BLEACHへの転生者   作:黒崎月牙

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お久しぶりです!
約1カ月振りですね!

さて、今回は茜雫入隊の話です。
茜雫の仕事風景も描写したかったのですが、時間的にここらで投稿しないとマズイな、と思いました。

リアルで仕事が大変です。
恐らく、1カ月に1~2回の投稿かな~・・・。
そんな亀更新の作者ですが、よろしくお願いします!


新人が入ってくることに意味がある

茜雫を救出した俺たちは、現世から尸魂界に戻り、四番隊で治療を済ませた。

そして、翌日、茜雫救出に向かった十三番隊御一行は総隊長に呼ばれていた。

 

「この愚か者共がっ!!!」

 

『すみませんでした・・・』

 

俺、ルキア、海燕さんは綺麗に腰を曲げ、謝罪をする。

浮竹隊長は苦笑いをしていて、俺たちの後ろで茜雫がオロオロと動揺していた。

 

まあ、予想はしていたけどね・・・。

 

「お主ら、己が何をやったか、自覚はあるのかっ!!!命令を待たず、独断行動!身勝手すぎるわっ!!!」

 

『本当に、すみませんでした・・・』

 

総隊長はご立腹です・・・。こえ~~~・・・。

謝ることしか出来ないから、誠意を込めて謝罪する。

 

「ま、まあまあ、先生、彼らも状況を見て、考えた行動ですので、大目に-----」

 

「お主もじゃ!浮竹っ!!!」

 

「ええっ!?」

 

「隊長不届きのせいじゃろう!!!もっと、指導をせんかっ!!!」

 

「そ、そんな~・・・」

 

あらら、珍しく浮竹隊長も怒られてる。

隊長不届きって言うけど、病持ちだしね。

ほとんど、海燕さんに任せっきりだし。

どうしようもないよね、うん。

 

それから、ガミガミと数十分間説教をされた後、雀部さんが総隊長に提案する。

 

「総隊長、本題に移した方がよいかと」

 

「ふむ、そうじゃのう。お主らの罰は最後に言い渡す!覚悟しておれっ!」

 

どうやら、本題に移るようだ。

ふう、やっとこれで少しは気が抜ける。

あ、でも、最後に罰を言い渡されるのか・・・。

はあ、もうやだ・・・。

 

「元思念珠茜雫よ、前へ出よ」

 

「え・・・!?あ、は、はいっ!?」

 

茜雫は突然呼ばれたせいか、慌てて、総隊長の前に出る。

緊張しているのか、珍しくカチコチだ。

 

「お主にいくつか聞かねばならぬことがある。今のお主は思念珠ではなく、死神の力を持った魂魄でよいな?」

 

「は、はい」

 

茜雫のことは大まかに報告してある。

アキや平子さんのことは言えねえからな。

だから、大まかに、だ。

 

「では、再び思念珠に戻ることはないのじゃな?」

 

「は、はい。(多分ね・・・)」

 

「ふむ。そうか・・・」

 

総隊長が髭を擦り、何か考えているようだ。

 

さて、どうでるのやら・・・。

 

「・・・今後、お主はどうありたい?」

 

「え・・・?」

 

「お主はどうしたいのかを聞いておるのじゃ」

 

「・・・どうしたいか・・・」

 

そう来たか。

まさか、総隊長が決めるんじゃなくて、茜雫に決めさせるとはな。

恐らく、茜雫は-----

 

「・・・死神に、なりたいです・・・」

 

「ほう、理由を述べよ」

 

「・・・私には死神の力がある。この力を無駄にはしたくない。それに、尸魂界には来たばかりで、右も左もわからない。知っている人が近くにいてほしいから・・・です」

 

「ふむ・・・」

 

まあ、そうだよな。

誰もがわかっていた答えだ。

総隊長もわかっていただろう。

 

「・・・難しいの」

 

「え・・・!?」

 

「っ!?」

 

茜雫は驚いた。

俺もだった。

 

難しい・・・だと!?

 

「貴女は元は思念珠だ。いくら死神の力があるとは言っても、不可思議な存在。そのような人物を護廷に入れることは、不安要素がたくさんあるわけだ」

 

「そ、そんな・・・!?」

 

「そうやって代々護られてきたのだ。貴女を疑っているわけではないが、もし、内部で問題が発生したとする。その原因があなただったら、我々は入れなければよかったと、後悔するのだ。それを防ぐ意味もあり、貴女のような存在の入隊を素直に受け止めることはできない」

 

「・・・・・・・・」

 

雀部さんがそう説明してくれた。

ショックだったのか、茜雫は俯いていた。

 

なんだよ、それ・・・。

そんな理不尽な答えがあるかよっ!

