貴方はどちらが勝つと思う?
午前の楯無からの宣戦布告から数時間、第一アリーナでは公開模擬戦として多くの観客が集まっている
それもその筈、楯無が放送でカズマと模擬戦をすると大胆に放送したのだから…
故に観客席のテンションは最高潮である
第一アリーナ ピット内
カズマ「……」
カズマはフリーダムウイングを纏ってカタパルトに足を固定し、目を閉じて集中していた
『両者!所定の位置に』
アナウンスが聴こえ、目を見開いて飛び立つ蒼い空を見据える
カズマ「カズマ・アーディガン、フリーダムウイング…出る!!」
カタパルトからバレルロールで飛び出し、空中一回転をした後に背部の翼が展開、IS学園のアリーナに蒼い自由の翼が羽ばたいた
そして所定の位置に着くと楯無のISが佇んでいた
胴回りの装甲が少なく、非常に軽装なISであるが、しかし両側に浮いているアンロックユニットは宝石の様な輝きを放っている
楯無「それがΔ-ラインか…男女共用を可能にした次世代のISって…私の知ってるのとは違うわね」
カズマ「これはセカンドシフトした俺のΔ-ライン…自由と平和を望む俺の意思を込めた翼を宿す…フリーダムウイングだ」
楯無「自由の翼…ね、ならこのミステリアス・レイディに勝てるかしら?」
カズマは楯無を睨んだ
カズマ「勝てるとかそう問題じゃない…勝つ!」
そして
『試合開始!!』
開始と同時にミステリアス・レイディのランス、蒼流旋からガトリングガンが現れ、乱れ撃った
カズマは難なく交わしてそして両腰のライフルショーティーを取り出し、ガトリングガンを避けながら撃つ
楯無「避けながら!?」
これには流石の楯無も避ける、が…カズマの射撃の隙を見つけてはガトリングガンを放った
カズマ「くっ…(こいつ…!?わずかな隙を…)」
カズマも回避して射撃しようとするが、その先を読まれているのか避けようとしている先に銃弾が飛び、思う様に自分の戦いが出来ない
観客席
観客席でデルタ・フォースのメンバー全員が見守っていた
一夏「馬鹿な…カズマの必勝パターンがああも簡単に…」
ウィノ「うそ…これじゃカズマが…」
押されていくカズマを見て心配になるメンバー達であった
エミリア「技量だけではありません…その戦術においてもカズマさんを上回っています!」
リディア「嘘でしょ!?あのカズマが一撃を受けた!?」
龍真「流石は刀奈さん…」
拓巳「動きに無駄がない…おまけにカズマの僅かな隙を突いてから一方的に攻撃している…」
淕「やはり…カズマさんでは……」
不安な気持ちを抱えながら見守るメンバーだった
一方アリーナでは激しい戦いが繰り広げられていた
カズマ「くっ…」
カズマは苦戦を強いられていた…現在ライフルショーティーで一方的に攻撃している様に見えるが、実はカズマの内心は珍しく焦っていた
カズマ(くっ…何故……何故俺が焦っている!?)
普段焦らないカズマが焦っている事に気付いたカズマは一度冷静になって楯無のミステリアス・レイディを見た
カズマ「普段通りの戦法が通じないのなら…これで!!」
カズマはビームセイバーを抜刀して右手にビームセイバー左手にライフルショーティーを持って楯無に突っ込んだ
楯無「は…早い!?」
フリーダムウイングの翼が展開し、ハイマットモード(高機動形態)で突っ込むそのスピードは楯無の予想を遥かに上回った
カズマ「はぁあああああっ!!」
まずは楯無に一太刀を浴びせ、その後よろけた所をライフルショーティーで追撃したが、楯無の反応が早く、よろけて直ぐに回避した
楯無「ふふっ…わざわざ近付いて…ありがと…」
楯無は蒼流旋で近接戦闘を仕掛けた
それを見てカズマはビームセイバーをもう一本抜刀して連結、アンビテクスハルバートと呼ばれる両刃剣にした
そして激しい接近戦となった
蒼流旋の鋭い突きをカズマのビームセイバーで防ぎ、カズマの不規則な斬撃を巧みに槍で弾き、鋭い突きを連続で放つなどしていた
そしてカズマのビームセイバーと楯無の蒼流旋がつばぜり合いとなった
カズマ「この時を待っていた!!」
カズマは両腰に折り畳んで搭載されているレールガンを展開、零距離で2門同時にぶっ放した
当然零距離で放たれるので被弾は避けられない…
カズマ「…馬鹿な…」
楯無「ふぅ…今のは驚いちゃった♪」
楯無のシールドエネルギーは…減っていなかった…
むしろ何かを纏っている様だった
カズマ「なんだあれは?…水?」
楯無「そう、このミステリアス・レイディの殆どのパーツは水とナノマシンで出来ているの…この様に水で防御したり…」
楯無は再び蒼流旋を装備した
カズマ「あの槍も水だったのか!?」
楯無「御名答!!」
再び楯無はカズマに突っ込んだ
カズマ(最早出し惜しみは出来ない…ここは!!)
