黒子のバスケ ー影と光を助けた太陽のキセキー 作:フリュード
6月15日 編集しました
第6Q 誠凛のバスケ
キュッ!キュッ!
誠凛高校の体育館にバッシュ特有のスキール音が鳴り響く。
「へい凛ちゃん!」
左サイドを走っていた水島が手を上げてボールマンである水戸部にパスを要求する。水島はすっかりとメンバーをあだ名で呼ぶようになった。
バスケ部が結束して3日、インターハイ予選まであと1ヶ月と迫り、出来るだけ誠凛のバスケットスタイルを確立したいためにも試行錯誤していた。それまではただひたすら走る。それだけだった。
今はリコの鬼のような基礎練が終わり、ちょうど6人いるので3on3をする事になった。
A水島・水戸部・小金井
B伊月・木吉・日向
チーム分けは以下の通りだった。
「・・・・!」
水戸部は水島の声に反応した水戸部はバウンドで水島にパスをする。
「渡さない!」
伊月がパスをカットしようとしたが、わずかに届かなかった。
「くっ!」
「よしっ!」
伊月は僅かな差ではじけなかったので悔しがった。水島はパスを貰いドリブルを仕掛ける。
しかしこの3on3、部員の人数もギリギリなためリコが2つほどルールを作った。
1つは、必ず全速力で走る事。要するにシュートを入れられても速攻を仕掛けろという事だ。5分×2セットを走りきるなど、簡単だろと笑顔でいったリコに部員から反発が起こったが、「3倍にするよ♪」の一言で黙らせた。なのでもはやこの3on3は速攻ゲームとなっている。
「おおう。足が重いよ・・・」
水島は汗を肘につけているリストバンドで拭い、ゆっくりとドリブルをしながら呟くよう弱音を吐いた。
連日の鬼練習にこの3on3。流石の帝光出身でも疲労が溜まっていないはずが無い。
しかし、それでも走り続けないといけない理由がある。それは・・・
「まけねぇぞ!!後1本取られたら練習3倍なんてやりたくねぇんじゃあ!!」
「そんなのしらねぇよ!」
前に出てきた日向の腹のそこから出た叫びに水島は苦笑し、そんなの知らんといわんばかりに叫び返す。
もう一つのルールというのは1セット5分の間に10点先取されたチームには基礎練3倍という地獄が待っているのだ。5分の間に両チームがどちらも10点先取出来なくても、両チームとも地獄が待っているので、そんなの受けたくないので皆一心になって点を入れようとしていた。しかも2セットとも負ければ6倍の練習というキチガイじみた事をやられるので気持ちは皆強かった。
そして日向たちBチームが8-6で後一本取られたら、やばい状況に入っているので尚更点を入れさせないという思いが強いのだ。
「行かせん!!」
「・・・!!」
日向のハンズアップでの必死のディフェンス。しかし、水島はクロスオーバーでゴール側がある内側に切り込むに見せかけて、水島は自身の背中にボールを通すビハインド・ザ・バックで日向を振り切ろうとする。
「うおっ・・・!!」
右→左の揺さぶりもかねられたキレのあるドリブルに日向は水島が最初に切り込んだ方向に重心が傾いていたためか、対応し切れず水島のペネトレイトを許してしまう。
「ヘルプ!!」
「行かせん!!」
木吉が日向のヘルプに行き、水島の前に立ちふさがるが水島は木吉が来たのを見計らって右手に持っていたボールを左に持ち替え、右側にパスを出した。
「なっ・・・しまった!!」
木吉は後悔をし、パスが出された方を見るとそこには小金井がいた。
「いけっ!コガ!!」
水島はそう叫ぶ。伊月は水戸部にスクリーンを掛けられていたためドフリーの状態でパスを貰った小金井はジャンプシュートを放った。
・・・ガガッ。
しかし、最高の状態で放ったシュートはゴールに嫌われ得点とはならなかった。
「よしっ!」
「ああっ!!」
シュートが外れたのを見て日向はこぶしを作り、喜んだ。水島は少し落胆の色を見せたがすぐに切り替え、リバウンドに備えた。
「っし!」
「くそっ!」
しかし、上背とポジションで木吉に劣る水島は勝てるわけも無くリバウンドは木吉が取った。水島は悔しさのあまりそれが声に出た。
その後、日向のシュートで8-8と両チームとも後1ゴール差に持ち込んだ。
「速攻!」
シュートが入った瞬間、ボールを取りに行った水戸部はすぐさま水戸部から見て左側を走っていた水島にパスを出した。
「行かせない!」
しかし、すぐに伊月がマークに付きパスを取らせないようにする。
「・・・・!!!」
それを見ると同時にパスの軌道を見た水島は伊月から離れるようにさらに左へ寄る。
「えっ!?」
突然の行為に伊月が驚く。そして水戸部からのパスはキレイに水島がいる位置にどんぴしゃの位置で通った。
「ふっ!!」
ザシュ!
