチームワークが乏しい。

帝国華撃団の現状に先が思いやられる秀介とさくらであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後、秀介はロビーの清掃中にさくらを見かけた。

 

「あれ、さくらさん?」

 

「………秀介さん。清掃ご苦労様です」

 

「あ、いや………。えっと、どこかお出かけですか?」

 

相変わらずにこやかに微笑むさくらに見とれつつ尋ねると、さくらはほんのり頬を赤く染めて応えた。

 

「はい。今日こちらにあたし達の新隊長がいらっしゃるんです。それで、あたしが案内する事になって………」

 

「…新……隊長?」

 

「はい。大神一郎さんと言って、海軍士官学校を首席で卒業された方なんです」

 

そう言って、さくらは秀介に一枚の写真を見せた。

真っ黒な髪がツンツンと逆立った、いかにも軍人らしい好青年。

もしや………、秀介の脳裏に一抹の不安が過ぎる。

 

「あの、さくらさん?………もしかしてその人と何か関係がおありなんですか?」

 

必死に笑顔を作って尋ねる秀介。

すると、さくらは秀介の様子に気付いていないのか、真顔で応えた。

 

「いいえ、初対面です」

 

「あ、そうですか………」

 

安心して胸を撫で下ろす秀介。

しかし、次の一言でその安心は一気にひっくり返る事になる。

 

「むしろ………これからそんな関係を作って行きたいって………、そう思ってるんです」

 

「…………………、はい?」

 

秀介は耳を疑った。さくらはそれに気付かず、頬を赤く染めて写真を見ている。

いわゆる恋する女の子。

その光景に、秀介は早くもこの世の終わりが来たような感覚に陥った。

それから少しして、さくらがハッとした様子で叫んだ。

 

「あ、もうこんな時間!それじゃあ秀介さん、行ってきますね!」

 

秀介の返事も待たず、まるでデートに向かうかのような上機嫌で走っていくさくら。

しかし、秀介には死刑宣告以外の何者でもなかった。

 

「………………」

 

「あ、秀介。何してるの?」

 

「………………」

 

「秀介~?」

 

それから15分、秀介はロビーで固まっていたという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここがあたし達の大帝国劇場です」

 

「これは………、初めて見ましたが立派な建物ですね………!」

 

さくらの案内で帝劇にやって来た海軍少尉、大神一郎は、初めて見る帝劇の大きさに驚きの声を上げた。

士官学校を首席で卒業するという優秀な成績に加え、実直かつ真面目で帝都を守るという熱い志を掲げる熱血漢。

正に希代の軍人。

それが大神一郎という人間だった。

 

「ここはロビーですか。人がいないせいか、静かですね………」

 

「今日は夜の部だけですから………」

 

中に入るや、辺りを見渡す大神に微笑みつつさくらが答える。

すると、大神の足下から声が聞こえた。

 

「きゃは。お兄ちゃん、さくらの彼氏?」

 

「いいっ!?な、なんだこの子は!」

 

それはアイリスだった。

その後ろには、やけに口元が引き攣っている秀介の姿もある。

 

「駄目よアイリス、大人をからかっちゃ。この方は大神一郎少尉。あたし達の隊長よ」

 

「あたし達って、まさか………」

 

大神が驚いた様子でアイリスを見ると、アイリスはえっへんと胸を張って答えた。

 

「帝国華撃団・花組、アイリスです。この子は熊のジャンポール。よろしくね」

 

「同じく帝国華撃団花組、御剣 秀介と申します。はじめまして、大神隊長」

 

「ああ。よろしく、秀介。それにアイリスちゃんか………。俺も友達にしてくれるかい?」

 

大神は秀介と握手を交わし、アイリスに笑いかけた。

すると、アイリスも負けじと大神に笑い返す。

 

「うん、もちろんだよ。仲良くしてね、お兄ちゃん」

 

「うふふ、よかったわねアイリス」

 

