超次次元ゲイム ネプテューヌRe;Birth2 DARK SOULS INSERTION   作:ルーラー

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第三話 空白の時間

 ネプビタンと少しばかりの休息のおかげで、そこそこ体力が回復してきた僕たちは、バーチャフォレストを出てプラネテューヌの首都へと向かっていた。

 

「女神化して戦ったのに、敵さんに手も足も出なかったこと。きっと、それがギアちゃんのトラウマになってしまっているんだと思うのですよ」

 

 道すがら、そう僕にネプギアの状態を話して聞かせてくれたのは、コンパだ。

 

「トラウマ、か……」

 

 日本語に直すなら、精神的外傷。

 あるいは、心的外傷。

 要するに、『心の傷』だ。

 

 それにはもちろん、肉体にできた傷と違って、自然治癒力なんて働かない。

 時間が癒してくれることもあるし、一生治らないことだってある。

 もちろん、なにかのきっかけで、いきなり治ってしまうことだってある。

 

 『心』には定まった形というものがないから、それを治療するのはとにかく大変なのだ。

 そして、こういうときに絶対やっちゃいけないのは、僕みたいな他人が、気軽にわかったふうな口を()くこと。

 そのときの恐怖や絶望、無力感は、味わった本人にしか理解できないものだから。

 

 だから僕は、ネプギアから事情を聞きだすようなことはせず、アイエフとコンパが語るに任せることにした。

 彼女と長い付き合いがあるらしい二人なら、ネプギアをあまり刺激しない説明の仕方もできるはずだと、思ったから。

 そんな僕の考えに応えるように、今度はアイエフが口を開いた。

 

「でも、だからといってネプギアに(ふさ)ぎ込んでいてもらうわけにはいかなかったし、ネプギアがそうなってるのを見るのも、私たちは嫌だった。ネプギア自身も、塞ぎ込んでいたいなんて思ってないでしょうし」

 

 アイエフに目を向けられ、弱々しくもうなずくネプギア。

 それに僕は、本当のところはどうだろうなあ、少しくらいは塞ぎ込んでいたい気持ちもあったんじゃないかなあ、なんて思いもしたけれど。

 

「そっか……」

 

 たとえ強がりであっても、ネプギアはアイエフの言葉を肯定したのだからと、ただそれだけをつぶやくに留めた。

 

「ネプギアは、女神化しなくてもそれなりには強いしね。だから、バーチャフォレストで軽くクエストでもこなしましょうかってなったのよ」

 

「なるほど。リハビリみたいなもんか」

 

「そうね。幸い、ギルドには『ザコの中のザコ、スライヌの討伐』なんていうのもあったし」

 

 ……うん? 『スライヌの討伐』?

 

「……まあ、その帰り道で危険種と出くわすことになるとは思わなかったけ――」

 

「お前たちだったのかあぁぁぁぁっ! てめえ! アイエフ!!」

 

「えっ!? なっ、なにがよっ!?」

 

「そのクエスト、僕も受けたかったんだよ! なのに『受注済み』になってて、僕は仕方なく『エンシェントドラゴンの討伐』のほうを……!」

 

「そんなの知らないわよ! クエストを先に受けたのは私たちのほうなんだから! アンタのは、ただの逆恨み!」

 

「わかってるよ! 逆恨みだってことぐらいわかってるよ! でも……ああ、もう……くそうっ!」

 

 逆恨みだってわかっているからこそ、僕はそんな感情を抱いた自分に苛立ち、髪を掻きむしってしまった。

 しかし、あれだな。アイエフと話してると、どうしても口論になっちゃうな。

 いやまあ、僕のほうが『口論になるような言葉』を選んで口にしているというのも、あるっちゃあ、あるんだけどさ……。

 

 ◆  ◆  ◆

 

 ともあれ、プラネテューヌのギルドで報酬を受け取り、僕たちは『落ちついて話ができるところに』と、近くにあった喫茶店に入った。

 こういうところ、この世界は日本となんら変わりない。

 いや、全体的に建物とかが近未来的ではあるんだけれど。

 

