BLEACHへの転生者   作:黒崎月牙

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どうも!早めに投稿しました!
と言っても、毎日投稿じゃありませんけど!

もう1つの作品に手をつけていないので、今回はこちらを優先しました。

さて、今回の話は3部作です。
その内の今回は繋ぎ、のような所です。
飯食うところがちょっと文字数稼いでしまいました・・・
無駄な文がありそうな・・・

そんなこんなで、どうぞ!


それぞれが思うことに意味がある~祝儀と突然の来襲~

時間は昼を回った所だ。

場所は和と洋が混じったレストラン。

 

そこで俺、ルキア、雛森は昼食をとろうとしていた。

 

「ふむ・・・眼鏡もかけてしまえば自然に慣れてしまうな」

 

「フフフ・・・京夜くんからのプレゼント~」

 

不機嫌だったルキアはどこへやら。

今は満足気に俺に買ってもらった眼鏡をかけている。

雛森は買ったイヤリングが余程気に入ったのか、耳につけているそれをイジっている。

 

「お前ら、そんなに気に入ったのか?」

 

「当たり前だ。買ってもらったのを気に入らない訳がないだろう」

 

「それに、京夜くんのお墨付きだしね!」

 

お~お~、随分と嬉しいことを言ってくれるね~。

安物だけど、気に入ってくれて何よりだ。

 

「さてと・・・そろそろメニューを決めないか?店に入って何も頼まないんじゃ失礼だ」

 

「む、そうだな」

 

「そうだね!早く選んじゃおう!」

 

俺はメニュー表をとり、2人に渡す。

ちなみに、席順は俺の隣にルキア、俺の対面に雛森がいる。

 

「う~ん・・・迷うな~」

 

「ううむ・・・見たことのない料理がいくつかあるな」

 

「確か、この店は和食の他に、現世でいう洋食、というものも取り込んでいるんだよね?」

 

「そうだ。和食、洋食どちらも食べれるし、値段を張れば和と洋が混ざった料理も食べれる」

 

ここ尸魂界では基本和食だ。

だが、近年、現世の洋食を用意してきている。

この店はその現世の料理を多く取り込んだ店だ。

 

前世の記憶を持っている俺は洋食をよく熟知している。

メニューもファミレスで見たことのあるものばかりだ。

 

「この、ぱすた、とはなんなのだ?」

 

「それは洋食で言う麺料理。うどんやそばとはまた違った食感が楽しめるぜ」

 

「この、かれー、って?」

 

「それは米料理。現世の様々な国から集まった香辛料と水で煮たものを、米と一緒に食べるものだ。あ、勿論、野菜や肉も入っているぜ」

 

「イカ墨、と書かれているが、これは・・・」

 

「字の如く。イカ墨を使った料理だ」

 

「ええっ!?あんな黒い変なのを食べるの!?」

 

「もちろん、加工はしてあるから安全だ。それに、イカ墨の美味さをなめんじゃねえぞ?」

 

「ふ~む・・・和食もだが洋食も奥が深い・・・」

 

「京夜くん、物知りだね!スゴイ!!」

 

2人は俺を感心しながら、あれやこれやと洋食のことを聞いてくる。

ふっふっふ、知識面で頼られるのっていいね!

けど、早く決めてほしいな。

俺のお腹がリミット・ブレイクしそうだ!

 

「それで、2人は決まったか?」

 

「こう料理が多いとな・・・」

 

「そ、そうだね・・・。京夜くん、何かオススメないの?」

 

「俺のオススメ?」

 

ここで俺にフルのか。

う~ん・・・オススメねぇ~・・・

 

「俺としてはこのミートパスタ温玉乗せがいいと思うんだが」

 

「ミートパスタ?」

 

「そう、トマトという野菜と豚肉を調理し、パスタを和えたもの。豚肉の肉汁とほのかな酸味が混じって美味しいぞ。また、温玉は料理の味を変えるから、1つの料理で2度美味しい」

 

「聞いただけで美味しそう!私、これにする!」

 

「いいのか?俺が選んだ奴だぞ?」

 

「全然いいよっ!京夜くんのオススメは絶対に美味しいから!」

 

美味しいって、まだ断定はしていないんだがな・・・

というか、服屋でもそうだが、俺が決めてないか?

