BLEACHへの転生者   作:黒崎月牙

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ど、どうも、お久しぶりです・・・
もしかしてもなくて、忘れられてるよね、ハハハ・・・

どうしてこんなに遅くなったか、言い訳をさせてください!
言い訳はいくつかあります。

まず、卒業式とその予行練習がありました。
次に、クラスやら地元のタメでお別れ会などといった宴会行事が数回ありました。
最後に、インフルにかかりました。
と、まあ、リアルが忙しかったり、不幸が重なってしまったので、こんなにも遅くなってしまいました。
俺は某幻想殺しさんじゃないんですけどねぇ・・・

さてさて、作者のことなんて、知らねえ。
本編のことを話せ、ですよね。
なんと、今回!
2話連続投稿です!!!
なんか、もう、1話ずつ投稿して、茜雫編をラストに行かせるんだったら、爆走しよう!と思い立ったので、連続で投稿しました!
そのせいで、投稿にさらに時間がかかったってのは、内緒で・・・

では、今回は死神たちが戦います、戦いまくります。
ただ、緊迫感がないと思われます。それは、もう自分の技量の問題なので、手の打ちようがありませぬ・・・
最後に、海燕との戦闘が必見!!!



現世に行くことに意味がある~死神VSダークワン~

砕蜂は敵の女と戦闘をしていた。

相手の名はベニンだ。

 

ドゴッ

 

「ちっ!」

 

「ふっ!」

 

お互いの蹴りが衝突し、力が相殺する。

先程から戦っているが、力は互角のように見える。

 

「はあっ!」

 

ビュン

 

「はっ!」

 

ベニンが所持いている武器のボウガンが火を噴く。

だが、砕蜂は華麗に避け、反撃に移る。

 

「せいっ!」

 

「くっ!」

 

砕蜂は掌打を繰り出したが、掠めて事なきを終える。

 

「随分とやるじゃないか」

 

「これでも隊長だからな。貴様程度の相手なら、手に余る」

 

「ふ~ん、でも、気合入っているように見えるけど?あの銀髪君のために戦っているんじゃないかい?」

 

「なっ!?そ、そんなことはない!京夜のためなど、断固ありえん!」

 

「・・・動揺したね」

 

砕蜂に隙が出来たと思ったベニンは、再びボウガンを放つ。

 

「くっ!」

 

「もらった!」

 

「しまっ!?」

 

ボウガンを何とか避けた砕蜂だったが、ベニンは動きを読み、もう1つの武器である鎖鎌で砕蜂を縛り上げる。

そのせいで、砕蜂は身動きが取れなくなってしまう。

 

「ぐ、くそ・・・」

 

「さて、どこから血を流したい?」

 

砕蜂の背後から鎌を構えるベニン。

絶体絶命な状況だ。

 

しかし、その場を打開するのが隊長というものである。

鎌が衣服に触れた瞬間だった。

 

「舐めるなっ!『瞬閧』!」

 

バンッ

 

「なにっ!?」

 

背中から高密度の霊子が勢いよく飛び出し、鎖を引き千切る。

衝撃により、ベニンは吹き飛ばされてしまう。

 

「まだだ!尽敵螫殺『雀蜂』!」

 

「くっ!」

 

吹き飛んだベニンを追うと同時に、始解をする。

咄嗟にベニンは防御しようとした。

ところが-----

 

ギン

 

「なっ!?これは!?」

 

交差した腕の隙間を狙い、雀蜂の先端がベニンの胸部へと刺さる。

すると、胸部から蝶の模様『蜂紋華』が刻まれた。

 

「雀蜂は弐撃決殺!くらえっ!」

 

「う、うわあああああっ!?」

 

バンッ

 

同じ所にもう1度突き刺し、ベニンの身体は跡形もなく、弾け飛んだ。

 

「ふう、これで終わったか・・・。よし、これで京夜に遅れをとられず、尚且つ自慢もできるな」

 

・・・砕蜂はどこにいても砕蜂だった。

 

こうして、砕蜂は勝利を納めた。

 

尚、余談であるが、後にこのことを京夜に話すのだが、褒められ、赤面してしまうのだが、それはまた別の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冬獅郎は多数のミサイルを躱しながら、凌いでいた。

相手の名はリャンだ。

 

ドゴン

 

「くっ!」

 

「はっ!どうした、逃げることしか能にねえのか!」

 

リャンの背中にあるミサイルポッドが再度放たれる。

間髪入れずに、ミサイルを飛ばしていた。

 

「氷輪丸!」

 

キン

 

ミサイルを凍り付かせる。

しかし、追撃と言わんばかりに、再びミサイルの雨が降る。

 

ドン ドン ドン

 

「ちっ!」

 

その場から逃げ、ミサイルを躱していく。

誰が見ても、冬獅郎が押されているように見えた。

 

「ったく、張り合いがねえぜ。もしや、俺の弾丸が尽きるのを待っているのか?」

 

「・・・・・・・・」

 

冬獅郎は無言で答えるが、図星だった。

ミサイルだって、有限のはずだ。

しかし、リャンの言葉から想定外の言葉が出る。

 

「残念だったな!この弾丸は欠魂から出来ているものだ!この世界に入れば、俺は無限に撃てるんだよ!」

 

ドン

 

言う通り、ミサイルポッドの下部から、欠魂がどんどん吸い込まれていくのが見える。

そして、何度目かわからない回数を撃つ。

 

「・・・そうか。なら、出し惜しみしても無駄なようだな」

 

キン

 

ミサイルを凍りつかせる。

だが、今度は逃げもせずに真っ向から出向く気だ。

雰囲気が変わった瞬間だった。

 

斬魄刀を虚空に掲げる。

 

「卍解『大紅蓮氷輪丸』!」

 

冷気が冬獅郎の身体から溢れ出す。

氷の鎧が冬獅郎の身体に纏う。

背中から氷の竜が出現した。

 

「はっ!それがどうした!俺の弾丸の雨からは逃れることは出来ねえんだよ!」

 

そう言い、再びミサイルを放とうとする。

しかし、ミサイルが出て来なかった。

 

「おい、どうしたんだよ・・・こ、これはっ!?」

 

リャンが目を見開く。

ミサイルポッドが、欠魂が、氷漬けにされていた。

 

「そ、そんな馬鹿な!?」

 

「終わりにするぜ。『竜霰架』!」

 

「が・・・」

 

ガキン

 

リャンは一瞬の内に氷漬けにされた。

まるで、先程の戦闘が嘘のような逆転劇である。

 

「こっちは終わったぞ、京夜。テメエを信じてるからな」

 

京夜が向かった先を見つめ、そう呟いた。

 

戦いは冬獅郎の逆転で幕を下りた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

剣八は林の中にいた。

欠魂兵士倒して行ってたら、いつの間にか知らない場所にまで来てしまっていた。

 

「んだよ、もっと強え奴はいねえのか?つーか、どこだ、ここ?」

 

欠魂兵士を倒すことに飽きてきて、不満を溢し始めた時、どこからかクナイが飛んできた。

 

ヒュン

 

キン!

