やはり俺がIS学園に入学するのはまちがっている。 作:AIthe
それと、いつのまに評価が赤色になっていました。評価してくれた皆様、本当にありがとうございます。
これからもこの作品をよろしくお願いします。
比企谷くんは優しいです。不機嫌そうな顔をしていて、ご飯を誘っても毎日断られちゃってるけど‥‥‥なんて言うのかな。多分、理屈じゃないんです。でも、比企谷くんは優しいんです。誰に言ってもわかってもらえないと思うけど、そうなんです。
「ごめんね‥‥‥比企谷くん。」
比企谷くんと楽しくご飯を食べていたのに、私はそれをぶっちぎってしまいました。ご飯を食べて気を紛らわせようと思いもしましたが、ダメでした。
私は自分が情けないです。比企谷くんのクラスでの評価は低いです。みんな誤解しているだけなのに、こんなの酷いです。
でも、私はそれに反論することができません。誰かに嫌われる事が怖くて、自分の意見を言わないで、誰かの意見にうんうんと相槌を打つだけ。もし私が家族を馬鹿にされたら、適当に笑ってその場を誤魔化すだけなんだなと、比企谷くんを見てると、自分の弱さを指摘されている気がして───
「‥‥‥寝よ。」
───だから、私は私が嫌いです。こんな弱い自分、いっその事どこかに消えちゃえばいいんだ。私なんて、誰かの代わりですらない、意味のない存在なんだから。
結局その日、私は比企谷くんに謝る事が出来ませんでした。
───2───
朝から目覚めが悪い。早起きは三文の得というが、昔の三文は大体六十円ほどだったそうだ。寝てた方が得な気しかしない。
結局昨日は、あいつにセシリア・オルコットの事を聞きそびれてしまった。できたらクラスの連中からの情報が欲しかったんだが‥‥‥まあ仕方がない。本当はこいつから情報を仕入れて、作戦を立てるつもりだったのに‥‥‥‥
昨日の事を考えると、何故か由比ヶ浜の事も思い出してしまう。胸の中のモヤモヤとした何かを流すように、冷水で顔を洗う。顔を上げると、酷く濁った眼が鏡に映り込む。
まだまだパリッとしている真っ白な制服に着替え、俺は外に出た。
「‥‥‥行ってきます。」
当然のように、返事はなかった。
そして、彼女が起きていた事にも、当然気がつく事はなかった。
───2───
結局、昨日は寝れませんでした。一睡もできなかったっていうやつです。なんにも考えず、ボーッとしていると隣のベットからガサゴソと音が鳴ります。多分、比企谷くんが起きたんだと思います。
そのまま比企谷くんは準備を済ませ、「行ってきます」と呟いて部屋から出て行ってしまいました。どうせ眠れないのだからと私も身体を起こして、身支度を始めます。鏡に映る自分の目の下に、おっきなクマができていました。どうしよう‥‥‥‥
困った私は、まだまだ時間があるからと座ってココアを飲む事にしました。その暖かさは身にしみ、その甘さはまるでチョコそのものみたいでした。
人生も、ココアくらい甘かったら楽かもしれません。でも、本当にそんな人生は“楽しい”と言えるのでしょうか?もし本当に人生が甘口なら、私が比企谷くんのことで悩むこともなかったでしょう。そもそも、比企谷くんに出会えていたかもわかりません。
今の私には、比企谷くんに合わせる顔がありません。きっと、私のことなんて突然意味わかんないこと言って帰ったルームメイト程度にしか思ってないと思います。だからこそ、私は比企谷くんに謝る為に変わらなきゃいけません。きちんと胸を張って、比企谷くんの前に立てるように。
‥‥‥でも、私はどう変わればいいのでしょうか?ココアとは違う苦い人生の中に生きる私は、その術を知りません。
私が、私である為に。私の存在意義を自分で証明する為に。誰かに消えないで欲しいって思われる為に。私には何ができるでしょうか?
迷ってる時間など私にはないのです。
ココアを飲み干し、私は決意します。
試合が終わった後、比企谷くんが帰ってきたら謝ることをここに誓います。
私には何もない。だから、私に“だけ”できる、存在証明など存在するはずがないのです。
だから、私は私の誠心誠意を見せるだけです。何もないなりに、できることがあるはずです。
人生は苦いものです。私にとってブラックコーヒーみたいなものです。だから、ココアくらいは甘くたっていいんです。
私ももこのココアのように、誰かの人生の一瞬でも甘くすることができたら‥‥‥すごく嬉しいです。
「よーし!ファイトだ清香!がんばれ清香!」
私は自分に喝を入れて、えいえいおー!と叫びました。
───3───
寮を出て職員室に直行すると、まだ早かったのかほとんど人がいなかった。早起き過ぎた‥‥三文以上損したわ‥‥‥‥
そんな事があって数十分待つと、織斑先生がやってきた。凄い眠そう。小町と同じで朝が弱い系の人間なんだな。でもこんなのが姉だったら精神すり減らすわ‥‥‥
「おはようございます、織斑先生。」
「おはよう。どうした比企谷?職員室の前で待ち伏せしていた生徒は初めてだぞ。」
「いや、ちょっと聞きたい事がありまして‥‥‥セシリア・オルコットの事なんですけど‥‥‥」
「ふむ。それがどうかしたか?」
「‥‥どんな戦い方をするんですか?あと、どの機体を使う傾向にありますかね?」
「ほう‥‥?」
ニヤニヤとする先生。なんかこう、織斑先生とかの笑い方ってラスボスのそれなんだよな。普通に笑っているのか暗黒微笑なのか判断がつかなくて困る。コマンドで逃げるとか選択できなさそう。
「お前は知らなかったな。あいつは代表候補生だ。最近はゴタゴタしていてISの実習訓練をやってないからな。知らなくてもおかしくはない。」
「‥‥マジっすか?」
「ああ。それと専用機も持っているぞ。」
‥‥‥オワタ。あー人生詰みましたわ。さらば愛しの学園生活。全然愛しくないけど。
誰かこの事実を教えてくれたっていいだろ。授業以外で俺が教室にいなかったからなの?俺が悪いの?俺は悪くねぇっ(テイルズ並感)!
