BLEACHへの転生者   作:黒崎月牙

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どうも!またまた早めに投稿できました!
こんなに早く投稿できて驚きです。
こういうことが続けばいいな、と思います。

さて、今回は真咲が死ぬはずだった話です。そう、はずだった。
アンケートの結果、以下の通りになりました。

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2:11票
3:1票

ということで、真咲は滅却師の力を持ちながら、生きます。
みなさん、滅却師のハーレム見たいのですね。わかります。

そして、2,3を選んでくれた方、申し訳ないです。
番外編を正規ルートとして扱わせてもらいます。
題名、変えなくちゃな・・・

アンケートに答えてくださり、ありがとうございます!
たくさんのご意見をもらい、嬉しい限りです。
この小説がたくさんの人たちに読まれていると思うと、俄然やる気がでました!

それでは、シリアスだらけの今回、始まり!


現世に行くことに意味がある~惑わす記憶~

少女は雨の中、道を走っていた。

稽古帰りに急に雨が降り、雨具もないので急いで家に帰っていたのだ。

 

「あーあ、道着がびしょびしょだよ・・・」

 

少女は黒髪短髪で少し目が鋭かった。

目の鋭さに関しては、空手を習っているためだろう。

 

少女が道角を曲がる際、何かにぶつかった。

 

ドン

 

「っててて・・・。な、なに?」

 

誰かにぶつかった、と思ったが、目の前には何もない。

少女は不思議に思い、手でぶつかった所を触る。

 

手から冷たく、そこに何かあるのだとわかった。

 

「なに、これ?見えない壁?」

 

まるで見えない何かに塞がれているような感じだ。

 

少女は気味が悪くなり、その場から離れようとする。

その時、突然、少女が空中に浮かんだ。

 

「う、うわあ!?な、なんで、浮いてるの!?」

 

浮いてる、というよりも、何かに掴まれてる、といった感じだ。

現に襟首の部分が引っ張られていた。

 

浮くこと、数秒。

突如、何かに身体全体を掴まれた感覚に陥った。

 

「がっ!・・・あ・・・うあ・・・」

 

掴む力はどんどん強さを増していく。

それと同時に意識が朦朧としてくる。

 

(私・・・し、ぬ、の・・・?)

 

少女が諦めかけたその瞬間、掴む力が一気になくなった。

そのせいで少女の身体は地面に叩きつけられる。

 

「っ・・・」

 

痛みと混乱、さらに雨の冷たさにより、意識が徐々に薄れていく。

視界も悪くなり始めた頃、ある光景を見た。

 

(銀色の影と・・・黒い影・・・?)

 

それを最後に少女は意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

少女が襲われる頃、京夜は現地へと向かっていた。

 

俺は今、商店街を走り回っている。

 

もうすぐだ。もうすぐにつく!

 

「・・・雨が強くなってきたな」

 

不意にそんなことを思った。

さっきまで小雨だったのに、いつの間にか土砂降りになっていた。

秋だってのに、まるで梅雨のような豪雨だな。

 

っと、そんなことを考えていたら、辿り着いた。

着いたはいいものの、今まさに虚が女の子を食べようとしていたのだ。

 

「ちっ!四の五のしてる場合じゃねえな!」

 

俺は即座に死神化し、虚に向かった。

 

頼む!間に合ってくれ!

 

「うおおおおおおっ!」

 

ザン!

 

『オオオオオオオォォォォ!』

 

虚の腕を斬り、少女を解放する。

虚は雄たけびをあげ、苦しんでいた。

 

「大事か!」

 

女の子の様子を確認する。

よかった、気絶しているだけだ。

悪い、もう少しだけ我慢していてくれ。

すぐに終わらせるから-----っ!

 

『オオオッ!』

 

虚が俺の背後に手を振りかざそうとしていた。

 

そんなもん、見切ってるわ!

 

「ふっ!」

 

ガキン!

 

鬼神を背に回し、防御する。

そして、間髪入れずに俺は身体を半回転しながら、虚の仮面を両断する。

 

「終わりだっ!」

 

ザン!

 

『オオオォォォ・・・』

 

虚は力を失い、霊子になって消えた。

 

さてと、次だ。

 

「この子、どうすっかな・・・」

 

見たところ、目立った傷はない。

だが、この雨の中、放っておくわけにもいかない。

茜雫の所へ急いで戻りたいが、こちらも大事なことだ。

 

「おっ!胴着に住所が書かれている。案外、遠くないな。送ってやるか」

 

俺は女の子をおんぶして、その子の家に送ることにした。

 

この雨の中だ。

風邪をひかなければいいんだけど・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

(・・・ん?)

