BLEACHへの転生者   作:黒崎月牙

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役1週間ぶりですね。
早めに投稿するとか嘘ついてゴメン!
で、でも、この作品としては早め・・・え?そんなの許さないって?そ、そんな~・・・

はい、そんなことはどうでもいいですね。

少し気になったことがあるのですが、劇場版1作目の主題歌って、『千の夜を越えて』というのは皆さん知っていますよね?
その歌詞の中に『好きな人には好きって伝えるんだ~』とあるのですが、劇場版とどう関係しているのでしょうか?
もしや、茜雫が生きていたら、一護と茜雫がくっついたのかもしれないのですかね?
確かに、あの2人相性よさそうだったしな~・・・。
けど、個人的にはイチルキが好きです。

さて、そんな気になったことは置いといて、今回の話は題名通り、ダークワンと京夜が戦います。
途中、意味わかんない所でコメディが入っていますけど、アニメでも訳わかんない所に笑いが入ってたりしているので、いいかなっと思いました。


現世に行くことに意味がある~決戦開始~

場所は現世。

月明かりが照らす中、京夜はある場所へ向かっていた。

ダークワンのアジトへの入り口、川へ。

 

「月が出てきたか・・・」

 

俺は夜空を見上げ、そう呟く。

 

尸魂界に現世の光景があった。

しかも、原作通りに夜になってしまった。

ということは・・・時間が残り僅かということだ。

 

「時間がねえな・・・」

 

原作と同じなら、タイムリミットは1時間。

その間に何としてもダークワン、厳龍を打ち倒さねえと。

 

そう考えている間に目的の場所に着いた。

 

「確か・・・この辺りだったはず」

 

俺は川を見つめる。

すると、違和感があることに気付いた。

 

水面に映る月。

煌々と輝いているが、そこに僅かばかり違和感を感じた。

月の形をする円の中に、尸魂界の光景があった。

 

「ここが入口か・・・」

 

俺は深く深呼吸をする。

 

相手は相当の手練れだ。

しかも、数も多い。

俺1人でやれるかどうか・・・

 

けど、他の人に頼っては誰かが傷ついてしまう。

それが嫌だから1人で来たんだ。

 

茜雫は思念珠ではなくなった。

そして、今は安全な十三番隊隊舎に置いてきた。

茜雫なら大丈夫なはずだ。

浮竹隊長や海燕さん、ルキアがいてくれるんだ。

後は敵の戦力を失くせば、茜雫への脅威はなくなる。

 

「こんな所で死ぬつもりはねえけど・・・」

 

もし死んだら・・・

きっとルキアも茜雫も、いや、たくさんの人が俺に怒るかな・・・

いや、意外と泣いてくれるのかも。それだと、ちょっと嬉しいな。

あまり興味を示さなかったら、ちょっとショックだな・・・

大なり小なり関わってきた人たちなんだから・・・

 

「随分と弱気になってるな、俺・・・」

 

しっかりしろ、鬼柳院京夜!

これから激闘が始まるんだぞ。

それがこんなんじゃ、話にならねえだろ。

 

俺は頬を強く叩き、気合を入れなおす。

 

「うしっ!敵本陣へ突入-----」

 

「おい、待てよ」

 

「え・・・」

 

声がして振り向く。

そこには-----

 

「か、海燕さん!?」

 

「よう、京夜・・・」

 

海燕さんがいた。

 

しかも、何だか怒っている!?

 

「な、何で、海燕さんがここに・・・」

 

「俺だけじゃねえぞ」

 

すると、海燕さんの後方に2人の人影が舞い降りてきた。

 

「ルキアに・・・茜雫!?」

 

「やっと追いついたぞ、馬鹿者」

 

「・・・・・・・・」

 

ルキアと茜雫もやって来た。

 

2人も海燕さん同様、酷くご立腹でいらっしゃる!?

茜雫なんか、口をへの字にしてムスッとしている!?