 それはそれとして、四名用の四角いテーブルの席につき、僕がミルクティー、アイエフがホットコーヒー、コンパがアップルジュースとショートケーキ、そして最後にネプギアがオレンジジュースとパフェを頼んだ。

 もう夕方だというのに、コンパとネプギアはデザートを食べるのか、と僕は驚愕。甘いものは別腹とはよくいったものだと思う。

 

 ちなみに、座った席は、アイエフが僕の真正面、コンパが僕から見てアイエフの左隣、そしてネプギアが僕の左隣だ。

 アイエフがコンパを……その、ちょっと異常なくらい『好き』なのは、前回の旅を通じて知っていたので、この座り方には特に疑問なんてない。

 実際、前回はアイエフに釘を刺されたりもしたのだ。『コンパに手を出したら承知しない』とかなんとか。僕、完全に『悪い虫』扱い。

 

「それで、なんかさっきは流されちゃったけど、ズッキーはなんでまたゲイムギョウ界に来たわけ? それも、あんなタイミングよく」

 

 頼んだものが全部揃ったところで、アイエフがコーヒーのカップを持ちあげながら口を開いた。

 ああ、そういえば説明してなかったっけか。別に、(けむ)に巻こうというつもりはなかったんだけど。

 

「なんか、ネプテューヌが危ない目に()ってるんじゃないかって、思ってさ。助けに来た」

 

「え? そんな気がしたからってだけの理由で来たっていうの? なにそれ、鋭いを通り越して、なんか気持ち悪い……」

 

「おおいっ! 違うよ! 勘だけで来れるわけないだろ!? ほら、『盟約(めいやく)』だよ、『盟約』!」

 

 と、そこまでテンション高く叫んだところで、気がついた。

 そういえば僕、アイエフとコンパに……というか、ネプテューヌ以外の誰かに『盟約』のことを話したこと、あったっけ?

 ……ないな。そもそも、ネプテューヌと『盟約』を交わしたのって、僕が地球に戻る直前だったもんな。ああ、そりゃ知らなくて当然か。

 

 と、僕はそう納得したのだけれど、隣からネプギアが、

 

「ああ、そういえばお姉ちゃんが言ってましたね。『これは友情の証』って、右手を見せながら」

 

 それにコンパも同調する。

 

「あの掌の魔法陣ですね。最初は、ねぷねぷが悪い子になっちゃったのかと思って慌てたです」

 

 さては、ヤクザの刺青(いれずみ)かなにかと勘違いしたな。

 

「なるほどね。でも、本当にネプ子の危機がわかるものなんだ……」

 

 アイエフはアイエフで、まったく信用してなかったな、こりゃ。

 でも、彼女の言葉から推測するに、ネプテューヌが危機に陥っているのは事実らしい。

 

「まあ、そんなわけで、僕はまたこの世界にやってきたわけなんだけど。肝心のネプテューヌは、いまどこでどうしてるんだ?」

 

 三人をぐるりと見回しながらの問いかけに、しかし、三人は申し訳なさそうに僕から目を逸らす。

 それから、コンパがフォークでケーキを切り分けながら、ぽつりとこぼした。

 

「……ねぷねぷは、いま、ギョウカイ墓場に(とら)われてしまっているです」

 

 ギョウカイ墓場。

 そこは、かつて僕たちがデルフィナスと死闘を繰り広げた、因縁(いんねん)の地。

 でも……

 

「囚われて、いる……?」

 

 つぶやくように疑問を口にした僕に、アイエフがうなずき、続けてくれる。

 

「もう、いまから三年も前のことになるわ。ネプ子たち四人の女神が、ネプギアと一緒にギョウカイ墓場に向かってね、そのまま、つい最近まで音沙汰(おとさた)無しの状態になってしまっていたの。アンタが元居た世界に戻ってから半年くらいは平和だったんだけどね……」

 

 三年前?

 四人の女神とネプギアが、一緒にギョウカイ墓場に向かった?

 僕が地球に戻ってから、半年くらいは平和だった?

