遊戯王 就活生の現実逃避録(物理)   作:〇坊主

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「全く同じなのでデュエル描写はカットだ。よってお前の名言は無効となる!」

「何!?主役のデュエルはしっかりと描写をするのが基本ではないのか!?」


20ターン目『悩む者と喜ぶ者』

「漆黒の闇より、愚鈍なる力に抗う反逆の牙。

 

 今降臨せよ エクシーズ召喚!

 

 現れよ!ランク4《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》!!」

 

 

『榊 遊矢選手!ペンデュラム召喚から更にエクシーズ召喚まで決めてきたぁ!?』

 

 

「何だと?」

 

 

 聡が不審者二人組みから逃げて遂せている間に榊 遊矢 対 勝鬨 勇雄のデュエルは終盤を迎えていた。

 

 ユートが本来持っているはずの《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》をエクシーズ召喚した榊 遊矢を画面越しに赤馬 零児は確認していた。

 黒咲 隼の仲間であるユートが所持していたとされるデュエルディスクを回収し、解析をしていたのだが、彼のエースモンスターであるこの竜は回収出来ていなかった。これによって遊矢が持っているのではないかと仮説を立てていた零児の考えは正解であったことを示していた。

 

 

「バトルだ。俺は《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》で《覇勝星(はしょうせい)イダテン》を攻撃。

 

 “反逆のライトニング・ディスオベイ”!!」

 

「ぐわぁぁああ!」

 

 

 星ではなく、ランクを所持するエクシーズモンスターによってイダテンの効果を無効化し、そのまま決着へと繋げた遊矢であったが観客にとって遊矢の逆転劇以上に遊矢の豹変に対して愕然としてしまっていた。

 

 敗北した勝鬨に手を差し伸べるも跳ね除けられ、試合終了直後であるというのに沈黙の状態が続き、天気も空気を読むように雨が降る。勝利すら喜べない空気が辺りを支配する。

 勝利者は存在しないとでもいうかのような空間に遊矢は佇むしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

「何故やつがユートのカード、ダーク・リベリオンを・・・」

 

 

 画面越しに見ていたのは零児だけではない。

 アカデミアの侵略に対抗するためにエクシーズ次元からやってきた黒咲 隼もその一人だ。

 

 音信不通である仲間のカードを持っている人物を確認し、何故所持しているのかを問いただしに部屋から出ようとするが側近の中島に阻まれる。

 

 

「何処へ行く?」

 

「やつに会う!何故ユートのカードを持っているのかを問いたださなければならない!」

 

「今は駄目だ。理由はどうであれ、大会の進行に支障をきたすような行動は控えてもらおう。私がこの大会を利用してやろうとしていることが何であるか。それを忘れるな」

 

「・・・・・・・フゥー」

 

 

 零児の言葉に吐き出しそうになった言葉を飲み込み、大きく息を吐く。

 

 零児がこの大会を利用して行おうとしている【ランサーズ】の計画は黒咲にとっても重要な計画だ。

 それを己の直情的な感情で計画を壊してしまえば仲間は勿論、妹の瑠璃ですらも助け出すことが困難になる。

 

 本来黒咲は仲間思いであるが故に、己の仲間に関することだととても熱くなる。

 アカデミアの侵略から今までの間、仲間を狩られ、奪われ続けてきた彼は自分以下の力を持つ者達を仲間と認めずに突き放すようになっていた。

 そんな中出来た数少ない仲間を黒咲は失い、荒れ狂い、敵と判断した者達を形振り構わずに攻撃するといういつ壊れてもおかしくない状況に陥っていた。

 ユート自身がストッパーの役割として活動していたが、別行動を取る様になり、被害を広げていたところに零児と出会う。

 目的が同じであることを知り、世界を巻き込んでアカデミアに対抗しようとする姿勢に多少の感銘を受け、計画を手伝うことに決めていた。

 

 アカデミアに反逆できる可能性が一番高いこの計画を壊すことは許されないし、自分でも許せない。

 遊矢に問いただす感情を強引に押さえ込み、黒咲は部屋を後にした。

 

 

「・・・念のために黒咲には監視をつけておきます」

 

「うむ」

 

『突然ですが、予定の変更です』

 