すると、アイリスがさくらと秀介に小声で話しかけた。

 

「ねぇ、さくら………秀介………。」

 

「何?」

 

「このお兄ちゃんにも霊力がある………。お兄ちゃんもアイリス達と戦うの?」

 

「そうですね。」

 

「………アイリス、戦争キライだよ………。」

 

「大丈夫ですよアイリス。」

 

「秀介さんの言う通り、心配はいらないわ。」

 

「でも………アイリス怖い………。」

 

「さ、部屋に戻りましょ。本を読んであげるから。秀介さん。」

 

「分かりました。」

 

「あの………」

 

突然ヒソヒソ話を始めた三人に声をかける大神。

すると、さくらが何事もなかったかのように応対した。

 

「あ、すみません大神さん。あたし達これで失礼するので………」

 

「あ、ちょっとさくらくん………?」

 

大神の声を無視して、さくらはアイリスを連れて行ってしまった。

 

「それでは大神隊長。自分がご案内致します。どちらへ?」

 

「あ、ああ………。まずは支配人室に案内を頼む。着任報告をするんだ」

 

「分かりました。こちらです」

 

「ああ。よろしく頼むよ、秀介」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと!誰か手を貸して下さいな」

 

支配人室へ向かう道中、食堂から声が聞こえた。

 

「ん?何だろう?」

 

「これはもしや………」

 

聞き覚えのある悪魔の囁きに、秀介は身を固くする。

対して善人の大神は、あろう事か声のした方向に顔を向けてしまった。

それがいかに命知らずな行為か、大神は身を以って知る事になる。

 

「あ、そこの貴方」

 

「じ、自分でありますか!?」

 

そこにいたのはすみれだった。

やたら露出の多い服装に、純情な大神はたじたじになる。

 

「ほかに誰がいるの?バカ面してないで、こちらにいらっしゃい!」

 

「は、はあ………」

 

それこそ蛇に睨まれた蛙の如く、大神はすみれに歩み寄る。

すると、すみれは自分の足元を指差して言った。

 

「床に落ちてしまったフォークを、新しいものと取り替えて下さらない?」

 

「誰が………」

 

食堂の影に隠れた秀介がぼそっと呟いた。

しかし、大神隊長は信じられない応対をした。

 

「いいですよ。………はい、どうぞ」

 

「(………嘘でしょ………?)」

 

秀介は信じられないものを見た。

何と大神は、すみれの我が儘に嫌な顔一つせず、フォークを取り替えたのである。

今の帝劇にいる人間には誰ひとりとして今のような応対はできないだろう。

秀介は改めて、大神一郎が油断できない人物と認識した。

 

 

 

 

 

 

「………一体何なんですかあの人は?」

 

支配人室の前で、秀介はため息をついた。

先程のすみれの時は、

 

「いいですよ」

 

気前良くフォークを取り替えて、米田司令に酒を勧められた時は、

 

「昼間から酒とは何事ですか!!」

 

と一喝し、さくらとアイリスが案内で揉めれば、

 

「二人で案内してくれよ」

 

と丸くおさめてしまう。

そして、つい先程すごい剣幕で支配人室に乗り込んだ所だ。

 

「そんなに気に入らないんですかね、モギリって………」

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、秀介は日課にしているロビーの掃除をしていた。

この日は休演日で客も来ないが、どうせ朝は特にやる事もないのでという事だが、良い習慣ではある。

 

「さて、こんなものかな………?」

 

あらかた掃除を終え、いつものように綺麗になったロビーを見渡す秀介。

すると、彼の視界に昨日来たばかりの新米隊長の姿が写った。

 

「やあ秀介、掃除お疲れ様」

 

恐らくは昨日モギリの仕事を抗議に行ったせいだろう。

昨日に比べて笑顔に陰りがあった。

秀介は、敢えてそれには触れなかった。

 

