遊戯王 就活生の現実逃避録(物理)   作:〇坊主

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10ターン目『舞網チャンピオンシップ』


「ついにこの日が来た!」

 

 本日は晴天なり、眼前の人物は灼熱なり。

 遊勝塾を率いる柊 修造は太陽の精霊の如く朝から熱血だ。

 その理由を聞けばここまでテンションが高くなってしまうのも仕方のないことだろう。

 

「我が遊勝塾の塾生全員が、舞網チャンピオンシップに出場できるとは・・・俺は・・・お前達を誇りに思うぞぉぉぉおお!!」

 

 そう。タツヤ達のジュニアを含めた塾生全員が舞網チャンピオンシップへの出場権を勝ち取ることが出来たのだ。塾長としてこれほど喜ばしいものはないだろう。

 だがしかし、熱すぎる。

 

「お父さんテンション高すぎ」

「そうよ。まだ会場にも行っていないのに」

「わ、悪い。だがどうしても嬉しくてな」

 

 柚子とアユに諭され、落ち着きを取り戻した修造は塾生を見渡し、改めて説明を始めた。

 

「タツヤ、アユ、フトシはジュニアクラス。遊矢、柚子、素良はジュニアユースクラス。そして聡と幽香さんはユースクラスに出場だ。勿論言うまでもないが、LDSが主催する舞網チャンピオンシップには舞網市内全てのデュエル塾だけでなく、日本だけでなく世界中から出場資格を満たした強者(つわもの)達が集まってくる。我が遊勝塾のエンタメデュエルのアピールのためでもあるが、君達のためにも、全員優勝を目指せ!」

 

 遊勝塾生全員が返事で意志表示を行なう。それを確認し、修造はさらに言葉を続ける。

 

「今!この瞬間からお前達は、共に学んだ仲間であると同時に互いにライバルとなるのだ!迷うな!悔いるな!自分が学んできたことを全て信じて燃えろ!うぉぉぉおお!熱血だぁぁあああ!!」

 

「じゃあ行きましょうか」

「了解」

「いこー」

 

 修造さんのありがたい激励のお言葉に対して塾生全員がスルースキルを発動させる。

 これによってだれもいないところでただ一人叫ぶ怪しいおっさんの構図が出来上がっていた。

 

「さて、まだ時間あるし最終調整の準備でもしてくるか。柚子~後で追いつくから先に行っておいて~」

「あっ、私もすぐに追いつきますので先に向かってください」

「わかったわ」

 

 柚子に声をかけ、彼等と別れる。

 そして残ったのは聡と幽香だけになっていた。

 

 

 

 さて、幽香が突然遊勝塾の塾生になり、さらにどうやって出場権を獲得したのかが気になった人がいるだろう。

 聡が幽香に軽くデッキを構築し、彼女と卓上デュエルをしながらルールを教えていたのだが彼女の飲み込みが早い早い。一気に実戦レベルの実力になってしまった。

 デュエルを経験したことはないが、ある程度はビデオを観たり、他の講師から学んでどのように動けばよいか。そのように攻めるか、または守るかを大体理解していたようだ。しかし、デュエルに対する講師の考えに納得がいかず、デュエルをすることはなかったようだ。清楚な彼女に似合わず反抗期だったらしい。

 そんなこんなで自らのデッキを持たずに歩いている時に彼女の容姿に惹かれた男達に囲まれ、それを俺が助けたことで惚れたうんぬんということだ。そして遊勝塾に所属している俺が彼女にデュエルを教えたのならば、自分もすでに遊勝塾の生徒と考えてもいいだろう。という理論で修造さんに特攻していき、晴れて(?)遊勝塾の生徒になった。

 