伊月を振り切った水島はレイアップシュートを決めた。
『ピィーーー!!!』
リコが笛を鳴らし、10-8でAチームの勝利が決まった。
「ごめん水島。あの時に俺が入れていれば・・・」
負けて地に這いつくばっているBチームを尻目に小金井は水島にシュートを外したことを謝っていた。
「別に良いよ!誰もが最初からシュートポコポコ決められるわけじゃないし。気にすんな!」
水島は笑顔でそう言った。水戸部も同じ気持ちで笑顔でこくりと頷いた。
「・・・うん!」
小金井は優しい2人に笑顔でそう言った。
(くそっ・・・クロスオーバー→ビハインド・ザ・バックのキレが半端じゃねぇよ。)
(全中でもそうだったが・・・いざやってみると凄いな・・・)
(見事に振り切られたな・・・てか来年有望な1年が入ってきたときにPGに戻る事もありなら・・・いろいろとまずいな・・・)
水島のプレーに相手チームである(上から)日向・木吉・伊月の3人は顔をしかめながら汗を拭いそんな事を考えていた。しかしその思いは反対に水島に期待しているという事。
(ははは・・・いろいろと凄すぎて言葉が出ないわね・・・本当に推薦が来なかったの?)
リコは汗を流しながら水島のプレーに驚き声が出ていないほどだった。
(これなら・・・インターハイ狙えるかも!)
リコは目を輝かせながらそう思っていた。リコはそう思っている間にも1分間のインターバルを挟んでの2セット目が始まろうとしていたのでリコは水島に言いたいことがあったので水島の元へと向かった。
「くっそ~負けたぁ!」
2セット目が終わり、6-10で水島のチームが負けてしまったので顔を上に上げて汗を拭いながら叫んだ。
『ちょっと悪いけど水島君はシュート禁止ね!』
2セット目が始まる前、リコがそう言ってきたので水島は素直にOKを出し、練習に臨んだが・・・・・
ガッ!
ガガン!!
ガコッ!!!
何度もシュートがリングに当たっては得点とならない・・・・・水島はシュートが出来ない分頑張ってチャンスメイクをしてをしては味方にパスをしたのだが、その味方が(特に小金井)ことごとくシュートをミスしてしまい、そのままターンオーバーで相手にシュートを入れられてしまい負けてしまったのだ。
「ごめん!!!」
3ON3後、小金井がもう一度謝ってきた。2セット目は水島はシュートが打てず、水戸部が密着マークでパスをさせないようにしていたので、小金井はその分シュート数も多くなったのだが、その分ミスも多くシュートミス数がゴール数を上回る結果となってしまったのだ。
「だ~か~ら~言いっつってんだろ?人はミスをしてそれを糧にするんだ。ま、今回ばかりは仲良く3倍練習逝っとこうぜ。」
「あれ?最後の字が・・・」
「んなこたぁいいんだよ!」
水島が小金井にそう諭し、小金井は最後の練習の言い方がおかしいと言うが、水島に引きずられていった。水戸部も慌てながらも後を追った。
「よーし、今日はここまで!」
リコが練習の終了を告げると全員死んだようにその場に倒れこんだ。
「はは・・・やべー足ががくがく。こんなに練習させられたのは久し振りだわ。」
水島も倒れたうちの一人で中学校時代でもこんなに練習させられたのを思い出し大量の汗を拭いながらそう呟いた。
「さぁ!倒れたい気持ちも分かるけど、集合よ!」
休む時間もとらせてくれずリコがそう言ったので水島達は気合で立ち上がりリコの元へと集合した。
「さぁ、今日の練習はここまででこれからの事を話すわ。」
「これからの事?」
リコの発言に木吉は汗を拭きながらそう言ったのでリコは「えぇ。」と言った。
「5月にはインターハイ予選が始まるけど、はっきり言って時間が足りない!それにうちは今年創部したばかりの若いチームよ。」
「そうだな・・・あと1ヶ月ちょいはあるけど実際今からディフェンス練習したりしてセットプレーの練習とかにいる時間を計算するととてもじゃないが1ヶ月じゃ少なすぎる。」
水島がリコの発言に汗を一回拭い、顎に手をつけ考える仕草を見せながらそう言った。
「水島君の言う通りよ!それにうちには長年チームが築き上げたスタイルというのが無い。今日は早めに切り上げてスタイルについて話しましょ。」
リコがそう言い近くにあったホワイトボードを持ってきて、ボードに『誠凛のバスケットスタイル』と題名を書いた。
「さ、時間は無いから早めに思いついた人は挙手!」
リコはそう言ったので皆考え始めた。若いなら若いなりにどういうスタイルがいいのか・・・
「やっぱりラン&ガンだと思うぜ。」
すると、水島が手を上げそう言った。
「ラン&ガンって?」
初心者の小金井は聞きなれない言葉に疑問を感じ水島に聞いた。
「ラン&ガンって言うのは文字通り
「そうだな。若いなら若いなりに走りまくって乱打戦に持ち込んで・・・」
「守り勝つんじゃ無くて打ち勝つんだ。」
