BLEACHへの転生者   作:黒崎月牙

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早めに投稿!・・・そうでもないか。
ふと、思いましたが、毎日投稿している人ってスゴイですよね。
よく、そんなに書けるな、と思います。
自分なんて、早くて3日くらいなのに・・・

さて、前話では京夜が弱すぎる、という意見がありました。
確かに、書いてて、ちょっと、弱すぎんじゃねえかって思います。
書き直したいのですが、欠魂兵士の説明や、平子たちをかっこよく演出してしまい、どうしても、訂正できませんでした。
空いた時間でできるだけ、試行錯誤しようと試みますが、成るべく、この件に関しては目を瞑っていただけると、嬉しいです。
すみません、駄目作者で・・・
今後はもっとチート風に魅せるようにしますので!

さて、そんな長い前置きはいいですね。
今回、やっと、茜雫の記憶が消えます。
そして、待ちに待ったあいつらが再登場!
劇場版のクロスを括目せよ!


現世に行くことに意味がある~生きるための消失~

俺と茜雫はあの場から離れていた。

あいつらに平子さんたちを任せてしまったけれど・・・

多分、大丈夫だ。

仮面の軍勢は強いからな。

 

「ひよ里たち、大丈夫かな・・・」

 

「心配すんな。あの人たちは強い」

 

平子さんたちの心配をするのもいいけど、自分の心配もしてほしい。

これから、記憶を失くさせるんだぞ。

 

俺と茜雫はとある公園に辿りついた。

 

「よし、ここまで来れば大丈夫だな。今から穿界門を開く」

 

「じゃあ、これから私の記憶を消すんだね・・・」

 

「そうだ。尸魂界に行けば、お前を救う手段があるからな」

 

あまり時間はかけたくない。

また別の追手が来ると、厄介だからな。

 

俺が鬼神を空に翳すと、襖のような門が現れた。

 

「もうすぐに行こうと思うんだが・・・行けるか?」

 

「・・・うん、決めたから。行くよ」

 

現世を一瞥した後、向き直る茜雫。

やっぱ、多少は心残りがあるようだな。

けど、ここで躊躇してしまったら、茜雫の信念が揺らいでしまう。

躊躇わずに、行こう。

 

「そんじゃ、行くぞ!」

 

「うん!」

 

俺と茜雫は穿界門を潜った。

 

潜ると、流魂街のどこかに来ていた。

 

この景色・・・戌吊まで近い場所だな。

 

「ここが尸魂界・・・」

 

「そうだ。魂魄が流れ着く場所だ。俺の他の死神たちも向こうに住んでいる」

 

茜雫が辺りを見渡して、驚いていた。

 

見ると、遠くの方に瀞霊廷が見えた。

けっこう距離があるな・・・

 

「ねえ、京夜・・・。アレ、何・・・?」

 

「アレ・・・?」

 

俺は茜雫が指差す方向へ顔を向ける。

そこに写っていたのは、信じられないこと。

だが、原作同様の出来事が起きていた。

 

「現世が・・・映っている・・・」

 

空に現世の光景が映し出されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

時間は朝にまで巻き戻される。

 

突如、尸魂界の上空から現世の光景が映し出されてた。

 

「な、なんだよ、あれは・・・!?」

 

隊舎から顔覗かした海燕は心底驚いた。

今まで自分が在籍していたことで、こんな現象は初めてだった。

 

「伝令!」

 

「なんだ!?」

 

海燕の傍に伝令役の人物が、突如、現れた。

海燕は怒鳴るように聞いた。

 

「総隊長様が、これより隊長格全員を集合させ、緊急隊首会を開くとのこと!」

 

「なんだと!?」

 

緊急隊首会など、100年前に起きた以来だった。

先程起きた現象はそこまでさせるほどのことなのか、と海燕は驚愕した。

伝令役が、失礼します、と言い残し、立ち去る。

 

「くそっ!隊長の身体が万全じゃねえってのに・・・仕方ねえ、俺が-----」

 