 

「ま、待ってください!茜雫は-----」

 

「黙れ。儂は貴様と話しているのではない。話に割り込むな!」

 

「くっ・・・!」

 

俺が弁明しようとしたが、総隊長に止められた。

 

おいおい・・・、嘘だろ・・・。

これじゃあ、茜雫を護ったって、何の意味もねえだろうが!

 

だが、その後に、総隊長が不思議な質問をした。

 

「お主、どうしても死神になりたいか?」

 

「・・・はい・・・」

 

「・・・確か、斬魄刀を所持しておったな?」

 

「・・・?そ、そうですけど・・・?」

 

「・・・名を何と申す」

 

「弥勒丸です・・・」

 

「!?」

 

茜雫の答えに総隊長が目を見開き、驚愕した顔をした。

 

珍しいな、あの総隊長が驚くなんて。

一体、どうしたんだ・・?

 

「そうか・・・、弥勒丸か・・・」

 

「あ、あの・・・?」

 

「ふむ・・・」

 

再び、髭を擦る総隊長。

何か、考えているようだ。

 

数分の沈黙の後、総隊長が口を開いた。

それは、驚きの言葉だった。

 

「・・・お主の対処を言い渡す」

 

「!」

 

「お主の対処は-----」

 

「・・・・・・・・・」

 

(茜雫っ!)

 

茜雫は眼を瞑り、覚悟をしているようだ。

どんな酷い対処でも受け入れるかのように・・・。

俺も含め、他の皆も固唾を飲んで、見守る。

 

「-----5日の猶予を与える」

 

「・・・は?」

 

茜雫はポカンと口が開いた。

俺だってそうだ。

総隊長はどういうつもりなんだ・・・?

 

「その間に死神の知識を頭に入れるとよい。そして、5日後、特別入隊試験を実施させようぞ。合格の際には、入隊を許可してやろう。勉学に励むとよい」

 

(やっ、やったっ!)

 

(よっしゃあ!!!)

 

茜雫はパァッと明るくなり、俺の方を見る。

俺もルキアも海燕さん、浮竹隊長も笑顔になった。

 

「喜ぶのはまだ早い。合格すればの話じゃ。不合格の際には-----」

 

「それでも、ありがとう!おじいちゃん!-----あ・・・」

 

わお・・・。

総隊長に向かって、おじいちゃん呼ばわりって・・・。

流石だよ、茜雫。お前だけだ、そう言えるのは。

ほら、浮竹隊長なんか、顔が青ざめちった。

 

「お、おじいちゃん、じゃと・・・」

 

「ご、ごめんなさい!つ、つい・・・」

 

「ホッホッホ!構わん。おじいちゃんで良いぞ!」

 

「本当!?ありがとっ!おじいちゃん!」

 

「ホッホッホッホ!」

 

あれ~?なんだ、この展開・・・?

総隊長、めっちゃ笑顔じゃん・・・。

あれか?意外と悪くなかったのか・・・?

茜雫を孫のように見えるのかもな・・・。

 

「それじゃあ、話も済んだことだし、俺たちはこれで失礼するっすね~」

 

「待てい!お主らの罰を言い渡しておらんだろうがっ!」

 

「チッ、覚えてやがったか・・・(そ、そうっすよね~。冗談っすよ~)」

 

「海燕殿、心の声と口に出している言葉が逆です・・・」

 

海燕さんんんんん!?

さり気無く、何言っちゃってんの~!?

せっかく、茜雫がいい雰囲気にしてくれたのに、台無しじゃねえか!?

ああ、浮竹隊長がアタフタとしている・・・。

・・・倒れないよね?

 

「さて、お主らの罰を言い渡す」

 

『(ゴクリ)』

 

どうやら、海燕さんの言葉は耳に入ってなかったようだ。ホッ・・・。

それはともかく、罰か・・・。

茜雫はともかく、俺たちはヤバイんだろうな~。

・・・牢獄行きかな?

 

「お主らの罰は-----不問とする!」

 

『・・・へ?』

 

え・・・!?

本当、聞き間違いじゃないよね・・・?

