遊戯王 就活生の現実逃避録(物理)   作:〇坊主

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6ターン目『スタートライン』

「おはよう」

『おはようございます。マスター。』

『疲れは取れたようで何よりですわ。』

 

 起きて二人に挨拶をする。

 しかし、周りには誰もいないのに返答が帰ってきた。

 それは彼には精霊が憑いているからだ。

 

《桜姫タレイア》と《紅姫チルビメ》

 

 こちらの世界にやってきてから出合った精霊。

 向こうの世界では自分のフェイバリットとして活躍していたカード達。

 残りの二人も憑いているらしいがまだ出会ったことはない。

 いずれ会えるだろうからあまり深くは考えないようにしておく。

 

 朝起きたら布団を畳んで直し、顔を洗って歯を磨くに限る。

 これは衛生面のためにも重要なことだ。

 

 今日はどこを回るか――なんて考えながら階段を降りた。

 

 

 

 

 

 

 歯みがきを終わらせて飲み物をとろうと部屋に入ると、萎れたトマトがいた。

 察しが宜しくない自分ですら判るほどの萎れようだ。

 水でもかけたら治るかと思いつつも声をかけてみることにする。

 

「おはよう、遊矢。大丈夫か?」

「...あぁ、九条。大丈夫...じゃ、ないかもしれないな...」

「まぁ、大丈夫ならそんな暗くはないわな。」

 

 前座るぞと伝えて、ソファーに座る。

 少しの間水を飲みつつもどうしようかと考えた。

 本来なら修造さんがカウンセリングを行ったはずだ。

 しかし今出掛けているのか、いる気配はなかった。

 

「昨日のことか?」

「っっ!」

 

 図星か。まぁ当然だな。

 目の前でずっとため息つかれちゃあこちらも堪ったものではないのでどうにかしよう。

 

「確かに昨日の件は驚いたよ。でもそれはいつかは起こりうることだ。」

「......」

「カードを制作する側の企業にとっては新しい召喚方法が生まれることは新たな市場が生まれるに等しいからな。今後、ペンデュラムは世界に広がっていくだろうな。」

「...っ!...んだよ...」

「ん?」

「なんだよ!何が言いたいんだよ!」

 

「!...遊矢...」

 

 入ってきた柚子は俺の胸ぐらを掴んで怒る遊矢に困惑している。

 後から入ってきた権現坂も同じだ。

 

「遅かれ早かれ、ペンデュラムは遊矢。お前だけのでは無くなるってことだよ。」

 

 事実をはっきり伝えておく。

 元々説得なんてもの得意じゃない。

 残酷かもしれないがこの状況で宥めるほうが無理だと言うものだ。

 

「そもそもなんだ?ペンデュラムを産み出したのが自分だから誰も使わない。使えるはずがない。なんて本気で思ってたのか?」

「ッ!?」

「その考えは甘い。甘ちゃんが思考を停止しただけに過ぎない。そもそも人間ってのは真似をして進化し、成長しているんだ。単純な仕組みならば真似するのは当然だろ?」

「ふざけるな!ペンデュラムは...俺だけの...」

「俺だけの?人の事を言えるわけじゃないが、流石に社会を嘗めすぎだ。他人がペンデュラムを使った程度で落ち込むようじゃエンタメデュエルなんて雲をつかむよりも馬鹿なことだ。」

 

「ちょっと!それは言いすぎじゃないの!?」

「待て、柚子。口出し無用だ。」

 

 柚子を権現坂が止める。

 流石ゴンちゃん。話がわかる。

 

「権現坂!なんで!」

「誰かが言わなければいけないこと、それはわかっているはずだ。九条は汚れ役を買って出ただけ。その役を出来ない俺らは見守ることしか今は出来ん。」

「......ッ。」

 

「・・・くっ。」

「そうやってまた後ろを向いて目を背けるのか?」

 

 ゴーグルをかけようとする遊矢を挑発する。

 

「ペンデュラムはいずれ世界中で使われるようになる。これは確実だろう。しかし遊矢、お前はそのままでいいのか?」

「どういうことだよ!」

「ペンデュラムを生み出した創始者として、お前はみんなを導いていく存在になっていかなければならないはずだ。なのに今のお前はどうだ?みんなを導いていけるか?デュエルでみんなを笑顔に出来ると言えるか?」

