BLEACHへの転生者   作:黒崎月牙

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どうもみなさん。
やっと、投稿できました。

今回は劇場版ネタでシリアス多めだったので、今回はコメディ多めに作りました!
あ、もちろん、京夜は今回もフラグを建てますよ。
しかも、修羅場のシーンも!

いや~、伏線を多く張ってしまいました・・・
回収するのが大変そうだ・・・


第2章 十三番隊四席編
昇格することに意味がある


「ん・・・?ここは・・・?」

 

俺が目を開けたら、そこは白い空間だった。

上も下も右も左も前も後もわからない感覚。

 

ここは一体・・・?

 

「気が付きましたか?」

 

そう困惑していると、1羽の白アゲハが飛んできた。

 

そうか、ここはあの時と同じ神の世界か。

 

「久しぶりだな、神」

 

「ええ、お久しぶりです。あれからどうですか?第2の人生は?」

 

「まあまあかな。色々、大変だけど・・・」

 

真央霊術院に入ったり、死神になって仕事がたくさんだったり、海淵さんの死亡フラグ折ったり、仕事とか仕事とか仕事仕事・・・

って、仕事しか大変な思いがねえ!?

 

「ま、まあいいや。それよりも、何で急に来たんだ?」

 

「実はですね・・・・・あなたに能力を1つ付与させようと思いまして・・・」

 

「・・・貰えるなら貰うけど、一応理由を聞こうかな」

 

基本、転生前に特典をもらったら、神は現れない。

これは俺が前世で得た情報だ。

それが、いきなり現れたんだ。

何か訳があるんだろう。

 

「・・・それは、今後、世界に大きな歪みを起こさせないためです」

 

「は?歪み?」

 

「はい、原作では起こらなかった、志波海淵の生存、焔、雫、ダークルキアが存在しているので、歪みが徐々にできているのです」

 

そりゃそうか。

原作では死ぬやつがいるんだ。

歪みが起こったって何ら不思議じゃない。

 

「成程・・・ということは、今後は原作に沿って生きた方がいいのか?」

 

「いえ、そうではありません。すでにあなたという存在がいるので、歪みは出来てしまっている。それに、歪みといっても、小さなもの。今は世界が不安定ですが、日を経てば、安定するでしょう」

 

「じゃあ、その能力は必要なのか?原作ブレイクして、放っておいても大丈夫なんだから―――――」

 

「それがそうとも言えないのです」

 

俺の言葉を遮って、神は淡々と話す。

 

「物語には分岐点というものがあります。成功したら、世界は安定する。しかし、失敗したら、世界が崩壊します」

 

「はあ!?なんだよそれ!?」

 

これには驚いた。

たった1つの分岐点で世界が崩壊するかも知れないんだから。

 

「ですから、そうしないために、あなたに能力を付与させるのです」

 

「・・・理由はわかった。で、その分岐点ってのはどういうやつなんだ?」

 

「それは・・・言えません」

 

「えっ!?何でだよ!?」

 

「すみません、物語の先に起こるイベントを話すのは禁則事項なんです・・・」

 

「そ、そうなのか・・・」

 

てか、神に禁則事項なんてあるんだな。

もしかして、神って他にいたりするのか?

 

「おっと、もう時間ですね・・・」

 

「えっ!?ちょっと、まっ―――――うっ!」

 

神がそう言った途端、突然、眩暈が起きた。

 

「最後にあなたの能力を教えます。あなたの能力それは―――――」

 

俺は朦朧する意識の中、神の言葉を聞き逃さなかった。

 

「―――斬魄刀の干渉です」

 

その瞬間、俺の意識は途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――どういうタイミングで寝てんだっ!このドアホッ!!!」

 

ガンッ!

 

「いってえっ!?」

 

俺は頭に凄まじい衝撃と共に目を覚ました。

目の前には怒りで満ちた海淵さんがいる。

 

「こ、ここは・・・」

 

「はあ!?寝ぼけてんのか!今は席官就任の儀の最中だ!」

 

思い出したぞ!

いきなり四席に就任な!って海淵さんに言われて、戸惑っている俺を余所にいつの間にか就任の儀が行われてたんだ!―――――それから、急に眠気が来て、あの夢を見て・・・

 

「っ!」

 

ってことは、俺にまた1つ能力が付いたのか!

確か斬魄刀の干渉、だったっけ・・・?

 

「なに、ボーッとしてんだ?さっさと終わらしちまおうぜ!」

 

「おいおい、就任の儀をそんな風に言うなよ・・・」

 

そう浮竹隊長が苦笑いしながら、海淵さんに言う。

 

今、俺たちは正座していて、俺の対面に浮竹隊長と海淵さんがいる。

浮竹隊長は両手に紙を持っている。

 

「それじゃ、続きを行うぞ。―――――鬼柳院京夜。以上の者を護廷十三番隊第四席に任ずる。その名に恥じぬよう、精進せよ。山本元柳斎重國―――――おめでとう」

 

「あ、ありがとうございます」

 

俺は頭を下げながら、浮竹隊長から就任状を受け取る。

 

おお・・・!

