中編①っておかしくね……?
マジか………まさかホントにこんなことになるなんて……
やばいやばいやばい!……ドキドキがやばいって!
ここのところ無駄にこの人を意識しすぎてた分、このご都合主義のラノベ的出会いが、とんでもなく運命を感じてしまう。
こんなに目が腐ってるのに、こんなにキモくキョドってるのに、なんでこんなにカッコ良く見えちゃってんのよ私っ!
「……あ、比企谷先輩……こ、こんにちは……」
こ、こんにちは……じゃないっての!な〜にが、こ、こんにちは…よ!
なんでこんな時ばっか仕事すんのよ乙女ぇ!
あまりの動揺で顔がカッカしていると、相変わらずキョドりながらも比企谷先輩も赤くなっていた。
「お、おう、奇遇だな……その……スマン」
……………ん?
ケツドンしちゃったからこんなに照れてんの?
ちょっとお尻触っちゃったくらいで!?
……………な、なにこの人………やばいっ………可愛いっ………
ちょ…ちょっと勘弁してよ〜!なに萌えちゃってんのよ私〜……!
でも……さっきまでの動揺のドキドキが、このキュンキュンでちょっと軽減された気がする。
これはある意味ラッキーなのかな……?いやいやラッキーではないだろ……
「お、おい家堀?」
「あ……あ〜、いやいやこちらこそ奇遇ですね、比企谷先輩っ!きゅ、急にお尻触られちゃったから、ちょっとビックリしちゃいましたよ〜」
「……おい、人聞き悪い言い方はよせ……まるで俺が意図してお前に痴漢行為をはたらいたみたいになっちゃってるじゃねぇかよ……人に聞かれたらリアルに通報されちゃうからお願いだからやめてね」
ぷっ!……まったく。ホントに面白いな、この人。
こんな人、やっぱ今まで出会ったことないや……
「いやいや、先輩が可愛い女子のお尻を触った事に間違いはありませんよ〜?まぁでも仕方ないですねっ。今回のお触りだけは無罪放免にしてあげますよっ」
いろはの気持ちがすごい分かっちゃったよ。
この先輩は、なんかからかいたくなる♪
「お触りってお前な………自分で可愛いとかそのムカつく表情とか……やっぱり一色の友達だな……」
呆れた視線を向けてくる先輩もなんだか可愛い。
でもおかげでお互い突然の遭遇での緊張感がとけたみたい。
「ちょっと比企谷先輩!いろはと一緒にしないでくださいよっ!」
そりゃまだちょっとドキドキするけど、それよりもこうしてる楽しさの方が勝ってきた!
………いやいや顔合わせたく無いとか言っといて、それって逆にやばいでしょ……でもしょーがないかぁ……会っちゃったもんは致し方ない!
だから私は覚悟を決めて比企谷先輩と向き合うことにした。
ん?今だけはって意味よ?
× × ×
「先輩がまっすぐ帰らないでお買い物なんて珍しいんじゃないですか?まぁいろは情報ですけどねー」
「あのバカ……マジで人の悪口ばっか言ってんのな……」
まぁ悪口っていうよりノロケなんですけどね。
いろはの場合、比企谷先輩の話はどんな内容でもホント楽しそうに話すからなぁ。
ま、おかげで私も比企谷マニアになりつつありますよ(笑)
「まぁ今日はちょっと買いたい本があってな。家堀も本を物色か?」
「はい。先輩のラノベ、もうすぐ終わっちゃいそうなんで、なんか他に楽しそうなのないかな〜?って」
「マジで?もう読み終わんのかよ、早えーな。……なんか随分とハマっちまったんだな」
「まったく……比企谷先輩のせいですよ?あんなに面白いのオススメされちゃったら、そりゃラノベにハマっちゃいますって!」
「そ、そうか……」
うわ〜、すっごい嬉しそう!
自分がオススメした本を面白かったって言ってもらえる……そんなあたりまえの事が、この人にはこんなにも嬉しいことなんだ……
思わず顔がほころんでしまった。
こんな事で……こんなにも嬉しそうにしてる比企谷先輩は、やっぱり反則だな……
どうしよう……もっと話をしたい。もっと色々とお話して、もっと一緒に笑い合いたい……
なにこれなにこれ?……私って、こんなに乙女思考だったっけ?