「デュエルで・・・笑顔を?」

「今、遊矢自身がやるべきことは落ち込んで引きこもることじゃない。周りがペンデュラムを使い始めても笑顔を忘れずに、負けじと自分の腕を磨き続けることだ。周りと競い合い、高めあうことができる。それがデュエルだ。ペンデュラムという扉を最初に開いたものとして、後から続く者たちの模範となっていくべきじゃないか?」

「俺が・・・みんなの模範に・・・「それにさ」・・・?」

 

 遊矢がすこしずつだが落ち着いてきたようだ。

 こちらとしても説教じみたことはさっさと終わらせるに限る。柄じゃない。

 

「みんなが笑顔になるデュエルを自分で築きあげていくなんて、かなりワクワクするだろ?」

 

 この世界でデュエルは戦争の道具にもなり得る存在だ。

 だが道具としてではなく、娯楽として、一種のスポーツとしてデュエルは、遊戯王は成り立っていくべきだと思う。

 だからこそ、ペンデュラムを生み出した彼にはエンタメデュエリストを目指すものとして折れてもらっては困るのだ。

 たった1週間程度しか自分は遊勝塾の方々と関っていないが、そう思えるぐらいには影響を受けているのかもしれない。

 

(・・・この世界でやりたいこと。少しは見えてきたかもな・・・。)

 

 そう思いながら、遊矢に言葉をかける。

 

 

 

 

 

「デュエルしようぜ――――。」

 

 

 

 

 

 

   ◇◆◇◆

 

 

 

 

『準備は出来たか?二人共。』

「権現坂、頼んだ。」

「いつでもどぞー。」

 

 権現坂に頼んでソリット・ヴィジョン・システムを動かしてもらう。

 まだ朝食前だが問題はない。今は遊矢とのデュエルをやりきることが大事だろう。

 

 

『ではいくぞ。アクションフィールドオン!

 

 フィールド魔法 マジカル・ブロードウェイ 発動!』

 

 

 フィールドが発動し、辺りがネオンでコーディネートされた明るい町並みが浮かび上がる。

 遊矢の父親・榊 遊勝が最も得意としていたものだったはずだ。

 このタイミングでこれを選ぶなんて、流石ゴンちゃん。空気も読める。

 

「遊矢兄ちゃんと聡兄ちゃんがデュエル!?」

「しびれるぅ~!」

 

 いつの間にかちびっ子達が集まっていたようだ。

 素良や塾長はいないようだが。

 

 

「いくぞ!戦いの殿堂に集いし、デュエリスト達が!」

 

 

「モンスターと共に地を蹴り、宙を舞い!」

 

 

「フィールド内を駆け巡る!」

 

 

「見よ!」「これぞ!」

 

 

「「デュエルの最強進化系!」」

 

 

『『アクショーン!』』

 

 

 

 

「「デュエル!!」」

 

 

 

 

聡  LP:4000

    VS

遊矢 LP:4000

 

 

「先行は貰っておこうか。俺のターン。俺はモンスターをセット。更にカードを2枚セットしてターンエンド。」

 

聡 手札5→2

 

「俺のターン、ドロー!俺は《EM(エンタメイト)フレンドンキー》を召喚!」

 

《EMフレンドンキー》

星3 効果モンスター

ATK:1600

 

「この召喚に成功したとき、手札からレベル4以下のEMモンスターを1体特殊召喚することができる。《EMウィップ・バイパー》を特殊召喚!」

 

《EMウィップ・バイパー》

星4 効果モンスター

ATK:1700

 

「バトルだ!フレンドンキーでセットモンスターに攻撃!」

「セットモンスターは《H・C(ヒロイック チャレンジャー)サウザント・ブレード》だ。そのまま破壊される。」

「続いてウィップ・バイパーでダイレクトアタック!」

「くっ・・・」

 

聡 LP:4000→2300

 

「この瞬間墓地の《H・Cサウザント・ブレード》の効果を発動。」

「このタイミングで墓地からモンスター効果だって!?」

「YES!このカードが墓地に存在し、戦闘・効果でダメージを受けたときに発動できる。攻撃表示で特殊召喚する。勿論1ターンに1回の誓約はあるけどな。」

「すごいな。俺はカードを1枚セット。ターンエンドだ。」

 

遊矢 手札6→3

 

「俺のターン、ドロー!」

 

聡 手札2→3

 

