黒子のバスケ ー影と光を助けた太陽のキセキー 作:フリュード
6月7日 編集しました
「水島・・・!!」
水島に声をかけられた日向は明らかに不機嫌な顔になった。
「おいおい。別に取ってかかろうなんて思っちゃいないさ。」
水島は苦笑し日向の元に向かう。
「・・・木吉と勝負していたのか?」
日向のところに行くと日向の額からうっすらと汗が流れていたのを見て木吉と一緒に帰っていたのでもしやと思いそう言った。
「・・・・あぁ、そうだよ。根っこは一緒とか、オレだって帝光の天才にやられたとか、意味の分からない事ばっかり言いやがって。」
「ははは。そんな事言ってたのか。」
日向の眉間にシワを寄せながらの発言に水島は笑っていた。
「ホント意味わかんねえよ・・・・けどそれはお前にも言えることだぜ。」
「オレにも?」
日向にそんな事言われたのでオレは感づいてはいたが一応聞いた。
「お前、帝光でPGとSFやっていた『闘将』水島 悠太だろ。2・3年生の時は名前聞かなかったけど、1年生のときに凄い活躍していたって知っている・・・なんでこんなところにいるんだよ。」
「・・・まぁ、木吉に誘われたからだよ。」
「誘われたぁ!?ふざけんな!!!お前ほどのプレーヤーなら幾らでも強豪校からの誘いはあっただろ!お前だって木吉と同じで天才だろ!」
「(ピクッ。)天才?・・・オレは天才じゃない!」
「!!!(ビクッ!)」
日向の天才と言う発言に反応した水島は声を荒げて言い返した。日向はまさかそんなに声を荒げるとは思わなかったのかビクっと体を震わせた。
「・・・すまない。けど木吉の言葉を借りるならオレだって根っこは一緒だぜ。元々オレには才能というのは無かった。ただ純粋にバスケが好きだった。だから上手くなれた。」
ビックリさせたことを謝ってから、水島はそう言い日向のシュート時にそのままにしてあったボールを持ち、ゴールまで走る。
ダッ!!ガシャン!!!
ゴール付近まで行くと水島はジャンプし、そのままダンクを決めた。
水島の身長は185㎝で、ギリギリダンクできる範囲ではあるが、全身のバネを使って、豪快なダンクを決めた。
「・・・・・・・」
「よっと・・・」
水島のダンクに無言になった日向を尻目に水島は再度ボールを持ち、ドリブルチェンジしながらゴールに近付き、レッグスルーからのクロスオーバーをした後、後ろに跳びながら打つフェイダウェイシュートを放った。シュートを放つまでのドリブルのキレが凄く、そして技一つ一つの動作が素早かった。
ザシュ!
ボールはバックボードに当たることなく綺麗な放物線を描いてゴールのリングを潜った。
(すげぇ・・・一つ一つの動作・フェイントのキレといいシュートの精度といい上手いし無駄が無い。)
日向は水島のプレーに思わず感心してしまった。
「ふぅ・・・こんなものかな。」
「・・・おい。何してんだよ。」
しかしすぐに思考を戻し、近付いてくる水島に対してそう言った。
「ははは。ここ三日はやってないから確認も含めて・・・けど、これも
「ふざけんな!!!!」
日向は信じきれずにそう叫ぶ。
「ホントだよ。小学校からがむしゃらに練習して手に入れた技術だ。他の技術もいろいろ練習して出来るようになった。けどそれでも!レギュラーになれなかった!『キセキの世代』にすべて奪われた!」
「!!!!!」
水島の声を荒げながらの告白に日向は驚き、何も言えなくなった。
「・・・三年間レギュラーでいつも試合に出ていた木吉が羨ましかった。オレなんて一年の時あんなに活躍して、チームに貢献したのに、二年生から『キセキの世代』にスタメンを奪われてオレの目の前は真っ暗になったよ。チームのためとは言え、悔しかった。
『キセキの世代』に心を折られたのはお前らだけじゃないんだ・・・」
そう言い水島は俯いた。
「・・・ならなんで木吉と同じ高校に来たんだよ。」
水島の話を聞いた日向は思ったことを言った。
「ホントそうだな・・・けどな。そうは言ってもオレは木吉は尊敬できるぜ。」
「はぁ?」
しかし、先程の発言とは真逆の事を言い始めた水島に日向は何で?と言う思いで一杯になり、そう言うしかなかった。
「確かに試合に出てたのは羨ましかった。けど『キセキの世代』にこてんぱんにやられても何度でも立ち上がろうとする姿勢ってのは純粋に凄いと思うぜ。」
「・・・・・・けっ。それとこれとは話が別だよ。」
水島の話に日向は変わらず悪態をつきながらそう言った。
「はっはっは!まぁ、流石に何度も学校で絡まれてたりすると木吉やオレが嫌いになるわな(笑)」
「うるせぇ!分かってやっているんだったらやめてくれよ!」
「けど、その分日向に期待しているんだ。」