「その必要はないぞ」

 

後ろから声がかかり、思わず振り返る海燕。

そこには浮竹が立っていた。

 

「た、隊長!?動いて、大丈夫なんすか!?」

 

「こんな非常事態なのに、おちおち寝ていられるか。隊首会には俺が出席する」

 

「・・・すみません。無茶しないでください・・・」

 

「なーに、話すだけだ。心配するな。それよりも、お前は隊の者たちを落ち着かせることに専念しろ。恐らく、皆混乱したいるだろう」

 

「了解っす!」

 

話すことが終えると、浮竹はその場から離れる。

途端、話していた時には、明るい顔をしていたが、急に険しく、真剣な顔つきになった。

 

「・・・一体、何が起きようとしているのだ・・・!」

 

ギリッと歯噛みしながら、浮竹は向かう。

一番隊隊舎へと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空には現世の景色が映っていた。

原作通りに事が進んでいるようだ。

だとしたら・・・時間はあまり残されていないな・・・。

 

「茜雫、急ぐぞ」

 

「えっ!?ちょ、待ってよ!」

 

俺が急いで動いたものだから、茜雫は慌てて俺の後を追いかける。

 

向かう先は戌吊。

あいつらがいる場所だ。

 

「ど、どうしたの・・?空のアレを見た瞬間、焦っているようだけど・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

俺は何も言わず、淡々と向かった。

 

訳を話したいが、恐らく長くなると思うし、原作のことを不用心に話したくない。

茜雫には悪いが、黙ってついてきてもらう。

 

走り続け、漸く目的付近の場所に着いた。

 

「よし、ここからだな」

 

「え?ここって・・・林なんだけど・・・」

 

「場所はここじゃない。この先だ」

 

俺は獣道へと歩を進める。

 

前来た時より、雑草が生えているな。

枯葉が大量に落ちている。

 

「え~!?この林を通るの!?」

 

「グダグダ言わず、着いてこい!」

 

「うぅ・・・わかったよ~・・・」

 

全く、我儘言うな。

高校生らしい反応だが、今はそんなことは捨てろ。

茜雫にはあいつらを見習ってほしいものだ。

 

草木を分けながら、歩き続けていく俺と茜雫。

暫く、歩き続け、漸く目的の場所が見えた。

 

「ついたぞ」

 

「は~、やっとか~・・・って」

 

茜雫は肩で息を吐きながら、目的の場所に目をやる。

それを見て、目を丸くした。

 

「・・・ただの民家じゃない。しかも、ボロい」

 

「ボロいは余計だ」

 

ったく、一言多いんだから。

一応、ここは俺も住んでいたんだぞ。

失礼すぎるだろ。

 

俺と茜雫は民家に向かい、ノックを叩いた。

中から3人の霊力を感じたから、恐らくいるはずだ。

 

「はいは~い、誰~?-----お、お兄ちゃん!?」

 

「よう、焔。久しぶりだな」

 

戸を開けると、出迎えたのは焔だった。

暫く会っていなかったが、あまり変わっていないな。

 

「わーい!お兄ちゃん、会いたかったよ~!」

 

「おわっ!?」

 

いきなり、飛び掛かり、抱きついてきた。

余程、嬉しかったのか、天真爛漫な笑顔を作る。

 

「お兄ちゃ~ん」

 

「あー、はいはい」

 

スリスリと身体に頬を擦り付けてくるから、取りあえず頭を撫でておく。

それが気持ち良かったのか、フニャ~と抜けた声をだす。

 

「きょ、京夜・・・。この子は一体・・・」

 

「あー・・・えーと・・・俺の(義理の)妹、だ」

 

「い、妹か・・・よかった」

 

状況が飲み込めていない茜雫は引き気味にそう尋ねる。

一応、妹として説明をしとこう。

似ていない、とかなんとか言われたら、後で説明をすればいい。

 

焔とじゃれあいをしていると、奥から2人の人影が見えた。

 

-----おかえり、京夜

 

「・・・おかえり、兄さん」

 

「おう、ただいま。アキ、雫」

 

2人は微笑みながら、俺を出迎えてくれた。

 

焔を引き剥がし、俺と茜雫は中に入る。

茜雫はこういうのに慣れていないのか、ソワソワオドオドしていた。

 

茜雫に俺とこいつらの関係性を、表側だけ伝える。

アキのことは幼馴染とだけ答えた。

ルキアとは幼馴染だし、間違ってはいない!

