黒子のバスケ ー影と光を助けた太陽のキセキー   作:フリュード

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見切り発車ですが、宜しくお願いします‼

5月11日 修正しました。確かもう黒子達が二年の時に灰崎辞めているので、間違えていました❗


プロローグ

帝光中学校バスケットボール部。部員も100を超え、全中優勝回数も歴代最多といわれている最強の中学校である。その帝光中には『キセキの世代』と呼ばれる者達がいた。その者達は1年から試合に出続け、後に全中3連覇の偉業を成し遂げる事になるのだが、そんな『キセキの世代』の上の代にある『無冠の五将』と呼ばれる選手達にも『キセキの世代』にも入らなかった選手が帝光中にいた。

 

その者は誰よりもバスケを愛し、『キセキの世代』に負けないように一生懸命努力して、他校から『闘将』と呼ばれから恐れられていた。これは『才能』と戦い続けた男の話である。

 

 

 

 

 

 

 

全国中学校バスケットボール選手権 準決勝

 

帝光中111 ― 47照栄中

 

全中準決勝、第4クォーターもあと1分で終わりもう帝光中の勝利が確実であろうとこの試合誰もが思っていた。

 

帝光中も同じ思いであった者がいた。

 

「もう勝ちじゃん~」

帝光中の(センター)紫原(むらさきばら) (あつし)がそう愚痴っていた。

 

「もうオレも20点以上取ったし、いいだろ。」

帝光中のエースである青峰(あおみね) 大輝(だいき)もそう言い悪態をついた。

 

「何を言っている。試合中だぞ。」

PGで、下級生ながら主将を務めている赤司(あかし) 征十郎(せいじゅうろう)は彼らに注意をするが、一向に治る気配が無い。

 

「・・・ふん。この点差であれ、手を抜かず人事を尽くす事も大事なのだよ。」

SGの緑間(みどりま) 真太郎(しんたろう)も赤司と同じ思いなのか愚痴をこぼした。

 

三者三様の思いを持っているが、この4人が『キセキの世代』と呼ばれている2年生である。

 

しかし、4人とも勝つ事が当たり前のような感じで味方を注意はしているが、相手のことなど気にしてはいなかった。

 

それは帝光中バスケ部のスローガンである『百戦百勝』の精神に基づき、いかなる場合でも勝たなければいけないというプレッシャーと戦いながら帝光中は試合に勝ち続けているのだ。

 

(・・・・・)

しかし、2年の他に一人唯一の3年で帝光中のユニフォームをつけながらこの試合勝っていても嬉しくない者がいた。

 

『9』のユニフォームをつけた青いロングヘアーにスポーツ型のヘアゴムを着け、ちょっとつり目のせいかクールそうな少年でこの試合SFで出場していた水島(みずしま) 悠太(ゆうた)である。

 

「どうかしましたか?水島さん。」

 

「あぁ?別に何でもねーよ征十郎。とりあえず最後まで手を抜かずに攻め続けるぞ。後であいつらにもお灸をすえておかないとな。」

心配したのか、水島の方に近づき話しかけた赤司に対して水島は怒りの形相をしながらそう言った。

 

「ははは・・・まぁほどほどにしてくださいね。」

赤司は水島の様子に苦笑しながらも「次のOFは水島さん中心で行きますからお願いします」と言い、自分の位置へと戻った。

 

「・・・お互い頑張りましょう。」

緑間も言葉少なくそう水島に言い、自分の位置へと戻っていった。

 

「・・・たく。あんな後輩を持つと嫌になるよ。ま、心強いがな。」

そう言い水島は試合に集中すべく相手のほうを見据えた。

 

 

 

 

 

 

「水島さん!!」

オレはPGの赤司からパスを貰い、目の前にいる相手をレッグスルーから右側にドライブを仕掛け、インサイドに切り込む。

 

・・・・しかし相手は仕掛けたオレに対してその場で動く事は無かった。他の相手の選手たちも目から闘争心が消えうせて、やる気が無い状態であった。

 