ただの紙なのに何故か重量感が漂う・・・

 

「あ~、終わった、終わった!」

 

海淵さんは肩を叩きながら立ち上がる。

 

「お前というやつは・・・。きちんとした礼式なんだから、しっかりやってくれよ」

 

「俺はこういうのは苦手なんすよ」

 

浮竹隊長は再び苦笑いをする。

 

苦手って・・・

海淵さんが副隊長に就任する時ってどんな感じだったんだろう・・・?

 

「海淵さん、こういうのはきちんとしてくれないと台無しです・・・」

 

「うっせーな、京夜。正座を10分もしていられっかよ」

 

「10分位できるでしょう!?」

 

「はっ!舐めんじゃねーぞ!俺が正座している所を見たことあっか!」

 

・・・なんで、そんなドヤ顔なのかはさておいて。

俺は思い出してみる。

食事している時、休憩している時、仕事している時・・・

うん、全部胡坐の記憶しかない・・・

 

「海淵さん、正座苦手なんですか・・・」

 

「そうだ、文句あっか!」

 

「・・・自分が就任する時、どうしてたんですか・・・?」

 

「あ?そりゃあ、死にものぐるいで―――――」

 

「何言ってるんだ。先程の鬼柳院と一緒で寝ていただろう」

 

「ちょっ!隊長!?」

 

海淵さんの言葉を遮り、浮竹隊長が当時を思い出し、笑いながら真実を語る。

 

「いいこと聞けた・・・海淵さんの黒歴史・・・」

 

「てめっ!変に笑ってんじゃねえ!他のやつらに言うんじゃねえぞ!」

 

そんなこと言うわけないッスよ~(浦原風)

 

ま、1つ弱みを握ったと思えばいいか。

海淵さんが可哀想だから、言い振る舞う気はないけど。

 

「しかし、鬼柳院はすごいな」

 

「いきなりどうしたんです?」

 

浮竹隊長がポツリと呟いた。

 

「いやあ、飛び級で死神になり、しかも、1年足らずにもう席官。さらに四席ときたんだ。すごいことだぞ?」

 

「そんなにですか?」

 

「当たりめーだろ!普通はもっとかかるもんだ!前例もねえんだぞ!」

 

とは言われてもな・・・

普通に仕事しているだけなんだけどね。

 

「まあ、これまでの功績を考えたら当然か」

 

「・・・ま、そうっすね。変幻自在に変わる虚の正体を見つけ出し、砕蜂隊長と協力して巨大な虚を倒し、四番隊では驚異の治療を済ませ、俺や浮竹隊長、ルキアが敵わなかった虚を弱まらせた―――――短期間でこんだけやれば、一介の下級死神じゃ納まらないっすよ」

 

そう浮竹隊長と海淵さんに言われて、俺は頬を掻いてしまう。

 

この2人からそんなに褒められるとは・・・

ちょっと照れる・・・

 

「同期のルキアがちょっと可哀想だな・・・」

 

「あ~、その気持ちわからなくもないっすよ」

 

浮竹隊長がふと、ルキアのことを口出した後、海淵さんが肯定する。

 

ん?なんで、そこでルキアがでてくるんだ?

 

「ルキアが?どうしてですか?」

 

「わかんねえかよ。お前とルキアは、幼馴染で同期で同じ隊で働いてんだ。そんだけ一緒にいた相方が、自分や他よりも頭1つでたんだ。悔しさとか妬みとか、少なからずあるだろうよ」

 

・・・そうか、確かにルキアは昔から俺や恋次に追いつこうと頑張っていたんだ。

一番傍にいた俺がまたルキアより先に行っちまった。

今、ルキアはどんな気持ちなんだろうか・・・

 

「ルキアに会いにくいです・・・」

 

「まあ、気にしてもしょうがないだろう」

 

「浮竹隊長の言う通りだ。いつも通りに過ごしてれば大丈夫だ。あいつだって、この先、昇格の話があるだろうしな」

 

浮竹隊長、海淵さん・・・

うぅ、2人からそんな言葉を貰えて感動だぁ・・・

 

そう思った矢先だった。

 

『へっくしょん!』

 

・・・部屋中に可愛らしい声が響いた・・・

 

って、えっ!?

どっから!?

この部屋には俺と浮竹隊長と海淵さんしかいないんだぞ!?

 

「・・・い、今の声って・・・」

 

狼狽する俺。

 

「・・・はぁ、大方、見当はつくな・・・」

 

呆れる浮竹隊長。

 

「ったく、あいつらは・・・。お前ら出てこいよ。バレテっから」

 

『・・・・・・・・・』

 

海淵さんがそう言うと、一瞬静かになったと思ったら、いきなり下の畳からバリッ!と勢いよく3人が飛び出してきた。

 

「ばーれていたーっ!!!」

 

「も~、朽木がくしゃみするから~!」

 

「す、すみません、つい・・・」

 

「仙太郎さん!?清音さん!?ルキア!?」

 

これには驚いた。

まさか、そんな所で盗み聞きしてるとは・・・

 

って、あんたらは隠密機動かっ!?

しかも、浮竹隊長と海淵さんはわかってたかのように冷静だし!