カズマのフリーダムウイングの装甲が展開して、その内部フレームが輝いた
カズマ「Δドライバ…起動!!」
遂にカズマはΔドライバを発動した
Δドライバによって機動力は増大し、目視不可能なスピードで楯無に突っ込んだ
楯無「!?…消えた…きゃあっ!!」
カズマは楯無の後方を取ってそのまま横凪ぎ一閃を喰らわせた
楯無「あれがΔ-ラインの単一能力…Δドライバね…確かに速いわ…でも…ハイパーセンサーに捉えられない訳では無いわ!!」
楯無は蒼流旋のガトリングガンをカズマに放った
しかしその弾丸はすべてカズマには届かなかった
Δドライバには相手の射撃攻撃を無効化出来る特殊フィールドを張っているからだ
楯無「射撃が効かない!?」
カズマ「貰ったぁあああっ!!」
ビームセイバーによる強烈な一撃を与えたカズマだった
観客席
一夏「あいつ…遂にΔドライバを…」
エミリア「勝負に出た…と言うことですね」
Δドライバは時間制限のハイパートランス(機体強化)である…無論Δドライバが切れたら性能が劣化してしまう…
つまりカズマは短期決戦に切り替えたのだ
龍真「確かに…Δドライバを発動すれば行けるかもしれない」
拓巳「遂にあの刀奈さんが負ける姿が見れるのか!?」
淕「いや…刀奈さんはそう簡単に負ける人ではないですよ…」
カズマのΔドライバ発動で盛り上がっている中、ウィノは言い様の無い不安が伸し掛かっていた
ウィノ(何だろう…この不安…カズマ頑張れ!)
再び祈るウィノだった
アリーナ
戦局は大きく傾いた
Δドライバの発動で大幅な機体強化を受けたカズマのフリーダムウイングは楯無のミステリアス・レイディの水の防護シールドの展開が追い付かずにどんどんダメージを受けていた
楯無「くっ…すごい機動性…ISでここまでの速度を出せるなんて…」
カズマ「逃がさない!」
更に追撃を仕掛けるカズマ、背部のウイングに搭載されているパラエーナプラズマ収束ビーム砲を構えてぶっ放した
楯無「それを待ってたのよ!」
楯無はカズマがパラエーナをぶっ放したと同時にカズマに向けてイグニッションブーストを仕掛け、極太のビームを避けた
カズマ「な!?馬鹿な!!」
楯無「そこよ!」
イグニッションブーストの速度を生かした鋭い突きを放った
カズマ「くっ…」
カズマはヴァリアブルアームズを呼び出し、同じくイグニッションブーストで突きを放った
そして楯無の矛先と、カズマの剣の切っ先が重なって激しい押し合いとなった
楯無「くっ…ううっ…」
カズマ「ぐっ…うおおおっ!!」
これまで冷静だった楯無も、この押し合いには力を入れているのかその顔が少し歪んでいる
その頃管制室ではブライス、リーサ、シュウ、友谷の四人が二人の戦いを見ていた
リーサ「最初はカズマが押されていたけど…Δドライバを発動してから優勢になったのは良いけど…」
顎に手を当てて言うリーサ
シュウ「だが…Δドライバはいつか切れる…それまでに決着を着けなければならないが……あの楯無と言う小娘…何を待っている?」
ブライス「そうだな…あのISには他にも特殊兵装の一つや二つはあるはずだ…これまではランスによる刺突と銃撃、水とナノマシンを使った防護シールドを使うだけとはな…」
シュウとブライスがこの戦況を意見し合っていった、最初に二人が驚いたのは、カズマの必勝パターンであるライフルショーティーによる連続での銃撃、回避しながらの銃撃を見破った事である