不問、だって!?

 

「お主らは身勝手な行動をしたが、ダークワンを倒し、茜雫を救い出した。結果的には世界崩壊を阻止できたものと同様じゃ。よって、その功績を見込み、不問とする」

 

『や、やった!』

 

俺たちは顔を見合わせ、ハイタッチをする。

 

た、助かった!

いや~、心臓に悪いな、こりゃ。

 

「しかし、油断するでないぞ!今回は不問じゃが、今後、同じことが起きれば、容赦なく、即刻、罰を与える!それを頭に入れ、精進するがよい!」

 

『はいっ!』

 

元気よく、返事をした。これ重要!

今回、総隊長は甘く見てくれた。

それに、感謝して、元気よく返事だ!

 

俺たちは一番隊隊舎を後にした。

 

「やったよ、京夜!私も死神になれる!」

 

「総隊長も言ってただろう。合格したらの話だ」

 

茜雫が喜びながら、俺に話しかける。

 

5日の間に、茜雫に死神の知識を与えなくちゃいけないんだ。

相当の量だな・・・。

 

「まあ、何はともあれ、全てが丸く収まったんだから、いいじゃねえか!」

 

「そうですね。総隊長には感謝しなければなりません」

 

海燕さんが俺に話しかけ、ルキアも混ざる。

 

まあ、確かに、結果オーライってやつかな?

 

「はあ・・・、海燕、茜雫、先生の前で何を言ってるんだ・・・。お陰で肝が冷えたぞ・・・」

 

「いや~、あん時は自分でもビックリしたっすよ~!自然と口が回ってたんすっから~!」

 

「でも、いいじゃない!おじいちゃん、笑ってたんだし!」

 

浮竹隊長は頭を抱え込んでいるのだが、そんな心情を知ったこっちゃない感じで海燕さんと茜雫は笑う。

 

あんたら位だよ・・・。

あんなことができるの・・・。

 

「病気以外で浮竹隊長が顔を青ざめたのは初めて見たぞ・・・」

 

「ルキア、俺もだ・・・」

 

さすが、しっかり者同士。

考えていることは一致するんだな。

本当、ヒヤヒヤしたぜ・・・。

 

「しっかし、隊長?今回、やけに総隊長、甘くなかったすか?」

 

「ああ、そうなんだ。あの先生がここまで甘くしてくれたのは、俺でさえ初めて見た」

 

海燕さんと浮竹隊長に同意。

それは俺も気になったことだ。

今回の総隊長、気味が悪い位に処罰が甘い。

 

「私の斬魄刀の名前を聞いてから、様子が変だったよね?」

 

「その通りだ。雰囲気も変わった気がしたな」

 

茜雫が俺に聞いてきたから、俺も意見を言った。

 

あの瞬間に何かがあったんだ。

総隊長に関する何かが・・・。

一体、何なんだろうな・・・?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の名は、雀部長次郎忠息。一番隊の副隊長であり、尊敬する元柳斎様に長年仕える死神だ。

・・・決して、影が薄くはないからな!

 

さて、今は元柳斎様、何かを思っているのか、空を眺めている。

 

今日の元柳斎様はいつも通りではなかった気がする。

あの思念珠だった茜雫という少女のことといい、独断行動を行った十三番隊の死神たちの処置といい、甘い。

いつも通りなら、厳しく、相応の罰を与えるはずだ。

それなのに、今日はどうしたのだろうか。

話が済んだ後も、雰囲気がおかしかった。

 

「元柳斎様・・・」

 

「・・・長次郎よ、これから話すことは儂の独り言じゃ。聞かぬでよい」

 

こうやって仰る時は、大抵聞いてほしい時だ。

長年、副隊長をやってきたからわかる。

全く、素直ではないのだから。

 

「はて・・・。あれは、いつになるのやら・・・。まだ長次郎が副隊長に就任する前の話じゃな」

 

元柳斎様は淡々と語りだした。

 

ということは、遥か昔の出来事なのだろうか。

 

「儂には当時、愛していた女がいた」

 

「!」

 

これには驚いた。

まさか、あの元柳斎様が愛する思い人がいたなんて・・・。

 

「彼女は、可憐であり、聡明。かつ、剣の才能は輝いておった。また、彼女は周りの者たちを明るく、元気にしてくれる存在じゃった」

 

そんな女性がいたなんて、初耳だ。

長年、死神をやってきたが、私にも知らないことがあるのだな。

 

「さらに、彼女は業務に対し、至極真面目であった。命を出せば、すぐに遂行し、全うする。儂は彼女の全てが恋しかった」

 

では、なぜ、そこまで想いになられておきながら、伴侶にならなかったのだ・・・?