 

剣八は斬魄刀で簡単に弾いた。

辺りを見渡しても、人の姿はなかった。

 

「コソコソ隠れてねえで、出てこいよ」

 

剣八の言葉に答えたのは、静寂な風。

すると、再び、クナイが飛んできた。

 

ヒュン

 

キン!

 

先程と同じく、斬魄刀で弾く。

ところが-----

 

ドゴン

 

突然クナイが爆破し、剣八に直撃する。

 

その光景を見て、ニヤリと笑う男がいた。

男の名はムエ。

忍者のような姿で、顔は覆面でほとんど隠れ、目しかわからない。

ムエは木に隠れながら、飛び道具で攻撃していた。

 

徐々に煙が晴れていく。

だが、本来いるはずの剣八の姿がなかった。

 

「なに・・・?」

 

「よう」

 

「っ!?」

 

背後から忍び寄る影。

咄嗟にムエは後退する。

そこには、ほぼ無傷の剣八がいた。

 

「てめえが俺の相手をしてくれるのか?」

 

「くっ!」

 

不気味に微笑む剣八。

ムエは瞬時に手裏剣を投げ飛ばす。

 

キン

 

しかし、手裏剣は簡単に弾かれる。

 

「小細工しねえでかかってこいよぉ!」

 

「っ!」

 

剣八は突貫し、斬撃を繰り出した。

 

「おらぁ!」

 

「うっ!」

 

ムエはその斬撃を辛うじて躱し、再び、木に隠れる。

 

「またかくれんぼかよ・・・。芸がねえな」

 

ムエは息を整え、今度こそ、始末しようとする。

芸があるものを見せよう。

 

再度、手裏剣を投げた。

剣八は弾かず、ただ躱す。

 

「おいおい、同じ手ばっかかよ。つまんねえ」

 

「・・・・・・・・」

 

ムエは何も答えず、またまた手裏剣を投げる。

しかも、剣八のすぐ横を通過した。

 

「どこ狙ってやがる-----」

 

剣八が動こうとした瞬間、自分の身体が動けないことがわかった。

見ると、針金のようなロープで縛られている。

 

(あの手裏剣か・・・)

 

どうやら、手裏剣にロープが繋がっていたようだ。

腕、脚、胴、首、斬魄刀の刀身に巻きつけられた。

 

「かかったな」

 

前方にムエが現れた。

その手には巨大な大剣。

すぐに剣八に迫り、突き刺した。

剣八は身動きできず、為されるがままだった。

 

「せいっ!」

 

ザシュ・・・

 

剣八の横腹に剣が刺さる。

血が吹き飛ぶ。

 

ムエは殺した実感を持てた。

だが-----

 

「へえ、やればできるじゃねえか」

 

「なっ!?」

 

平気そうに、むしろ、笑いながら、剣八は生きていた。

ムエは信じられなく、思わず飛び退く。

 

剣八はロープを引き千切る。

摩擦で血が飛び出るが、関係ない。

 

「どうした、怖気づいてんじゃねえよ。もっと俺を楽しませろよ!」

 

そう言い、先ほどとは段違いな速さでムエに接近する剣八。

 

「おらっ!」

 

「ちっ!」

 

斬魄刀を振るうが、ムエは紙一重で避ける。

頬が刃先を掠めた。

 

「なめるなっ!」

 

ムエは大剣を振るう。

直撃だと思った。

今度こそ、倒したと思った。

しかし-----

 

パシッ

 

「そんなっ!?」

 

あろうことか、剣八は大剣の刀身を素手で掴んだ。

 

「剣を振るのが遅えんだよ!」

 

「ぬぐっ!」

 

掴んでいる大剣を引き寄せ、間髪入れずに、自身の斬魄刀を振るう。

ムエは何とか身を捻り、致命傷を避けたが、腹に浅く傷がついてしまう。

同時に、鍔から刀身が離れ、中から細い手裏剣がついた刀身が現れた。

 

「はぁ!」

 

手裏剣を投げる。

剣八は防ぎもせず、躱しもせず、ただ受けるだけだった。

当然、身体に突き刺さり、血が出るが、致命傷に至らない。

むしろ、高揚しているかのように、笑っていた。

 

「もっと殺しにかかってこいよ。じゃねえと、死んじまうぞ!」

 

「っ!」

 

手持ちの手裏剣を全て投げる。

通り過ぎたり、剣八の身体に刺さったりする。

その1つが、剣八の眼帯を掠めた。

 

ビッ

 

その瞬間だった。

とんでもない霊圧が吹き出した。

 

ォン!

 

「はーはっはっはっは!!!はーっはっはっはっは!!!」

 

「な、なんだ、この霊圧はっ!?」

 

地面が割れる。

木々が薙ぎ倒されていく。

その全てが剣八の霊圧の衝撃のみでだ。

 

ムエは霊圧に当てられ、動けずにいた。

 

「おらあぁ!」

 

地面を割りながら、ムエに迫った。

 

「しまっ-----」

 

ムエ動こうとしたが、時既に遅し。

既に剣八の間合いの中だった。

 

ザン

 

「っっっっっっ-----」

 

一撃で全てが終わった。

剣八はムエを斬った。

だが、姿が跡形もなく消えてしまっていた。

霊圧に耐えられなかったのと、剣八の斬撃が凄過ぎたからだ。

 

「ちっ・・・」

 

剣八は舌打ちをしながら、眼帯を拾う。

 

「ったく、眼帯を外すんじゃねえよ。加減できなかったじゃねえか」

 

ムエとの勝負をもっと楽しみたかった剣八。

流石は剣八の名は伊達ではない。

 

「けーんちゃーん!」

 

「やちるか」

 

どこにいたのか、やちるが飛び乗ってきた。

 

「けんちゃん、楽しめた?」

 