いや、そんなことどうでもいい。

一番気になったのは-----

 

「ど、どうして、茜雫がここにいるんだよ・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

「・・・ルキア、俺は言ったよな。茜雫を頼むって・・・。どうしてお前と茜雫がここにいるんだよ!!!」

 

海燕さんだけならまだわかる。

けど、ルキアと茜雫がここにいるのがわからなかった。

 

「茜雫が望んだからだ」

 

「え・・・!?」

 

「お前の元へ行くと」

 

「・・・・・・・・」

 

俺は何も言えなかった。

 

何でだよ・・・

何で来たんだよ・・・

これじゃあ、茜雫を思って俺が置いてきた意味がねえじゃねえか・・・

 

「京夜」

 

茜雫が俺に近づいてきた。

次の瞬間、俺に衝撃が走った。

 

「歯ぁ食いしばれぇ!!!」

 

バギッ!

 

「がっ・・・!?」

 

俺の顔面に右ストレートを打ち込みやがった!?

い、いきなり何だよ!?

 

「~~~~~っ!な、なにしやがっ-----」

 

「私は言ったはずだよ!私も戦うって!私にも力があるって!」

 

「っ!」

 

思い出すのは尸魂界に来る直前の記憶。

確かにあの時、茜雫は俺に言っていた。

一瞬でも背中を預けたんだっけ・・・

 

「それなのに、どうして私を置いて行ったの!?私が弱いから!?それとも、私が狙われているから!?」

 

「そ、それは・・・」

 

図星だった。

茜雫を、他の人たちを傷つけたくはない。

その気遣いが裏目に出てしまったのか・・・

 

そこにルキアが口を挟んだ。

 

「大方、お前のことだ、他の者たちが傷を負うくらいなら、自分で背負いこもうとしていたのだろう?」

 

「ルキア・・・」

 

「そんなに信用ないか?私も海燕殿も茜雫も・・・」

 

「あ、いや・・・」

 

ルキアにはお見通しか・・・

長い付き合いになると、心までわかっちまうんだな・・・

 

再び、茜雫が口を開いた。

 

「私は私のために他の人たちが戦って傷ついていって、自分だけのうのうと安全にしているのは御免だ。私だって、死神だ!」

 

「茜雫・・・」

 

茜雫の気持ちを組みとっていなかった・・・

そういう気持ちだったのか・・・

それなのに、俺ときたら・・・

 

「その・・・ゴメン・・・」

 

「もういいよ。素直に殴られたことでチャラにしてあげる」

 

茜雫は怒った顔から、笑顔に変わる。

本当にいいみたいだ。

 

「ルキアも、悪かった・・・」

 

「別に今更、謝れてもな。私は慣れてしまった」

 

「お前が幼馴染でよかったと思うぜ」

 

「フン・・・」

 

そっぽを向いてしまうルキア。

照れ臭かったのか、ほんのり頬が赤いのがわかる。

 

「その、海燕さん・・・」

 

「あ~、いいわ。男がそう何度も謝んじゃねえよ」

 

「で、でも・・・」

 

「は~・・・。今回のテメエの行動、独断専行、情報未提供、間接的に命令無視だぞ?」

 

「う・・・」

 

「本来だったら、尸魂界に連れ戻す所なんだがな、俺はしねえ。なぜか、わかるか?」

 

「・・・・・・・・」

 

「テメエのそういう言動、仲間思いの心、そういった所が気に入っているからだ」

 

「!」

 

「そうはいねえからな。処罰モン並みの行動する奴は」

 

「海燕さん・・・」

 

海燕さん、ありがとうございます・・・

俺、海燕さんの部下で本当に良かったと思う・・・

 

「いや~、しかし、さっきの茜雫の殴り方は綺麗だったな」

 

「え、本当?」

 

「いい殴りっぷりだったぜ。お陰で俺が殴る手間が省けたし、気分も晴れたわ」

 

「へへっ!やったね!」

 

・・・前言撤回!

やっぱりこの人怖いよ!

殴ろうとしていたのか!?