 そして出場権では舞網チャンピオンシップに出場しようとする輩はたくさん存在しているため、遊矢に付きっきりなニコさんに頼んで彼女の対戦相手を見つけてもらって勝つ。それを6回繰り返しただけだ。つまり彼女の現成績は6戦6勝であり、勝率は100%という現状だ。ついでに電話をかけてきた赤馬社長の計画を手伝う変わりに彼女の出場をサポートするように頼んだというわけだ。電話越しだったからよくわからなかったが、とても動揺しているように感じたのは気のせいだろう。

 ちなみに遊矢の親友ことゴンちゃんもあの後6連勝で出場権を勝ちとったようだ。流石ゴンちゃん、(おとこ)である。

 

 

 

「私はこれから必要なものを取りにいきますので一旦お別れです。会場でお会いしましょう!」

「おう。道中気をつけろよ~!」

 

 そうして幽香と一旦別れ、遊勝塾内の使わせて頂いている部屋に戻る。

 部屋に戻ると拗ねた桜姫タレイア(サクラ)と宥める紅姫チルビメ(アキ)がど真ん中に存在していた。

 

『いいんですよ。どうせ私は精霊ですよ。人間ではありませんよ・・・マスターと■■■■(あんな事)■■■■(こんな事)なんて出来ませんよ』

『まぁまぁ姉さん。そんな放送禁止用語を使う必要はないんですから。それにマスターが戻ってくるんですからそんなに落ち込まなくても・・・』

「聞こえてるぞ二人共。いつまで拗ねてるんだ」

『『!?』』

 

 二人の間に座り、頭を撫でる。

 

「それにそんなことしたいなら実体化すりゃあいいだろうに。てか朝っぱなからなに言ってんだ」

『え・・・いいんですか!?』

「サクラの日頃の行い次第だな。ほら、早くしないと時間がなくなるだろ」

『マスター。私達は実体化したほうが良いのでしょうか?』

「うーん。それは任せるけど、デュエルするときは頼んだよ?これでも俺は二人を一番信頼してるからな」

『了解いたし『お任せくださいマスター!!暁の水平線に勝利を刻んでみせます!』・・・姉さん。現金すぎますよ』

 

 二人共ここ1週間の間幽香に付きっきりだったことに嫉妬していたようだ。信頼していることは本音なのだが、ここまで元気になられると計画通りの顔をしたくなってくる。というかアキはともかくサクラのほうの反応は素なのか?だとしたらいろんな意味で心配するぞ。

 

「マスター、何をしているのですか!行きましょう、私達が華麗に活躍するときです!」

「「・・・・・・・・・」」

 

 実体化して急かしてくるサクラに聡とアキは何とも言えない表情になった。出発できなかった原因から急かされると少しイラッっとするよね。

 

「マスター、心中お察しします。が、姉さんに悪気はないんです。ただ愚直に素直なだけなんです」

「あぁ大丈夫さ、アキ。それは俺もちゃんとわかってる。大丈夫だ」

 

 そうして聡はサクラにアイアンクローをかましながら部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ご覧ください!舞網市内はまさにデュエル一色!そうです。今日からいよいよこの街最大のイベントである舞網チャンピオンシップが始まるのです!』

 

 海の上に建てられた広大な敷地を誇るスタジアムに数え切れないほどの人々が集まり、活気が溢れんばかりになっていた。

 世界中から選ばれた決闘者(デュエリスト)が集まり、その中で一番を決める大会が開かれるのだ。溢れていないほうがおかしいことだ。

 

『リアル・ソリッド・ヴィジョンシステムを開発したデュエル業界大手レオ・コーポレーションのお膝元。この大会も世界最大級のデュエル大会と注目されており、海外からも多数のデュエリストが参加しております。』

 

 そのため現地に来ることが出来ない人のためにもメディアが多数赴き、実況生中継が行なわれている。

 この大会で実績を挙げることが今後どんなことをもたらすのかは考えるまでもない。プロを目指すものもいれば己の実力を試すために参加する者もいる。参加する理由は十人十色であり、それを抱える者たちの意地のぶつかり合いを観客達は楽しみにしているのである。