「大神隊長ほどではありません。貴方こそ、昨日は見回りで大変だったそうじゃないですか」

 

「ハハ…、ありがとう」

 

さくらに聞いた話だが、あの抗議の後落ち込んでいた大神はさくらと二人で帝劇内の見回りをしていたらしい。

アイリスのジャンポールを探したり、売り子の椿に言いくるめられてさくらのブロマイドを買わされたり、踏んだり蹴ったりだったそうだ。

 

「仕事内容、納得して戴けましたか?」

 

箒を片付けつつ尋ねる。

大神は、僅かに間を置いて答えた。

 

「………やってやるさ。これが俺の仕事だって言うならやってやる。だが、この帝都を守るという決意だけは揺るがない!………決して!」

 

「………それでこそ、僕らの隊長ですよ」

 

「秀介………」

 

「これから舞台で稽古があります。よかったらいかがですか?」

 

意外そうな表情をよそに言うと、秀介はロビーを立ち去った。

大神はしばらく目で秀介の背中を追っていたが、その背中が見えなくなると、笑みをこぼしてその背中を追いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………えっと、ここで右足を上げて………」

 

「さくらさん、足の運びが違いますわよ!」

 

「お………やってるやってる」

 

舞台では、さくらのデビュー作でもある『愛ゆえに』の稽古の真っ最中だった。

すみれに何とかついて行こうと必死なさくら。

しかし、その必死さが裏目に出る事となった。

さくらの足が、すみれの着物の裾に、引っ掛かってしまったのだ。

 

「ひええぇぇ………!!」

 

奇声をあげ、すみれは顔面から床にダイブする。

 

「ご、ごめんなさい!」

 

その余りに派手な倒れ方に、さくらは思わず頭を下げる。

起き上がったすみれは、鼻を真っ赤に腫らしていた。

 

「さくらさん!人の裾を踏み付けるなんて失礼じゃありませんこと!?」

 

「す、すみません………」

 

反論の余地なく再び謝罪するさくら。

すると、前々からさくらのデビューに不満を持っていたすみれはここぞとばかりに厭味を並べた。

 

「全く、これだから田舎臭い娘は嫌ですわ。粗野で、乱暴で、お下品で………」

 

さくらの口元が一瞬ピクッと吊り上がるのに気付かず、すみれは勝ち誇った表情で背を向けた。

 

「さ、もう一度始めから行くわよ」

 

しかし次の瞬間、今度はわざとさくらに裾を踏まれ、すみれは再び正面に倒れた。

 

「でぇ……ぶふっ!」

 

「あ~ら、ごめんあそばせ」

 

あからさまにすみれの口調を真似て言うと、さくらは舌を出した。

 

「こんのガキャ~………。さくらさん!口で言ってわからない人はこうよ!!」

 

最早堪忍袋の緒が切れたすみれは、さくらを打とうと平手を出した。

さくらも負けじと平手を返す。

その時、

 

「二人とも、やめるんだ!!」

 

突然影が二人の間に割って入り、それぞれの手首を掴んだ。

 

「秀介さん!」

 

「少尉まで何故ここに………?」

 

そこには、さくらとすみれの間に立つ秀介と、袖の方から舞台に走ってくる大神の姿があった。

 

「ありがとう秀介。おかげで間に合ったよ」

 

最初に止めてくれた秀介に礼を述べると、大神は二人に声をかけた。

 

「二人とも、喧嘩はやめるんだ」

 

大神は穏やかにだが、はっきりと言った。

 

「俺は芝居に関しては素人だし、偉そうな口を叩く気はないけど、せっかくみんなで一つの芝居を作るんだ。喧嘩はやめようよ」

 

それは、大神が示した精一杯の正義だった。

帝都を守るはずの自分の仕事がモギリだった事に、大神が落胆しないはずはない。落ち込んでいたのはそのためだ。

しかし、彼の心に眠る意思は消えなかった。

帝国華撃団花組隊長の資質………。

大神には、間違いなくそれが備わっていた。

 