 

少女は意識が少しだけ戻った。

目をうっすらと開けながら、周りの状況を見る。

 

(揺れている・・・?)

 

景色が揺れていた。

いや、実際には自分の身体が揺れていたのだ。

 

(暖かい・・・)

 

身体に感じてくる暖かさ。

それは少女が安心するには十分な効果があった。

そこで、気づく。

自分がおぶられていることに。

 

ふと、斜め上を見ると、誰かの横顔が見えた。

 

(銀色・・・?)

 

少女の目には鼻から下しか見えなかった。

銀色の髪が輝いて見えた。

 

(綺麗・・・)

 

少女はそれに目を奪われていた。

すると、その人が見られていることに気づき、少女に話しかけた。

 

「―――」

 

(え・・・なに・・・?聞こえな-----)

 

少女は再び瞼を閉じてしまった。

今度は気絶したのではなく、ただ眠っただけ。

揺れる心地よさと身体に伝わる温もりによって、少女の睡魔が襲ったのだろう。

少女は気持ちよく眠り続けた。

 

 

 

「・・・ん」

 

次に少女が目を覚ました時には、既に布団の中だった。

横に心配そうな顔をしたお父さんとお母さんがいた。

 

「おおっ!起きたか!」

 

「もう、道端で倒れるなんて・・・心配したのよ!」

 

「え・・・?あれ・・・?」

 

少女は戸惑った。

確か、自分は稽古から帰っていたはず。

突然、雨が降り始めたから、急いで帰っていて、それで-----

 

(あれ・・・?あんまり思い出せない・・・?)

 

記憶にモヤがかかっているように、思い出せなかった。

ただ、直感的に思い出さないほうがいいと思った。

 

(じゃあ、アレは夢・・・?)

 

思い出すのは銀髪の人。

とても暖かく、心地良かった感触が残る。

 

「私・・・どうして、ここに・・・?」

 

「親切な方が連れてきてくれたのよ」

 

「この雨の中だ。風邪をひいて、倒れてしまったんだろう」

 

今更だが、自分の体温が熱いことに気が付いた。

ようやく、ここにきて、自分が風邪をひいたことを自覚する。

 

「私・・・その人に、お礼したい・・・」

 

「それがね、名前も言わずにどこかへ行っちゃったのよ」

 

「名を名乗るほどの者ではありません、と言ってしまったな」

 

少女は夢ではなかった、という安心感と誰だかわからず、お礼ができない残念さが入り混じった。

 

(いつか、必ず、お礼がしたいな・・・)

 

少女はそんな淡い希望を持ちながら、風邪を治そうと安静にした。

 

その少女の名は-----有沢 竜貴。

 

彼女が高校生になった時に、再び会えることになるのだが、今はまだ知る由がなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は京夜の言う通り、川に沿って走っていた。

走るにつれて異様な感覚が大きくなってくる。

これが虚という化け物なの!?

 

「急がないと・・・」

 

京夜が言うことが正しければ、きっとその化け物は人を襲うはずだ。

そんなの許せるわけがない。

早くしないと、誰かが犠牲になってしまう・・・!

 

「あれはっ!」

 

雨が強くなり始めたと感じた時、漸く化け物の姿が見えた-----かと思った。

けど、いたのはただの少女。

化け物なんていやしなかった。

 

「どういうこと・・・?でも、変な感覚はここから・・・!」

 

私が戸惑い、足を止めると、少女の元にオレンジ髪の少年が向かっているのが見えた。

 

「ダメ!一護っ!」

 

女性がそう声を挙げた。

 

ダメ・・・?どういうこと・・・?

 

その瞬間だった。

少年が少女の元へ近づいた時、ユラリと巨大な影が見えた。

 

アレが虚!?

 

「まさか、あんな所に・・・!」

 

一体、どこに隠れていたのっ!?

突然、現れた!?

けど、そんなこと言ってる場合じゃない。

私は急いで死神化する。

だが、死神化するのが遅かったみたいだ。

 

『ヒヒッ!ヒヒヒッ!』

 

「一護!」

 

少年を守るように女性が抱きしめた。

 

「夕闇に誘え-----」

 

私は斬魄刀の本来の力をだそうとする。

だが、一歩遅かった。

 

ガッ

 

ドゴン!

 

「っ!?」

 

化け物が女性を引っ掻いた。

その衝撃で女性と少年は吹き飛び、コンクリートの壁に激突する。

壁が無残にも崩れる。

 

あいつ・・・っ!

