新機動闘争記ガンダムW LIBERTY   作:さじたりうす

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 注意:暴力的描写があるシーンがあります。


エピソード50「双頭龍 VS 鳳凰」

 

 

 

 ムーン・ムーンの難民達を避難させながら、プル達は彼らの護衛をしてムーン・ムーンコロニーを離脱する。

 

 その後方では、事の知らせを受けた中華覇権派OZプライズが送り込んだ大部隊が迫っており、アディンとロッシェが殿に打って出ていた。

 

 振り返る方向に見える絶え間ない戦端の爆発を見ながら、プルは獅子奮迅するアディンの身を心配する。

 

「アディン……必ず戻ってきてよね……!!!」

 

 プルが憂いの想いを送ったその戦端の中では、ガンダムジェミナス・グリープとトールギス・フリューゲルが猛撃無双をしながら駆け抜けていた。

 

「うぉらあああああ!!!」

 

 

 ジュズゥガガガガシュウゥウウウウウウンッッ!!!

 

 

 ガンダムジェミナス・グリープのビームランスの薙ぎが中華プライズジェスタ4機をまとめて胸部から斬り飛ばすと、間髪入れずにビームライフルやドーバーバスターを放つ中華プライズリーオーに向かって、左手のライトバスターライフルの銃口を向ける。

 

 

 

 ヴヴァアアアアアッッ、ヴヴァアアアアアッッ、ヴヴァアアアアアッッ、ヴヴァアアアアアッッ!!!

 

 

 

 連発で放たれるビーム渦流が中華プライズのMS勢を一発につき、2、3機をまとめて吹き飛ばしていき、更にそこからチャージングショットに移る。

 

 

 

 ジャキッ……ヴィリリリリ……ヴヴォヴァアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!

 

 

 

 その一方ではトールギス・フリューゲルが無双する。

 

「はぁあああああああああ!!!」

 

 

 

 ガズゥドォオオッッ!!! ザバァンッッ、ギャガシュッッ、ザギィガァアッッ、ギィズバァアアアッッ、ザギィギャガガガガガガガァアッッ!!!

 

 

 

 トールギス・フリューゲルの刺突、薙ぎ、斬り上げ、唐竹連続突きの連斬撃を中華プライズリーオーの群れに浴びせ続ける。

 

 猛将たる戦いぶりで駆け抜けるトールギス・フリューゲルはライトバスターライフルと同等の威力を持つ、バスターシューターを左手で構える。

 

 

 

 ヴァシュダアアアアアッ、ヴァシュダアアアアッッ、ヴァシュダアアアア!!!!

 

 

 

 ヴァシュドォオオオッ……ヴウウッッ……ヴヴァォアアアアアアアアアアァァァァアアアアアァァァァァアアアアアァアアアアアッッ!!!

 

 

 

 連続射撃のさ中にトリガーチャージしたトールギス・フリューゲルは、一度解き放ったビーム渦流を持続させながらそのまま機体を自転させ、周囲の敵機体群を一気に吹き飛ばし爆散させた。

 

「ロッシェの野郎……なかなか気合入ってやがるぜ!!!」

 

「貴様もな……アディン・バーネット!!!」

 

 互いの力量を認め合う両者はさらなる獅子奮迅を見せつける。

 

 メインカメラを光らせたガンダムジェミナス・グリープは、中華プライズジェスタと同リーオーの混合攻撃舞台に突撃し、受けるビーム射撃の攻撃をリフレクトシールドで遮断していく。

 

「こ、攻撃が全く通じない?!!馬鹿な!!!これが……メテオ・ブレイクス・ヘルのガンダム!!!」

 

「てめぇらがいりゃあ、必ず追ってくる!!!なら、追われる前に全部ぶっ潰してやんぜ!!!」

 

 間合いに突入したガンダムジェミナス・グリープはビームランスの薙ぎを食らわし、2機の中華プライズリーオーと同ジェスタ1機を裂断。

 

 その機体達の爆発を突き抜けながら、GNDソニックドライヴァーの瞬発的なブースター加速を利用して次々にビームランスで斬りにかかる。

 

 胸部を斜めに切断される機体や直接突き貫かれる機体、唐竹に真っ二つにされる機体、隣接していた僚機共々一斉に斬り飛ばされる機体群……赤い機体群が次々と爆発光に変わっていく。

 

 トールギス・フリューゲルもまた、華麗なサーベル捌きで中華プライズリーオー達を圧倒し、突きや袈裟斬り軌道の斬撃をメインに、騎士道たる斬撃術を見せつけ次々に無双していく。

 

 その間にバスターシューターの射撃も加え、獲物を狙撃する。

 

「このジェノサイドによって血生臭くなってしまったL5宙域で決着をつけるのはナンセンスだ。アディン・バーネット。貴様との決着はこの馬鹿な輩達の一件が終わってからにさせてもらう!!!」

 

「決着の都合なんて別に知らねーが……今はこいつらを駆逐するのが最優先事項ってのは理解できるぜ!!!」

 

 互いに背中合わせのような配置に止まると、再びトールギス・フリューゲルはバスターシューターをチャージングし、同時にガンダムジェミナス・グリープは背部のGNDソニック・ドライヴァーユニットを前面に展開し、メガ・パーティカル・バスターキャノンの発射態勢に入った。

 

 そして、両者の最大出力の砲門が圧縮した高エネルギーと超高エネルギーを解き放つ。

 

 

 

 ヴィリュリュリュイイイイィィ……ヴヴヴァリュアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッ!!!!