「大神さん………」

 

「少尉………」

 

「………」

 

「お兄ちゃん………」

 

一触即発のこの状態を丸くおさめられたのが、何よりの証拠である。

 

「それじゃ………」

 

さすがに出過ぎた真似をしたと思ったのか、大神は気まずそうに舞台を後にした。

 

「………、大神さん!」

 

思わずさくらが後を追う。

残された四人はしばらく無言で立ち尽くしていたが、やがて秀介が口を開いた。

 

「………どうやら、司令の理想通りの人物のようですね」

 

「そのようね。でも、まだ完璧とは言えないわ。なぜなら………」

 

マリアがそう答えかけた時、警報が帝劇内部に響いた。

帝国華撃団花組の、本来の任務が始まったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、全員揃ったな」

 

「米田支配人!それにみんな!これは………?」

 

いつもと違う戦闘服姿の一同に驚く大神。

すると、米田が普段とは別人のような本来の顔で、大神に真実を告げた。

 

「大神、歌劇団はお休みだ。帝国華撃団は、本来の任務に戻ったのだ」

 

「本来の任務?ま、まさか………!」

 

「そうだ。昨日お前に専業モギリと言ったのは嘘だ。お前が真に隊員の生命を尊重し、帝都のために戦える器か………。それを確かめるためのな」

 

「米田司令!帝国華撃団花組は………、本当にあったんですね!」

 

大神は嬉しさに身を震わせた。

それもそのはず。

帝都の平和をこの手で守るという士官学校からの夢が、遂に実現できたからだ。

 

「それで米田司令、我々の敵は一体何者なんですか?」

 

このような秘密組織が存在するという事は、帝都を脅かす何かがあるはず。

はやる気持ちを抑えて、大神は米田に尋ねた。

 

「うむ、お前も噂は聞いた事があるだろう。我々帝国華撃団の敵は、怪しげな魔の力で政府転覆を狙う謎の組織。その名を『黒之巣会』という」

 

「『黒之巣会』………」

 

米田の言う通り、大神はその名に聞き覚えがあった。

巷の新聞にしばしば取り上げられる怪奇な事件。

謎の侍姿の機械が現れ、放火や傷害といった破壊活動を行っているという。

相手にとって不足はなかった。

 

「改めて紹介しよう。この五人が、お前とともに戦う帝国華撃団花組の隊員達だ」

 

米田の指差す先には、普段と違う勇ましい姿の隊員達がいた。

 

「よろしくお願いします、大神さん」

 

同じ新人だけに初々しさを感じさせるさくら。

 

「お兄ちゃん、一緒に頑張ろうね」

 

幼いながら、天使のような笑顔で場を和ませるアイリス。

 

「お手並み拝見ですわね」

 

自信があるのか、普段と同様に余裕を見せるすみれ。

 

「隊長足るもの、時として非情な決断を迫られる事もあります。少尉がそれに耐えられるだけの方か、見極めさせていただきます」

 

いつも以上に視線に鋭さを伺わせるマリア。

 

「我々帝国華撃団、存分に活躍して見せましょう」

 

優しく、されど熱く決意を述べる秀介。

 

「よし!みんな、よろしく頼むぞ!」

 

頼もしい隊員達に頷き、大神も言葉を返す。

すると、再び米田が口を開いた。

 

「それだけじゃないぞ大神。我々には『黒之巣会』に対抗するための秘密兵器がある」

 

「秘密兵器………?」

 

「そうだ、これを見てくれ」

 

そう言うと、米田は作戦司令室のパネルを操作し、モニターにその秘密兵器の姿を写した。

 

「これは霊子甲冑『光武』。神崎重工が開発した、霊力を持つ人間にのみ動かせるスグレモノだ。秀介とアイリスの分はまだ未完成なんだけどな」

 