裏側のことを話せないな・・・

 

「悪いな、お前ら。急に来ちまってよ」

 

「・・・別に構わないよ。それにしてもどうしたの、急に?」

 

「ちょっと、な・・・」

 

俺は茜雫を一瞥して、苦笑いを作る。

さて、茜雫のことを何て口火を切ったらいいか・・・。

 

「お兄ちゃん、その子どうしたの?」

 

-----私も、気になる

 

おっ、2人が口火を切ったおかげで話しやすくなったな。

 

「こいつは茜雫だ。俺が現世に行った時・・・色々とたくさんの経由をしてきた結果、知り合いになった」

 

「・・・茜雫です。よろしく」

 

茜雫はぶっきらぼうにそう答える。

 

おいおい、初対面にそれはないだろう・・・

 

「・・・・・・・・」

 

-----・・・・・・・・

 

アキと焔がジト目で俺を見てきた。

 

なんだろう・・・視線がイタイ・・・

 

すると、2人がヒソヒソと話し始めた。

 

「お兄ちゃん、また女の人、連れてきたね・・・」

 

-----しかも、私たちが、知らない人・・・

 

「どういう関係なのかな・・・?」

 

-----聞く、べし!

 

向き直り、2人が俺に聞いてきた。

 

何の話をしていたのだろうか・・・?

 

「お兄ちゃんとその人はどういうご関係?」

 

-----具体的に、お願い

 

具体的に、か・・・

 

「わ、私と京夜は別にそんな深い関係じゃ-----」

 

「ん~と、一緒に暮らしている、か?」

 

「ちょっ!?」

 

茜雫の言葉を遮り、俺が答える。

 

あ、言っちゃマズったかな?

そしたら、アキと焔はまたヒソヒソと話す。

 

「聞いた・・・。今の言葉」

 

-----2人っきりで、暮らしている、と

 

「う~、ズルイよ~。私だって、2人っきりで暮らしたいのに~」

 

-----同感

 

「・・・一体、何人の女を落とす気なの・・・」

 

-----その1人に、私たちも、含まれている・・・

 

「はあ・・・」

-----はあ・・・

 

・・・

なんで、2人はガクッと肩を落としているのだろうか・・・?

心なしか、こっちを睨んでいるような・・・

 

「なあ、雫、あいつら俺のこと睨んでないか・・・?」

 

「・・・ぶれないね、兄さん」

 

「???」

 

ぶれない・・・?

そりゃあ、心がぶれたら、俺じゃなくなっちまうしな。

つまり・・・どういうこと?

 

「・・・ところで、兄さんは本当に何しに来たの?ただ、茜雫を紹介しに来ただけ?」

 

「いやいや、違うぞ。お前らに大事な用があるから、来たんだ」

 

「・・・大事な用って?」

 

いけねえ、久しぶりにこいつらと話したせいで、盛り上がっちまった。

本題に入るとするか。

 

「頼む」

 

俺は3人-----特にアキに向かって、頼み込んだ。

頭を下げて。

 

「茜雫を助けるのに協力してくれ!」

 

-----・・・何が、あったの・・・

 

俺は3人に茜雫のことをかいつまんで話した。

茜雫は内容が内容なだけに、居心地が悪そうにしていた。

 

「-----ということなんだ・・・」

 

-----なるほど・・・

 

「・・・けっこう訳ありだね」

 

「よくわかんなかったけど、アキ姉の力が必要ってことなんだね」

 

アキと雫は理解し、焔はよく理解できなかったみたいだが、なんとなく、察したみたいだ。

 

