こんなに遅くなってしまったのは、少々訳がありまして・・・
12月25日、そうクリスマスですね。
なので、仲間たちでクリスマス会を開いたのです。
・・・そこまではよかったのですが、続いて2次会、3次会までやってしまって、2日間オールという結果に・・・
もう、死ぬように寝ていましたよ・・・www
さらに、自動車免許の試験もありまして、執筆できませんでした。
本当、申し訳ない、リアルが忙しかったもので・・・
さて、そんな多忙な作者は放っておいて、と。
今回はコメディ重視です。
前回がシリアス全開でしたのでね。
でも、最後は結局、シリアスで終わっちゃうんだよな・・・
ついに、京夜が茜雫を救う方法を見つける!
さらに、茜雫に真実を語る!
果たして、茜雫の反応はいかに!
そして、着々と動く闇。
溜まりませんね!
どうせもいいですけど、12月29日12:00~、BSアニマックスでブリーチの劇場版が一挙放送するらしいです。
見なきゃ損!
原作とこの話を見返して見ると面白そうです。
俺と茜雫は家に辿りついた。
茜雫は家に着くころには泣き止んでいたが、目が腫れていた。
それが恥ずかしかったのか、顔を俯き、頬を染める。
・・・かわいかった、とは言わないからな!
で、雨のせいで、身体が濡れているから、ついでに風呂に入っていけと言った。
茜雫は断る理由もなく、風呂に入った。
直前に「次は覗かないでよ!」と釘を刺されたが。
覗いてねえよ・・・
覗く気もねえからな・・・
俺はというと、俺と茜雫の濡れた衣類を洗濯機に入れ、着替える。
髪を乾かしていたら、いつの間にか夕日が落ち、月が出始めていた。
夕食の準備に取り掛かろうとしたら、突如、インターホンが聞こえた。
ピンポーン
「はいはーい。今出まーす」
俺は玄関に向かい、ドアノブに手をかけ、扉を開く。
「はい、どなた様-----」
「よう、京夜くん!また来たで-----」
パタン
・・・うん、誰もいなかったね。
きっと、ピンポンダッシュしたのかな?
全く、近頃の若いものわ・・・
「ちょっと、待てや!」
「うおっ!?」
バーンという音と共に扉が勢いよく開いた。
なんで、また、ここにいるんだ・・・
「平子さん・・・」
「せっかく、ワイが来てやったのに、顔を見た瞬間に閉めるとはどういうことや!」
「それは-----ん?」
平子さんの後ろに何人もの人がいた。
え・・・?まさか、仮面の軍勢の方々!?
「ま、まあ、ええ。とにかく邪魔するでー」
「え?」
平子さんは自然に部屋に入っていく。
俺の目の前を通りすぎながら。
「おーおー、ひっろい部屋やなぁ!暴れるのに最適やな!」
「え?」
平子さんに続き、金髪ツインテール-----猿柿ひよ里さんが入ってきた。
もちろん、俺の前を通過しながら。
「う~ん、この部屋から、独特のメロディを感じ取れるよ」
「ま~た変なこと言って。俺にはそんなの聞こえねえぞ?」
「え?」
さらに入ってきたのは、金髪ロン毛-----鳳橋 楼十郎さんと、独特なアフロのグラサン-----愛川 羅武さんが入ってきた。
これまた、俺の前を-----以下省略。
「うわ~、秘密基地みたい!」
「至って、普通の部屋だろうが。俺たちの所がよっぽど秘密基地だ」
「え?」
緑髪でゴーグルをつけている女-----久南 白さんと、俺と同じ銀髪だが短髪の筋肉質な男-----六車 拳西さんが入っていく。
俺の-----以下省略。
「鬼柳院」
「は、はい?!」
突然、名前を呼ばれたからか裏返ってしまった。
見ると、メガネでおさげの女子高生(?)-----矢胴丸 リサさんが俺の前にいた。
その手に持つ袋には、何やら食材がいっぱい入っていた。
「これ使うて、鍋にしとき」
「は、はあ・・・」
「ほな、失礼するで」
そう言って、リサさんは入っていく。
って、チョイチョイチョイ!
「ちょっと、待てやー!」
「ちゃうわ!関西弁はそうじゃあらへん!」
「そういうことじゃねえよ!?どうして、こんなに人がたくさん入ってんの!?なに、この急展開!?」
どうしてこうなった!?
勝手に人ん家許可なく、入ってるし!
鍋を作れとか!?
不法侵入で訴えるぞ!?
「その説明は私が-----」
「ええで、ハッチ。ワイが説明したる」
「あの、私のセリフ・・・」
「実はな、京夜-----」
「無視ですカ・・・」
大柄でスーツを着ている男-----有昭田 鉢玄さんが俺に説明しようとしたら、平子さんに遮られてしまった。
哀れ鉢玄さん・・・
いや、これからはハッチさんと呼ぶことにしよう。
その方が親しみやすい。
「お前のこと、こいつら-----仮面の軍勢のメンバーに話したんや。それで、飯の話になった途端、ひよ里が「ワイも食う!」と言ってな、それからは、みんなも賛成しおって、今に至るわけや」
「待てい!それから、どうしてこうなるんですか!?俺の部屋で鍋にする意味がないでしょう!?」
「ええやないか。飯食うなら、京夜の家でも構へんやろ、という結論になったわけや。それに、大勢で食べた方がええやろ?」
「だ、だからって-----」
俺が否定しようとすると、ひよ里さんが乱入してきた。
「さっさと、作れや!」
「へぶっ!?」
ドゴッ
決まったぁー!
ひよ里さんの痛烈なアッパー!
俺、京夜はダウン寸前-----じゃねえよ!
なんか、いきなり殴られたんですけど!?
「ごちゃごちゃうるさいねん!ウジウジしおって!それでも金〇ついてるんかぁ!?」
「ひよ里、女がそないなこと言うたら、また品格が下がるで」
「やかましい!このハゲ!」
「ウギャッ!?」
バギッ
平子さんもひよ里さんに殴られる。
もしかしたら、この中で1番強いのはひよ里さんかもな・・・
「つつつ・・・はあ、わかりましたよ・・・。作りますよ・・・」
「そうやで!さっさと、作らんかい!」
「鬼やな・・・、お前・・・」
「なんやと!」
暴れるひよ里さんと、被害者になる予定の平子さんは放っておいて台所へ。
全く、こんな予定はしていなかったのに・・・
しかも、こんなに急に大勢押し掛けられたら、こっちも準備をしていないんだぞ。
食事代だって、馬鹿にならないな・・・
台所へ行くと、拳西さんがいた。
「お、京夜、飲み物、冷蔵庫に入れとくな」
「あ、わかりました」
意外と家事が得意だったよな、拳西さん。
原作で確かそうだったような・・・。
「拳西さん、料理は得意な方ですか?」
「まあ、人並みにはな。この中だと、1番まともな料理を作れるぜ」
「なら、手伝ってくれませんか?この人数だと、1人はちょっと・・・」
「それもそうだな。うしっ!任せろ!」
それから、拳西さんと俺は並んで料理を作った。
お互いにカバーし、お互いにサポートする。
早い!まるで、自分が2人いるようだ!