Sっ気満々の人がこの場に2人もいるよ~・・・

 

すると、海燕さんがパンッと手を叩いた。

 

「よ~し、話も済んだからな。早速、突入するとすっか!」

 

「はい!」

 

「みんな・・・ありがとう・・・」

 

俺1人だけでは敵わないかもしれない敵。

けど、改めて信頼できる仲間たちがいれば勝てるかもしれない。

こんな俺に着いてきてくれて・・・ありがとう。

 

その言葉を聞いた3人は微笑んだ。

俺の横に茜雫がやって来て、一言。

 

「行こう、京夜!」

 

「ああっ!」

 

その言葉を皮切りに俺たちは、ダークワンの入り口となっている川へ飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は山岳地帯。

無骨な岩壁や崖が所狭しと並んでいる。

ちらほらと木が植えているが、全て枯れ果ててしまっている。

空は暗いが、空間が明るいという摩訶不思議な印象を受ける。

岩壁と岩壁の間にできた広間に彼らはいた。

 

「尸魂界、現世との結合、随時良好です」

 

「欠魂の吸収率、7割を越えました。この様子ですと、1時間もしない内に祈願が果たせるでしょう」

 

「うむ、そのまま継続せよ」

 

部下からの報告を受けた男は指示をだす。

続いて別の部下に尋ねる。

 

「思念珠の方はどうなっている?」

 

「はっ!現世にいたことまでは確認が取れています!が・・・」

 

「・・・どうした?」

 

「・・・行方を消失しまして、現在どこにいるか調査中です」

 

「行方を消失?そんなばかなことが・・・」

 

「ですが、事実なのです・・・。誠に申し訳ありません」

 

「いや、気にすることはない。思念珠がいなくても計画に支障はないからな。だが、いた方が良いのも事実。調査を怠るな」

 

「はっ!」

 

部下は踵を返し、自分の仕事に戻る。

男は考え込む。

 

(思念珠の行方を見失った?こちらは思念珠霊力を感知するようにしている。それが、なぜ・・・)

 

思考した後、男はある結論に辿り着く。

 

(まさか・・・感知できない範囲にまで逃れたというのか・・・?範囲は現世全域にまで広げているのだぞ・・・)

 

その時、男は、はっと思いつく。

 

(確か、思念珠は1人の死神と共に行動していたな。思念珠単体では不可能だが、死神がいるならば、尸魂界に向かったことを考えれば、辻褄が合う・・・)

 

男は先ほどの部下を呼び出した。

 

「はっ!何事でしょうか!」

 

「・・・尸魂界に部下たちを派遣しろ」

 

「は?尸魂界にですか・・・?」

 

「そうだ、恐らく、思念珠が・・・」

 

その時、男の言葉を遮るように、ブザーが鳴った。

 

ビーーー! ビーーー! ビーーー!

 

「なんだ!?」

 

「少々お待ちください!・・・思念珠を感知しました!」

 

「なにっ!?それはどこだっ!」

 

尸魂界にいると考えていた男。

だが、感知したということは考えが変わる。

どうやら、自分の取り越し苦労だったみたいだ。

 

ただ、男は部下の報告が自分の予想斜め上だったことには気づけなかった。

なぜなら、茜雫は-----

 

「場所は・・・こ、ここです!」

 

「・・・な、に?」

 

聞き終えた瞬間、複数の霊圧を感じた。

そこへ顔を向ける。

 

「よう、厳龍」

 

「・・・・・・・・」

 

「・・・死神・・・」

 

崖の上に京夜と茜雫、そして、ルキア、海燕がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺たちは厳龍、及びダークワンたちを見下ろしている。

 

よくもまあ、こんな世界を作り上げたものだ。

そんな力があるのに、復讐の形となって使われているのが悲しいな。

 

突然、厳龍が拍手をした。

 

パチパチパチ・・・

 

「・・・?」

 

何のことだかわからなかった。

ただ、表情に笑みを浮かべている。

余裕のつもりか。

 

「よくぞ、我々の場所を特定できたな。死神諸君」

 

「・・・まあ、色々と情報を捏ね繰り回したからな」

 

「そして、君たちには感謝している」

 

「あ?」

 

感謝、だと・・・?

なにを言ってんだ・・・?

 

「そこにいる女の死神。思念珠だろう・・・?」

 

「・・・・・・・・」

 

厳龍は茜雫に指を指す。

茜雫は動揺しなかった。

 

「まさか、そちらから目的の物を届けてくれるとは。探す手間が省けたよ」

 

物・・・

こいつは茜雫を物としか見てねえんだな・・・

こんな奴らに茜雫を渡してたまるもんか!