「・・・私は生きられる、の・・・?」

 

茜雫が俯きながら、そう呟いた。

その声は震えていた。

 

きっと、不安なんだろう。

 

-----大丈夫

 

スッとアキが茜雫に寄り添う。

 

-----私と、京夜で、あなたを救ってみせる

 

「・・・・・・・・」

 

アキの目は真っ直ぐに茜雫を捉えていた。

その瞳はとても慈愛に満ちているように見えた。

 

アキはいい奴だな。

突然、邪魔して、見ず知らずの茜雫に変わらず接してくれる。

おまけに快く了承してくれた。

本当、お前に頼ってよかったぜ・・・

 

「えっと・・・そんなに見つめられても困るんだけど・・・」

 

茜雫は視線を泳がしながら、困り顔になる。

 

あ、そうか。

アキの声は茜雫には聞こえていなかったのか。

アキの声は一部-----アキの霊力が体内に入っている人じゃないと、聞こえない。

ここは通訳が必要だな。

 

「茜雫、アキは『大丈夫、自分と京夜に任せてくれ』って言ってるんだ」

 

「え!?京夜、わかるの!?」

 

「俺だけじゃないぞ。焔と雫もだ。一部の人にしかアキの声は聞こえないからな」

 

「だ、だから、私には聞こえなかったのか・・・。その、ありがとう・・・」

 

アキはそれに答えるかのように、ニコッと微笑む。

そして、徐にスッと立ち上がり、物置の方へ歩む。

そこから、大きな箱を取り出し、中身を手に持つ。

手には、記憶を失くさせる鎌があった。

 

-----これを使えば、消せる

 

「よし、早速、行おう。俺は何をすればいい?」

 

-----京夜には、記憶の選別をしてもらう

 

「選別?」

 

-----今の私1人で、やると、極端に消すことしか、できない。

 

「極端、というと?」

 

-----全ての記憶を、消すことは簡単。意識すれば、1日単位での、記憶を消せる。でも、京夜との記憶だけを残して、他の記憶を消す場合、相当な緻密作業になる。私1人では、無理

 

「つまり?」

 

-----私が記憶を、消す役割。京夜が記憶を、選ぶ役割

 

「なるほど、役割分担か。やってやるぜ」

 

-----意気込み、十分でよろしい。なら、片方の手で、私の手を握って

 

俺はアキの手を握る。

 

-----空いてる方の手で、茜雫の頭に手を置く

 

「了解。茜雫、じっとしてろよ」

 

「う、うん・・・」

 

ポンッと頭に手を置く。

 

「・・・こんなので、本当に記憶を消せるの・・・?」

 

「アキがこの方法を教えるんだ。黙って、従っとけ」

 

-----霊力を、茜雫に注ぎ込むようにすれば、記憶の中に入れる

 

「き、記憶の中か・・・」

 

どういう所なんだろうな。

珍しい体験になるだろうな。

 

「それじゃあ、霊力を-----」

 

「ちょっと、待って!」

 

「焔?」

 

焔が急に叫んだ。

 

一体どうしたというんだ。

 

「私と雫も手伝わせて!」

 

「・・・僕たちも何か力になりたい」

 

「お前ら・・・」

 

本当に、お前らは・・・

優しい奴らだな・・・

 

-----わかった。2人とも、私と京夜が握っている場所に、手を置いて

 

「こ、こう?」

 

「・・・はい」

 

-----そしたら、2人は一斉に、霊力を流して。京夜はさっき言った通りに

 

「おう」

 

-----これで、成功率は、上がるかも

 

アキは微笑みながら、2人を見る。

 

焔も雫も立派になったな。

改めて思うぜ。

さてと、準備も整った。

 

「・・・茜雫、いくぞ」

 

「・・・うん、信じてるよ。京夜」

 

-----・・・始めて

 

俺は茜雫に霊力を流した。

同時に、茜雫は気絶し、俺は意識が吸い取られる感覚に陥った。

 