そんな光景を見ている人たちがいた。
「お~。2人とも様になってるね。これはこれで美しい」
「男同士で美しいって・・・どないやねん」
「まるで、食〇のソーマみたいだな!」
「わーい!けんせいときょうたんが私のために作ってくれてる~!」
「・・・写真撮っておくで(後でネタにできるな)」
鳳橋-----ああ、もういいや、ローズさんが感心していて、平子さんがローズさんにツッコむ。
ラブさんがある意味で禁止用語言い、白さんが喜んでいる。
ひよ里さんはなぜか、不敵な笑みを見せながら、写真を撮っていた。
「コラァ!お前ら!少しは手伝いをしやがれ!ハッチ見習え!」
ちなみに、ハッチさんはせっせと、部屋の掃除やら、荷物の整理をしていて、片づけていた。
ありがとう、ハッチさん・・・
縁の下の力持ちや・・・
そして、この場にはまともな方が拳西さんとハッチさんとリサさんしかいない・・・
って、あれ?
リサさんが見たらない・・・?
どこに行ったんだろう?
「リサさんが見当たりませんね・・・?」
「あ~、あいつなら、多分・・・」
「?」
「いや、次期にわかるだろう。気にすんな」
「???」
どういうことだろう?
もったいぶらずに話してほしいな。
と、その時、茜雫が漸く風呂から出てきた。
もちろん、あの寝間着の格好でだ。
「京夜、お客さん~?」
「おおっ!お嬢ちゃん!」
「えっ!?確か・・・昨日会った、変な人!」
「へ、変な人・・・。酷い言われようやな・・・」
出迎えた平子さんに投げかけられた言葉はとても酷い言葉だった。
あ、ひよ里さんが笑いを堪えている。
うん、気持ちはわかなくもない。
「ま、まあ、ええ。ささ、こちらへ」
「え?え?」
促されるまま、平子さんは茜雫をみんなの元へ座らせる。
茜雫は状況に追いつけず、混乱していた。
「俺らは、京夜のサークルメンバーなんや。たまたま、今日はみんな都合よく、集められてこうしてここにおるんや。それじゃあ、自己紹介、始め!」
「(そういえば、そんな設定やったな・・・)ワイは猿柿ひよ里や・・・」
「(ああ、そんな設定だったっけ)僕は鳳橋 楼十郎。長いから、みんなからはローズって呼ばれてるよ。気軽に呼んでね!」
「(漫画みたいな設定だよな)俺は愛川 羅武だ。ラブと呼んでくれ」
「(サークル?)私の名はギャラティック・アベンジャー・スーパー-----」
「こいつは白だ。で、俺は六車 拳西だ。好きに呼べ」
「ちょっと、けーんせーい!」
「・・・私は有昭田 鉢玄と申しまス。愛称はハッチ。以後、お見知りおきよ」
「ほい、自己紹介終わりや。お嬢ちゃん、よろしゅうな」
「う、うん。私は茜雫。お嬢ちゃんなんて名前じゃないから」
「ああ、すまんかったな。じゃあ、よろしゅうな、茜雫ちゃん」
一通り、自己紹介を終える仮面の軍勢の方々。
戸惑っているように見えるが、茜雫が少し嬉しそうに見えたのは気のせいかな?
「へ~、茜雫ちゃんは京夜と一緒に暮らしているんだね」
「い、一応・・・。色々あったから・・・」
ローズさんがそんなことを尋ねる。
本当、色々あったよな。
この短い間によくもまあ、濃厚な出来事が起こったものだわ。
次に白さんが口を開いたんだが、これがとんでもない事態を呼んだ。
「知ってるよ!そういうのって、どーせい、って呼ぶんだよね!」
「白さん、同棲でス。しかし、茜雫さんと京夜さんはそういうご関係でしたカ」
「ち、違う!断じて違うっ!!」
ハッチさんの言葉を認めない茜雫。
首を大きく振っていることで、必死さが伝わってくるな。
まあ、他人から見たら、そう思われても不思議じゃないよな。
「けっ!こんな男に騙されおって。男にほいほい着いていく阿呆やな!」
「なんですって・・・」
ひよ里さんが口にした言葉に反応し、茜雫がひよ里さんを睨む。
あ~、マズイかもな。
茜雫の奴、怒ってる・・・
「お?なんや?一緒に寝た男をバカにされて怒っとるんか?」
「い、一緒になんか寝てないっ!私のことはいいけど、京夜のことをバカにするのは許さない!」
「はっ!しょうもなっ!そんな友情ごっこについてけへんわ!このハゲ!」
「は、ハゲてないわよ!このチビっ!」
「お前かて、チビやろ!しかも、貧乳やないか!」
「ひ、貧乳・・・!あんたの方が胸も背も器も小さいじゃない!」
「器は余計や!アホンダラア!!」
「「ぐぐぐぐぐ・・・・・!」」
・・・お~い、俺の家で痴話喧嘩は止めてくれ~。
あ、ハッチさんが仲裁に入った。
「あ、あの、お2人共、喧嘩はよくありませんヨ・・・」
「黙れ!ボケェ!」
「うるさい!デブ!」
「ひ、酷い・・・。特に茜雫さん・・・」
ハッチさんの仲裁は失敗に終わった。
orzになり、涙を流している。
哀れ、ハッチさん・・・
あなたはがんばりましたよ・・・
「ちょっと、ええか、鬼柳院?」
「はい?」
茜雫とひよ里さんが痴話喧嘩をしている最中、リサさんが俺の元へ来た。
一体、今までどこにいたのだろう?
「この部屋にはエロ本はないのか?」
「ぶっ!?」
い、いきなり何を言い出すんだ!この人は!?