「いや、つまんなかったぜ」

 

「ひゃははは!けんちゃん、不満そう~!」

 

やちるの笑い声は無視する剣八。

 

「けんちゃん、どうするの?」

 

「帰る。ここにいても、敵の底が見えちまってるからな。わざわざ、来たっつうのに損だぜ」

 

「けんちゃん、強いからね~!」

 

剣八は言う通り、林を抜けていく。

 

勝敗は圧倒的な力で剣八が勝った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルキアはジャイと長期戦になっていた。

戦況はルキアが押されていた。

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

 

「なんだよ、もう息があがってんのかよ」

 

自分の技が効かず、相手に隙がなく、こちらが上手く攻撃できないでいた。

霊力も大分使い、身体もボロボロだ。

 

「くっ!破道の三十一・『赤火砲』!」

 

「ふん!」

 

ガキン

 

ルキアが放った赤火砲は、ジャイが手で弾いてしまった。

 

「そんな小さな火の玉で俺に勝てると思ってんのか!」

 

「ちっ・・・」

 

詠唱破棄だから弱い、と言っても言い訳にしかならない。

ルキアは自分の攻撃が一向に通じず、歯がゆい思いをしていた。

 

(海燕殿にああ言ったんだ。この勝負、絶対に勝たねばならない!)

 

「ボーッとしてんじゃねえよ!」

 

「っ!」

 

ジャイが飛んできて、チャクラムを振りかざす。

咄嗟に横に転がり、躱す。

 

「まだまだぁ!」

 

「ぐっ!」

 

躱した所を狙い、再び振りかざすジャイ。

ルキアは斬魄刀で防ぐが、力で押し負けてしまう。

 

ドン

 

「がはっ!」

 

吹き飛ばされ、壁に激突してしまう。

 

「う・・・ぐ・・・くそ・・・」

 

「てめえには飽きた、死神」

 

「っ!」

 

何とか立ち上がろうとした時、目前にジャイがいた。

 

「さっさと、死ねよ!」

 

「くっ・・・」

 

ジャイがチャクラムを振り上げる。

覚悟を決め、ルキアは目を閉じる。

 

(・・・?)

 

衝撃が一向に来ない。

ゆっくりと目を開ける。

そこには-----

 

「な、なんだ、これ・・・!?」

 

「これは・・・」

 

ジャイが身動きをとれずにいた。

ジャイの胴体に、霊子でできた6枚の板が突き刺さっていた。

縛道の六十一・『六杖光牢』の効果だ。

 

(一体、誰が・・・)

 

辺りを見渡す。

だが、人1人見つけることができなかった。

 

しかし、これは好機だ。

 

(誰だかわからんが、助太刀、感謝する。これが最初で最後の隙だろう)

 

この機会を逃したら、自分に勝機はない。

迷わず、ルキアは斬魄刀を解放する。

 

「舞え『袖白雪』」

 

斬魄刀が美しい純白の刀に変わる。

迷わず、ルキアは能力を使用した。

 

「な、なにを-----」

 

「初の舞・『月白』」

 

ジャイの足元に円形でできた光が照らしだす。

途端、氷の柱が作られた。

 

キン

 

天地を繋ぐような氷の柱。

その中でジャイは氷漬けになった。

すぐに柱は崩れ落ちる。

 

ガラガラ

 

その中から、ジャイがゆっくりと這い出てきた。

 

「はぁ・・・はぁ・・・よくも、やりやがったな・・・」

 

「まだ、動けるのか・・・」

 

呆れたように見るルキア。

ジャイは徐々に速度を上げながら、迫った。

 

「テメエも俺も身体はボロボロ。しかし、お前の技は見切った!足元に気を付ければ-----」

 

「すまんな」

 

迫るジャイに迎撃態勢に入るルキア。

 

「袖白雪は、もう1つ技がある」

 

刀を自分の足元に4カ所突き刺す。

そこから、細い線のような凍気が立ち並ぶ。

 

「次の舞・『白漣』」

 

次の瞬間、強大な凍気が一斉に雪崩のように放出された。

それは、ジャイを丸呑みするかのように。

 

「こ、こんな、奴に、俺があああああ」

 

ピキン・・・

 

ジャイは復活しなかった。

氷漬けにされ、絶命した。

 

「ふう・・・終わった、か・・・」

 

ガクッと膝から崩れ落ちる。

身体に限界が来ていた。

 

「くっ・・・ダメだ・・・。京夜の元に行かなければ・・・」

 

フラフラと壁に寄りかかりながら、立ち上がる。

しかし、また膝から崩れ落ちてしまう。

 

「はぁ・・・はぁ・・・行けそうにない、か・・・。すまん、京夜、私は行けない・・・。頑張ってくれ・・・」

 

空を見上げながら、愛する幼馴染を激励する。

 

苦戦を強いられたが、辛くも勝利に納めたルキアだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルキアの勝利を遠くで見ている人物がいた。

その名は、朽木白哉。

先程の六杖光牢は白哉の仕業だ。

 

「・・・よくやった、ルキア」

 

ポツリと呟く。

周りには誰にもいない。

だから、今その言葉が出た。

 

見届け終わると、白哉は踵を返し、歩き出した。

向かう先は、岩壁だった。

 

「・・・・・・・・」

 

岩壁を見つめる。

すると、斬魄刀を抜き、岩壁に一閃した。

 

スパッ

 

あったはずの岩壁が嘘のように、消えていく。

その先には広間があった。

そこに、複雑な機械群と1人の老人がいた。

 

「ホッホッホ、あの結界を見破るとはのぅ」

 

「・・・あの程度の結界で、私の眼を欺こうとは思うな」

 

先程の岩壁はこの老人が施した結界である。

老人の肌は白く、目つきが悪かった。

眼鏡をかけて、白衣を着ているが、とても廃れていて、不気味さを感じる。

 

「ホウ・・・けっこう強めの結界だったんじゃが・・・。お主、名を何と申す?」

 

「・・・六番隊隊長、朽木白哉だ」

 

「朽木・・・。朽木・・・。ああ、思い出したわい。あの貴族の者か」

 

老人は考え出すと、思い出したかのように、手を叩く。

 

「ワシの名はロン。朽木銀嶺は元気にしとるかの?」

 

「・・・祖父は死んだ」

 

「死におったか・・・。ワシよりも先に逝くとはのぅ。この手で殺したかったわい」

 

「・・・なに?」

 

ロンの言葉にピクンと反応するロン。

 