「俺は《ゴブリンドバーグ》を召喚!」

 

《ゴブリンドバーグ》

星4 効果モンスター

ATK:1400

 

「このカードが召喚に成功したとき、手札からレベル4以下のモンスター1体を特殊召喚でき、効果の使用後このカードは守備表示になる。が、俺はその効果にチェーンし、手札の《カゲトカゲ》の効果を発動!このカードはレベル4モンスターの召喚に成功したとき、手札から特殊召喚することが出来る。その後《ゴブリンドバーグ》の効果を適用。手札から《H・Cエクストラ・ソード》を特殊召喚。」

 

《カゲトカゲ》

星4 効果モンスター

DEF:1500

 

《H・Cエクストラ・ソード》

星4 効果モンスター

ATK:1000

 

「場にモンスターが4体も!」

「しびれるぅ~!」

 

「さて、遊矢。一度この手の相手と戦ったことがあるなら、次はどう動くかわかるだろ?」

「フィールド上に同じレベルのモンスター・・・まさか、エクシーズ!?」

「Exactly。そのとおりでございます。俺はレベル4の《ゴブリンドバーグ》と《H・Cサウザンド・ブレード》でオーバーレイ!

 

 2体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!

 

 邪魔するものは一刀両断!切れぬものなどあんまりない!

 

 現れよ!ランク4《HーC(ヒロイック チャンピオン)エクスカリバー》!」

 

《H-Cエクスカリバー》

ランク4 エクシーズ/効果

ATK:2000

 

「エクシーズ召喚!?」

「しびれるぅ!」

「前に使っていたデッキではないのか!?」

 

 エクシーズ召喚に外野が驚く。

 そういえばここじゃあエクシーズ自体が珍しいんだった。

 

「このデッキは見ての通りエクシーズデッキだ。気を抜いてると一瞬で終わるから気をつけなよ!俺はエクスカリバーの効果を発動!オーバーレイ・ユニットを二つ使い、相手ターン終了時まで攻撃力を元々の倍にする!」

 

《H-Cエクスカリバー》

ATK:2000→4000

 

「攻撃力4000!?」

「なんて攻撃力なの!?」

 

「更に俺は《H・Cエクストラ・ソード》と《カゲトカゲ》でオーバーレイ!

 

 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!

 

 眼前の障害をも、二刀を持って切り伏せよ!

 

 現れよ!ランク4《ガガガザムライ》!」

 

《ガガガザムライ》

ランク4 エクシーズ/効果

ATK:1900

 

「こいつの召喚に成功したとき素材となった《H・Cエクストラソード》の効果を発動。こいつを素材としたエクシーズモンスターの攻撃力を1000アップする。」

 

《ガガガザムライ》

ATK:1900→2900

 

「更にオーバーレイユニットを使い、効果を発動!こいつは自分フィールドの「ガガガ」モンスター1体を対象として発動できる。このターン、そのモンスターは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃できる。よって自身を選択し、2回攻撃を可能にさせる。」

 

「攻撃力2900でしかも2回攻撃だって!?」

「この攻撃が通ればワンターンキルじゃないか!」

 

「さぁ、バトルだ。《ガガガザムライ》で《EMフレンドンキー》に攻撃!」

「ぐあぁぁあ!」

 

遊矢 LP:4000→2700

 

「続いてそのまま《EMウィップ・バイパー》に攻撃だ!」

「うわぁああ!?」

 

遊矢 LP:2700→1500

 

「エクスカリバーでダイレクトアタック!“必殺神剣”!」

「それは喰らえない!トラップカード発動!《EMコール》!直接攻撃宣言時にその攻撃モンスター1体を対象に発動!その攻撃を無効にし、守備力の合計が対象のモンスターの攻撃力以下となるように、デッキから<EM>モンスターを2体まで手札に加える。俺は《EMソード・フィッシュ》と《EMスパイク・イーグル》を手札に加える。」

 

遊矢 手札3→5

 

「倒しきれなかったか。俺はこれでターンエンド。」

「俺の、ターン!」

 

遊矢 手札5→6

 

「聡、俺にはまだペンデュラムのその先は見えない。周りの人のようにエクシーズや融合召喚も使えない。だけど、俺にはペンデュラムがある。」

「そのペンデュラムも自分のものだけでは無くなるんだぞ?」

「わかってる。だけど、前のストロング石島とのデュエル前にも聡は言ってくれた。怖がって縮こまっていては何も出来ない。勝ちたいなら、勇気を持って前に出ろって!父さんが俺に残してくれたもののためにも、俺を支えてくれるみんなのためにも!俺は前に進む!」

 

 いつになく真剣な表情になり、語りかける。

 これで山は越えたかな。

 将来のエンタメデュエリストがこんなところで折れてる暇はないよな。

 

「いやっほう!」

 

 跳躍し、高台を飛び移る。そしてビルの屋上にある(アクション)カードを手にした。

 

「レディース アンド ジェントルメン!

