黒子のバスケ ー影と光を助けた太陽のキセキー   作:フリュード

10 / 13
今回は番外編です。直接本編とは関係なのでこういう形にします。

原作でもあったあの出来事を僕なりに書いてみました!


番外編 イベリコ豚パン?

1-E

 

「ふわぁ~~~」

水島は授業中にも関わらず、眠たいのか欠伸をした。

 

4月も半ばを過ぎ、インターハイまで一ヶ月を切り練習も熱を帯びてきた。しかしあまりの練習に部員一同毎日寝足りないのか授業中欠伸をする日が続いていた。

 

「こらっ!欠伸をするな水島!罰としてこの問題を解け!」

水島の欠伸を見た教師は注意をしたあと、黒板を叩きながらそう言った。

 

「えっ!?くそ~こっちも鬼のような練習で眠いってのに・・・」

 

「つべこべ言うな!」

 

「分かりましたよ・・・」

頭をぽりぽりかきながら水島は黒板のほうまで行き、解答を書いた。

 

「ぐっ・・・正解だ。」

 

『おおっ!』

教師が苦虫を噛んだ顔でそう言うと周りから歓声があがった。

 

水島は頭が良く、中学時代は生徒会長を務めたほどの頭の良さを持っているのである(とは言え、頭がいい理由というのはPGは戦術を頭に入れる必要があるし、時に自分で組み立てないといけないからという結局はバスケが理由なのだが・・・)。

 

「(くそ~木吉も欠伸しているのに見てない所でしやがって~~~こっちも鬼練習しているのに・・・)」

水島は先生の見ていないところで欠伸をしている木吉を見ながら米神に青筋を立て、歯を食いしばりながらそう思っていたのである。

 

「ふわぁ~~~」

 

「・・・・・・」

とは言え、リコの鬼練習に部員は眠たい気持ちを抑えながら授業を行っていた。

 

 

 

1-A

 

「(う~ん・・・やっぱり体力は必要かな。練習中も欠伸をしている子がいるし・・・)」

リコはノートを取りながら練習中眠たそうにしている部員を思い出し、シャープペンを顎に当て考えていた。

 

「ん?確か今日って・・・そうだ!」

するとリコは入学式時に今日が何の日なのか言っていたのを思い出し、目を輝かせながらある事をひらめいた。

 

 

 

 

それは男たちの数分の中に詰められた争奪戦の始まりであった・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼休み

 

「イベリコ豚パン?」

リコから発せられた言葉に水島は首をかしげながらそう言った。

 

 

4時間目が終わり、いざ弁当を食べようとしていた水島と木吉に「全員屋上集合!」とメールが入ったので、屋上へ行くと部員全員が集まっていた。集まったのを確認したリコは「今日は皆にイベリコ豚パンを買ってきてもらうわ!」と言ったのであった。

 

「そうよ!この学校の購買でナンバーワンのパンと言われてるわ。パン生地の中に世界三大珍味のキャビア・フォアグラ・トリュフが入って2500円よ!」

 

「お、おお・・・・高級素材がずらっと・・・」

 

「すげぇ・・・」

 

「そんなに高級素材入れても美味しいのか・・・?」

パンの具を聞いて部員達は美味そうだと思ったのかジュルリと口元を拭った。そんな中で水島は一人苦笑しながら言う。

 

「はぁ・・・で?今から買いに行けと。」

 

「そーいうコト!じゃ、これお金ね!」

日向がため息を吐き、頭をかきながら言うとリコは笑顔でそう言って日向にお金を渡した。

 

「なら行きますか!」

 

『おう!』

日向がそう言うと部員は声をそろえてそう言い屋上を後にした。これから熱い戦いがあるとは知らずに・・・・

 

「ふふふ・・・・買ってくるかな?もし買ってこなかったら・・・ひひっ・・・」

誰もいない屋上でリコはひとり気味悪い独り言をぶつぶつとつぶやいていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1階~中庭前~

 

「おいおいおい・・・確かにパンの事を聞いたときからいや~な予感がしていたんだが・・・」

 

「なんじゃあこりゃああああ!!!!!」

購買部がいる中庭についた途端、日向は目の前の光景を目にし顔を引くつかせながら苦笑するしかなかったが、水島は冷静になれず某刑事ドラマで使われた名セリフを叫ぶしかなかった。

 

中庭に着いた日向達に待ち受けていたのは・・・・

 

 

 

ギャーーーーーギャーーーーワーーーーー!!!!

