黒子のバスケ ー影と光を助けた太陽のキセキー 作:フリュード
「・・・やーよ。」
バスケ部の誘いに対してリコはそう一蹴した。
「う・・・」
一蹴されたバスケ部はぐうの声も出ない。
(う~ん、即答だったね・・・)
水島は苦笑しながらそう思った。
小金井もそう思ったのか、先ほどのハイテンションとは違い半泣きで水戸部に対して何か呟いていた。水戸部もそれに同意するように首を縦に振っていた。
「そう言わずに頼む!バスケ部に入ってくれ!!」
(動じないなーこいつも・・・)
しかし木吉はリコの一蹴に動じず、『鉄心』のごとく固い意志を持って再度リコを誘った。伊月はそれを見て呆れてものが言えなかった。
「・・・あのねぇ、話聞いてた?バスケは嫌なの!(それにしてもデカイわね。首が痛い!)」
リコはそう言いながら、木吉の身長が高いためか上を向いている時間が長くなり首が悲鳴をあげていたため、そう悪態をついた。
「でもスポーツが嫌いってことじゃないんでしょ?何で嫌なのか理由が聞きたい。」
リコが中々首を縦に振ってくれないため水島は理由を聞いた。
「・・・んー理由ね。正確に言えば今の同年代、特に中学バスケ全体の雰囲気が気に入らないのよ!」
「・・・・」
水島は無言を貫いた。多分
「今の中学バスケは帝光中学校が他の追随を許さない圧倒的一強状態。高校で活躍する選手もほとんどそのOB。けどそれ自体に文句は無いわ。」
リコはそこで一区切りいれ、また話し始める。
「その周りが皆どこか勝つ事を諦めてる。私はいやなのはそこよ!」
「!!!」
リコのその発言は水島にとって核心を突かれた感じで何も言えなかった。
水島も『才能』に勝つ事を諦めていた一人。水島は『キセキの世代』が次々と才能が開花する中で埋もれていった先輩の中の一人である。
「・・・・」
伊月はその発言が日向のことを言っているようだと感じた。リコが話した事すべてが日向に当てはまるからだ。
日向はリコのトレーニングジムで練習後、トレーニングしていたからリコは日向の事を誰よりも理解している。そのことからこの発言をしたのだろう。
「・・・・」
木吉はなにも言わなかった。
リコの発言はバスケ部に三者三様の反応をもたらした。
「いくつかの部に声を掛けられたけど、一番目指すぐらいの本気じゃなきゃ引き受けるつもりは無いわ。」
リコはそう言い終えた。勧誘に失敗したバスケ部は退散するしか方法は無かった。
「はー・・・取り付く島も無かったな。」
「あとちょっとあの子怖いよー」
勧誘に失敗したバスケ部。伊月と小金井はそう言いため息を一つ吐いた。
「何言ってんだよ。オバケの方がずっと怖いぜ。」バーン
「いやお前が何言ってるんだよ。本当に怖いやつってのはな・・・」
「いや突っ込めよ水島!?」
ここでまさかの木吉の天然発言が飛び出した。水島はそれを突っ込むと思ったら逆に語り合おうとしていたので小金井が代わりに2人に突っ込んだ。
「ははは!まぁオレはホッとしたよ、一緒で。要は中途ハンパは嫌いってことだろう。」
「・・・・!」
「あれ?違った?」
「いや、当たりまくりだよ。」
天然の木吉からは思いもしなかった発言に4人は一瞬無言になったが、木吉の確認に水島が答えた。伊月はそれを見てほほえましい表情を見せた。
「・・・まぁ、どう本気を見せるかは後で考えようぜ。」
「あぁそうだな。後は・・・」
「うーん、それだけだとどうかな・・・」
「ん?」
水島が今後の活動について木吉にそう言い、木吉は今後を考えようとしたら、伊月は思った事を言い始めた。
それは先ほど思っていたリコが言っていた発言一つ一つが日向のことを言っているように聞こえた事だった。
「う~ん、仮にそうだとしたらまず先に・・・とりあえず放課後どっか店に寄って話し合わない?」
伊月が説明した後の水島の発言に4人はそうだなと思ったらしく、放課後どこか食べに行くことを約束した。
日向がリコとゲームセンターで会い、帰っている頃水島達は近くのファーストフード店『マジバーガー』で話をしていた。
「えっ?ポジション?」
すると木吉が聞いた質問に伊月が答え始めた。
「オレが
「水戸部は確か
