ループなハイスクール。二番煎じですね、はい。   作:あるく天然記念物

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久々だぜ! 前編後編でお送りいたします。


シーン35~36

 とある日。

 目の前に痴女が倒れていた。

 …………………いやいやいや、何のこっちゃわかんねぇよ!

 自分のモノローグに突っ込みを入れても、この状況を表す言葉を俺はこれしか知らない。

 というかマジな話、シロの散歩をしていたら目の前に痴女が倒れていたのを発見したんだ。

 青い髪で、格好はなんかどこかの猫な怪盗番組で見るような全身タイツのようなものを着ている。そんな格好のせいか身体の線が浮き出ていること浮き出ていること。めちゃくちゃセクスィーです。ありがとうございます!

 ってそんなことは放っておいて、そんな痴女丸出しの女の子が目の前に倒れているのだ。

 さて………………帰るか。

 このままぼーっと突っ立っていては俺が知り合いか何かだと勘違いされて変態の烙印を押されてしまう。

 しかし、このまま見捨てていくのも俺の微妙に残っている善良の心に嫌な痼りのような物が残ってしまう。決して昨日夢の中で神様っぽい人から「お前、最近キチガイの変態と認識されてるZE☆」なんて言われたからでわない。

 決して違う。

 ………俺ってそんなに周りからの評判が悪かったのだろうか。

 一応その神様っぽい人には夢ではあったがムカついたのでサマーソルトをお見舞いしてやったが、そんなこんなで最近俺の心は少しナイーブになっているのだ。

 さらに付け加えるとさっきからシロの瞳が痛い。「えっ、見捨てちゃうの? 本当に?」みたいな感じでウルウルさせて俺を見つめている。

 その純白な瞳が俺の心にガンガンぶっ刺さってきています。

 だがしかし! そんなことで生き様を変える俺ではない! 一度無関係を貫くと決めたら貫くのだ!

 

 (ウルウル……)

 

 つ、貫くのだ!

 

 (ウルウルウルウル……)

 

 つ、つらぬ……

 

 (ウルウルウルウルウルウル……)

 

 ………………………つ───。

 

 (ウルウルウルウルウルウルウルウルウルウル…………)

 

 ……………………だー! 分かったよ! 助けるよ! 助けますよ! それでいいんだろ!!

 

『あんッ!』

 

 シロの純白なウルウル顔に撃沈した俺は倒れている痴女を救うことに。

 まったく、シロの散歩中じゃなかったら喜んで警察に突き出すのにな。

 とにかく助けるにしても現状把握が大切だ。事と次第によっては警察か救急車のどちらかを呼ばなくてはならない。

 俺としては警察に連絡する可能性が高い気がしてならないがな。

 だって痴女だし。今までの人生において痴女と変態に良かった記憶なんて持ち合わせてない。むしろマイナスをぶっちぎっている。

 ということでさっさ痴女の元に向かい、意識の有無を確認。 

 ノックしてもしもーし? どうしたというのだ? む? こいつ、う、動くぞ!

 俺の確認に痴女はもぞもぞとうねってきた。

 とりま意識はあるみたいだ。ならどうして倒れているのかを聞き出さなくては。

 なしてこぎゃんとこに寝そべっとっとね? なんだって? 旅の途中に変な絵を買ってしまって、そのせいで有り金を失ってしまい、ここ数日ろくに食事をとってなくて動けないだって?

 どうやら本格的なバカなようだ。

 つか絵を買って路頭に迷うって。今時の小学生だってもう少しましなお使いをするぜ?

 まあなんだ。腹が減っているなら食わせれば大丈夫なのだろう。

 助けると決めた俺は痴女に飯を奢ることにした。

 運のいいことに、レーティングなんたらの功績のおかけでグレモリー先輩から百万ほど手当てを貰っていたため、金には現在困ってない。

 あれだけ死んで百万って安いのか高いのか今一分からんが、一介の高校生が持つ金にしては十分過ぎる金額だろう。

 さーて、今から飯屋に行くが、ついてくるか?

 

(ッ!? ガバッ!!)