 

 

 

 その解き放たれた超高出力のビーム過流は迫りくる大部隊の過半数を一気にかき消していく。

 

 MS部隊のみならず、それらを運んでいたクラップ級巡洋艦、MS輸送艦を巻き込んで破砕の限りを尽くしていく。

 

 その光景をプルとプルツー、レディとノインが確認していた。

 

「アディン達の戦いの光……!!!」

 

「幾つもの醜悪な奴らが消えていく……本当に圧倒的だ。頼もしいほどにな」

 

「見えるか?ノイン?改めて凄いものだな、アディンのガンダム……!!!」

 

「あぁ。通常であれば絶望的な物量差だったのがあっという間に覆されていく!!!敵であったら絶望的な強さだ。つくづく心強いと思える!!!」

 

 無論ながら、光族の輸送船団からもこの光景は見えており、サラサが祈るようにして見届けていた。

 

「あの光を放つ者達が、我々を救いに導いて下さった……!!!いくら感謝してもしきれない……!!!光族の皆の者達よ、あの光りに感謝の気持ちと祈りをお運びするのです!!!」

 

 サラサに集っていた光族の者達が一斉に感謝の姿勢を示し、輸送船団間の共通回線通信でサラサの声を聞いていた光族の者達もまた、同じく感謝の姿勢を示していった。

 

 強化人間の強制手術を強いられたユッタに寄り添うサキも、涙を流しながら他のだれよりも強い感謝をしめしていた。

 

「ありがとう!!!本当に……ありがとう……!!!ユッタ、見て……!!!」

 

「……何、サキ?」

 

「あそこで戦ってくれてる人達、私達光族を逃がしてくれる為に戦ってくれてるの!!!私達、助かる!!!もうあんな悪夢の日々は終わるんだよ!!!」

 

 ユッタはサキに言われた方向にその眼差しを向け、その戦端と護衛してくれているユニコーンガンダムを確認した。

 

「……ガンダム……はははは!!!」

 

「ユッタ?!!」

 

「いや……一方で戦ってくれて、こっちじゃ俺を助けてくれた上に皆を守ってくれてる……カッコいいとしか言い様ないよ……」

 

「ユッタ……!!!」

 

 船団の一行は、悪しきエリアと化したL5を一刻でも早く脱出すべく、それぞれが前に前にと加速していった。

 

 

 

 ユーラシア北方エリア・北極圏近辺上空

 

 

 

 今回のOZの一斉決起以降、ネェル・アーガマは、光学迷彩を展開させながらいよいよ北欧の完全平和主義を唱える小国・サンクキングダムを目指して航行を進めていた。

 

 CICブリッジではケネスが自身の心中を吐露しつつ、オペレーターのエイーダに状況を訪ねる。

 

「ふぅ……様々な状況があった中、ようやくサンクキングダムに進路を向けられるか……現在の艦の周囲の状況とサンクキングダムへの到達時間は?」

 

「はい、特に異常は見られません。特異な機影等の反応もありません。光学迷彩の効果もあるかと……極力の戦闘を避けるべく、人の手が及んでいないユーラシア大陸の山岳エリアに進路変更しました」

 

「……というと?」

 

「現在、中華圏エリアではOZプライズの通常の財団派と最近一斉武装蜂起した中華覇権派の内戦が勃発しています。その為、現在の進路は当初予定していた東、南シナ海、ベンガル湾を通るルートを変更し、北方エリアの山岳地帯を通ってスカンジナビア半島を目指すルートとなってます」

 

「なるほど……そう言えば直近ではそのような事態が起こっていたな。ずいぶんと内乱が好きなものだなOZは……」

 

「クスっ、全くですね!!いっそ両方滅べばいいのに……あ、失礼っ、私語がっ……こほんっ、以上の計画航路の現在の状況では約一日と数時間あればサンクキングダムに到達できるかと思われます」

 

「了解した……先の戦闘の後だ。できる限り戦闘は避けたいな。他のクルー達やパイロット、メカニック達にも余裕を持った休息をさせてやりたい。特に今、救出できた被験者達の為に懸命に動いてもらっている医療スタッフ達やカトル君、ロニ嬢には特にな。贅沢を言えばサンクキングダムで更なる休息が欲しい所だ」

 

 ケネスはヒイロ達の、特にカトルとロニへの休息を配慮する気持ちを汲み取り、更なる安息の場を与える意気込みを示した。

 