「ワシは追放される際に、抵抗し、何とか逃げようとしたのじゃ。しかし、寸での所で銀嶺にやられてのぅ。深手を負い、逃げることができなかったのじゃ。この傷がその時のじゃ」

 

そう言うと、服を捲し上げる。

そこには、胸から腹にかけて一太刀の古傷があった。

 

「あいつにやられなければ、ワシは逃げ延びれた。ああ、憎いわい」

 

「・・・今更、恨んでも、祖父はこの世にはいない」

 

「そうじゃのう。まあ、あ奴が死んで清々したわい。ワシを傷つけた罰じゃ」

 

「黙れ。祖父を侮辱することは許さん」

 

「そう怒るでない。老人の戯言じゃ。しかし、今度は孫がワシの目の前に来るか。やれやれ、銀嶺の呪いかのぅ。・・・あのクソ野郎め」

 

「黙れと言っている」

 

途端、白哉の霊圧が上がった。

白哉は怒り心頭だった。

 

「これこれ、老人と戦うつもりか?」

 

「祖父を侮辱したのだ。老人だろうが関係ない」

 

「祖父も祖父なら、孫も孫か・・・。どうしても戦いたいのじゃったら、こやつらを倒してからじゃ」

 

ロンは手元にあるキーボードを打つ。

すると、欠魂兵士が複数現れた。

 

「ワシは欠魂兵士を管轄、洗脳、操作しとるのじゃ。この程度、造作もない」

 

「・・・その機械はそういうことか」

 

「左様」

 

ロンがキーボードを打ち始める。

すると、欠魂兵士は白哉に歩み寄った。

 

「ホッホッホ、こやつらを倒せるかのう?」

 

「フン・・・。下らん」

 

白哉は斬魄刀を眼前に掲げる。

そして、呟いた。

 

「散れ『千本桜』」

 

刀身が桜と化す。

刹那、欠魂兵士は切り刻まれ、地に伏した。

 

「ホウ・・・やるのう、小僧」

 

「次は貴様だ」

 

桜がロンに向かっていく。

このままでは、ロンは呆気なく敗北するだろう。

だが、そうはならなかった。

 

「起動、防御壁」

 

ガコン

 

あるボタンを押すと、ロンの周囲から壁が現れ、ロンと機械群を包み込む。

そのお陰で、千本桜の攻撃を防いだ。

壁の中央に小さな傷ができた程度だった。

 

「ホッホッホ、これは高密度霊圧遮断防御壁じゃ。物理は愚か、鬼道も通さぬ。その堅牢さ故、傷など一切つかぬわい」

 

「・・・・・・・・」

 

白哉はその防御壁を睨む。

防御壁は一時、収納され、ロンの姿を現した。

 

「さて・・・お主、なかなか強者じゃのう。どれ、ワシも本気を出さねばならぬか」

 

そう言うと、ロンは再度キーボードを打つ。

しかし、先ほどより長めだ。

 

「この数を相手に、勝てるかのう?」

 

ズズズ・・・

 

地面から欠魂兵士が現れた。

ただ、その数が異常だった。

2~3体という数ではない。

ズラッと大量の数の欠魂兵士が立っていた。

 

「100体の欠魂兵士じゃ。逃げてもよいぞ?すぐに追いかけるからのう。ホッホッホ!」

 

「・・・滑稽だな」

 

「・・・なんじゃと?」

 

笑うロンに対し、白哉はとても冷めていた。

ロンを冷ややかに見ていた。

 

「自分で我が身も守れず、ただ殻に閉じこもる。そして、兵を洗脳するだけで自己満足するか。実に滑稽」

 

「言うではないか小僧。自分の状況を理解しての口か?」

 

「十分に理解している。貴様が私の足元にも及ばぬということでな」

 

白哉は千本桜を逆手に持ち、手を離した。

地面に溶け込むように、千本桜が消えた。

 

「卍解・『千本桜景厳』」

 

突如、白哉の背後から幾多の巨大な刀身が出現する。

刀身が多数の桜になる。

 

「貴様は100体の兵で挑んできたな-----」

 

「行くのじゃ!欠魂兵士よ!」

 

「ならば、私はその10倍の刃で対抗しよう」

 

ズォォォ!

 

卍解した千本桜が欠魂兵士を次々と飲み込んでいく。

 

「何をしておるのじゃ!あ奴を早く倒せ!」

 

「無駄だ。千本桜に飲み込まれた者は塵へと変わる」

 

サァァ・・・

 

時間にして僅か数秒。

たったそれだけで、欠魂兵士は千本桜に飲まれ、塵へと変わった。

 

「バ、バカな・・・。あの数を・・・たった一瞬で・・・!?」

 

「残るは貴様だけだな」

 

白哉は千本桜をロンに向かわせる。

 

「っ!!!こんな、小僧にやられるわけにはいかんわい!」

 

ロンは急いであのボタンを押した。

 

「再度、起動せよ!防御壁!」

 

ガコン

 

防御壁がロンを包み込んだ。

千本桜が激突する。

 

ドゴン!

 

しかし、防御壁は破壊されいなかった。

あの千本桜の力でも破壊されないとは、恐るべし強度。

 

「ホッホッホ!この壁がある限り、お主の攻撃は永遠に届かぬ!正しく、無敵の防御じゃ!」

 

「・・・この世に無敵などない。何事にも弱点はある」

 

「弱点・・・?何を言っておる。これには弱点など-----」

 

「貴様は言っていたな、『堅牢さ故、傷など一切つかぬ』と」

 

「それが、なんじゃ?」

 

「その怠慢な考えこそ、弱点だ」

 

「っ!?」

 

白哉は見ていた。

壁の一部が傷ついたことを。

ロンはずっと中にいるので気づけるわけがなかった。

 

「ホッホッホ、小僧に指摘をされるとはのう。次の研究課題ができたわい」

 

「次などない。ここで貴様は終わる」

 

「何を言っているのじゃ?攻撃が通らぬのだ。ワシを倒すことなど-----」

 

「その考えが甘いのだ」

 

白哉は千本桜を操作し、拡散していた桜を一点に集中させる。

その先には先程できた小さな傷跡。

ドリルのような形にし、そこへ攻撃した。

 

ゴンッ!