(・・・確かにこの点差じゃ、やる気が出ないのも分かるが・・・あれだけ『キセキの世代』にコケにされてなんとも思っていないのか・・・)

後2分でこの点差。もうやる気が出ないのかもしれない。その相手の様子に水島はイライラしていた。これが、勝ってても嬉しくない原因である。

 

これまでに『キセキの世代』である2年生は、時折バスケをバカにしているような行動が目立ち始め、目も当てられない状態である。

 

青峰の観客から見ても分かるくらいにだらけている事。紫原も同様の態度を見せていて、実質水島・赤司・緑間だけでプレーをしているような感じだ。

 

「それ以上行かせない!」

しかし、一人だけ諦めてはいない者がいた。照栄中の(センター)で主将を務め、先ほど紫原にやられていたオレと同じ3年の木吉(きよし) 鉄平(てっぺい)だった。

 

「・・・アンタは他のやつらのようにやる気が失ってないのだな。」

オレは木吉にそう言った。対面する二人は額からあふれ出る汗が止まらないでいた。

 

しかし先ほど木吉は紫原に何か言われていた。オレはなんていっているのかは聞こえなかったが、木吉にとってはよくない事と言うのは分かりきった事だ。それでもこの気持ちの持ちようは・・・

 

「そういうお前こそ他のやつらのように手を抜いたりしないんだな。そういうやつがいてこっちは逆に嬉しいよ。」

 

「何言っているんだバカタレ。オレは『キセキの世代』とはちげーよ。」

 

「・・・そうなのか?」バーン

 

「(こいつ、天然?)」

この試合何度もマッチアップした2人は互いに寄せ付けないOFとDFをしながらも会話を交わしていた。この瞬間だけこの2人のためにあるような、そのような感覚に陥る。しかし時間は一刻と過ぎていき、オフェンスタイムも15秒をを切った。

 

「・・・けどお前はオレと似た雰囲気を持っているな。誰よりも練習して、今オレはここにいる。見たいな感じだな。」

 

「!!!・・・そうか。そうだな。」

DFをする木吉の言葉にオレは驚きながらも確かにそうかと納得した。

 

木吉はオレの一つ下の『キセキの世代』の紫原とのセンター対決に負けながらもすぐに切り替え、今オレと対決をしている。

 

「ま、誰も守る事が出来なかったのがな・・・」

しかし、木吉は自虐的にそう本音をこぼした。

 

「・・・・・(本当に凄いわ。あれだけやられても立ち向かう精神は・・・純粋に凄いと思う。)」

紫原との対決に負け、挙句の果てに紫原が対決に負け、地面に這い蹲る木吉に対して放った発言を耳にしても尚、こうして水島と対面しているが、何も感じないわけではない。時折唇を噛み締める仕草を見せるが、それでも一生懸命プレーをしている木吉に水島は尊敬の念を持った。

 

それは水島にも言えることであった。

 

『キセキの世代』である2年生が先発(スターター)を占めている中で唯一の3年生である水島は『キセキの世代』に負けないため、誰よりもバスケを愛し、誰よりも努力をして、1年から先発メンバーとして優勝に貢献してきた。しかしこの大会から水島と同じポジションで頭角を現し始めた黄瀬(きせ) 涼太(りょうた)の存在や、『キセキの世代中心』のチーム方針によりベンチスタートになる事が多くなり始めたので、オレはそれが悔しかった。

 

やはり『才能』には負けるのか。でもそれは嫌だったからここまで腐らずに練習を続け、全中の準決勝で漸く先発メンバーに選ばれた。

 

 

いろいろ苦労しながらもここまで上り詰めた水島にとって木吉の気持ちは痛いほど分かった。

 

 

 

「・・・ま、またいつか一緒にバスケやろうや。水島。」

 

「・・・・そうだな。またやろうぜ木吉。」

木吉の問いにオレはそう答え、フリーで走ってきた青峰に気付き木吉をオレと同じ方向へと寄せた後に背面からパスをし、青峰はそれをダンクシュートで決めた。

 

 

 