 

「な、なんで・・・?」

 

「どうせ、京夜のことが気になったのと祝おうとするためだろ・・・」

 

「海淵ふくたいちょーっ!その通りだーっ!!」

 

仙太郎さんが無駄に大声をだすと、3人はどこから取り出したのかわからないが、後ろから楽器を取り出した。

しかも、後ろには『祝!四席就任!☆』という横断幕。

 

「鬼柳院!四席就任、おめでとうっ!!!」ドンドン

 

「さっすが、京夜ちゃん!あたしはいつか為せると思ってたよ!」パフパフ

 

「お、おめでとう、京夜・・・。うぅ、普通にお祝いしたかったのに、何で私まで・・・」チンチン・・・

 

「え、えっと、ありがとうございます・・・」

 

・・・嬉しいんだが、何もここでやるか・・・?

ルキア、ご愁傷様・・・

 

そのルキアがいきなり俺に詰め寄ってきた。

 

「きょ、京夜っ!」

 

「な、なんだよ?」

 

「そ、その、わ、私は別に羨ましいとか思ってないからなっ!」

 

「は・・・?」

 

「逆に、自分のようで嬉しいからな!」

 

「・・・もしかして、あの会話聞いてた?」

 

「うっ!」

 

ギクッと反応を示した。

 

わかりやすいな!おいっ!

 

「な、何のことだかわからん!と、とにかく、私は嬉しいのだ!べ、別に羨ましいとか思ってないんだぞ!」

 

「わおっ!ルキア、ツンデレかっ!!!」

 

「またかっ!あんた、本当にどこでそんな言葉覚えてきたんだ!」

 

ルキアが可愛らしくそっぽを向くと、仙太郎さんがまた言いやがった!

 

そして、とうとう海淵さんの堪忍袋が切れる!

 

「テメーら!さっさと撤収して、仕事に戻りやがれ!」

 

「あ、1つ言い忘れたことがあります!」

 

「・・・早く言え、清音」

 

「はい!今夜、就任の祝いのため、宴会を開こうと思い、ここにいる人たちも出席してほしいのです!」

 

おぉ・・・!

まさか、俺如きのためにそんな開いてくれるとは・・・

持つべきは信頼だな!

 

「って、それ、お前らが呑みたいだけだろ!しかも、四席就任程度に宴会かよ・・・」

 

「海淵さん!京夜ちゃんですよ!?あの京夜ちゃん!私の京夜ちゃn―――――」

 

「ああ、もうわかった!わかったっ!許可するよ!出席もすっから!」

 

「ありがとうございます!」

 

清音さんに押されて、海淵さんは折れる。

 

最後の私のなんとかはほっといて、段取りとか場所とかどうすんだろ?

 

「場所や段取り、宴会の設置は我々3人にお任せ下さいっ!!!」

 

「えっ!?私も含まれているんですか!?」

 

仙太郎さんの発言にルキアが驚く。

 

・・・ルキア、哀れ・・・

 

その時、微笑んで見ていた浮竹隊長が口を開く。

 

「そうか、宴会か!なら、俺も気合いが入るな!」

 

「隊長、身体大事なんすか・・・?」

 

「何言ってるんだ!みろっ!こんなにピンピンしてっ―――――ゴホッゴホッ!くっ、発作が・・・」

 

はい、突然の浮竹隊長の体調が悪くなること。

これお約束。

 

「すまん、俺は今夜出れそうにない・・・」

 

「だ、大丈夫ですよ!身体の方が優先です!」

 

「・・・仕方ない、誰か代わりを呼ぼう」

 

俺が気遣うと、浮竹隊長は代わりを呼ぶと言い出した。

 

「代わりっていらなくないですか?」

 

「何を言ってる。保護者がいないとダメだろう」

 

「俺らは子供ですかっ!」

 

あ~、浮竹隊長にツッコンじまった!

こんな病弱の人に何ツッコんでんだよっ!

 

「ま、いいんじゃねえか。人数いた方が楽しいだろ」

 

「か、海淵さん・・・」

 

確かにそうか。

保護者のことなんか気にせず、楽しめばいいか!

 

「それじゃ、俺は寝てくる。後で、代わりを合流させるようにする」

 

そう言って、浮竹隊長は後ろの部屋に退いていく。

 

「それでは、我々はすぐさま準備にとりかかるでありますっ!行くぞ!清音!朽木!」

 

「あんた如きがあたしに命令するな~!」

 

「あ、待ってください!し、失礼します!」

 

仙太郎さんと清音さんは飛び出して行き、ルキアも一礼した後、追いかけた。

 

「お~う、行ってこ~い。・・・って、あいつら仕事サボりじゃねえかっ!?」

 

「ハハ・・・今更ですね・・・」

 

薄々、気づいてたけど言わないでおいた。

案の定、海淵さん、気づいてなかったみたい。

 

「じゃ、京夜、あいつらの分、夜までに終わらせろよ」

 

「えっ・・・」

 

なん・・・だと・・・

四席になっても、俺の立場は変わんねえのか・・・

 

この時、俺は気づかなかった。

宴会する場所が俺の予想を越えていたということを・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は仕事をなんとか時間までに終わらし、宴会の場所へ向かった。

 

ふ~、きつかった・・・

 

「それでは、京夜の四席就任をお祝いして祝議会を開きたいと思います!!!」

 

「イエーイ!」

 

「って、ちょっと待って!」

 

皆が揃い、これから始まろうとした。

だが、本当に待って!