 

『ん?ちょっと待ってください!ちょっとカメラをあそこに!ほら早く!』

 

 アナウンサーがカメラを動かすように急かし、映像が動く。その先にはLDS社長 赤馬 零児がスタジアムに現れるところだった。

 その姿を見た者たちからの歓声が一気に大きくなる。

 

『今大会のメインスポンサーであるレオ・コーポレーション社長 零児様こと、赤馬 零児さんが貴賓席に姿を現しました!なんと生です!これはとても珍しいことです!漲ってきたぁぁぁぁぁあ!!』

 

 観客と共にテンションが最高潮に達したアナウンサーであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『どうだった?』

『いない。やっぱり来てないよ』

『わかった。引き続き探してくれ!』

 

 開催式がもうすぐというところで遊勝塾の関係者は慌しく動いていた。それも遊勝塾の顔となっている榊 遊矢が未だに現れないためだ。

 

「なんですって?私のダーリンが不在ですって?」

「わ・た・し・のダーリン・・・ですってぇ~!?」

「ゆ・・・柚子姉ちゃん落ち着いて!」

 

 そこに現れたのは出場権を懸けて遊矢とデュエルを行なった方中 ミエルであった。

 彼女は遊矢とのデュエル以降、遊矢を未来の旦那さんと決め、ダーリンと呼ぶようになっていた。勿論遊矢に好意を持っている柊 柚子からすればこのような発言は聞き捨てならない。そのため原因となった本人不在にも関わらず、不倫相手と現妻が出会ってしまったときのような修羅場が形成されようとしていた。

 

「んん?なに修羅場ってるの?」

 

 そんな空間に入り、声をかける存在が現れた。ユースに出場する九条 聡である。

 

「聡兄ちゃん!」

「遊矢兄ちゃんがどこにもいないの!知らない?」

「遊矢が?・・・・・・あぁ~なるほどな。それなら心配要らないさ、もうすぐ来る」

「遊矢兄ちゃんがどこにいるか知ってるの!?」

「いや、知らんよ。ただ心配いらんさ」

 

 とりあえず聡は修羅場になっている二人をどう落ち着かせるかを思考し始めた。

 

 

 

 

 

(父さん、いよいよ始まるよ。父さんに近づくための大会が・・・)

 

 スタジアムから離れた場所に榊 遊矢は腰掛けていた。

 心が成長してからかけていなかったゴーグルをかけて、己が変わるきっかけとなったペンデュラムを見つめる。

 遊矢の父親である榊 遊勝がストロング石島とデュエルを行なう前日、遊矢は父親とこの場所で話し合っていた。

 その時に父親から言われた言葉を思い出していた。

 

 

   遊矢は父さんみたいではなく、遊矢らしさを大事にするんだ

 

 

 どのような思いでこの言葉を伝えたのかは遊矢は知らない。

 しかし、この言葉は遊矢が成長するために必要な言葉であった。

 

「俺らしさを大事に・・・か・・・」

 

「ほら、早くしないと遅刻するよ!」

 

 思いに耽る遊矢に声をかけたのは遊矢の母親である榊 洋子であった。柚子が電話で彼女に探してくれと頼んだのだろう。

 いなくなった遊矢に洋子は怒ることはしなかった。

 それは自分の息子がどんなことを考え、この場所にいるのかが理解できたからだ。だが、そうであってもそれを考える場所はここではないことを理解していた。

 

「遊矢、父さんに何かを伝えたいと思っているのなら、場所を間違えているよ」

「えっ」

「ここじゃなくて、あそこへ行かなきゃね」

 

 そういって遊矢に向かうべき場所を示す。その先はもうすぐ開会式が行なわれようとしているスタジアムがあった。

 

「スタジアム・・・」

「遊矢。あんたが何を考えてこの場所に来たのかはわかるよ。でも、それはあそこであんたが言葉ではなく、行動で見せないと父さんには伝わらないんじゃないか?」

 