・・・いや、元柳斎様は総隊長という名誉がある。

隊の者に恥じぬように振る舞っているからだろうな。

それに、元柳斎様は気軽に女に手を出すようなような輩ではないしな。

 

「ある日、東の森に虚が出現したという情報が入った。儂は彼女に討伐の命を下した。彼女の部隊は、そう安々と終わるものではないと思っていたからの」

 

「・・・・・・・・」

 

「じゃが、後々、胸騒ぎが起こってきたのじゃ。こんなこと一度もなかった。嫌な予感がすると・・・」

 

これは私の予想だが、話の流れから察するに、彼女は既に・・・。

 

「その時、伝令から通達があった。「彼女の部隊が苦戦している」と」

 

「・・・・・・・・」

 

「儂はすぐに向かってしまった。総隊長ではなく、1人の男として。脇目も振らずに」

 

こんな元柳斎様の話は本当に珍しい。

100年あるか、ないか、だ。

 

「現場に到着した時には虚はいなかった。残っていたのは、大量の血と死人だけであった」

 

「!?」

 

部隊が全滅っ!?

どれだけ、その虚は強いんだ!?

 

「儂が現場へ歩こうとすると、脚に何かが当たったのじゃ。それは-----紛れもなく彼女じゃった」

 

まさか、死んで・・・。

 

「彼女は微かに息をしておった。じゃが、左腕と右足がなかったのじゃ」

 

「・・・・・・・・」

 

「小さな声で彼女は言った。『私を殺してほしい』と・・・」

 

・・・もうすでに、生きれないと悟ったのだろう。

それに、生きたとしても、手や足がなくなってしまったら、死神を続けられないのだと嫌でもわかる。

 

「儂は首を振ったのじゃが、彼女は『総隊長の手で殺してほしい。戦場で花々しく散らしてください』と・・・」

 

・・・私の知っている、元柳斎様だったら-----

 

「儂は苦悩の末、斬魄刀を手に取り、彼女を殺した」

 

「・・・・・・・・」

 

「儂は泣き叫んだ。泣くのは生涯でたった1つ。最初で最後じゃったな」

 

そんな過去があったとは・・・。

しかし、それと茜雫にどんな関係が・・・?

 

「・・・茜雫はのう、彼女の面影と似ているのじゃ。そして、彼女の斬魄刀の名は・・・弥勒丸」

 

「っ!?」

 

そ、そんなことがあるのか!?

偶然と呼べばいいのか、奇跡とでも言えばいいのか・・・。

 

「じゃから、儂は何としてでも、茜雫を守る。彼女の魂の遺品のようなものじゃからな」

 

「元柳斎様・・・」

 

「はて、なんじゃ?儂は独り言を言ってただけじゃぞ?」

 

「・・・フフ、そうでしたね。私は何も聞いておりませぬ」

 

元柳斎様も愛する人には形無しのようだ。

 

しかし、これは好機だ、茜雫よ。

必ずや、合格してみせよ。

元柳斎様のために、必ず、な。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺たちは茜雫を引き連れて、十三番隊隊舎に戻った。

 

「おぉ~!ここが京夜たちが働いている所なんだね!」

 

隊舎を見て、茜雫は喜んでいた。

その様子を見て、浮竹隊長は上機嫌だ。

 

隊舎によって雰囲気も、光景も違うからな。

ここには池があるしな。

 

「ほら、茜雫、こっちだ。案内するぞ」

 

「うん!お願い!」

 

茜雫に隊舎を大まかに案内する。

これから茜雫はここで試験のために、死神のことを学んでもらう。

正式な死神になっていない茜雫には家がない。

だから、試験までは借り家として、隊舎に住んでもらう。

 

「―――――で、ここがお前が勉強する部屋だ」

 

「うわ~、何もない・・・」

 

そこは8畳位の部屋。

机しかなかった。

 

「当たり前だろう。遊ぶ訳じゃないんだぞ」

 

「わ~かってるって!ところで、教える人とかいるの?」

 

茜雫の疑問に答えたのはルキアだった。

 