「むっ?」

 

 

 中島の提案に了承をだしているところで予定変更の言葉を聞き、画面に再び視線を移す。

 

 

『この後予定されていた第3試合ですが、LDS所属 志島 北斗(しじま ほくと)選手の欠場により、霧隠料理(きりがくれりょうり)スクール所属 茂古田 未知夫(もこた みちお)選手の不戦勝が決定しました!』

 

「欠場?」

 

「社長。志島 北斗は1時間前に病院に輸送されています。それの30分前に舞網市内で高レベルの召喚反応が検知されました」

 

「召喚法は?」

 

「融合です」

 

 

 零児の質問に答えた役員の回答は零児の気を締めるのには十分だった。

 監視カメラの映像を流すように促し、映像を確認する。

 

 画面には志島 北斗を融合モンスターで瞬殺するフードを被った少女と北斗を助けるべく、走り出した九条 聡の姿が映る。

 逃げる聡が何かを叫ぶや否や画面が瞬時に桜吹雪に覆われ、聡と北斗の姿が画面から消えていた。

 

 

「九条 聡・・・!問題があったのに連絡を寄越さなかったのか!?」

 

「落ち着け中島。連絡をする前に彼等から逃げることをまず第一に考えたのだろう。あの桜吹雪といい、彼は驚かせるのが好きなようだ。それと、画面を巻き戻せ。・・・止めろ」

 

 

 志島 北斗が欠場する原因を生み出したフードの人物の顔が一瞬映ったのを零児は見逃さない。映像を巻き戻し、どんな容姿をしているのかを確認する。

 深く被ったフードに映った顔は彼等も見知った姿だった。

 

 

「あっこれは・・・遊勝塾の!?」

 

 

 中島が驚きの声をあげ、零児は眉を顰める。

 画面の不審者の顔、それはまさに遊勝塾の柊 柚子と瓜二つの顔をしていた。

 

 

 

 

 

   ◇◆◇◆

 

 

 

 

 

「・・・うっ、んん・・・ここは?」

 

 

 志島 北斗が目を開けると見慣れない天井が視界に映った。

 記憶を遡れば自分は舞網チャンピオンシップの2回戦の準備をしていたこと、そしてその際に現れた不審者にデュエルで負けたことを思い出す。そしてその際に気を失ったこともだ。

 周りを見渡して自分が病院の個室にいるのだと理解した。気を失った後、誰かが救急車を呼ぶなりして運んでくれたのだろう。

 

 状況確認を終えて自分をこの状況に追い込んだ人物を頭に浮かべる。

 対戦相手が使っていた融合モンスターはLDS内では一度も見たことがない。

 あのレベルの強さならばLDSの融合コースの光津 真澄と張り合うだろうし、なによりもそれならば自分が知らないわけがない。

 

 

(あいつはLDSの生徒ではないのか・・・だとしたら一体何処の誰なんだ・・・?)

 

 

 しばらく物思いに耽っていた北斗であったが、扉を開けられたことで思考を中断した。

 

 

「北斗!お前大丈夫か!?」

 

「突然病院に搬送されたと聞いたときは驚いたわよ」

 

 

 真澄とまだ包帯が取れていない刃だ。

 二人共北斗の欠場報告を聞いた後すぐにこちらに向かったという。

 

 二人に入院経緯を話し、犯人の素顔は分からなかったことも伝えた。

 やはりではあるが、真澄も北斗を圧倒できるレベルの融合使いを知らなかった。

 

 

「分かっているのはエクシーズ使いを狙った犯行ってことか」

 

「そのようだよ。なぜかは知らないけどエクシーズを強調して言っていたからね」

 

「ちょっと待って、それって大変なんじゃないの?ユースはともかく、ジュニアユースで北斗よりも強いエクシーズ使いは早々いないわよ?」

 

「確かにそうだな。俺らが知ってる人でも黒咲さんぐらい・・・かな・・・!?」

 

 

 そこまで言ってようやく気づく。ジュニアユース内でトップを走る三人以上に強く、エクシーズを使う人物といえば尊敬している黒咲さん以外当てはまらない。

 彼がそう易々と負けるとは到底考えれないが、万が一ということもある。

 

 

「今すぐLDSに連絡しないと!」

 