 

「何度言ったらわかる!無駄だというのがわからんか!」

 

「・・・・・・・・」

 

苛立ちを感じたロンは声を荒げる。

しかし、尚も白哉は千本桜を一点に集中させながら、攻撃する。

 

すると-----

 

ピシ・・・ピシ・・・ピシ・・・

 

「なっ!?高密度霊圧防御壁にヒビじゃと!?」

 

「これが貴様の弱点だ」

 

白哉の考えた結論はこうだ。

ロンは傷などつかないと言った、だが、初手の千本桜の攻撃で小さいながらも傷がついた。

矛盾が生じている。

だから、白哉はロンは防御壁のことを深くまで熟知していないのだろうと思った。

と、同時に、傷がついた箇所が一番脆いのだろうと感じた。

現に2度目の卍解での攻撃では、他の箇所には傷がつかなかった。

そして、脆いと思われる場所に集中して攻撃していれば、防御壁は崩れるのだろうと予想した。

 

白哉の考えは見事に的中した。

 

「くっ!ど、どこかに、修復のデータは・・・な、ないじゃと!?」

 

「塵になって消えるがいい」

 

ピシピシピシ・・・ビシッバギッ

 

徐々にヒビが広がっていく。

外の光が木漏れ始めていた。

 

「また・・・また、ワシは朽木に負けるのか!?しかも、こんな小僧如きに!?」

 

「貴様の敗因は、朽木家を侮辱し、舐めたことだ。万死に値する」

 

バガンッ!

 

防御壁が崩れた。

桜の刃が逃げ場のないロンを襲う。

 

「うがああああああああ・・・・・」

 

ロンは千本桜に飲み込まれ、塵になった。

 

「フン・・・」

 

白哉は役目を果たしたかのように、その場を離れる。

その眼は相変わらず、冷たかった。

 

勝敗は、その類い稀の才能により、白哉が勝利した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白哉の戦闘が終了した頃、浮竹と京楽は大刀使いのシュウと二刀流使いのジャキと交戦していた。

その最中、周りにいた欠魂兵士が次々に消えていった。

 

「欠魂兵士が消えていく!?」

 

「ちっ!あのクソ老人め!だから、俺たちが傍にいた方がいいって聞いたんだ!それなのによ!」

 

ジャキが驚き、シュウが悪態を出す。

 

「敵さん、大分戦力を失ったみたいだねぇ」

 

「そうだな。誰がやってくれたか知らんが、助かった」

 

京楽はニヤリと笑い、浮竹は敵の戦力を減らしてくれた誰かに感謝する。

ただ、これを行った者は朽木白哉だ。

それを知ったら、2人は目を丸くするだろう。

 

「けっ、あんな雑魚がいなくたって倒せるぜ!」

 

「見せてやろう、我らの実力を!」

 

シュウは京楽に、ジャキは浮竹に突貫した。

 

ガキン

ギィン

 

浮竹と京楽はその攻撃を防ぐ。

 

「ぉらあ!」

 

「おっと、危ない、危ない」

 

京楽に大刀が襲い掛かるが、嘲笑うかのように軽やかに避ける。

 

間髪入れずに、次々と大刀を振り回す。

 

「おらおらおら!」

 

「よっ、ふっ、っとと」

 

「どうしたぁ!避けてばっかじゃ、俺を倒せねえぞぉ!」

 

「うーん、君は力任せに振り回すね」

 

「強い奴ほど力がある!力無き者に用はねえ!」

 

「(今のセリフ、京夜くんが聞いたら、どんな反応をするんだろうねえ)」

 

そんな考えができるほど余裕な京楽は、大刀を躱しながら、宙に舞う。

そして、斬魄刀を振るった。

 

その瞬間だった。

 

「隙あり-----」

 

「(ニヤリ)集え!欠魂よっ!」

 

「っ!?」

 

突如、シュウの大刀に欠魂が集まっていく。

大刀が淡く輝き、霊力の塊ができる。

 

刹那、それが爆破した。

 

「波っ!」

 

ゴウッ

 

「うわっ!?」

 

慌てて、その場から引き下がる京楽。

珍しく、焦燥な顔をした。

おかげで、愛用の笠に焦げ目がついてしまった。

 

「あちゃ~・・・」

 

「どうだ!俺はこの刀に欠魂を集めさせ、操作できるのさっ!爆破はもちろん、そのまま飛ばすことだって可能だ!こんな風にな!」

 

シュウは大刀を振り、電磁砲のような巨大なレーザーを飛ばす。

 

ドウッ

 

「よっと」

 

ヒラリと躱す京楽。

その後ろで、先程の攻撃が崖に当たり、崩れた。

 

「お~、あんなに威力があるのかい。虚閃みたいだね~」

 

「はっ、怖じ気ついたか!」

 

「(う~ん、こういう手合いは・・・ちょっとやりにくいな~)」

 

微笑んでいるが、内心そう思っていた。

浮竹はどうなっているのだろうと、チラリと見る。

 

ガキン

 

「ふむ、二刀流ではまずまずといった所か」

 

「その言い方、まだ本気をだしていない言い方だな」

 

「当たり前だ。まだ上がある」

 

2人は一進一退状態だった。

本気をだしていないが、あの浮竹に互角にやりあっていないのだから中々の実力者だ。

 

ジャキはスッと背中に手を回す。

 

「我の剣技は刀が増えれば増えるほど強くなる。次は四刀流だ」

 

「っ!」

 

両手に2本の脇差、さらに、両腕で2本の脇差を挟む。

合計で4本の刀がでてきた。

 

「いくぞ」

 

ドンッと浮竹にジャキが迫る。

4本の刀を巧みに扱い、連撃を繰り出す。

 

キン キン キン キン

 

「くっ!」

 

「ほう、この攻撃を防ぐとは、やるな」

 

浮竹は連撃を1本の斬魄刀で防ぐ。

感心したジャキは途端、刀を振りかざした。

 

「なら、これはどうだ」

 

4本の刀を振るう。

すると、霊力でできた斬撃が放たれた。

 

「斬っ!」

 

「ぐっ!」

 

ガン

 

かろうじて、防ぐが、後方に吹き飛ばされる浮竹。

 

(・・・やりづらい相手だな)

 

そう思った時、トン、と背中に当たる感触。

見ると、京楽と背中合わせになっていた。

 

「さ~て、どうする、秀才?」

 

「やめろ、それは昔の話だろう。しかし、そうだな・・・」

 

浮竹が思考すると、京楽が口を開いた。

 

「僕的に、大刀の彼はやりづらいんだよねぇ~」

 