水島の笑いながらの発言に日向がキレると、水島は真面目な表情になりながらそう言った。
「それは木吉も同じだぜ。いっぺん木吉を信じてみたらどーよ?」
水島は日向に笑いながらそう言う。
「・・・・・・ダァホ。」
「はっはっは!まぁ、そうだな・・・それじゃあな。」
水島は日向の発言に笑いながらそう言い帰っていった。
「・・・・・・」
水島は帰り際になにも言わなかったし、日向もなにも言わなかった。
しかし、水島が帰ってからもバスケットボールを叩く音とゴールにボールが当たる音は止むことはなかった。
「・・・おいおい。マジでやるんかよ。」
「はっはっは。マジも大マジだよ。」
月曜日。いつもは朝礼の時間であるこの時に水島達バスケ部はグランド、ではなく校舎の屋上に集まっていた。
「よーし。相田さんにも紙貼ってきたな。」
「あたぼうよ!」
木吉が水島に対して確認をとり、水島は返事をした。
紙と言うのは勧誘の紙ではなく「バスケ部の本気を見せます!」と書いた紙である。これをリコの机に貼っていったのだ。
因みにリコはコレを見て?マークが頭から出ていたとか・・・
「よーし、コレで後には引けないぜ。」
・・・ごくっ。
木吉がそう言うと皆の唾を飲む音が聞こえた。皆緊張した面持ちであった。
しかも今日は月曜日。全校生徒が校庭に集まり朝礼が行われる日である。
何故月曜日に、屋上に集まったのか、そして何故伊月達が緊張してきているのか。
それは全校生徒の前で今年の目標を大声で叫ぶことだった。流石に無断と言うこともあり、やるか、やらないかの瀬戸際に伊月達は立っていた。
(もう、後には引かない覚悟はできている。と言うかオレには退く理由がないしな。)
しかし、水島は一人そう思っていた。水島目には焦り・緊張の色は見えなかった。もう、腹は括っていた。
「よーし。そんじゃ・・・」
そう言い木吉は屋上に設置されている柵に近づいた。
「(すぅ~・・・)宣誓~!!」
息を吸い、大きな声を出すための準備をしたあと、木吉は大声で今年の目標を叫び始めた。
「おーやりやがった・・・」
「あぁ、見てみろよ。教師達が驚いてやがるぜ♪」
それを見て伊月は小声でそう言ったのに対し、水島は下を見ながら少し笑いそう言った。
「よーし、オレも!」
水島も、後に続くように木吉の隣に行った。
「同じく!バスケ部、1ーE 30席 水島 悠太!チームを日本一に導きます!」
水島も大声で目標を叫んだ。
「オレらもやるしかねぇ。」
「あぁ!」
二人の姿を見た伊月たちも、そう決意し、木吉達の隣に行き同じように叫んだ。水戸部の分は小金井が代わりに言った。下を見てみると流石に不味いと思ったのか、教師が中に入っていったのを確認することが出来た。生徒たちは突然のことにざわめき始めた。
「・・・・・・」
リコは突然のことに開いた口が塞がらなかった。
「はぁ~言ってやったぜぇー」
「そうだな!何だか良い気持ちだ!」
「何か言ってよかったかな?て思う。」
「そうだね。言っちゃったね。」
上から水島・木吉・小金井・伊月で、全校生徒の前で叫んだ水島たちは口々にそう言った。水戸部は言わなかったので、逆に大丈夫かなとそわそわしていた。
「まぁまぁ水戸部くん・・・それで、日向は説得できたのかい?木吉が帰ったあと、水島も会ったそうだけど。」
伊月は水戸部のそわそわぶりに苦笑しながら二人に日向について聞いてみた。木吉はどうやら最後まで言ったけどダメだったそうで、あまり良い顔をしなかった。
「まぁ、コレばっかりはね・・・あいつ次第だからね。」
水島は笑いながらそう言った。
「そうか。」
「ちょっとまった!」
伊月が悲しい表情をしてそう言った瞬間、声と共に屋上の扉が開いた。
「お。」
声の主を見た瞬間、水島は笑顔になりながら一言そう言った。
中学校に使っていたのであろうバッシュをもって現れたのは黒髪に戻した日向だった。
「・・・・気持ちは通じていたようだな2人とも。」
日向の姿を見た伊月は木吉と水島を見ながら先ほどとは違い、穏やかな表情になりそう言った。
「何言っているんだバカヤロー。」
しかし日向は伊月の発言を否定するようにそう言った。
「1つも共感なんてしねーよ。木吉には根っこは一緒とかキレイ事ぬかされて、水島には天才じゃないとか木吉を信じろとか意味わかんねー事言いやがって。第一嫌いな奴をどーやって信じればいいんだよ。それに結果残してたんだったらそれでも恵まれてるだろーが。
日向はずっと言おうと思い溜めていたものを吐き出すように言った。
『・・・・・』
日向の発言を聞いたバスケ部は無言だったが、伊月はやれやれといった表情である。
「これだけは言っておくぞ。オレは