・・・だが、こいつらは知らない。

茜雫に何があったのかを。

 

「何、言ってんだ、お前」

 

「・・・なに?」

 

「こいつは思念珠じゃなくなったんだよ。今は元思念珠って言った方がいいかな」

 

俺はそう言いながら、俺は茜雫の頭に手を置く。

「子どもみたいに扱うな!」とでも言いたげに俺を睨みながら、仏頂面になる茜雫。

ただ、振り解かないから、嫌ではないみたい。

 

「思念珠ではなくなった、だと・・・?もっとマシな嘘を言うべきだ」

 

「嘘っぱちでこんなことを言うかよ。テメエのお固い頭じゃ理解できないくらい、世界は広いんだぜ?」

 

「・・・できるはずがない。思念珠を一般の魂魄と同等にさせることなど・・・」

 

「それができたんだよ。欠魂の記憶だけ削り取り、茜雫自身が体験した記憶だけ残すことによってな」

 

本当、アキがいてくれて助かった。

もしいなかったら、原作通りになってしまってたのかもしれないからな。

 

俺はそう厳龍に告げながら、茜雫の頭をポンポン叩く。

 

あら?茜雫さんの身体が、わなわなと震えている・・・?

 

「あ~、もう、ウッザイ!頭を弄るな!」

 

「悪い悪い、ついノリでな」

 

「どんなノリだ!くすぐったかったんだからね!」

 

「あ、そういや、首、弱かったんだよな。頭もだったのか」

 

「あ、頭はそれほど弱くは・・・あ、あれ?何で、指をわきわきと動かしているわけ・・・?」

 

「ふっふっふっ・・・コチョコチョ~!」

 

「ちょっ、やめ!ひゃあ!?くしゅぐったい!?さ、さり気なく髪を弄るな~!」

 

お~お~、いつもは強気な茜雫も参ってるか!

あ、なんでいきなり、こんなことをしているのかと言うと、茜雫の身体が強張っていたから、少し解してやろうかと思ってな!

 

俺と茜雫のイチャイチャ(?)しているのを、白い目で見ている方たちが複数・・・

 

「あ~あ~、せっかくの雰囲気が台無しだわ・・・」

 

「うぅ~、羨ましい・・・。わ、私も混ざるべきなのだろうか・・・」

 

「・・・やめなさい」

 

海燕さんは呆れてしまって、ルキアはなぜか、顔を真っ赤にしてこちらを睨んでいる。

海燕さんの反応はわかるが、ルキアのその反応はどうなんだ?

「このたわけが!」とツッコムと思ってたんだがな。

 

さて、脱線したから置いて行かれている厳龍が可哀そうだ。

 

「さてと、ふざけるのはここまでにしといて、と」

 

「はぁ、はぁ、あ、あんた後で承知しないから、ね!」

 

「はいはい」

 

涙目になっている茜雫はほっとこう。

 

「・・・話は終わったか」

 

「おう、悪いな。え~と、だな。まあ、あれだ、お前の計画はこれで終わりだ」

 

「し、締まらねえな~・・・」

 

海燕さん、ずっとシリアスな雰囲気じゃ間が持たないでしょ!

時には休息が必要なものさっ!

 

「私の計画が終わる?」

 

厳龍は俺の言葉に訝しげに反応した。

さっきの雰囲気が一変したな。

 

「ククク・・・ハーッハッハッハ!」

 

「・・・何がおかしい」

 

「私の計画はその程度では潰れないさ」

 

厳龍はひとしきりに笑うと、笑みを浮かべたまま俺たちに衝撃の事実を告げた。

 

「世界を崩壊するのに思念珠が必要不可欠でもない」

 

「・・・どういうことだ」

 

「別に思念珠がいなくとも世界崩壊は成せる。ただ、思念珠がいれば我々の計画の進む速さが倍増する。だから、我々は思念珠を狙っていたのだ」

 

「てめえ・・・たったそれだけの理由で茜雫を襲ったのか!」

 

「思念珠も欠魂も道具にしかならん存在だ。道具としてなら、有効価値があるからな」

 