全校生徒がいるんじゃないかと言うほどの溢れんばかりの人、人、人・・・・

 

 

「オバちゃん!イベリぐふぉ!?」

 

「俺にもイベリコパンくれぇ!!!!」

 

「私にも頂戴!!!」

 

「私が先に言ったのよ!!!」

 

「私のほうが先だよ!!!」

 

 

ギャーーーー!!!!ワーーーーー!!!!

 

 

 

 

「は、はは・・・」

 

「こ、これは戦争なんや・・・・」

伊月は苦笑する事しか出来ず、反対に小金井は溢れんばかりの人だかりに口調が可笑しくなってしまった。

 

「・・・・・・(あせあせ。)」

 

「はは・・・ワイは大丈夫なんや・・・」

水戸部が必死に小金井を戻そうと努力するが中々口調が直らない。それほど衝撃的だったのだ。

 

「カントクめ!これを知っていながらパンを買いに行かせやがったな!」

日向はこの光景を見てリコの意図を理解し、憤慨する。

 

「え~この喧騒の中掻い潜ってパン買わないと行けないの?」

 

「おいおい見てみろよ。相撲部や柔道部の筋肉ムキムキのやつらがいるぞ。」

ようやく言葉が治った小金井が売店を囲う群衆を見ながらそう言うと、土田が群衆の中にいた柔道部や相撲部の姿を見つける。

 

この群衆に加え、ガタイに自信がある輩どもがいるとなると勝算は限りなく低い。

 

「けど、やってみるしかないんじゃない?」

 

「そうだな。やるしかないんだし。」

そんな中で木吉と水島は笑顔でそう言い放つ。

 

「くっ・・・だぁ!!!とにもかくにも幻のパンを入手しないと俺たちのメニューもヤバくなる。やるぞ!!!」

そんな2人に日向は「楽観的過ぎじゃ!」と怒鳴ろうとしたが、どんなに喚いても買わないとこの後がとても怖いというのに変わりはない。一旦怒鳴るのは置いておき、日向は皆にそう言った。

 

『おう!』

部員は日向の問いにそう答え、戦いの場へと身を投じたのであった・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後・・・・

 

『・・・・・・・』

小金井が制服に靴跡がくっきりと残った状態で倒れていた。他の部員も地面に這いつくばっていた。

 

・・・結果は惨敗であった。やはりこの人ごみに入り込めず外に追いやられたり、途中でこけて不特定多数の生徒に踏みつけられたりと散々な結果に終わった。

 

「・・・・」

水戸部は心配して背中をつんつんと突き、小金井の安否を確認したが「返事が無い、ただの屍のようだ」状態だった。

 

「くっ!!改めて日本の混雑(ラッシュ)を感じたぜ・・・」

日向は目の前の人込みを見て、拳を握り歯を食いしばった。

 

「まずいな・・・」

伊月は背中に冷や汗が流れるのを感じた。脳裏に浮かぶのは地獄の特訓光景・・・・

 

「流石にこれをやった後はきついからな・・・もういっちょ行って来るぜ!」

水島はそう言い、人ごみの中に入る。

 

「んじゃ、おれも行くか。」

木吉も水島に続いて人ごみに向かう。実を言うとこの2人が一番ゴールの近くまで行った2人なのだ。

 

「頼むぞ・・・」

伊月は2人を見て祈るようにそう呟いた。

 

 

 

 

「あいよ~すまんね。」

水島は身体能力を活かして人ごみに戻されないようにすいすいと進んでいった。

 

「おっ、すまんな。ん?君もすまんな。」

木吉も同様に巨体を生かして人ごみの中を進んでいく。

 

そうして順調に進んでいき、遂にカウンター付近まで来た2人だが、ここで壁が立ちふさがる。なんとカウンターが相撲部や柔道部のもので占領されていたのだ。

 

「おいおい、カウンター付近柔道部や相撲部で占領されているじゃねェか。」

 

「これはイカンなぁ・・・」

2人はそれを見て呆れるようにそう言った。

 