 

「で、ルキアは決まったのか?」

 

「ああ、無難に和食だ」

 

「ふ~ん、どんな?」

 

「海鮮丼定食だ」

 

「ぶっ!お前、それ中々値段張るやつじゃねえか!」

 

「7万以上の食事券があるのだ。少し位贅沢してもいいだろう」

 

「・・・それ俺が言うセリフな。あと、奢ってもらうんだから、もう少し弁えてくれ」

 

雛森を見習え!

あの子はお手頃で財布に優しいものを食べるんだぞ!

まあ、食事券だから財布はこれっぽっちも痛まないけど!

それに、この店はリーズナブルだからいいけど!

 

「・・・ところで、京夜は何にしたのだ?」

 

「ああ、俺のは『エスカルゴの丸焼き バターライス添え オニオンコンソメスープ付き』」

 

「えすか・・・なに?」

 

「だから、『エスカルゴのまr―――――』」

 

「ああ、いい!長すぎて覚えられるか!」

 

しょうがないだろ、こういう料理なんだから。

基本、長い名前がつく料理って美味しいよね!

俺の辞書にはそう記載されている!

 

「京夜くん、えすかるご、って?」

 

「貝だよ。俗に言うカタツムリだ」

 

「え・・・?カタツムリ・・・?」

 

「あの梅雨の時によく見かける、あれか・・・?」

 

「? そうだが?」

 

なんだ?2人が引いたような目で見てくる。

そんな冷たい目を向けられても、俺は興奮しないぞ!

 

「そんなものを食べてしまうとは・・・。狂ったか?」

 

「へ、変なものを食べるとしても、わ、私はきにしないから!」

 

「・・・お前ら、殴るぞ?」

 

お前らはエスカルゴを舐めている!

あれって見た目は変だけど、食べてみると癖になって美味いんだぞ!

 

と、まあそんなことがありながらも、俺は店員に注文し、料理を待つことに。

その間は3人で談笑した。

 

「そういえば、京夜くんって二つ名がついているんだね」

 

「ああ・・・あれか・・・」

 

「む?私は知らないぞ。どんな名前なんだ?」

 

「いや、その・・・」

 

・・・言いたくない。

二つ名があるのはいいことなんだが、嫌なんだよな・・・

 

と、俺が言いあぐねていたら、雛森が教えてしまった。

 

「『変幻自在の京夜』だよ」

 

「あ、雛森!」

 

「変幻、自在・・・?」

 

ああ・・・教えちまった・・・

ルキアのことだから笑うんだろうな・・・

 

「・・・よかったではないか。羨ましいぞ」

 

「ひょ?」

 

あれ・・・?

笑わない・・・?

 

「笑わないのか・・・?」

 

「どこに笑うところがある。私は自分のことのように嬉しいぞ」

 

微笑みながら、ルキアは語った。

 

「幼馴染であり、同僚であり、相棒のように一緒にいるお前が立派な二つ名がついたのだ。私はお前を誇りに思うぞ」

 

「・・・ルキア・・・」

 

「もし、誰かがその名前を侮辱したら、私はそ奴をぶん殴ろうではないか。これからも誇れ、その名を」

 

「・・・ありがとうな・・・」

 

誇れ、か。

こんな二つ名は嫌だな、って思ったけど、ルキアの話を聞いて考えが変わった。

確かに、二つ名って中々つけられたものじゃないよな。

ルキアが幼馴染で良かった・・・

 

「ルキア・・・」

 

「京夜・・・」

 

次第に俺とルキアは見つめ合っていた。

なんだろう・・・この暖かい感覚は・・・

徐々に2人だけの空間が作られ―――――

 

「オッホン!京夜くん・・・」

 

「あっ・・・な、なんだ?」

 

「・・・料理来たよ」

 

「ほ、本当だ。気づかなかった・・・」

 

いつの間にか来ていたんだな。

ルキアに集中しすぎていて周りが見えていなかったようだ。

そして、雛森がジト目で俺を見てくるんだが・・・

ルキアはなんだか雛森を見てるような、睨んでいるような・・・

 

(もう~!京夜、ルキアのこと見すぎだよ~!)

 

(チッ、邪魔しおって。私と京夜の空間に入ってくるな!)