「寝室を隈なく探したんやけれど、それらしきものは見つからん。ベッドにも本棚にも」
「あ、あるわけないでしょ!?てか、勝手に漁らないでください!」
な、なんて人だ・・・
人の家で真っ先に行動したのがエロ本捜索とは・・・
「全く、それでも男か?エロ本の1つや2つあるやろ?」
「常識だろ?みたいな顔で話さないでください。ないものはないです」
「ふ~ん・・・。まあ、別のモノは見つけおったけどな」
「え・・・?」
リサさんの手に持っていたもの。それは-----
-----茜雫の下着だった・・・
「ぶーーーっ!?」
「ベッドに置いてあったで。どうやら、昨夜からお盛んだったようたな」
「ち、違いますよ!?」
なんで、ベッドに-----って、ああ!茜雫が昨日、俺のベッドを独占しやがったんだ!
それで脱ぎっぱなしの下着が置いてあったのか!
俺が弁明しようとしたが、その前に、運悪く、茜雫が会話に入ってきた。
どうやら、ひよ里さんとの話が終わったみたいだな。
「あーーーっ!?わ、私のパンツっ!?」
「京夜がベッドに隠してたみたいや」
「な!?ななな、なんですって!?きょ~や~~~!!!」
「ご、誤解だ!?」
リサさん、なんて真実味のある嘘を言うんだ!
茜雫の顔が般若の形になってらっっしゃる!?
寝巻のウサギ耳が、今は鬼の角に見えてきた!?
「第一、ベッドで寝たのは茜雫だろ!それは朝、お前が脱ぎ捨てた下着だ!俺は断じて、隠していない!」
「あ・・・。(そういえばそうだったっけ・・・)」
茜雫の奴、思い出したようだな。
無駄な濡れ衣着させられる所だったぜ。
「ま、まあ、今回は大目に見てあげるわ!次はないからね!」
そう言って、そっぽを向く茜雫。
色々と恥ずかしかったのか、顔が赤みを帯びている。
次も今もないだろ・・・
こいつ、本当に俺がやったと思ってたのか・・・
「拳西、京夜、夕飯はできたかい?」
「ちょっと待ってくれ。今、味付けの調整中だ」
「すみません、できるだけ早く作ります」
すると、リビングからローズさんが聞いてきた。
待ちくたびれたんだろう。
だが、人数が人数だし、そんなに早くは出来上がれない。
「待ってる間、暇だな・・・。京夜、マガジンない?」
「・・・ありません」
ラブさん、ジャンプ派じゃないのかよ!?
出版社に怒られるぞ!
「そうだ!何なら、僕が1曲弾いてあげよう!」
「え・・・。ここでですか・・・?」
「当り前だろう?他にどこがあると言うんだい?」
「・・・やめましょう。近所迷惑です」
そんなことしたら、隣近所の人たちに迷惑かけちまう!
でも、そんなこと知ったことか、という感じでローズさんはギターを取り出す。
「大丈夫!きっとその人たちも僕の曲を聞きたがってるから!」
「それは自分の思い込みですよ!?」
しかし、俺の健闘空しく、ローズさんはギターを弾き始めてしまう。
ああ・・・隣の人からクレームが・・・
-----ん?なんだろう、弾き始めた瞬間、心に惹かれていくような・・・
とてもいい曲だ・・・
「~~♪~~~♪」
「・・・ローズさん、意外と上手ですね」
「当たり前や。ローズから音楽とったら、何もあらへんからな」
「他にもあるよ!?美しさとか!」
俺の呟きに平子さんが答えてくれた。
美しさとかは置いといて・・・うん、心が落ち着く曲だ・・・
あんなに騒がしかったみんなも、静かになってる。
ギターでこんな演奏できるなんて、スゴイや。
「・・・・・・・・」
その時、茜雫が演奏しているローズさんの姿を凝視していた。
なんだか、呆けているというか、曲に酔いしれっている、というか、見続けていた。
「~~~♪~~♪-----はい、これでお終いかな」
「スゴイ!感動した!」
弾き終えたローズさんに、パチパチと拍手を送る茜雫。
どうやら、ローズさんの曲が気に入ったみたいだな。
「お?茜雫ちゃん、この曲のクオリティがわかるかい?」
「クオリティはわかんないけど、すごかったです!」
「あ、あら?そう・・・?」
茜雫にクオリティがどうこう言ってもわかんないだろうね。
正直、俺もわかんないし。
ただ、心に沁みる曲だったってことは確かだ。
「茜雫ちゃんも弾いてみるかい?」
「え!?わ、私にできるかな?」
「大丈夫、物は試しさ。それに、挑戦することは大切だよ?」
「じゃ、じゃあ、やってみます!」
そうして、ローズさんは茜雫に弾き方を指南してくれた。
茜雫はこういう類のものは初めてなのか、目が輝いている。
うんうん、こういう交流って大切だよね。
何かしら繋がりがあると、いい関係になるし。
と、そんな時、調理中の俺に平子さんがススス・・・と近寄ってきた。
「京夜、ええんか?茜雫ちゃん、ローズに取られるで?」
「取られる・・・?何を言ってるんですか。寧ろ、こういったことを茜雫にどんどんしてほしいです。あいつ、すごく楽しそうですから」
「・・・はあ、女心がわかってへんな~」
「?」
「もう、ええで。鈍感には何言っても通じひんからな」
「???」
結局、何が言いたかったんだろう?
言うだけ言って、戻っていったし。
「京夜、鍋できたぞ」
「あ、わかりました。こっちもOKです」
っと、いけね、料理がやっと完成したんだ。
さて、完成した鍋と大皿料理とおつまみを持って、召し上がるとしますか!」
「―――こう、かな?」
「うん!いいよ!中々、筋がいい!」
「おーい、お前ら!楽しんでる所悪いが、料理できたぞ!」
「待ってたで!」
拳西さんの声にひよ里さんが瞬時に反応した。
食い意地張ってるな~。
それだけ、楽しみにしてたのかな?
「京夜、鍋の設置任せた。俺は飲み物持ってくるから」
「はい、お願いします」
俺が鍋や他の料理を準備していく間に、拳西さんが冷蔵庫から飲み物を持ってきてくれた。
よし、料理も飲み物も各人も定位置についた!乾杯を-----ん?
「・・・あの、拳西さん」
「なんだ?」
「これって、酒じゃ-----」
「かんぱーい!」
『かんぱーい!』
「ちょ!?無視しないでください!?」
酒を飲むなんて聞いてないぞ!?
もうあんな思いをするのは御免だ!
-----って、ああ!?仮面の軍勢の面々がすでに一気に飲んでいるし!?
