柚子
LP100
手札:0
モンスター:幻想の歌姫ソプラノ
美伎代
LP1000
手札:0
モンスター:翼を織りなす者
『まさに熱戦が繰り広げられておりますが、ここにきて斜芽選手が一歩リード!これは柊選手大変厳しい状況になりました!』
柚子と美伎代のアイドルデュエル対決も互いのライフは共に1000を切り、手札も互いに0という互角の戦いを繰り広げていた。
しかし後一歩というところで
(ライフも残り100・・・手札も0・・・でもまだ勝負は決まってない)
そんな場面でありながらも柚子は諦めていなかった。
自分が作り上げてきたデッキを信じて、デッキに手を添える。
遊矢と共に目指すエンタメデュエルはこの状況を楽しんでこそ真価を発揮されるものだ。明らかなピンチからどのような逆転劇を生み出すのか、それは今から引くこのカードに懸かっている。
「私のターン!・・・・・・ドロー!!」
引いたカードは・・・《クリスタル・ローズ》
初戦での光津 真澄とのデュエル終了後に貰った友情のカード。
そしてこれこそが柚子が求めていたカードだ。
「私は《クリスタル・ローズ》を召喚!」
《クリスタル・ローズ》
星2 光 効果
ATK:500
「《クリスタル・ローズ》のモンスター効果を発動!手札・デッキから〔ジェムナイト〕又は〔幻奏〕モンスター1体を墓地に送ることでターンの終わりまで墓地に送ったモンスターと同名カードとして扱える!私はこの効果でデッキから《幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト》を墓地に送って、そのカードとして扱う!」
「この状況をどうやって返してくれるんだ!?」
「俺、ワクワクしてきたよ!」
「あ・・・」
柚子が諦めずに展開し始めたことで観客はこれからの出来事に目を輝かせる。観客達の表情は昨日のような重たい表情ではなく、自然に笑顔が溢れていた。
そんな観客達の変化に遊矢はユートが自分に残した言葉を思い出す。
「《幻想の歌姫ソプラノ》は自身を含めた融合素材を自分フィールドから墓地に送ることで、《融合》カードを使わずに融合召喚を行なえる!私が融合するのはソプラノとプロディジー・モーツァルトと同名カードになっている《クリスタル・ローズ》!
天使の
タクトの導きにより、力重ねよ!融合召喚!
今こそ舞台に、勝利の歌を!《
《幻奏の華歌聖ブルーム・ディーヴァ》
星6 光 融合/効果
ATK:1000
「待ってました!」
「きたきたきたぁ!!」
現れたのは初戦でも魅せたフィニッシャー。
華より生まれた天女の歌声に観客は一層湧きあがった。
「みんなが笑顔に・・・」
みんなの未来に笑顔をと、
(そうだ、これがデュエルだ。俺は一体何をやっているんだ。ついこの前に自分の道を決めたばかりじゃないか)
柚子の活躍により、落ち込んでいた遊矢が立ち直る。
確かにここ最近、自分の周りで多くのことが起こった。しかしそれは柚子にも言えることだ。
だが彼女はそれにめげずに前へ進んでいる。自分がこんなところで立ち止まっているわけにはいかない。
「バトルよ!《幻奏の華歌聖ブルーム・ディーヴァ》で《翼を織りなす者》を攻撃!ブルーム・ディーヴァは戦闘・効果では破壊されず、このカードの戦闘で発生する自分へのダメージは0になる!そして特殊召喚された相手モンスターと戦闘を行うダメージ計算終了後、その相手モンスターとこのカードの元々の攻撃力の差分のダメージを相手に与え、その相手モンスターを破壊する!“リフレクト・シャウト”!」
「キャー!」
美伎代
LP1000→0
天女から紡ぎだされるは暴風の
