「イッツ ショウターイム!共にこのデュエルを楽しもう!」
「そうだ、お楽しみはこれからだ!」
バトルロイアルが開始されてから最初のデュエルも決着がつこうとしていた。
梁山泊に所属するデュエリストが2人同時に遊矢に襲い掛かることで遊矢を敗北に追い込もうとしていたようだが、そこに乱入した男―デニス・マックフィールドの働きによって形勢が逆転したのだ。
「バトルだ!《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》で《
ダーク・リベリオンの呼応による豹変もデニスの呼びかけにより収まり、遊矢はこのカードを扱うことに恐怖を感じることはなくなった。そこにデニスが召喚した《Emトラピーズ・マジシャン》の効果によって2回攻撃を行えるようになったリベリオンの攻撃で見事勝利を収めたのだった。
「・・・ありがとう、デニス。デニスのお陰で勝利することが出来たよ」
「
「えっ、父さんのことを知っているのか?」
「勿論さ!僕の憧れのデュエリストだよ」
勝利を収めて落ち着いてから遊矢はデニスに感謝の意を伝える。そのデニスが父親のことを知っているのに驚くがそれ以上に父親に憧れていることを聞くと嬉しくなる。彼の突然の失踪から周りの見方が変わり、悪いものをみるようになった。それは今でも続いているが逆に肯定の意志を表す人間に出会ったのは数少ない。最近出会った者達のなかでも否定的な意見を持っていなかったのは聡や幽香、零児ぐらいだ。
そしてデニスは周りを盛り上げるような、自分が目指すようなエンタメデュエルを肯定して行っている。まさにサーカスのように見ていて楽しいデュエルだ。
「キミとのタッグは、なんだか父さんと共にデュエルしているようだった。とても楽しかったよ」
「僕もだよ、とても楽しかった。お互いに最後まで勝ちあがろう!」
「あぁ!」
タッグデュエルで勝ったとはいえこれは立派なバトルロイアル。デニスとは競争しあうライバルだ。これ以上の干渉はいけないし、そのままでは勝ち残ることはできないだろう。それでも今回のデュエルだけとはいえエンタメデュエルを追い求める同士に出会えたことがなによりも嬉しかった。
「絶対に勝ち残って、俺の信じるエンタメデュエルを成し遂げてみせる!」
デニスと別れた後、遊矢は何度も決めた言葉を口に出す。目指すは先ほどデニスが行ったような周りを魅了するようなデュエルであり、互いに満足できるような笑顔になれるようなデュエルだ。ソレを為すためにまずはこのトーナメントを勝ち上がらなければならない。
次の相手を探すため、そして黒咲に会って話をするために、遊矢は駆け出した。
「召喚反応を感知!これはジュニアユースの選手からの反応ではありません!」
「感知場所はどこだ!」
「古代遺跡とジャングルエリアを繋ぐ場所からです!」
「今すぐ連絡を!監視班はなるべく選手がそこに寄り付かないようにエフェクトを積み上げろ!大至急だ。急げ!」
『ハッ!!』
大会も進み、管制室でついに融合召喚反応が感知される。
それも予測通りのタイミングであることもあってか、周りの動きも機敏になっている。これならばアカデミアがこちらに到着し終えるまでにいくつかの障害物が生み出されていることだろう。
この処置は本来の
この機能によって生み出された障害物は当然質量を持つため、ある程度の硬さを持つ。が、相手はモンスターを実体化して衝撃を引き起こせる戦闘集団。この程度の障壁では文字通り足止め程度の役割しか果たさないだろう。
それでも時間は稼ぐことが出来る。反応を感知してから全社員に緊急連絡を寄越し、既にユースの選手やプロデュエリスト等は現場に急行しているのでこのシステムは役に立っていると言えるだろう。
「なんでこんなところに壁があるんだ」
「感づかれているのか?だとしても問題はない。召喚するぞ、構えろ」
『《
