描写を本当にすこし追加しました。
4ターン目『LDS襲来 次元の王と四季の長』
「さて、やろうか。」
「あぁ。」
互いにデュエルディスクを起動する。
どちらも冷静に相手を視野に入れる。
周りのギャラリー達も二人の空気から自然と静かになっていた。
戦うのは初めて、デッキの力も未知数。
互いに相手が、このデュエルが一筋縄ではいかないと直感していた。
――――片や相手の情報を知っているため。
――――片や相手の情報がまったくないため。
「しっかし本日最初のデュエルが社長とは、俺もついてないねぇ・・・。」
「そうかな?私としてはこのデュエルを楽しみにしている。」
戦に勝つためにはまずは相手を知るべし
そんな言葉がある。
相手がどのような傾向かを理解し、戦略を組み立てることで戦を有利に展開するために必要なもの。
それが情報だ。
今回、情報の所持量は青年が勝っているだろう。
なぜならば相手はプロデュエリストであり、なによりもどんな戦略なのかをアニメで知っているからだ。
そして相手にはこちらの情報を何一つ握らせていない。そう考えても良いはずだ。
しかし、それで勝てるほど簡単な相手ではない。
相手は若くして大企業を率いる猛者だ。
どのような状況でも冷静に物事を分析する能力が高い。
奇襲などをかけても無駄だろうと予測する。それだけやり手なのだから。
そして戦いは情報だけでは勝てないもの。
その情報を効率よく扱える知識と経験、そして行動力があってこその結果だからだ。その点では圧倒的にこちらが不利だろう。
何故ならこのデュエルモンスターズにおいて、そしてアクションデュエルにおいての実戦経験が違いすぎるのだから。
「君の実力を知るのにも良い機会だ。私も全力でいかねば無礼にあたるものだろう。」
「それならこんなにプレッシャーをかけずにデュエルしたいものだけどねぇ。」
「ふっ。ならばこの件が終わってからまたデュエルを行おうじゃないか。」
「それは名案だな。」
対戦相手、赤馬 零児に九条 聡は言葉を返す。
『お互いに準備はできたな!それではいくぞ!
アクションフィールドオン!
フィールド魔法!幻想の楽園!』
塾長 柊 修造の掛け声とともにソリッド・ビジョンによって周りの景色が変わっていく。
無機質な壁が消え、床が草原になり、天井が青空になっていく。
自分達が立っていた地上が隆起し、様々な場所で土地が宙に浮いた。
現代には存在しないような技術や文明の遺跡後が現れ、虹が各場所へ繋ぐ道になった。
まるでファンタジーの世界を体現したような世界。
これがフィールド魔法 幻想の楽園だ。
この歳でこんなに幻想的な風景を見れたことに感動した。
『戦いの殿堂に集いし、デュエリスト達が!』
だが、呆けてはいけない。
相手は天才デュエリストなのだから。
『モンスターと共に地を蹴り、宙を舞い!』
『フィールド内を駆け巡る!』
『見よ!』『これぞ!』
『『デュエルの最強進化系!』』
『『アクショーン!』』
「「デュエル!!」」
塾の存続を賭けたデュエルが始まった。
◇◆◇◆
時は少し前に遡る。
このデュエルがなんなのか、鋭い方ならもう気づいているだろう。
ARC-Vにおいて、塾を賭けたデュエルはあの出来事しかない。
不審者が引き起こした問題を関係のない遊勝塾にイチャモンをつけ、更には塾を取り込もうとしたあの事件だ。
九条 聡がこの世界にやってきて1週間が過ぎた頃、LDSの関係者が襲撃される事件が多発していた。
その事件に巻き込まれた沢渡 シンゴの証言により榊 遊矢に疑いの目がかけられ、そしてデュエルを吹っ掛けられたのだ。
こちらとしては迷惑極まりないが、起こってしまったことは仕方がない。
向こうは向こうで本気でやってきているのだから。
そして塾の存続を賭けて3本勝負のデュエルを行ったのだ。
榊 遊矢と志島 北斗が。
柊 柚子と光津 真澄が。
権現坂 昇と刀堂 刃が。
互いに全力を尽くし、結果は1勝1敗1引き分け。
この結果に憤った理事長が決着をつけようと延長戦を挑んできたのだ。
本来ならばこの延長戦は遊矢が出て、社長と対峙するはずだ。
しかし、社長さんが俺を見つけるなりこう言ってきたのだ。