六翼を持つ天使を吹き飛ばし、美伎代のライフを0へと変えた。
『ついに決まりましたぁ!勝者は柊選手!本当に、本当に!素晴らしいデュエルでした!!』
「「「柚子お姉ちゃん!」」」
「燃えた・・・燃えたぞぉ!柚子ぅ!!」
柚子の勝利を喜ぶ者もいれば、応援していた斜芽 美伎代が負けたことを悲しむものも当然いる。
だがピンチからの見事な逆転劇を生み出した柚子のデュエルは観客を満足させるものへとなり、どちらも満足する結果となる。
そんな周りの笑顔に感化され、自然と遊矢も笑顔になった。
◇◆◇◆
『続いてデュエルニュースです。連日 熱戦が繰り広げられている舞網チャンピオンシップ ジュニアユースクラスでは、今日で2回戦の全ての試合が終了し、ベスト16が出揃いました。明日からはいよいよベスト8を決める戦いのスタートです』
時刻は夕暮れ。
遊勝塾では一同がテレビの前でニュースを食い入るように見つめていた。
遊勝塾でジュニアユースに出場している3人のうち遊矢と柚子が勝ち残り、ジュニアクラスでは2人は負けてしまったものの決勝までもう少しのところまでタツヤが勝ち上がっているからだ。
何度も言うが世界を巻き込んでの今大会で勝ちあがれるということは、世界に顔を売ることが出来る貴重なチャンス。大切な瞬間なのである。
『ジュニアユースクラスのベスト16に勝ち残った選手をご紹介しましょう。まず1人目は遊勝塾所属の柊 柚子選手』
「かわいいぃ!流石俺の娘!最っ高だぁぁぁぁ!燃えるぜ!熱血だぁあぐぉお!?」
柚子が映った瞬間に叫び始めた修造を見事なハリセン捌きで黙らせる。
『そしてこちらも遊勝塾所属のエンタメデュエルでお馴染み!ペンデュラム召喚で世間を騒がせ、名を馳せた榊 遊矢選手です!』
「えへへ・・・」
テレビに映り嬉しそうにニュースを聞いている遊矢であるが、すぐに顔を戻した。
『1回戦ではLDSの沢渡 シンゴ選手と、2回戦ではり
思い返すはやはり2回戦の勝鬨との試合。
エンタメデュエルとは程遠い結果を生み出してしまったあのようなデュエルは二度としないと遊矢は固く心に刻み込む。
「ここまで来たらライバルよ。お互いに遊勝塾の代表として、最高のエンタメデュエルでトップを目指しましょう」
遊矢の前に手を差し出し、競い合うライバルだと宣言した柚子に遊矢も応える。
仲間でありながら、これからはライバルとなって優勝を目指して戦う仲になるのだ。
そんな彼等とは別の場所。
大会の進行状況がニュースで流れてはいるが部屋にいる人物で見ているのは一人だけだ。
若くして社長業を取りまとめる少年は窓の外にある会場を見据え、部屋にお邪魔している二人の男女はデッキの調整をしながら会話している。
「いよいよ始まるのね」
「いえ、始めさせません」
デュエルニュースが終わると共にテレビを消した赤馬 日美香はアカデミアの侵攻が始まることに嘆くが零児はそれを否定する。
アカデミアの侵攻によってもたらされる被害を極力最小限に抑えつつ、迎撃し、撃退するために長い年月を費やしてきたのだ。
【ランサーズ】の選定
プロデュエリストの救援
新世代だけでなく、成熟した世代からの引き抜き
それだけでなく、大会開催場所をこの舞網市にしたのも全てはこのためだ。
可能な限り出来ることはやった。
あとは自身も含めて全力で対抗するだけだ。
「敵の侵入はこの街で必ず食い止めてみせます。アカデミアの好きにはさせません」
零児は座っている二人を視界に入れる。
一人は経歴不明。膨大な召喚エネルギーを有した複数のデッキを操る青年であり、次元戦争の話を素直に受け入れて協力してくれた男。