 

 俺がそう訪ねると、痴女は勢いよく立ち上がり、ついてくる意を伝えてきた。

 お前立てるのかよ。まあいいが。

 

 ………移動中………

 

 その後、腹ペコ痴女に食事を奢るため、俺とシロ、痴女の二人と一匹でレストランに来たのだが、

 

「ガツガツガツッ!!!」

 

 まあこの痴女がレストランにつくなり食べること食べること。

 まるで何処ぞの野菜人の主人公を彷彿とさせる勢いで料理を平らげていく。

 スゲーなおい。他人の奢りでここまで遠慮なく平らげていく様を見たら、呆れ通り越していっそ清々しいぞ。

 おっ、もう少しで食べ終わるな。

 痴女は最後のデザートであるプリンを一口で頬張ると食器を全ておいた。

 

「ふぅ、これも主の思し召し。感謝いたします」

 

 なんか俺が奢るというのに神様に感謝さている。

 神様に感謝ということは教会関係者ということなのか?

 まあ痴女が何であろうがどうでもいいし、そもそも初めから普通に奢るつもりはないから構わないが。

 そんな神様にお祈りを捧げている痴女に向けて一言。

 罠にかかったな。ここで食事代を払って欲しくば、俺の言うことを聞け───いや冗談だ。そんな捨てられた子犬のような目で俺を見つめるな、奢ってやるから。

 俺の言葉を聞くなりシロ程ではないにしろ痴女は目をウルウルさせて見つめてきたため遊びを止める。

 まさかこの俺が怯むレベルでウルウルさせるとは。よし、今日からこの痴女はイヌころと呼ぶことにしよう。なんか犬っぽいし。

 などと思っていたらイヌころが不満そうな顔でこちらを見つめていた。どうやら声に出ていたようだ。

 だがしかしあだ名を変更する気はない。

 というわけでお前は今日からイヌころだ。

 

「誰がイヌころだ! 私にはちゃんとゼノヴィアという名前がある!」

 

 わかったイヌころ。

 

「だから! ゼ・ノ・ヴィ・ア!」

 

 それからしばらくイヌころと戯れつつ、一日を過ごした。

 さーて、明日は何すっかな~

 

 ………時間が少し進みま─『キングクリムゾン! この世界には結果だけが残る!』─!? 誰だ! 一体誰が俺の仕事を奪っているんだ! …………

 

 翌朝!

 今日も今日とて平和を噛みしめながら、最近グレモリー先輩と一緒に生活できてることで更に変態行動に磨きがかかってきている兵藤を女子に頼まれ絞めつつ過ごしていると、放課後に木場ちゃんが教室にやってきた。

 なんでも教会の関係者がこの町に来ているらしく、悪魔に関係を持っている俺にもきてほしいと。

 え~。行かなきゃ──ダメ? ですよね~。

 そんなわけで俺は木場ちゃんに連行されてオカルト研究部にレッツゴー──あっ、引っ張らないで! 伸びる! 制服が伸びるから! 逃げないから! というかなんか木場ちゃん機嫌悪くない!?

 

 ………移動中………

 

 木場ちゃんに引っ張られながら部室にぶっ込まれた俺なわけですが、部室に押し込まれるなり変な二人組がいたのに目がついた。

 グレモリー先輩曰わく教会のエクソシストとのこと。

 えー、マジ? こいつらもフリードとか言った変態と同じなの? イヤだな。というか、あれ? 青髪? 一人は見たことが───あっ!

 イヌころ! イヌころじゃないか!

 

「ゼノヴィアだ!」

 

 いやー、思わぬところで再会したなぁ~。んどしたん、お前ら?

 何? 教会関係者と知り合いだったのかって?

 あぁ、路頭に迷ってたイヌころに餌を与えてやったぜ!

 俺の回答を聞くなりグレモリー先輩たちは頭を抱えだし、イヌころは連れの痴女に笑われていた。

 うーむ。見事な混沌な光景だな。

 で、イヌころよ。お前何しにここに来たんだよ。

 俺が訪ねると、もう諦めたのか、イヌころと相方の痴女がここに来た理由を話し始める。

 ほうほう、聖書に載るくらいの化け物堕天使のコカビエルや神父に教会が保管していたエクスカリバーが盗まれたのか。

 しかもそのエクスカリバーが三大勢力大戦でポッキリ折れて打ち直して七本なっていると。

 そんでもって痴女の方は兵藤と幼なじみなのか。

 はっきり言って兵藤と幼なじみということ以外話が突拍子も無さ過ぎて把握しきれない。

 というかエクスカリバーって本当にあったのか。ということはアーサー王もいたの? 『エクスカリバー!!』とか言ってビームだしてたの? 何それ怖い。

 そしてイヌころは最後にこの件は教会のみの問題だから俺たちに手を出してくるなや俺たちが堕天使と手を組んでないのかと言ってきた。一般人である俺も悪魔と繋がっていたため怪しいと。

 その言いように俺を含めた痴女とイヌころ以外の心が怒りで一つとなった。

 かっちーん。さすがにお人好しでもその言い方は怒るぞ。

 つーか何だ? 俺たちもしくは俺があの痴女や変態的な種族と繋がっていただと? ふざけんなっ! こちとらあの変態どもにどれだけの恨み持ってると思ってんや! 喧嘩売ってるなら買うぞコラ! 二束三文で殺り合うぞ!