「ぷはーっ!久しぶりのビールは格別やな!」
「久しぶりって、お前、昨日飲んだばかりやないか!」
平子さんが親父臭いセリフを吐くと、ひよ里さんがツッコム。
ただ、いつものきつめな目つきではなく、ちょっと楽しんでいる。
「ローズ、どうしてお前はワインばかり飲むんだ。サワーの方がいいだろ」
「何言ってるんだ、君は。ワインは究極の美へ導いていくものだよ」
ラブさんとローズさんが酒について討論している。
いや、どっちでもいいじゃん。
てか、飲むなし。
「けーんせーい!お酒注いでー!」
「バカ、自分でやれ。俺は配膳に忙しいんだ」
「ぶーーーっ!」
白さんをいなし、各お椀に鍋の具材を入れていく拳西さん。
もう、主夫だね、拳西さん。
「さてさて、誰が酔い潰れて、寝込みを襲うか楽しみやな。なあ、ハッチ?」
「私に言われましても・・・」
リサさんが悪い笑みを見せる。
ハッチさんはそれに対し、戸惑っていた。
ちなみに、ハッチさんは酒は飲んでいない。
「茜雫、酒は飲むなよ?いいな、絶対に飲むなよ?」
「・・・それ、フリ?」
「フリじゃねえよ!?真面目に言ってんだ!?お前、未成年だろ!?」
どこでそんなコントのようなこと覚えやがった!?
恐らく、茜雫は未成年だと思う・・・
年齢不詳だが、会った時、高校生だったし、制服だったし・・・
違ってたら、ごめん。
それから、騒がしく、長い夜は続いた。
「はあ・・・」
俺は場に馴染めず、ため息を吐く。
その原因は-----この酔っ払いたちのせいだ。
「ギャハハハハハ!呑むで呑むで!ガンガン呑むで!」
「ええで、真子!もっと呑むんや!」
「イエーイ!イッキイッキ!」
変貌した平子さんに対し、大盛り上がりのひよ里さんと茜雫。
ちなみに、ひよ里さんは酒を呑んでいて、茜雫は呑んでいない。
なぜ、あのテンションかというと、その場のノリだな。
「どうしたんや、ラブ、ローズ。もう弱音を吐くんか?」
「まだまだ、これから。俺は本気をだしていないぜ?」
「1瓶しか呑んでいないしね。まだまだ僕はイケルよ」
あっちのリサさん、ラブさん、ローズさんは酒飲みの競争をしている。
あ、ラブさんがグラサンとった。
そういうことは居酒屋でやってください・・・
どうしてここで・・・
「・・・酒って怖いですね」
「本当ですネ・・・」
そんな光景を遠目で見ている俺とハッチさん。
俺の気持ちがわかってくれる人はハッチさんだけだ・・・
「きょうたん!きょうたん!」
「はい、なんでしょう?」
突如、白さんが俺を呼んだ。
俺はその場に向かう。
「お腹の前に両手を翳して!」
「なんでですか?」
「いいから!早く!」
なんだか、嫌な予感がする・・・
俺は言われるがままに両手を翳す。
すると、白さんが腕をぶんぶん振り回してきた。
「え?あの、白さん・・・?」
「くらえ!白スーパーアタック!!!」
ドゴン!
ガッシャン!
俺は言葉を発する暇もなく、吹き飛ばされる。
いってえ!?いきなり殴られた!?なんで!?
しかも、吹き飛ばされた俺の身体が寝室の扉にぶち当たり、破損した!?
「白は酔うと、暴れる癖があるからな。注意しろ」
「そういうの早く言ってください!!!」
テレビを見ながら、酒をのんびり呑んでいる拳西さんが呟いた。
どうしてそんな重要なこと、早く言わないの!?
おかげで扉が壊れちまったじゃねえか!?
「もっといくよー!構えて、きょうたん!」
「わ、わわっ!?け、拳西さん、なんとかしてください!あなた、白さんの保護者でしょう!?」
「俺はこんな奴の保護者になったつもりはねえ!?」
再度、ぶんぶん腕を振り回す白さんが俺に近づいてくる。
あんなの何発もくらってたら、俺の身体がもたねえよ!?
しかし、神は俺のことを見捨てなかった。
白さんの標的が拳西さんに変わったからだ。
「けーんせーい?こんな奴とはどういうことかな~?」
「そのまんまだ。お前みたいなクソガキの面倒なんて懲り懲りだ」
「拳西ひどいっ!白が罰を与えてやるぅ!」
「は?何を-----うおっ!?てめえ、やめろっ!?」
白さんが拳西さんに襲い掛かり、そのまま白さんと拳西さんのバトルが始まった。
よかった・・・難を逃れた・・・
しかし、俺の災難は終わってなかったらしい。
「おい!京夜、ハッチ!酒少なくなってもうたから、買うてこい!」
「え・・・?俺たちですか・・・?」
「そうや!他に誰がいるんや!」
ひよ里さんに言われ、周りを見渡す。
・・・うん、まともに動けそうなのが、俺とハッチさんしかいない。
でも、この様子だと、さらに呑みそうだな。
できれば、遠慮したい所なんだが・・・
「いや、でも-----」
「やかましいわ!さっさと言う通りにせい!買ってこんかい!」
バギッ
「いたいっ!」
ひよ里さんにスリッパで叩かれた。
スリッパって武器になるのか・・・
初めて知ったぜ・・・
「・・・諦めまショウ」
「・・・そうですね」
俺とハッチさんは肩を落としながら、酒を買いに出かけた。
正直、この人たちを残すのが不安なんだが・・・
「ありがとう~ございました~」
酒を買い終えた俺とハッチさんは帰路を歩いている。
うぅ・・・行きたくないよぉ・・・
絶対に、さっきより酷くなっているはずだから・・・
「今日はすみませン。迷惑をかけてしまっテ」
「いえいえ!俺も茜雫も楽しめてますから!寧ろ、こっちがお礼を言いたいくらいです!」
俺はともかく、茜雫は本当に楽しそうだった。
いつかは消えてしまう存在。
だから、少しでも楽しい思い出が増えることは俺も自分のように嬉しい。
「・・・平子さんは私たちが提案したように話していましたガ、本当は平子さんから誘ってくださったのでス」
「平子さんが・・・?」
「ハイ。茜雫さんに多くの思い出を残してやりたイ。悪い記憶を忘れるくらい楽しませよウ。そう仰っていましタ」
まさか、平子さんがそんなことを考えていただなんて・・・
なのに、あの時はああやって、嘘を言うなんて・・・
全く、素直じゃない人だ。
「優しいんですね」
「そうですネ。そんな方だからこそ、私たちを惹かせてくれまス」
平子さんのことが少しわかった気がする。
意外な優しい一面があるから、みんなが集まるんだな。
カリスマ性がすげえや。
「ということは、茜雫のことは・・・」
「ハイ、大方、知っていまス」
知っていながら、みんな態度を変えず、あんな風に楽しく接してくれるんだ・・・
いい人たちと知り合えたな、茜雫。
「・・・しかし、茜雫さんのことはこれからどうなさるおつもりですカ?」
「どう、とは・・・?」
「あの子はとてもいい子です。そんな子が消えてしまうなんて、私たちは悲しいでス。どうにか、生き残らせる方法はないのですカ?」
「そうなんですけど・・・。中々、妙案がでなくて・・・」
それは今でも俺の悩みの種でもある。
生かしてあげたい。
だが、その方法が見つからない。
もう苦しんでいる姿を見たくはないんだ。
「そうですよネ・・・。せめて、悪い記憶だけ取り除けたらいいのですガ・・・」
「といっても、そうそう簡単に記憶を消すなんてできるわけ-----」
-----ん?ちょっと、待て。
記憶を消す・・・?