伊月が日向のポジションと共に紹介した。小金井は水戸部にポジションを聞いたら水戸部はこくりと頷いた。
「じゃあ、オレは
「うんうん。小金井君は今度決めようね。」
「いつの間にそんなポジション出来たんだ!?知らなかった・・・」バーン
「いや、SBってサッカーのポジションだよ木吉(いくらなんでも天然過ぎ・・・)。」
小金井・木吉の発言に伊月・水島がそれぞれ突っ込んだ。水島は木吉の天然ぶりに頭を悩ましていた。
「水島君もPGだっけ?」
伊月が水島に対してポジションを聞いた。水島は「いやぁ・・」と頭をかきながら答えた。
「・・・オレは2年の時に
「あぁ、そうか。『キセキの世代』の主将に・・・」
水島がそう話すと木吉が分かったのかそう言った。
「あっ・・・言わなかった方が良かった?」
「ううん、いいよ。まぁ、さっきああ言ったけど悪く言えば『キセキの世代』にポジション取られたから転向したって事。」
「それはすまなかった・・・」
水島がそう話すと、伊月は申し訳なさそうにそう言い謝った。
「いや良いよ!いい経験が出来たし俺にとっても経験が出来てよかったと思う・・・けどオレはミニバスから慣れしたんだPGに戻る事をまだ諦めてはいない。機会があればまたよろしく。」
「ふっ。望むところ。」バチバチッ!!
水島の挑発に伊月もそう言い返した。もう既に水島と伊月。2人の間に見えない火花が散っていた。木吉はその光景を見てバスケ部を作ってよかったと思っていた。
「・・・ん?ミニバス?水島って小学校からやっていたのか?」
「うん。小2の頃からやってるよ。伊月もさっきは分からなかったけどミニバスの大会で何度か対戦した事あったよね。」
「えっ?あぁ!確か凄い上手い青髪の少年がいたチームと戦った事はあるなぁ。あれ水島だったんだ!」
ここで水島と伊月には意外な接点があった。お互いにミニバスからバスケをプレーしている身であり、以前2人が戦った事があるということが分かった。
「へぇ、意外な接点だな!・・・そういや伊月。日向は中学時代どんなプレーヤーだったんだ?」
意外な接点を知り感心している木吉は伊月に対して日向のプレーについて聞いた。2人は同じ中学校なので聞いてみたかったことらしい。
「・・・正直日向はシューターとして相当だったと思う。それでも勝てなかったのは俺たちチームメイトの力不足が一番大きな原因だよ。」
伊月は日向についてそう説明した。
「SGって事はシュートの精度が凄い良かったって事?」
水島の問いに伊月は「あぁ。」と頷いた。
「なら誘わなきゃいけないでしょ。今このメンバーで高精度シューターなんていないし。」
「そうだな。」
「で、でも嫌がってるんだったらそんな強引じゃなくても・・・」
水島と木吉の会話に小金井がジュースを飲みながらそう言った。
「いや、あいつには入ってもらわなければいけない。だって・・・」
「げっ!?」
木吉がそう言おうとすると、聞きなれた声がしたので皆が振り向くとそこには日向がいた。すると日向はすかさずバスケで鍛えた足を生かし、駆け足でその場を去った。
「はやいな!」
水島がそれを見て思わず叫んだ。
すると、木吉が「会計はまた今度払う!」と言い、急いで店を出て行き日向に絡みに行った。
「ねぇ、アイツそんなに凄いの?」
「木吉があんなに絡むんだ。凄いに決まっているよ。」
小金井の質問に水島がそう答えた。
「まぁ、そうだな。ところで水島は行かなくて良かったのか?」
伊月もそう言ったあと、水島にそう質問した。
「ん~木吉がどうにかするだろ。俺が出る幕じゃないよ。」
水島は伊月の質問にそう答えた。
「ならいっか。そういや水島ってめちゃくちゃ強い中学校にいたんだよね。確か相田さんの話にも出てきた『帝光中学校』だっけ?どんな感じだったの?」
小金井が水島の中学校について聞いてきた。
「うん。強かったな。伊達に全中2連覇していないし、メンバーも『キセキの世代』や俺たち上級生とタレントが揃っていた。けど『キセキの世代』が来てしまったから上級生が控えに回っちゃったけどな。」
水島は思い出しながらそう言った。
「そうか。それは・・・運が悪かったって言うか・・・」
