「地下室なんて余ってるから好きにしてもよかったけれど……さすがにこれはやりすぎね」
開幕一言目のレミリアの発言に俺は何も言い返せなかった。確かに悪ノリで端まで行くのに全力で10分かかるような馬鹿でかいサイズにした事は謝るけど。
「……だからって、なんでフランの相手なの」
「フランの相手やだの?」
首をコテンと傾けながら私に寄りかかってるフランが聞く。現在私の家(もはや大図書館)のテーブルにてお茶を飲んでいるが、何故かフランは私の膝の上に座ることになった。重くはないけどじわじわと足が痺れてくるからそこそこ辛い。ていうか、フラン普通にいるけど狂気はどうしたの?普通に年相応の(495歳児の)フランなの?だとしたらこちらも楽なんだけど。
「……そうじゃないけど」
「それで、引っ越しのほうは終わったのかしら?」
「……一応」
「そう、なら貴方に一つ頼みごとがあるわ。この紅魔館をとある地まで移動してもらいたいのよ」
「……何処に?」
「幻想郷と呼ばれている場所よ。そこで私たちの力を見せつけて更なる力を手に入れる」
これが紅魔郷の始まりか。てことは必然的に俺も異変の首謀者扱いされるってことだろ。
「……時間がかかる」
ぶっちゃけやろうと思えば1日もかからないだろう。ただ、今のままで幻想郷にいったら絶対面倒なことに巻き込まれるだけだから面倒な事を誰かに押し付けられるくらいには強くなりたい。動機は不純だけどこうでもしないと無理だわ。どうせ神隠しの主犯が絡んでくるだろうし。
「分かってるわ。私たちも1日でどうこうしてもらえるとは思ってないし」
レミリアも一応納得しているようだ。一つ訂正するとしたらまさに1日でどうこう出来るんだけどね。
「それじゃあ準備ができたら私に教えてくれればいいわ。何かあったら咲夜を呼びなさい」
ーーーーーー
ーーーー
ーー
「…………出来たわ」
あの日から一ヶ月ほど、あれこれと試行錯誤を繰り返しながら多種多様な魔法(雑用から一撃必殺まで)を作っては纏め、纏めては改良しを繰り返していた。インなんとかさんみたいに10万3,000冊には届かないがそれでもかなりの魔道書ができた気がする。それにそろそろレミリアも我慢出来なくなって突撃して来る頃「パチュリー!まだ出来ないのー!」やっぱりきた。
「……今出来た」
「流石ね!それじゃあ早速作戦開始よ」
それからしばらくして紅魔館に吸血鬼の軍団が集まった。軍団と言っても100もいないと思うが、吸血鬼一人一人が強力な力を持ってるからこれでも十分だと思ったんだろう。多分これじゃあ楽園の巫女様に殲滅させられるだろうけど。
「それじゃあパチュリー、お願い」
地下の大図書館に張り巡らせた魔法陣を拡大して紅魔館を優に超えるサイズに変える。そのままここに持ってきたのと同じ要領で幻想郷に飛ばせば……
「……着いた」
幻想郷に到着。けど、これで後には戻れなくなったな……。今更だし仕方ないか。適度に楽しみますかね。
「今宵、私たち吸血鬼はこの幻想郷の王となり未来永劫君臨する!全軍進め!」
レミリアの掛け声で全員が一斉に出て行ったため、一気に紅魔館の 内はいつもの静けさを取り戻した。
「お姉様、私たちは行かないの?」
「王は玉座で大人しく待つものよ。わざわざ前まで行ってたら間抜けに見えるわ」
そういってレミリアはフランを連れ立って戻っていった。残ったのは自分と咲夜さんだけだ。因みに未だ美鈴には会えてなかったりする。今度こっちから会いに行こう。
「それではパチュリー様、私もお嬢様のところに戻らせてもらいます」
「……うん」
音も出さすに消えた咲夜を見送った後、私も図書館に戻った。