黒子のバスケ ー影と光を助けた太陽のキセキー 作:フリュード
それではどうぞ!!!!
キュッ、キュッ。
「オーエイ!オーエイ!」
インターハイまで半分を切り、練習に精を出す誠凛高校。相変わらずリコの鬼の基礎練習は続いていたが、その練習にも徐々に慣れ始めていた。
ピィーーー!!
「終了!3分休憩後に3on3!チームはAチーム水島君・日向君・水戸部君!Bチーム木吉君・小金井君・伊月君で行くわよ!」
リコは笛を鳴らし、次の指示を出した。選手たちは歩いて体育館のすみへと行き、水分補給など水分補給をする。
「ふい~~漸く慣れた!」
小金井はタオルで汗を拭きながらそう言った。
「はは、途中で抜け出す事も少なくなったしな。」
水島はストレッチをしながらそう言い、首にかけたタオルで汗を拭う。
小金井も漸く慣れてきたのか、以前のように練習の途中で抜け出す事は無くなり、日に日にバスケの技術が上達してきた。
「おい。そんな事言ったら・・・「へぇ~慣れたのね。それじゃ、その倍逝っとく?」・・・いや流石にキツイヨ。」
日向は小金井の発言にいさめようとしたら、後ろからリコが満面の笑みでそう言うので日向は丁重にお断りをした。
「・・・・はっ!?『ナレーターに慣れた!』キタコレ!」
伊月はいつもの如く、小金井の発言からダジャレを思いつきそれを繰り出した。
「伊月ダマレ。」
「伊月は通常運転だな。今日も異常は無し。」
「ははは。でもここで言うものじゃないと思うよ。」
「ええっ!?」
いつもの如く伊月のダジャレは日向・水島・木吉に一蹴されてしまった。
「はぁ・・・(伊月君はダジャレが無ければいい感じの男なのに・・・『残念なイケメン』ね本当に。)」
リコは手を頭に当て、そう思いながらため息を吐いた。
ガララ・・・
「ん?」
水島たちが楽しく会話していると、体育館の扉が開いたので皆は一斉に開いた扉の方を見た。
「あの~バスケ部に入りたいんですけど・・・」
「えっ!?」
扉を開けて入ってきた制服を着た糸目の男の発言に皆は驚き、一瞬の沈黙の後歓声が上がった。
・・・・・・
「え~今日から入ることになった
糸目の男、土田はそう言い深々と頭を下げた。土田が自己紹介を終えると部員から拍手が沸き起こった。
「新入部員か~いっそう賑やかになるね!」
小金井はうんうんと頷きながらそう言う。水戸部も同意見の様で頷いていた。
「どうしてバスケ部に?」
「うん、あの屋上からの宣言を見て、自分もバスケをしてみたいと思って・・・」
日向は入部理由を聞くと土田は頬をかきながらそう答えた。
「へぇ~んじゃこの
「誰がアホだ。」
水島は土田に日向を指差しながら真剣な表情でそう言った。日向は水島の発言に突っ込むが、水島はスルーした。
「いや、俺もう彼女が・・・」
「なに?リア充だと!」
「落ち着けコガ。」
土田の発言に小金井は食いついたので、水島はそれを諌めようとしたが・・・
「リア充って何だ!?新しいポジションか!?」バーン
「いや、流石に分かるだろ木吉!?」
「いや、分からん。」
またしても木吉のド天然発言が飛び出したので伊月は突っ込んだ。しかし木吉は本気で知らないようで、木吉が複雑な表情をしていたので、伊月は何も言えず頭を抱えた。
「しゃーないだろ伊月。普段ばあちゃんたちと一緒に暮らしているんだから、意味が分からないって言う奴もたまにいるよ。」
「そういうこと。ま、気楽にいこーぜ!土田君!」
「あ、うん!」
木吉は水島の発言に同意すると、いつもの笑顔で土田にそう言った。土田も木吉の優しい言葉で幾分か緊張が解けたのか、当初よりも表情が柔らかくなっていた。
「さぁ!親睦を深めたところで、練習再開よ!土田君は今日、練習見学ね!」
「は、はい!」
リコがそう言うと土田は姿勢を正し返事をする。
「うん!それじゃチームはさっき言った通りで!」
「了解。じゃあ練習すっぞ!」
日向はそう言うと部員は2チームに分かれ、準備を行い始めるのであった。
キュッ、キュ!