「言わせておけば!いい加減に-----」

 

「もういいよ、京夜」

 

俺が厳龍と討論に熱を燃やし始めようとした時、茜雫に止められた。

おかげで頭に昇った熱が下がった。

 

「あいつらには私や欠魂の価値なんて無いものだから。どれだけ言っても変わんないと思う」

 

茜雫は厳龍にあれだけ言われたのにも関わらず、平然としていた。

まるで、全て受け止めているという感じだ。

 

「でも、存在していることに価値がないのは認めない」

 

真っ直ぐに茜雫はここにいる全員に告げる。

 

「例えあいつらが、どれだけの人に価値がないと言われようが、たった1人でも私に価値があるというなら、私は存在し続ける!」

 

茜雫はそのままの勢いでさらに言葉を続ける。

 

「京夜は言ってくれたんだ!私は存在価値があるって!私は私、この世界で唯一の存在なんだって!だから、私は、京夜のために生き続ける!」

 

「茜雫・・・」

 

言い切った後、茜雫は俺の方へ向き、柔らかに微笑んだ。

それが本心だと偽りがないのがわかった。

 

この短い間で、随分と成長したな・・・

 

「フン、くだらんな。どのみち、世界は終焉を迎える。そしたら、存在もできなくなる。価値があるなしなど関係なくなっていくのだからな」

 

「させるかよ。それを阻止させるために俺たち死神がここにいるんだからよ」

 

海燕さんが1歩前に出て、そう言葉を放つ。

 

「私たちは護廷という名を背負う者。ここで退けば、その名を汚すことになる。世界を護らないで護廷は語れない!」

 

ルキアも厳龍にそう叫ぶ。

 

「私を道具として見てきたこと、後悔させてやるんだから」

 

茜雫も臨戦態勢をとり、厳龍を睨む。

 

「厳龍、覚悟しろ!お前をここで叩く!世界はやらせない!」

 

俺は鬼神の矛先を厳龍に向けて、そう告げる。

 

「いいだろう、かかってこい小童共。ダークワンの恐ろしさを堪能させてやろう」

 

指をパチンと弾く。

すると、ザッと後方から数人の武器を持った人たちが現れた。

多分、厳龍の部下たちだろう。

それと同時に、地面から欠魂兵士がわらわらと現れた。

 

俺と茜雫、海燕さんとルキアという組み合わせで囲まれた。

海燕さんが欠魂兵士を見て、困惑する。

 

「なんだ・・・?この黒い奴ら・・・?」

 

「こいつらは欠魂兵士というダークワンたちが欠魂を強化させた操り人形です。一番厄介なのが、下半身を切断しない限り、何度でも蘇ることです」

 

「ということは、ただ、斬るだけではダメということか」

 

ルキアが欠魂兵士の攻略を結論づける。

この2人は欠魂兵士は初見だ。

ここは俺も加勢に入った方がよさそうか。

 

「海燕さん、ルキア、今から加勢に-----」

 

「俺たちのことは構うな!お前は目の前の敵に集中しろ!」

 

海燕さんに指摘され、俺は前方にいる敵に集中する。

 

そうだ、俺の所には茜雫がいる。

もしも、茜雫の身に何かあったら、危険だ。

その時は俺が護るしかない。

それに、2人のことは信じてるしな!

 

「・・・2人とも、無茶しないでください」

 

「はっ!誰に言ってやがる。長年、副隊長を務めてる俺をなめんなよ」

 

「京夜こそ、無理はするな。・・・死ぬなよ」

 

「こんな所で死ぬ気はねえよ」

 

2人とも十分に実力はある。

副隊長の海燕さんは言わずもがな。

ルキアだって、実力的には席官クラスだからな。

 

「茜雫、俺たちの連携を見せてやろう!」

 

「うん!あいつらにギャフンと言わせてやるんだから!」

 

「ルキア、あまり離れすぎんじゃねえぞ。個人で戦ったら、勝機が下がるからな」

 

「はい、わかっています」

 

俺たち4人は臨戦態勢をとる。

 

「いくぞっ!」

 

「「「おう!」」」

 

決戦が幕を開けた瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おらあ!」

 

「はあっ!」

 

俺と茜雫は欠魂兵士を切り伏せていた。

初めての連携だったが、タイミングがわりと合っている。

茜雫の後ろを俺がカバーし、俺が切り終えて動けなくなっている時に茜雫がカバーに入る。

 

よし!この調子なら、早急に終わる!