 

「ツッコミどころの多い話だな。まず、僕たちがデルフィナスを倒してから、まだ二ヶ月しか経ってないじゃん。なのに三年前って……」

 

「は? 二ヶ月? なに言ってるのよ。アンタが元の世界に帰ったあの日から、もう四年も経ってるじゃない」

 

「四年? ふむ……」

 

 (あご)をつまみ、ちょっと考えてみる。

 僕の住んでいる地球と、ゲイムギョウ界。その『時間の流れ』は、果たして本当に同じものだと言い切れるのだろうか。

 もちろん、そう断定できる根拠なんてない。

 

 仮にアイエフの言葉を信じるとしたら、地球での半月(はんつき)は、ゲイムギョウ界における一年と同じということになる。

 つまり、地球で一ヶ月暮らしてからゲイムギョウ界を訪れた場合、こっちの世界では、すでに二年もの時間が経過してしまっているということだ。

 逆に言えば、これから僕がゲイムギョウ界に二年間滞在(たいざい)したとしても、その時点でまた地球に戻れば『和樹が異世界に行ってから、まだ一ヶ月しか経っていない』ということになる、はず。

 

「……なるほどね。でも、なんでネプテューヌは僕に連絡寄越(よこ)さないかなあ。この『盟約の魔法陣』には携帯電話みたいな機能もあるし、なにより、『なにかあったら力になる』って、ちゃんと言っておいたのに……」

 

 まあ、ひとりだけでギョウカイ墓場に行ったわけじゃないから、まだいいのかもしれないけどさ。

 でも、やっぱり心は痛む。僕は、まだ頼りにならない『雑魚』のままなのかなって。

 と、嘆息する僕に、隣からおずおずと声がかけられた。

 

「あの、お姉ちゃんはこう言ってました。やっぱりこれは、自分たちの世界の問題だからって。ちゃんと、女神が解決しなきゃって」

 

 その理屈はわかる。

 事実、向かったのは、友好条約を結んだ四人の女神と、ネプテューヌの妹であるネプギアだけだから。

 でも、納得はできなかった。

 感情が、『もの分かりのいい瀬川和樹』を演じさせてくれなかった。もちろん、『演じる』気だって、さらさらなかったけれど。

 

「だけどさ……! こう言っちゃなんだけど、たぶん、僕のほうがネプテューヌの役に立てたって! だって、友好条約なんてあの場限りの……そう、ほとんど名ばかりの、不可侵条約とそう変わらないものだったじゃないか! デルフィナスっていう共通の敵が現れたから、仕方なく交わしたってだけの、ものすごい薄っぺらな……!」

 

 事実、当時の僕たちの関係性は、お世辞にも『仲間』のそれじゃあなかった。そんな関係性なんて、結局、最後まで築けなかった。

 ネプテューヌが中心にいたからこそ、彼女の明るさに毒気(どくけ)を抜かれてばかりいたからこそ、僕たちは、辛うじてまとまっていられたんだ。

 だから、『共通の外敵』がいなくなれば、条約の破棄(はき)が行われるのは時間の問題だったはずで……。

 

 でもネプテューヌたちは、ネプギアを含めた五人でギョウカイ墓場に向かったという。

 それはつまり、デルフィナスの一件から一年経っても、条約は破棄されなかったということだ。友好的な関係を保っていられたということだ。

 そして、それは同時に、ネプテューヌが、異世界に戻ってしまった『盟友(めいゆう)』よりも、同じ世界に住んでいる女神たちを頼った、ということでもある。

 

 ……わかってる。

 僕は、とても女々(めめ)しいことを考えてる。

 ネプテューヌに頼られた三人の女神たちに、嫉妬(しっと)してる。……もしかしたら、彼女の妹である、ネプギアに対しても。

 でも、わかっていても、こういうのは、僕自身にはどうしようもなくて……。

 

 けど、このままじゃ話が進まない。

 僕はなんとか冷静になろうと、何度か深呼吸を繰り返した。

 そして、少しは落ちついてきたところで、改めて口を開く。

 