 

(そんな空間、存在しないし、あって欲しくない!徹底的に邪魔するから!)

 

(なら私も貴様のことを邪魔するぞ!)

 

(望む所!)

 

「「ぬぐぐ・・・」」

 

バヂッ!と火花が散ったような音が聞こえたんだが・・・空耳だよな?

 

「2人とも~、飯が冷めちまうぞ~」

 

「あ、そ、そうだね!ゴ、ゴメン!」

 

「ふん・・・」

 

ふ~い、2人とも考え事はいいんだが、今は飯時だ。

さっさと、食べちまおうぜ!

オラ、腹ペッコペッコだ~!

 

「んじゃ、いただきます!」

 

「「いただきます」」

 

俺は鉄板に置かれてあるエスカルゴにナイフを入れ、切り分けた部分を1口食べる。

 

「・・・うん!美味い!」

 

「本当にカタツムリを食べるのだな・・・」

 

「料理は美味しくなさそうに見えるのに、京夜くんが食べると美味しそうに見えてしまう・・・」

 

ありゃ、2人とも俺の料理ばかり見ていて手が止まっているな~

 

「お前ら、エスカルゴばかり見ていないで早く食べろよ」

 

「見ていたのは京夜だがな・・・どれ、はむっ」

 

「感想は?」

 

「・・・うむ、美味いな」

 

「海鮮丼で美味くないはずがねえよな」

 

ルキアの食事姿見てたら、海の幸が食べてみたくなったな。

いや、エスカルゴも魚介類だけどよ・・・ほら、なんか違うじゃん?

そっち色鮮やかじゃん?こっち茶色いじゃん?その違い。

 

と、俺が海鮮丼を眺めていると、傍らで悪戦苦闘している者がいた。

 

「ん、しょ・・・あっ」

 

ツルッ

 

「も、もう1回・・・あ」

 

ツルッ ツルッ

 

フォークが慣れていないらしく、何度もパスタを取りこぼしている。

 

「うぅ・・・」

 

「やっぱ、フォークを使ってないから食べれないんだな」

 

「・・・うん・・・」

 

あらら、ガックリと肩を落としちまったな。

しょうがねえ、一肌脱ぎますか!

 

「雛森、フォーク貸せ」

 

「え?う、うん・・・」

 

雛森は徐ろにフォークを俺に手渡す。

俺は慣れた手つきでフォークを扱う。

 

「いいか。フォークはただ麺をすくって食べるんじゃない。こうやって、回転させて刃と刃の間に麺を絡ませて、すくい上げるんだ」

 

「な、なるほど・・・」

 

俺は説明しながら、パスタをすくい上げる。

丁度いいや。このまま食べさせてあげるか。

 

「ほれ、あーん」

 

「え・・・?ええっ!?こ、ここここれは、一体・・・!?」

 

「? 何してんだよ、早く口開けろって」

 

「あうあう~・・・あ、あ~ん・・・」

 

狼狽しながらも、雛森は口を開けて、パクリと食べた。

頬を染めながら。

俗に言う『はい、あ~ん』だな。

 

「どうだ?美味しいか?」

 

「う、うん・・・幸せすぎる・・・」

 

そんなに美味しかったのか?

パスタだけで幸せを感じることができるなんて、雛森は幸せ者だな。

 

「ほら、フォーク返すわ」

 

「あ、えっと・・・その・・・」

 

俺は雛森にフォークを返そうとしたが、受け取ってくれなかった。

なんだ?変に言い淀んでいるが・・・

 

「・・・こ、このまま京夜くんが食べさせてくれると嬉しいな~・・・」

 

チラッチラッと上目遣いをしながら、俺に頼みこんできた。

 

ちょ、その上目遣いは反則だ・・・

 

「別にいいけどよ。いいのか?こういうのって実際にやることで覚えるもんだぞ?」

 

「平気だよ!慣れてないから、食べるの大変だし、食べさせてくれることに意味があるんだから!」

 

「そうか?まあ、今回は雛森のお祝いだしな。これくらいお安い御用だ」

 

そうこれは雛森の就任したお祝いだ。

野暮に断ってはいけない。

 

そしたら、俺の隣のお方がジト目でこちらを見ているんだが・・・

 

「・・・・・・・・」

 

箸を咥えたまま見ないでくれ。

何が不満なんだ?