 

 これより本家本元 榊 遊矢のエンタメデュエルをご覧いただきます!」

 

 気が弱く、閉じこもっていた彼はもういない。

 今、聡の目の前にいるのはエンタメデュエルを行うペンデュラムの伝道師 榊 遊矢だ。

 

「・・・もう大丈夫そうだな。遊矢!」

「あぁ!もう俺は逃げたりしない!俺のデュエルを貫いてみせる!」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「遊矢はもう大丈夫のようだな。」

「どうやらそうみたいだね。」

 

 二人のやり取りを見て、権現坂と柚子は胸を撫で下ろした。

 昨日の出来事の後、遊矢はそのまま一人で帰ってしまったために何も言えなかったのだ。

 

 翌朝激昂している遊矢と挑発する聡を見たときは遊勝塾にとって大きな問題を生むかもしれないと思ってしまった。

 LDSとの衝突だけでなく、遊矢と似た人物のこともあり、柚子は不安を感じていたのだ。

 

 しかし、心配要らないようだ。

 

「どうやら、やっと立てたようだね。遊矢は。」

「母君殿!」

「どうしてここに?」

「昨日と今朝の遊矢の様子を見てたら心配になるのが当然だろう?ま、杞憂になったようだけどね。」

 

 遊矢の母親 榊 洋子は昨日から口には出さないが遊矢を心配していたのだ。

 だが自分の若い頃もやんちゃをしていた時期がある身として、下手に干渉せずに周りの環境に任せてみることにしたのだ。

 

「やっぱり若い子達は悩むよりも進んでいくほうがいい。悩むのは私みたいな大人の役割だからね。だから私は修造君がデュエルをしているものだと思っていたんだけど、修造君はどこにいったの?」

「え?お父さんは今朝からやるべきことがあるって、どこかに出かけちゃいましたけど・・・」

「そうなの?・・・まったく相変わらず不器用ね、修造君は。」

 

 どこか懐かしむように洋子がデュエルをしている二人を見つめる。

 かつてレディースの総長をしていた頃、仲間同士で競い合い、そして気持ちをぶつけ合ったものだ。 

 

「あの人との出会いを、思い出すね・・・」

「え?何か言いました?」

「いや、独り言さ。私の出る幕じゃなさそうだし、私は帰ることにするよ。」

 

(二人の今後活躍・・・楽しみにしてるよ)

 

 そう願いつつ、洋子は部屋を出た。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「まず俺はアクションマジック《イリュージョン・ダンス》を発動!フィールド上のモンスターを全て守備表示にする!そしてスケール1の《星読みの魔術師》とスケール8の《時読みの魔術師》で、ペンデュラムスケールをセッティング!これでレベル2から7までのモンスターが同時に召喚可能・・・だけど、先に俺は《EMソード・フィッシュ》を召喚!このカードの召喚・特殊召喚に成功したことで効果を発動!相手フィールド上のすべてのモンスターの攻撃力・守備力を600ポイントダウンさせる!」

 

《H・Cエクスカリバー》

ATK:4000→3400

DEF:2000→1400

 

《ガガガザムライ》

ATK:2900→2300

DEF:1600→1000

 

 

「そして俺はペンデュラム召喚!

 

 来い!俺のモンスター達よ!