 

 

 

 

 

 

 

今、私の頭の上に京夜が手を置いている。

これから記憶を消す・・・

 

どんなことが起きるかわからない。

京夜は危険、と言っていた。

けど、この方法しか私は助からない。

だから、決意したんだ。

 

京夜を信じているから。

 

こういう時だからだろうか。

今までの出来事が思い返される。

走馬灯と言うものなんだろうか。

 

 

 

出会いは最悪だった。

 

『待てって言ってんだろうがっ!』

 

私の髪をいきなり引っ張ってきた。

知りもしない人なのに、乱暴な人だった。

 

けど、私に初めて話しかけてくれた人物だった。

 

 

 

彼は私に与えてくれた。

 

『そのお詫びというか、さっき助けてくれた礼として買ってやるよ』

 

『一目見て、茜雫に似合うと思ったんだ。それに、制服だけじゃ、何かと不便だろ?』

 

あの時は驚いた。

リボンしか頼んでないのに、服を一式買ってくれた。

まるで、私という存在を最初からわかっていたように。

 

 

 

彼は私を護ってくれた。

 

『よう、茜雫』

 

『夜道で女に手を出すからイケねえんだ。そのくらいの代償は払ってもらうぜ』

 

謎の男-----今は敵だとわかるけど、そいつに襲われた。

その時、彼は颯爽と来てくれた。

私の考えがわかっていたかのように。

 

 

彼は私に居場所を作ってくれた。

 

『茜雫、俺の家に来るんだ』

 

『俺の元にいれば、1人よりかは安全だ』

 

突然、彼からの提案。

私は嫌だと言ったけど、内心嬉しかった。

気づいた時から私には帰る場所も、衣食住の場所もなかったから。

 

 

彼は私を慰めてくれた。

 

『お前は十分に闘った。おかげで被害は最小限に済んだじゃねえか。よくやったな、茜雫』

 

『お前はお前だ。この世で茜雫という人物は唯一お前だけだ』

 

グランドフィッシャーによって、自分のことを感づいたしまい、心が折れそうになった時、彼は優しい言葉で私を包み込んでくれた。

甘えるように私は大泣きした。

その時からかな。

京夜のことを意識し始めたのは。

 

 

彼は私に友人を作ってくれた。

 

『ワイは平子真子と言います~。よろしゅうな』

 

『ワイらが来たのは茜雫をここで死なせたくあらへんから来たんや。それに、あんたにはやるべきことがあるやろ?』

 

平子に始まり、ひよ里、拳西、白、ローズ、ラブ、リサ、ハッチ。

みんな、いい人で、私のことを思ってくれた。

私に忘れられない思い出を残してくれた。

 

 

そして、今・・・

 

彼は私を生き残らせようとしてくれている。

 

不安はある。

未練もある。

けど、後悔はない。

 

私は生きると決めたんだ。

この本当の記憶の所有者の分まで。

 

それに、まだ死ぬわけにはいかない。

私には信頼できて、大切な人で、一緒にいると楽しくて、それで-----好きな人ができたから。

いつ好きだったかはわからない。

自然と芽吹いたものかもしれない。

けど、今になってはっきりとわかった。

 

私、茜雫は京夜のことが好き。

 

優しいところ、真っ直ぐな目、自分の信念を曲げない、私のことを思い、護り、尽くしてくれる。

とにかく、全部に惚れてしまっていた。

 

(好きだよ・・・京夜)

 

口には出さない。

私は2度と帰って来れなくなるかもしれないから。

だから、今だけは心の中で、告白しよう。

 

もし、私が生きれたら。

きちんと、自分の口から言うよ。

 

だから・・・私を救って、京夜。

 

「・・・茜雫、いくぞ」

 

「・・・うん、信じてるよ。京夜」

 

彼の霊力が流れ込んでいく。

その衝撃のせいか、私の意識が消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

『ん・・・?ここは・・・』

 