「ははは、絶望したか?」
なんだこのセリフ魔王かよ。やっぱりラスボスなの?まだ変身を残してるの?魔王なのに体力全開魔法使ったり、右手本体左手と分かれていて蘇生魔法で無限に復活してくるあの絶望感。現在、まさにその状態である。小町‥‥お兄ちゃんが死んでもパソコンの「資料」って名前のフォルダ、開いちゃダメだよ‥‥‥‥前も言ったけどベットの下もダメだからね‥‥‥‥
「‥‥‥トッテモサンコウニナリマシタ。アリガトウゴザイマス。」
「よろしい。では明日、楽しみにしているぞ。」
オレ、ドウスレバイイノ?
───4───
というわけで、放課後。いやぁ、まあ色々ありましたよ?授業とか昼休みとか授業とか。IS学園の授業って最先端だよな。全ての机にコンピュータと空間投影型ディスプレイが内蔵されてるとかハイスペック過ぎて辛い。スター・ウォーズ思い出したもん。映画楽しみだなぁ(ステマ)。
現在俺は家‥‥寮の自室だったわ。家帰りてえ、小町に会いたくて会いたくて震える。アル中かな?
結局俺のケータイ、誰からの着信もこないし。一週間近く小町の声が聞けないとか死ねる。完全に携帯できる多機能型目覚ましと化したね。「ぶち割り不可避!文鎮と化したスマホ」っていうタイトルに改名してほしい。作者あくしろよ。
「お、あったあった。」
俺が自室で探していたのは、セシリア・オルコットの動画だ。決していかがわしい意味ではない。神に‥‥神なんていなかったわ。戸塚に誓ってもいいね。
俺が真に求めているのは、セシリア・オルコットの“公式戦動画”である。たしか、代表候補生は他国と交流試合やらなんやら色々な機会で試合をしている。となれば、当然専用機持ちの彼女の試合が存在してもおかしくはない。
専用機の詳しいスペックは国家の機密として厳重に保管されているのが当たり前だが、試合の動画となれば話は別だ。それも公式戦となれば、テレビ中継される事もある。となると、彼女の動画がインターネット上に上がっているのは必然と断言しても良いだろう。ちなみに、不正にアップロードされたアニメをインターネットで見るのはダメだぜ?だからみんな円盤を買おうね(ニッコリ)。
「なにこれ‥‥‥えげつねえ。」
思わず声的な何かが出てしまった。一体俺の身体から何が出てしまったんだ‥‥‥‥
動画に映ったのは、青を基調とした機体がラファール・リヴァイヴ相手に蹂躙している姿であった。背部に浮いている翼状に広げられたビットが、その場所を離れ独立起動を取り、ラファールを囲み始める。すると突然ビットが止まり、その全てから青い光が放たれる。ラファールは十字砲火を食らい、大きくシールドエネルギーを削られてゲームセット。わかっていた結果ではあった。あったのだが───
「ももももちつくんだ八幡、諦めたら試合終了ってばっちゃが言ってた‥‥‥」
こんなんずるいわ。十字砲火ってレベルじゃねえ。これがIS乗りの動きだと!?じゃあ俺はなんだ!?所詮ノーマル生まれはリンクスに勝てないんですよ‥‥‥あ、アナトリアの傭兵はドミナントなんでこっちの席にどうぞ。
「コレどうにかなんねえかな‥‥‥」
他の動画も漁ってみるが、大体が同じ内容だ。青いのがびゅんびゅーんって飛んで、ラファールとか色々落としていて楽しかったです(小学生の作文並感)。
マズイ。この金髪クロワッサンが強過ぎて辛い。さっきの織斑先生のセリフと同じ種類の絶望感を感じる。これより強い織斑先生とかもうやべえよ‥‥人間じゃない‥‥‥いや、あってるのか。俺の見立て通り織斑先生は魔王だったんだ‥‥‥
俺はヤケクソになり、動画を見るだけの機械と化した。これで最後にしようと、一番日付が古いのを見る。
確かに最近の動画より下手になっている。それでも俺なんかとは格が違うのだが。
「ふーん‥‥‥?」
どこかその動きに違和感を感じ、動画を巻き戻す。
「もしかして‥‥‥もしかしてしまうのか?」
慌てて日付が新しい動画を開き、機体の動きを凝視する。そして、俺はその違和感の正体を可能性から確信へと変える。
‥‥‥‥金髪クロワッサン。家族を馬鹿にした罪は高く付くぜ。
感想、評価等よろしくお願いします。