 しかもイヌころと痴女は見せびらかせるように七本になったエクスカリバーの内二本を取り出したり、シスターちゃんが昔悪魔を助けたことで魔女の烙印が押されたのなんだのでエクスカリバーを突き立ててきた。

 その様子に普段は女性にだらしない兵藤と、なぜか木場ちゃんが怒りを露わにする。無論俺もだが。

 よろしい。そこまで人を馬鹿にするなら抹殺だ。

 ということで俺たち三人は教会メンバーと試合する事となった。

 

 ………再び移動中~………

 

 さーて、試合のために旧校舎の広場的な場所に来たわけなのだが、どうやって試合するだろう。

 こっちは兵藤、木場ちゃん、そして俺の三人。

 対して向こうの痴女と愉快なイヌころは合わせて二人。

 数合ってなくね?

 準備をしているイヌころにそこのところを訪ねると、三人で向かってこようと悪魔やその間者に負けるわけが無いだろうと自慢げに鼻で笑われた。

 かかかか、かっちーん!

 もうだめだね。人をそこまで馬鹿にするなんて、俺の怒りはMAXハートになっちまったよ。いくらシロと同レベルのウルウルを持っていようとこりゃダメだわ。人としてなんかダメだ。……いいぜ、そこまで言うんだったら後で数に負けたとかほざくなよイヌころ!

 売り言葉に買い言葉。激しく啖呵切った俺はズカズカと効果音が出せそうな勢いで兵藤たちの元に戻る。

 そんでもって思いを一言。

 よっしゃー! 兵藤、木場ちゃん! この試合負けるわけにゃーはいかん! 俺は男として! お前等は悪魔のプライド的に!

 俺の思いに答えてくれたのか兵藤も若干よくぼう溢れた変態顔で同意してくれた。しかし木場ちゃんは聞こえて無いのか上の空でなにやらぶつぶつつぶやいている。なんか怖い。

 ………ツンツン

 そんな木場ちゃんの肩をツンツンし、ようやく俺に気がついて振り向く木場ちゃんに対して、てりゃ!

 ────ふにぃ

 振り向きざまに人差し指指を頬にむけてトラップを設置して見事に引っかかることに成功! やったね!

 

「ふにゃ!? ──なにするんだい新月君」

 

 いやさ、なにやら思いつめてたみたいだから、つい。

 

「ついって。まったく君は」

 

 でもよ、緊張はほぐれただろ?

 

「………何のことかな」

 

 ありゃ、どうやら俺のほぐし方は間違っていたのだろうか、木場ちゃんはスッと俺から少し離れて行った、

 おっかしーな。妹にしてやったら結構喜んでくれたんだけどなぁ?

 まあなぜか妹は振り向くと同時に俺の指を咥えるという離れ業を披露してくるが。一体何を思ってるのか未だに理解できん。指からポテトの味でもしてるんだろうか。

 そんなこんなしている内についに試合時間となった。

 おっしゃー! お前等! 気合い入れて行こうか!

 俺のかけ声と共に兵藤が幼なじみの痴女に、木場ちゃんはイヌころに向かって行った。

 速ぇ!? なんと、そこまで勢いよく行くとは! 勝機があるんだな! こりゃ期待できるぜぇ!

 なんて思ってた時期が俺にもありました。

 勢いよく欲望丸出しで飛び出した兵藤は痴女の絡め手であっさり負け、木場ちゃんは本来スピードで翻弄するはずが何を思ったのかパワー勝負に挑んでこれまたあっさりと負けた。

 やっぱりねー。そんな気がしたもん。俺も勢いで挑んで勝った試しなんてない。むしろ殺されわ。

 さーてと、こりゃ俺が仇討ちに行きますかね。

 兵藤と、なにやら絶望仕切った顔をしている木場ちゃんの二人を下げさせ、俺が二人と相対する。

 あっそうそう、兵藤お前後で説教な。欲望丸出しで試合とかふざけてんのか? スポーツマンシップの欠片もない姿をさらしやがって。その腐った性根を叩き直してやるから覚悟しとけよ。

 

「なん………だと……」

 

 なにやらバカの悲痛な声が聞こえた気がしたが、気のせいだと思って無視する。

 んじゃまぁ、やるとしますかねぇ。

 俺が構えをとると、イヌころはかかってこいとばりに指をクいっと動かしてきた。

 ぷちーん。

 切れた。明らかに何か決定的なものが切れた音が聞こえた。

 もはや俺の頭にはある単語しか存在しない。

 見敵必殺! 見敵必殺じゃボケー!! 俺の怒りは有頂天に達したぞー!!