「奇遇だな。俺も刀が増えるあいつとは相性が悪いみたいだ」

 

「おっ!そうなのかい?考えることは一緒だねぇ」

 

「ふっ、そうだな。なら、この後、どう戦うかわかっているだろ?」

 

「もちろんだ。僕の考えが合っていたら、だけど」

 

「合っているだろうさ」

 

2人は目が合うと、微笑みお互いの考えが読めているようだ。

さすがは、長年一緒のだけのことはある。

 

「なに、コソコソ話してやがる!」

 

「話は終わったか?今度こそ倒してやろう!」

 

シュウとジャキが襲ってくる。

浮竹と京楽はアイコンタクトでタイミングを合わせる。

2人が頷いた瞬間だった。

 

「いくぞぉ、浮竹ぇ!」

 

「ああっ!」

 

グルンと背中合わせのまま、180度回転する。

そして、同時に攻撃を防いだ。

 

「な、なにっ!?」

 

「入れ替わっただと!?」

 

シュウが浮竹に、ジャキが京楽を相手に入れ替わった。

浮竹と京楽は笑いながら、口を開く。

 

「相性が悪いのなら、入れ替えればいい」

 

「1つの有効な戦術だよぉ?」

 

ガキンと浮竹と京楽はシュウとジャキを弾き、距離をとる。

そして、自分たちの実力を見せる。

 

浮竹は斬魄刀に左手を添え、解号する。

 

「波悉く我が盾となれ 雷悉く我が刃となれ『双魚理』」

 

京楽はもう1本の刀を取り出し、十字に合わせ、解号する。

 

「花風紊れて花神啼き 天風紊れて天魔嗤う『花天狂骨』」

 

ここに2人の二刀一対の刀が現れた。

 

「けっ、入れ替わったって関係ねえ。ぶっ潰すまでだ!」

 

「大口を叩くのはいいが-----」

 

スッと双魚理をシュウに向ける。

 

「お前の技は見切ったぞ!全力で来なければ、お前は負ける!」

 

「・・・は?」

 

突然、叫びだしたかと思えば、勝利宣言に近いことを言い出した。

シュウはポカン、と口を開け、次に笑い出した。

 

「プ、ハッハッハッハッ!それ、本気で言ってんのかよ!テメエは1度も俺の技を見ていねえだろ!」

 

「戦いながら見ていた。お前の技と俺の技は相性がいいみたいだからな」

 

「へ~、言うじゃねえか。いいぜ、そこまで言うなら、本気を見せてやんよ!」

 

シュウは大刀を振り上げる。

そこに欠魂が大量に吸収されていった。

 

「集え、欠魂よ!」

 

どんどん吸い込まれ、浮竹の3倍以上あるような霊力の塊ができた。

衝撃により、大気、地面に振動が走る。

 

「粉々にしてやんよぉ!」

 

「来い!お前の全力を俺が受け止めてみせよう!」

 

「はあああああああっ!」

 

ゴウッ

 

京楽に放たれた時よりもさらに巨大な霊力の塊が虚閃のように放たれた。

 

「はっ!」

 

ドン

 

浮竹はその巨大な霊力に対し、双魚理で防ぐ。

 

ボゴンと煙が舞った。

 

「ハハハハハハハハ!何が、見切っただ!結局、ハッタリじゃねえか!消し飛びやがった!」

 

シュウが笑う中、煙が晴れていく。

そこには、1人の人影があった。

 

「な・・・に・・・!?」

 

「すまんな、ハッタリではないんだ」

 

そこには無傷で立っている浮竹。

双魚理が淡く光っていた。

 

「な、なぜ・・・」

 

「説明してもしょうがない。倍返ししてやろう」

 

双魚理を繋げている紐、そこにぶら下がっている鉄でできた板が光りだした。

浮竹が振るう。

すると、シュウが放った攻撃より一回り大きい霊力が放たれた。

 

ズオッ

 

「くそが、くそがああああああ・・・」

 

ジュ、と跡形もなく消え去った。

 

一方、京楽とジャキはというと・・・

 

キン

 

「ほいっ」

 

「ぬうう!」

 

キン

 

「やっ」

 

「ちっ!」

 

京楽が押していた。

4本の刀を自在に操れるジャキだが、京楽の読めない動きに翻弄されていた。

京楽は踊るように攻撃していた。

 

「中々の剣技。見事」

 

「この年で褒められるとね~。照れちゃうよ」

 

二ヘラと顔を崩す京楽。

戦場で戦っているとは思えない顔である。

 

「こちらも本気を出そう。そうしなければ、負けそうだ」

 

そう言うと、両足をダンッと地面に踏む。

すると、膝、爪先から刀が現れた。

 

「・・・君、本当に剣術使い?暗器使いに見えるよ」

 

「・・・よく言われる」

 

変な雰囲気なってしまったので、ジャキは高らかに叫んだ。

 

「さっきより倍の8本だ。八刀流の真骨頂を見せてやろう」

 

ジャキは京楽に迫ると、8本の刀を振り回す。

身体を乱回転させ、上下左右に連撃を放つ。

 

「いや~凄い、凄い。・・・けど、甘い」

 

京楽は舞うようにその連撃を避ける。

掠りもしなかった。

 

「な、なぜだ・・・?なぜ、当たらん!こんなこと1度もなかったぞ!」

 

「刀が増えれば手数も増えると思ったんだろうけど、考えが甘いねぇ」

 

間髪入れずに斬撃を繰り出し続ける。

途端、京楽はシュンとそこからいなくなった。

 

「なっ!?どこへ消えた!?」

 

「武器が増えればそれだけ扱うのに集中しなければならない。視界が狭くなるんだよ」

 

「う、後ろ-----」

 

ジャキの背後に京楽がいた。

瞬歩で一瞬の内に移動したのだった。

気づいたジャキだが、もう遅かった。

 

「背中ががら空きだよ」

 

一瞬だけ、冷たく、斬るのに躊躇わないような表情をする京楽。

そのまま斬りつけた。

 

ザンッ

 

「ぐおぁ!?」

 

鮮血が飛び散る。

ジャキは踏ん張り、瞳孔を開け、京楽にやり返そうとした。

 

「な、め、る、なあああああああ!!!」

 

8本の刀から霊力でできた斬撃が放たれる。

だが、京楽は綺麗に躱し、ジャキの懐に入る。

 

「残念」

 

バガンッ

 

「そ、そんな・・・」

 