水島の提案に日向・木吉は賛成の意見を述べた。
「そうだね。それにラン&ガンのほうが潔いし小金井君も分かりやすいからいいと思うよ。」
伊月もラン&ガンスタイルには賛成のようだった。水戸部も賛成のようでこくりと頷いていた。
「あらら・・・一発だったわね。」
「まぁ、限られた時間の中で何が出来るかって言ったらそれしかないしね。」
「それにうちには全裸がかかっているんだ・・・」ゴゴゴゴ・・・・
水島があまりの速さにそう呟いたリコに対してそう言い、伊月が日向に対して心なしか怒りの表情をしながらそう言った。
「わ、悪かったよ!」
日向も悪いと思っていたのか皆に対して謝った。
「ま、負けられない理由が出来たで良いんじゃないか?」
木吉が日向をかばうような発言をしたので「それなら良いけど・・・」と伊月も納得したようだった。
「ははは・・・まぁ、皆納得してるようだからラン&ガンで良いと思うぜ。」
「そうね・・・」
苦笑しながら水島はリコに対してそう言った。リコも苦笑しながらそう言った。
「それでやっぱり小金井君は今日の3on3を見てシュートの確率を上げてほしいわね。ボ-ルの使い方とかは形になってきているから、後はそれだけね。」
リコは小金井に対して今日の練習を見て思った事を行った。
小金井は身体能力がいい所為か、ドリブル・パスが僅か3日で形になってきている。後はシュートの正確性があればいい感じになるのだ。
「うん・・・」
小金井もそれは分かっているのか力なく返事をした。
「水島君、これから時間あるときでいいから小金井君を見てくれない?」
「いいぜ。」
リコは元気が無い小金井を見て、水島にシュートを教えてくれないかとお願いをした。水島はリコのお願いに快く快諾の返事を出した。
「それじゃ、今日はここまで!明日からはスタイルに合った練習をしていくからそのつもりで!」
『オウ!』
リコがそう言うと、部員が声をそろえてそう言い本日の練習は終わった。
「よし。居残りすっか。」
練習が終わり、疲れたのか部員がゆっくりと帰り支度をする中水島はボールが入っているかごを持ってきてシューティングを始めた。
毎日居残り、練習するのは帝光中時代からずっと行っている事だ。おかげでたくさんの技術を得られたし、いろいろためになった。
「俺もやっていい!?」
「・・・・・」
すると、小金井もやるのか水島に入っていいか聞いて来た。水戸部もやりたいのか、または小金井と一緒に帰るのか分からないが、小金井と一緒にいた。
「いいぜ!リコにも教えてって言われたし今日の練習外しまくってたからな。けどお前体力は大丈夫か?リコの鬼練習で死にかけだったけど。」
「うう・・・うん。大丈夫。」
笑いながら言った水島の発言に小金井はそう言うしかなかった。。
「よーし、やるか!」
「うん!」
水島がそう言うと、小金井もそう言い気合を入れて練習が始まった。
シュッ!ガガッ!
「う~ん。10球ともボールの軌道がばらばらだよ。全部完璧とは行かなくても全部同じような感じでいかないと。」
フリースローラインから10本打った後に水島が小金井に対してアドバイスを送った。
10本中4本。まだ入って3日とはいえ、半分も行かない結果にちょっと心配になってきた水島。
「うん!どうすれば入るかな?」
小金井も危機感というのはあると思うが出来るだけ明るく振舞おうとし、水島にどうすればいいのか聞いた。
「うん。出来るだけ同じ打つ位置から打つ事。後は指とかに引っかからなければ大丈夫。」
「・・・・・(こくり。)」
水島のアドバイスに水戸部は同じなのかこくりと頷く。
「うん。やってみる。」
水島からのアドバイスを聞いた小金井はお礼をいいシュートを打ち始めた。
「・・・うん。10本中6本。今日はここまでにしようか。」
「うん。ごめんね、水島も練習したかったのに・・・」
ゴール数が半分を越えたあたりでで練習を終えた。小金井もそれに同意すると共に水島があまり練習できなかった事を謝っていた。
「それはいいよ!まぁ、これからだな。練習がきつくなるのは。」
「・・・(コクリコクリ!!!)」
「えっ?」
水島の発言と水戸部の反応に小金井はどういう意味なのか汗を拭いながらもう一度聞いてきた。
「バスケットスタイルがラン&ガンになったからな・・・正直お前が付いてこれるかどうか心配だ。」
「・・・・・・頑張ってみる!」
「・・・・(にこっ。)」
水島の発言に元気良くそう言った小金井に水戸部はにこりと笑った。
「んじゃ、かえろっか。」
「うん!」
水島がそう言うと小金井がそう言い、3人で後片付けをした後一緒に帰っていった。
インターハイ予選までの地獄が始まるのであった・・・
2話連続で5000文字突破・・・オレのHPはもう0よ!んなわけあるかダアホ!頑張って次も書くのでよろしくお願いね!