 さっきまでの勢いで向かって行って成功した試しがないことなどそっちのけに俺は勢いよく二人に向かって飛び出した。

 別に反省が無いわけじゃーない。激しい怒りによって心理にたどり着いたのだ。

 要はあれだろ? 向こうがこっちをしとめる前にこっちが殺ればいいんだろ?

 もはや考え方がチンピラ同然の気がするが知らん! 全て勝てば良かろうなのだぁ!

 足に魔力を限界までチャージしていく。

 まだまだぁ! 俺の怒りはこんなもんじゃあねぇ! 更に限界を超えてチャージ!

 徐々に足からスパークが迸っていき、肌で感じるほどヤバいレベルで魔力がたまっていく。

 暴発寸前でチャージを終わらせ投擲準備に入る!

 チャージ完了! 受け取りやがれぇ! 俺の怒りとスポーツ魂の叫びをっ! 松岡! 陸上魂オーバーキャノォオオオオオオ──ンッ!!

 某翼少年もしくは超次元サッカーのシュートのように俺は脚を思い切り振り切って魔力弾を発射!

 イヌころは手に持つでっかいエクカリバーデストロイヤーだとかなんとかで迎え撃とうとしている。

 パワー勝負か。受けて立とう!

 俺の魔力弾とイヌころの聖剣がぶつかり合った。

 激しく閃光を放ちながら、両者一歩も譲らずに拮抗しあう。

 負けるな! 俺の怒りや陸上への思いはこの手度じゃ無いだろう! もっと爆発させるんだぁ! ファイヤー!!

 俺の思いに応えるように魔力弾のエネルギーが更に高まる!

 勝てる! これなら勝てる! いっ───けぇぇええええッ!

 剣と魔力弾。

 迎えた結果は───

 パギィィィイイイイイイィッ!!

 ───共に消し飛ぶという結果に終わった。

 …………………………………………は?

 

『……………………………』

『……………………………』

 

 予想外の結果にこの場にいた全員が沈黙する。

 ちっ、沈黙が重い!

 ……………に、逃げるなら今しかない!

 そう思った俺は即座に戦線を離脱した。

 背後から『エクカリバーがぁぁぁぁぁあっ』って叫びが聞こえたのは気のせいだと思いたい。

 

 再び翌朝!

 昨日のこともあって若干学校というよりオカルト研究部に生きたくないなぁ~などと思いつつ日課であるシロの散歩をしていれば、とある人物に遭遇した。

 

「ありゃりゃ? ひょっとしてひょっとしてこの僕ちんに有り得ない攻撃をしてきたお兄ーさんではあーりま───へぶぅっ!?」

 

 とりあえずムカつくので一気に接近してニーを顔面にお見舞いする。

 そう、以前シスターちゃんを助け出すときに何度も何度も俺を殺してきた変態神父に遭遇したのだ。

 朝っぱらからその面見せてくんなよ。腹立つから。

 とりあえず顔面ニーでしばらくは起きてこないと思いその場を立ち去ろうと背を向けると、嫌な空気を感じ取った!

 これは───殺気! ヒャオッ!

 振り向きざまに回し蹴りをするも空振りに終わる。

 何だと? 誰もいない? なら一体あの殺気は───あれ? なんか、お腹がもの凄く熱いんですけど───ってぇ、なんじゃこりゃぁぁぁあ!

 下を見てみるとあらビックリ! 金ピカの剣が俺のお腹を貫いているではありませんか。

 そして恐る恐る振り向くとそこにはしてやったりと嫌な笑みを浮かべている神父が─────がく……

 

享年17歳 死亡原因 刺殺。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン36

 

 刹那の懐中時計! 貴様の未来を予測する! ふっ飛んでいけやぁ! そんでもってお釣りの松岡陸上魂キャノン!

 チュドォォ───ンッ!