 洋子の言葉で遊矢は自分の中にある氷が溶けていくように感じた。

 肉親の言葉が身に染み、元気が湧いてくる。

 

「ありがとう、母さん。俺、行ってくるよ」

「がんばっておいで。周りがどんなものでも、母さんはあんたの味方なんだからね」

 

 洋子はスタジアムに向かって走っていく遊矢の背中に遊勝が映ったように見えた。

 

 

 

 

 

「どうしましょう聡さん。もうすぐ時間になってしまいますが・・・」

「だから心配要らないって。ほら、来た来た」

 

 心配する幽香をあやしつつ、手を振って近づいてくる存在にアピールする。

 それに気づいてこちらに近づいてくるトマトが1つ。

 

「お待たせ」

「遊矢!こんなに心配させて、どこをうろうろしてたのよ!」

「ごめんごめん。ちょっと用事があってさ、そろそろ入場だろ?並びに行こうぜ」

 

 柚子の言葉を軽く受け流した遊矢の顔には自信が溢れていた。

 もう心配はいらないだろう。

 

「いてっ」

 

 遊矢のほうを見るとでかい男とぶつかっていた。・・・あれ?どこかで見たような・・・

 

「久しぶりだな。弱虫」

「お前は!」

「大事な大会前だからてっきり逃げ出したかと思ったぜ。お前の親父みてぇにな!」

「何だと!」

 

 遊矢はその言葉を聞いて怒りの表情になる。

 すこし自分もイラッっときた。周りに大勢いるなかで他人を陥れるのは流石に見過ごせない。

 

「お前みたいな奴がストロング石島を倒したなんて俺は認めねぇ。なんなら今ここで俺が叩き潰してお前が腰抜けだってことを証明してやろうか?」

「随分とおめでたい頭なんだな。だけど自ら負けに行く心がけは感嘆に値するね」

「んだとぉ?・・・ってお、おめぇは!」

 

 遊矢の隣に立って目の前の男、暗黒寺 ゲンを見据える。なんだろう、こいつがジュニアユースにでる年齢に見えないんだけど。

 

「デュエルの腕も微妙の癖によくそんな大口叩けるな。それにあのデュエルは行なった本人が結果を認めているんだ。それを認められないってのはファンを名乗る者としてどうなのかね?あぁ、こういう奴がファンにいるストロング石島はかわいそうだなぁ。本人は人として立派なのにファンの皮を被った餓鬼に下げられるなんて・・・同情するよ」

「なんだとぉ!?」

「おっ、やるか?あの時みたいにワンショットかましてやろうか?モブ男君?ここまで言われて悔しいでしょうねぇ」

「て、てめぇ・・・」

「そこまでだ、暗黒寺 ゲン」

 

 こちらの世界にやってきたときに幽香を囲んでいた男達のボス。それがあの男、暗黒寺 ゲンだった。

 血管を浮き上がらせ、今にも殴りかかる勢いだった男を権現坂が後ろから止める。

 登場の様はまさに男だ。

 

「へっ、兄弟子を呼び捨てか」

「アンタはもう兄弟子ではない」

 

 権現坂の言葉で二人の間に火花が散る。

 これ・・・バトル物だったっけ・・・?

 

 

『まもなく入場の時間です。選手の皆さんは各チームのプラカード前に整列してください』

 

 

 時間を伝えるアナウンスがなると共に二人の険悪な雰囲気が和らいだ。

 暗黒寺は捨て台詞を吐くとそのまま自分の待機場所に消えていった。

 

「アイツとここで出会うとは・・・それに聡。お前はアイツを知っていたのか」

「まぁ、人助けしたときにちょいとな。俺らも並ぶとしようや」

 

 そう言うと聡も遊勝塾の待機場所に向かう。遊矢たちもその後に続いた。

 

 

 

 

 