と、ルキアのことは放っといて、食べさせてあげますか。

 

「はい、あーん」

 

「ウフフ!あ~・・・」

 

と、雛森にパスタをあげようとした、正にその時だった。

 

「・・・1口いただく」

 

「あっ!お前、俺のエスカルゴを!?」

 

切り分けたエスカルゴをルキアは箸でとりやがった。

いきなり何すんだよ!

 

「隙ありだ。私も味見がしたい」

 

「いや、味見ならいいんだけど、お前、その料理に対して苦手意識なかったか?」

 

「・・・京夜があんなに美味しく食べたのだ。どんなものなのか知りたい」

 

そう言いながら、パクリと食べた。

 

「・・・ふむふむ、中々なものだな。癖になる」

 

「だろ?俺が選んだ理由もわかるだろ?」

 

「どれ、もう1口・・・」

 

「だ~め。俺の分がなくなっちまうだろ」

 

「・・・ケチ」

 

そんなつの口になってもあげません。

おや?口元にソースがついてるな。

 

「ったく、ソースついてるぞ」

 

俺はルキアの口元についているエスカルゴのソースを指でとり、そのまま舐めた。

 

「っ!」

 

「ん?どうした?」

 

「・・・な、なんでもない・・・!」

 

なんだよ、急に顔を背けやがって。

しかも、顔が若干赤いし。

エスカルゴに火照る要素あったか?

 

そしたら、再び雛森とルキアが睨み合っていた。

 

(きゅ、急にあんなことをするか・・・このたわけが・・・)

 

(い、いいなあ~!それに、邪魔しないでよ!折角の『はい、あ~ん』なんだから!)

 

(言ったではないか。私も邪魔をすると。というか、貴様の方こそ羨ましすぎるぞ!京夜の『は、あ~ん』を味わうなんて!)

 

2人とも仲がいいのか?

お互いに見つめ合っちゃって!やだ~、もう!

 

「あ、そうだ、雛森にあげるの忘れていたな」

 

「い、いいよ、気にしないで」

 

「悪いな。それじゃ、はい」

 

「あ、あ~ん・・・」

 

今度こそ雛森はパスタを食べた。

またしても幸せそうで、微笑みながら咀嚼する。

 

(この権利はどうやっても剥奪されないね!)

 

(くっ!コイツっ!)

 

とまあ、そうこうして、雛森にパスタをあげ続けて、俺の料理も完食した。

 

さてさて、そろそろメインの方へ移ろうかしらね!

 

「は~、ごちそうさま!」

 

「ごちそうさまでした。ここの店は美味しかった。覚えておくことにしよう」

 

「お粗末様でした。ん~・・・甘いの食べようかな」

 

!!!

その言葉を待っていたぞ、雛森!

 

「甘いのだったら飛びっきりのがあるぜ」

 

「本当に!?どれなの!」

 

「そう慌てんなよ―――――すみませ~ん!」

 

俺は店員を呼んだ。

 

ふっふっふ、今日、遅刻したのは何も寝坊したわけじゃない。

昨日の夜から仕込んでおいた作戦を、今実行するためだ!

 

「はい、お待たせいたしました」

 

「すみません、アレを・・・」

 

「アレ、ですね。かしこまりました」

 

そう言って急いで厨房の方へ移動する店員。

ルキアと雛森は訳がわからないといった感じで、首を傾げている。

 

「京夜、アレとはなんなのだ?」

 

「まあ、待ってろよ。すぐにわかるさ」

 

待つこと数分、店員が両手で大きい何かを持ってきた。

 

「お待たせしました。こちらをどうぞ」

 

「えっ!これって・・・」

 

「おぉ・・・すごいな・・・」

 

2人の反応は当然だろうな。

何せ、そこにあったのはホールのショートケーキだからだ。

 

俺はすぐさま店員たちに目配りをする。

店員たちも頷いた。

 

「それじゃあ、せ~の!」

 

『就任、おめでとう~~~!!!』

 

パンッ パパンッ

 

「え・・・?」

 

クラッカーを俺を含めた数名で打ち鳴らす。

状況についてこれていない2人は呆然としてしまっている。

 

「えええぇ~~~~~!!?」

 

やっと状況が飲み込めたのか、雛森は驚きの顔をする。

 

「きょ、京夜くんっ!?」

 

「雛森、おめでとう。お前のために、朝に打ち合わせといたんだ」

 

「わ、私のために・・・」

 

「なるほど、だから、来るのが遅かったのか」

 

「そういうこと、悪いな」

 

雛森は感激の余り、涙ぐんでいた。

ルキアも状況がわかったらしく、微笑んでいる。

いや~、内心ルキアには悪かったとは思っている。

巻き込む形になっちまったからな。

まあ、結果オーライでいいか!