 ふぅ、これでよしと。悪は滅び去った。

 殺される当日の目が覚めるところに戻っていた俺。

 今回は普通に不意打ちで殺されただけなので刹那の懐中時計を使用して出会いと同時に怒涛の蹴りの連打の後上空に打ち上げ、止めに松岡陸上魂キャノンをお見舞いして余裕で突破。

 明らかにオーバーキルではあるが変態相手なので罪悪感など皆無だ。むしろ社会貢献したという満足感しかない。

 さーて散歩の続きと───って、あれ? これは……

 散歩に戻ろうとするも足元に何かあるのに気づいた。

 立ち止まって拾ってみるとそれは前回俺を突き刺してきた金ピカの剣であった。

 握ってみると体がすこぶる軽くなった気がする。というかもの凄く調子がいい。今なら陸上の自己ベストを軽く上回れる自信が溢れてくる。

 どうやら俺が前回あの変態から殺されたのはこの剣の恩恵があったからだな。こんだけ身体能力が向上すれば背後をとるなんて余裕だもん。

 しっかし体が軽くなる能力とは。ふむ、便利だしもらっとくか。どうせあの変態神父の持ち物だし大丈夫だろ。それに剣か──溶かして靴底にでも仕込んでみるか? その方が脚技を主とする俺にとっても使いやすいしな。よしっ! 今日の学校帰りにでも靴屋のおっちゃんに相談してみるか!

 とりあえず剣を溶かしやすいように粉々にする。

 パウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウッ! そんでもって発っ!!

 テッテレッテレー♪

 金ピカの剣は見事粉末となんかよくわかんないクリスタルに進化した!

 しかしクリスタル的な何かは何なのであろうか。どうあがいても壊れそうになかったし……しゃーない、一応保管しとくか。今後なんかに使えるだろ。

 

 そんでオカルト研究部に何にも言われることなく迎えた放課後。

 俺は兵藤に用事があると伝え、急いで靴屋に向かった。

 その靴屋は俺がガキの頃から陸上のスパイクを買っている老舗の名店なのだ。

 靴屋についた俺は早速オヤジに粉末を渡し、靴に仕込ませられるよう頼んだ。

 オヤジも中二心に惹かれたのか二つ返事で了承。しかも明日までには造ってくれるとのこと。いやー、やっぱり持つべきはプロの知り合いだね。

 

 

 シロの散歩や新しい靴に慣れたり、のんびりとした日々を満喫していると、とある事件が起きて、俺はオカルト研究部の部室に呼ばれていた。

 なんと木場ちゃんがグレモリー眷族から出ていったんだと。

 何でもそれは木場ちゃんの出生に関わることらしい。

 詳しくは教えては貰えなかったが、どうやら聖剣計画とかなんとかの計画で同郷の友人を全て失ったそうだ。

 それで聖剣に強い恨みを持ち、その原因となったオッサンがこの町にいるのを知って一人で行動する事になった、と。

 そんでもって俺にも木場ちゃんを探して止めて欲しいと頼まれた。

 まあ余裕で断わるけど。好きにさせればいいじゃん。

 俺の態度に兵藤は少し切れ気味に理由を訪ねてきたり、グレモリー先輩も不機嫌そうな顔を向けてきた。

 やれやれ。兵藤よ、お前なら分かるだろ。お前は俺が何と言ったところでおっぱいを追いかけるのをやめないじゃねーか。それにグレモリー先輩、あんたもあんたで親の決めた婚約が嫌だから俺たちを巻き込んでレーティングなんチャラをしたのを忘れてはいないか? 木場ちゃんだって同じ事。本人が決めて本人が蹴りつけに行ったんだ。止めるなんて野暮だぜ。というかそんな事できるぐらい俺らは偉くないだろ。

 俺の言葉に思い当たる節が多大にあるために二人はばつの悪そうな顔をして黙り込んでしまう。

 心配する気持ち故に俺に頼んだことは俺もわかっている。だから木場ちゃんが危ない目に遭わないように見守るくらいはするさ。それでいいだろ?

 そういい残し、俺は部室を後にした。

 部室を出て程なくすると、なんと兵藤がこっちに向かってやってきた。

 おー兵藤、どうしたよ。

 すると兵藤ばかり何を思ったのかいきなり頭を下げてきた。

 いきなりどうした? まさかとうとう頭がおかしくなったのか?

 訳を聞くと、なんでも俺の事を勘違いしていたから謝りたがったみたいで、身勝手で融通の効かない野郎だと思っていたようだ。

 そうか。若干思うところはあるが、別に俺は普通に思ったことを口にしているだけだ。気にすんな。さっ、木場ちゃん探しに行くんだろ?