 

 《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》《EMスパイク・イーグル》!」

 

《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》

星7 効果/ペンデュラム

ATK:2500

 

《EMスパイク・イーグル》

星2 効果

ATK:900

 

「《EMソード・フィッシュ》の効果!自分モンスターの特殊召喚に成功した場合、相手フィールド全てのモンスターの攻撃力・守備力を600ポイントダウンさせることができる。」

 

《H・Cエクスカリバー》

ATK:2800

DEF:800

 

《ガガガザムライ》

ATK:1700

DEF:400

 

「そして《EMスパイク・イーグル》のモンスター効果!1ターンに1度、自分フィールドの表側表示モンスター1体に貫通効果を与える!俺は《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を選択!」

「うげ・・・貫通か・・・それにこの盤面・・・」

 

 時読みと星読みの魔術師が(ペンデュラム)スケールに存在するため、Pモンスターが攻撃する時に魔法・罠共に発動が出来ない。

 つまり伏せているカードは使えないわけだ。

 

「いくぞ、バトルだ!オッドアイズで《ガガガザムライ》に攻撃!“螺旋のストライクバースト”!!この瞬間、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》のモンスター効果を発動!相手のモンスターと戦闘を行う場合、相手に与える先頭ダメージは2倍になる!」

 

 ガガガザムライの防御力との差は2100。

 それの倍、つまりこれだけで4200のワンショットが完成した。

 そして俺はこの攻撃を防げない。

 

「・・・お見事。次は負けないよ。」

 

 

 

聡 LP:2300→ー1900

 

 

 

<WIN>榊 遊矢

 

 

 

 フィールドに決着を告げる音楽が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「いやぁ、負けた負けた。あそこで貫通効果はえぐいな」

「それはお前も同じであろう。あのターンで決めにいっていただろう?」

「勿論。そういうコンセプトのデッキだしな。まぁこれを越えれないのならまさに遊矢の夢は雲のまた上になってただろうけどな。」

「やはりお前・・・手加減していたな?」

「まさか。あのデッキじゃ理想とまではいかなくとも全力に近い動きだぞ?」

 

 デュエルが終わって権現坂と話す。

 姫ロックをかけたりペンデュラムテーマを使ってゲス顔しようかとも思っていたがそれはやめた。

 イベントデュエルでゲスいことをしてもいいことはない。

 それならギリギリのデュエルをしようと思ったのだ。

 その結果は負けたのだが目的は彼を立ち直らせるためだったため、問題はない。

 

 ちなみに伏せていたカードは《ガード・ブロック》と《ピンポイント・ガード》だった。

 

 二人で遊矢達の方を見ていると遊矢がこちらに近づいてくる。

 

「ありがとう、聡。俺、腕を磨いてもっとうまく、もっと強くなる!そして父さんみたいなみんなを笑顔にするデュエリストになる!」

 

 

――――ありがとう。

 

 そういうと遊矢はジュニア達の元に走っていった。

 

「ようやくスタートラインに立てた・・・かな。」

「九条。俺からも礼を言わせてもらう。この男、権現坂。自ら汚れる役割を負うその姿勢に感銘を受けた。」

「気にすんなって。ああいうのは出会って間もない俺みたいな奴がやるのが一番いいと思ったからやっただけさ。他意はない。」

 

 土下座しそうな勢いのゴンちゃんに軽く返す。

 

「まぁ、恩に感じてるのなら・・・一つ頼みがあるんだが、いいか?」

「頼み?一体なんだ?」

「これからもいろんなことがあるとは思うけど、遊矢の奴が間違った道に行きそうになったら、殴ってでも止めてやってくれ。遊矢の親友であるお前にしか出来ない役目、頼んだ。」

 

 榊 遊矢はまだ若い。

 それをいうなら目の前のゴンちゃんも若いのだか年上の自分よりも大人びて見える。二つの意味で。

 彼なら遊矢がブレてしまっても、曲がってしまっても正すことが出来るはずだ。

 

「任された。この男権現坂、遊矢の生き様をしかと示していこう。」

「うっし、なら安心だな。」

 

 

 ぐぅぅぅぅぅ・・・・・・・

 

 

 安堵すると腹から泣き声が聞こえてくる。

 そういえばまだ朝食を食べていないことを思い出した。

 

「何か食べるか。」

 

 そのまま聡は広間から退出した。

 




 閲覧ありがとうございます。
 この話を搾り出してまとめるのに時間がかなりかかった筆者の〇坊主です。


 ようやく始まった感じがしますが少しテンポが悪いのではないかと考えました。
 なので今後は一話の文字数が多くなるかもしれません。
 まぁ一番は自分がうまくなればよい話なんですけどね。
  
 
 次回も楽しみにしていただければうれしいです。
 それではまた次回にお会いしましょう。


 お楽しみは、これからだ!

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