 

「くっ・・・『弥勒丸』ぅ!!!」

 

ゴッ

 

『っ!』

 

私は弥勒丸を使い、竜巻を起こす。

だが、それに反応したのか、化け物はその場から離れ、難を逃れた。

 

漸く、化け物の姿が明らかになった。

巨大な仮面に、四足歩行。

おまけに、至る所から毛が生えていた。

 

『ほう、死神か・・・。今日は豪華な食事じゃわい』

 

「あんたねえ・・・自分が何をやったのか・・・わかってるの・・・?」

 

私は身体が震えていた。

恐怖からではない、怒りからだ。

 

『はて?愚問じゃのう。儂は虚。霊質が濃い人間を食うことに、何か疑問があるのか?小娘』

 

「あんただけは・・・あんただけは許さないっ!ぶっ倒してやる!!!」

 

私は弥勒丸を振ろうとした。

しかし、その瞬間、先程の少女が化け物の前に来ていた。

 

「なっ!?」

 

そこに来てはダメ!

化け物がいることがわからないの!?

 

「あなた、そこにいちゃ危険よ!早く逃げて!」

 

『ヒヒ!誰に言うておるのだ?』

 

「な、に・・・?」

 

ベリッ

 

突如、少女の頭から亀裂が走り、皮が剥けた。

そして、中身が現れ、皮であったものが一緒に流れるように化け物の元へ行く。

中身が化け物の頭とくっついた。

 

「っ!?」

 

『この姿を見せた以上・・・お前の魂、喰らわずに帰すわけにはいかん』

 

どういうこと・・・?

まさか、あの少女は化け物の一部だったってこと!?

 

「あんた・・・さっきのを罠として扱ってたの・・・。それで、あの子を・・・」

 

『儂は五〇年も死神を人間を喰うてきた。これがその証明』

 

「最っ低!」

 

『何とでも言うがいい。儂はこの戦術で五四年も死神を人間を喰うてきたからな!』

 

「五四年・・・!」

 

何て奴なの・・・!

そんな長い間、みんなを殺し続けてきたっ!

そんなの許せないっ!

 

「ふざけんなぁ!弥勒丸!」

 

『ヒヒッ!怒りに任せた攻撃は手元を狂わす』

 

今まで以上の竜巻を起こし、化け物に攻撃する。

だが、化け物は瞬時に避ける。

 

「よ、避けた!?」

 

体格に似あわず、速い!?

 

『ヒヒッ!青いの!小娘ぇ!』

 

化け物から腕が伸びる。

その先にある爪が私に迫ってきた。

 

「くっ!」

 

弥勒丸を横にし、かろうじて防ぐ。

だが、化け物の攻撃は終わってなかった。

 

『ヒャァ!』

 

今度は腕にある毛を伸ばし、私の腕に絡みついてきた。

くっ!ちぎれない!?

 

『しねぇ!』

 

「舐めんなっ!」

 

弥勒丸を振り、毛を斬ることで化け物の引っ掻きを寸での所で避ける。

 

マズイ、防戦だ・・・

 

『なら・・・これならどうじゃ?』

 

「っ!」

 

化け物は空にあがり、身体中の毛が一斉に伸びた。

その無数の毛が私の身体全体を覆い尽くす。

 

ちっ!身動きが・・・

 

『ほれほれ、どうした?この程度か?』

 

「ぐっ!」

 

化け物は私の顔を目掛けて引っ掻こうとした。

私はなんとか首だけを動かして、避ける。

頬を掠めてしまった。

 

『全く、首だけ取れば楽に死ねるのにの・・・!そんなに苦しみながら死にたいのなら、その腹を抉り取ってやるわ!』

 

「っ!」

 

弥勒丸・・・!

ダメ、腕が動かせない・・・

マズイ、このままじゃ・・・

 

化け物の爪が私に迫る時だった。

 

ヒュン

 

ザン

 

『「!?」』

 

突然、矢が放たれてきて、巻き付いていた毛が千切れる。

自由になった私はその場から一時離れる。

 

一体、誰が・・・?

 

「大丈夫!死神さん!」

 

「えっ!?あ、あなたは・・・!?」

 

さっきの少年を守った女性だった。

 

な、なんで、無事なの!?

だって、さっき、壁に激突したのに・・・

血も流れてないし・・・

 

「あなた・・・さっき・・・壁に・・・」

 

「ああ、そのこと。私はちょっと特殊でね。だから、今こうしてピンピンしてるのよ!」

 

見ると、女性の手には弓があった。

ただ、普通の弓とは違って、霊子でできていた。

 

この人、一体、何者・・・?

 

『お前は滅却師!?まさか、こんな所で出会えるとはな。今日は運がいい』

 

「あなたのことは昔から耳にしているわ。グランドフィッシャー。そして、あなたは今日は運がない。だって-----」

 

女性は弓に手を添えると、引き始めた。

そこから、矢が作られた。

 

「―――私に倒されるのだもの」

 

ヒュン

 

『ちっ!』

 

化け物-----グランドフィッシャーは避けるが、毛を掠めてしまう。

 

この人・・・強い!