「……ごめん、ちょっとカッとなった。――とりあえず、デルフィナスの一件から四年くらい経ってるっていうのは、理解できた。もちろん、僕の感覚では、デルフィナスと戦ったのは二ヶ月くらい前のことでしかないわけだけど」

 

 でも、それなら最初に見たアイエフの態度にも納得がいく。

 彼女は僕を見て『相変わらずね』と言ってたけど、あれは本当に言葉どおりの意味だったんだ。

 四年も経ってるのに、見た目はもちろん、中身もまるで成長していないって、そういう意味の。

 けど、それを言ったら、アイエフとコンパだって、僕に負けず劣らず成長してないような気が……。

 

「それで、ネプテューヌたちは一体なんでもう一度ギョウカイ墓場になんて行ったんだ? そして、そこでなにがあった……いや、そこになにが『居た』んだ?』

 

 ネプテューヌたちが囚われたってことは、つまり、捕らえたやつがいるってことだ。

 そして、あのネプテューヌたちが囚われた以上、そいつは少なくともデルフィナスと同格の強さを持っているはず。

 もちろん、それが誰なのかは、まったく見当がつかないわけなのだけれど。

 三人全員に向けた僕の問いに、アイエフがコーヒーをすすりながら答える。

 

「順を追って話すわ。ことの起こりは、いまから三年と半年ほど前。マジェコンヌっていう犯罪組織が、ゲイムギョウ界に突如(とつじょ)、現れたの。犯罪組織マジェコンヌは、マジェコンっていう『ゲームデータのコピーツール』を世界中に配布し、人々の信仰心――シェアを集め始めた」

 

「はい? ゲームデータの、コピーツール?」

 

「そう、コピーツール。そして犯罪組織マジェコンヌの最終目的は、おそらく犯罪神の復活。犯罪組織がシェアを集めれば集めるほど、犯罪神は復活しやすくなる、らしいわ」

 

「う~んと……つまり、マジェコン? は人々からシェアを集めるための『(えさ)』でしかない、ということ? そして犯罪組織は、そうやって集めたシェアで犯罪神を復活させようとしている、と?」

 

「そういうこと。相変わらず、頭の回転だけは速いわね」

 

「だけとはなんだよ……!」

 

 もうちょっと素直に褒めてくれたっていいじゃんかよ!

 

「こほん。……当然、ネプ子を始めとした各国の女神たちがそれを放っておくはずがない。ネプ子たち五人は、イストワールさまが立てた作戦に従って、犯罪組織の拠点になっていると思われるギョウカイ墓場へと向かった。これが、いまから三年前のことよ」

 

「そして犯罪組織の人間と戦って、負けた……?」

 

 つぶやきにも似た僕のその問いに、今度はネプギアがパフェをスプーンで崩しながら答えてくれた。

 

「ギョウカイ墓場でわたしたちが出会ったのは、ひとりの女の人でした。もちろん、人間ではないと思うんですけど……。そして、お姉ちゃんたち四人は、その女の人に負けたんです。それも、手も足も出せずに……」

 

「手も足も、か……」

 

 はっきり言って、ネプテューヌたちは強い。

 なにしろ、女神ひとりひとりが、僕と互角か、それ以上の力を持っているのだから。

 当然、作戦なんて立てずにただ突撃しただけでも、大抵の敵はあっさりと片づけられる。四人がかりともなれば、なおさらだ。

 

 なのにネプギアは、『手も足も出せなかった』という。

 そして、それ以上に引っかかったのは、『お姉ちゃんたち四人は』という言葉だ。

 だって、その言い方だと、まるで……いや、いまそこをつつくのは、やめておこう。

 

「それで、ネプギアはどうやってギョウカイ墓場から脱出してきたんだ? 聞いた感じだと、ネプギアが自力でっていうのは、どうも無理ある気がするんだけど」

 

「あ、はい。もちろんそうです。アイエフさんとコンパさんが助けに来てくれなかったら、脱出なんて、絶対に……」

 

「なるほど。アイエフとコンパが、ね。――なあ、アイエフ。それで、ネプテューヌは?」

 