 兵藤は「あぁ」と頷いた後「どうやって木場ちゃんを探すんだ?」と聞いてきた。

 ふふふ、俺が何も考えなしにあんなことを言ったと思っているのか? いた? あぁそう。まぁいいや。安心しな。こっちは人捜しのプロフェッショナルがいるからな! 

 人払いの魔法をやった後、結構前に教えて貰った使い魔召喚の魔法陣を足元に展開する。召喚するのは無論白いあいつだ!

 頼むぜ、シロ!

 バーンといった効果音が似合いそうな光の演出と共に愛くるしい瞳を持つ白い子犬が現れた。

 さぁシロ! 木場ちゃんを捜すんだ!

 

『あんっ』

 

 俺の命令にシロは一言吠え、これまた愛くるしい鼻を使って匂いをたどりだす。

 

『あんっ!』

 

 やがて見つけだしたのか、もう一度吠えると駆け出した。

 さて、俺たちも行くとしますか。

 

 シロについて行くこと数十分。

 意外と直ぐに木場ちゃんは見つかった。

 うん、見つかったは見つかったよ。

 なぜか包帯だらけの変態神父と戦っている状況であったけど。

 見た感じ若干木場ちゃんが劣勢だ。

 割と真面目に何があったよ。

 とりあえず兵藤と共に木場ちゃんを助けに向かう。

 以前やられた仕返しの意味も込めて新兵器である靴を履き、準備完了。

 おーい変態! サッカーしようぜ! お前ボールな!

 

「っ!? そ、その声は───フキャラッハッ!?」

 

 一気に近づくと同時に変態の顔面をボールに見立てて一気に蹴り抜く!

 新作の靴によって本来の三倍に近い近いスピードに神父は反応できるはずもなく、思い切り俺に蹴られ、錐揉み回転しながら近くのコンクリート塀に埋まった。あは、マジウケる。

 さーてと次は何して遊ぼう──あっ! 逃げた! チッ! 次会ったら覚えて───ん? どうした木場ちゃんに兵藤よ、そんな人外を見るような目をして。なに? いつからそんな化け物になったのかって? おいおい兵藤よ、俺は今も昔も人間だ。え? その光る靴はなんなのかだって? あぁ、さっき蹴飛ばした神父から盗んだ剣から造ったが、それが何か? いろいろ含めてお前が人間か信じられないだって? よろしい、ならば戦争だ。慈悲など無いぞ。徹底的にやってやるが? やるか?

 とまあそんな冗談などは放っておいて、木場ちゃんの元に向かう。

 だから兵藤よ、冗談なんだからそんなに恐怖に顔を歪めるな。俺が悪かったから。

 木場ちゃんは俺たちを見るなり放っておいてくれなど言ってきた。

 全く、人の気持ちも考えずによくそんな事が言えるな。………お前がそんなこと言うな? 知らん! それはそれ、これはこれだ。

 一人開き直って話をかけるも、木場ちゃんの機嫌はさらに悪くなる。悲しいことに、木場ちゃんの話を聞くにつれてだんだん事の原因の一端が俺にもあることが発覚してしまった。

 えっ? 聖剣を壊した人にそんな慰め言を言われたくない?

 あれ? そう言えば木場ちゃんは聖剣計画っていうよくわかんない聖剣の担い手を造る計画の生き残りであり失敗作であるため聖剣を憎んでおる。

 俺、その憎んでる聖剣を木場ちゃんは負けたけど壊したわ!

 はっきりした。今の現状況俺単なる嫌な奴だと。

 と、とりあえずあれだ! 聖剣をぶっ壊して仇討ちをするにしても無計画はダメだ! だからさ、もうちょっと計画性立てて行動しようぜ、な? 別に木場ちゃんが仇討ちしに行くのに反対しているわけじゃない。ただ、なんでもかんでも一人で背負い込むなよ。俺たちは、友達だろ? それにお前にもしもの事があったらみんなが悲しむ。俺も兵藤も、グレモリー眷族みんなが。それ以上に、お前の仇を討つ理由の友人たちが悲しむんだ。それを理解しろよ。思ってくれる人がいる。悲しむ人がいる。だから、お前はもう、一人じゃないんだ。

 俺の類い希なる話術の甲斐もあり、なぜか顔を真っ赤にさせてはいるが、木場ちゃんの説得に成功した! ふっ、さすが俺だぜ。以前妹が落ち込んでたときに励ました経験が役に立ったな。結果としてなぜか妹も木場ちゃんと同じように顔を真っ赤にしたが。おそらく今までの自分を振り返って恥ずかしかったのだろうな、多分。