 

「それではこちらをどうぞ、雛森様」

 

「あ、ありがとうございます・・・」

 

店員の1人がケーキを切り分け、雛森に差し出す。

 

「た、食べていいの・・・?」

 

「もちろんだ。食べなかったらどうすんだよ」

 

た、確かに・・・と、言いながら雛森はケーキを食べる。

みるみると笑顔になり、飲み込むと、パァと明るくなる。

 

「すごく美味しい!今まで食べてきた中で1番かも!」

 

そうかそうか、そんなに美味しかったか。

満足してくれてよかった、何せそのケーキは―――――

 

「雛森様、そちらの料理はこちらの鬼柳院様の手作りでございます」

 

「えっ!?きょ、京夜くんの!?」

 

あ、店員がバラしちまった。

俺が後から言おうと思ってたのに。ま、いいか。

おーおー、俺の手作りだと聞いて驚いておるな。

目をまん丸に見開いている。

 

「これ、京夜くんが作ってくれたんだ・・・私のために・・・」

 

「まあな、ちょっと腕を振るってみた」

 

「嬉しい・・・すっごく嬉しい・・・」

 

雛森はケーキをゆっくりと1口1口大事そうに噛み締めていく。

その間に俺とルキアの元にもケーキが出された。

 

おっと、ルキアをほったらかしにしていたな。

 

「どうだ、ルキア。味の方は?」

 

「申し分ない。むしろ、美味すぎるぞ。本当に手作りなのか?」

 

「当たり前だ。俺は料理は粗方できるからな」

 

「なら、今度、私が席官に就任したら、白玉ぜんざいのケーキを作ってもらうことにしよう」

 

「白玉ぜんざいケーキ・・・?そんなもの聞いたことねえし、作れるわけ―――――」

 

いや、待てよ・・・

スポンジに白玉粉を混ぜ合わせ、クリームに餡を混ぜればいけるんじゃ・・・

今度、作ってみるか!

 

「ありがとう、京夜くん・・・」

 

雛森が徐ろに話してきた。

そこには満面な笑顔で微笑んでいた雛森いた。

 

「私、ずっと覚えているね・・・。今日のこと、一生の宝物にする」

 

そう言った雛森の顔は、女神のように可憐で、美しかった。

俺はそんな雛森に笑顔で頷く。

 

その後、ケーキを食べながら、盛り上がった。

ここの店員たちはノリがよくていいな。

他のお客さんの相手をしながら、俺たちを楽しませてくれる。

 

こうして、俺が送る雛森のサプライズは大成功の元、終わりを告げた。

 

 

 

 

 

 

 

「こんな店より我が家で食した方がよかろう・・・」

 

私の呟きに店員が睨んできたが、私は気にしない。

3人を追っていくと、珍しい店内に入った。

私が居る所は3人の横にある花々を挟んだ席だ。

 

ルキアよ、まだ分からぬか・・・

このような怪しい店ででる料理など、危険だ。

あんな男より私が良い一級品の店を紹介してやるというのに・・・

 

「あの~、お客様・・・」

 

いきなり店員が申し訳なさそうに話しかけてきた。

なんだ?私は今、ルキアを見守るのに集中してるのだ。

邪魔をするな。

 

「こちらのお客様と相席でよろしいでしょうか?」

 

相席だと・・・?貴族である私と相席・・・?

そんな誇りを踏みにじるようなことできるものか!