もう一人は青年に想いを寄せる女性。デュエルの経験は少ないが、話によるとすでに青年にも負けず劣らずの実力を持っていると聞く。
どちらも計画のことを話したのは最近だというのにも関らず、よく動いてくれた。
彼等がいなければプロデュエリストの3名もこちらに赴いてはくれなかっただろう。
彼等のお陰で被害も可能な限り抑えれるだろう。
「ふはははははは!《地獄の暴走召喚》を《シーホース》を対象に発動!これが!これこそが!人がデュエル出来る可能性だ!」
「甘いですね!私は《
「うわ、最強のフィールド魔法使いやがった!インチキカードもいい加減にしやがれ!」
(・・・・・・・・・・・・)
(・・・・・・・・・・・・)
凄く盛り上がっているのはわかるが、用いているカードが普段とは全く違う。
すごく楽しんでいるのはいい。だが些か緊張感が欠けているようにも感じた。
「・・・零児さん。大丈夫なのですか?」
「大丈夫です。大丈夫なはずです」
デュエルで盛り上がっている二人を見て、その内容を見て、日美香は不満を漏らす。
零児はその光景を見て本当に大丈夫なのかと一瞬考えてしまい、苦し紛れにそう返すしか出来なかった。
◇◆◇◆
「もう一度スタンダードに行きたいと言っているそうだね」
「はい!スタンダードにはエクシーズの残党がいます。あの残党には借りがあります。それを返さなければなりません!」
「うむ・・・その願い、叶えよう」
「ありがとうございます!」
海の孤島に立っている軍事基地を彷彿とさせるデュエル戦士養成所。通称アカデミア。
あの日、強制送還された
舞網市でのジュニアユースクラスの大会で苦汁を飲まされたエクシーズ次元の残党 黒咲 隼と遊矢に似ている黒咲の仲間 ユート。
自分が偵察でスタンダードに赴いてから出会ったエクシーズの残党は二人だけだが、この二人とは決着をつけなければ気が済まなかった。
アカデミアでもトップクラスの成績を修め、優秀な存在であるというプライドを粉々に打ち砕かれたあのデュエルは数日経っても消えることはない。
なんとしてでもリベンジを行いたいがために打診をした結果、許可が出たことに安堵する素良であったが、プロフェッサーこと赤馬 零王は制約を設ける。
「ただし、今度は単独任務ではない。彼等と共に行ってもらう」
そうして扉を開けて入ってきた集団は【オベリスク・フォース】
アカデミアは3段階のランクに分けられているが、その中でも優秀な者達が所属し、エクシーズ侵攻の際にも優秀な結果をもたらした存在だ。
だが、いくらそれだけ優秀な者達だとしても残党二人を狩るのにこれほどの人数は必要なのだろうか。
「エクシーズの残党狩りは二次的な目的に過ぎない。第一目標は彼女だ」
移されたのは素良もよく知る人物――
「柚子!?」
「いや、彼女はセレナ」
ではなかったが、髪型以外は柚子にそっくりな人物だった。
それに対して素良は疑問の声を挙げるが零王は知る必要は無いというだけだ。
「君たちの目的はセレナの身柄を確保し、この世界へと連れ戻すことだ。それを確実に行うために必要であるならば現地のデュエリストとの交戦も許可する。セレナを絶対に連れ戻せ!」
「「「ハッ!!」」」
オベリスク・フォース各員が零王の命令を受けて返答を返すが、素良には零王が何を隠しているのか疑問を抱いたまま部屋を後にした。
しかし、その疑問は今は重要ではない。
零王はああ言ったが、素良が始めから狙うはエクシーズ残党。
嘗めてかかる必要の無い相手を今度こそ狩れることに素良は笑みを零した。
ちなみにスタンダードへ侵攻してくる【オベリスク・フォース】はアニメでは9人でしたがこちらでは倍は来ています。