「『光武』………」

 

それは、文字通り蒸気と霊力で動く鎧だった。

緑と赤のレーダーに、足元の蒸気タービン。

そして、各々の獲物を手にした四機の光武。

大神は二刀流の使い手なので、二刀の白い光武の担当という事になる。

 

「それだけじゃねぇ。お前達も目的地に運ぶ設備もある」

 

米田がそう言った時、作戦司令室に売り子の椿が入って来た。

椿もまた、花組とは違う戦闘服を着ている。

 

「長官、『轟雷号』の発進準備、完了しました!」

 

「椿ちゃん!じゃあまさか、かすみくんと由里くんも………」

 

「そうだ。彼女達三人は帝国華撃団風組。お前達花組を目的地に運ぶ、言わばサポート役だ」

 

そう言って、米田は大神に命令を出した。

 

「さあ大神、出撃だ!敵は待ってくれねぇぞ?」

 

「はい!帝国華撃団花組、出撃!」

 

大神の号令で、隊員達は一斉に動き出した。

 

 

 

 

 

「………どういう事ですか?」

 

秀介が、ふと米田に尋ねた。

 

「アイリスがまだ子供だから戦えないという理由は分かります。しかし、僕も出撃できないというのは………?」

 

「秀介………。お前のその力は、あいつ譲りで凄まじい。お前が行けば、瞬きの間に戦いは終わる。だが………」

 

僅かに躊躇い、米田は続けた。

 

「これは帝国華撃団花組の初陣。その最初の戦いでお前の力を借りれば、あいつらは次もお前を当てにする………。冷たいかも知れねぇが、帝都の平和はできる限り人間の手で守るものだ。現にあいつは、一度しか力を使った事はない」

 

「………」

 

秀介は答えなかったが、心の中で叫んだ。

 

「(平和を人間の手で守れるのなら………、僕は何のためにここにいるんですか!?)」

 

確かに米田の言う事には納得できる。

しかし、それでは自分の存在意義は一体どこにあるのか。

秀介は、新米ゆえに答えを見つける事が出来ずにいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

昼前の上野公園。

侍姿の魔装機兵『脇侍』が現れて火の手が上がったのは、実に突然の事だった。

人々が逃げ惑う中、公園の鳥居に四つの影が並ぶ。

 

「アハハハハ………、破壊、動乱、政府転覆、楽しいねぇ」

 

「帝都は我等黒之巣会が貰い受ける………」

 

「屍の山を築き、我等が力を見せてくれましょう!のう、叉丹殿?」

 

「フッ………」

 

叉丹と呼ばれた銀髪の男が含み笑いを漏らす。

その時、力強い声が響き渡った。

 

 

「そこまでよ!!」

 

 

刹那、湖から巨大な列車が出現し、中から四機の光武が姿を現した。

 

「帝国華撃団、参上!」

 

「帝国華撃団とな?………こざかしい!」

 

着物姿の女が吐き捨てるように言うと、銀髪の男、叉丹が前に進み出た。

 

「面白い。ここは私が………」

 

「ふん、任せたぞ」

 

言うや、三つの影は叉丹を残して消え失せてしまった。

同時に、屋台を壊していた脇侍達が一斉に花組の方を見る。

 

「お前達の実力、見せて貰おう!」

 

 

 

 

 

 

 

「敵の数は7か………。よし、まずは魔装機兵を全滅させる!」

 

「「了解!」」

 

威勢のいい返事に、自らの士気が高まる大神。

 

「(よし、これなら行けるぞ!)」

 

隊員達とは昨日あったばかりだが、これまでのコミュニケーションで悪い印象は与えていない。

恐らくチームワークもバッチリだろう。

そう考えた大神は、素早く指示を出した。

 

「マリア、後方から援護を頼む!」

 

しかしマリアから返って来た言葉は、大神の予想だにしないものだった。

 

