あと、次回作の八色に小町を出すか出さないか迷ってます。いない方が書きやすいので。恐らくは出しません。まだ決まってはいませんが……。もし出なかったら、小町好きの人はすみません。
俺はある場所のある家のインターホンを鳴らす。
中から出てきたのは、そう、折本だ。
「な、なんで、比企谷が? クリスマス会は?」
「いや、まあ……リア充共のイベントなんかに参加したくなかっただけだ」
「別に気を使わなくなって……」
「何言ってんだ、俺はただ参加したくなかっただけだ。それと、暇だったから看病しに来ただけだ」
けして、参加したくなかった訳ではない。
俺だって、準備はしたのだ。準備だけして参加しないのは割に合わない。
だから、出来ることなら参加したかった。
でも、折本も頑張っていたのだ。それなのに、俺だけ参加するのはフェアじゃない。
「でもさ……」
「とりあえず入れてくれ。寒い」
「うん……」
もうこうなってしまえば、俺を会場に戻すことは不可能だ。
「比企谷、どうゆうつもりなの?」
「何が?」
「なんで、そんなに優しくしてくれるの?」
折本は俺の目を真っ直ぐ捉えて聞いてきた。
なんで……か……。俺はなんでこんなお節介を焼いているのだろうか。考えられる理由はいくつかある。
一つ、折本に特別な感情を抱いているから。
これはある。これが愛情なのか友情なのか何なのかは分からない。でも、特別な感情は抱いている。
二つ、可哀想だったから。同情から。
これもある。あんなに楽しみにしていて、風邪で参加できないなんて可哀想すぎる。どれくらいかと言うと、ドラクエで冒険の書が消えてしまったぐらいだ。なんだよ、あれ。クリア直前だったのに……。あれからドラクエはしていない。
他にもあるだろうが主にはそれだろう。
「さあな……」
俺は答えなかった。
折本は不服だったようだが、追求してくることはなかった。
「私ね、比企谷が来てくれた時嬉しかったよ」
嬉しかった。折本はそう言った。
「私、楽しみにしてたからさ、ちょっと落ち込んでたんだ……。だから、来てくれて嬉しかった」
「そりゃあ、良かった」
喜んでくれたなら、良かった。俺みたいな奴でも喜んでもらえると嬉しい。
「……もう、風邪は大丈夫なのか?」
「だいぶましにはなったよ」
「なら寝とけよ」
「もう夜だしね……」
「飯は食ったのか?」
「うん」
「なら寝とけ」
俺は折本を寝かしてからやることがある。
クリスマスと言えば、これだろう。
× × ×
折本は眠りについた。
これで、計画が始められるというものだ。
小さい頃、サンタさんにプレゼントをもらった経験があるだろうか? 俺は一応ある。すぐに父親にネタばらしされたものだがな。
良く考えたらおかしいのにな。煙突から入ってくるはずのサンタさんが煙突ないのに入ってくるとか、普通に不法侵入じゃあね? とか、世界中の子供達に配っている割に一晩で配り終わるとかどんだけ速いんだよとか、色々思う。
今日の俺はサンタクロースだ。八幡サンタだ。
さすがに、折本の頭の中がいくらお花畑だったとしてもサンタは信じていないだろう。
それに、この歳では普通貰えない。
だが、今日は特別だ。聖なる夜にぐらいこんなことがあってもいいじゃないか。
俺は寝ている折本の隣に熊の大きいぬいぐるみを置く。
折本はこれでいて、意外と少女趣味だ。部屋にもぬいぐるみなどはけっこうある。喜んでくれるといいが……。
寝ている折本に俺はそっと呟く。
「メリークリスマス」
八幡サンタはソリ(自転車)に乗って、静かな夜に消えていった。