 

 

『皆様、大変長らくお待たせいたしました。年に一度のデュエリスト達の祭典・・・舞網チャンピオンシップの開幕です!』

 

 進行役を勤めるは遊勝塾にとっては顔見知りの男。ニコ・スマイリーが観客達の注意を引いている。

 この瞬間から大会が始まったことを理解した観客たちの歓声が一際大きくなり、室内で待機していた選手達の耳にも届くほどの大歓声に変わっていた。

 

『それでは、選手入場でございます!』

 

 ニコ・スマイリーの進行の元、並んでいた選手達が進み始めた。

 LDSの塾生が歩き始め、それに続くように梁山泊塾、海外参加のチームなどが会場に入り始める。

 

「あっ!アイツは!?」

「どうしてLDSに?」

 

「「えっ?」」

 

 遊矢、柚子共にLDSの参加者の中に黒咲 隼がいることに気づいて疑問の声を挙げ、互いにそのことに疑問を持ったことにさらに驚いた。

 二人共LDSの襲撃事件が起こった辺りで黒咲との接触を行なっている。これを知っている方は(無言の腹パン)のインパクトが強く、頭に映像がしっかりと残っていることだろう。

 

「それじゃあ遊矢もアイツを知っているの?」

「ああ・・・俺の目の前でLDSチームを襲ったんだ」

「二人共、悩むのはいいけどそろそろ僕たちの出番だよ?」

 

 二人が神妙な顔をしているところに素良が声をかける。目を移すと前のチームがもうすぐで出場し終えるところであった。二人を急かし、出るために整列する。

 

 

『続いては、エンタメデュエルで話題沸騰の遊勝塾です!』

 

 

 声がかけられ、歩き始める。

 外にでると広い会場にびっしりと人が存在し、全員がこちらに注目を集めているのを全員が感じ取った。

 

 

『この遊勝塾所属の榊 遊矢君は新たな召喚方法であるペンデュラム召喚で話題を集めており、今大会でも注目の一人です!』

 

 

「はっはっは、遊矢すごい人気じゃないか」

「・・・父さんはこんな状況でエンタメデュエルをしていたんだな・・・」

 

 遊矢はエンタメデュエルを行なう現場の風を感じ取り、そして武者震いをしていた。

 少し前だったらこんな状況になった瞬間に身を縮こまっていただろう。しかし、今ではその状況を受け止め、更には楽しんでいるようになっていた。

 

 

 

『ここに集まった君達は数多のデュエリストの中から勝ち上がった精鋭達です。フェアプレイ精神に乗っ取り、全力を尽くしたデュエルを期待しております』

 

『さてさて、続きまして選手宣誓を行ないます』

 

 偉そうな会長のありがたいお言葉が終わった後、ニコが話始める。

 そしてしてやったりと言った表情で遊矢を指さした。

 

『選手代表は・・・遊勝塾の榊 遊矢君にお願いします!壇上へ!』

「えっ!?ちょ、ちょっと、聞いてないよ!」

「遊矢君、これもエンターテイナーへの一歩です。さぁ、お願いします」

 

 ご丁寧にお辞儀をして遊矢にこれも試練だと伝えるニコ・スマイリー。有能である。

 

「遊矢、男なら一発決めてこい!」

「そうだな。エンタメデュエリストならこれぐらい出来なきゃいけないぜ」

 

「うっ・・・わ、わかった」

 

「遊矢しっかり!みんなが見ているんだから!」

(みんなが・・・)

 

 マイクの前に立った遊矢は柚子の声でふと周りを見た。

 

 自分の目に映るのは溢れんばかりの人々。

 その一人一人が選手宣誓を行なう榊 遊矢へと視線を集め、榊 遊矢という個を認識している。

 

 みんなを笑顔にする

 

 その気持ちを大切にする遊矢にとってこの状況をどうするべきか。

 ふと遊矢は父親の顔が浮かぶ。

 

