なかなか話が思いつかなくて、
今もネタはないんですが
少し進んだ部分は更新しようと思います。
ーサラ・ヒューイットー
エルリック兄弟、ウィンリィちゃんとともにラッシュバレーへ向かう汽車に乗っていたんですが、ヒューズ中佐がウロボロスの少年に襲われそうになっていたので、影の
しかし、中佐が調査して気付いた事実は驚くべきものでした。
なんと、このアメストリス国は建国当初から国民を賢者の石にする計画のために存在していたというのです。
そのことについて、政権を握りながらも黙殺している軍上層部は黒であり、国の指導者であるブラッドレイ大総統も計画推進者の可能性が高いそうです。
その事を突き止めた中佐は敵に狙われるということで、リゼンブールのピナコさんの所へ逃げる事を勧めました。
ピナコさんなら匿ってくれるだろうし、リゼンブールは田舎だから隠れやすいと思ったからです。
知り合いだけを錬成陣の外へ逃がすようなことはできませんし、かと言って誰が敵なのかわからない状態で闇雲に暴れるわけにもいかないので、中佐の家族だけ一旦避難してもらい、計画が始まる前にエド君やマスタング大佐とともに敵を潰します。
かなり杜撰なプランかもしれませんが、今はこれ以上の考えが浮かびません。
中佐もひとまずはそれしかないということで、リゼンブール行きを了承してくれました。
今は、ウロボロスの少年から逃げた際に辿り着いた公園から中佐の家へと向かっている所です。
中佐の家までは遠くないそうですが、中佐の軍服姿は目立つので人目につかない裏道を通りながらの移動なので、少し遠回りになりました。
「グレイシア、エリシア!帰ったぞ‼︎」
「パパ、おかえりー」
「あら?今日は早かったわね。しかも制服で帰ってきたの?それにまたお客さんを連れてきたのね」
「すまんが説明は後だ。今すぐここを離れる準備をしてくれ」
中佐のお宅に着くと、お嬢さんのエリシアちゃんと奥さんのグレイシアさんが出迎えてくれました。
しかし、中佐は家を出る準備をするように奥さんに言います。
「急にどうしたの?ここを離れるってどのくらいの期間離れるかで準備も変わるわよ?」
「期間はわからんが、なるべく長い間離れてもいいくらいの準備だ。だが急いでくれ。嬢ちゃんも上がってくれ」
「パパ、お出かけー?」
「ああ、そうだ。お出かけするぞー」
そう言って、中佐はエリシアちゃんを抱っこし、家の中に入っていきました。
許可をもらったので、私も一言断って上がらせてもらいます。
「それでは、お邪魔します」
「詳しくは言えないが、ヤバい情報を知ったせいで追われることになった。だからここから逃げる!」
「逃げるってどこに逃げるの?」
「その辺はこっちのサラちゃんに任せてある」
「お会いするのは2度目ですね。サラ・ヒューイットと言います。今日お見送りいただいたエルリック兄弟と旅をしている者です」
中佐に呼ばれたので、グレイシアさんに挨拶をしました。
駅で見送ったメンバーの中に私がいたことを思い出したのか、
「ウィンリィちゃんと一緒にいた女の子ね!でもラッシュバレーにあの3人と向かったはずじゃなかったかしら?」
と首を傾げます。
「事情がありまして、私だけセントラルに戻りました。とにかく、ヒューズ中佐の言うように準備をお願いします」
「え、ええ。わかったわ」
まだわかってはいないけど、雰囲気に押されたようにグレイシアさんが頷き、そのまま準備のためにリビングから出て行きました。
私は特にやることがないので、ソファに座って待機します。
暫くすると旅行鞄に荷物を詰めたヒューズ一家が揃いました。
「こっちの準備もできたぜ、嬢ちゃん」
「そうですか。それでは交通機関を利用して行き先がバレたら問題なので、別口で移動します」
「それはさっきのヤツか?」
中佐がウロボロスの少年から逃げる時に使った転移魔法の感覚を思い出したのか、呻くように言います。
「はい。あれなら速いですし、あちらが追跡するのも難しくなりますからね」
「…あぁ、わかったよ!やってくれ‼︎」
やけくそと言わんばかりに中佐が答えました。
そんなに嫌な感覚だったんでしょうか?
それをグレイシアさんやエリシアちゃんに味わわせるのは忍びないですね。
「グレイシアさん、エリシアちゃん。今から手品をお見せするので、少し目を閉じてくれますか?」
「てじなぁ?わかったー!」
「…え?えぇ、いいわよ」
エリシアちゃんは喜んで目を瞑り、グレイシアさんは戸惑いながらも目を閉じてくれました。
「いいと言うまでは開けてはダメですよ。ではヒューズ中佐、移動しますよ」
中佐を見ると頷いたので、影の転移魔法を発動させます。
中佐は口を真一文字に結んで声を上げたいのを我慢し、グレイシアさんとエリシアちゃんは何が起こってるのかわからないという感じですが大人しくしてくれてます。
そして、リゼンブールのピナコさんの家の近くに転移しました。
「はい、目を開けていいですよ」
私の言葉にグレイシアさんとエリシアちゃんが目を開けると、そこに見えるのは部屋の壁ではなく、牧草地帯にポツンと一軒の家がある光景です。
「さっきまで家にいたはずよね?」
「お姉ちゃんの手品すごーい!」
グレイシアさんは驚きのあまり呟くように、エリシアちゃんはとても喜んでくれました。
「そこがピナコさんの家になります。では交渉に行きましょう。ヒューズ中佐、大丈夫ですか?」
若干疲労の色が見える中佐。
最初の転移のイメージが悪すぎてちょっとトラウマになっちゃったんでしょうか?