と、断ってやろうと思ったが、その相手が私の知る者だった。

 

「十番隊隊長・・・日番谷、冬獅郎・・・?」

 

「六番隊隊長・・・朽木、白夜・・・?」

 

運命とは、よく言ったものだ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんな店があるとはな・・・」

 

店に入った俺だったが、店内が満席だったらしい。

だが、俺はどうしても店に入らなくてはならねえ。

全ては雛森のために・・・いや、心配なだけだ。

 

説得の成果か、店員が優しかったのか、相席でなら大丈夫らしく、案内してもらった。

その相席の相手なんだが―――――

 

「・・・なぜ、小僧が此処にいる」

 

「小僧じゃねえ、日番谷冬獅郎だ。てめえ、此処に来るガラじゃねえだろ、朽木家の坊ちゃん」

 

・・・これは神のイタズラか?

相席の相手が六番隊の隊長様とはな・・・

 

「お二人は知り合いそうですね!」

 

「いや、知らぬ」

 

「こんな奴、記憶にねえな」

 

「それではごゆっくりどうぞ。失礼します!」

 

そう言って店員は慌てて逃げるように、仕事へ戻った。

 

なんだよ・・・人の話を最後まで聞けよ・・・

何でこんな奴と相席なんか・・・

 

「・・・てめえの異様な圧力で、店員が逃げちまったじゃねえか」

 

「・・・小僧の目つきが悪いせいではないのか」

 

「「・・・・・・・・」」

 

お互いに睨みつける。

チッ、ムカつくヤローだぜ・・・

 

ったく、仕方ねえな。

他に席は空いてねえし、不本意だが同席してやるよ。

 

俺は朽木の斜め前に座った。

 

「「・・・・・・・・」」

 

お互いに無言になる。

俺は向かい側の席に集中しているんだが、コイツも何かに集中しているらしいな。

 

それはそうと、雛森たちの様子だ。

雛森が慣れていない料理で悪戦苦闘していた。

フッ、カワイイやつめ・・・と、思った矢先、京夜が雛森に食べさせてあげてるじゃねえか!?

くっ、羨ましい―――――ではなくて、あの野郎、毒でも仕込んでんじゃねえよな!?

あ、もう1人の女に京夜が口元のタレを、指で取って舐めた。

 

「「っ!?」」

 

チャッ

 

瞬間、俺と朽木は同時に斬魄刀を手に―――――

 

「お客様、ご注文は御座いますでしょうか?」

 

・・・邪魔が入っちまった。

俺と朽木は斬魄刀から手を離す。

 

フ~・・・落ち着け、ただ雛森が料理を美味しく食べていただけじゃねえか。

あそこで嫌な顔をしていたら、飛んで邪魔に入ってたが、無粋はいけねえ。

 

っと、注文だったな。

 

「粗茶を頼む」

 

「ミルクでも貰おうか」

 

「は、はい・・・。あの、他にご注文は・・・」

 

「あるわけがなかろう」

 

「さっさと行け」

 

「は、はい・・・(今日の客、変なのばっか・・・)」

 

店員の顔が引きつってたな。

全く、他にマトモな注文できないのかね、コイツは。

 

「・・・何か言いたげな顔だな」

 

「・・・いいや、何も」

 

「「・・・・・・・・」」

 

お互いに会話がなく、ただただ俺は雛森たちに集中して見ていた。

コイツは一体此処で何しに来たんだ?

飯も食わず、ただただ何かを見つめているだけ。

 

『就任、おめでとう~~~!!!』

 

パンッ パパンッ

 

「「っ!?」」

 

いきなり大きな音が出たので意識を集中する。

そこには、雛森の目の前に白く巨大なお菓子があった。

 

「えええぇ~~~~~!!?」

 

雛森が目を開いて驚いている。

成程、京夜がお祝いと言っていたのはこういうことか。

どうやら、雛森は聞いていなかったらしいな。

なんだ・・・京夜の奴、存外に悪い奴ではないらしいな。

 

「・・・小僧」

 

「あ?あんだよ?」

 

「随分とにやけているな」

 

「そう言うお前こそ口元、緩んでんじゃねえか」

 

「フッ・・・。向かいの席が騒がしいな」

 

「ああ、そうだな」

 

どうやら朽木もあの光景を見ていたみたいだな。

案外、朽木も冷たい奴じゃねえみたいだな。

 

雛森たちは楽しそうに、愉快にお菓子を食べながら談笑している。

俺はその光景を微笑ましく見ていた。

 

しばらく経つと、3人が席を離れた。

俺も追いかけるために席を立つ。

さっきの光景を見たが、まだ警戒をしない訳ではない。

もしかしたら、油断させといて、突然、毒牙を剥くかも知んねえからな。

そしたら、朽木も席を立った。

 

「なんだ?てめえも店を出るのか?」

 

「そうだ。私は小僧に構っているほどの時間はない」

 

「小僧じゃn―――――はぁ、もういい。俺だって忙しいからな。此処を出てく」

 

結局、コイツは何しに来てたんだ?