俺が目を開けた先には、民家の景色ではなくなっていた。

淡い光を照らしている空間。

その中に、フワフワとシャボン玉のようなものが浮かんでいた。

 

そうか・・・記憶の中に入れたんだな。

とりあえず、切り口は成功したみたいだな。

 

-----無事に、入れたみたい

 

『アキ!お前も入れたんだな!』

 

斜め後ろ向くと、大鎌を片手に持ったアキがいた。

アキは安心させるかのように、微笑んだ。

 

-----一先ず、成功。ここからが、本番

 

『ああ、そうだな・・・』

 

ここからが大仕事だ。

俺は記憶を探さなくちゃいけない。

誤って消してはいけない記憶を消したら、大惨事だ。

1つも間違いは許せない。

 

『なあ、あそこに漂っているものって・・・』

 

-----そう、彼女の記憶

 

シャボン玉に指を指しながら、聞く。

 

やっぱりか。

薄々気づいてたけど、改めて見ると、記憶ってスゴイな。

たくさん浮遊してやがる。

 

-----シャボン玉を、覗き込めば、どんな記憶か、わかる

 

『了解。早速、始めるか』

 

俺とアキはシャボン玉に近づく。

俺が覗き込むと、そこには幼い茜雫とお父さんらしき人が楽しげに歩いている光景が見えた。

 

『・・・・・・・・』

 

-----・・・躊躇っている?

 

『そりゃあな・・・。こんな楽しそうな記憶を見ちまったら・・・』

 

-----でも、やらなければ、いけない。苦しみから、抜け出すには・・・

 

『わかってるよ・・・』

 

ここに来て、感じる責任感という重圧。

人の記憶を消すのがこんなにも、怖いとはな・・・

この記憶を消してしまったら、茜雫は2度と思い出すことはない。

けど・・・やるしかないんだ。

 

俺は1度深呼吸し、口を開いた。

 

『これを、消せ』

 

-----うん

 

ザン

 

アキは大鎌を振るい、1つのシャボン玉が真っ二つに切れた。

これで苦しんでいた1つの記憶はなくなった。

だが、まだたくさん残っている。

 

『次だ。行くぞ』

 

-----わかった

 

それから、俺とアキは次々と記憶を消していった。

消した記憶には、親から暴行されている茜雫、誕生日を祝っている茜雫、クラスの友人たちと仲睦まじく話している茜雫、1人ぼっちでご飯を食べている茜雫、等々・・・

 

見ている方が辛かった。

茜雫はこんなにもたくさんの記憶を保有し続けていたんだな・・・

よく自我が保っていたと思う。

普通なら壊れてしまう。

 

だが、消しても消しても、一向に見つからない。

それは、俺との記憶。

今まで見てきた記憶は俺の姿が何1つ見つからない。

 

とうとう、最後の1つになってしまった。

 

『・・・これで最後か』

 

-----きっと、これが京夜との記憶。確認して

 

『ああ』

 

俺はラスト1つのシャボン玉を覗く。

そこから見えた光景に俺は驚いた。

 

『なっ!?』

 

-----どうしたの?

 

『・・・これも違う』

 

-----えっ・・・!?

 

『この記憶にも俺の姿がいない・・・!』

 

そこには、身投げしようとしている茜雫の光景だった。

必然的に俺の姿は映っていない。

 

どういうことだ・・・!

今まで見てきたのは全部違ったんだぞ!

最後に残った記憶が俺のじゃないのかよ!

 

-----京夜

 

『くそっ!どうしてだよっ!やっぱり、茜雫を生き残らせられないのかよ・・・』

 

-----・・・あれ、見て

 

『え・・・?』

 

俺が訳がわからず、諦めかけた時、アキがどこか虚空を指を指した。

 

その先には、この空間を照らし続けている、光が見えた。

 

-----光

 

『いや、それはわかってるけど・・・』

 

-----・・・だと、私も思っていた。けど、変

 

『変・・・?』

 

俺は再度、光を見る。

 

確かに、光の割には何か揺らいでいるような、歪んでいるような・・・?