場所に問題がっ!

 

「何で俺ん家でやることになってんの!!!」

 

そう、ここは俺ん家だ。

あろうことか、3人は祝われる人の家で宴会を開こうとしているのだ!

 

「すまん、京夜。止められなかった・・・」

 

「ルキア、お前が教えたのか・・・」

 

「う、うむ・・・」

 

ルキアにだけ俺ん家を教えていたからな。

大方、仙太郎さんと清音さんに俺ん家を聞かれたんだろう。

そっから、もう話はわかる。

 

「いいじゃな~い、自分のお祝いを自分家で開けるんだから~」

 

「そうそう。固いこと言わないもんだよ~」

 

「・・・あと1つ聞きたいことがあります・・・」

 

俺はその当の人たちに指差す。

 

「何で乱菊さんと京楽隊長が居るんですか!?」

 

何故かその2人が宴会に出席しているのだ。

 

どうなったら、この2人がでてくるんだっ!

 

「僕は浮竹に頼まれてね~」

 

「海淵さ~ん・・・」

 

「・・・隊長、人選ミスだな・・・」

 

この人がいたら絶対に宴会がタダじゃおかなくなる!

こんなん保護者じゃね~よ・・・

 

「私は京楽隊長に誘われたのよ~」

 

「海淵さ~ん・・・」

 

「・・・京楽隊長がいる時点でこうなるわな・・・」

 

この2人がいたら、死人がでるぞ!

嘔吐物を撒き散らして!

 

・・・どうなっちまうんだ、今回の宴会・・・

 

「うぅ・・・皆を止める役割は、俺、ルキア、海淵さん、か・・・」

 

「俺は今回ハメを外す気だぞ?」

 

「ええっ!?」

 

俺が冷静に考えたら、海淵さんが驚愕の言葉を放つ。

 

嘘だろ・・・?

てっきり、海淵さんはこっち側だと思ってたのに・・・

俺とルキアじゃ、戦力不足すぎる!

 

「それでは話もまとまったことで、乾杯の挨拶を行いたいと思います!」

 

「どこもまとまってねえ!?」

 

仙太郎さん、さっきの会話聞いてた!?

どこがまとまっていた!?

 

そんなことも知らずに、清音さんが酒を持つ。

 

「じゃ、行くよ~!かーんぱーい!!!」

 

『かんぱいっ!!!』

 

「・・・かんぱい」

 

皆、一気に酒を飲む。

 

俺とルキアは酒を呑んでいない。

え?なぜかって?

ストッパーが居なくなっちまうだろうが!

 

「しっかし、初めて見たが、京夜の家は広いな」

 

「そ、そうですか・・・?」

 

「そりゃそうだろ。その若さでこの人数が入っても、広さが有り余ってる家なんだからよ」

 

海淵さんが俺の家を見渡す。

俺の家は2LDKだ。

しかも、2階に2部屋ある。

借り家だけど、格安に買えた家だ。

この家は死神になった当初からずっと住んでいる。

 

「しかも、十三番隊隊舎から徒歩10分弱って・・・。こんな物件よく見つけたな」

 

「見つけたというか、なんというか・・・」

 

俺は海淵さんに訳を話した。

 

二番隊の大前田副隊長をご存じだろうか。

あの人は超ボンボンで煎餅の会社をやっている。

あの人に俺はある意味で気に入られてる。

なぜか、実はその末っ子の女の子を、俺はひょんなことで救ったことがある。

それから、その子は俺のことを気に入ったらしく、よくその子と遊び、家にも招待された。

その時に、大前田副隊長から、曰く救ってもらった義理というものがあるみたいだ。

その人に、自分の土地であるこの空き家を紹介されたんだ。

そして、今に至る。

この詳しい話はまた後で話そう。

 

それを聞いた海淵さんは、目を見開いていた。

 

「・・・あのクソみてえな野郎に好かれるとはな」

 

「まあ、大前田さんは口は悪いですが、根はいい人ですから」

 

次はいつあの子から連絡来るかな~。

あの子、けっこう可愛くて、明るいから楽しいんだよね。

あ、恋愛対象には見てないからな!

 

そんな会話をしたら、今度は乱菊さんが絡んできた。

 

「ちょっと~、京夜!私にも構ってよ~!」

 

「うわっ!乱菊さん、抱きつかないで下さいよ・・・」

 

乱菊さんは俺の後ろから身体を持たれこむように、抱きつく。

海淵さんはその場から離れてしまって、京楽隊長たちが楽しんでいる所に行ってしまった!

 

ちょ、行かないで!

俺1人だけじゃ、この人押さえつけられないから!

 

「京夜さぁ~、なんで私の副隊長就任会の時に出席しなかったのよ!」

 

「いや、その、仕事が立て込んでいましたし・・・」

 

俺が死神になった数日後、乱菊さんは副隊長になった。

その時に、誘いの手紙を貰ったんだが、バタバタしてたしな・・・

俺は出られなかったのだ。

 

「全く・・・京夜が早く死神になれたから、来てくれると楽しみにしてたのに~・・・」

 

「す、すみません・・・。でも、そんな所に俺が行っても、浮くんじゃないですか?」

 

「そんなことない!私はずっと京夜に会いたかったのよっ!」

 

乱菊さんは俺の手を持ち、詰め寄る。

み、見えそう!