そうこうしているうちに【オベリスク・フォース】が召喚したモンスター達の攻撃で障壁が破壊される。リアルソリッドビジョンシステムの機能でなく、それぞれのデュエルディスクにモンスターを実体化させる機能を持たせているアカデミアにはこの程度は時間稼ぎにしかならない。セレナの捜索を行うために散開して行動を行い始めようとして、足を止める。
「この程度我等の足止めにすらならない・・・ん?」
「どうした?・・・だれかいるな。出て来い!」
【オベリスク・フォース】は違和感を感じ取る。物陰に隠れていたのか、自分達の道を塞ぐように立つ。どこの誰かは知らないが、プロフェッサーから場合によっては現地のデュエリストとの交戦も許可されている。諜報活動を行っていた素良の活躍もあって、このスタンダード次元のレベルは聞いていた。エクシーズ次元にも劣るであろうレベルであると聞いてから、自分達にとってハンティングゲームでしかない。そう思っていた。目の前にいる
「ふふっ。熱い攻め立てあいが始まるわ。2人とも準備はいいかしら?」
「万端。多対一は慣れてるから何等問題はないよ」
「何も、支障はない」
だがやはり例外というものは存在してくる。
当然【
海外で活動するスタンダード有数のデュエリストを、その圧倒的な強さで女性の身でありながらプロランカーにまで成り上がり、今も尚活躍する彼女らを。
「「「デュエル!!」」」
遊戯王の環境を大きく揺さぶるほどの猛威を振るった存在を、彼等が知る由もない。
当然【オベリスク・フォース】も一箇所に部隊を集めて突入するなどという愚直な行動を取りはせずに部隊を分けて行動を侵入を試みていた。今は
目的はあくまでもセレナの奪還。
そのためあくまでもデュエルを行うのは二の次だ。エクシーズ侵攻作戦のように殲滅が目的ではないために、彼等は静かに索敵を行っていた。そして目標を発見し、捕獲しようと行動したのだが――
「ここから先には行かせない」
『デュエル!!』
今回の防衛作戦に加わった桜樹を含めるユースのベスト8達が彼等の前に立ちはだかる。
日影と月影の行動もあり、ジュニアユースの柊 柚子とセレナをその場から避難させることにも成功した。あとは侵略者に勝つだけだ。
氷山エリアの一角に現れた【オベリスク・フォース】の一団はスタンダードへ一番遅くやってきた。時間差をつくることでより安全に送り込むためだ。今は先に侵入した部隊が
辺りに人影がないのを確認し、目標を探していると火山エリアから避難してきた柚子たちを発見する。彼等の護衛として動いている忍者達が感づくが瞬時に囲いこみ、逃がさないようにデュエルを行おうとするが――
「わざわざお越しくださりお疲れ様です。そしてそのままお帰りください」
具現化させれた姫達が輪を作っていた【オベリスク・フォース】の団体を吹き飛ばす。突然の不意打ちを喰らい、何人かが戦闘不能になったことで尖兵達は動揺する。その瞬間を見計らって柚子たちを輪から引っ張り出して己の後ろへと移動させた。
「聡?幽香さん!?」
「間に合ったようで何よりです」
咄嗟の出来事に呆けていた柚子が現れた人物に驚きの声をあげる。
突然現れた【オベリスク・フォース】もそうだが、2人がここにいることが理解できていないようだ。
「貴様、あのときの!」
「その声は数日前の不審者さんか。名前はセレナさんで良かったですよね?ども、社長さんの指示で助けに来ましたよー」
「赤馬 零児の?」
聡たちは零児の指示で来たのだという。
柚子には零児がこのことを何処まで知っていたのか気になったが、それ以上にセレナが聡に対して敵対意識を持っていることに気になった。でもそれ以上敵意を向けているのは良い判断ではない。なぜなら隣の女性が凄く睨んでいるからだ。
「さて、ここは俺らに任せなさいな。一応まだバトルロイアルは継続してるし、厄介事は俺らに任せて大会を進めないと」
「なんで?こんなことが起きているならすぐに中止するべきじゃないの?」
柚子が抱く疑問はごもっともだ。アカデミアの行っていることは柚子も知っている。