「へいパス!!!」
「そこ!少し内から!」
「おお・・・これがバスケ・・・」
バッシュのスキール音、ボールマンを呼ぶ声。周りから飛び交う怒号に土田はただ気が抜けた声しか出なかった。体育の授業でしかバスケをした事が無かった土田は‘本当’のバスケを目にし、抜けた声が出るだけだった。
「ふふ、これくらい当然よ!バスケは数あるスポーツの中でも特に激しいスポーツと言われているわ。簡単に言えば28mのコートを40分も走らないといけないからね。」
「本当ですか!?ただでさえ学校でやる10分ゲームでもきついのに・・・」
土田はそれを聞き、僕にもできるのかと言う思いが一瞬よぎった。
ぱしっ。
そんな中、水島にボールが渡りバスケの基本の姿勢であるトリプルスレットの構えに入る。
「なんだ・・・?雰囲気がやばい・・・」
水島が構えた瞬間周りにながれた威圧感が土田にも届き背筋がざわつく。
「来い水島!」
「・・・・!!!」
水島のマークマンである伊月がそう言うと、ゆっくりと水島は右手でドリブルをして・・・・・
・・・・・ダッ!
一歩目と同時に右→左へクロスオーバーし、目にも止まらぬ速さで伊月を左側から抜きにかかる。
「!!!くっ!」
水島の動きに体制を崩されながらも足を踏ん張り、何とかくらいつく伊月。
「甘いな!」
だが、くらいつくので精一杯と一瞬の判断で見抜いた水島は再び左→右へクロスオーバーをする。ダブルクロスオーバーと呼ばれる技に、伊月は対応しきれず水島の
インサイドに切り込んだ水島は左45度の方向からゴール前付近で跳び、ダンクの体勢に入った。
「うおおおおお!!」
「・・・!」
しかしゴール下には木吉が待ち構えており、水島が体勢に入ったと同時にシュートコースを防ぐようにブロックをする。
「・・・・・!!!!」
だが水島はそこからボールを持ち替え、跳んだ状態でビハインド・ザ・バックパスを出し、木吉の後ろに隠れていた水戸部にパスをした。
「おおっ!?(この前と似たような感じじゃんかよ~~~)」
木吉もそれを見て驚きの声を出し、前と似たような状況に若干涙目になった。
そのまま水戸部がレイアップで決め、Aチームに2点が入った。
「うおっ!何今の!?」
水島のプレーに土田は感嘆の声を出す。
「ふふっ、あのパスを出した青髪の子こそ誠凛高校が誇るスーパーエース、水島 悠太君よ!」
「あの人が・・・」
ドヤ顔であるリコの紹介に土田はそう言い、水島を見た。
(同い年とは聞いたけど、他の人とは一線を画している・・・・・凄いとしかいえない。)
土田は水島のプレーを見てそう思うしかなかった。
「帝光中出身って言うからなんでこの学校に来たのかなって思うところはあるけどね。」
「帝光出身?はぁ、やっぱりバスケのエリートは違うなぁ・・・」
帝光の名を聞き土田はため息を吐いた。バスケ素人である土田でも分かるほど王者、帝光の名は知れ渡っていた。
「うん、他の子もそうやって言っていたけどね、水島君が言ってたのよ。」
『帝光だからとかじゃないぞ。オレはバスケが好きだ。まぁ、親父がバスケやっていたって言うのもあるけど、それを差し引いてもバスケが大好きなんだ。上手くなりたいからNBAの選手や日本のプロバスケット選手のプレーを動画や実際に見に行って自分で真似したりしてたな。』
「・・・・って言っていたわよ。」
「うはぁ、やっぱり上手くなるにはそれぐらいはしないといけないのかな・・・」
水島の言葉を聞き、土田は若干表情を固くし俯きながらもそう言った。
「これからよ土田君!バスケ部にも初心者の子もいるからその子と一緒に上手くなればいいわよ!それにどんな事でも好きになれば自然と上手くなるわよ!」
「好きな事か・・・・そうだね。これからだね。」
リコの発言に土田はそう言いバスケのコートを見た。
その土田の表情は先ほどの硬い表情ではなく、穏やかな笑顔であった。
『ピィーーー』
笛が鳴ると、選手たちはその場に倒れこんだ。
「何度目だよこれで・・・くそっ。」
水島はそう言い握り大粒の汗を拭いながら握りこぶしを作っていた。