 

「わ、私だって!」

 

このままこの人に全て持って行かれるのは、なんだか癪だった。

死神である私が行ったのに、他の人に助けられました、なんてなったら京夜に顔向けできない!

 

「弥勒丸!」

 

『ぐっ!』

 

グランドフィッシャーはさすがに避けきらなかったのか、竜巻に足を掠める。

 

よし!これなら!

 

「死神さん、このまま2人で押し切りましょう!」

 

「そうね!それと、私は茜雫っていうの。死神さんなんて名前じゃないから」

 

「あら、ごめんなさい。なら、私は真咲って呼んでね」

 

「うん、わかった。―――行くよ!真咲!」

 

ヒュン

ゴウッ

 

『ギャアァ!』

 

竜巻と矢が交互に乱れ打つ。

そのおかげか、グランドフィッシャーの動きが鈍くなってきた。

 

このまま押し通す!

 

『ヒ、ヒヒヒッ!』

 

「・・・何がおかしいのよ」

 

突然、グランドフィッシャーが不敵に笑いだした。

 

『まだ儂は自身の真髄を見せておらぬ。にも関わらず、お前は儂に勝てると思い込んでおるな。甘い、甘いのぉ』

 

「なんですって・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

意味がわからなかった。

真髄・・・?

まだ奥の手があるの・・・?

 

『お前は死神ではない』

 

「っ!?」

 

「・・・・・・・・」

 

グランドフィッシャーがそう言いながら、少女の抜け殻を掴んだ。

真咲は何も驚かず、ただグランドフィッシャーがを睨み続けていた。

 

死神じゃない・・・?

私が・・・?

う、嘘だ!現に私は死神の力を持っている!

 

『死神でないお前は儂に勝てるはずがない』

 

「か、勝てる!あんたなんか私の弥勒丸で-----」

 

『ほう?なら、こいつを見てから、そう言えるか?』

 

「っ!?」

 

グランドフィッシャーが手を放した。

そこには-----

 

「お、お父さん・・・!?」

 

「え・・・!」

 

『茜雫・・・』

 

お父さんがいた。

あの川で優しく微笑みながら抱いてくれたお父さんが。

 

「ど、どうして・・・」

 

『ヒヒ!驚いておるな。なぜ、こうしてお前の父親の姿を作ることができたのか。それが不思議でしょうがない顔をしておるぞ!』

 

私は混乱した。

なぜ、こいつが知りもしない私の記憶の中にあるお父さんを作り出したのか。

 

『気が付かなかったか?』

 

気が付かない・・・?

何を・・・?

 

『儂がお前を攻撃する時、こっちの手だけを使っていたことに・・・』

 

グランドフィッシャーが爪のある方の手を振るう。

 

言われてみれば・・・

 

『覗いたのだ!この爪で!お前の記憶を!』

 

「そ、そんなの・・・いつ・・・」

 

『頬の血を見るがいい。その血は儂の爪に付着しておる。それだけあれば十分にわかる』

 

あの時か・・・!

 

『どんな冷徹な死神も決して斬ることのできぬ相手が1人はいる。それは滅却師も同様』

 

「・・・そうね」

 

真咲の返事は酷く冷たかった。

まるで、怒ってるかのように・・・

 

『じゃが・・・貴様は斬れぬ相手が多数おるな。それこそが、死神でない根拠じゃ。まあ、他にも理由はあるがの』

 

「多数・・・!?」

 

な、何を言ってるの・・・

多数って・・・私のお父さんは・・・!

 

『そうじゃ。こいつもお前にとって、大切な者じゃろう?』

 

再び、グランドフィッシャーがお父さんの顔を掴む。

そして、離した時、そこには-----別のお父さんがいた。

 

『茜雫・・・』

 

「お、お父さん・・・?」

 

「お父さんが・・・2人・・・?」

 

これも・・・私の・・・お父さん・・・

あの誕生日にお祝いした時のお父さんだ・・・

なんで・・・?

違う人物なのに・・・どうしてお父さんじゃないって否定できないの・・・!