「いるぞ。京夜の他に、私や浮竹隊長が助力しよう」

 

「あれ?海燕は?」

 

「海燕殿は隊長の代わりに忙しいのでな。逆に、隊長は身体は弱いが、博学だからな。勉学を教えるだけならば、できるのだ」

 

「要は、俺、ルキア、浮竹隊長の手でローテーションしながら、教える形だな」

 

ルキアの説明に俺が補足する。

 

まあ、海燕さんも全く来ない訳じゃないだろう。

顔出し位はする、って言ってたしな。

 

「よーし!なら、早速、取り掛かろう!」

 

「お、気合入ってんな」

 

「時間がないしね!ちゃっちゃっと終らして、試験に合格するんだ!」

 

ほほう、良い意気込みだな。

しかし、これを見ても、まだその口が言えるかな・・・?

 

「おし、それじゃあ、資料を出すか。―――――よっと」

 

ドスン

 

「え゛・・・」

 

俺が持ってきたのは、厚さ3センチ位の分厚い本が5冊。

 

「これだけではないぞ」

 

ドサッ

 

「うげっ・・・」

 

ルキアが持ってきたのは、同様な資料の量。

 

「よし、始めるか」

 

「ちょ、ちょっと待ったーーーーーっ!?」

 

「なんだよ?」

 

「え、あの、う、嘘だよね・・・?この量を全部やる気・・・?」

 

「そうだが?」

 

「何を言っておるのだ、茜雫?」

 

「ふ、2人とも・・・?当たり前だろって顔をされても困るんだけど・・・」

 

茜雫が動揺しているな。

そりゃ、そうか。

いきなり、分厚い本10冊分を相手にしましょう、って言っているようなもんだからな。

 

だから、説明をするべきかな。

 

「あのなぁ、死神になるまでには、数年の勉学と技術を身につけなくちゃいけないんだぞ?」

 

「それを勉学だけで死神になれるのだ。羨ましいぞ、茜雫」

 

「だ、だからって、5日でこの量を・・・」

 

「これでも、凝縮させて、まとめたんだぞ?」

 

「うえっ!?まとめてこの量!?」

 

まとめずに知識を頭に入れるんなら、短期間で終わるわけがないな。

しかし、俺たちがあんなに長く、頑張って死神になれた試験を、5日で、しかも勉学だけだなんて・・・。

他の死神たちに聞かれたら、嫉妬の目で見られるな。

 

「まあ、そんなに不安がることはない。5日の辛抱だ。その間は、俺たちが傍にいてやるから」

 

「はぁ・・・。頭が痛くなってきた・・・」

 

「おいおい、最初からそんなんで、どうするんだよ。やるのか?やらないのか?」

 

茜雫は頭を抱え込んでいたが、俺が聞いた途端、目の色を変えた。

 

「やらなくちゃ始まんないし・・・やってやるわよ!」

 

「その意気だ、茜雫!今日は俺がご指摘してやろう!」

 

と、こんな形で茜雫の特別勉強会が開いたのであった。

 

 

 

~~~8時間後~~~

 

「―――――で、始解とは斬魄刀との対話と同調。卍解は具象化と屈服。席官たちは、ほとんどの人たちが始解できる。隊長クラスになると卍解を習得しているな。まあ、一部例外はいるけどな。(剣八とか)」

 

「・・・・・・・・」

 

「お~い、聞いてんのか~?」

 

「もう疲れた・・・」

 

「あ、もう夜になってやがったのか」

 

これまでノンストップで勉強を教えていたからな。

そりゃ、茜雫もグロッキー状態になるか。

けど、まだまだ甘いな。

全く、最近の若いモンはなっておらんの~。

 

「そんじゃ、今日はここらで終わりにするか。お疲れ」

 

「うぅ・・・。まさか、こんなに大変だとは思わなかった・・・」

 

「何言ってんだ。俺たちはさらに大変な思いをしてんだ。まあ、流石に今日はやり過ぎたかな?」

 

休憩なしじゃ、流石に体が持たないか。

でも、時間がないのは確かだしな。

ノルマは1日2冊。

でも、今は1冊と半分。

もう少し、速度を上げないとイカン。

 

「やり過ぎだよっ!休憩もしないで、勉強するなんてっ!腰が痛いよ~!」

 

「それは悪かった。今度から自重する」

 

「全然、申し訳なさそうにしてないんですけどっ!?」

 

「でもよ、お前、時たまボーッと俺の方を見てきて、話を聞いてるかわかんねえんだもん」

 

「あ、あれは・・・」

 

 

 