「………、何を言っているんです?この程度の相手に援護が必要なのですか?」

 

「いいっ!?」

 

「私はまだ少尉を隊長とは認めてはいません。では、通信を終了します」

 

一方的にそう言うと、マリアは通信を切ってしまった。

仕方なく大神は、今度はすみれに通信を繋いだ。

 

「すみれくん、あの………、援護を………」

 

「おーっほっほっほ………!中々面白い冗談です事。」

 

しかし、やはり反応は冷たかった。

 

「こんな雑魚も一人で倒せないなんて、とんだ足手まといですわ。精々頑張って下さいまし」

 

「そ、そんな………」

 

見ればマリアもすみれも、初陣とは思えない程の余裕で脇侍を屠っている。

 

「………俺の隊長の立場って一体………」

 

戦場の中、大神のむなしい呟きが響いた。

 

 

 

 

 

 

「ほ~ぉ。あいつらバラバラと思ってたら、意外にやるじゃねぇか」

 

作戦司令室で戦況を確認していた米田は、感心したように呟いた。

実際に大神の指示を聞いているのはさくらだけなのだが、二人の動きはマリアとすみれの行動を綺麗にフォローしており、一つのチームとしてまとまっていた。

それが出来たのも、偏に大神の指揮能力の高さである。

部下を単なる戦力ではなく、大切な仲間として扱う。

そんな人情溢れた性格も、大神の魅力だった。

特に花組の少女達を娘同然に考えている米田には、大神がとても好印象だった。

 

 

 

 

 

「これで、全部か?」

 

公園内の脇侍をあらかた片付け、大神は辺りを見渡した。

すると、鳥居の奥から叉丹が姿を現した。

 

「ほう、見事な腕前。私自ら相手をさせて頂こう」

 

叉丹が刀を抜く。

すると、叉丹を中心に地面に紋章が出現し、周辺の妖気が瞬く間に濃くなった。

 

「あれは………?」

 

二刀を構えたまま、大神はその場に立ち尽くした。

叉丹の描いた魔法陣から、光武の倍近い大きさの巨大な魔装機兵が現れたのだ。

 

「よし…、敵魔装機兵を撃破する。みんな行くぞっ!」

 

 

 

 

 

 

叉丹と対峙する四機の光武。

その中で最初に動いたのは、すみれの紫の光武だった。

 

「この私に掛かれば、楽勝ですわ!」

 

「待つんだ、すみれくん!」

 

大神の静止を無視し、叉丹に突進するすみれ。

叉丹はニヤリと怪しげな笑みを浮かべ、太刀を抜いた。

 

「おどきなさいっ!」

 

霊力を纏わせた薙刀で叉丹に切り掛かる。

しかし、叉丹は脇侍を尽く屠ったその一撃をいとも簡単にいなして見せた。

 

「この私を見くびるな」

 

「くっ………!」

 

後方に押し返され、すみれは屈辱に顔を歪ませる。

そこへ、大神の通信が入った。

 

「すみれくん、いくら君でも単機では厳しい。俺が指示を出すから、それに合わせて動いてくれ」

 

「………仕方ありませんわね。よろしくてよ」

 

この時、さくらとマリアは僅かに驚いていた。

すみれは人に従う事を極端に嫌い、周囲とのいさかいは絶えなかった。

そんな彼女が戦いで指示を聞くなど今まであるはずがない。

大神の統率力に、マリアは改めて感心した。

 

「よし、まずは俺が注意を引く。その隙にすみれくんは奴の視界を制限。マリアは奴の身動きを封じ、さくらくんがトドメをさす。いいな?」

 

「「了解!」」

 

隊員達の返事に頷き、大神とすみれが同時に動いた。

 

「行くぞっ!」

 

大神の白い光武が稲妻の如く叉丹の懐を切り付ける。

 

「むっ!」

 

叉丹も今の攻撃には反応出来ず、すみれへの注意が途切れた。

 