 さて、木場ちゃんの説得したことにより実質的に俺たちによる聖剣破壊計画と仇討ち計画が同時に始動したのだが、問題が少し残っていた。

 勝手に聖剣破壊に行動してしまえば教会に楯突くことになり、最悪戦争に突入してしまう。

 さすがにたかだか剣一本如きで戦争など冗談ではない。

 なので俺たちは勝手に行動しなければいいということで、イヌころたちに話を通す事にした。そうすれば身勝手に行動したことにはならないだろ? むしろ大義名分が生まれる。

 さてと、もう一回頼むぜシロ! 探すのはイヌころだ!

 

『あんっ!』

 

 シロについて行くこと数分。イヌころたちはすぐに見つかった。

 

「御慈悲を~。迷える使徒に御慈悲を~」

「ひっく………えっぐぅ……えくすかりばーが~………」

 

 痴女は手に器を持ち何やら物乞いを、そして連れのイヌころに至っては刀身が無くなり柄だけのエクスカリバーを握りしめ泣いている。

 その光景に俺たちは一様に手を顔に当て天を見上げた。

 ………………………見てて凄く痛々しい。主に胸が。

 って、いつまでも惚けてる訳にはいかん。話しかけなければ。

 話しかけるとあっさり会話に応じてくれるイヌころたち。物乞いするぐらいなら以前と同じく腹ペコだろう。というわけで俺たちは近くのファミレスに場所を移した。

 

 さて、ファミレスについた俺たちは何品かイヌころに食事を奢り、早速本題に入る。

 イヌころよ、今回の聖剣の問題についてだが、こちらも全くの無関係というわけでは無いことがわかった。だから俺たちも協力させてもらえないか? 勿論手柄はお前達にくれてやるし其方に敵対すれば何時でも襲ってきてくれても構わねぇ。どうだ?

 

「ひっく………えくすかりば~………」

 

 ダメだ聞いちゃいねー。

 そりゃさぁ、俺もエクスカリバーをぶっ壊したのは悪いと思ってるよ? でもさぁ、そっちから挑発してきたよね? 悪魔やその間者に負ける筈か無いって、かかって来いよ? って感じに指動かしてきたよね? それだから一概に俺だけが悪いってわけじゃ──

 

「えくすかりばぁ~!」

 

 ─────あぁもう! わかったよ! 俺が悪かったです! ごめんなさいでしたー! 

 泣き落としに耐えきれずとりあえず謝罪をしたはいいのだが、未だにイヌころは泣き止む様子がない。

 はぁ、どないせいっちゅうねん。なあ兵藤の幼なじみよ、エクスカリバーはもう元に戻ることは無いのか?

 お腹いっぱい食事したことで以前部室で合ったときより比較的話しかけやすい痴女に話をふる。

 

「うーん。時間をかければなんとかならない事もないよ。刀身が無くなってもコアのクリスタルさえ無事だったら何度でも再生可能だからね~。まあそれでも結構時間かかっちゃうけど」

 

 なんだよ、直るのかよ! それなのにイヌころはあんなに泣いてんのかよ! 

 ってぇ、ちょっと待て。今何やら聞き逃せない単語が聞こえたぞ。クリスタル? まさか………ねぇねぇ幼なじみさん? そのクリスタルってまさかこんなの?

 俺はポケットから神父から盗んだ剣を粉にしたときに出てきたクリスタルをテーブルに置く。

 するとどうでしょう。幼なじみさんとイヌころは目を見開き、

 

「「エ、エクスカリバーッ!?」」

 

 思い切り叫びだし、どこで手に入れたなど問い詰められた。

 あぁ、やっぱりね~。

 とりあえず二人に落ち着かせるよう言い聞かせ、事の顛末を話し出す。

 ついこの前だったか。先ほど俺が蹴り飛ばした男と早朝に出会してフルボッコにしたときに足元に金ピカの落ちていて拾っのが始まりだ。俺は剣だと使いにくいと思って…………スパイクに改造してしまいした。まさかエクスカリバーだとは思ってなくて………ほんとごめんなさい。

 俺の言い訳に二人はポカーンと口を開けっ放しで放心し、木場ちゃんに至ってはハイライトの無い目で「スパイクに改造させられるような剣なんかに僕たちは弄ばれたの……ハハ……」などとぶつぶつ呟いている。

 なんか………割とガチでごめんなさい。

 

