ループなハイスクール。二番煎じですね、はい。   作:あるく天然記念物

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まだ読んでる人いる?
いたら嬉しい限りです。駄文ですが楽しんでください。


シーン36

 変態神父を取り逃がした俺たち。相手の計画が予想以上にヤバイため、一度グレモリー先輩と支取先輩に報告する必要かあると判断し、両先輩を探すこととなった。

 が、その必要はものの数秒でなくなった。

 

「あなた達。自分達が何してるのか理解してるかしら?」

「匙、貴方も何をしてるのですか?」

「「部長(会長)ッ?!」」

 

 音もなく、突然と現れたグレモリー先輩と支取先輩。

 二人は命令違反をした眷属達にお仕置きをしに来たとのこと。

 

「とりあえず、悪い子にはお尻叩きが定番よね」

「匙、千回は覚悟してください」

「もちろん、木場と小猫もよ」

 

「「「「ゑッ?!」」」」

 哀れ眷属の四人。

 みんな仲良く公衆の面前で尻を突きだし、先輩らから思い切り叩かれた。

 ハハッ、いと哀れ。

 なにやら未練がましく俺を睨んでくる三人(木場ちゃんだけは逃げてという視線を向けてくれた。お兄さん、めっちゃ嬉しかったです)を尻目に、俺は家に帰ることにした。

 グレモリー先輩は俺にもお尻叩きをしようとしていたが、残念だったな。俺は協力者ではあるが眷属ではないのだ!! つまり、俺がグレモリー先輩の言うことを守る必要もないというわけだ!!

 ってな具合に俺は意気揚々と帰路に着いた。

 兵藤、小猫、匙そして木場ちゃん。君たち四人の犠牲は忘れない。具体的には家に着くまでの間は決して。

 つーか、公衆の面前でお尻叩きは無いわ。普通のお叱りなら受けても…………やっぱそれも無しだわ。

 四人の冥福をお祈りつつ、俺は妹へのお土産をコンビニで購入(ポテトフライ)し、呑気に家へとたどり着くのであった。

 …………てか、今さらだけどグレモリー先輩と支取先輩に変態神父から聞き出した情報伝え忘れてたけど、大丈夫か? まあ、兵藤はともかくとして匙や小猫、木場ちゃんならしっかりしてるから大丈夫だろう。よし、風呂入って寝るべ。

 それから妹よ、ポテトフライが大好きなのはわかったから、俺の指まで摘まむでない。

 相も変わらず俺の指をなめおって。そんなにポテトの味でもするのか、俺の指は。

 

 

 

……………(キング・クリムゾン!! 時間は吹き飛ぶ!!)……………もう、何も言わないさ。ハハッ……………

 

 

 

 ご飯を食べ、妹への餌付けを終え、それから風呂までも終わらせた俺は早々に寝ることにした。

 明日から変態神父が言っていたコカビエルとやらがしでかす何かを防ぐためにも、体力を回復させることに越したことはない。

 というわけでお休みー。

 

……………

 

ドカーン!!!!!!

 

………

 

『_──────▲【]━´…゛【・━!!!!!』←内容が聞き取れない大きな声。

 

 

 寝れねぇッー!!!!

 布団に込もって寝ようとした最中、爆発音やら叫び声が酷すぎた。

 時計を見たら夜中の一時を過ぎたぐらいか。

 とにかく煩い。騒音というより、最早家の側でロックフェスでもやってるのかと思うレベルである。

 いつも暑苦しい俺の心の修造さんだって、夜中に叫ぶことはないのだぞ。

 一体全体何が起っているのやら。あまりにも煩すぎて、怒りを通り越して原因が気になってきたわ。

 思い立ったが吉日。早速行くとしよう。

 となれば、使い魔であるシロを呼び出しておこう。シロよ。お前は家で俺の家族を守ってくれ。俺は外の喧しい奴らに焼きいれてくるわ。

 

『あん!!』

 

 よしよし。いいこだ~。朝になったら散歩に行こうな~。

 シロに留守番を頼んだ俺は一応万が一の事を考え、最初からスパイクを履き、騒音の現場へと向かう。

 スパイクの力もあり、自分で言うのもあれだが、スポーツカーレベルのスピードで駆け抜けた。

 やってしまったとはいえ、流石はエクスカリバーとやらを元にしたスパイクだ。とんでもねぇ性能だ。

 スパイクの性能に惚れ惚れ視ながら走ること数分。俺は無事に現場へと到着~。

 うっわー。すっげぇ見知った場所だ~。なんか毎日見ている建物───ってぇ、うちの高校やん!!