谷間が見えそうで危ないっ!

 

俺は目線を逸らしながら、乱菊さんに問う。

 

「そ、そんなに会いたかったんですか・・・?」

 

「もちろんよ~!だって、京夜は私のものなんだもの~!」

 

「・・・乱菊さん、もう酔ってます?」

 

いつから俺があんたのものになった!

全く、酔っぱらうと、すぐこういうこと言うんだから・・・

 

そしたら、今の乱菊さんの発言が聞こえたのか、今度は清音さんが参入してきた!

 

「ちょっと、ちょっと!京夜ちゃんは私のものですっ!」

 

「俺は清音さんのものになった覚えもありません!」

 

「あら、第三席のものが私に突っかかってきていいの?」

 

乱菊さん、その笑みが怖いです・・・

 

清音さんはプク~ッと頬を膨らまし、いかにも怒ってます自分、というのを表す。

 

何この子、かわいい・・・

 

「さ、三席だろうが、副隊長だろうが関係ありません!」

 

「ふ~ん・・・でも、女としても、私が勝っているように見えるわよ・・・」

 

そう言って、乱菊さんは清音さんの身体を下から上まで眺める。

その視線から逃げるように、清音さんは俺の背中に隠れる。

 

あ、やわっこいものが軽く当たってる・・・

 

「うぅ~・・・あ、愛では勝ってますっ!」

 

「へ~・・・なら、私の方が勝ってるわよっ!」

 

愛ってあれだよな?

部下や後輩としての愛だよな?

決して、LOVEとかのじゃないよな?

てか、そうあってほしい。

 

そう言うと、乱菊さんは俺の腕にしがみつく。

 

清音さんと違って、張りと弾力があり、腕を包み込むように・・・・・って、ちがうちがうちがう!

 

「ふ、2人とも、困るんですけど・・・」

 

「「京夜(ちゃん)は黙って!」」

 

「あ、はい・・・」

 

・・・あんたら、何気仲良くなってはいないか・・・?

清音さんと乱菊さんの間に火花が散る!

 

これが修羅場というやつなのか・・・?

 

「・・・このままじゃ、埒が明かないわね。京夜に選んでもらいましょう」

 

「・・・そうですね。その方が断然早い!」

 

「え・・・」

 

は?いきなり何を言い出すんだ、この人たちは!

 

そんな俺の困惑を無視し、乱菊さんと清音さんは俺にさらに詰め寄る。

 

「どっちがいいの、京夜。あなたは副隊長就任の時には、唯一出席してないのよ?―――――わかってるわね・・・?」

 

「京夜ちゃん、選んで。いつもお世話になっている先輩なんだよ?答えによっちゃあ―――――わかってるよね・・・?」

 

「え、えっと・・・」

 

こんな展開、誰が予想出来たでしょうか!

俺は今、2人の先輩から詰め寄られています!

誰か、誰か助け舟をっ!

 

その時、視界の端にルキアの姿が見えた。

 

「た、助けてくれ!ルキア!」

 

「・・・この女ったらしが・・・」

 

「無情にもひどい返しっ!?」

 

こ、この世に神はいないのかっ!?

・・・あ、俺、もう神に会ってるんだった。

そんなことはどうでもいい。

この状況、どう切り抜けてく・・・

 

「・・・ってか、俺はあなたたちのものになった覚えがないので、選ぶ必要ないんですよね・・・」

 

「「・・・・・・・・・」」

 

2人は静まり返った。

そりゃあ、もうだんまりと。

 

あれ・・・?

もしかして、俺、言葉間違えた?

でも、実際、その通りだし、これからもなる気はないしっ!

 

「はぁ、さすが京夜ちゃん。朽木が手こずるわけね・・・」

 

「京夜の本性がわかった気がするわ~・・・」

 

「え?あの・・・」

 

「京夜ちゃんはほっといて呑みましょうか・・・」

 

「そうね。京夜、何か作っといて~・・・」

 

「は、はあ・・・って、これ、俺がメインのはずじゃ・・・」

 

なぜか、2人は呆れてしまっていた。

おかげであの場から切り抜けられたけど、なぜか全然嬉しくないっ!

 

仕方なく、俺は簡単なつまみでも作ることにした。

 

「お~い、朽木!酌をついで~!」

 

「は、はい!わかりました~!」

 

・・・ここは居酒屋か何かか?

 

その声を後にして、俺は台所に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

俺がつまみを作り上げた時には、すでにみんな出来上がっていて、盛り上がっていた。

 

ドンチャン騒ぎとか・・・近所に迷惑だろ!

片付けが大変だぁ~!

あと、驚いたのが、あの海淵さんがドジョウ掬いを披露していた・・・

俺の海淵さんのイメージが・・・

 

まあ、そんなことはおいといて、俺は各人につまみを出していく。

 

「どうぞ、これさっき作りました」

 

「おっ!気が利くね~。ありがとう」

 

京楽隊長は俺に笑みを作り出す。

 

京楽隊長はまだほろ酔い状態かな。

そこまで酔ってるように見えない。

 

そこで、俺はちょっと気になることを聞いてみた。

 

「京楽隊長、こんな所で呑んでいていいんですか?」

 

「ん?どういうことだい?」

 

「いや、体長不在ですと、隊の方が大変じゃないかと・・・」

 

「あ~、大丈夫だよ。優秀な部下と副隊長がいるからね!」

 

・・・その人たち、大層気苦労していると思うな・・・

副隊長は七緒さんか。

原作でも苦労人だよな。

でも、京楽隊長みたいな人が好きなんでしょ?