 一応会合は俺のエクスカリバー壊しちゃってごめんなさい事件を最後に終了した。

 盗まれたエクスカリバーがクリスタルになったとは言え取り戻したのだからイヌころたちは帰ってもいいんじゃね? と思っていたが、どうやら元凶を倒すまで帰れないそうだ。

 エクスカリバーぶっ壊した俺が言うのも何だが、教会も鬼畜だな。

 そしてその元凶には木場ちゃんも恨みが多大にあるらしく、エクスカリバーのクリスタルあげるかわりに元凶をぶっ倒すのに協力させてもらう事にした。

 向こうも悪魔と協力するのはマズいが、ドラゴンや人間と協力するなとは言われてないと屁理屈をこね了解してくれた。素直にお願いとは言えんのかお前は。

 

 そんでもって次の日の今日。

 兵藤がどっから拾ってきたのかは知らない生徒会の匙や塔城と一緒に元凶探しに出かけていた。

 兵藤が捜索につれてきたって事は匙とやらも悪魔なのか。

 しかし塔城はわかるが匙よ、お前なんで来たん?

 ちょいと興味がわいたので少しお話ししてみる。

 ふむふむ。木場の出生やら何やらで共感した、と。それに支取先輩の眷属で兵士なのか。

 というか素で生徒会長の支取先輩が悪魔って事がビックリだよ。

 どうやら学園はいろんな意味で悪魔に支配されていたのか。

 それはさておき、ふーむ。理由を聞くにどうやら匙とやらは兵藤より人格ができている悪魔みたいだな。関心だな。

 

「俺だって木場さんが心配だよ!」

 

 うっさい。どうせ心のどっかには下心があるんだろうが。

 さて、これで聖剣探しの手数は二人増えたが、やることは地味だぜ?

 木場ちゃんも含めて五人となった俺たちは早速捜索を開始した。

 まあ探すといっても釣りみたいなものだ。

 元凶側はエクスカリバーを盗むぐらいだから、エクスカリバーを持っているとされるエクソシストに扮していれば襲ってくるのでは? といった感じで俺たちは絶賛エクソシストの格好して彷徨いている。辛かったのは小さな男の子が「ママ~あの人たち変な格好している~」といわれ、その後母親と思われる人物から「しっ! 見ちゃいけません!」などと冷たい視線を受けたことだ。

 しかし恥ずかしい思いをしながら探しているというのに、思いのほか見つからん。というかそもそもダンジョンのボスキャラクターって道端にホイホイ出てくるわけが───

 

「あひゃひゃひゃ! 教会のエクソシストはっけーん!」

 

 ──あったよ。というかまたお前か!

 いや待てよ。こいつが狙ってきたと言うことは、こいつも関係者ということだよな。なら、折檻すれば元凶の居る場所吐くんじゃね?

 おーい! 変態~ちっょくらお兄さんとお話しない? 大丈夫大丈夫。三十分ぐらいで終わるからさ~。

 

「ハッ!? こここ、この声は───戦術的撤退!」

 

 しかし回り込まれてしまった。残念。魔王からは逃げられない。

 さーてエクソシストさんよぉ~ちょっと聞きたいことがあるんだけど~教えてくれない? 教えてくれないと凄いことになるよ? ………主にお前の脊髄が。

 いい笑顔をしつつ話しかけると変態は顔を涙で歪ませ、何でも話すと言ってきた。

 ふっ、素直な奴は嫌いじゃないぜ。ならお前の雇い主の居場所と目的教えてくれない? 俺たちちょっと困ってるんだよ、ね? ふむふむ。今は駒王町にいてこの町を吹っ飛ばす算段をコカビエルって堕天使と画策していると───やべぇじゃん!

 どうやら事情は思っていた以上にヤバかった。というかこの町の壊滅的な危機じゃ──あっ?!

 

「うひゃひゃひゃ! 今度こそ戦略的撤退だぜ! アデュー!」

 

 ちょっとこの先に待ち構える危機的な状況を悲観していたら、隙をつかれて変態神父に逃げられてしまった。

 畜生! 計画がわかっても元凶の居場所わかんなきゃ止められないだろうが! 神父ぅぅーカムバッーークッ!

 俺の叫び声は虚しく男空のかなたへとかき消されていった………。




主人公が新しく手にしたアイテム

天翔のスパイク
天翔の聖剣を利用して作られたスパイク。聖なる一撃は絶大だ!

松岡陸上魂オーバーキャノン
限界以上な魔力を込めた一撃。街一つ滅ぼせる。

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