 えぇ~、夜中にロックフェス開催するとか通知無かったぞ? でもなぁ、生徒会長や先輩に悪魔がいるような学校だし、ワンチャン夜中にサバトや悪魔召喚をしていても不思議じゃない。

 それに俺は悪いことをしたらどんな人でも怒るタイプの人間だ。精神年齢ではお爺ちゃんを越えている。ここは、年長者として叱らねば。もしかしたらグレモリー先輩たち以外のやべぇー阿保の犯行かもしれない。警察が来る前に俺が止めなくては。

 校門から入る最中、なんか壁? みたいな感触を感じたが気のせいだろう。勢いに任せに入っていく。

 入っていく時に支取先輩や匙みたいな声で「貴方、どうして結界を超えて?!」「ちょっ?! いくらなんでも自殺行──」というセリフが聞こえたが、それも気のせいだろう。

 そんなロックフェス(仮)で死者なんてでねぇよ。んじゃ、お邪魔しまーす。こんな夜更けにロックフェスでもしてるんですか? あのねぇ、幾分可笑しな町とはいえ少しは近所迷惑を考え─────────────────おい、何してんだよ、テメェら。

 校門をくぐり抜け、校庭にやって来た俺の目の前には悲惨な光景が広がっていた。

 ぼろぼろの姿で横たわっているイヌころと痴女。肩で大きく息をしているグレモリー先輩たち。そして身体中血塗れで倒れ伏す兵藤と木場ちゃん。

 そんな彼らを空から見下ろす、かつて戦った痴女と同じ黒い羽を持つオッサン。そのオッサンの下には包帯まみれで小刻みに震える変態神父。ついでに神父みたいな格好をしたジジイ。

 

 ……………テメェらがやったのか。

 

 俺は空を飛んでいるオッサンへと話しかけるも、オッサンは聞こえていないのか、何やら別の事を話し出した。

 

 ………てんじゃねぇよ。

 

「ほぉ、人間か。そこで倒れている協会の犬や魔王の妹どもより強そうだな、貴様。が、先ずはこやつらと同じように────」

 

 あぁ、明日になったら兵藤に謝らないといけねぇな、俺。

 だってさ、動いちまった。コーラを飲んだら必ずげっぷをしてしまう。右足を出したら左手が出てしまう。そんな考える以前の、反射だった。

 俺は兵藤に散々言ってたのなぁ。後先考えずに動くなって。

 でもなぁ、わりぃ。今回は無理だわ。

 オッサンが喋り終える前に、

“動いちまった”。

 でもよぉ、やっぱり無理だって。

 知り合いをボコボコにされて切れないヤツなんていねぇよ。

 

「無視してんじゃねぇよッ!!!! テメェがやったのかって聞いてんだよ、俺はッ!!!!」

 

 有り体に言えば、俺はプッツンしていた。

 

「手調──なんだとッ?!」

 

 スパイクの力を最大限使い、俺は空へと駆け上がっていた。

 どうして空を飛べたのか。なんでオッサンの元へ一瞬で駆け上がれたのか。

 数々の疑問が頭をよぎるが、んなものはこの場には関係ねぇ。

 というかいいことじゃねぇか。これで俺はオッサンに心置きなく────蹴りを入れられるんだからなぁっ!!!!

 急に肉薄してきた俺に慌てるオッサン。そんなオッサンへ俺は空へと駆け上がる勢い、ついでに魔力やらスパイクの力といった物を込めた一撃を打ち込む!!

 

 俺式南斗獄屠拳!!