 

-----行ってみよう。何か、わかるかも

 

『あ、ああ』

 

俺とアキはゆっくりと近づいて行った。

光が徐々に大きくなっていく。

眩しさが限界に達し、思わず目を瞑る。

 

再び開けた時、俺とアキは目を疑った。

 

『こ、これは・・・』

 

-----スゴイ・・・

 

そこには、一際大きいシャボン玉があった。

その大きさは俺の倍以上、とにかく巨大だった。

 

そこに映っていたのは・・・俺と出会ってから今までの思い出だった。

 

『俺が・・・映っている』

 

-----これが、京夜との記憶。茜雫にとって京夜は、他の記憶とは比べ物にならない位、大切で、存在が大きかった

 

『だから、こんなに大きくて、奥深くにあったのか・・・』

 

茜雫にとって俺の存在は大きかったんだな・・・

よかった・・・茜雫と出会えてよかったと思う。

こんなに俺を思ってくれているなんて・・・

 

-----京夜、これは残し、あの残った1つを消そう

 

『ああ、これで茜雫は救われるんだよな』

 

-----恐らく

 

アキは最後の1つの記憶を消す。

残ったのは、1つの巨大に発光する記憶。

 

やることはやった。

後は、茜雫が目を覚ませばいいだけだ。

 

-----帰ろう、京夜

 

『ああ』

 

アキがそう呟き、何か念じた。

すると、俺の意識は吸い戻されるように、消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(パチッ)」

 

俺とアキは目を覚ます。

記憶の世界から戻ってきた。

途端、身体から疲労感が増した。

 

「ふ~・・・」

 

ドサッ

 

「だ、大丈夫!?お兄ちゃん、アキ姉!?」

 

「・・・兄さん!姉さん!」

 

俺とアキがぐったりと床に座りこんだせいか、焔と雫が心配してきた。

 

まさか、記憶を消すだけで、こんなにも霊力と精神を使うんだな・・・

焔と雫が協力していなかったら、どうなっていたことか・・・

 

「大丈夫だ。ちょっと疲れただけ」

 

-----精神、集中してたから・・・

 

アキの方がけっこう疲れているように見える。

もしかしたら、気遣って、できるだけ俺の負担を軽くさせていたのか?

全く、こんな時にでも、俺のことを考えてくれているんだな・・・

 

ふと、茜雫を見ると、安心したように、寝息をたてていた。

まるで、何かの重りがなくなったかのように。

 

「全く、かわいい寝顔しやがって」

 

茜雫の頭を撫でる。

すると、ムニャ・・・と言いながら、幸せそうに喜んでいた。

 

子猫が寝ているみたいで可愛いな。

こっちがどんだけ苦労しているか知らないくせに、呑気な奴め。

 

「それで、どうなったの?」

 

「邪魔な記憶は消した。もう安心してもいいと思う」

 

-----茜雫が消えていない所を見ると、成功

 

「や、やった!」

 

「・・・よかった」

 

アキから成功という言葉を聞いて、焔と雫は喜ぶ。

俺もその言葉を信じ、喜ぶ。

 

さてと、大仕事は終わった所だし、茜雫が起きるまでここで安静に-----

 

『っ!?』

 

突如、外から異様な気配を感じた。

見ると、アキ、焔、雫もそれを感じたらしく、身構えた。

 

「・・・お前らも感じ取ったか」

 

「うん。この感じ・・・。虚、じゃない・・・?」

 

「・・・多分、兄さんが説明してくれた欠魂だと思う」

 

-----しかも、複数・・・

 

まさか・・・茜雫を狙ってるのか!?

 

「記憶は消したはずだ。なのに、どうして・・・!」

 

-----京夜、記憶というものは、すぐには消えない。恐らく、欠片のように、断片的に、多少、残っているんだと思う

 

「そのせいか・・・」

 

-----時間が経てば、完全に消えるけど、まだ消えてないみたい

 

くそっ!せっかく、成功したっつうのに、また追われる身かよ!