 

『ヒヒヒッ!苦しんでおるな。さらに、こいつも、お前の父親じゃろう?』

 

再び、手を掴み、離す。

そこには、また別のお父さんがいた。

 

『茜雫・・・』

 

「あ・・・うあ・・・」

 

頭の中がぐちゃぐちゃになりそうだった。

このお父さんは・・・私に暴力をしてきた・・・

どれも・・・全部・・・私の・・・お父さん・・・

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

『ほれほれ、まだ序盤じゃぞ?最後にとっておきのが-----』

 

「やめなさいっ!」

 

真咲が矢を放ち、グランドフィッシャーの行動を阻止した。

 

これ以上やられたら・・・私・・・私・・・

 

「はっ、はっ、はっ、はっ、はっ、はっ・・・!」

 

苦しい・・・息が詰まりそうだ・・・

私は弥勒丸を手放し、頭を抱え込んでしまう。

頭の中に流れてくる・・・!

 

『茜雫』

『茜雫』

『茜雫』

 

「はっ!はっ!はっ!はっ!はっ!」

 

身体も碌に支えきれなくなってきた・・・

 

やめて!私を苦しめないで!

なんで・・・なんで・・・どれがお父さん・・・?

 

・・・どれが私の記憶・・・?

・・・私は・・・一体・・・?

 

「(マズイ、過呼吸になっている!)茜雫ちゃん・・・」

 

「はっ!はっ!はっ!はっ!はっ!」

 

「・・・大丈夫、安心して・・・」

 

「はっ!はっ!はぁ・・・はぁ・・・は・・・」

 

私は真咲に抱かれていた。

 

暖かい・・・安心する・・・

頭の中に響いていた声が消えていく・・・

まるで、お母さんみたい・・・

 

『ちっ!邪魔しおって・・・。もうすぐで、壊れると踏んでおったのに・・・』

 

「・・・茜雫ちゃん、大丈夫?」

 

「はい・・・。なんとか・・・」

 

真咲はグランドフィッシャーに一瞥したが、すぐに私のことを心配してくれた。

 

優しいな、真咲は・・・

 

私は弥勒丸を広い、すぐに立ち、グランドフィッシャーに対面する。

 

「ねえ、真咲・・・」

 

「・・・なに?」

 

「私、1人であいつを倒したい」

 

「!?」

 

「あいつは私を侮辱した。記憶の中にある大切な人まで利用して。だから、私はあいつを斬らなくちゃ気が済まない。私のお願い、聞いてくれる・・・?」

 

「・・・わかったわ。ただし、危険だとわかったら、すぐに介入するから」

 

「ありがとう・・・」

 

私は1歩前に出る。

弥勒丸を構える。

もう迷わない。あれは偽物。

本物は・・・私の記憶にあるもの!

 

「あんただけは・・・許さない!絶対に!」

 

『ほう、斬るというのか。父親を』

 

「・・・ええ。斬るわ。あなたごと、斬ってみせる!」

 

私はグランドフィッシャーに詰め寄る。

 

「弥勒ま-----」

 

『これを見てもまだその口が叩けるか?』

 

私の目の前に-----京夜が立ち塞がった。

 

「っ!?」

 

『茜雫』

 

私は弥勒丸を止めてしまう。

 

京夜までも・・・利用しようとするの・・・!

 

「う・・・ぐ・・・」

 

『ほれ、どうした?斬らぬのか?』

 

「くっ!」

 

斬りたくても斬れない・・・

これが偽物だってわかってても、斬れなかった。

どうして!なんで、動かないの!

動いてよ!私の腕!私の足!

 

『もうやめよう、茜雫』

 

「っ!?」

 

偽物の京夜から放たれた言葉は、酷く優しかった。

まるで、本物が話しているかのように・・・

 

『お前が闘う理由なんてどこにもない。剣を下してくれないか?』

 

「あ・・・う・・・」

 

「騙されないで!その言葉は偽りよ!」

 

真咲、わかってる・・・わかってるのに・・・!

弥勒丸が振れない・・・

生きている京夜まで殺してしまうような・・・そんな感触だ・・・

 

『安心しろ』

 

「っ!?」

 

京夜が私を抱きしめた。

本物に抱きしめられているかのような・・・

この腕の硬さ、身体の大きさ、銀色の髪・・・

目の前にいる京夜が本物だと錯覚してしまう・・・

 

『俺が守るから』

 

「あ・・・きょう-----」

 

その時だった。

 

ザシュ

 

「え・・・?」

 

腹から血が流れている・・・

何かが貫通している・・・

見ると、京夜の身体から貫通していた。

見ると、グランドフィッシャーが腕を伸ばし、私の身体を京夜ごと貫かせていた。

 

『やはり、お前は甘い!闘いの最中での迷いは死を意味する!ここに宣言しよう!お前は儂が出会った中で、甘く、最も弱い死神であった!ヒヒヒヒヒヒヒヒ!』

 

「がはっ・・・」

 

ドシャ

 

「茜雫ちゃん!」

 

グランドフィッシャーが腕をひき、私はその場に倒れ伏せる。

 