 父親が観客だけでなく対戦相手をも魅了していたように、自分もそれに負けない榊 遊矢のデュエルを行なうと心に決めていた。そのため、これから言うことも決まっている。

 

 

『選手宣誓!・・・と言いたいところですが、少し俺の話を聞いてください』

 

 

 遊矢が話す。

 

 

『俺の父さんはデュエリストの榊 遊勝です。世界最高のエンタメデュエリストです!』

 

 

 遊矢の言葉一つ一つに周りの者達は集中して聞いていた。

 

 

『ですが皆さんもご存知の通り3年前、デュエルが始まる前にどこかへ行ってしまいました。

 

 それで周りから逃げたデュエリストの子供だと言われ、負けるもんかってデュエルをしていました。

 

 でも、心のどこかでデュエルから逃げていたんだと思います』

 

 

 思い返すは辛かった過去。

 しかしそれが今の自分を造る大切なもの。

 

 

『けど、ペンデュラム召喚と出会って・・・凄く強いデュエリストとも戦って、勝ち負けじゃなく・・・デュエルそのものが楽しくなっていきました。

 

 デュエルが好きになりたいと思いました。

 

 俺は榊 遊勝にはなれないけど・・・榊 遊勝に負けないぐらいに誇りにされる最高のプロデュエリストになりたいです!

 

 自分も、みんなも、デュエルが好きになる。そうさせれるデュエリストになりたいです!

 

 ・・・・・・選手宣誓になっているかはわからないけど、みんなを笑顔にさせるデュエルをすることを誓います!』

 

 

 遊矢の宣誓が終えると共に赤馬社長が拍手を行い、それに続くように拍手が大きくなっていき、最終的には大きな歓声が聞こえるほどになっていた。

 

「お疲れ遊矢」

「よかったぞ」

「ありがとう」

 

 遊勝塾生からの労いの言葉をかけ終えるのを確認したニコは一拍置いて再び話し始める。

 

『早速組み合わせを発表いたします。選手の皆さんは登録カードを各自のディスクにセットしてくださ~い』

 

 

 

 各自の対戦相手が決まり、遊勝塾生は一箇所に集まって話し合っていた。

 

「対戦日は明日・・・相手は・・・沢渡!?」

「私の相手は・・・真澄ね・・・。今日の午後からだわ」

「俺は明日だ。・・・これも定めか」

 

 ゴンちゃんの相手はどうやら暗黒寺のようだ。これは口上リアルファイトが見れるのを楽しみにせねば。

 

「俺はこの後すぐに試合だ」

「わたしはそのあと」

 

 フトシとアユはこの後すぐに対戦が行なわれるようであり、タツヤも柚子の後に行なうようだ。

 ちなみに自分と幽香のユース組みは共に4日後だった。

 

「素良の対戦相手は?」

「僕は明日。対戦相手は・・・LDS」

「LDS?誰だ?」

 

 素良は珍しく真剣な表情になって自分のディスクを見つめて、答えた。

 

「LDSの・・・黒咲 隼だ」

 




 閲覧ありがとうございます。新しいキングのエースを見ていたらすごく元キンデッキを組みたくなった筆者の〇坊主です。

 今後のパック情報ではバナナ頭のカテゴリーや傷キンレモン、殺意に目覚めたカオスソルジャーなど色々魅力的なものが出てきてお財布とお話し合いをしなければいけないですね・・・どんな構築をするか考えてくるだけでも楽しくなってくるものです。

 そして突発的に始めたこのお話もターン的に言えば10という切りの良さそうな数字に到達いたしました。しかしなんにもありません。しょうがないね。
 気づいたらもうこんなに話数になっていました。そろそろアカデミアの尖兵や神の耐性をもった漁師あたりがスタンバっているころじゃないですかね(適当)

 そんなこんなでまた次回にお会いしましょう。

 
 お楽しみは、これからだ!

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