いや~、世界ってわかんないね。

 

その時、ガラガラと、玄関の扉が開いた。

 

「隊長!こんな所にいたんですね!」

 

「おやっ!七緒ちゃ~ん!来てくれたんだね~!」

 

「あら、七緒じゃない~!1杯呑んできなさいよ~!」

 

「呑みません」

 

当の人物は、八番隊副隊長、伊勢七緒さんだった。

七緒さんはきっぱりと断り、俺と京楽隊長の元に歩み寄る。

 

「京楽隊長!何度言ったらわかるんですか!呑むのは控えろって、あれほど・・・」

 

「まあまあ、七緒ちゃん、そうカリカリしない。今日はお祝いなんだから」

 

「お祝い・・・?ああ、なるほど」

 

七緒さんは壁に掛かってある横断幕を見て、察したようだ。

 

だが、七緒さんはそれでも止まらない。

 

「そうだとしても、隊の者に示しがつきません!ほら、帰り―――――」

 

「そう固いこと言うんじゃねえよ!テメーも付き合え!」

 

「し、志波副隊長!?って、わっ!?」

 

そこに海淵さんが割り込んできて、七緒さんを無理やり引っ張り、席に着かせた。

そして、酒を薦める。

 

海淵さんって、酔うと絡む人なんだ。

絡み上戸かな・・・?

 

「え、えっと・・・」

 

あ、七緒さんが困っている。

これは謝った方がいいよな。いや、そうするべきだ。そうしよう。

大切なので三段活用。

 

「すみません。京楽隊長も巻き込んでしまって・・・」

 

「あなたは・・・ああ、鬼柳院さんですか」

 

「はい、先程、十三番隊四席に就任しました」

 

「私はあの髭親父の副隊長を務めてます、伊勢七緒です」

 

・・・自分の隊長を髭親父とは・・・さすがの毒舌。

 

「こちらこそ、すみません。うちの隊長がとんだご迷惑を・・・」

 

「いえいえ、そんな!悪いのは俺たちの方ですから・・・」

 

「いや、私の不備が・・・」

 

「俺たちが・・・」

 

そうやって、お互いにペコペコ頭を下げる。

そうやり続けていると、ふとお互いの目が合った。

 

「「ぷっ!」」

 

思わず、吹き出してしまった。

 

お互いに苦労人だからかな。

気が合う気がする。

 

「なんだか、鬼柳院さんとは気が合いそうです」

 

「俺もです。七緒さんとは仲良くできそうです」

 

会って早々、こんな風に思ったのは初めてだ。

 

それから、周りが大騒ぎしている中、俺たちは語り合った。

主に七緒さんが好きな本についてだ。

俺も真央霊術院時代によく本を読んだ。

そのおかげもあって、同じ本を読んだことがあるとか、本の感想を言い合ったりした。

その時の七緒さんは生き生きしていた。

 

「―――――フフッ、鬼柳院さんと話すと楽しいですね」

 

「俺もです。こんなに本について語りあったのは久しぶりです」

 

その時、ふと俺は七緒さんの笑顔を見た。

原作でもあまり見なかった七緒さんの笑顔を生で見た俺の感想は―――――不覚にも綺麗だと思ってしまった。

 

「・・・七緒さんって、綺麗な顔ですね」

 

「えっ!?そ、そんなことないです・・・」

 

七緒さんは頬に手をやり、顔を赤く染める。

 

あ、ちょっと、かわいいかも・・・

 

「そんな謙遜しなくても大事ですよ。七緒さんはお綺麗です!」

 

「そ、そうですか・・・?そんなことを言われるのは、初めてです・・・」

 

七緒さんはそういうのに慣れていないのか、顔を背けながら、眼鏡の位置を直す。

 

うん、仕草とかかわいらしすぎる!

 

そんな和やかな雰囲気に水を注す一言が響き渡った。

 

「七緒~!こっちに来て一緒に呑みましょうよ~!」

 

「「・・・・・・・・・」」

 

・・・これが乱菊さんの力なのか?

こんなに空気を読まない人は初めてだ!

 

「はぁ・・・すみません、失礼しますね」

 

「いえ、お気になさらずに」

 

七緒さんは何か諦めたような、呆れた感じに乱菊さんたちが呑んでいる所へ向かった。

 

「・・・俺もトイレに行こうかな」

 

そう思い、トイレへ向かった。

 

「七緒ちゃ~ん!愛してるよ~!」

 

「触らないでください。隊長も鬼柳院さんを見習ってください!あの人は―――――」

 

そんな説教を耳に残し、苦笑いしながらその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

「ふぅ・・・」

 

用を済ませ、俺はトイレから出る。

 

今日は疲れたな・・・

けど、楽しかったし、いいか!