~~~3時間前~~~

 

「―――――ということだ。わかったか?」

 

「う、うん」

 

「(本当にわかってんのか・・・?)ほら、試験に出そうなんだから、ノートに書いとけ」

 

「あ、そうだねっ!」

 

「ったく、ボーッとしやがって、しっかりしろよ」

 

「ボーッとなんかしてないもん!ちゃんと聞いてるもん!」

 

「わかった。わかったから。次行くぞ」

 

と、まあ、こんなやり取りをしていた京夜と茜雫。

そんな中、茜雫の頭の中はこうなっていた。

 

(う、うわっ!わわっ!気づいたんだけど、京夜と2人っきりじゃん!?)

 

茜雫は内心焦っていた。

まさかの好きな男と2人っきりで勉強中。

しかも、身体が触れるか、触れないかという距離感。

 

(あうぅ・・・。意識していたら、心臓がバクバクいってるよ~!)

 

チラッと京夜の顔を見る。

 

(よく見ると、京夜ってイケメンだよね・・・)

 

靡く銀髪、端正な横顔、さらに勉学も出来、技量もある。

あの厳龍を倒し、自分を護ってくれた。

その思いが茜雫の心の中で渦巻き、ついつい見惚れてしまう。

 

(・・・もう告白しちゃおうかな~・・・)

 

雰囲気に飲まれ、そんな考えが出てくる。

その瞬間、京夜が茜雫に聞いてきた。

 

「おい、茜雫。聞いてんのか?」

 

「えっ!?あ~、その~・・・」

 

「はぁ、もう1回説明するからな。これは-----」

 

(・・・京夜、凛々しいな~)

 

と、まあ、再び京夜の顔を見ては、京夜に指摘されるという繰り返し。

それが、途中あったのだった。

 

 