「おいばあちゃん、俺に一個くれよ。」

 

「あんたはさっき買ったじゃないか!帰りなさい!」

 

「いいじゃねぇかよ~スペシャルパン欲しいんだよ。頼む!」

 

「だめだめ!スペシャルパンは1人1個って決まっているんだよ。」

先ほどからその押し問答が続いている。明らかにマナー違反である。他の生徒も買いたいのにこれでは迷惑である。

 

「・・・はぁ、ちょっと行って来るわ。」

 

「うん。頼んだ!お前の眼光でどかしてきて。」

溜息を一つ吐き、水島はそう言い木吉の方を見た。木吉は人ごみの中でもいつもと変わらず木吉スマイルを水島に見せた。

 

「お前行く気ないだろダアホ!」

 

「日向の真似しないでよ~・・・」

水島は目を三角にし日向の真似をして怒ると木吉は苦笑した。

 

「ふん・・・」

水島はあきれた表情を一瞬見せると人ごみをかき分けカウンターの方へと足を運ぶ。

 

「おいアンタ。」

 

「あ、なんだ。」

水島は声を掛けると押し問答をしていた相撲部は鋭い眼光を水島に向けた。

 

「何だその目。あんた等の方が明らかにマナー違反を冒しているのに悪びれも無く買おうとしやがって・・・どけ。」

水島はそう言い相撲部に負けじと睨んだ。その眼光は幾多の戦いを乗り越えて来た戦士の目と同様だった。

 

「(ぞくっ!!!)・・・あ、ああ。分かった。退くよ。おいお前ら行くぞ。」

水島の眼光に負けた相撲部は部員を引き連れカウンターを後にした。水島は一気に人ごみがなだれてくる前にスペシャルパンを1個買う事が出来た。

 

 

 

 

「よくやった水島!」

水島がパンを見せながら部員のところへと行くと日向はガッツポーズをする。

 

「いや~お前らがいてホント良かったよ~」

 

「・・・・(こくこく。)」

 

「ありがとう2人とも。」

 

「怪我なく帰って来れて良かったよ。」

 

『いや~それほどでも。』

部員からの祝福の言葉に2人は照れながら頭を掻きそう言った。

 

「・・・っておい!木吉!お前何もしてねェじゃねえかよ!」

 

「ん?いやしたじゃないか。カウンターまで行ったこと。」

 

「結局買ったの俺じゃねェかよ!」

 

「いや俺もカウンターまで行ったから俺も褒められる理由はある!」

 

「はぁ!?ふざけるな!」

そのまま、2人の喧嘩は日向が怒鳴り込むまで続いたという。

 

 

 

「いやぁ~~~疲れたなぁ。」

昼休み、屋上で日向ぼっこをしながらそう言った。

 

「そうだな・・・だけどパン美味かったからいいんじゃないか?」

 

「おれも!アレは美味かったなぁ!!!」

木吉は微笑みながらそう言うと小金井は目を輝かせながら拳を握りそう言った。

 

パンを買った後、部員全員で分けて食べたのだが、珍味詰め込んでいるように見えてソースなど絶妙にマッチングされていてとても美味しかった。

 

(パンとして成立するのかなとは思ったけどとても旨かったな。)

水島も食べた時の事を思い出すだけで涎が出そうになるのを我慢した。

 

「・・・!そうだ!来年入って来る1年にも同じ苦痛味あわせないとな・・・くっくっく。」

 

「日向、顔が黒いよ。」

日向は良い事を思いついたのか、いつになく黒い笑顔をしながらそう呟く。伊月もそれには苦笑するとともにそれもそうだなという黒い一面も出かかっていた。

 

「よしっ!みんな!お疲れ様!これからこの行事は毎年恒例にしていくわよ!」

 

「・・・よしっ!」

 

「おいおい・・・ガッツポーズすんな日向。」

リコはこの争奪戦を恒例にしていくと宣言した途端、日向がガッツポーズしたので水島は呆れながら言う。

 

「よしっ!この調子で放課後も頼むわよ!」

 

『オウ!』

リコがそう言うとみんなが口を揃えて返事をした。

 

この件を境にバスケ部は一層絆が深まった・・・と思うのであった。

 




どうでしたか?感想・要望等お待ちしております!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。