「今だ、すみれくん!」

 

「お任せを!」

 

先程の仕返しを含め、薙刀に霊力を集中させる。

 

「神崎風塵流、胡蝶の舞!!」

 

炎の纏わせた薙刀を気合いとともに地面に突き刺す。

すると、叉丹を囲むように火柱が上がった。

 

「くっ………!」

 

「そこっ!!」

 

間髪入れずにマリアのライフルが火を吹き、叉丹の動きを牽制させる。

そこに、さくらの必殺技が炸裂した。

 

「破邪剣聖、桜花放心!」

 

真っ直ぐ振り下ろされた刀の軌道に沿って霊力の鎌鼬が発生し、叉丹の魔装機兵に深々と傷をつけた。

 

「なるほど………、ここまでとは」

 

刹那、再び魔法陣が出現した。

 

「………退け、叉丹」

 

「蜩か………」

 

そこに現れたのは、黒装束の忍者だった。

目を残して顔全体を布で覆っているため表情は伺えないが、叉丹を名前で呼んでいる所から彼の仲間である可能性が高い。

 

「華撃団よ、いずれ決着をつけよう!」

 

そう言い残し、叉丹は魔法陣の中に消えてしまった。

 

「貴様、黒之巣会の仲間か!?」

 

二刀を構えて大神が叫ぶ。

しかし、蜩と呼ばれた忍者は表情一つ変える事なく言った。

 

「答える必要はない」

 

「何!?」

 

「ほんの挨拶がわりだ。精々足掻くがいい」

 

そう言って札を取り出す蜩。

すると、札は閃光とともに巨大な怪物へと変身した。

人間の体に蝉の顔を合体させたような姿で、両手は蟹のようにハサミになっている。

 

「こ、これは………!?」

 

さくらが驚きの声を上げると、怪物は奇怪な声を出して笑った。

 

「フォッフォッフォッ…………!」

 

 

 

 

 

 

 

「長官、上野公園に巨大な妖力反応が出現しました!」

 

「何!?」

 

モニターを見るや、米田は絶句した。

八年前の予言が、遂に現実となったのだ。

 

「………まさか、一発目に来るとは思わなかったがな」

 

しかし、あの怪物が今の花組の手に負える相手でない事は明白。

となれば、選択の余地はない。

 

「秀介、お前の初舞台だぜ。派手に暴れて来い!」

 

「了解です!」

 

待ってましたと言わんばかりに答え、秀介は駆け出した。

 

「………やっぱりお前の弟だな、豊」

 

 

 

「皆さん、今参ります!」

 

人気のない路地裏に入り込み、秀介は左手のブレスレットに目をやった。

最初の使命の時を告げるかのように、ブレスレットは淡い光を放っている。

 

「ジャーーーーーック!!」

 

ブレスレットを空に掲げ叫ぶ。

すると、ブレスレットはまばゆい閃光を放ち、秀介を包み込んだ。

 

 

 

 

 

それは何の前触れもなく現れた。

怪物に一撃を与え、大地に足をつけたその姿は正しく光。

手首に黄金のブレスレットを、胸に空色のタイマーをつけ、銀と赤の体で怪物と対峙するそれは、仁王のような守護神を想起させた。

 

「あれは、一体………」

 

大神はそう呟くしかなかった。

ウルトラマンジャック。

八年の時を経て、光のメシアはこの帝都に帰ってきた。

 

 

 

 

 

「シュワッ!」

 

ジャックは、目の前の怪物に殴り掛かった。

怪物はハサミで受け止めようとするが間に合わず、仰向けに倒れる。

 

「ヘッ!」

 

ジャックは馬乗りになって、さらに追い撃ちを掛ける。

 

「フォッ!」

 

しかし、今度は怪物を身構えており、ハサミでジャックの手首を掴んで攻撃を食い止め、さらにもう一方のハサミから白色の光弾を放ってきた。

 