1戦目は、水島たちAチームが20-16で勝利したのだがやはり2戦目には水島に「シュート禁止」の制限がかかり、他の選手が健闘しものの、Bチームが14-20で勝利し今回のペナルティも両チーム仲良く受ける事となった。
「ま、いいんじゃねーか?」
木吉がそれを聞いていたようで、いつものにこやかな笑顔でそう言ってきた。
「うるせー・・・てか木吉今日何か考えながらプレーしていたよな?」
「うん?何のことだ。」
水島の問いに木吉はとぼけるようにそう言う。
水島の言うとおり今日の木吉のプレーは所々で何か考える表情をしながらプレーをしていたので
「水島の言うとおりだよダアホ。」
しかし日向もそれには気付いていたようで、木吉の肘を小突きながらそう言った。
「あらら・・・皆気付いていたようで?」
「いいから教えろって。」
木吉の変わらずとぼけた言い方に水島は痺れを切らし、語尾を強くしながら言い放つ。
「う~ん・・・おれさ、最近悩んでいるのよ。」
「何を悩んでいるの?」
小金井もその輪に加わり、木吉に聞いた。
「オレこんなガタイしているけど味方にパスしたりして皆を助ける役割が自分にあっていると思うんだ。」
「それってつまりPGって事?」
「そーゆーこと。」
伊月の問いに対し木吉はへらりとしながらそう言った。
「確かに木吉は中学校からCなのにパスが上手かったな。」
水島は練習中のプレーや中学校時代のプレーを思い出しながらそう言った。
確かに木吉はCにしては珍しくパスセンスがある選手だった。Cらしく力勝負に持ち込む事も出来れば、周りを見てパスもするPGの役割も出来る選手、それが木吉なのだ。
「だろ?けど、PGには伊月と水島がいるからPGをする事は無い。それに俺以外Cできる奴もいないし、人数も人数だからPGしたいなんて言えないのよね。でも・・・」
「まさか、今のスタイルに限界感じているとかじゃないだろうな?」
「日向お前・・・超能力者か?」
「こんな時に何言っているんだ!?」
日向は脳裏に浮かんだことを言うと、図星だったのか木吉が目を見開き驚いた表情をしながら言った。木吉の発言に水島がすばやく突っ込みを入れた。
「要するに自分のしたい事がCでは出来ないって言いたいの?」
「・・・・・・」
伊月の発言に図星なのか珍しく木吉が口をつぐんだ。
なんともいえない雰囲気がメンバーの中で流れて来ていた。
「え~それならさ・・・両方やればいいんじゃない?」
そんな雰囲気を吹き飛ばすように小金井はへらりとした表情で衝撃の一言を放った。
「はっ!?い、いや小金井!?まず無理だ!」
「そうだぞ!PGとCは役割的に正反対だぞ!」
小金井の一言に伊月と日向は否定的な発言をした。
「ふぅん・・・・」
「・・・・・・」
そんな中で水島は少し考えていた。木吉は驚いた表情をしていた。
「・・・・いや、案外いけるかもしれん。」
水島は考えた後、そう言った。
PGのパスセンスを持つC・・・もしそれが仮に出来るのであれば攻撃のパターンが増える。正反対のようで、合わされば案外いけそうな奴だと水島は睨んだからである。
「まじで?」
日向は水島の発言に驚きながらそう言う。
「・・・・そうだな!なんだかイメージできて来た!コガありがとう!」
「え?あ、ああ。どういたしまして。」
木吉はスタイルのイメージが出来あがってきたからか、小金井にお礼を言った。
「すまないみんな!イメージが出来ているうちに練習がしたい!駄目か!?」
木吉は居残り練習の提案をだめもとで提案をした。
「・・・オレはいいぜ!」
「・・・たく。仕方がねえな。」
「うん。いいよ。」
水島の返事を皮切りに日向・伊月はOKの返事を出した。
「オレもいいよ!」
「・・・・(コクコク!!!)」
「みんな・・・ありがとう!」
最終的に全員がいいと言った後、木吉は感謝の言葉を述べた。
「よっしゃあ!!!!やんぞ練習!!!」
『おおおお!!!!!』
水島がハイテンションになりながらそう叫ぶと全員も続くように叫び、居残り練習が始まった。
インターハイ予選はすぐそこまで近付いていた。
感想・要望等があればどしどし下さい!久しぶりに投稿ができて良かったです。遅くなって申し訳ありませんでした。