 

~~~そして、元に戻る~~~

 

「あ、あれは~・・・」

 

「あの時、俺の顔に何かついて-----」

 

「いや、何も!?」

 

「どうして、そんなに過敏に反応するんだ・・・」

 

茜雫がボーッとしてなけりゃ、もう少し捗っていたかもしれないな。

しかし、過ぎたことだ。忘れよう。

 

「茜雫、腰痛いんだろう?マッサージしてやるよ」

 

「ほ、本当に!?」

 

「あ、ああ、そ、そんなに嬉しいか?」

 

「うん!最高にっ!」

 

茜雫って、マッサージ好きなのか?

それとも、そんなに辛かったのかな?

 

(京夜からの誘いなんだ!断る訳がないよねっ!)

 

「そんじゃあ、うつむせになってくれ」

 

「はーい」

 

茜雫は寝そべり、ワクワクとしていた。

俺は跨り、腰をマッサージする。

失礼します。

 

「そんじゃ、押すぞ」

 

ギュム

 

「い、痛い!?」

 

「あ、悪い。もっと優しく押すな」

 

「ちゃんとしてよ。初めてなんだから、優しくね」

 

そうか、初めて、か・・・。

思念珠だったからな、こういうのも初めてなんだろう。

しかし、さっきの言葉・・・。

なぜだろう、ドキッとしたのは・・・?

男の性か?

 

「それじゃあ、これはどうだ?」

 

グッ

 

「うん、いいよ。そのまま続けて」

 

「了解」

 

そうして、そのままマッサージを続ける。

なんかいいよね、こういうの。

疲れた後に、ほのぼのするというか。

 

「あ゛~~~、癒される~~~。極楽極楽!」

 

「まるで、ババァみたいだな」

 

「年には敵わんわ~。なんてね!」

 

茜雫が笑顔になり、俺も微笑む。

そうやって、ゆったりと時間が流れていたんだが-----

 

グッ

 

「キャア!?ちょっと、今お尻触ったでしょ!?」

 

「はあ?触ってねえよ」

 

「いや!絶対に触った!」

 

「そうだったのか・・・?腰とお尻も分からないほど-----」

 

「ストップ、ストーップ!?そこから先は言わないで!?」

 

どうやら茜雫は安産型ではないようだ。

まさか、この俺がその違いもわからないとは・・・初めてだな。

 

「さっき失礼なこと考えてたでしょ!?」

 

「考えてねえよ」

 

「顔に出てるから!も~、裸も見て、お尻も触って、どうしてそんなに変態なの!?」

 

そう言いながら、ポカポカと頭を叩いてきた。

 

「イテテ!?変態じゃねえよ!?変な誤解はやめろ!?」

 

「う、うるさい!うるさい!うるさい!この変態!」

 

「叩くのやめろって-----あっ」

 

「えっ」

 

俺が避けようとしたら、足がもつれ、茜雫を巻き込みながら、倒れこんでしまう。

 

ドンッ

 

「イッテ~・・・。わ、悪い、茜雫。大丈夫か」

 

「う、うん。大丈夫。わ、私の方こそゴメン・・・」

 

そう言う茜雫だったが、なぜか顔を赤らめている。

って、この状況は!?

 

茜雫の上に俺が覆いかぶさっていて、人が来たらマズイ状況になってしまっている!?

 

「す、すぐにどくから・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

俺が動こうとした時、服の裾を茜雫にギュッと掴まれてしまった。

・・・は?

 

「茜雫・・・?」

 

「・・・京夜・・・」

 

顔を赤らめたまま、俯いている茜雫。

恥ずかしいけど、この状況をもっと続けたい、そんな雰囲気だった。

 

な、なんだ、この甘い雰囲気は・・・?

 

時計の秒針だけが部屋に響いている。

ほんの数秒だけのような感じが、何十分にも感じた。

 

「え~と、茜雫・・・?」

 

「・・・っ。京夜、あの-----」

 

茜雫が話しかけようとした時、襖が開いた。

 

「2人とも、夕飯を持ってき、た・・・ぞ・・・」

 

そこには、鍋を持っているルキアがいた。

そして、今の俺と茜雫の状況は、どう見ても俺が茜雫を襲っているようにしか見えない。

 

「・・・弁明はあるか、京夜」

 

「・・・一応あるが・・・、聞く気は・・・?」

 

「ないわ!たわけ!」

 

ドスン!とルキアに叩かれました。はい。

夕飯中、茜雫は俺の方を見れなかったのは余談である。

 

(わ、私のバカバカバカ!ほ、本気で告白しちゃいそうだった・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで、5日後。

今日は茜雫の試験日である。

 

「いよいよだな」

 

「う、うん・・・」

 

不安そうになる茜雫。

この5日、茜雫は猛勉強していた。

俺たち3人のおかげで、とりあえず、資料全てを終わらした。

 

「らしくないぞ。いつもの元気はどうした」

 

「だ、だってさあ・・・」

 

こういう時になると、情けない顔をしやがって。

しょうがないな。

 

「茜雫、これをおまえにやる」

 

「これは・・・、お守り・・・?」

 

『必勝祈願』と書かれたお守りを茜雫にあげた。

 

「俺たちの代わりだと思ってくれ。いつでも見守ってるからな」

 

「京夜・・・!」

 

安物だけど、茜雫には心強いだろうな。

茜雫の顔が今ので一気に明るくなった。

 

「ありがとう!絶対に合格するから!」

 