「その必要はない」

 

「「「!!」」」

 

 

 病室の扉から聞きなれた声が聞こえる。声の主はLDSの社長を務める赤馬 零児だ。

 真澄が電話を使おうと席を立つ前に声をかけ、そのままでいいと伝える。

 聡が助けた貴重な生き証人に零児は知る限りの情報を聞くつもりだ。

 

 

「突然の来訪はすまない。だが、どうしても聞かねばならないことがあってね」

 

「僕を襲った人物について・・・ですか?」

 

「話が早くて助かる。こちらも時間が惜しい。大会を安全に進めるためにも、この問題を早期解決すべきだと私は考えていてね。君達にも手伝ってもらいたい」

 

 

 零児が切り出したのは一種のスカウト。

 それに三人は驚きの表情を一瞬浮かべたが、すぐに切り替えて返事を返してくれる。

 

 聞きたいことを終えた後、零児は労いの言葉をかけて病室を後にした。

 

 

 

 

 

   ◇◆◇◆

 

 

 

 

 

「なん・・・だと・・・?」

 

 

 あの後、中島さんに電話越しで怒られた聡はカードショップでパックを剥いていた。

 ある程度のカードや生活必需品はこちらにやってきたときに持っていたバック内に入っていたのだが、最新のカードは流石に入っていない。

 よって最新カードをシングル買いしても良いのだが、ワクワクを思い出すために初心に帰ってパックを買って剥いていた。

 サクラ達の力を借りずに3パックを適当に買った後、適当な場所を見つけて開けたのだ。

 

 そんな中、聡はあるカードを当てて衝撃が走る。

 

 目線の先には黒いカード。

 こちらでも最近目に映るようになったエクシーズモンスターと呼ばれるまだ珍しいカード群だ。

 普通のモンスターカードやシンクロモンスターとは違い、ランクという特別な数値を持ち、エクシーズ素材を使うことで真価を発揮できる存在。

 

 あらゆるカードが混ざって売られているパックであるがため、本来ならばエクシーズが当たることは素直に喜ぶべきことだ。

 しかし聡は喜ぶよりも先に絶句してしまった。その理由はそのカードのイラストにある。

 

 ステータス主義の人々が多いこの世界ではイラストにはほぼ目がいかない。強いのならばある程度の見た目など無いに等しいと思っているほどだ。

 だがそんな中でもイラストをこよなく愛し、そのカード達を用いてデュエルを行う猛者たちも数は少なかれど当然いる。姫を愛でて使っていた聡もその一人だ。

 

 そんな聡も当てたカードにイラストを含めて驚愕していた。

 

 イラストは好みにダイレクト。ランクの割にステータスは高く、効果は強いの一言。

 植物族で着物である。そう、着物なのだ。なんら問題は無い。評価をつけるなら満点だ。

 

 カードの名前は《森羅(しんら)姫芽宮(ひめみや)

 

 

「着物っ子きたぁぁぁぁぁあ!!」

 

 

 思わず叫ぶ。

 【森羅】カテゴリーのカードであり、今の姫デッキの構築的にも入れ込みづらいことなど今の彼には関係なかった。

 植物デッキを扱う彼にとって素直にアイドルカードは増えるのは喜ばしいことであり、そのカードを使わねばという使命感に駆られるのは必然の出来事であった。

 

 それを見て精霊達が少し不貞腐(ふてくさ)れ、幽香の普段着が着物になって強気に攻めてくるようになるのは別の話。

 




 み~んな!友達!(強制労働施設に送りながら)


 そんなわけで閲覧してくださりありがとうございます。
 筆者の〇坊主でございます。

 《森羅の姫芽宮》さんという最強クラスのカードが出てしまったのならば、使うしかないじゃない!
 そんなわけで出してしまったカテゴリーにより、聡を強化していきます。流石に自分の疎い頭ではいつものデッキでは限界が出来てしまうので・・・ですが勿論エースは姫様方なので出番はあります。出します。
 まぁ強化フラグに邪念があるようにも感じますが主人公は紳士だし多少はね?


 次回も楽しみにしてくださればとても嬉しく思います。 
 それではまたお会いしましょう。

 
 お楽しみはこれからだ!

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