やはり俺がIS学園に入学するのはまちがっている。   作:AIthe

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今日、五月二十五日にこの作品が日間ランキング第十二位を更新させて頂きました。評価をしてくれた皆様、感想を書いてくれた皆様、本当にありがとうございます。
特に感想は作者のやる気の源なので、本当に助かっています。

この順位は作者の実力ではなく、作品のネームバリューである部分が大きいです。これからも、精進して参ります。

これからもこの作品をよろしくお願いします。


毎日はつつがなく進み、されどそれは平凡に非す。

シュレーディンガーの猫という思考実験を知っているだろうか?名前は聞いたことがあるが、説明してと言われるとわからないという人が多い実験である。

 

蓋のある箱に、猫を一匹入れる。箱の中には猫の他に、放射性物質であるラジウムを一定量と、ガイガーカウンター、青酸ガス発生装置を一台入れておく。このまま一週間放置すると、はたして猫の生死はどうなっているのだろうか?というものだ。

 

総武高校にて数学の学年最低点を記録している文系の俺にはよく分からないが、パラレルワールドの証明になるとか、生きてるだか死んでるとか確率が半々になって同時に存在するとやらなんとやら。

正直な話、よくわからない。そもそも死んでいるか生きているかという問題以前に、猫は絶食のできない生物である。つまり、シュレーディンガーは確実に猫を殺しにかかっているのである。

 

結論を言おう。

 

無闇な殺傷は良くないでござるよ。拙者はただの流浪人でござ(ry

 

「比企谷くん朝だぞー!起きろ〜!」

「‥‥‥‥‥」

 

ほーら、噂をすればこれだ。

働きたくないでござる!!絶対に働きたくないでござる!!

俺の惰眠を奪わんとする奴がやってきたよ。小町なのか?俺の妹なのか?確かに年下だけどこんな妹はいらん。小町一人で十分だ。

 

「起きないと織斑先生呼ぶよ〜?」

 

なんだそれは。「いーけないんだ、いけないんだ、せーんせいに言っちゃーお。」レベルの台詞である。小学校の思い出が浮かび上がりやがるからやめてくださいお願いします。

 

「‥‥うっす。」

「今日は家に帰るんでしょ?」

 

布団をまくり取られる。俺の人生に八番目くらいに大事な布団が取られた。ちなみに一番は小まt‥‥戸塚だわ。夏だけど僕の右ポケットにお招きしたくなる。今は暑いんでこの上ない理由にはならないですね。早く冬が来ないかなぁ(スノースマイル)。

 

「なんか暑くて面倒。」

「えー!帰んないのー?」

 

本日は土曜日。社畜は出勤するが、学生には楽しい楽しい休日である。IS学園も授業がなくなり、生徒達は各々の活動を始めるのだ。ISの訓練をするのもよし、部活動をするのもよし、遊ぶのもよし。近ければ家に帰るのもよし。

ただ、うるさくしていると織斑先生にしょっ引かれる。

 

「帰りなよー!」

 

I❤︎千葉と書かれたTシャツを着た俺になんて事を言うんだ。我が家に帰れたらとっくに帰ってます。てかどんだけ俺に帰って欲しいんだこいつは‥‥‥

 

「今日小町は友達と遊びに行ってていねえんだよ。親父と母さんは寝てるし。帰っても意味ねえの。」

「そっかぁ‥‥‥じゃあご飯食べに行こっか!」

「何その超理論、まあいいけど。」

 

こいつ俺飯に誘い過ぎだろ。ぼっちなの?いやクラスで普通に話してたけどさぁ‥‥‥‥未だに罰ゲームなんじゃないかって思っちまうぜ!