俺と同じ理由ならわかるが・・・生憎、検討がつかねえ。

 

あ!3人がもう店の外に!

俺は急いで会計を済ませた。

・・・何故か、朽木の分まで俺が払っていたんだがな・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

時刻は夕暮れ。

俺たちは今とあるベンチに座っている。

 

「――――それで、いいよね」

 

「―――――うむ。そうだな」

 

ルキアと雛森が女子トークを繰り広げていた。

流石に俺はこうなっちまうと入れる余地がない。

しかし、話すならもう少し大きくしてもいいじゃねえか?

ヒソヒソと話しているから会話が途切れ途切れに聞こえてくる。

 

「―――――じゃ、先に・・・」

 

「―――――わ、分かった・・・よし」

 

お?女子トークが終わったのか?

なんか、ルキアが無駄に意気込んでいるような・・・?

 

「京夜くん、私お手洗いに行ってくるね」

 

「あ、おう、わかった」

 

そう言うと、雛森はその場から離れる。

俺とルキアだけがその場に残った。

 

「・・・今日は楽しかったぞ」

 

「お?本当か?ルキアに報告していなかったから、ちょっと心配だったんだよね」

 

楽しんでくれてよかった。

今回は雛森が主体だったからな。

 

「今度からきちんと事前に教えてくれ。驚いてしまったではないか」

 

「悪いな。今後、気をつける」

 

「あと、私が席官に就任してくれたら、お前は今日見たく祝ってくれるか?」

 

「もちろんだ!とびっきりなのを用意するぜ!」

 

「フッ・・・」

 

と言ったけれど、ルキアって席官にじゃなくて、一気に副隊長に就任するんだよね。

だから、お祝いする時は派手にやろうかな!

 

すると、ルキアが突然、俺の手を握ってきた。

 

「ルキア・・・?」

 

「・・・今日はお疲れ様だ。お前、昨晩、あまり寝ていないだろう?」

 

「ありゃ、バレてた?」

 

昨日の夜にケーキを作ってたからな。

しかも、朝は早起きして、店の方に頼み込んでいたから、あんまし寝ていないんだよね。

 

「何年一緒に居ると思ってる。うっすらと隈ができているのを、私は見逃していないぞ」

 

「・・・ルキアには敵わねえや」

 

俺とルキアは互いに見つめる。

周りに人はいない。

2人だけの空間が広がる。

 

「・・・だ、だから、お前にお礼というか、労いでも与えてやる」

 

「お、嬉しいね。何をくれるんだ?」

 

「そ、それは・・・」

 

ん?ルキアの目が泳いで、言いにくそうにしているな。

なんだ?何をくれるんだ?

 

「・・・じっとしてろ・・・」

 

そう言うと、徐々にルキアの顔が俺の眼前に近づいてくる。

え?これって・・・と、戸惑うのと不思議な感触が来たのは同時だった。

 

チュ

 

「・・・へ?」

 

「・・・そ、その・・・今、マトモなものが手持ちにないからな・・・」

 

ルキアが俺の頬にキスした。

こんな労いの仕方初めてだ・・・

 

「い、嫌だったか・・・?」

 

「い、いや、全然!ありがとな!またしてくれよ!」

 

「ま、また・・・お、お前が言うなら、いつでも私は・・・・・」

 

最後の言葉は聞こえなかったけど、ルキアなりのやり方なんだろう。

素直に受け取っておこう!

 

と、そんなあま~い空気の中、後ろから水を注すような視線を感じた。

 

「っ!(雛森、もう帰ってきたのか・・・。まだ早いのではないのか!)