「…あぁ、大丈夫だ。それじゃあ行くか」
中佐も落ち着いたみたいなので、ピナコさんの家へと向かいます。
扉の前に立ち、ドンドンとノックするとピナコさんが出てきてくれました。
「今日の営業時間は終わっt…、おや?サラちゃんじゃないか。あの子らと旅をしていたんじゃなかったのかい?」
「旅は続けてますよ。今日はピナコさんにお願いがあってこちらに伺いました」
「お願いってのは背後の親子のことかい?」
ピナコさんが顔をヒョイと動かして、私の後ろに立っているヒューズ一家を見ます。
「はい。こちらはマース・ヒューズ中佐。その奥さんのグレイシアさんと娘さんのエリシアちゃんです。階級からわかるようにヒューズさんは軍の人なんですが、セントラルでエド君たちに協力しているうちに命を狙われる情報を知ってしまいまして。ピナコさんに匿ってもらいたいんです」
「匿ってもらいたいんですって、簡単に言ってくれるじゃないか」
「すみません、他に頼れる伝手がなかったもので。お金でしたらちゃんと払いますから」
そう言って、影の袋からお金が入った袋を取り出しました。
このお金はイーストシティでのバイトやセントラルの出店で荒稼ぎしたものです。
「今のはどこから取り出したんだい?それに、それだけのお金をどうやって稼いだんかね?」
「今のはちょっとした手品ですよ。このお金はイーストシティやセントラルで料理を売って稼いだものです。決して汚いお金じゃありませんから」
「おいおい、嬢ちゃん!まだ匿ってもらうと決まったわけじゃないが、匿ってもらうにしてもお金は自分で出すぞ‼︎」
ピナコさんと話してる横から中佐が声を上げますが、
「中佐は今お尋ね者状態なんですから銀行とか行けないでしょう?それに慌てて家を出たんですから、持ち合わせも少ないはず。だからここは私が出すのがいいんですよ」
私の言葉に反論できないのか中佐は黙ってしまいました。
「あたしはお金の話をしたいんじゃないんだよ」
「違いましたか?他に私がピナコさんへ対価として提供できるものなんてないんですけど…」
「誰も対価を払えなんて言ってないだろうに。そこのマースさんっていったかね?あんたはここに匿ってもらうことについて、納得してんのかい?」
「納得も何も、家族を守るためには他の良案がなかったので…」
急にピナコさんに話しかけられて驚きながらも中佐は答えます。
「次にサラちゃん。あんたは何でこの家族によくしてやってるんだい?」
「そうですねぇ…。中佐が底抜けにお人好しだからでしょうか?エド君が怪我した時も仕事で忙しいはずなのによくお見舞いしてくれてましたし、ウィンリィさんがセントラルで宿に困ってた時もお宅に泊めてくれるくらいお人好しな人ですから。手を貸してあげたくなるじゃないですか?」
「うちのウィンリィもお世話になったのかい?それは悪いことをしたねぇ」
「いえ、嬢ちゃんの言った通りお孫さんは宿をとっておられなかったみたいだったので、我が家に招待しただけで。お節介だったでしょうか?」
「いやいや、お節介だなんてとんでもない。これはウィンリィの借りを返さないとダメだねぇ。いいよ、この家族をウチで匿おうじゃないかい」
「本当ですか⁈ありがとうございます!」
ピナコさんの了承の言葉に中佐は頭を下げて謝意を述べました。
「これでいいかい?」
「ええ、ありがとうございます。もし軍人が訪ねてきても知らぬ存ぜぬを通してください。詳細を言ってしまうとピナコさんにも危険が及びかねないので、何も訊かずにいてくれると助かります」
「あたしも馬鹿じゃない、好きで危険なことに突っ込むようなことはしないよ」
「エド君達やウィンリィさんには私から伝えておきます。ウィンリィさんはラッシュバレーっていう
私が昨日のウィンリィちゃんの様子を教えると、ピナコさんはカッカッと笑います。
「ああ、エドに頼み込んだんだってねぇ。嬉しそうに昨日電話してきてたよ」
「それじゃあ、あとはよろしくお願いします。私もラッシュバレーに行きますので」
「おや、もう行くのかい?汽車はあったかねぇ?」
「いえいえ、ご心配には及びません。早くエド君達に追いつかないといけないので」
そう言ってピナコさんの家を去ろうとしたんですが、
「嬢ちゃん、いろいろ面倒見てくれてありがとうな」
と中佐にお礼を言われました。
「お礼は全て終わって受けますから。それまでは身辺の注意をお願いします。何かあれば駆けつけますが、何もないのが一番ですからね」
「ああ、その通りだ。じゃあ、頼んだぞ」
「ええ。それではみなさん、ごきげんよう」
と言って扉を閉じ、すぐに影の転移魔法でエド君達が乗る汽車へと移動しました。