今回も少し短いですが、すみません。
日間ランキングとかルーキーランキングとか載っててびっくりしました。見てくれた方ありがとうございます。
「なんで、こんなに混んでるの……」
「仕方ねぇだろ、帰宅ラッシュ時間と重なってんだから」
俺達は帰宅ラッシュの時間と重なって、ぎゅうぎゅうの電車に乗っている。
俺と折本は端に追いやられている。
「うわっ」
「きゃっ」
電車が少し揺れる。この人数のせいで少し揺れても、人の波に押される。
「ちょっと……近いって……」
「わ、悪い」
さっきの揺れのせいで、今、俺は折本を壁ドンしている状態だ。
折本は顔が赤くなっている。おそらく俺もだ。顔が触れ合いそうなぐらい近いから良く分かる。
もう一度、揺れると唇が当たるんじゃないかって言うぐらいに……。
「「……」」
二人共、気まずくなって、目を逸らす。
心を落ち着けろ、俺。折本なんて、ただ可愛いだけのビッチだ。そうだ、俺には小町と言う可愛い天使がいるじゃないか。
心の中で天使が囁いてくる。
『チャンスだよ! 今なら折本さんを落とせるよ! 頑張ってね、お兄ちゃん♡』
駄目だ。天使のくせに天国に導こうとしやがらねぇ……。
今なにかしたら、地獄に落ちる。
「比企谷? どうしたの?」
「いや、なんでもない」
家に早く帰りたい。今ならカマクラでも優しくしてくれる気がする。
「はあ、はぁ、疲れた……」
「ほんとに……」
いや、ほんと、精神的に……。
やっと、解放されると思ったら、事故かなんかで電車遅れるし……。
今日は散々な目にあった。
「さっさと帰ろうぜ……」
「そうだね……」
二人共も疲れ切っていた。
「お前の家どっちだ?」
「え、なんで?」
「もう、暗いだろ、送って行ってやるよ」
「あ、ありがと……」
いくら俺でもこの時間に女子を、一人で帰らせるのはどうかと思う。
不審者が現れても撃退できる気はしないが。
「さっきはありがとね……」
「何が?」
「電車で私が潰れないようにしてくれてたでしょ?」
「……別に普通だろ」
「そう? そこらへんの奴らなら、あの状況を利用してくっついて来ようとすると思う」
そうゆう奴らは多いだろう。俺だってギリギリだった。
それが、折本ほどとなれば、余計にだ。
「それがないだけ、比企谷はましだよ」
「そうかい……」
それから話は続かなかった。
でも、不思議と退屈はしなかった。むしろこの空気が心地よいと思えるほどに……。
だが、それも終わりだ。
「じゃあ、送ってくれてありがとね」
「こんぐらい、礼を言われるほどじゃない」
「でも、ありがとね」
「……」
なんだか、最近おかしい……。自分じゃあないみたいだ。人との関わりを嫌っている筈なのにこんな時間が続いて欲しいと思っている。
この関係は偽物でしかない。少しのことで壊れてしまうほど、脆く儚い。
でも、俺は……。
「本物が欲しい……」
「えっ?」
俺は折本に聞こえるか聞こえないかぐらいの声で呟いた。
「いや、なんでもない」
「そう?」
「ああ、じゃあな」
「ま、またね……」
この関係は本物ではない。でも、この関係が本物になればいいと思っている。
でも、それは叶わない。
いずれ、壊れてしまう。それが俺は怖い。だから、あと、一歩踏み込めない。
だから、俺はこの関係を保っている。
偽物はいつか壊れる。リア充達でもそうだ。上辺だけの関係。それが続けばいつか壊れる。最後まで仲良くするのはほんの人握りの奴らだけだ。
だから、俺は本物が欲しい。