なんだろう、この頭の中に残る違和感は・・・
「茜雫さん本人が経験した記憶だけ残せば、苦しみもなくなると思いますがネ・・・そんな都合のいいことあるわけありませんないですよネ」
記憶を残す・・・。
記憶を消す・・・。
記憶の分別・・・。
確か、前にも似たようなことがあったような・・・。
確か・・・ルキアの記憶が一部なくなった-----っ!
「それだ!!!」
俺はあることを閃き、その場で大声をだした。
ハッチさんはビクッ!と驚いてしまう。
そうだよ、なんで気づかなかったんだ!
俺の知り合いには記憶を消す能力をもった奴が-----いる!
ちょっと、強引かもしんないけど、この方法しかねえ!
「あ・・・」
だが、俺はあることに気付く。
記憶を消すことができるが、一部だけはできるのか?
全部消してしまうんじゃないのか・・・?
そうしたら、俺と出会ってからの記憶までもが・・・。
「どうしましタ・・・?急に叫んだと思ったら、落ち込んだりしテ・・・」
「・・・茜雫を救う方法が見つかったんです」
「なんですト・・・!?」
「・・・ですが、高い危険が付き纏います。茜雫を無事に救えるかどうか・・・」
「・・・・・・・・」
ハッチさんは押し黙ってしまう。
あいつらなら、茜雫を救えるかもしれない。
だが、茜雫は記憶の集合体。
一部を残せば、恐らく大丈夫だろうが、全部消してしまったら・・・
「・・・これは私個人の意見ですガ・・・」
ハッチさんはおもむろに口を開いた。
「僅かな希望があれば、たとえ、どんな危険なことでも、生きれるというなら、実践した方がいいでス。私たちのよう二」
「ハッチさん・・・」
・・・そうか。ハッチさんたちも虚化された時にはもう生きれないと言われてた。
けど、浦原さんが希望を見出してくれた。
危険だとわかっていても・・・
「結局は決めるのは茜雫さんでス。まずは、そのことを茜雫さんに教えた方がよろしいかト」
「・・・そうですね。俺が考えてたって、決めるのは茜雫。茜雫に教えない限り、何も始まりませんよね」
「その通りでス」
ニッとハッチさんが笑みを浮かべた。
ありがとう、ハッチさんのおかげで茜雫を救えるかもしれない。
危険はあるけれど、希望が見えたんだ。
この希望をどうするかは茜雫次第。
今日か明日には伝えよう。
茜雫自身のこと、救える方法を。
俺とハッチさんは家に帰宅した。
「ただいま~」
「きょ~や~!!!」
帰ってきた俺を出迎えたのは茜雫だった。
ただ、ちょっと、様子が変だ。
なんというか、テンションがラリッっているというか、いつもの感じじゃない。
顔もなんだか赤いし・・・
「もう~遅いにゃ~!会いたかったんにゃよ~?」
「うん、来て早々おかしいな。何があった」
身体に擦り寄ってくる茜雫。
それはまるで猫のようだ。
普段とは想像もつかないくらい甘えてくるな。
些細なことだが、ウサギの格好で猫の真似とは・・・これいかに。
-----ん?口から酒の臭いが。まさか・・・
「お前、酒臭いぞ。もしや、飲んだな」
「ごっめ~ん、飲んじゃった☆でも、ちょっとだけにゃ?」
テヘ、ペロ☆と舌をだす茜雫。
可愛いから許す!―――とはいかねえよ!?
「茜雫ちゃん、酔っぱらうとこうなるんか~。ええもん見れたで」
「平子さん、あんたが犯人か!」
平子さんは役得といった感じで満足気だ。
あんなに飲むなって言ったのに!
「ええやないか!茜雫ちゃんだって酔いたい気分なんじゃ、ボケェ!5本も飲めば立派やで!」
「5本も!?」
見ると、5本の缶が散らばっているのが見えた。
俺が出かける時には酔っていなかったはず・・・
というかとは・・・この短時間で5本も飲んだのか!?
そりゃあ、そうなるな・・・
「きょ~や~」
「あー・・・はいはい」
スリスリと寄ってくるので、俺は猫を扱うように茜雫の首元を弄る。
それが気に入ったらしい。
茜雫からゴロゴロ~と音が聞こえる。
茜雫はウサギから猫へ変わった。
「鬼柳院!早くこっちに持って来い!」
「うおおーーー!飲み足んねえぞーーー!!!」
「もちろん、ワインはあるよね?」
「は、はい!すぐに用意しますから!」
呑み競争中3バカさんたちに買ってきた酒を渡す。
待ってましたかのように、目を輝かせ、一気に呑みまくる。
そんなに呑んだら、またなくなっちまうよ・・・
「夜はまだ長いで~!ついてこい、ひよ里!」
「どこまでもついってったるで~!今夜は呑むで!」
一方の平子さんとひよ里さんは酒を手にまた呑んでいた。
どんだけ、呑むんだ・・・
「拳西のお酒いただき!グビッ」
「ああっ!?俺の気に入ってるやつ!?てめえな・・・」
「何?やる気?今の白さんは拳西でも叩きのめせるよ?グビッ」
「も~、我慢ならねえ!再試合だ!!!」
その傍ら、拳西さんと白さんがまた些細なことでバトッてた。
もう、止まる気配がない・・・
「きょ~や~、もっともっと~」
・・・茜雫はこんなんだし。
「・・・酒って怖いですね・・・」
「・・・同意でス」
もう、俺の家では酒を飲ませないようにしよう。
うん、本当、マジで。
その後は想像がつくように、ドンチャン騒ぎだ。
時間が経つにつれてヒートアップするし、酔いすぎてひよ里さんがくたばったし。
あ、白さんもくたばった。
そんな光景をただただ見ているだけの俺とハッチさん。
口出ししたいけど、したらしたでカウンター喰らうから、何も言えないんだよね。
あれ?ここ俺が宿主だよね・・・?