 

 ────ビシヤッ!!────

 オッサンと交差するように一撃を打ち込み終えた俺は、そのまま地面へと降り立つ。

 上空には、一見なにも変化が起きていないオッサンが浮いていた。

 

「っ───ん? は、ハハッ。何をしてくるかと思えば。勢いに任せた虚仮威しか」

 

 オッサンは俺の攻撃が不発、あるいは失敗したと思ったようだ。

 おめでたいヤツだ。

 俺の攻撃は“既に終えている”とも知らずに。

 

「所詮は人間か───もういい。俺の計画の邪まぁ─────うぼぉあはッ?!」

「「「「「「「えぇーーーーッ?!?!」」」」」」」

「ここ、コカビエル様?!」

「アハハ──ぼくちん帰ろーっと」

 

 突然、オッサンの黒い羽の付け根、両手両足の関節からおびただしい量の血が勢いよく吹き出し、地面へと落ちてきた。

 その姿に、兵藤達だけでなく変態神父(逃走済み)やジジイまでもが驚愕の声をあげていた。

 てかコカビエルって名前、なんか聞いたことがあるようなないような。

 まあ、どうでもいいか。コカビエルだかカビキラーだか知らんが──「か、カビキラーだとッ?!」──やべっ、心の声が漏れてたわ。めっちゃ怒ってるな。人の事は人間風情がとか言う割には器の小さいヤツだ。やっぱりこんなヤツ、オッサンで十分だ。

 そんなオッサンのダメージが大きいのは当然の結果だ。あの技は我流とはいえ愛に全てを懸けた男が世紀末救世主を倒した一撃を模倣した技なのだ。羽が十枚生えた程度のオッサンで耐えられる訳がない。

  原理としては一瞬で相手の関節という関節へ鋭い一撃を叩き込むというシンプルな技。んでもって魔力やらスパイクの力を時限式で解除することで相手は一瞬なにされたか分からないという代物となっている。

 しかしまぁ、随分とらしい格好になったじゃねぇか。テメェがやったイヌころや兵藤たちとお揃いだな。

 なぁ、どんな気分だ? 自分がされたことと同じことをされた気分はよぉ?

 

「ききっ────貴様ぁッ!!」

 

 俺を睨み付けてくるオッサン。そんなオッサンの体の変化に気づく。

 ほぉ、便利な身体だな。俺式南斗獄屠拳で受けた傷が塞がっている。

 一撃で沈めるつもりだったが、存外治癒力が高いようだ。なら、次はもっと強い一撃をぶつけるだけだ。

 

「人間風情が、この俺に膝をつかせるとはな。よかろう、褒美をくれてやる…………骨一本すら残らぬと思え!!」

 

 オッサンは言い終わるのと同時に空へと飛び上がり、自分の身長の2倍はあると思われる光の槍を作り出した。

 おうおう、威勢がいいことで。しかし、その威勢が虚仮威しでないのは確かだろう。少なくともヤツ(推定)は兵藤はともかくとして───「おい?! そりゃねぇよ?!」うるせぇ、残当だバカ……話がそれた。ともかく、木場ちゃんどころかイヌころたちすらもボコボコにしていた。

 そんな力を持つのであれば言葉の通り、オッサンは俺の骨すら残さない殲滅攻撃をしてくるだろう。さらに言えば、見た目だけで、かつて俺を十数回程殺してきた痴女の光の槍と比べ物にならないオーラを感じる。威力は比べるのも烏滸がましいだろう。そうなれば、刹那の懐中時計は使っても意味ねぇな。過程がわかっても逃げ場のない攻撃には無力だ。どうあがこうと死ぬ未来しか見えない。

 それにこの場には動けない兵藤たちがいる。俺が避けてしまえば全員が危ない。

 だったら、やることは一つ。

 全力で蹴り抜く。ただそれだけだ。

 はあはぁはぁぁぁあぁぁぁッ!!