伊月がちょっと悲しそうな表情になった。
「なーにいってんだよ。それが監督の方針だったから仕方が無かったさ。けどやっぱり悔しかった。最後の全中を殆どベンチで眺めるしかなかったのは。」
「水島・・・・・」
水島の発言に伊月は何もいえなかった。
「・・・けどオレはこのままでは終わりたくない。いや、終わらない!ま、バスケバカはバスケバカらしくあがいて見せるってこと。」
「・・・・ふふっ。そうだな(なんともポジティブなところが木吉に似ているな)。」
水島の発言に伊月は少し笑いながらそう言った。同時にそう思った。
「・・・あっ、小金井。」
「何?水島・・・何取り出してるの?」
小金井が水島に呼ばれたので小金井が答えると、水島はかばんの中からノートを取り出した。
「バッシュ。何かほしいのあったらいつでも声かけてな!これでも毎日店のラインナップとかネットで見てるから最新の情報が盛りだくさんだからな!他の3人も相談あったらよろしくな!」
水島は目を輝かせながら小金井に熱弁した。少しクールな風貌の水島だが、こう見えて生粋のシューズマニアで中学校時代練習の休みに自主練習の傍ら、店に繰り出してはシューズの情報をノートに書き込むというなんともいえない事をしていた。けどおかげで帝光中のメンバーからはシューズの事で相談されていたりしていた。
「お、おお。」
水島に圧倒され小金井はそう答えるしか出来なかった。
「・・・・(帝光ってこんなマニアックな連中ばかりなのか?)」
水島の意外な趣味に伊月は水島に対する見方が変わったと後に言った。
この後、水島と同様クールな伊月が実はダジャレ好きという新たな発見をしつつ楽しい時間を過ごした。
一方、公園内のバスケコートでは。
「ふざけんな・・・一本なんてすぐに取ってやる!」
「・・・・・・」
日向がキレながらそう言うが木吉はなにも言わない。
日向VS木吉の1on1が始まろうとしていた・・・・・
「・・・・文字ってこんな感じでいいかな?」
「おう!いいと思うぜ!」
小金井の心配そうな一言に水島は明るくそう答えた。
木吉と日向が1on1をしている頃、4人は勧誘のためのチラシを書いていた。
4人で暫く喋っていると小金井が勧誘のチラシ書こうと言い、あらかじめ持っていたであろう紙を出したのでチラシを書くことになった。
「うん。ここはもっと大きく書いて。」
「うん。」
伊月が文字の太さを指摘し、チラシを書いている小金井が返事をして文字を太くしていく。
「・・・(ハラハラ)。」
「心配すんなって水戸部。大丈夫だ。」
「・・・(コクッ)。」
水島が小金井が失敗しないか心配している水戸部にそう言うと水戸部は相変わらず喋らないが、こくりと頷いたので何が言いたいのかは分かった。
「・・・・よしっ!出来た!」
そして漸くチラシが完成した。書き終わった後小金井が喜びをあらわにした。
「よーし、今日はここまでにしとこか。時間も時間だし。」
「そうだな。」
水島の発言に伊月は頷く。時計を見ると8時を過ぎたあたりだった。
「もうこんな時間。明日これ木吉に見せようよ!」
「そうだな。どんな反応するかな?」
小金井がチラシを見せながらそう言ったのに対し、水島は笑いながらそう言った。
「じゃーねー!!」
「おーう。じゃーなー。」
「じゃあね。」
4人はそれぞれ挨拶をして、それぞれの帰路へとついた。
「さ~て帰ろうかな。」
水島は独り言を言いながら家に向かっていた。
外は春らしく、暖かかった昼間とは変わって風が強くひんやりとしていた。
「・・・・ん?あれは・・・日向?」
近くの公園を通り抜けようとすると、ガシャンとバスケットボールがゴールにあたる音が聞こえるのでもしや木吉か・・・と水島は思い見てみると、練習していたのは日向だったので少し驚いた。
「だーくっそ!!!」
「・・・・・」
いつまでたっても入る気配がしないシュートを水島は無言で眺めていた。けど今度は隠れるというマネはせずに。
「よぉ、日向。」
堂々と日向に声をかけていた。
感想・評価宜しくお願いします!後バスケ描写の際にバスケのルール等に関して何かあれば宜しくお願いします!