 

だが、現実ってのはそんな容易いことじゃない。

欠魂兵士を半数切り終えた所で、とうとう厳龍の部下が動き出した。

 

「あらよっと!」

 

「くっ!」

 

ガン!

 

上空からヌンチャクを振り回し、俺に攻撃してくる男。

俺は鬼神で防御する。

 

「京夜っ!」

 

「余所見していていいのかしら?」

 

「っ!?うっ!」

 

キン!

 

フェンシングのような剣で突き刺す女。

茜雫はかろうじてそれを防いだ。

 

一度、距離を離し、俺と茜雫は背中を預け合う。

 

「俺の名はテンイだ。見ての通りヌンチャク使い。一度当たったら、骨が折れると思うから注意した方がいいぜ」

 

「私の名はベル。斬魄刀と私の剣、どっちが強いか勝負しましょう」

 

長髪を縛っている男がテンイ、金髪ショートボブの女がベルか。

まあ、覚える気はねえが。

 

すると、茜雫が不安そうに尋ねてきた。

 

「どうする、京夜。こいつら倒さないと厳龍に辿り着けない。かと言って、ここでちんたらしていられないけど・・・」

 

茜雫の言うとおりだ。

早急に片付けなくちゃいけない。

そこでだ。

 

「茜雫、耳を貸せ。俺に提案がある」

 

「え?なに?」

 

俺は茜雫に作戦を耳打ちした。

 

「うんうん。わかった。それなら、安易だけど、いけると思う」

 

「安易は余計だ。そんじゃあ、作戦通りにいきますか!」

 

「あ?なんだよ、小細工か?」

 

テンイが俺に聞いてきた。

小細工?

ふっ、そんなこと、俺らがすると思ってんのか?

 

「そんな難しいことじゃねえよ。ただ単に、全力で倒すってことだ!」

 

俺の掛け声と同時に俺と茜雫は始解する。

 

「纏え『鬼神』!」

 

「夕闇に誘え『弥勒丸』!」

 

ドンと霊圧があがり、鬼神は大剣に、弥勒丸は錫杖に変える。

 

「女は任せたぞ」

 

「早めにそいつ潰してよね」

 

茜雫はベルの方へ、俺はテンイの方へ向かった。

 

「せいっ!」

 

「おおっと」

 

鬼神を切りつけたが、テンイは軽やかなステップで躱す。

 

ちっ、流石はヌンチャクを武器に扱う男だ。

身軽だな。

 

そしたら、今度はテンイが攻撃を繰り出した。

 

「そぉらっ!」

 

「ふっ!」

 

ヌンチャクを振り回してきたが、瞬歩を使い、避ける。

さらに、俺は背後へ回り込み、鬼神を振るう。

 

「らぁ!」

 

「よっと!」

 

ガン!

 

俺の攻撃をヌンチャクを横にして防ぐ。

しかし、これで動きが止まったな。

 

「止まったな?」

 

「あ?何を言って-----」

 

テンイが話し終わるのを待たずに、俺はテンイの腕を持ち、思いっきりぶん投げた。

 

「とんでけーーー!!!」

 

「なっ!?どわあっ!?」

 

ドゴン

 

テンイは岩壁に激突した。

よし、作戦第1段階が終わった。

 

「茜雫、今行く!」

 

「いっつ~~~、あ、あいつ最初から俺と戦う気はなかったってことかよ・・・!」

 

向こうからそんな声が微かに聞こえたが無視だ。

テンイは脳震盪を起こしているのか、すぐには立てなさそうだ。

今の内にっと。

 

俺が茜雫の元へ向かったら、茜雫はベルと激闘を繰り広げていた。

 

「はぁ!せい!せい!せい!」

 

「く~~~っ!」

 

ベルは何度も突き刺し、それを茜雫は弥勒丸で軌道を逸らすようにしている。

 

少し押されているか?