 腰を軽く落とし、両足にスパイクの力と俺自身の魔力を集中させる。聖と魔。どう考えても水と油のような力であるが、不思議と反発する事なく、混ざり合い、俺の両足へと純粋に力だけが貯まっていく。

 貯まっていくにつれて、俺の両足が白と黒の輝きを放ち始めた。

 

「これって、僕の『双覇の聖魔剣』と同じ────はは、流石は新月君だね、もう驚き過ぎて何にも言えないや……………はぁ、僕も本格的に陸上始めようかな?」

「木場?! 気をしっかり持て!! 心がバクってるのは今に始まった事じゃねぇだろ?! しっかりしろ!?」

「…………イリナ。私も陸上を始めれば彼のように、己の力だけで聖剣や魔剣を凌駕できるだろうか?」

「ゼノヴィア?! 貴方もしっかりして?! あの人が可笑しいだけだから!!」

 

 遠い目をしだした木場ちゃんやイヌころを兵藤と痴女が励ましている。ついでにグレモリー先輩たちも遠い目をしていた。そんな彼らを見て、なんか………怒りが収まってきた。ついでに反比例するようにいたたまれない気持ちが溢れてきた。

 

 えっ、なんか俺やベー事してたの? てか、ぼろぼろの皆を見て義憤に駆られて戦っていたのに、なにこの状況。えっ、悪いの俺なの??  マジ?? 

 ………………いや、これも全てオッサンのせいだな。

 ちくしょう!! 木場ちゃんたちをボコボコにした挙げ句の果てに、精神攻撃までしてきやがって!! テメェ、ボコボコにするだけじゃ済まさないからな!!

 俺はオッサンを指差し、あらぬ限りの声で叫んだ。

 

「ちょっと待てッ!!!! 貴様ッ、そこの協会の犬や魔王の娘、そしてその眷属たちが遠い目をしているのはどう考えても貴様が───」

 

 ウルセェッ!! てか思い出したぞ、コカビエル!! テメェ、あの変態神父から聞いたが、もとはと言えばオッサンがこの街で悪いこと考えて兵藤たちをボコボコにしたのが始まりだろうが!!

 そうじゃなけりぁ、俺もこんなとこで闘ってねぇんだよ!! つまりテメェのせいだ!!

 

「確かにな!! そうだな!! でもそれと貴様の聖魔の力は話がちが───えぇい、貴様と話していれば俺の頭まで悪くなりそうだ。今すぐ─────死ねぇえええええッ!!!!」

 

 俺との会話と断ち切り、オッサンは俺に向けて光の槍を打ち出した。

 他にもオッサンへ言いたいことは山のようにあるが、仕方ない。その気持ちも含めて、この一撃で終わりにしよう。

 限界まで力を貯めた俺の両足は、最早直視が出来ないほどに輝いていた。

 準備万端。正直成功するかは分からない。この技は努力の天才が扱う大技。俺にできるか正直不安だ。

 でも、やらなきゃ皆死ぬ。それに俺の心の修造さんだって、あらぬ限りの声で叫んでいる。

 

『君ならできる』

 

 あぁ、そうだ。初めからできないことなんて考えてたら成功なんてしない。最初にやるべきはできるって自分自身を信じることだ。

 それに、俺にだって努力の天才に引けをとらない自負がある。

 それは──────陸上へと捧げた俺の努力だぁぁああぁぁぁああッ!!!!! 

 俺の覚悟と共に、両足の輝きが一層明るくなる。

 いくぜッ!!!!

 左足で地面を踏みしめ、右足の裏を光の槍へと向けるように、蹴りを放つ!!!!

 

 俺式────昼虎ぁぁあぁああああぁぁぁあぁあッ!!!!!!!!!

 

 ドガァアァアアアアァァアァアイアアアッ──────ン!!

 大きな爆弾が炸裂したような轟音と共に、足先から白黒の虎が光の槍へと放たれた。

 光の槍と白黒の虎。二つの技が空中でぶつかり合い、凄まじい衝撃波が俺と兵藤たちを襲った。

 

「「「「「「「うぉおおおおおおっ?!?!」」」」」」」

「ぎぃいぃああああぁああぁぁぁッ────ッ?! …………がくッ」

 

 ついでにジジイも襲い、ジジイは校舎の壁に埋もれる勢いで吹き飛ばされ、白目を向いて倒れこんだ。どうやら鍛え方が足りんようだ。

 そんな二次被害を生み出しながらも拮抗する大技。

 次第に明確な変化が生じだす。

 

「ハッ、誇れ人間。この俺の一撃に足りずとも、ここまで拮抗したのはアザゼル以来だ。だが、その奇跡も終わりのようだな」

 

 勝ち誇るように笑みを浮かべるオッサン。

 しかし、それもしょうがない。オッサンの光の槍は依然として健在であるが、俺の昼虎は次第に小さくなり始めたのだから。

 

「そんな……………新月君でも駄目なのか………」

 

 その様子に、遠い目をしていた木場ちゃんが皆を代表するように諦めのような声を上げる。

 確かにな。そう見えても仕方がない。でも、これでいいんだ。

 安心しろよ、木場ちゃん。この技は────ここからが本番だ!!