「頑張ってこい!」

 

茜雫は一番隊隊舎に向かった。

さて、茜雫が帰って来るまで待つとするか。

 

「(ソワソワ・・・)」

 

「落ち着け、鬼柳院」

 

「落ち着きたいですけど・・・」

 

部屋の中をウロウロと歩き回る俺。

その様子を浮竹隊長がハニカミながら見ていた。

 

あ~、心配だ・・・。

大丈夫かな・・・、ちゃんと合格するかな・・・

 

「鬼柳院は心配性だな。まるで、茜雫の親みたいだ!」

 

「・・・過保護ですみませんね。でも、やっぱり心配じゃないですか」

 

「まあな。でも、信じるしか俺たちにはできない。それに、俺たちが信じなかったら、どうするんだ」

 

「・・・そうですね。信じましょう。茜雫は必ず合格すると」

 

その時、廊下からバタバタと慌ただしい音が聞こえてきた。

 

「京夜!茜雫が帰ってきたぞ!」

 

「本当か!?ルキア!?」

 

「ああ、ただ・・・」

 

ルキアは顔を曇らせる。

どうしたんだ・・・?

 

廊下を見ると、海燕さんが付き添いながら、茜雫を誘導していた。

茜雫は顔を俯いていた。

 

「せ、茜雫・・・」

 

「・・・ごめん、京夜」

 

その言葉の意味がわからない程、俺はバカじゃない。

まさか・・・、あんだけ頑張ってたのに・・・。

 

「・・・そう落ち込むな、よく頑張ったと思うぞ」

 

「・・・うぅ・・・、京夜ぁ・・・」

 

茜雫は泣き出してしまった。

ルキアと海燕さんも顔を背けている。

 

こんな時、何て言葉をかければ・・・

 

「あ~、え~と・・・、ご、合格できなくても、大丈夫だ!俺が何とかするから!」

 

「・・・本当に・・・?」

 

「あ、ああ!お前を一生養ってやるから!安心しろよ!」

 

俺が元気づけてやると、茜雫はフッと鼻で笑った気がした。

 

「今の言葉、忘れないでよ」

 

「・・・・・・・・へ?」

 

・・・ん?なんだか、雰囲気が変わったような・・・

 

「なーんてね!嘘だよー!合格してましたー!」

 

「・・・・・・・・は?」

 

はあああぁぁ!?

 

「バーカだね!まんまとひっかかったー!」

 

「お、お前な・・・」

 

ということは、あれは嘘泣きだったのか!?

今までのも全部演技か!?

 

ん?待てよ、ということは、ルキアと海燕さんも・・・

 

「「アッハッハッハッハッハ~~~!!!」」

 

ルキアと海燕さんが、突然笑い出した。

 

「いや~、あんなに上手くいくとは思わなかったぜ!」

 

「あの動揺した京夜の顔!フフッ、思い出しただけで、笑えてしまう!」

 

「あ、あんたたちもグルだったのか・・・」

 

顔を背けてたのは、笑いを堪えていただけか!

こいつらは・・・

 

「さ~て、京夜!私のことを養ってくれるんだよね?」

 

「うっ!し、知るか!そんなこと!合格してんなら、話は別だっつーの!」

 

「男の言葉に二言はない、という言葉を知っているか?」

 

「自分で言ったのだから、責任を持つのが筋ではないか?」

 

俺が茜雫の言葉を知らんぷりすると、海燕さんとルキアが追撃してきた。

 

・・・流石の俺も堪忍袋が切れたぞ!

 

「大体、あんたらが俺を騙したのがイケないんでしょうがーーーーーっ!!!」

 

「わー、京夜が怒ったー!」

 

「逃げるぜ、ルキア、茜雫!」

 

「短気は損気だぞ、京夜」

 

「やかましい!待ちやがれ!」

 

ドタドタと3人を追いかける俺。

 

許さんぞ!貴様ら!

 

その光景をほのぼのと、お茶を啜りながら浮竹隊長が見ていた。

 

「お~い、あんまり暴れるなよ~。ハハハ!元気な奴らだな~。-----新人も入って、益々元気になっていくな、俺の隊は。いや~、いいことだ、いいことだ!」

 

とにもかくにも、十三番隊に新しい仲間が増えたのだった。




おまけ

ルキアと浮竹の勉強の教え方
ルキアの場合・・・

ルキア「魂魄とは、死んだ人間の魂だ。通常『整』と呼ばれる。それが、悪に堕ちると『虚』と変わるのだ」

茜雫「あの~、そのイラストは・・・?」

ルキア「フフン、わかりやすいだろう?私が描いた絵だ!」

茜雫(へ、下手すぎる・・・)

浮竹の場合・・・
浮竹「死神になるためには、一般的に真央霊術院を卒業した者が死神になる。そして、死神は、死覇装と呼ばれる黒い着物に斬魄刀と呼ばれる刀を帯刀している。霊界・尸魂界内にある護廷十三隊という組織に所属しており、死神の役目は迷いし霊・整を、尸魂界に送ったり、現世を荒らす悪霊・虚から現世を護り、尸魂界と現世にある魂魄の量を均等に保つことが役目の調整者である。ちなみに、人間の寿命を遥かに超える時間を生きている。通常人間5万人に1人の割合で配属されるが必要に応じて増員される場合がある。そして-----」

茜雫(な、長い・・・)






いかがでしたでしょうか?

総隊長の話は完全にオリジナルです。
でも、総隊長も若い頃には恋の1つや2つあったと思います。

さて、次回は今度こそ、茜雫の仕事風景等を描写したいと思っています。
できれば、斬魄刀の擬人化たちも出演したいな~、と思っていますね。

・・・原作介入はいつになるのやら・・・

それでは、また次回!

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