インフィニット・ストラトス  ゼロの破壊者   作:kue

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第6話

 第三アリーナに入ると既に超満員で空いている座席など見当たらなかったが青髪少女についていくと虚さんと彼女に似た女子生徒が4人分の座席を確保していた。

 

「あ、オリムー1はっけ~ん」

「オ、オリムー?」

「そだよ~。織斑だからオリム~」

 な、なんか間延びした喋り方だな……ていうか明らかに学生服サイズ合ってないだろ。袖が余り過ぎてすっぽり腕が入っちゃってるし。

「ほら、座りなさい。2人が貴方のためにわざわざとってくれたのよ」

「は、はぁ」

 

 座席に座り、フィールド内を見てみると既にセシリアとか言うやつは青い色のカラーリングをしたISを纏い、巨大なライフルのようなものを持って空中で滞空しながら一夏との模擬戦が始まるのを待っている。

 まあ、一夏が負けることは無いだろうが……。

 

「ねえねえ、オリム~1」

「な、なんだよ」

「あ、その前に私は布仏本音だよ~。同じクラスの」

「布仏……」

 

 あぁ、通りで似ていると思ったら姉妹か……にしても全く雰囲気が違うな。姉はお堅い感じだけど妹の方はもうゆるっゆるっを極限にしたくらいだな。

 

「オリム~2って強いの~?」

「んなこと知らねえよ。どうせ始まるんだから分かるだろ」

「ぶぅ~。少し口が悪いぞ~」

「こういう性格なんだよ。放っておいてくれ」

 

 そんな時、周りから歓声が上がったのでフィールド内を見てみると白い……というか若干グレーに近いカラーリングのISを纏った一夏がピットから出てきてセシリアとか言うやつの前に立つ。

 

「……あれ、まだ初期化中ね」

「フォ、フォーマット?」

「……敢えて言明は避けるけれど貴方、バカなの?」

「言明してるし……あ、あれっすよね。最適化処理を行う前のあれですよね」

「…………」

 あ、もう無視なのね。

「それであってるよ~」

「初期化中で戦うってのも無理があると思いますが」

「…………」

 

 青髪少女は黙りこくり、ただひたすらどこに視線を向けているともわからないような表情をしている。

 ……前から見ても横から見ても何を考えているのかさっぱり分からんな……まあ、他人の考えてることなんてどうでも良いんだけどさ。

『これより、1年1組代表決定戦を行います』

 そんな場内アナウンスが流れた直後、問答無用でセシリアが巨大なライフルからレーザーを一夏めがけて放つ。

 

「おぉ……中々の反応速度」

 放たれたレーザーを一夏は少し体を捩らせて避けた。

 どうやら上級生の人から見てもそうらしいけど……あれ、明らかに一夏とあのISの動きが一致してないよな。異常なまでに遅れてるってわけじゃないんだけどISの反応の後に一夏が反応しているからあんなギリギリの避け方になったんだろう。

 一夏は体をISに慣らすためなのかフィールド内を縦横無尽に駆け巡りながら放たれてくるレーザーの一撃を避けていく。

 ……これがIS同士の戦いか。

 初めてみるIS同士の激しいぶつかり合いに俺はどこか興奮に似たものを感じていた。

 一夏が手を横に伸ばした瞬間、片刃の近接ブレードが手中に収まり、放たれたレーザーを一撃のもと弾いた。

 

「ほぇ~。オリム~2、近接ブレードだけでセッシーと互角に戦ってるよ~」

 

 ……互角? 違うな……さっきまでに2回はあいつをぶった切れるチャンスがあったのにあいつはそのチャンスを目の前で捨てた……何かを待っているんだ。

 するとセシリアとか言うやつの機体から4基のビットが放たれ、複数個所遠距離から一夏を狙ってレーザーが放たれていく。

 な、なんだよあの初見殺しみたいな兵器! ていうかあれに反応して避けてるあいつもあいつだわ。

 

「セシリアさんも本気で来たようですね」

「うぉぉ~。熱戦熱戦! 2人ともがんばれ~」

 

 あ、あいつもすげえ……これが代表候補生ってやつの力か……案外、あいつの高飛車な性格もあながち間違ってはないほどの実力はあるのか……。

 その時、何故か一夏の動きが止まった。

 

「あっ!」

「オリム~2が~」

 

 その隙を狙って4基からの一斉射撃に加えて機体から2発のミサイルが放たれ、大爆発を起こし、爆炎の中に一夏の姿は消えた。

 周囲からもため息や疑問の声が上がってくる。

 

「…………ちゃんと見ていなさい」

「え?」

「意外と貴重な瞬間だから」

 

 青髪少女がそう呟いた瞬間、周囲から驚愕の声が聞こえ、慌ててフィールド内へ視線を戻すと工業的な凸凹が目立っていた機体が滑らかな曲線とシャープなラインのある機体へと変貌を遂げていた。

 な、なんだれ。

 

「一次移行……最適化と初期化が終わったと同時に行われるもの……つまり、今この瞬間をもってあの機体は織斑一夏専用の機体になったわ……そしてこの戦いも終わった」

『勝者・織斑一夏!』

「……は?」

 