 そろそろ身構えとけよ、オッサン。でないと────炸裂するぜ?

 

「なんだと? ────ッ?!」

 

 俺の言葉と、小さくなりながら依然として拮抗する昼虎の様子にオッサンがようやく疑問を抱き始めた。

 そうしてちゃんと確認したことで、気づいたようだ。

 小さくなっていく昼虎の威力が一切落ちていない事に。

 だが、今さら気づいても遅い。既に圧縮は完了した。

 さぁ、吠えよ────我が陸上魂よッ!!!!!!

 

 ギヤァアアアアアアアアア─────ッ!!!!!

 技を放った時以上の轟音を鳴り響かせ、昼虎は光の槍を打ち消し、一気にオッサンへと襲いかかる。

 

「なッ──────」

 

 オッサンが満足に喋る暇すら与えず、

 

 ドガァアァアアアアァァアァアイアアアッ────────────ンッ!!!!!!!!!!!

 バリィイイイイイィイイイィンッ!!

 

 昼虎が炸裂した。

 昼虎は努力の天才である劇眉忍者が扱う大技。本来であれば八門遁甲と呼ばれる、なんか意図的に体のリミッターを死ぬ一歩手前まで外すことで使用できるようになる。当然ながら八門遁甲なんてものは俺の身体には無いため、そこはスパイクの力と俺自身の魔力を代用。なんか摩訶不思議な作用が生じた結果、八門遁甲のような状態へと強化に成功。

 あとは一点集中で思い切り蹴ることにより、圧縮空気砲を相手に叩き込む事ができるのだ。

 その威力は松岡陸上魂オーバーキャノンを遥かに超えており、更にはただの圧縮した空気砲であるため、相手の魔力弾や光の槍と衝突しようものなら、更に圧縮され威力が強力になるという仕様を備えている。

 当然ながら、そんな高威力の大技に代償が存在しないわけはない。劇眉忍者は使用後に全身筋肉痛に襲われていた。これは八門遁甲のダメージが大きな原因であるが、不思議と俺は両足が少し痛む程度で済んでいた。

 あれだな、きっとこれまでの陸上で鍛えた足腰やスパイクの力が優秀だったからだな。

 以上が本来の昼虎と模倣した俺式昼虎だ。

 我ながらとんでもない技を生み出してしまったものである。はっきりいって、オッサンが生きているか心配になってきた。

 ワンちゃん亡くなって─────うわぁ、こりゃひでぇや。

 昼虎をまともに受けたオッサンは全身から血を吹きだし、地面へと落下していた。

 見たままを表現すれば、血溜まりの上で大の字になっていやがる。

 辛うじて胸が上下している姿が確認できたため、死んではいないようだ。あれだ、ミンチよりましだ。

 それはそうと、なんか昼虎が炸裂した時、昼虎の音とは違う、なにやらガラスが割れたような音がしたが、あれは多分校舎の窓ガラスが割れた音だろうな。

 昼虎の性質上、空気振動はどうしても防げないのだ。

 あれ、これってもしかて────よし、全部オッサンが悪いわ。

 一瞬、多額の補修費が頭をよぎったが、全部オッサンのせいにすればいいか。なんかこの街を消滅させようとしてたくらいだし、校舎の一つ二つ程度の被害で済んでよかったぐらいだろ。

 

「よくないわよ!!!!」

「ぶっ、部長落ち着いてください。心がいなかったら俺たち負けたかもしれないんですから、ここは穏便に」

「分かってるわよ!! でも、分かってるからこそ、やるせないのよ!!」

 

 グレモリー輩が金切り声を上げ、それを兵藤が落ち着かせている様子が見えるが、それも気のせいだろう。全部オッサンが悪いのだ。

 

「流石に責任転嫁しすぎじゃないの? まぁ、コカビエルが事の発端なのは事実だけどねぇ」

 

 いやいや、街一つを消滅させようとしたヤツが一番悪い─────てぇ、何奴ッ!!