一難去って、また一難だな・・・

 

「お前ら、飛び出して、一斉に掛かるぞ」

 

-----待って

 

アキが突然、静止させた。

 

なにすんだよ!

ここでちんたらしてたら、先手を打たれるんだぞ!

 

-----私たちに任せて、京夜は、茜雫を連れて、逃げて

 

「なっ!?何言ってんだよ!?」

 

-----敵は、茜雫を狙っている。ここに置いていたら、危険

 

「だ、だからって・・・」

 

だとしてもだ。

3人を置いて逃げるなんて危険だ!

また襲われたりしたら・・・

 

「大丈夫だよ、お兄ちゃん!」

 

「焔・・・」

 

「・・・僕たちだって成長してる。昔のように弱虫じゃない」

 

「雫・・・」

 

俺は2人の立派な背中を見つめた。

 

確かに、成長し、強くなった。

もう俺が教えることがないくらいに。

でも、いいのか・・・

 

-----京夜は、私たちを護ってくれた

 

「っ!」

 

-----だから、今度は、私たちが、京夜を護る番

 

「私たちを信じて」

 

「・・・兄さん!」

 

「お前ら・・・」

 

3人の真っ直ぐな目。

その決意を現わしている目を見て、俺は何も言えなかった。

ここは・・・3人を信じよう。

 

「・・・わかった。ただし、危なくなったら、逃げろよ」

 

「うん!」

 

「・・・大丈夫」

 

-----任せて

 

その言葉を聞き、俺は即座に茜雫を抱き上げる。

3人が玄関先に立ち、その後ろに俺が配置する。

すぐに動ける体勢だ。

 

「いくよ・・・1・・・2・・・」

 

焔が呟く。

次に言葉を発した瞬間、扉を開けた。

 

「3!」

 

-----一掃する

 

「・・・兄さん、逃げて!」

 

外には10体ほどの欠魂たちがいた。

3人はそれに対応し、時間をかせぐ。

俺はその間に抜け出した。

 

「無茶すんじゃねえぞ!」

 

俺は立ち去ると同時にそう叫ぶ。

返事はなかったが、頷いてくれていたから、きっと届いているだろう。

 

さて・・・今後、どうするか、だな。

 

「・・・茜雫を安全な場所へ連れていかなくちゃいけねえな」

 

安全な場所・・・安全な場所・・・

・・・思い当たる所があそこしかないな。

 

「・・・隊舎へ連れていくしかないか」

 

あそこなら、安全だろう。

何かあっても、他の死神たちが対処してくれる。

けど、欠魂、ダークワン、追手はまだまだいる。

早急に倒さなければいけない。

どうしたものか・・・

 

「・・・仕方ない。信頼できる奴に茜雫を預けるか・・・」

 

あまりこんなことはしたくないが、状況が切羽詰まっている。

信頼できる奴なら、茜雫を匿ってくれるかもしれない。

信頼できる人か・・・

 

「・・・ルキア、海燕さん、浮竹隊長辺りかな・・・」

 

上記の3人なら、俺と茜雫のことをわかってくれるだろう。

特にルキアなら、俺の頼み事は断れないはずだ。

いてくれればいいんだが・・・

 

「・・・そして・・・ダークワン、厳龍を討つ!」

 

そうすれば、茜雫の脅威はなくなる。

それに、上空には現世の光景が映し出されている。

隊長たちが何かしら行動しているだろう。

 

方針は決まった。

 

脅威がもう目前に迫りつつある。

 

敵の勢力を消せば、全てが終わる。

 

俺は急いで、隊舎に向かった。

 

決戦の時は近い。




いかがでしたでしょうか?

アキさんパネエな・・・
さすが、3作目のキャラ。
京夜並みにチートか?

それでは、次回は隊首会のことを書きたいと思います。
みなさん大好きな蜂砕もでますよ。
ここから、隊長たちも続々登場します。
今回はこの辺りで!
バイビッ!

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