京楽は武器破壊を行った。

8本、全てを一瞬で壊したのだった。

 

「君には恨みはないけど、消えてもらうよ」

 

「・・・・・・・・」

 

ザシュ・・・

 

ジャキは目を見開き、動けずにいた。

圧倒的な力の差に震えていた。

そこに、2本の刀が振るわれ、血が吹き飛ぶ。

ジャキは倒れ、程なく霊子に変わった。

 

「ふう、嫌だねぇ、本当、戦いってのは・・・」

 

「お~い、京楽ー!」

 

「おっ!浮竹!終わったのかい!」

 

「ああっ!」

 

向こうから、浮竹が走ってきた。

 

「さてさて、僕たちはどうするべきかな?」

 

「もうじき、鬼道砲が撃たれると思う。厳龍を倒しに行きたい所だが、恐らく間に合わんだろう」

 

「そうだねえ、まあ、京夜くんに任せていれば大丈夫じゃない?」

 

「随分と信頼しているみたいだな。仮にも四席なんだぞ?」

 

「そんなんじゃないよ。ただ、彼ならやってくれるって、僕の勘が告げているんだ」

 

「勘、か。お前の勘はやけに当たるからな~」

 

「そうかな~」

 

「俺も鬼柳院は優秀な部下だと思っている。ここは鬼柳院に賭けるとして、俺たちは出口の確保と負傷者の救出に向かおう」

 

「りょ~かい~」

 

浮竹と京楽はその場から離れた。

 

護廷の中で古株に位置する2人はやはり強く、勝利をもぎ取ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わり、崖がそびえ立つ谷間。

そこに、2人の男が戦っていた。

 

「おらぁ!」

 

「・・・・・・・・」

 

海燕とレンが戦っていた。

海燕は捩花を豪快に振るうが、レンにひらりと躱されてしまう。

 

スッとレンは笛を吹き、音を鳴らす。

 

「もう効かねえんだよ!」

 

「チッ、目障りナ耳栓ダ・・・」

 

音を鳴らしている最中に、捩花を横薙ぎにする。

レンは飛び退くことで難を逃れる。

 

「諦めろ!テメエの技は俺には通用しねえ!」

 

「ホウ・・・」

 

レンは不敵に微笑んだ。

 

「マダ奥ノ手ヲ出シテイナイトイウノニ、ヨク言エルナ」

 

「なんだと・・・?」

 

レンは腰から2本目の笛を取り出す。

今まで吹いていた笛は木製の物だったが、2本目の笛は赤黒く、血に濡れたように薄気味悪かった。

 

「第2章ノ音響ダ。コレヲ聞イテ生キタ者ハイナイ」

 

レンは吹き始めた。

だが、音が全く聴こえてこない。

 

(何をしてんだ・・・?)

 

海燕が不可思議に思ったその時だった。

 

「!?」

 

視界がグラァと歪み始めた。

 

「な、なんで、視界が!?耳栓は・・・している。どういう-----」

 

「今マデノハ、音デ三半規管ヲ揺サブリ、刺激ヲ与エタダケノ物。今、吹イテイル笛ハ・・・音波ヲ飛バス物ダ」

 

「音波・・・だと・・・?」

 

「音波ハ三半規管ダケデハナク、脳二直接攻撃スルモノダ。音デハナイカラナ、当然、耳栓ナド効クハズモナイ。ホゥラ、立ッテイラレナクナッテキタダロウ?」

 

「うっ!?」

 

海燕はガクン、と足の力が抜け、膝から崩れ落ちる。

 

「次ハ耳ダナ」

 

「これは・・・血・・・か?」

 

耳元を触ると、ドロッと血が流れてきた。

 

今の海燕は視界がぼやけ、足の自由が利かず、平衡感覚を狂わせられた。

一気に窮地に追い込まれた。

 

「サテト、コノママ吹キ続ケレバ、死ヌノダガ・・・ソレデハ面白味二欠ケル。最後ハ自分ノ手デ殺シタイナ」

 

そう言うと、レンは針を手に持ち、ゆっくりと海燕に近づく。

 

(チッ・・・奴の霊圧が近づいてくるのを感じる・・・。くそ、足の他に身体まで言うことを利かなくなってきやがった・・・)

 

足は愚か、腕、身体全身が麻痺したかのように、徐々に動けなくなり始めていた。

 

(ここまでなのか・・・俺は・・・)

 

歯を食いしばり、目を閉じる。

悔しい感情が渦巻くが、諦めかけていた。

 

しかし、海燕は気付く。

 

「!」

 

自分の手にしている斬魄刀『捩花』を。

捩花をジッと見つめる。

 

「捩花・・・」

 

海燕はあることを思い出す。

あの約束を-----

 

 

 

 

 

ある昼下がりの出来事。

仕事が終わった海燕は妻である都と共に歩いていた。

 

『あなた、もうすぐ何の日か知っていますか?』

 

『あん?そりゃあ、あれだ。え~と・・・』

 

『フフ、どうせ気づいていないと思ってましたよ』

 

『ぐ・・・わ、悪い、何の日だ?』

 

『私たちの結婚記念日ですよ』

 

『あ、あー、そうだったな!』

 

『全く、忘れているなんて・・・。ですが、そういう所があなたらしいですけど』

 

『えっと・・・お、怒ってるか・・・?』

 

『怒っていませんよ?フフフ』

 

『(笑顔が怖え・・・)よ、よし、記念日には特注の物を用意してやる!何がいい!』

 

『何がいいか、聞いてしまうのですね。驚かせようとは思わないのですか?』

 

『あ・・・そんなこと、考えていなかったぜ・・・』

 

『フフフ、死神としては優秀なのに、夫としてはまだまだですね』

 

『う、うるせーよ。そういう都はどうなんだよ?』

 

『私ですか?うーんと・・・私自身でもあげましょうか?』

 

『おいっ!』

 

『冗談ですよ。用意してありますが、まだ秘密です』

 

『なんだよ、教えてくれねえのかよ』

 

『あなたも自分で考えてお決めになさったらどうかしら?』

 

『うーん・・・俺はそういうの苦手なんだよ。それに、欲しくないのあげても迷惑だろ?』

 

『あら、心外ですね。最愛の夫から贈る品を妻が迷惑だと思いますか?』

 

『そうは思ってねえけどよ・・・だからってなぁ・・・』

 

『・・・わかりました。今回は特別に教えてあげましょう』

 

『おっ!本当か!』

 

『はい、私が欲しているものは・・・あなたの真の実力です』

 

『真の実力・・・?』

 

『私は見たいです。あなたの――』

 

『お、おいおい、――は1日2日そこらでできるもんじゃねえぞ』

 

『わかっています。ですから、待ちます。あなたが手に入れるまで』

 

『都・・・』

 

『一番最初に見せてくださいね、あなた』

 

『・・・ああ!もちろんだ!約束するぜ!』

 

その3日後、都は命を引き取った。

翌日が記念日だった。

遺品を整理していると、押し入れから見慣れない服が出てきた。

服と一緒に手紙も入っていた。

 

≪結婚記念日にあげる物が服なんて定番ですかね?