「ァアッ!?」

 

ダメージこそ少ないものの、至近距離で攻撃を受けたジャックは後方へ吹き飛ばされる。

そこへ、今度は怪物が馬乗りになってきた。

しかし、そう簡単にやられるジャックではなかった。

 

「ヘアァッ!」

 

飛び掛かってきた怪物の勢いを逆手にとって巴投げをキメる。

 

「シュワッ!!」

 

起き上がりざま、ジャックは怪物の方に振り向くと両手を十字に組み、スペシウム光線を放った。

スペシウムは怪物の顔面を直撃し、大爆発を起こした。

 

「………シュワッ」

 

それを確認すると、ジャックの足元から声がした。

 

「君は一体………?」

 

それは大神だった。

見ると、ほかの隊員達も光武を降りてジャックを見上げている。

 

「………私は、ウルトラマン」

 

「ウルトラマン………?」

 

大神が繰り返すと、ジャックは頷いて続けた。

 

「そうだ。私はM78星雲からやって来た宇宙人。八年前に私の兄がこの星を救ったように、私もまた、この星を守る事になった」

 

「君の兄が………?」

 

「貴方達の勇気に感動した。勝手ながら、今回のような敵が出て来た時は、また助太刀させてもらう」

 

そう言うと、ジャックは空へと飛び立っていった。

 

 

 

 

「………何だったんでしょうか?」

 

四人はしばらく無言だったが、ややあってさくらが口を開いた。

 

「私達の味方とは、言い切れないわね」

 

「何だって良いではありませんの。敵でないのでしたら」

 

「そうだな。ウルトラマン………。もしかしたら本当にともに帝都を守ってくれる仲間かも知れない」

 

彼の正体が何であれ、ピンチだった自分達を救ってくれた事に代わりはない。

大神は、不思議とあの光の巨人に親近感が湧いた。

 

「そうだ!事件も解決したし、アレやりません?」

 

「アレ………?」

 

「ほらほら、大神さんも行きますよ!せーの………」

 

何の事か分からず困惑する大神をよそに、三人は同時に叫んだ。

 

 

「勝利のポーズ………、決めっ!」

 

「いいっ!?」

 

 

 

 

 

 

その夜、大神達は米田の誘いで夜の花見に繰り出した。

花組初陣の勝利祝いも兼ねてだったため、皆大いに盛り上がっていた。

そんな中、さくらが大神に声をかけた。

 

「大神さん、お疲れ様でした」

 

「ああさくらくん、お疲れ様」

 

「大神さんのおかげで、あたし頑張れました。これからも、よろしくお願いします!」

 

「俺だけじゃないさ。あの光の巨人が来てくれなかったら、俺達はあの怪物にやられていた」

 

すると、そこへ話中の秀介が話に割り込んできた。

 

「………で、その光の巨人が助けてくれたと」

 

「秀介さん!?」

 

「ああ、ウルトラマンと名乗っていた。まだ仲間とは言いきれないが、俺は仲間と信じている」

 

「あたしもです。何だかあの人とは初めて会った気がしなくって………」

 

大神の言葉に同意するさくら。

すると、今度はアイリスが大神の所にやって来た。

 

「アイリスねぇ………、お兄ちゃんの事気に入ったわ」

 

「え?」

 

「アイリスの恋人にしてあげるから、浮気しちゃダメよ?」

 

「あ、ああ………」

 

ちなみにこの時、さくらがジト目になり、秀介がガッツポーズをしたのは余談である。

 

「さあ飲め大神。明日からモギリが待ってるぞ」

 

《続く》




《次回予告》

モギリに仕事に大忙しの大神さん。
そんな大神さんの前に現れる謎の美女達………。
あれ………、秀介さん、何で怒ってるんですか?

次回、サクラ大戦!

「運命の出会い」

大正桜にロマンの嵐!

いいな、恋人みたいで

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。