彼のこのパターンは一度入ってしまうと逃れることが出来ない、無数のビーム乱射に正確な射撃、様々な体勢での射撃が相手を惑わせじわじわと削っていくのが彼の戦闘スタイルだ
故に遠距離攻撃型であるセシリアのブルーティアーズ、エミリアのインパルスブラストとは相性が良い
だが彼のこのパターンは大きな弱点がある
それは先読みされてしまうと弱いのだ
回避の向きを先読みされると、回避先に弾丸が迫っている状態ではいくらカズマでさえ正確な射撃ができない…故にずっと回避行動を取り続けなければならないのだ
友谷はIS制作者としてこの戦いを見ていた
友谷(カズマのフリーダムウイングの機動力に着いていけるとは…それよりも水を媒体にしてナノマシンで構築した武器を使うなんて…ロシアはコストパフォーマンスを完全に度外視しているな……だが……水を媒体にしているなら空気中の水分………待てよ!?水蒸気!?)
そしてカズマが競り合いに勝ち、楯無を大きく吹き飛ばした…だがその時の楯無の顔に笑みが浮かんでいたのを見逃さなかった
しかしカズマは構わずに突っ込む
友谷「駄目だカズマ!!行くな!!カズマぁああああああああっ!!」
次の瞬間、カズマのISが突然動かなくなった…
アリーナ
突然動かなくなったフリーダムウイングに驚いたカズマ、シールドエネルギーを見てもまだ420/860もあるのに動かない機体に焦りを感じているカズマ
カズマ「な…なんだ…一体…どうしたんだフリーダム!!ぐぁあああっ!?」
突然爆発に巻き込まれカズマのフリーダムウイングのシールドエネルギーが大幅に減る
観客席
一夏「なんだ!?カズマのISが…」
エミリア「止まった!?でも…何で!?」
リディア「ちょっと!フリーダムはまだエネルギー尽きてないでしょ?」
突然カズマのISが動かなくなった事に驚くメンバー
0「大変っぽい!フリーダムのシールドエネルギーがもう120/860だよ!!」
龍真「馬鹿な!?まだ400はあった筈だ!!」
拓巳「まさかあの爆発か?」
拓巳はカズマが動かなくなった時に不思議な爆発を疑った
8「…駄目だ!カズマとの機体にリンクできない!」
淕「え!?今のカズマさんは…」
8「俺のサポートが聴こえてない!おまけに動かせない!」
ウィノ「そんな…お願い…フリーダム…カズマを…護って…」
そう願うウィノの目には涙が浮かんでいた
アリーナ
カズマ「がっ…はぁ…何だ…今のは…8!!」
8に何が起きたのか聞くが返事がない
カズマ「8?どうしたんだ8!?」
楯無「無駄よ、ミステリアス・レイディの広範囲結界陣、沈む床(セックヴァベック)よ…どう?空間に沈む感覚は?それにさっきの爆発は清き情熱(クリア・パッション)よ」
カズマ「くっ…フリーダム!!」
動かそうとするが動かない…それよりもどんどん沈む感覚が強くなる
楯無「諦めなさい…それにしても君は凄いわ…流石IS学園最強って噂もわかるわ…でもごめんなさいね…私は更識の当主…そしてここの生徒会長…だから……負けられないのよ!!」
楯無は叫びと共に右手を振り上げた
清き情熱(クリア・パッション)で止めを刺す気だ
カズマ「動け……動いてくれ!!」
必死に機体に語りかけるカズマ
カズマ「動いてくれぇえええっ!!フリーダムウイングゥゥゥッ!!」
そう叫ぶ彼の目はハイライトが消え、生気がなかった
そして彼の機体のディスプレイに
シンクロ率200%…Δドライバ…オーバードライブ
ΔTRANS-AM Standby…
この戦いの結末は!
次回へ続く!!