ああ・・・私はなんて愚かなんだろうか・・・

偽物に惑わされ、覚悟を決めたのに、剣を鈍ってしまった・・・

できれば・・・京夜ともう1度会いたかったなあ・・・

 

私は目を閉じ、意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「茜雫ちゃん!」

 

真咲は倒れた茜雫の元へ駆け寄る。

傷口は酷く、簡単にどうこうできるものではなかった。

 

「しっかりして!すぐに助けるから!」

 

そう心配するが、茜雫は意識を取り戻さない。

しかし、脅威はまだ過ぎ去っていない。

 

『さて・・・残りはお前1人だ。滅却師よ。滅びろ!』

 

「っ!」

 

真咲は振り返り、グランドフィッシャーを見た。

今、正に攻撃をしようとしていた所だった。

 

だが、真咲は逃げもせず、攻撃もしなかった。

ただ、腕を交差させただけ。

茜雫を護るように立ちふさがった。

 

ガッ

 

「・・・・・・・・」

 

『・・・なぜじゃ・・・』

 

グランドフィッシャーが困惑する。

それもそのはず。

真咲の身体には傷1つついていなかったのだから。

 

『なぜ、生身で受けたのに関わらず、無傷なのじゃ!』

 

「・・・言ったでしょ?私は特殊だって」

 

真咲は弓を構え、矢を放つ構えをとる。

だが、こんな所で終わるグランドフィッシャーではない。

 

『ふっざけるなー!』

 

真咲に向かい、毛が伸びる。

毛先が真咲に触れようとした瞬間。

 

真咲がその場から消えた。

 

『なっ!?どこに!?』

 

「虚が飛廉脚の速度に追いつくと思ってる?」

 

『後ろじゃと!?』

 

すでに真咲はグランドフィッシャーの背後をとっていた。

体勢を立て直そうとするも、先に真咲が動いた。

 

「滅却師の名にかけて、あなたを滅却します」

 

ヒュン

 

『ガアアアアァァァ!!!』

 

グランドフィッシャーの胴体に無数の矢が刺さる。

その瞬間、胴体の半分が弾け飛んだ。

 

『はーーーっ!はーーーっ!はーーーっ!』

 

「終わりね。グランドフィッシャー」

 

『・・・・・・・・』

 

真咲は蔑むようにグランドフィッシャーを見ていた。

しかし、グランドフィッシャーはまだ諦めたような目をしていなかった。

 

『オアアアアアアア!!!』

 

「なにっ!?」

 

弾け飛んだ胴体の部分は、京夜の体となっている部分に吸い込まれていく。

そう、疑似餌とした偽物も巨体な胴体も、どちらも本体だったのだ。

 

『ヒヒッ!ここは逃げさせてもらうぞ!滅却師!』

 

「させると思ってるの?」

 

『よいのか?後ろの小娘を長い時間、放っておいても』

 

「っ!」

 

思わず、茜雫を見る真咲。

茜雫からは大量の血が流れていた。

放っておけば出血多量になってしまうだろう。

 

その隙にグランドフィッシャーは真咲から離れ、空へ逃げていた。

 

『また戻ってくる!その時は必ず、貴様を殺すと思っておれ!滅却師!』

 

「くっ!」

 

そして、グランドフィッシャーはどこかへ消えてしまった。

しかし、それよりも茜雫の様態だ。

腹に穴が開いており、血が溢れだしてくる。

 

「このままじゃ・・・」

 

この場で応急処置はほぼ不可能に近い。

自分の家が医院だが、そこに持っていくまでに茜雫が持つかどうか・・・微妙な所だ。

 

真咲が戸惑っている所に、ある男がこちらにやって来た。

 

「茜雫!」

 

銀髪の男-----京夜はすぐに茜雫の元へ駆けつける。

 

真咲は茜雫の関係者だと、すぐにわかった。

 

「茜雫・・・。ごめん、俺が来るのが遅かったから・・・」

 

「いいえ。あなたは悪くはない。私が傍にいながら・・・」

 

京夜は真咲の方へ眼を向ける。

その時、京夜の目が見開いた。

 

「あ、あなたはっ・・・!?」

 

「?」

 

京夜は真咲だとすぐにわかった。

 

なぜ、死ぬはずの真咲がここに・・・?