 そんなアナウンスが流れ、思わずそんな声が出たが設置されている巨大モニターに先程の様子がもう一度映し出された。

 一次移行とやらが終わった一夏は改めて近接ブレードを呼び出すが先程のただ単なるブレードとは違い、反りのある太刀に近い形に変化していた。

 それを握った直後、刀身が白銀の輝きを放ち始め、呆然とした様子のセシリアに向けた瞬間、一夏の姿が消えたかと思えばセシリアの機体に盛大な火花が散り、彼女の後ろに一夏が立っていた。

 

「瞬時加速に単一使用能力まで……恐ろしい子が入ってきましたね、会長」

「そうね……さて、試合は終わったのだし戻るわよ。弱斑君」

「マ、マジですか?」

「休憩は十分とったでしょ」

 

 そう言われ、盛大なため息を吐きながらトボトボと俺は青髪少女の後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「きゅぅ」

「男の子がそんな声を出しても気持ち悪いだけよ。弱斑君」

 

 だからなんで数時間、組み合った後にも関わらずあんたは息1つ乱れていないんですか……どんな無限回路をその体に積んでるんだよ。どっかのインフィニティーな魔法使いじゃあるまいし。

 

「それとさっき本音から連絡が来たのだけれど織斑一夏君がクラス代表になったそうよ」

 

 そりゃあれだけの圧倒的な実力を大勢の前で示せばなぁ……ただ俺が少々、不安というか心配事はあのセシリアとか言うやつ、絶対にクラスでボッチになるだろうな。あんな嫌味な性格見せたことだし……それはないとしたとしても一夏にはもう近寄れんだろう。

 

「そうですかい……俺には関係ないっすけどね」

「…………今日はお終い。帰っていいわよ」

「うっす」

 帰れるものなら帰りたいわ……あーマジで全身痛い。ちょっとくらい手加減してくれよ。

「お疲れ様です。織斑さん」

「……虚さんくらいだよ。俺を労わってくれるの」

「はい?」

 虚さんからタオルを受け取り、汗を拭きながら起き上がり、虚さんと一緒に柔道部屋を出る。

 

「一夏さん、とってもお強かったんですね」

「まあ、あの千冬姉から手解きうけてればね」

「そうなんですか……きっとあなたも強くなれますよ。なんせ学園最強の生徒会長に師事してもらってるんですから」

「最強?」

「ええ。更識楯無生徒会長。生徒会長になれるのは学園最強の人物だけなんです。自他ともに認める最強の生徒で意外と人気があるんですよ」

 

 ようやくあの青髪少女――――生徒会長の強さが分かった。

 猛者が集まるIS学園で最強の生徒会長の座に居座っているならそりゃあんなけ強いわけだ……納得納得……でもなんでそんな生徒会長様が俺を強くするとか言い出したんだか。

 

「じゃ、私はここで」

「あ、はい」

 虚さんと分かれ、自室の1025室へ入るが一夏が何かを隠したかのように布団に手を突っ込んだ。

「よ、よう秋無! 俺の試合見てたか!?」

「あぁ、見てたよ……で、今何を隠した」

「か、隠す? ばっきゃろー! 双子の弟に隠しごとなんざしねえさ!」

 

 ……その割には俺と目を合わせないんだな……仕方がない。

 俺は近くにあった椅子を持ち上げ、武器として使用することを示すと一夏はぶっとい参考書みたいな教科書を手にし、臨戦態勢をとる。

 

「…………あ、エロ本」

「な、なに!?」

「ほい」

 

 一夏がものすごい勢いで下を見た瞬間、素早くシーツを掴み、バサッと上へあげると一夏の大好きな巨乳のグラビアアイドルの写真集が5冊ほどシーツの下にあった。

 ……こいつまた取り寄せたな。

 

「はぁ……ばれたら仕方がない」

 今、隠し事はないと言った奴はどこのどいつだ。

「実はさ……今さっき段ボール箱で届いたんだ……それを読みたかったんだ」

「それで自己発電する気か?」

「それはない。するなら実家でする!」

 

 ……こいつ、俺がなんで共同部屋だった部屋から出ていったのを未だに分かってないな。

 ちなみに理由はイカ臭いのとゴミ箱にこんもりと積まれたティッシュの山を見て初めて兄弟でありながらドン引きしたので俺の勉強道具一式を居間に降ろしてきたんだよ。

 しかもこいつ、共用のパソコンであっふ~んな映像を見てるから履歴に残るんだよ……ちゃんとこいつは検索欄の履歴からは消しているみたいだがお気に入り設定をそのまんまやってるから意味がない。

 9割がたあれな動画だからな。

 

「なあ、いいだろ? 見るだけなら、頼む!」

「……別に見るなとは言ってねえだろ」

「おぉ流石は俺の双子の弟! 恩に着る!」

 

 そう言うとベッドに飛び込み、エロ本を読み漁り始める。

 その姿はあの女の子からモテモテの一夏からは想像できないくらいに気持ち悪かった。


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