アカデミアがこの次元に攻め込んできた理由は既にセレナと話し合って聞いているがそうであっても呑気に大会を進行させていい状況ではないだろう。
「答えは簡単。今の状況を観客に知らせてしまうと余計な混乱が出来て無駄な被害を生み出してしまうから。そして迎撃しているのは俺らやユース、そしてプロのデュエリストだ。このバトルロイアルの最中にまとめて叩いてしまおうってのが今回の計画だったのさ。」
「確かにそうかもしれないけど・・・!」
「申し訳ないですが、それ以上会話を続けるのは愚策かと」
アカデミアの行動を警戒していた幽香の声に柚子は今自分が置かれている状況を思い出した。
複数の仲間がやられたことでこちらを睨みつけているアカデミアの尖兵はディスクを構えて戦う意志を示している。そして2人はセレナと自分を庇うようにしてディスクを構えているのだ。
「さて、こいつ等は俺らに任せて2人は行きなさいな」
「アカデミアの追っ手程度、自分の力で追い払える!貴様等の力など借りる必要もない!」
どうやらセレナにとってこの場から身を引くという選択肢は存在しないようだ。
だがこちらも相手の都合の良いように動くわけにはいかない。
「今セレナさんが奴等と相手するには些か分が悪い。話を聞けば奴等はあなたを取り戻しに来てるんでしょ?なら対抗策が練られていると考えても何等不思議ではない。得意の融合を封じられたら、あいつ等に勝てるのかな?」
「それは・・・」
【オベリスク・フォース】も案山子ではない。切り札である融合を主体に戦う自分を確実に捕獲するために構築されている。融合を使うとわかっているからこそ、そこを突いて来るだろう。
そのため彼女らにアカデミアと戦わせるのは得策ではない。早くこの場から離脱してもらわなければならなかった。
「そういうことで奴等は俺らに任せなさいな。それにまだ2人にはやることがあるんじゃないの?」
「そうよ、今からでも黒咲 隼に会わないと!」
「黒咲という男に会って、お前の言ったことが本当かを確かめる・・・。わかった」
よく話は聞いてはいなかったが、彼女達は黒咲の元に行くようだ。エクシーズ次元で起こったことは当事者から直接聞いたほうがいい。黒咲がまだ動いていないのなら古代遺跡にいるはずだ。
「黒咲なら古代遺跡辺りにいるはずだ。そこを目指していくといい」
「ありがとう聡。セレナ行きましょう!」
「あぁ。聡と言ったか、あのときの決着は必ずつけるぞ。覚えていろ!」
柚子の説得のおかげでこの場から逃がすことが出来た。何も言葉を発していないが日影と月影が彼女らの警護に当たっているため、そう簡単には捕まりはしないだろう。
「セレナ様を逃がすな!こいつ等は俺らが相手をする。お前等は後を追え!」
「「「ハッ!」」」
「させねぇよ」
隊を分けて行動しようとした者達に向けて四季姫のダイレクトアタックを喰らわせて戦闘不能にさせる。
デュエルしろって?これも立派な
再びの攻撃で吹き飛ばされた仲間を見てアカデミアの尖兵は追いかけるのを止めた。
先に自分達を倒さねば被害が増えるだけだと気づいたのだろう。
「アキ、もしものときのために柚子たちの援護をお願い。こいつらなら俺らでも対処できるから何かがあれば実体化しても構わない。忍者を含めた4人を頼んだ。」
『了解しましたマスター。お気をつけて』
忍者達が負けて、柚子たちが捕まるという最悪の事態を想定して
あとは負けないように立ち回り、五体満足で無事に帰るだけだ。
「さて彼女らの後は追わせないさ。俺らにやられてもらうとするよ」
≪
「嘗めるなよ、スタンダード風情が!」
残った相手は6人、こちらは2人
つまる処、3対1の変則デュエル。
ただ見るとこちらの不利は当然だが、負ける気なんて毛頭ない。
「幽香さん、あの3人は任せた」
「任されました。聡さんも御武運を」
『デュエル!!』
スタンダードとアカデミア。
両陣営の意地のぶつかり合いが始まる。