日向がそう言いきると、水島と木吉は目を見開いたがすぐに笑顔になる。
「それに、どれだけお前らが俺に言っても俺はお前達を天才としかみえねぇ。あれだけのプレーは俺には出来ん・・・けど、積み重ねてきた努力の量は俺だって負けてねぇ!俺にも自身をもって言える武器がある!それだけは絶対に負けねぇ。そしていつかお前らを越してやるから覚悟しておけ!」
さらに、日向が水島と木吉に対してそう言い放った。日向は水島たちのことを認めている。水島はいわずと知れた帝光で仮にもレギュラーをはっていただけの実力を持っている。木吉も『無冠の五将』と呼ばれただけあって、実力は折り紙付きだ。けど認めているからこそ、負けたくないという思いから出てきた言葉だった。
「・・・あぁ。俺だって負けない。」
「・・・上等だ。」
木吉は穏やかに、水島は日向の言葉に口角を上げニヤリとしながら言い返した。
日向はそれを聞いた後、木吉たちと同じように屋上から宣言をした。
その後、先生に捕まりその際日向が勢いあまって「日本一にならなかったら全裸で好きな子に告白してやる」という発言を屋上で、しかも全校生徒に聞こえるように言ってしまったので、今後バスケ部はその呪縛と戦いながら日本一を目指していくことをまだ知らない。
その後、バスケ部は先生から酷いお叱りを受けた。
しかし日向がバスケ部に入部し、同時にバスケ部の本気を感じ取ったリコは監督になると言ってくれたので、漸く誠凛高校バスケットボール部が誕生した。
余談だが、屋上での騒動後バスケ部は日向の余計な一言で何日か笑いものになってしまった。流石に皆日向に対して殺意を沸いたと部員は後に語った。
その日のうちに部活の手続きを済まし、翌日の放課後バスケ部はリコの到着を待っていた。
「リコちゃん、メニュー作ってくれるって言ってたけどどんなのになるかな?」
リコの到着を待つ間、水島はバッシュの紐を確かめながら皆に聞いていた。
「さぁな。けど、それなりのメニューは作ってくるだろう。」
「でなきゃ、伊達にジムの娘つとめてねぇよダアホ。」
水島の発言に伊月と日向は水島と同じくバッシュの紐を確かめながらそう言った。
「ねーねーどぉ?昨日水島のオススメバッシュ買ったんだけど。」
そんなときに初心者である小金井は昨日買った白を基調としたバッシュについて聞いていた。
「・・・・(ニコリ)」
「そう!?ありがとう!」
「・・・・あれ会話成立しているのか?」
「知るかダアホ。」
水戸部が微笑んだだけで小金井は言いたい事が分かったらしく、笑顔になった。それを見て木吉は顔を引きつらせながらも率直な感想を述べた。日向はそう言った。
「おまたせ~」
すると、メニューらしき紙を持ったリコが漸く体育館に姿を現した。水島達はリコの元へと向かった。
「メニューで来たからここに貼っておくよ。今日は初日だからカルめにね♥」
リコは満面の笑みでそう言いながらメニューをボードに張った。
「おおう!」
「・・・(ツー)」
「・・・・・」
「おお・・・(けど、上手く作られてるな。)」
「へぇ・・・良い感じだな。」
バスケ部出身の5人はメニューを見た途端(上から伊月・日向・水戸部・木吉・水島)、ある者は口から血を、ある者は開いた口が塞がらなかった。それほど厳しいメニューだったのだ。水島と木吉はメニューを見て感心をしていた。水島に至っては少し笑っているくらいだ。
実際水島の母校、帝光中学校は強豪なだけあって厳しい練習を毎日していた。リコが考えたメニューも厳しい方だが、水島にとっては当たり前と考えていた。
「えっ?そんなに厳しいの?」
「まぁ、厳しいけど大丈夫だと思うよ。」
初心者でメニューの過酷さを知らない小金井の疑問に水島は余裕と言わんばかりに笑顔でそう言った。
『いやいやいや!!!???お前だけだそんな事言えるのは!』
「オ、オウ・・・」
全員からの
「・・・・(さすが、帝光出身の選手。能力は日向君達にに比べてかなり上だわ。木吉くんも同じくらいに・・・)」
昨日、日向から水島の事をきいたリコは水島を親譲りの『読み取る目』で見てそう思った。
(ウチにとっては凄い戦力だけど、何でここに来たのかしらね。)
同時になぜ水島が誠凛高校に来たのかは分からずじまいだった。
その後、バスケ部を作った木吉は代わりに日向をキャプテンに指名し、まわりもそれに賛成したので、日向が泣く泣く主将を務めることになった。
「あーもう!やるぞ。練習!」
日向が顔をひきつらせながらそう言い練習が始まった。
誠凛高校 バスケットボール部は記念すべき第一歩を踏み出した。
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