「京夜、ちょっと来い」
「は、はい」
呼ばれて、俺は平子さんがいるベランダに向かった。
なぜ、ベランダに平子さんがいるのかというと、夜風に当たってくる、だそうだ。
「なんですか?急に呼び出して?」
「・・・単刀直入に聞くで。茜雫ちゃんの救済方法は見つかったか?」
「・・・はい、一応は」
突然切り出され、内心、驚いたが、平子さんに答えを返す俺。
救う手段は見つけたが、リスクが大きい。
ハイリスクローリターンは御免だ。
「さよか。なら、茜雫ちゃんはお前に頼んでも大丈夫のようやな」
「あ、でも・・・危険なんです。それに、無謀というか・・・」
絶対に安全という確証はない。
もしかしたら、茜雫を失ってしまうかもしれない。
もしかしたら、茜雫に悪影響が出てしまうかもしれない。
そんな不安が募る・・・
「・・・そないなことはわかってるで。この世に絶対安全ということはないんや」
平子さんは夜景を見ながら、そう呟く。
「茜雫ちゃんの様な存在を生き残らすためには、相応の危険は承知。せやけど-----」
平子さんはまっすぐに俺を見た。
「救う方法があるんや。昨日のように皆無やない。希望が見えたんや。そして、その方法はお前しかできひん」
「平子さん・・・」
そうだ。これには俺が関わらないと意味がない。
だからこそ、決めたんだ。
茜雫に全てを打ち明ける、と。
「茜雫ちゃん、託すで。
「平子さん・・・今、友人って・・・」
「同じ鍋食ったんや。もう、友人ちゃうんか。俺も含め、仮面の軍勢は」
「・・・そうですね。ありがとうございます」
「な~に、礼言っててんねん。アホ」
俺と平子さんは互いに見、笑う。
やった・・・平子さんと、仮面の軍勢の皆が友達になった。
それなら、茜雫とも友達だろう。
よかったよかった。
「ほいで、どや?仮面の軍勢に入りたくなったやろ?友人であるワイが誘ってるんやで~?」
「丁重にご遠慮します」
「かったいの~。石頭のようやで。ま、期待してへんけど」
そう言いながら、平子さんは部屋に戻ろうとする。
俺もそれについていくように、部屋に入る。
その時、気づいたように、拳西さんが立った。
「真子、そろそろ撤収しようぜ。時間が時間だ」
「お?もうそんな時間になっとんのか」
見ると、時計は深夜1時を回っていた。
7時頃に始まったから・・・うわぁ、けっこう長い間騒いでたんだなぁ・・・
「それじゃあ、帰るとするで-----ほな、こいつらどうする?」
そこには酔いつぶれてしまったひよ里さんと白さん。
いい笑顔で寝ていらっしゃる・・・
「仕方ない、起こすか・・・―――おい、ひよ里、起きんかい!」
「白!帰るぞ!さっさと、起きやがれ!」
そう呼びかける平子さんと拳西さんだったが-----
「う~ん・・・そないちゃうやろ~・・・!」
「えへへ・・・拳西のエッチ~」
「「こいつはどんな夢を見てやがるん(だ)(や)」」
これは簡単に起きそうにないな。
ふと、俺は茜雫を視界に捉えた。
茜雫はボーッと床の一点を見ていた。
もしかして、酔いつぶれる・・・?
「・・・・・・・・」
「茜雫?大事か?今のところ、酔いつぶれてないけど・・・」
「あっ!う、うん、私は大丈夫」
茜雫の様子を見たが、確かに大丈夫そうだ。
というか、酔いが冷めているのか、顔の赤みが消えてる・・・?
とにかく、いつもの茜雫に戻ったってことだ。
しかし、酔いが冷めるのが早くないか?
そんなことを考えていたら、今度は酒飲み3バカが目に入った。
「うっぷ・・・気持ち悪い・・・」
「・・・・・・・・」
「ったく、弱い男共やな~。ほな、この勝負、私の勝ちやね。グビッ」
優越に浸りながら酒を呑むリサさん。
口を手で抑えるラブさん。
机に横たわり、白目を剥いているローズさん。
なに、この惨状・・・
呑む時にはリサさんを注意しよう。
ある意味で危険だ。
「みんな、しゃ~ないな。俺はひよ里を、拳西は白を、ハッチとリサはラブとローズを頼むで」
選ばれた各人はおんぶしたり、肩に担いだりして、帰り支度を始める。
その際、茜雫が寂しそうに平子さんたちを見ていた。
「もう・・・帰っちゃうんだ・・・」
「ワイも寂しいわ~。愛しの茜雫ちゃんと離れると思うと胸が苦しくてな~。今夜はワイが泊まっても-----」
「アホ、何言うとんねん。気持ち悪い」
「なんやとぉ!」
茜雫の言葉に反応し、平子さんはわざとらしく(?)寂しそうな感じを醸し出す。
リサさんにツッコまれたけど。
俺も心の隅ではこのまま帰らないでほしかった。
けど、そうも言ってられないのが、現実だ。
「まあ、なんや。今生のお別れってわけやない。ワイらはまた会えるさかい、そんな気ぃ落とさへんでええ」
「・・・そうだよね。また、会えるよね!」
「せや、また会える。だから、元気な茜雫ちゃんのままで見送ってくれ」
「うん!」
きっとまた会える。
それは明日かもしれないし、遠い未来かもしれない。
けど、茜雫とこうして知り合えたんだ。
茜雫は今夜のことは忘れないだろう。
仮面の軍勢たちは玄関に移動する。
「京夜、茜雫、邪魔したな」
「それでは、おやすみなさいまセ」
「ほな、またな」
「はい、おやすみなさい」
「バイバイ」
先に白さんをおぶった拳西さん。
その後にローズさんをおぶったハッチさん。
さらに、その後にラブさんに肩を回して歩くリサさんが部屋をでた。
「京夜」
ドアノブに手を掛けながら、俺を呼ぶ平子さん。
なんだろう?まだ何かあるのだろうか?