 

「ん?あれって、雛m―――――」

 

雛森が後ろにある柱からこちらを見ていた、気がした。

すると、ルキアが俺の言葉を遮ってきた。

 

「きょ、京夜!わ、私はそろそろ帰らせてもらう!」

 

「え?でも、雛森がまだ―――――」

 

「あ、後で言っといてくれ!では、また明日!」

 

「あ・・・行っちまった」

 

言うが早いか。ルキアはそそくさと帰ってしまった。

そんなに急いで帰る必要ないのに・・・

 

そしたら、入れ替わるように、雛森が来た。

 

「お待たせ!京夜くん!」

 

「おう。ルキアは先に帰っちまった」

 

「うん、知ってる・・・」

 

「え?もしかして、後ろから見ていた?」

 

「えっ!?い、いや、見ていないよ!?き、気にしないで!」

 

なんで、そんな慌ててるんだ?

見てたなら、正直に言ってしまえばいいのに。

ただ、俺はルキアから労ってくれただけなのに。

 

雛森は俺の前に出て、俺を見つめてきた。

 

「今日はありがとう。すごく楽しかったし、嬉しかった」

 

「それはどういたしまして」

 

「まさか、店員さんたちと協力して祝ってくれるなんて思わなかったよ。びっくりした」

 

「ハハハ!雛森を驚かせようと思ってな」

 

今日の雛森は本当に楽しそうだった。

俺はこの笑顔を見たかったから、頑張ったんだ。

やって良かったと思ってる。

 

「・・・そ、それじゃ、私からご褒美あげるね・・・」

 

「え?いらねえよ、そんな―――――」

 

ギュ

 

と言いかけた所で、雛森が俺に抱きついてきた。

 

「雛森・・・?」

 

「京夜くんっ・・・!」

 

チュ

 

そして、間髪入れず、俺の額にキスした。

 

えっと、これはご褒美だよね・・・?

 

「あ、ありがとう・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

戸惑う俺は静かに礼を告げる。

対する雛森は抱きついたまま顔を真っ赤にし、俯かせていた。

 

そんな恥ずかしがるなら、もっと違う方法があったんじゃないのか・・・?

 

「・・・京夜くんって、あったかいんだね・・・」

 

「そ、そうか・・・?」

 

「・・・私、頑張る。京夜くんが認めるように。この温もりを護るために・・・」

 

「雛森・・・」

 

雛森は静かにそう決意していた。

 

護る、か・・・。俺が言う側だったのに、言われる側になるとはな。

でも、嬉しいぜ。こんな俺のことを目標にしているんだから。

 

そうやって、2人の空間が出来た時、再びあの水を注すような視線を感じた。

 

「っ!(ルキア、見ていたんだ・・・)」

 

「あれ?あれって、ルキ―――――」

 

岩の影に隠れてこちらを見ているルキアがいた、ような気がした。

雛森が俺の注意を自分に向けるようにしてきた。

 

「きょ、京夜くん!私もこれで帰るね!」

 

「へ?そ、そうか・・・」

 

「うん!私、頑張って、もっと強くなるから!」

 

「ああ、期待してる!またな!」

 

そう言い残し、雛森は帰って行った。

 

辺りが静寂になり、その場に俺1人が残った。

 

「ふ~、今日は色々あったな・・・。2人からのご褒美は素直に受け取っておきますか」

 

まさか、ほっぺとデコに口づけするとは・・・

最近のご褒美はこれが流行ってんのか?

後で卯ノ花隊長辺りにやろうかな。

 

そう思いながら、帰ろうと、ベンチから立った時だった。

 

「っ!?」

 

オンッ!

 

突然、巨大な霊圧を感じた。

 

な、なんだ・・・!?この冷たく、押し潰れそうな霊圧はっ!?

 

すると、前方から人影が見えてきた。

 

「あ、あんたはっ・・・六番隊隊長、朽木白夜・・・!?」

 

こちらに来る1人の男が立っていた。

俺に殺気を放ちながら・・・




いかがでしたでしょうか?

きちんとしたキスではないけど、それくらいやられたのに、気づかない京夜は流石と言えるでしょう。

さて、次は隊長2人とのバトル!
果たして、京夜は生き延びることができるのでしょうか!
そして、京夜に平穏は訪れるのでしょうか!
まぁ、平穏にさせる気はないですけどwww

次回もお楽しみに!

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