「決着は私がつけよう。そして九条 聡、君を対戦相手に所望する。」と。
俺を指名してきたことに遊勝塾のメンツは驚いていたが当然の反応だ。
遊勝塾のお世話になっているとはいえ、買出しや整備などを行っていたために自分は彼等とデュエルをしていなかったのだから。
更にはこの世界に慣れるため、精霊タレイアと共に周りを探索していたのだ。
塾に、そして彼等と接していた時間が短かったために話す機会も少なかった。
それゆえにデュエルをしないと思われていたのかもしれない。
「まさかの社長ご指名ですか。なら匿ってくれた遊勝塾への恩返しをここでしますかね。」
そう返すと、デュエル場に向かったのだ。
遊矢たちが心配していたが、任せとけと伝えておいた。
久しぶりのデュエルだし、楽しまなきゃ損だ。
『いきますか、マスター?』
「あぁ、全力で楽しむぞ。」
タレイアが聞いてくる。
常に霊体で俺に憑いている彼女。
始めはなかなかに面倒だったが今ではすっかり慣れてしまった。
慣れとは怖いものだ。非科学的なこともすぐに日常に取り込んでしまう。
『お任せください、マスター。“私達”がついております。』
そんな彼女も今の状況ではとても頼もしい。
そして互いが持ち場に着き、準備が完了する。
存続のため。
権威のため。
未来のため。
自分のため。
様々な意志が交差するなか、
「「デュエル!」」
デュエルが開始された――――――――――――。
◇◆◇◆
零児 LP:4000
聡 LP:4000
「君を指名したのは私だ。なので先行後攻は君が選ぶといい。」
「ならば後攻で。」
「了解した。ならば私の先行。私は手札からマジックカードを3枚発動する。まずは1枚。永続魔法 《地獄門の契約書》を発動。このカードは自分のターンのスタンバイフェイズごとに私は1000ポイントのダメージを受ける。」
「えっ?」
「自分のターンが来るたびに・・・自分自身に1000ポイントのダメージを受けるだと?」
柚子と権現坂が共に驚く。
これだけ見るとデメリットしかないように見えるが、そんなわけがあるわけない。
「更に1ターンに一度デッキからレベル4以下のDDと名のつくモンスターを手札に加えることが出来る。これで私は《DDケルベロス》を手札に加える。」
永続のサーチ魔法。万能で扱いやすい分類に入るものだ。
このデメリットを使ったデッキもいくつかみたことがある。
「2枚目も先程使った《地獄門の契約書》だ。これで私は《DDリリス》を手札に加える。」
こうして手札に下級モンスターを2枚手札に加えた。
この流れはあのコンボが来るな。
「そして3枚目に発動するカードは永続魔法《魔神王の契約書》。このカードも自分のスタンバイフェイズごとに私は1000ポイントのダメージをうける。」
「当然それだけじゃないよな。」
「フッ。当然だ。このカードの効果により、私は1ターンに一度悪魔族融合モンスターを融合魔法なしで融合召喚できる。」
「融合魔法なしで融合召喚!?」
「なんて強力な効果なの!?」
外野の反応が新鮮だ。自分も初めて見たときは驚いたものだ。
「私が融合するのは《DDケルベロス》と《DDリリス》。
冥府に渦巻く光の中で、今ひとつとなりて新たな王を生み出さん!
融合召喚!生誕せよ!《DDD烈火王テムジン》!」
《DDD烈火王テムジン》
星6 融合・効果モンスター
ATK:2000
零児は召喚したテムジンを見つめている。
おそらく安定性のテストも併用して行っているのだろう。
そういえばさっきのカードもアニメ効果があったな。まだ不安定なのかもしれない。
「私はカードを2枚伏せて、ターンエンド。」
零児
LP:4000
手札:0
伏せ2
「残りの手札を2枚とも・・・」
「これで手札はゼロ・・・。」
手札が1ターンで無くなったことに遊矢たちは困惑しているようだ。
「手札を使い切るなんて・・・」
「4番目にでてきた補欠のくせに余裕か!」
「聡兄ちゃんがんばれ!」
「しびれるくらいぶちのめしちゃえ!」
遊勝塾から応援される。
でもね。俺の戦い方も基本手札カッツカツなんだ。
「さて、俺のターン!ドロー!」
聡 LP:4000 手札:5→6
自分の手札は・・・なぁにこれぇ。
次のドロー次第じゃないか。