 思わず返してしまったが、兵藤たちとは違う声。

 貴様──何者だ!!

 俺は声がする方へ指を指しながら振り向く。

 するとそこには一人の女性がいた。

 しかもただの女性ではない。スラリとした手足にキュッと引き締まった腰。清潔感のあるショートヘアは夜にも関わらず光を反射して艶々だ。

 はっきりいって美女と呼ばれる人物である。

 

「こんにちは、人間君。私の宿敵を見に来たんだけど………ねぇ」

 

 兵藤の方を見ながらそう語る女性は、やがて興味を失ったかのように俺へと顔を向けてきた。

 ほぉ、兵藤が宿敵とな。それはつまり……………あぁ…………とりあえず兵藤、この状況でも俺を睨むのはやめろ。相手が美人さんとはいえ敵かどうか分からんのに嫉妬するな、バカ。

 話が逸れて申し訳ない。とりあえず、兵藤が宿敵って事は悪魔的にか? それとも兵藤の持つ神器的にか? もしかして────変態的な意味なら即刻ぶん殴りに行くが、どれだ?

 俺がそう訪ねると、女性は口元へ人差し指をあててクスりと笑った。

 なんか色っぽい仕草だ。

 

「君、本当に面白いね。私としては君が殴りに来なくて残念な神器的にだよ。ねぇ『アルビオン』?」

『あぁ、そうだな』

 

 途端、女性の背中から近未来的な半透明な青色の翼が展開された。

 そしてどこからともなく聞こえる威厳のある声。

 あれか、兵藤の持つ赤龍帝の籠手と同様のやベーヤツか。ホント、大当たりな神器を持っているとは、羨ましい限りだ。

 

「そんなに褒めないでよ。でも、大当たりで言えば、君が加工して使っている靴もスゴいじゃない。昔ほど強くなかったにしても、コカビエルを倒したのだから」

 

 そりゃどうも。自慢の逸品だからな。

 それで、えぇーと、名前………まぁいいや。アルビオン(推定)さんはこんなところにわざわざ宿敵を見に来ただけか? 生憎ここにはアルビオンさんが興味を無くした兵藤や、全身から血を吹き出して大の字で寝てるオッサンと白目剥いて気絶しているジジイぐらいしかいねぇぞ?

 

「アルビオンさん…………はいいとして人間君、軽く言ってるけど、後半は世間だと大事件になるって理解してる?」

 

 失礼な。ンなことわかってるよ。後半どころか前半の兵藤ですら出るとこに出たら痴漢やら何やらで大事件だわ。

 

「心…………せめてオブラートに包んでくねぇか………」

「兵藤君…………ごめん」

「兵藤先輩………ごめんなさい、庇う言葉が見つかりません」

「いっ、イッセーさんはそんなに悪い人じゃありません!! ちょっとエッチ過ぎるかもしれませんが…………それでもスゴくいい人なんです!!」

「うぅ……………ごめんね、アーシア。俺がおっぱい大好きなばっかりにそんな擁護をさせてしまって」

「わわわわっ、イッセーさん?! そんなに泣かないでください。新月さん、イッセーさんを虐めないでください!!」

 

 すんません。でもね、アーシア。世間的には兵藤は悪い事をしているのは理解しておいてくれ。ついでに彼が悪いことをしないように見張っててあげてくれ。そうすれば俺がこんな場で真実を話さないで済む。

 

「…………ガクッ」

「いっ、イッセーさーん!?」

 

 俺の最後の一言がトドメとなったのか、兵藤は安らかな表情で地面へと倒れた。

 宿敵の悲しい姿に、アルビオンさんも同情したような表情を浮かべる。

 

「彼、大丈夫? あれでも一応、私の宿敵なんだけど」

 

 大丈夫、大丈夫。むしろこの程度で兵藤が生活態度を変えてくれるのなら、すでにアイツは優等生だよ。

 俺がそう話すと、アルビオンさんは大きく溜め息をついた。

 