いや、でもダメでしょ。落ち着け香織!乙女が仕事してる場合じゃないでしょ……
これ以上ハマるのは、確実にやばい……
こんな思考は胸の奥の方に閉じ込めなきゃっ……深い深い奥底に……
× × ×
その後、比企谷先輩はお目当ての本を購入したが、結局私はなにも買わなかった。
なんかもう胸がいっぱいでいっぱいで……
レジで買い物を済ませた比企谷先輩と本屋さんを出て、そのまま商業施設を後にする。
「さむっ……」
やっぱり施設内で暖まりきった身体には2月の夕方の空気はマジぱない。
冷たい手をはぁはぁしながら、無言で駅へと向かう。
ふと隣を見ると、比企谷先輩も私と同じポーズで手を暖めながら肩を並べて一緒に歩いてる。
「ぷっ!」
なんだかおかしくってつい笑いがこぼれてしまった。
……やばいやばい!
私は暖めてるその手で、口角の上がってしまった口を覆い隠した。
チラリと横目で覗くと……
ふぅ……良かったぁ。笑っちゃったこと、気付かなかったみたい。
今まで全くかかわり合いの無かったひとつ上の先輩と、なぜか偶然本屋さんで会って、なぜか一緒に商業施設から出て、そして隣で同じような格好で一緒に手をはぁはぁ暖めてる。
しかも本屋さん出てからお互い無言でやんのっ!でもそれでも気まずさを感じない。ってか居心地いいまである。
変なの……ホンットに変っ。
でもなんだか可笑しい!思わず顔が緩んじゃうくらいに可笑しい……
可笑しさを堪えてると、気付けばいつの間にかこの場所まで来てた。しつこいナンパ君から助けてもらったこの場所に。
……これは神様がくれたチャンスかもしんない!
ずっと悩んでたけど、これはチャンスだ!
どうやってラノベを返すのか?どうやってチョコを渡すのか?
たった一回……たった一回だけだぞ香織!覚悟を決めろ!
「あのっ……比企谷先輩っ」
「どうした?」
「……あの!明日も放課後ここで会えませんか!?」
× × ×
言ってもーた!うち、言ってもーたよ!おかあちゃんっ!
いやいや落ち着け香織!あんたは生まれも育ちも千葉でしょうがっ!!
どこのキャラが降臨したのよ!?
ほらぁ!比企谷先輩も唖然としてるっての!
と、取り敢えずこの爆弾発言に対しての説明回をしなければ!
いやいや説明会ね!?水着回みたいな言い回しになっちゃってんよ!
え?香織ちゃんの水着回はまだかって?
それはいつだってみんなの、コ・コ・ロ・の・な・か・に……だよっ☆
んん!ん!
ふぅ……己のアホ妄想の寒さで己をクールダウンさせて落ち着ける私って超クール。
クール過ぎて、もしもこういう時の自分の頭のなかを誰かに覗かれてるのだとしたら恥ずかしすぎて余裕で死ねるレベル。
クールどこいった?
「え……なんで?」
「へ?」
やっばい!クールダウンしたとか言いながらトリップしっぱなしだったでやんの私!
「いや……えっと……そ、そう!ラノベ!先輩から借りてたラノベがもう読み終わるんで、それをお返ししようかな〜?って……」
「いや、別にそんなに無理に急いで返してくれんでも……それに一色に渡しといてくれればいいぞ?」
ぐぅ……そりゃそうなりますよねー。
でも違うんですよ!そういうんじゃなくってですねー……
「いやぁ……お返しする時まで人を介するのはさすがに失礼ですしー……」
「別に全然構わんぞ……それに、だったら学校でもよくねぇか?」
ぐぅ……そりゃごもっともです……
だがしかぁーし!その程度の反論に屈する私では無いのだよ比企谷君!
「いや、だって学校じゃ恥ずかしいじゃないですかぁ?」
いやんいろはみたいになっちゃった!
「ああ、まぁそりゃ俺と一緒に居る所とか友達に見られるのは恥ずかしいわな」
ちっがぁぁーう!ホントこの人卑屈すぎぃー!
守ってあげたくなっちゃうからやめてくださいっ!
……はっ!……くっそう……不意打ちで母性をくすぐってきやがってこの男っ……だからいろはに陰口(天然スケコマシ)叩かれんのよっ!
いや別に今現在私がスケコマされてるって意味ではないんですよ奥さん!
「違いますからっ!そうじゃなくってですねぇ……私って、こうみえて上位カーストなんですよ。なので周囲の目もありましてですね?…………えっと……こういうの読んでるとかバレるの、ちょっと恥ずかしいかな〜……なんて」
まぁうちのグループはみんな知ってっけどね。
「あぁ……隠れオタってやつか」
いやんハッキリ言い過ぎっ☆
「けけけ決してオタクとかではああありませんけどもっ?」
「ああそう。じゃあ家堀がそういう趣味持ってんの知ってんのは、一色と……前に一緒にいた襟沢?って子くらいってことか」
……ああそう。って!絶対オタクだと思ってるでしょっ?