「・・・何かあったら、ワイらを頼れ」
聞き逃してしまうほど、小さい声量だった。
けど、どこかその言葉は、俺の頭に、心に響いた。
友人、ですもんね・・・
「それじゃあ、お2人さん、失礼するで!今晩はあっま~い夜を過ごすんやで~!」
「ひ、平子さん!?」
人が感動した瞬間にふざけるなんて、予想外すぎる!?
俺と茜雫はポカン・・・と口を開け、呆然としながら、平子さんを見送ったのだった。
「・・・甘い夜、過ごしてみる?」
「・・・しない。何言ってんだお前」
茜雫、おかしくなったか。
少し不機嫌だし。情緒不安定か?
そんな夜を過ごす前に重要なことがあるだろう。
「はあ、掃除が大変だ・・・」
散らかした料理の残骸、酒、ゴミ等々・・・
せめて、帰る前に掃除くらいさせればよかったな・・・
「茜雫、食器をシンクに入れてくれ」
「え~、面倒くさ。私、眠いのに~」
「わがまま言わない。さっさと片付けるからさ」
渋々、茜雫は食器を片づけていく。
俺はゴミ等を片付けて、シンクに入れた洗い物を片付けていた。
そして、ちょうど、片付けが終わり、就寝しようとした時、茜雫が提案してきた。
「あ、今日は一緒の部屋に寝てもいいわよ。ベッドも京夜が使っていい」
「昨日と打って変わってどうした?あんなに嫌がってたのによ」
「べ、別にいいじゃない!ちょっと、気が変わっただけよ・・・」
「ふ~ん、まあ、お前がそう言うなら構わないけど」
さすがに2日続けてソファーで寝るのは俺も心苦しい。
やっぱ、フカフカのベッドで寝たいからな。
これで、朝の身体の痛みからおさばらってか。
俺と茜雫は寝室に移動し、寝床についた。
ベッドには俺で、その横の布団には茜雫が寝る。
「それじゃ、おやすみ」
「うん、おやすみ」
明かりを消し、寝ることにする。
「「・・・・・・・・」」
どのくらい経っただろうか。
・・・なんだろう、ねつけられない。
もう大分遅い時間なのにも関わらず、なぜか、目が冴えてしまっている。
今日の出来事が印象強いからか?
・・・いや、違う。
きっと、茜雫のことで頭がいっぱいなんだろう。
茜雫に話すべきか・・・?
確かに話さなくてはいけない。
救う方法が見つかったが、それは茜雫が自分のことを理解してからではないと、先に進めない。
話すべきなんだろう・・・だが、中々、上手く口が開こうとしない。
その時、茜雫から声が聞こえた。
「・・・京夜、起きてる?」
「・・・ああ」
どうやら、茜雫も起きてたらしいな。
早く寝ろ、と言いたい所だが、俺も起きているから、強くは言えない。
「・・・今日は楽しかったね」
「ああ。寧ろ、騒ぎすぎだ」
「ハハ、確かにそうだったかもね・・・」
乾いた笑みを零した後、突然言葉を区切る茜雫。
次に口にした時、不安そうな声が聞こえた。
「・・・京夜、ベランダで真子と何話してたの?」
「別に・・・。他愛もない話だ」
「・・・他愛もない話をあんなに真剣に話すんだ。しかも、私のことを」
「!?」
な、なぜ、茜雫が知ってる!?
あの場には茜雫は愚か、仮面の軍勢たちもいなかったはずだぞ!?
「ごめん、窓が少し空いててね・・・。そこから、聞こえちゃったの・・・」
「・・・そうか」
もう隠すこともできねえな。
聞かれた以上、黙っていられないな。
「京夜は・・・私のことを知っていたの・・・?」
「・・・ああ。最初からな」
「っ!」
茜雫はガバッと布団から出てきて、俺に迫り寄る。
その表情は怒りのような、悲しみのような、そんな複雑な顔をしていた。
「どうして・・・?どうして、言わなかったの!」
「仮に、前のお前に言って、素直に信じるのか?」
「そ、それは・・・」
茜雫は俯いてしまう。
今まで言わなかった理由の1つがそれだ。
今までの茜雫からすると、俺の言葉は信じないだろう。
怒るか、流すか、だろうな。
最も、今なら受け止められそうだけどな。
「それに・・・恐かったのかもしれない」
「え・・・?」
「茜雫に真実を言って、それで茜雫が狂ってしまったら、茜雫が俺から離れ、信じなくなるかもしれない。そう思うと、言葉が出なかった・・・」
俺は茜雫に背を向けたまま、そう呟く。
理由の2つ目がそれ。
心のどこかで恐怖していたんだ。
だから、言えなかった。
とんだ臆病者だ。俺は。
「けど、今なら言える」
上体を起こし、茜雫に向き直る。
もう臆しねえ。
茜雫を信頼している。
話さなくちゃいけない時なんだ。
状況と時間がそう言っている気がする。
「俺は茜雫を信じている。どう思われたって構わない。話すって覚悟を決めたから」
「・・・私は受け止めるよ」
茜雫はまっすぐに俺を見て、言った。
「どんな結果だろうと、構わない。自分のことを知りたい。お願い、京夜、話して」
茜雫の目が覚悟を決めた目をしていた。
「・・・わかった。心して聞け。まず、お前も薄々感づいているだろうが-----お前は人間じゃない」
「っ!」
茜雫は苦虫を噛みしめたような顔をする。
理解していたが、実際に言われると辛いよな・・・
けど、ここで止めてはいけない。
話すんだ。全てを、真実を・・・
「ましてや、死神でも虚でもない」
「じゃあ、なんなの・・・?」
「思念体-----記憶の集合体だ」
「え・・・」
そこから俺は茜雫のこと-----思念体について、欠虚について、そして、敵が茜雫をなぜ狙っているのかということ等、茜雫に関することを淡々と話した。
話し終わった後の茜雫は顔を俯き、絶望していた。
「・・・それじゃあ・・・私はこの世界に、いてはいけなかったということなのね・・・」
「・・・そうだ・・・。それが、現実だ」
「なら・・・何で、京夜とあの人たちはあそこまで・・・」
「・・・少しでも思い出を残したいからだ」
「思い出・・・」
茜雫は目じりに涙を溜めながら、目を見開く。
「いつかは消えてしまう存在。なら、少しでも多くの思い出を残したいと思うだろ」
「・・・みんな、優しいね・・・」
茜雫は俯きながら、少し微笑んでいた。
「・・・けど、存在してはならない私と、これ以上関わってはいけないよね・・・」