 

「ん・・・?」

 

そう思っていると、目の前に人影が見えた。

 

「ルキア・・・?」

 

「京夜・・・」

 

ルキアがそこに立っていた。

ただ、様子が少しおかしい。

顔を俯き、身体が小刻みに震えていた。

 

「どうした?お前もトイレか?」

 

「京夜・・・」

 

俺の問いを無視し、ルキアはゆっくり俺に近づく。

そして、手が届く距離まで来た時・・・

 

「京夜・・・。京夜ぁぁぁ・・・!」

 

「うおっ!な、なんだ!?どうした!?」

 

なぜか、突然ルキアは泣き出し、崩れ落ちる。

 

い、一体なにがあったんだ!?

 

「ふええぇぇぇん・・・・・」

 

「おおおお、落ち着け!急にどうし―――――ん?」

 

俺がルキアに近づいた時、鼻につん、とくる臭いがした。

 

この臭い・・・まさか・・・

 

「おい、ルキア、お前酒呑んだか?」

 

「ヒック・・・おしゃけ・・・?にょんだよ・・・?」

 

・・・恐らく、あの酔っ払い連中が無理やり呑ませたんだろうな・・・

ルキアはあまり酒を呑まないから、すぐに酔ったのか・・・

 

「はぁ・・・。仕方ねえな。ルキア、みんなの所に戻るぞ」

 

「嫌だ!ここにいるのぉ・・・」

 

ルキアの手を引っ張ったが、だだを捏ねられる。

 

ルキアって酔うと泣き上戸の上、幼児退行までするのか・・・

なんて面倒な・・・

 

「わかったよ・・・。で、なんで、泣いてんだ?」

 

「・・・京夜は私のことわきゃってない!」

 

「は・・・?」

 

どういうことだ?

俺は長年、ルキアと一緒にいるから、けっこう理解者だと思うんだが・・・

 

「えっと、どういう意味・・・?」

 

「京夜は私のことわかってないのぉ!」

 

「いや、だから、もうちょっとわかりやすく・・・」

 

酔っ払いにこんなこと言っても、何ら意味がないと思うが、泣き止ませるには泣いている理由を理解しなくちゃいけない。

 

「京夜はいつも私に近づいてくるくせに、私が近づくと、すぐに逃げちゃうんだもん・・・」

 

「えっと・・・」

 

「何で逃げちゃうの・・・?私は京夜ともっとずっと一緒にいたいのにぃ・・・」

 

「・・・・・・・・・」

 

・・・ダメだ、話の意図が全くわからん。

そもそも俺は逃げてねえだろ。

ルキアが仕事とかで俺に近づいてきたら、ちゃんと受け答えしているし、一緒に飯も食ってるだろうが。

何を言いてえんだ・・・?

 

「はぁ・・・。結局、お前はどうしたいんだよ?」

 

「こうしたいのぉ!」

 

「おわっ!?」

 

いきなりルキアは正面から俺に抱き着く。

 

お互いの温もりが感じて、心地いい気分に・・・・・じゃねえ!

どういうこと!?

なぜ、急に抱き着く!?

 

「ちょ、ルキア!本当に落ち着け!」

 

「・・・京夜、聞いてて・・・」

 

「え・・・?」

 

俺がルキアを引きはがそうとしたら、ルキアは静かにそう呟いた。

 

「・・・私ね、ずっと、ずっと、前から、私は、京夜を・・・・・」

 

「・・・?」

 

なんだ・・・?

そこから言葉が聞こえない。

 

俺はルキアをじっと見る。

 

「すぅ・・・すぅ・・・」

 

「・・・寝てやがるし・・・」

 

呆れちまった・・・

結局、何が言いたくて、何がしたかったのかわからず仕舞いか・・・

ま、酔ってたんだから、あまり意味がないと考えていいのかな・・・?

 

「さてと、運びますか」

 

俺はルキアをお姫様抱っこし、みんなのがいる居間へ向かった。

 

居間へ入った瞬間、俺は口が閉じれなかった。

 

「・・・なんだ、この惨状は・・・」

 

酒ビンや皿は床に転がり落ちてあり、当人たちはその場で雑魚寝を繰り広げていた。

所々から異臭が漂う。

しかも、女性陣の肌着がはだけてものすごくエロいように見えてしまう!

だが、俺は何も見えない。見ていない!

 

「はぁ・・・。俺が後片付けをしなくちゃいけねえのか・・・」

 

渋々、ルキアを初めとした酔い潰れた人たちを2階の部屋へ運んだ。

あ、男女別にするのも忘れない。

 

そうして、全員運び終えた時、ふと俺はあることに気が付く。

 

「あれ?京楽隊長がいない・・・」

 

あの人、どこにいった?