・・・結局その後、113-47で帝光中が圧勝し、そのまま決勝でも帝光中が苦戦の末勝利し、優勝したことで全中は幕を下ろし3年は引退となった。

 

が、この後、木吉と水島が同じユニフォームを着てプレーするなど誰も知るものはいない・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝光中学校 図書室

 

「・・・・くっ(汗)」

全中が終わり、3年は引退して次のステップである高校入試に向けて日々勉強の日々を送っていた。俺もそのうちの一人だ。放課後オレは一人で図書室で勉強していた。

 

外から運動部の掛け声が聞こえてくる。

 

だが、オレは一つの問題に陥っていたために少し汗をかいていた。それは高校が決まらないのだ。

 

バスケのことに集中しすぎて、進路のことを考えずにいたためこのような結果になってしまったのだ。勉強もしたい。けど進路を考えないと全てが始まらない。

 

「けど、やっぱり『キセキの世代』との差ってここでも出てくるのかな・・・」

オレはそう言い自嘲気味に笑った。進路の事もそうだが、後もう一つの事がオレの気分をどん底へと落としていた。

 

 

 

 

高校からのお誘いが来なかったのだ。

 

その事には俺は目の前が真っ暗になった。

 

オレは先ほども言ったが頑張って中学3年間、いや小学校のころから一生懸命頑張って努力して来た。今回の全中も自分なりに頑張ってきた。

 

フェイダウェイ・フック・ダブルクラッチやドリブル技術、パスセンス・・・血反吐を吐きながらも、しっかりとものにした。誰にも負けないくらい練習をした。

 

けど全中のことを思い出すと、初戦から決勝まで先発した試合はたったの1試合。準決勝で木吉率いる照栄中と戦ったときだけだ。他は一つ下の黄瀬の方が出ていた回数が多かった。それでもたった一試合だが自分なりに頑張ったつもりだったのに、それでも駄目だった。

 

『すまない水島。君宛への誘いは一校とも来なかった。』

 

「ぐっ・・・うっ・・・くそっ!」

 

・・・ガンッ!!!

監督からそう言われたことを思い出し、悔しさのあまり机に拳を叩きつけた。

 

それに、この前月バス(月刊バスケットボール)を読んだのだが、戦った木吉を含め、実渕(みぶち) 玲央(れお)葉山(はやま) 小太郎(こたろう)花宮(はなみや) (まこと)根武谷(ねぶや) 永吉(えいきち)の5人を『無冠の五将』と呼ばれていた。が、そこにオレの名前は無かった。

 

『キセキの世代』でも一つ学年が違うだけで省かれた。

 

 

 

 

・・・・・ふざけるな。全中で『無冠の五将』を見たが、オレだって根武谷たちにも負けない実力を持っていると自負できる。現に木吉には勝った。なのに・・・なのに!!

 

ゴン!!!!

 

悔しさが抑え切れなくて、再度机を叩いた。強く叩いた所為か机には拳から出た血がにじみ出ていた。

 

 

「ううっ・・・くそっ・・・」

悔しくて悔しくて・・・・オレは泣いた。図書室というのを忘れて。俺だけだったのでそれはそれで運が良かったのかもしれない。

 

 

 

無音の図書室の中は水島の泣き声がむなしく響いていた。

 

 

 

 

 

「・・・・・」

その様子を主将の赤司は外から見ていた。

 

『主将か~おめっとさん。征十郎!』

 

『少しは笑顔見せようぜ!楽しくバスケをしようぜ!』

脳裏に浮かぶのは水島の笑顔。水島とはポジションが同じで、小学校からの知り合いであり、赤司の事情を知っている数少ない友人であり、ライバルだった。

 

ポジションを奪われても水島は笑顔で赤司を褒めてくれた。褒められて赤司は嬉しい気持ちになったのを覚えている。

 

(・・・・・哀れだ。)

心の中ではそう吐き捨てながらも、どこか寂しげな表情をして赤司はその場を去った。これから起こる異変に気付かず・・・

 

 

そうして水島は卒業までの間、バスケ部に顔を出す事は無かった・・・

 

だが、運命的な再会があることなど知るよしもない・・・


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