「・・・・・・・・」
確かに関わってはいけない。
敵も俺たちを襲ってくるだろう。
だが、苦しんでいる奴を放っておけるほど、俺は非道じゃない。
それに俺は-----護廷十三隊の死神だ。
護ることこそが俺たちだ。
「生きたいか?」
「え・・・?」
「生きたくないか?」
「・・・私は生きてはいけない存在。そんなわがまま-----」
「そんなことを聞いてるんじゃない。生きてちゃいけないのは、思念体としてだ。俺はお前の気持ちを聞いているんだ」
思念体は生きてはいけない。
それは決められた運命に抗わなければの話だ。
俺は知りたい、思念体の茜雫としてではなく、茜雫本人として。
「私は・・・私は・・・」
「もう1度聞く。生きたいか?」
「・・・・・・・・」
茜雫は俯きながら、押し黙る。
しばらく経った後、ポツリと言葉が聞こえた。
「・・・たい・・・」
次に、顔を上げた時には茜雫は涙を流しながら、俺に救済を求めていた。
「わ゛だじ・・・い゛ぎだい゛・・・」
まるで、助けを求める少女が手を出しているかのように見えた。
俺はそっと、優しく茜雫を抱く。
「大丈夫だ。俺がお前を救う」
「・・・でも、生きる方法なんて・・・」
「ある」
嗚咽を吐いていた茜雫が驚きを隠せない表情をする。
「俺の知り合いにお前を救える唯一の方法を持つ奴がいる」
「じゃあ・・・その人に頼めば・・・」
「ああ、お前は消えなくていい。生きれる」
「本当に・・・?私は生きてていいの・・・?」
「当たり前だ。この世に消えていい奴なんていない。俺はそう思う。例え、思念体としてもだ」
「京夜・・・きょうぅやぁ・・・」
茜雫は手を俺の背中に回し、抱き着く。
部屋には静かに茜雫のすすり泣く声が響き渡った。
しばらく経ち、茜雫が泣き止み、落ち着きを取り戻した後、茜雫は聞いてきた。
「方法ってどういうものなの・・・?」
「・・・記憶を消すことだ」
「え・・・」
「といっても、全てじゃない。俺と関わった一部は残す。そうすれば、お前は思念体ではなくなり、元通りの死神だ」
お互いにベッドに座りながら、隣にいる茜雫に話す。
恐らく、そのはずだ。
記憶の集合体なら、一部を残せば、原型を留めることはできる。
あくまで、俺の推測だがな。
けど、方法はこれしかない。
危険は承知の上だ。
「選べ。記憶という苦しみに耐えながら消える運命か、記憶を消すことでその分を生きる運命を切り開くか」
「そ、そんな・・・急に言われても・・・記憶を消すなんて・・・」
そりゃ、戸惑うか。
記憶を消すんだもんな。
さっき、生きたいとは言ったが、そんな方法だとは考えもしないだろう。
「・・・まあ、それが普通だよな。いいさ、答えは明日でも」
「・・・ごめん・・・」
「謝るなって。さ、もう寝よう。今日は疲れただろう?」
そう言いながら、俺は毛布に潜り込む。
そして、茜雫も一緒に毛布の中へ-----ん?
「・・・茜雫?なぜ、同じベッドで寝ようとするんだい?君の寝床はあっちだろう?」
「・・・色々あって、1人で寝たくないの・・・ダメ・・・?」
上目使い、涙目&横になった姿勢により、俺は呆気なく折れることになった・・・
「・・・はあ、好きにしな」
俺は茜雫に背を向ける形になりながら、寝ることにした。
いや、対面じゃねえ・・・
カップルじゃないんだから・・・
「・・・ありがとう、話してくれて」
茜雫は俺の背中に語りかけるように、呟いた。
「明日にはちゃんと答えを出す。だから、今だけは-----」
スッと茜雫が俺の背中に寄り添ってきた。
そのまま、背中に密着するように、服を掴む。
「せ、茜雫!?」
「お願い・・・ずっとこうさせて・・・」
珍しく甘えてきたな。
まあ、今日は色々あったからな。
それに、最後の俺の話が効いたんだろう。
なら、安心できるまで、そうしていろ。
俺は茜雫を受け止めるから。
こうして、俺と茜雫は同じ寝床で一夜を過ごしたのだった。
同時刻、とある場所にて。
そこは辺り一面闇に包まれていた。
どこかの洞穴らしいが、詳しい概要はわからない。
「滞りなく順調かね?」
黒いローブを着た長身な男がそう尋ねる。
顔はわからない。
「はい、現世には結合しましたし、尸魂界に接触するのも時間の問題でしょう」
「そうか。そのまま続けろ」
「はい」
同じローブを着た女性はそのまま奥の方へ消えてしまう。
次に近くにいた男に尋ねる。
同じく同種のローブを着ていた。
「思念体の方はどうかね?」
「足取りは掴めていますが・・・何分、手強い死神がいまして、簡単には行きそうにはありません」
「死神がか?珍しいな、監視のつもりか?全く、ここでも私たちの邪魔をするのか・・・」
そう言う長身の男だが、言葉とは裏腹に笑っていた。
まるで、余裕のような、楽しんでいるような感じだ。
「ふむ・・・その死神は1人か?」
「はい」
長身の男は思案し続ける。
「いかがなさいましょう?」
「シャイでは荷が重かったようだな。
「いいのですか?」
「構わん。奴らの腕は私が認めた程だ。一死神程度に負けるはずがない」
「かしこまりました」
そう言うと、男はどこかへ行ってしまった。
長身の男はフードを取り、顔が露わになる。
銀髪で無骨な顔立ち、そして、闇に潜めし顔だった。
「待っていろ、死神たちよ。我々の復讐は直に実る」
その男-----厳龍は不敵に笑った。
いかがでしたでしょうか?
まさかの茜雫救済方法ですね。
2つの劇場版がリンクできると思って、思い切ってやっちゃいました。
無理やり感あったかな・・・?
でも、こうしないと、茜雫を救う方法が見つからないんですよね・・・
もっと、京夜をチート化すればよかったかな・・・?
さて、次回は敵の急襲。
いよいよ、茜雫を救うために尸魂界に連れて行く京夜。
しかし、そこで目にしたものは・・・
ご期待ください!
あ、12月29日12:00~、BSアニマックスでブリーチの劇場版が一挙放送されますよ~。
え?前書きで聞いたって?
念には念を、だ!