ふと、思ったが、改めて思い返した。

自分がユーハバッハを異世界へ飛ばしたのだから、真咲の運命が原作通りに行かなかったのだ。

そして、周りの環境、状況的に原作であの場面だとわかった。

 

「あ、いえ・・・ありがとうございます。茜雫を護っててくださって」

 

「い、いえいえ!とんでもない!それに、こんな大怪我を負わせてちゃって、すみません・・・」

 

真咲が深々と頭を下げる。

京夜は首を振った。

そして、茜雫の傷口に手を置く。

 

「大丈夫です。俺がなんとかしてみせます」

 

「で、できるの?こんな場所で・・・?」

 

「問題ありません。すぐに治療しますから。―――ここで何があったか、説明お願いできますか?」

 

「え、ええ!実は-----」

 

真咲は京夜にここであったことを、具体的に話した。

グランドフィッシャー、茜雫が壊れかけたこと、闘いの光景、その他諸々・・・

 

京夜はそれを聞きながら、茜雫を治療させる。

みるみる傷が治っていき、茜雫の顔色も良くなっていった。

 

「・・・そうですか。そんなことが・・・」

 

「・・・すごい、あんなに酷かった傷がもう塞がっている・・・」

 

真咲は京夜の治療に感心していた。

 

京夜は茜雫を背中におぶり、この場を離れようとする。

その時、真咲は京夜に質問した。

 

「あ、あの・・・!」

 

「はい?」

 

「わ、私が何者か・・・聞かないのですか・・・?」

 

「・・・あなたが何者かなんて関係ない。あなたは茜雫を助けてくれました。その恩人に無粋なことを聞くのは失礼でしょう?」

 

「そ、それは・・・」

 

確かに、京夜の言ってることは正しい。

だが、相手は死神で自分は滅却師だ。

腑に落ちない。

 

踵を返した京夜は続けて言葉を放つ。

 

「・・・あなたが死神をどう思っているかは知りませんが、これだけは言います。俺はあなたたち(・・)の味方です」

 

「!」

 

真咲はなんとなく、京夜が自分の正体を察しているのがわかった。

その上で、自分を、滅却師の味方だと言ってくれた。

信頼してもいいと思った。

 

「・・・茜雫ちゃん、苦しんでいた。まるで、自分の運命に抗おうとするかのように・・・。茜雫ちゃんを救ってあげて・・・」

 

「・・・心配いりません。茜雫は俺が護ると誓いましたから」

 

そのまま京夜は歩いていく。

真咲は最後にこう尋ねた。

 

「あなたの、あなたの名前は!」

 

「鬼柳院京夜」

 

「京夜くん・・・。私は黒崎真咲!いつかまた会いたいな!茜雫ちゃんと京夜くん!」

 

「ええ。こんな形ではなく、またお会いましょう!」

 

こうして京夜と茜雫は消えていってしまった。

いつの間にか雨が上がり、夕日が照らしていた。

 

「さ、一護帰ろうか。ごめんね、こんな所で1人にさせちゃって」

 

崩れた瓦礫の上に気絶している一護の姿があった。

合羽を着ていて、その上に自身の上着と開いた傘が立てかけてあった。

 

真咲は上着と傘を腕に抱え、一護をおんぶする。

 

帰り道を夕日が照らしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は茜雫をおぶりながら、家に帰っている。

 

やはり、茜雫を1人にさせたのはイケなかった・・・

こんなに傷を負ってしまって・・・

これは・・・俺の責任だ・・・!

 

「う・・・んん・・・」

 

「茜雫、起きたか・・・」

 

茜雫が目を覚まし始めた。

うっすらと目を開け、今がどんな状況か確認すると混乱し始めた。

 

「え・・・?京夜・・・?あれ?グランドフィッシャーは・・・?」

 

「大丈夫だ。終わったから。お前は安静にしてろ」

 

寝ぼけているな。

それにしても、グランドフィッシャーか・・・

相手が悪かったな・・・

あいつは相手の記憶を利用するし、さらに幾多もの死神を倒していた。

茜雫には荷が重かったな・・・

俺が先にこちらを相手しておけば・・・

 

「って、どわあああああっ!?」

 

「うわっ!?な、なんだよ!?」

 

いきなり、茜雫が叫びだした。

 

な、なんだ!?何が起きた!?

 

「わ、私、どうして京夜におんぶされてんのよ!?」

 

「はあ・・・そんなことかよ・・・。倒れちまったから、俺が運んでんだろうが」

 

「お、降ろせ!恥ずかしいわよ!」

 

そう言うと、茜雫は頬を赤らめ、じたばたと暴れる。

 

こ、コラ!やめろ!