 ミルクティーのカップを傾けながら、僕は対面のアイエフへと目を向ける。

 

「ネプテューヌが生きていることだけは、間違いない。だって、僕との『盟約』がまだ破棄されてないんだから。でも、それと彼女の無事が即、イコールで繋がるってわけでもない。……そうだろ?」

 

「そうね。でも、とりあえずは無事だったわ。四人とも、大きな怪我はしてなかった」

 

「そっか。なら……うん、ひとまずはよかった」

 

 他の三人の安否(あんぴ)は心底どうでもいいけど、ネプテューヌが無事だったというのには、本当に安心した。

 もちろん、思ったことすべてを口に出したりはしないけど。

 

「……でも、助けてはこれなかった?」

 

「ええ……。もう少しってところで、敵に(はば)まれてね。ネプギアだけしか助け出せなかったの」

 

「そっか……。ちなみに、その敵っていうのは、ネプギアの言ってた『女の人』?」

 

「え? いえ、違うわ。なんていうんだろう……ちょっと、メカメカしいっていうか……。とにかく、女じゃなかったのだけは確か」

 

 つまり、犯罪組織にはそれなりの実力者が、最低でも二人はいるってことか。

 でもって敵は、たったひとりで女神四人を圧倒できるときた。

 ふむ、真正面から助けに行くのは難しそうだな、こりゃ。

 交渉とか、誤情報を流して内部分裂させるとか、そういう手段をとる必要が……。

 

 そんなふうに色々と思考を巡らせていると、ネプギアのスプーンを動かす手が不意に止まった。

 もちろん、食べ終わったからというわけじゃない。現にパフェはまだまだ残っている。

 

 ああ、いまの話題、彼女のトラウマを少なからず刺激しちゃったかなあ。

 けど、これは聞いておく必要のある話だったし。

 いやでも、なにもネプギアの前で話すようなことでもなかったか……?

 

 そう考えながら、横目で彼女の表情を盗み見てみると……ああ、やっぱり沈んでいる。

 おそらくは、自分だけが助かってしまったという事実に、罪悪感を覚えているのだろう。

 姉の身を案じる気持ちだって、強いだろうし。

 

 ……どうしよう。

 ネプテューヌを助け出す具体的な方策(ほうさく)はあるのかとか、訊きたいことはまだまだあるんだけど……果たして、このまま話を続けてしまっていいのだろうか。

 空気が読めないと(ののし)られようと、話の腰を折ってしまおうと、ここらで一度、軽い話題を振ったほうがいいような気もしてきた。

 

 だって、見過ごせないよ、こんな沈んだ表情。

 おおかた、ネプギアの顔の作りがネプテューヌと似ているせいなんだろうけど、こんな表情見ていると、まるでネプテューヌ本人に落ち込まれてるような気がしてきて、こう、心がざわついてくるっていうかさあ。

 

 まあ、そんなわけで。

 僕は、真面目な話を一度中断し。

 意識して、軽い口調でアイエフへと問いを投げた。

 

「ところでさ、アイエフ。あれから四年経ったんだよな? なのに、どうしてお前は外見的にまったく成長してないんだ? 冗談抜きで、けっこう疑問なんだけど」

 

「アンタね……。なんか、すごく真面目な顔して長々と考え込んでるなって思ってたのに、実際はそんなどうでもいいこと考えてたわけ? アンタの頭の中がどうなってるのか、一度、頭を叩き割って覗き込んでみたいわね……!」

 

「あー、同じ覗き込むなら、頭を叩き割ることなくやってほしいかなあ、なんて……」

 

 だって、その言い方だと、『頭を叩き割る』ことが手段じゃなくて目的のように聞こえてしまうから。

 それと、いくらなんでも不機嫌になりすぎだろ、アイエフ。

 

 ……でもまあ、それでもよしとするか。

 だって、ほんの少しだけだけど、ネプギアの暗かった表情が和らいでくれたんだから。

 うん、アイエフの(いか)りを買ってでも、ふざけてみた価値はあったよ、絶対に。


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