『いきましょう、マスター。私のお力を見せてさしあげます。』
タレイアがやる気だな。
ならこちらもしっかりやらねば。
「俺は手札から《薔薇の聖騎士》の効果を発動。このカードを手札から墓地に送ることでレベル7以上の植物モンスターを手札に加える。これで俺はレベル8の《椿姫ティタニアル》を手札に加える。」
「ふむ、それが君のエースか。」
零児が興味深く聞いてくる。
意外と珍しいのかなこのカードは。
「あぁ、俺のエースの一人だ。で、先にこっちを使うか。マジックカード《暗黒界の取引》を発動!互いのプレイヤーはデッキから1枚カードをドローし、その後手札を1枚選んで墓地に捨てる。よってドロー。」
「私の手札は0。よって引いたカードをそのまま墓地に送る。」
「俺は先程加えた《椿姫ティタニアル》をコストとして墓地に送り、マジックカード《トレード・イン》を発動。カードを2枚ドローする。・・・ん?更にもう一回《トレード・イン》を発動!コストは《姫葵マリーナ》だ。」
「1ターン目でここまでデッキを圧縮するとは・・・。」
「俺も驚いてるよ。さらにレベル8《桜姫タレイア》をコストに発動!《トレード・イン》!」
「なに?」
『えっ』
零児だけでなくタレイアまで驚いた表情をする。
どうしたのだろうか。
『あのぅ・・・マスター。なぜ・・・私の活躍は・・・?』
「なに言ってるんだい?活躍したじゃないか。コストとして。」
『ひどい!』
タレイアに結果を伝えると泣きそうになっている。
仕方ないじゃないか。トレード・インとレベル8が手札にあるなら使うほうが良いに決まっているじゃないか。
「聡兄ちゃんすげぇ・・・」
「1ターンであそこまでドローするなんて・・・」
「しびれるぅ~!」
実際ここまでデッキ圧縮が出来るのも珍しい。
普段ならばどちらか固まってこないなどというのはザラであるというのに。
まぁこの戦いは負けられないものでもあるからとてもありがたい。
そしてこの手札ならば、完全ではないがいい展開が出来そうだ。
「俺は墓地に存在する《薔薇恋人》の効果を発動!墓地のこのカードをゲームから除外することで手札から植物族モンスターを一体、特殊召喚することが出来る。現れよ!《ギガプラント》!」
《ギガプラント》
星6 デュアル
ATK:2400
「取引で落としたモンスターか・・・。それにデュアルモンスター・・・珍しいものを使うな。」
「やはりデュアルは珍しいんですか。でもこいつは実戦でも十分使えますよ。装備魔法《スーペルヴィス》を《ギガプラント》に装備!このカードを装備したモンスターは再度召喚扱いになる!」
「でゅあるもんすたー?」
「デュアルというのはフィールド・墓地に存在する場合、通常モンスターとして扱われる特殊な効果モンスターだ。召喚権を使って再度召喚を行って初めて効果モンスター扱いとなり、効果を使うことができるんだ。」
しびれデブことフトシの疑問にタツヤが答える。
やぱり賢いな。影が薄いけど・・・。
「再度召喚扱いになった《ギガプラント》の効果を発動!1ターンに一度俺の手札・墓地から昆虫族、または植物族モンスターを一体特殊召喚する!俺は手札から《ローンファイア・ブロッサム》を特殊召喚!そして自身をリリースし、効果を発動。デッキから《ローンファイア・ブロッサム》を特殊召喚!」
「あのときのデュエルで君が出していた展開の要か。つまり・・・」
「おうとも。魅せてあげますよ。俺のエースを・・・嫁達を!」
手を上げ、高らかに叫ぶ
「俺は《ローンファイア・ブロッサム》の効果を発動!
秋を司る花姫よ、弱者を守りて、強者を降せ!現れよ!《紅姫チルビメ》!」
《紅姫チルビメ》
星8 効果モンスター
DEF:2800
自分のデッキでもっとも信頼する守護の姫。
それが紅姫チルビメだ。
出た当初は攻撃力が低いのと最上級モンスターであるのに効果が受身なことで批評をうけていた。
しかし、相手にするとなかなかに厄介な効果を持っているのだ。
除去されてもただでは起きない。
『社長!遊勝塾で召喚エネルギーを感知しました!』
『こちらもそのモンスターを確認した。引き続き観測を続けろ。』
『了解しました。』
社長の元に何かしら連絡があったようだ。
不審者でもでたのかな?