 

ですが、私、志波都は志波海燕を愛しております。

 

一生、傍についていますから。

 

                   志波都≫

 

それは、随分と前、まだ結婚する前に、自分が欲しいと言っていた服だった。

 

『覚えていたのか・・・』

 

そう呟き、海燕は1人泣いた。泣き崩れた。

 

そして、その服は休日の際には必ず着ている。

 

 

 

 

 

(そうだ、そうだったな・・・。結局、約束は果たせてないままだったな・・・)

 

捩花を持つ手に力が籠る。

 

(けど、俺は力をつけた。都の最後の願いだったから・・・)

 

諦めかけていた目に、闘志が宿る。

 

(だから、俺は、こんな所で、死ねるか!!!)

 

「サヨナラダ」

 

レンが海燕の首を目掛けて、針を振った。

 

パシッ

 

「なっ!?」

 

しかし、当たる寸前、レンの腕が掴まれる。

直後、捩花が振るわれる。

 

ブンッ

 

「ぐっ!?」

 

不意を突かれたレンは肩に傷を負う。

海燕は足が痙攣しながらも、ゆっくりと立ち上がった。

 

「ナ、ナゼダ!?ナゼ、動ける!?」

 

「・・・なぜか、だと?決まってんだろ」

 

海燕は叫んだ。

 

「テメエと背負っている重みが違えからだ!」

 

「ッ!?」

 

「俺は誓ったんだ!愛する人の分まで生きると!」

 

海燕は捩花を水平に構える。

霊圧がどんどん上がっていく。

 

「バ、馬鹿ナ・・・音波ハ効イテイルハズナノニ・・・」

 

「見せてやるよ、俺の真の力を!」

 

海燕は心の中で呟いた。

 

(見ていてくれ、都。今、約束を果たす!)

 

直後、目を見開き、叫んだ。

 

「卍解!!!」

 

ドンッ!!!

 

海燕を中心に爆発音と衝撃が走る。

 

ザザァ・・・

 

海燕がいた場所から溢れんばかりの水が流れてくる。

周囲の地面を水が覆い尽くす。

何か所か蓮の花が咲き誇る。

煙が晴れ、海燕の姿が見え始めた。

 

「『蒼蘭捩花(そうらんねじばな)』」

 

斬魄刀が変わっていた。

三叉の槍だった捩花は、巨大な1本槍に変わり、骨のように白く濁った色になっていた。

海燕の姿が変わっていた。

腕、肩、額に水で出来た輪が付けられている。

さらに、腰から下は流れている水から、絡み付くように纏っている。

 

「卍解、ダト・・・副隊長如キガ、卍解ダト・・・」

 

レンはギリッと下唇を噛む。

 

「フザケルナアアアアアア!!!」

 

レンは再び笛を吹き始めようとする。

それを見逃す海燕ではなかった。

 

「させねえ。『噴水』」

 

「っ!?」

 

海燕が手を振り上げる。

すると、レンの足元から、水が高らかに噴き上がった。

レンはその場から離れる。

 

「クッ、コノ位デ-----」

 

「『水波』」

 

「ナッ!?」

 

宙に飛んだレンを逃すまいと、海燕は巨大な波を起こす。

逃げ場など、皆無だった。

 

「ゴアアアアアア!?」

 

レンは波に飲まれた。

波が止まり、静けさを取り戻す。

レンはまだ生きていた。

 

「ハァ・・・ハァ・・・クソガッ!」

 

レンは針をありったけ飛ばした。

しかし、それは海燕に届くことはなかった。

 

「『防水』」

 

海燕の目の前に水の壁が現れる。

突き刺さるも、速度を落とし、ポロッと針が落ちる。

 

(カカッタ!)

 

だが、それはレンの計算通りだった。

今の海燕なら、必ず、防ぐと予想していた。

 

(奴ハ今、コチラニ意識ヲ向ケテイナイ。今ガ好機!)

 

そう思い、笛を吹こうとした。

だが、身体に違和感を感じる。

 

(・・・?脚ガ動キニクイ?)

 

「言ってなかったな。蓮の根は太く、頑丈で、一度捕まられると抜け出すには困難だってことを」

 

「!?」

 

見ると、根っこが足を絡み付かせている。

 

「ソレガ何ダ!笛ヲ吹クコトクライ-----」

 

「残念だったな。笛はもう使えねえよ」

 

いつの間にか、笛はボロボロに腐敗していた。

 

「ナッ!?ドウイウコトダ!?」

 

「そこにある蓮の花。その鱗粉はあらゆる武器の度合いを落とす。刃物だったら、切れ味が落ちるし、笛は・・・よくは知らねえが、腐るみたいだな」

 

「ソ、ソンナ・・・」

 

足は動かず、主武器である笛は腐り、針はそもそも通じない。

打つ手無し、そう告げられていた。

 

「終いにしようぜ。『渦水』」

 

槍を高々に掲げる。

すると、レンの足元から巨大な渦ができた。

俗に言う渦潮である。

 

「ナッ!?ヤメロ、ヤメロオオオオオ!?」

 

渦に飲み込まれたレン。

上下左右前後に、身体が引きちぎられる勢いで振り回され、木端微塵に消えた。

 

残ったのは、穏やかに揺れる水、揺らぐ蓮の花、そして、海燕自身。

 

「見ていたか、都。お前のお陰で勝てたぜ」

 

上を見上げ、海燕はそう呟く。

 

愛していた人のために、手に入れた新たな力で、海燕は勝利した。




いかがでしたでしょうか?

やっちまったぜ!海燕の卍解!
2次創作だから、いいよね・・・?
てか、海燕程の技量なら、卍解できるでしょ。
あの恋次ができたんだから。

さて、次、といっても、連続なので予告とかは意味ないですよね。
次話をどうぞ!

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