 

「私の剣術は『蝶のように舞い、蜂のように刺す』こと。あなたの剣術は蝶でも蜂でもない、ダンゴ虫のようだわ」

 

「虫に例えられても訳わかんないんだけど・・・」

 

何か下らねえ話をしているみたいだな。

さて、ようやく追いついたし、反撃開始とするか!

 

「茜雫!待たせたな!」

 

「京夜!もうちょっと早く来てよ!」

 

「んなのこと、言われてもな・・・」

 

こっちだって相手していたんだ。

寧ろ早いほうだと思うが。

 

「おやおや、2人でお相手ですか。全く、テンイの奴は・・・。後で、お仕置きですね」

 

「悪いな、お仕置きする時間はお前にはないっ!」

 

俺はすぐさま突貫し、ベルと鍔迫り合いになる。

 

「もしや、私を倒そうと思ってらっしゃるのですか?そうでしたら、滑稽ですね」

 

「俺たちをなめんなよ。特に茜雫を」

 

ダークワンは茜雫を見くびりすぎている。

あいつはああ見えて強いんだぜ。

特に連携時にはな。

 

俺は茜雫に合図を出す。

 

「茜雫、今だ!」

 

「うん!弥勒丸!」

 

弥勒丸を振ると、竜巻が起きた。

俺はすぐさまその場から離れた。

俺の陰によって竜巻が見えなかったベルは、対応に遅れて竜巻に飲まれる。

 

「いやあああああああっ!?こ、こんな風如きで私を倒せると思うな~!」

 

グルグルと周り、上空へと吹き飛ばされるベル。

 

いいぞ、ここまで作戦通りだ。

最後の仕上げと行くか。

 

「茜雫、作戦通りに」

 

「わかってるよ」

 

茜雫は定位置に移動する。

俺はベルがいる上空へ飛ぶ。

それと同時に竜巻が消えた。

 

「くっ!あんな突風くらいで私をやれると思わないでくださいよね!」

 

「そりゃ、そうだ。あらは囮だからな」

 

「えっ、どこから声が・・・!」

 

ベルが俺の存在に気付いたが、もう遅い。

俺はベルがいる所よりさらに上空にいた。

そこから、急速落下するように、膝でベルの腹を蹴る。

そのまま一緒に落下する。

 

「がはっ!?あ、あなた・・・っ!」

 

「お前を上へ飛ばすこと。それが俺たちの作戦だ」

 

「こんなものが作戦?無理やりすぎますね。それより、膝をどかしなさい!」

 

「いいのか?俺の方へ意識していてさ」

 

「え・・・?」

 

ベルは後ろを意識する。

落下点に茜雫が弥勒丸を地面に突き立てていた。

 

このままいけば、身体を貫通するだろう。

 

「わ、わあああ!?や、やめてください!?やめて-----」

 

「もう遅い。さよなら」

 

俺は膝に力を入れ、突き落す。

そして、その場から離れる。

すると、ベルは何も抵抗ができないまま、胸に弥勒丸が突き刺さった。

 

グサッ・・・

 

「あ・・・が・・・はっ・・・」

 

ぐったりとしているベル。

徐々に身体が霊子に変わり、サアッと消えた。

 

これでもう1人だ。

その1人、テンイがやって来た。

 

「テメエ、最初からベルさんを狙っていやがったのか!・・・って、ベルさんがいない・・・?」

 

「そのベルって奴は死んだぞ」

 

「なっ!?う、嘘だろ!?あのベルさんが・・・そんな・・・」

 

けっこうショックを受けてるな。

こいつとベルはどんな関係なんだろうな?

まあ、俺が気にすることじゃないか。

 

「っ!テメエらだけは、絶対に許さねえ!ぶっ殺す!」

 

ドンと突貫してくる。

向かった先は茜雫だ。

 

「ちっ!」

 

「おおおおおおおおっ!!!」

 

テンイはヌンチャクを思いっきりに振るう。

 

させるかよ、茜雫を護るって決めたんだからな。

 

ギン!

