紫もやしになったので引き籠もります   作:粉プリン

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第3話

「さてと、あなたには今二つの選択肢が与えられているわ」

 

そう言ってレミリアがグングニルを構えた。

 

「素直に私の手下になるか、痛い目にあわされてから手下になるか。好きな方を選んでいいのよ。私的には後者をお勧めするわ」

 

それって選択肢ないし、単に戦いたいだけじゃん。

 

「……断ります」

 

「それじゃあ仕方ないわね。少し痛めつけましょうか」

 

レミリアが腰だめにしたグングニルを投擲してきた。そのまま神速で飛ぶグングニルが俺の胴体を貫く直前、防衛魔法を発動し槍を防ぐ。

 

(やべえよ、こんなの幾つも食らってられねえ。一回掠っただけでお陀仏だわ)

 

レミリアがまた手元にグングニルを取り出すと、今度は接近戦を仕掛けてきた。手元に近接防衛魔法用の魔法陣とヘイストガン掛けでなんとか間に合っているがまだ際どい状態だ。

 

「……吸血鬼の本気の力を防ぐなんて、あなた本当に何なの?」

 

そんなの俺が聞きたいわ。それに逸らしてるだけでまともになんか受けてないし。

 

「なら、これは防げるかしら?!」

 

後ろに大きく下がると壁を反射しながら回転しつつ突撃してきた。多分ドラキュラクレイドルだろう。……あれ?

 

「……凸技なら置き罠で終わりじゃん」

 

バレないように変わり身をし、変わり身を水に構成し直しトラップに仕立て上げる。そのままレミリアが突っ込んできたので直前で変わり身が破裂、球体状の水の檻になりレミリアを閉じ込めた。

 

「な、何これ!」

 

「……ただの檻」

 

「卑怯ね、普通に戦おうとは思わないの」

 

「……騙してここまで連れてきたのに」

 

「……ふんっ」

 

もういいよな、いい加減眠いし帰らせてもらうよ。

 

「……それじゃあ帰る」

 

レミリアも何も言わないからそのまま黙って帰ってきた。今日は散々だ。訳がわからないところに来て、レミリアに喧嘩ふっかけられた。まあ助けた俺も迂闊なのかもしれないけど、やっぱり知ってる身としては助けたいじゃん。

 

「…………寝よ」

 

ぶっちゃけもう寝る時間なんてほとんどないけど少しでも寝とかないとぶっ倒れる。という訳でお休み。

 

 

ーーーーーー

ーーーー

ーー

 

 

「おはよう」

 

「……なんでいるの?」

 

朝起きたらレミリアがいた。こいつもう普通にここに来るな。何なんだよ、プライバシーの侵害だぞ。

 

「……扉」

 

「昨日から壊れっばないじゃない」

 

お前が壊したんだろうが。

 

「さて、お腹が空いたわ。なにか作ってくれると有難いわね」

 

「……ここ私の家」

 

「私は客よ?」

 

「客は無断で侵入しない」

 

「いやね、ちゃんとお邪魔しますとは言ったわよ。あなたが返事を返さなかっただけ」

 

ああ言えばこう言うからもう面倒になってきた。もともと口は達者じゃないからこういうのは余計に疲れる。

 

「……先行ってて」

 

レミリアを部屋から追い出し、服を着替える。何気なく行ってるこの行為だが実際は目を閉じて魔法任せで着替えてたりする。まだ慣れないわこんな体。着替え終わってリビングに行くと椅子に座り足をプラプラさせてるレミリアがいた。

 

「まだ?朝早く起きたから何か食べておきたいのよ」

 

「……血は?」

 

「それは夜、咲夜が出してくれないわ」

 

咲夜さんいるのか。この流れだと美鈴もいそうだな。朝は適当に食べる主義だが、それだとレミリアが絶対うるさいから少し拘ったフルーツサンドでも作った。お気に召したらしくカリスマブレイクしてた事だけ伝えて置こう。本人の為にも。

 

「……なんでまた来たの」

 

「あなたを勧誘しに来たのよ。私たちの仲間にならないかってね」

 

「……昨日は手下」

 

「それは謝るわ。一晩考えたけど流石にあなたを手下にしたら怖いし。なら対等に……そうね、お友達なんてどうかしら?」

 

確か原作だとレミリアとパチュリーって友達だったような気がする。だとしたらこれは受けておいたほうがよさそうだな。別に原作通り進める気ないけど。

 

「……それなら」

 

「いいわね!それじゃああなたの家を私たちのほうに移すわよ。咲夜!」

 

「お呼びでしょうか、お嬢様」

 

何もない空間に突然メイドさんが現れた。この人が咲夜さんか。やっば、凄い美人じゃん。

 

「咲夜、この家を紅魔館の地下に移動しなさい」

 

「……お嬢様、流石にそれは私でも無理です」

 

「……私がやるからいい」

 

このままだと時間もなくなっちゃうし、なるべく多く自衛手段は持ってたほうがいいだろう。幻想郷なんて規格外チートの巣窟だし今のままで言ったら一瞬で溶かされる。

 

「そう?なら私たちは先に帰ってるわ。咲夜」

 

レミリア咲夜さんがその場から消えた。多分咲夜さんの『時間を操る程度の能力』使ったんだろう。

 

「……さてと、どうするかな」

 

とりあえず家を紅魔館の地下に移動する事はできる。そう考えればいいだけだ。問題は変なところに移動させると出られなくなるかもしれない事だ。階段があるならいいけど……あっ。

 

「階段作ればいいだけじゃん……」

 

さっさと気がつけばよかった。早速家を魔法で固め、紅魔館の座標を探る。ちょうどいいと思った場所に飛ばす。試しにドアの方を見るが土だか石だかの混ざったものが壁になってた。うまく地下に飛んだようだ。後は家の玄関から階段を伸ばして適当に紅魔館の廊下につなげれば。

 

「終わり」

 

引っ越し完了。あまりにもさっくり終わったからなんか拍子抜けだ。もっと苦労するかと思ってたんだけど……。

 

「余った時間は……本でも出そうかな」

 

実はこっちに来て(1日しか経ってないけど)本を一冊も読んでいなかった。本を出せるのは知ってたけど私の家じゃ収納スペースがないからすぐ埋もれるだろうし断念してたんだけど。

 

「ここなら好きに拡張できるし、まずは周りから作ってくかな」

 

この作業はレミリア達が既に引っ越しが終わり、地下室を改造しているのを見つけるまで続いた。


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