「はぁ………私、宿敵と言うぐらいだから期待してたんだけどなぁ」

『すまないな。流石に宿主の趣味嗜好までは把握できない。こればかりは諦めてくれ』

「だよね。でも、それより興味をそそられる人には会えたし、結果オーライかな?」

 

 ほぉ、アルビオンさんが興味をそそる対象がこの場に居ると。

 まあ十中八九俺だろ。

 てか、アルビオンさんの言動からして俺じゃなかったら、むしろ誰なのか逆に気になるわ。

 

「さてと、本当ならここで人間君と一戦交えたいけど、アザゼルのお使いを済ませないと」

 

 そう言うと、アルビオンさんは大の字で寝てるオッサンの元へと向かい、拾い上げて肩に担いだ。

 なにやら一戦交えたいとか言う恐ろしい事を言ってたぞ、あの人。冗談じゃない、今日はもうオッサンの相手だけで十分だ。

 俺はさっさと用事を済ませろという視線をアルビオンさんへと向ける。

 

「つれないなぁ。さて、フリードは逃げたようだけど、コカビエルは回収できたから、アザゼルも満足するか。それじゃあね、人間君。今度は君と闘えるのを楽しみにしてるね」

 

 おう、俺はその今度が一生来ないのを祈ってるよ。

 ほら、さっさと帰れ。夜更かしは美容の天敵だろ。美人さんなんだから闘いより美容に気を遣いなさい。

 俺がそう言うと、アルビオンさんは大きく目を見開く。

 

「びっ───美人さんって」

 

 ん? おかしな事言ったか、俺? アルビオンさんは世間的には美人さんだと思うぞ。当たり前の事を口にしておかしいか?

 

「───あぁ、もう。ホンッとうに調子が狂うなぁ人間君は。…………またね」

 

 おっ、おう。なんか素直にまたねと言われると俺も調子が狂うな。

 アルビオンさんが展開していた翼を大きくさせ、空へと飛び立とうとした。

 

『俺には無視か、白いの』

 

 アルビオンさんの翼と同じ威厳のある声が響いた。

 倒れている兵藤の籠手が光っている。

 とすれば、これが赤龍帝の声か。初めて聞いたな。

 

『起きていたか、赤いの』

 

 間髪いれずに再び聞こえる声。あれか? 神器同士の同窓会的なやつなのか?

 

『せっかく出会ったというのにこの状況ではな』

『構わんさ、いずれ闘う運命だ。だが、厄介なヤツも居たようだな』

『白いの。お前がそう言うのなら、ヤツのアレはそう言うことなのか?』

『あぁ、数奇なものだ。我らとは違った定めを持ったと言える。でなければ堕天使の幹部など倒せるものか』

『やはりそうか。では、次は決着をつけるとしよう。アルビオン』

『あぁ、ドライグ』

『『そして、新月 心よ』』

 

 …………なんか同窓会ついでに、とんでもない事を言われた気がする。

 決着? ドライグさんとアルビオンさんが俺に対して? マジ? これって現実? それとも幻術? 頬でもつねれば───いってぇ!! あぁ、現実だ。

 …………ううっ、嘘だぁぁあああッ!!!! なんでドライグさんとアルビオンさんの標的になってるのよ、俺!! 俺はただ、普通に結婚してアルプスの高原辺りでのんびり暮らしたいだけなのにぃいいいいッ!!!

 盛大な殺害予告のような言葉を残し、アルビオンさんは閃光となり空の彼方へと飛んでいった。

 その後を追うように、俺の叫びも空へと向かっていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで新月君、僕も美人だと思うけど、どうかな?」

「…………木場ちゃんはかわいい系だろ?」

「そっか、かわいい系か………………よしっ、被ってない」

 

 




主人公が新たに修得した技

俺式南斗獄屠拳
○愛に殉死した男が扱う大技。原作だと詳しい原理は分からないのに世紀末救世主が大ダメージを受けたぞ!! 

俺式昼虎
○天翔のスパイクを使用することで擬似的な八門の力を解放。本家とは違ってある程度溜めの動作を必要とするが、その威力は絶大だ!! 全身から血を吹き出してしまうよ!!

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