「続けていいですか?」
「すまなかったな。続けてくれ。」
向こうの話も終わったようだ。
「了解。俺は更に2枚の永続魔法《増草剤》を発動!このカード効果を発動するターン、自分は通常召喚を行うことが出来ない。だが、こいつの効果により、1ターンに一度自分の墓地に存在する植物族モンスターを一体特殊召喚することが出来る!」
「なるほど、だから手札から《ローンファイア・ブロッサム》を通常召喚しなかったのか。」
「そういうこと。よって俺は墓地から二人の姫を特殊召喚する。現れよ!《姫葵マリーナ》《椿姫ティタニアル》!!」
《姫葵マリーナ》
星8 効果モンスター
ATK:2800
《椿姫ティタニアル》
星8 効果モンスター
ATK:2800
「聡兄ちゃんの場に最上級モンスターが3体も!」
「しびれすぎるぅ~!」
「これでバトルだ!《ギガプラント》で《DDD烈火王テムジン》に攻撃!“テイル・ウィップ”!」
「永続トラップ発動!ヴァルキリーの契約書。このカードも私のスタンバイフェイズに1000ポイントのタメージを与えるものだ。そして自分フィールド上に存在する悪魔族モンスターの攻撃力を1000ポイントアップする。」
《DDD烈火王テムジン》
ATK:2000→3000
「これにより《ギガプラント》の攻撃力を上回った。迎撃しろ、《DDD烈火王テムジン》!」
「ぐっ...」
聡 LP4000→LP3400
テムジンの業炎がギガプラントを焼き尽くしていく。
巨大な体もすぐに炭にされてしまった。
「だがこの瞬間墓地の《ギガプラント》を対象に《スーぺルヴィス》、《DDD烈火王テムジン》を対象に《姫葵マリーナ》効果を発動!何もなければ逆順処理に入る。」
「ならば私はトラップオープン。《
零児 LP4000→LP8000
手札0→4
「...《姫葵マリーナ》の効果、このカードが自分フィールド上に存在し、自分フィールド上の植物族モンスターが戦闘または効果で破壊された場合、相手フィールド上のカードを対象に発動する。そのカードを破壊する!よってテムジンを破壊!」
「ほう。」
「そして《スーぺルヴィス》の効果。表側表示のこのカードが破壊された場合に墓地の通常モンスターを対象に発動。そのモンスターを特殊召喚する。甦れ!《ギガプラント》!」
「その後破壊された《DDD烈火王テムジン》の効果を発動。戦闘または相手の効果で破壊された場合、自分の墓地に存在する<契約書>カード1枚を対象に発動できる。よって私は《地獄門の契約書》を対象に発動する。このカードを手札に戻す。」
零児 手札4→5
回復され、手札も補充されてしまったが問題ない。
何もなければ攻撃が通る時点で終わる。
「もう一度《ギガプラント》でダイレクトアタック!」
当然バトルを継続させ、攻撃を仕掛けた。
しかし、一向に零児のライフが減る気配がない。
「私は手札から《バトルフェーダー》の効果を発動させてもらった。この効果でフィールド上に特殊召喚し、バトルフェイズを終了させる。危なかったよ。まさか8000もあるライフを一気に削りにくるとはね。流石は私が見込んだデュエリストだ。」
「まぁ、これで終わったらいいなぁと思いはしましたが、そう簡単には終わらないか。俺はこれでターンエンド。やっぱ持ってますね、社長は。」
バトルフェーダーで攻撃が止められ、ワンショットを決め切れなかったことに苦笑する。
社長レベルの相手に時間をかければかけるほど不利になると直感していたからだ。
おそらくこれ以降、一気に8000ものライフを削る機会は来ないと考えていいだろう。
ここからはずっと正念場だ。
「社長を相手にワンターンキルを決めようとするなんて・・・」
「あの野朗・・・スカした顔してやることがえげつねぇぜ。」
「だがそれすらもかわす社長もすごい。」
仲良し三人組みがデュエルを見て思ったことを素直に口に出す。
1ターンで8000ものダメージを与えようとした九条 聡もだが、その攻撃を受け流して次に繋げる赤馬 零児も彼等から見ればすごいものなのだろう。
「聡兄ちゃんすげぇ・・・」
「あぁ、あの赤馬 零児相手に全く退いてない。」
「あれほどの腕を持ちながら何故今までデュエルをしなかったのだ・・・。」
「いつもお父さんの手伝いでメンテナンスや買出しをしてたから忙しかった・・・のかも。」
遊勝塾の面々も同じような意見だった。
「LDSの社長もだけど・・・聡も・・・なんか・・・全然違う。もしかして・・・本物?」
最近遊勝塾に入った、ただ一人を除いては。
閲覧ありがとうございます。筆者の〇坊主です。
今回は唐突にデュエルをぶっこみ、そして途中で区切りました。
あまり長くならないように描写を抑えられれば良いのですがうまくいかないものです。
アニメ通りの展開させればいいかという浅はかな考えで書いてみましたが難しい難しい。
最近のカテゴリーの効果多すぎぃ!
それに主人公をどう動かすかも悩みどころですね。
カード効果についてアニメ・OCGの件に関するご指摘を受けまして、微量に書き加えました。
しっかりと描写できていない不手際があったことはこちらのミスです。申し訳ありません。
次回も楽しみに待っていただけたら書いている身として、大変うれしいかぎりであります。
それではまたお会いしましょう。
お楽しみは、これからだ!