「まぁそういうことになりますね。あと二人居ますけども……。んん!……ま、そういう事情がありますんで、あまり学校ではお返ししたくはないかな〜……と」
「いやでもわざわざ千葉まで出てくる必要性なくね?俺早く帰りたいし」
……ぐぬぬ、やはり手強い……こんなに可愛い後輩にここまで誘われてるってのに!
強敵すぎるよいろはさーんっ!
だが残念だったね比企谷君。私はあなたの心をくすぐっちゃうよっ♪?
「私……こういう趣味で語り合える人が居ないんで、せっかくの機会だから一度だけでも比企谷先輩と語り合ってみたいな〜……って。ラノベ批評についても、プリっプリでキュアっキュアなやつとかについても……なんてっ」
ちょっと恥ずかしかったけど、ばちこーん!っとウインクしてみたよっ?
うう……もう火照って仕方ないわ……
どうだね比企谷君!面倒見の良すぎる先輩のウィークポイントを的確に突いたこのお願いの仕方は!
しかも趣味について語り合えるチャンスのオマケつきだよ!?お得だよっ!?
…………私、必死すぎじゃね?
「はぁ〜……仕方ねぇな……。明日の放課後、ここまで来りゃいいんだな?」
よしっ!HIT!!
まったく……手間取らせやがって……
「はいっ!お願いします!別に何時でも構わないんでこの場所でっ」
「……了解した」
やった………明日も話せる……!明日も会える……!
「あっ!重要なことがひとつ!」
「お、おう、どうした」
「その……明日ここで会うことは……だれにも内密でお願いします……」
そう。これは非常にマズい行為なのだ。
バレたらマズい……いろはの耳だけには、絶対に入らないようにしなければならない。
「あぁ……まぁ別に話す相手も居ねぇけど……一色にもか?」
「絶っっっ対ダメですっっっ!!いろはには絶っ対内緒でっ!!」
てかいきなり本丸をあげんな!
なに?大将の首から取っていくスタイルなの!?
「お、おう……ど、どうしたいきなり……?あぁ、まぁ外で自分の友達と俺が会ってたとか知ったら、は?なんで先輩がわたしの友達とわたしの知らないところで会ってんですか?はっ!まさかそうやって外堀から埋めていって最終的に断れないように企ててから告白するつもりですかすみません正直マジでキモいです無理ですごめんなさい……とか言われそうではあるけどな」
Oh……すでに完コピなされてますよこの人……
あの子、今まで何回比企谷先輩振ってきたんだろ……うらやまけしからん!
「あははは〜……ま、まぁそんな感じです。はじめっからいろはも居ればいいじゃんって話かも知れませんが、いろはが居るとあんまりソッチ系の話が盛り上がれないじゃないですかぁ……?」
「まぁそうだな。お前よっぽどオタ話してぇんだな……言っとくけど、俺別にオタクじゃねぇからそこまで詳しくねぇからな……?」
くぅっ……えらい誤解を受けている気がするぅっ……
この人、私のことガチオタだと思ってんじゃないの!?
曲がりなりにも好……ちょっとだけ気になってる人にガチオタと誤解され、『仕方ねぇからオタ話に付き合ってやるか』状態の私……
うぅ、なんて惨めっ……泣いてもいいですかね……
でもっ!まぁいっか!!
そのおかげでこうして約束取り付けられたんだもんねっ!
おっといけない!油断すると口がっ!
「なんか大きな誤解がありそうですけどまぁいいです!……それではまた明日この場所で!」
「ああ」
そうして私は比企谷先輩の背中を見送ったあと、ダッシュで買い物に出掛けるのだった。
まだバレンタインまでは日にちがあるというのに、フライングで明日渡す為の手作りチョコの材料を揃える為に……
ふふっ!今夜は忙しくなりそうだぞっ……
続く
ありがとうございました!
自己満足オリキャラヒロインの第二話でした!
ここで訃報です。いや中編①の時点ですでにおかしいんですけど、前中後編の三話予定が四話に延びてしまいそうです……orz
どんだけ自分の作ったオリキャラを優遇してんだって話ですよね(白目)
しかしいつもの香織らしさと、珍しく仕事熱心な乙女かおりんの両立、ちゃんと出来てるでしょうかね〜……??
あ、ちなみにアニメ最新話はAパート視聴開始数秒でやめました。
11巻の発売延期して、先にアニメでやっちゃうってどういう事だってばよ(`Д´)アホなんでしょうかね!?
こっちはその内容次第であざとくない件の続きが書けるのかどうか、不安な毎日を送ってるっていうのにっ(^ω^#)ピキッ
11巻読了後に録画見るのでネタバレはNGでオナシャス(=・ω・)/