 

「んじゃ行くか。」

「ほーい!」

 

てめえはアラレちゃんかよ。

 

───2───

 

朝飯を済ませた後、俺は相‥‥‥相なんとかさんと別れ、職員室に向かった。山田先生に頼んでみたところ、すごく嬉しそうな顔をして「はい、なんでも頼んで下さい!私は先生ですから!」と胸を張った。あの自己主張の強い箇所をさらに主張するとか身体に悪い、俺の方が。

ってかこの先生マジ優しい。時々、女尊男卑っていう時代の流れを知ってるのか不安になる。

スペック詳細は企業秘密なので、模擬戦で使用した武装のみの感想をレポートに纏めて、山田先生に提出した。俺氏有能。

 

「比企谷くんのISは‥‥うーん。飛べないんですね‥‥‥‥」

「い、一応ジャンプはできます。」

 

何言ってるんだろ俺。フォローになってないじゃん‥‥‥

 

「でも、このふじ‥‥【藤壺】っていう武器が強いですね。第三世代型兵器とは思えない燃費の良さですし。」

「おすs‥‥そうなんですか?」

 

他のレーザー武器を使った事がないので分からないが、どうやら燃費が良いらしい。第三世代機は基本的に燃費が悪い。だか、この【浮舟】は何故かPICという慣性制御装置が取り外されているので、その分を他の武装に回せるのだ。飛べないけど。

 

「特にこのスナイパー、すっごい強いですね。」

「えっ。」

 

俺が嫌いな武器を選んできたよこの人‥‥天使に見せかけた悪魔なの?

 

「いやぁ、リロードの遅い武器はちょっと‥‥‥」

「そうですか?ちょっと展開してみて下さい。」

「うっす。来い、【浮舟】。」

 

真っ黒な装甲が俺を包み込む。ラインアイが走り、視界が開ける。

初心者なので名前を呼ばないと出てきません。厨二っぽくてカッコ恥ずかしい。顔からファイアが出るわ。ファイアじゃなくてファイガでした、へへっ。

 

「2nd code:Sniper rifle.」

 

砲口のないカノンが形を変え、四本のレールが取り付けられる。

 

「かっこいいですね!」

「えっ?は、はい。」

 

メカメカしい武器が好きなのか。それともどこぞの機動戦士とかが好きなのかな?ここで突然ボトムスとか言われたら尊敬する。ATライフル持ち出すレベル。

腰を落とし膝を曲げ、レールを前に構える。右脛がカパカパと動き出し、物理シールドを展開する。

 

「システムを精密射撃モードに変更。照準、表示します。」

 

視界に十字のあれ(照準)が現れた。画面じゃない。視界にだ。大事なことなので二回言いました。

かがくの ちからって すげー!

 

「試しにターゲットを出すんで、撃ってみて下さい。」

 

なんだか乗せられている気がする。乗るしかない、このビックウェーブに。

アリーナの端、俺の真正面側に小さな空間認識型のターゲットが出現する。濁った目を軽く動かし、ターゲットを注視する。引き金を引くと共にチャージングが始まり、視界に軽く青いノイズが混じる。

 

「trigger.」

 

迷わずに引き金を離す。閃光は確実にターゲットを貫く。結晶のように砕け、消える。

 

「すごいじゃないですか!思った以上に威力も高いです!」

「あ、まあ、はい。」

 

あ、ってなんだよ。名詞が続くの?

山田先生はぴょんぴょんと跳ねて身体で喜びを表現する。ストリップショーかな?

 

「絶対スナイパーの才能がありますよ。折角この武器があるんですからちょっと練習してみましょうよ!」

「えっ。」

「じゃあ、レーザーについてどのくらい知ってますか?」

「いやぁ、全然っす。」

 

すごいペース持ってかれているんだけど。山田先生コミュ力高スギィ!でも男が苦手って聞いてるんですけど‥‥‥あっ、俺が男と思われてないんですねわかります(白目)。

 

「レーザーは有効射程を離れると、一気に減衰して威力が低下してしまうんですよ。」

「‥‥まじっすか?」

 

それは盲点だった。ほら、レーザー兵器って値段が高いけど威力が高いっていうゲーム的なイメージあるじゃん?しかもゲームだと有効射程とか気にしないじゃん?さっきからじゃんじゃん言い過ぎじゃん黄泉川先生じゃん。

 

「だから、チャージングでその射程とか威力とか速度とかを伸ばすんです。チャージしなくても打ち合いでは高速弾として使えますし、チャージすればスナイパーライフルとしての威力を発揮しますね。スナイパーライフルというより、チャージ式のレーザーカノンに狙撃機能を取り付けたって言うのが正しいかもしれません。」

 

すごい饒舌になったんだけど‥‥山田先生実はコミュ障なんじゃね?自分の話せることだけにやたら饒舌になって、ネタが尽きるとだんまりするあれ。あと知らないネタだと反応が薄いやつ。コミュ力高スギィとか思ってたけど違うのかな?