 

「先に倒せそうな女を狙う、か。ずいぶんと性格ねじ曲がってんじゃねえか」

 

「京夜・・・」

 

「うるせえ!死ねえ!」

 

茜雫の前に出て、ヌンチャクを防ぐ俺。

テンイは狂乱したような顔になり、ヌンチャクを持ち直し、再度攻撃してきた。

 

もう見切ってだよ!

 

「『憑依:破道の三十一・赤火砲』」

 

鬼神が紅蓮の炎に包まれる。

そのまま、鬼神を振り、ヌンチャクと激突する。

 

ボゴン!

 

「ぐぉあ!」

 

赤火砲を憑依した鬼神の能力の爆破により、ヌンチャクが跳ね返り、テンイの懐に直撃した。

テンイは一気に吹き飛ばされる。

 

「げほっ!げほっ!く、くそがっ・・・!」

 

「誰がくそだって?」

 

「っ!?」

 

俺はすぐさま吹き飛ばされたテンイの元へ向かい、目の前に立った。

予想外だったテンイは目を大きく見開く。

しかし、すぐさま、戦闘時の目つきに変わり、ヌンチャクを振った。

 

「仇を・・・ベルさんの仇を討つんだよぉ!!!」

 

パシッ

 

「っ!?」

 

ヌンチャクを手に持っている方の腕を俺は抑える。

 

「くっ!離しやがれ!」

 

「離さねえよ。離したら、お前攻撃してくるだろ」

 

「テメエらなんか・・・テメエら死神なんか、厳龍様の足許にも及ばない!厳龍様の計画は遂行される!そして、世界は崩壊し、テメエらは成す術も無く、消えていくんだ!そうすればベルさんも-----」

 

「・・・もういい、終わりにしよう。お前を斬る」

 

ザンッ

 

鬼神を振るい、テンイから鮮血が舞う。

ドシャと地面に倒れ伏したテンイは微かな声で呟いていた。

 

「・・・ベルさん・・・ごめん・・・仇、討てなかった・・・世話になったのに・・・・・好き、だったのに・・・・・」

 

霊子に変わり、消え去るテンイ。

 

好き、か・・・

テンイには気の毒なことをした。

まさか、ベルが好きな人だったとは・・・

だが、これは戦い、戦争だ。

敵に情けをかければ、こちらが終わってしまう。

残酷なもんだな・・・

 

しかし、愛する人を失うと、人はあそこまで怒り狂い、豹変するのか・・・

だが、必ず、強くはなる。

俺にもそんな人ができるのかな・・・

そんな、愛する人が・・・

 

「京夜、やったんだね!」

 

「あ、ああ、とりあえず、勝ったな・・・」

 

「どうしたの?浮かない顔して」

 

「いや、なんでもない・・・」

 

茜雫に心配させちまったな。

そんなに顔にでてたか。

茜雫には・・・このことは話さない方がいいな。

茜雫は優しい奴だからな。

きっと、テンイから愛する人を奪ってしまったって、自分を責めると思う。

 

「海燕とルキアは大事かな・・・」

 

「大丈夫だ。あの2人は信頼できるからな」

 

遠くで海燕さんとルキアの霊圧を感じる。

2人とも一生懸命に戦ってるんだ。

さっきのことを思い出したら、キリがない。

切り替えよう。

 

「厳龍の元へ向かうとしよう。あいつさえ倒せば、全てが終わる」

 

「うん。って、うわぁ、また欠魂兵士がわんさかと・・・」

 

見ると、道を阻むかのように欠魂兵士が出てきた。

 

こいつらを切り伏せながら、進むしかないのか。

時間が迫ってきてるってのに、面倒だ!

 

「厳龍・・・」

 

いつの間にか、高台の崖に移動している厳龍。

こちらの様子を楽しげに見ているな。

 

待ってろ、すぐに追いついて、首を跳ねてやる!

 

俺と茜雫は欠魂兵士を捌きながら、厳龍の元へ進んだ。




いかがでしたでしょうか?

ちょっと、バトルシーンが物足りなかったかな?

さて、次回はルキアと海燕のシーンです。
もちろん、この2人にも強敵がでますよ。
増援に来る隊長たちが見たいと思いますけど、お待ちくださいね。

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