2階にはいないし、1階も捜索したが、いなかった。

外に出向くと、玄関先で夜空を見ながら、物思いにふけっている京楽隊長がいた。

 

「京楽隊長、こんな所にいたんですか」

 

「おや~、鬼柳院くんじゃないかい」

 

「何してるんです?こんな所で」

 

「いや、なに、ちょっと月が見たくてね」

 

そう言いながら京楽隊長はチビッと酒を飲む。

 

この人、まだ呑むのか・・・

どんだけだよ・・・

 

「どうだい、1杯?」

 

「いや、けっこうです。あいつらの現状を見た後じゃ、呑む気が失せました」

 

「ハハハ!み~んな、潰れちゃったね~」

 

ケタケタと京楽隊長は笑う。

 

全く、この人は・・・

だけど、なぜか、今は一緒に語り合いたいと感じてしまい、俺はその場を離れなかった。

 

「・・・鬼柳院くん、君は始解はできるかい?」

 

「はい、できますけど・・・?」

 

「そうかい・・・。ちょっと、他の人の悩みを聞いてね」

 

「悩み?」

 

ふと、京楽隊長は俺に尋ねた後、月を眺めながら、そう呟いた。

 

「実は始解ができなくて、焦っている子がいるんだ。ただ、それは僕が解決しようとしてはいけないみたいでね・・・」

 

「・・・そういうのって、自分で何とかするもんじゃないですか?」

 

「そうなんだけどね。その子、目標であり、最愛の友に早く追いつきたいらしいんだ。今は、斬魄刀の名前だけが聞こえないみたいで、話すことはできるらしい。だから、あともう少しって所だね」

 

「・・・それを聞かせて、俺にどうすればいいんですか?」

 

「決まってる。その子に協力してあげてくれないかい?」

 

「協力って・・・そんなのどうやって―――――」

 

「おや?僕の勘じゃ、君はそういうことができそうだと思ったんだけど?」

 

「っ!?」

 

勘だけで俺に能力があることがわかっただと!?

さすが、京楽隊長・・・。

侮れない・・・

 

「その様子だと、図星みたいだね~。正直、望み薄だったんだけどね~」

 

「なっ!?カマをかけたんですか・・・」

 

「さぁてね~。どうだか~」

 

くっ!飄々として、読めない!

そうだったな。

京楽隊長は自分のことはさらけ出さず、相手を読むことに長けている。

少し甘かったな・・・

 

「はぁ・・・降参します。あなたには敵いそうにありません」

 

「おっ!ということは、協力してくれるんだね!」

 

「まぁ、そういうことになりますね」

 

「いや~、よかった、よかった~」

 

そう気分を良くした京楽隊長は再び酒を口に入れる。

 

全く、この人は・・・

って、うん?

ということは、京楽隊長は俺のことをちょっと特別な死神だって、思ってるんじゃないのか?

なのに、なぜ、追求してこない・・・

 

「あの~、京楽隊長。聞かないんですか?」

 

「ん?何がだい?」

 

「いや、ほら、俺がどうしてそんなことができるのか、とか・・・」

 

「僕が君に聞いた所で、君は素直に答えるかい?」

 

「・・・・・・・・・」

 

俺は何も言えなくなってしまった。

 

確かに、そんなことを聞いても、俺は言葉を濁すか、話を流すかだ。

京楽隊長はそんなことまでわかっていたのか。

 

「それに、誰にだって話したくないものはあるでしょ?僕もそうだし、君も」

 

「京楽隊長・・・」

 

ちょっと、感激してしまった。

これが京楽隊長のいい所だ。

ただののんべえじゃないんだな。

 

「ありがとうございます」

 

「ん~?なんで、僕は感謝されているんだい?ただ、君に頼み事をしただけだよ~?」

 

「ハハハ!」

 

本当、すげえやこの人は。

伊達に長年、隊長やってる身じゃないね。

 

っとと、そうだ。

大切なのを聞くのを忘れていた。

 

「それで、誰なんです?悩んでいる人って」

 

「ああ、言うのを忘れていたね~―――――ルキアちゃんだよ」

 

「えっ!?ルキアが!?」

 

ルキアが始解をしようとしているのか・・・

これは是が非でも協力しなければ!

 

「本当は直接、相談されてないんだけどね。ルキアちゃん、時折、思い悩んだ顔をしていたよ。『京夜に追い着きたい』『早く始解をしなければ』とか、他にも色々と口から零れてたね~」

 

「そうですか・・・」

 

そういうことか。

ルキアが酔った時に発した『わかってない』という言葉の意味。

あれは俺に助けを求めていたのかもしれないのか。

 

ハハッ、確かにまだまだルキアのことはわかんねえな・・・

 

(もっと理解しよう、ルキアのこと)

 

そう改めて思った時だ。

 

「おっ!鬼柳院くん!見たまえ!」

 

「はい?」

 

京楽隊長に促され、前を見る。

 

そこには―――――

 

「朝日だ・・・」

 

「綺麗だねぇ~」

 

夜が明け、日が昇り、俺はその日光に釘付けだった。

 

そして、こう思う。

 

明日に、いや、今日、ルキアを始解させる!

さて、今日も1日がんばるかっ!

 

「・・・って、俺、寝ずにこれから仕事かよ~!?」

 

俺の苦労は絶えないらしい・・・




いかがでしたでしょうか?

ここで補足説明。

乱菊が副隊長就任の話がありましたが、これだと原作と話が違わない?と思う人がいたでしょう。
原作では、ルキアたちが死神になる前には副隊長で、一心が隊長、冬獅郎が三席でした。
しかし、この世界ではすでに一心は現世に行っており、一護を産んでいます。
さらに、冬獅郎は隊長で、そこに乱菊が副隊長になった。
ということにしてください。

こんなご都合設定ですみません。

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