 

「ノーチャージで撃ってもらってもいいですか?」

「うっす。」

 

先程よりも近くに現れたターゲットに対し、ガンマンのように素早い挙動で構え、撃つ。光はターゲット左端を捉える。少しずれたが、まあ及第点というところだろう。

 

「ふーむ‥‥‥チャージするとレーザーは細く濃縮されるんですね。ふむふむ‥‥‥」

 

いや、確かにさっきの方が光が小さかった気がするけど独り言はやめましょうね。ぼっちはすぐに話しかけられてると勘違いするんで。「自意識過剰乙」と言われたらそれまでなんだけどな。

 

「じゃあ、もう一回構えて下さい!」

「‥‥っす。」

 

俺にアサルトライフルの練習をさせてくれ!アサルトライフルゥゥゥ!!

 

───3───

 

あの後山田先生にスナイパーライフルのことしか教わってない。まあそこそこ役に立ったけどね?でも立ち回りとか練習することまだまだたくさんあるじゃん‥‥‥私ってほんとバカ。

 

「はぁ‥‥」

「どうしたの?」

 

溜息の訳を聞いてみても自分じゃないからわからないって誰かが言ってたろ。だからせめて知りたがるんですねわかりません。

 

「暇だ。」

「布団でゴロゴロしてるじゃん〜。」

「お、おう暇だからな‥‥はぁ。」

 

最近相なんとかさんの服装が際どい。蒸し暑いのはわかるけどキャミソールとか誘ってるの?どこぞの第一位みたいに叫べばいいの?俺じゃなかったら勘違いしちゃうぜ。

 

プルルルル、プルルルル

 

「比企谷くんのケータイが鳴った!?」

「驚くことじゃねえだろ‥‥‥誰だ?」

 

IS学園に入って初めてかかってきた番号は小町‥‥‥ではない。知らない番号だ(シンジ並感)。

 

「はい、もしもし。」

「もしもし、比企谷くん?」

「ゆ‥‥雪ノ下か?」

 

意外な人物、雪ノ下雪乃だった。てかなんで俺の電話番号知ってるんだ?どこかで安売りされてるの?セール中なの?

 

「比企谷くん、誰だった?」

「ちょ、おま「あら、エロ谷くん。女の子を侍らせて楽しそうね。」

「おい待て、俺に侍られる女子がいる訳ないだろ。」

「そうね。あなたの周りに人間は集まってこないものね。」

「あーはいはい。」

 

楽しそうな声色だ。俺がいないと自慢の毒舌を吐く相手がいないからストレスが溜まってるのかな?いや、そんなこと言ったら「あら、比企谷菌の分際で自惚れ過ぎてはないかしら。」とか言われそう。

ひ、ひとりでもぼっちだから気にしないもん!

 

「そろそろ本題に入りたいのだけれど。」

「お、おう?」

「来週の日曜日。由比ヶ浜さんの誕生日なのよ。」

「‥‥‥そうか。」

 

由比ヶ浜結衣。その名は俺が一番思い出したくなかったものだ。どんな顔をして会えばいいのかわからない。

 

「彼女、悲しんでいたわよ。比企谷くんを悲しませちゃったってね。」

「だから、どうした?」

「あなたの思っている“それ”は勘違いよ。そういう気持ちが微塵もなかったとなれば嘘になると思うけれど、彼女の思いは本当よ。」

「‥‥‥‥」

「そうなれば、あなたが彼女を拒絶する理由はなくなるわ。」

 

もし、もし仮に。相川清香のように、本物とは言えずとも、あの優しさが嘘じゃないと言うのなら。

 

「だから、比企谷くん───」

 

凛とした声で、雪ノ下は宣言する。

 

「少し付き合いなさい。」

「‥‥‥は?」

 

 




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