「……人っぽいんだぜ」
「なんか、あんまり化け物みたいじゃないわね」
「……どうでもいいけど離れて」
召喚が終わってしばらくしたが出てきた人?は動かずにこちらを見つめているだけだった。長い髪にワイシャツに黒ベストを着て下はロングのスカート。側頭部から小さなコウモリの羽根の様なのが見え、後ろの方にチラチラと尻尾が見え隠れしている。
「……悪魔?」
「……あぁ」
「喋ったぜ!?」
「喋るでしょう、むしろ喋らなかったらどうするのよ」
こっちを見た途端、ふらふらと覚束ない足取りで歩いてきたと思ったら近くで転んだ。おかげで支えることになり向こうの顔がこっちの胸に沈み込んだ。はよ退けや。
「……大丈夫なのかそいつ」
「パチュリーの胸がムニュンって!今ムニュンって!凄い柔らかそうな変形の仕方だったわ羨ましい私もパチュリーのふっくら胸に埋まりたいというか次は私の番ひでぶっ!」
とりあえず変態を吹き飛ばしておく。そうして改めて悪魔(仮)を見るが明らかに様子がおかしい。息が荒く顔も赤くなっていた。具合が悪いのだろうか。
「なあ、そいつ風でも引いてるのか?」
「……分からない、こう言ったのは初めてで」
「……とろふわ〜、いいおっぱいです〜」
刹那、頭上に雷雲を召喚。全力で目の前の変態に叩き落す。もちろん自分には魔力的防衛を施した上でだが。
「びゃあああああああああああ!?」
「な!いきなりなにしてるんだぜパチュリー!」
「……平気よ、変態はこれくらいじゃ倒れない」
うんざりするほど知ってるし。
「……ふ、ふふ、これしきの魔法で、私のパチュリー様への愛が収まると思わないことですよ!」
「……迷いなく変態扱いなんだぜ」
「……なぜ私の名前を」
「それはパチュリー様が私の契約主だからです!ああ、いつ思い出してもうっとりします。あの獰猛なまでの荒々しい魔力。悪魔の私ですら身震いする様な黒さ。もう色々濡れてきちゃうレベルでクペッ!」
これ以上喋っても変態の妄想を垂れ流すだけだと思うから頚動脈を抑えて気絶させる。もう変態に遭遇した時は初めからこの手段で行くことにしよう。
「だ、大丈夫なのか?顔から地面に倒れたんだぜ?」
「……平気よ、変態だからこれくらいがちょうどいい」
「そ、そうなのか……それにしても契約主って言ってたよな?」
そうだ。そこがおかしい。あの魔道書を開いたのはアリスで魔力を込めたのもアリスだ。自分は召喚を止めるために魔力を反転させようとしただけで魔道書自体に魔力を込めたわけではない。にも関わらず契約主は私ときた。
「……悪魔って食べられるのかしら?」
「落ち着くんだぜパチュリー!考えることを放棄しちゃダメだ!」
「私を食べて貰えると聞いて!」
「ズルイ!パチュリーに一番に食べてもらうのは私よ!」
「何ですか?私とパチュリー様の邪魔をしないでください」
「そっちこそ、いきなり出てきて私のパチュリーを奪おうだなんて許さないわ」
そのままギャーギャーと騒ぎ始めた2人を見て嘆息。隣で呆れてる魔理沙を横目に一言。
「……咲夜、追い出しておいて」
直後、二人分のまるで後頭部に鋭いものが突き刺さりそのまま遠くに運ばれて屋敷の外で悲鳴を上げた様な声が聞こえてきたが、気のせいだ。