 

「じっとしてろ!傷は塞がっても、お前、怪我人なんだぞ!」

 

「う・・・」

 

茜雫は思い出したのか、動きを止める。

俺が声を荒げたせいか、しゅんと落ち込んでしまう。

 

はあ・・・だから、怒りたくなかったんだ。

 

「「・・・・・・・・」」

 

暫く無言で俺は歩いていく。

茜雫も言葉を発さず、背中に頭を預けていた。

 

突如、茜雫は口を開いた。

 

「・・・ごめん、京夜」

 

「ん?何がだ?」

 

「私・・・何も役に立てなかった・・・。逆に足手纏いで・・・」

 

茜雫の身体が震えていた。

泣くのを堪えているのがわかる。

 

役に立てなかった、ねえ・・・

 

「そんなことないぞ」

 

「え・・・」

 

「お前は十分に闘った。おかげで被害は最小限に済んだじゃねえか。よくやったな、茜雫」

 

「で、でも・・・」

 

ふう、まだグダグダ言う気かこいつ。

 

「やかましい。俺がよくやった、って言ってんだ。なら、お前は素直に受け取ればいいんだよ」

 

「う・・・」

 

これで茜雫はこのことに関してはもう言うことはないだろう。

元々、正規の死神じゃないんだ。

そんな奴がグランドフィッシャーなんて大物と闘ったら、大参事だろう。

真咲さんが居たとしても、よく闘ってくれたと思う。

 

「・・・ねえ、京夜」

 

「ん?」

 

茜雫が唐突に聞いてきた。

 

「・・・私ってなんだろうね・・・」

 

「茜雫・・・?」

 

自分が何者かってことか?

もしや・・・いや、最初から感づいていたのかもしれないな。

 

「・・・今日、グランドフィッシャーと闘った時に、死神じゃないって言われた・・・

 

グランドフィッシャーめ・・・茜雫にそんなことを言ったのか。

あいつも茜雫の正体に気付いたのか・・・

 

「それで・・・お父さんが現れたの・・・3人も・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

俺は茜雫の話を静かに聞いていた。

最後までしっかり聞かなくちゃいけない、そう思ったからだ。

 

「あいつは、私の記憶から大切な者、って言っていた・・・。でも、だったら、どうして、お父さんが3人もいるの・・・?」

 

受け止めきれられないんだろうな・・・

自分のことを・・・自分の中の記憶を・・・

 

「・・・声が聞こえたの。頭の中に、茜雫って・・・。そしたら、色々な光景が頭の中で見えた・・・」

 

もう、茜雫のことを言った方がいいのだろうか・・・?

けど、それが茜雫にとっていいことなのか・・・?

自分で答えを見つけず、人に教えた答えで・・・

 

「記憶は私のじゃないってわかっているのに・・・。私の心が、その光景を、映っている人たちを認めてしまっている・・・。私はそれが堪らなく、苦しい・・・」

 

茜雫の手が俺の服をギュッと握り締める。

 

苦しいよな・・・

自分が何者かわからなく、未知なる敵に襲われる身。

常人だったら、既に壊れている所だ。

 

「私・・・どうしたらいい・・・京夜・・・」

 

茜雫は一筋の涙を流していた。

 

どうしたら、いいか・・・

そんなの、決まってる。

 

「・・・茜雫は茜雫のままでいいよ」

 

「え・・・」

 

「確かに死神じゃないのかもしれない。記憶も理解ができない。さらに、自分が何者かわからない。でも-----」

 

俺は言葉を区切り、続けて話す。

 

「お前はお前だ。この世で茜雫という人物は唯一お前だけだ」

 

「っ!」

 

「記憶が違うなら、自分が信じる記憶に従え。他の記憶に惑わされるな。お前の記憶はお前のものなんだから」

 

「・・・・・・・・」

 

「苦しむんだったら、俺に半分よこせ。そして、苦しみからお前を救ってやる」

 

「京夜・・・」

 

「俺は絶対にお前から離れない。俺が護ってやる。魂に誓って」

 

「・・・ありがとう・・・」

 

茜雫は腕を俺の首に回し、顔を背中につけた。

涙が流れ始めたのがわかった。

 

「・・・背中、借りても、いい・・・?」

 

「ああ、いいさ。自分の気が晴れるまで」

 

「・・・う・・・うう・・・ひっく・・・」

 

茜雫は俺の背中で啜り泣いた。

その声はあまりにも小さく、俺にしか聞こえない。

それが、茜雫が今までどれだけ苦しんでいたのかがわかる。

 

俺は何も答えず、ただただ茜雫を受け止めた。

赤ん坊をあやすようにおんぶしながら。

 

平子さんは言っていた。

茜雫は消える存在だって。

原作でも同じように消えた。

 

でも、俺は、俺が消えさせやしない。

何か、方法があるはずだ。

茜雫を救う方法が・・・




いかがでしたでしょうか?

一応、自分としては、この話で半分を目安に終わりとしています。
もう半分も全力投球で頑張っていこうと思います。

最後に、グランドフィッシャーを強く書きすぎたかな・・・?

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