 エイーダもまた、サンクキングダムへネェル・アーガマからの要望を送る旨を伝える。

 

「了解です!!今のうちにサンクキングダムへこちらからの要項を通達しておきます!!」

 

「後、立続けに悪いが、医療スタッフやヒイロ達、クルー、メカニック達にも適度な休息をとるよう、艦内放送で呼び掛けてくれ」

 

「はい!!ですが……ヒイロ達は今……」

 

 一方で、今回のヒイロ達の戦闘の事後処理が暗と明の二つに別れ、前者は休み無く行われていた。

 

 本来であれば公正的に捕虜を扱う部屋において、恨み連なる拷問がなされていた。

 

 ヒイロ、デュオ、トロワ、ラルフ、アブドゥル達が互いに気が済むまで身動きがとれないように拘束したリディの四肢に向け、ハンドガンで一斉に発砲し続けていた。

 

「がぐヴぁあああああああああ!!!ぎゃあああああああ!!!ぐぇるがががヴぁあああああああ!!!」

 

 阿鼻叫喚のリディの絶叫の中、やがて弾薬が尽きる。

 

「ギギギギィいうがががああああ……!!!!!!」

 

 拘束されたままのたうちうごめくリディに、まずラルフが連続で殴りにかかった。

 

 怒りの余りに発する言葉も初めは無言であった。

 

「…………っっ!!!!!!てめぇがオデルを殺りやがったんだってなっっ!!!!よくもオデルをおおおお!!!!」

 

 世代的にもオデルと同期であるラルフにとってリディは親友を奪った敵だ。

 

 ラルフは溜まった怒りを徐々に加速させ殴り続ける。

 

「っっ………!!!らああああああ!!!!」

 

「ぐぅぐぅうっっ!!!」

 

 渾身のフルスイングでリディを思いっきりブン殴るとラルフはヤケクソ混じりにふらつきながら後ろへ向かって地べたに腰を落とした。

 

 続いてアブドゥルが怒りの拳をぶつけにかかる。

 

「ぐぶぅふぁ……!!!!」

 

「てめぇがっ……!!!てめぇがあの時ムラサメ研究所を撃ったガンダムのパイロットかぁ!!!?あいつはなぁっ……あいつはな!!!ようやく探してた女性とあの場で再会できたんだ!!!しかもその時、彼女の方はベントナとかいう下道野郎に非人道に好き勝手されていた……やっとその彼女に光りがさした矢先っっ……!!!!てめぇが撃ちやがった!!!!!あああああああ!!!!!」

 

 アブドゥルは偶然突撃の際に居合わせ、感情移入させられたネェル・アーガマクルーのメンバー、ヴィンセントとその恋仲だったと思われるクロエを想い激昂する。

 

 彼の溢した少しの話からも、二人は苛烈な運命の果てにムラサメ研究所で再会できた。

 

 だが、リディはアブドゥル達の目の前で彼らを葬ったのだ。

 

「それだけじゃねぇっっ!!!他に救出を控えていた被験者達や救出にあたっていたここのクルー達もやりやがった!!!」

 

 アブドゥルは気が済むまで殴りに殴り続けた。

 

 やがて殴り疲れたアブドゥルは振り返りながら壁に向かい寄りかかった。

 

「さ……お次は俺か……!!!!」

 

 デュオはバキバキと拳を握りながらリディに歩み寄る。

 

 リディの眼前に立ったデュオは、歯と拳を握り固めながら渾身の力を込める。

 

「殴り過ぎて死なれたら元も子も無ぇ……実の弟のアディンの怒りが残ってるんだからな!!!オデルを奪われた俺達や、てめぇのせいで犠牲になった被験者達、ここのクルー達の怒りは、この一発にかけさせてもらう……ぜっっっ!!!!」

 

 全力の怒りを籠めた重いデュオの一発がリディの頬骨を砕いた。

 

「ぶごぉほぉっ!!?」

 

「……死神さえ死を与えちゃくれねぇ生き地獄を味わい続けな……!!!!!」

 

「ぐごごががっっ……!!!!」

 

 デュオがリディにそう吐き飛ばすと、次にトロワが予めしていた皮手の手袋で引っ提げていた袋から数枚の葉っぱを取り出した。

 

 デュオもそれが気になり、思わず着目する。

 

「なんだ、それ?!!」

 

「ギンピーギンピーという毒の葉だ。葉には細かい毒の針があり、これが皮膚に刺さると強烈という言葉では片付けられない程の超激痛を与える。奴に俺達の怒りを表現したモノを魂の根まで刻みつける……!!!先に言いたい事がある者は奴に今の内に言っておけ……」

 

 するとヒイロが黙ってリディに迫り、彼の胸ぐらを掴み上げる。

 

「ぐぅ……!!!」

 

「……リディ・マーセナス!!!貴様が俺達にしたことは死では生ぬるい……更なる覚悟をするんだな。それと……マリーダを人形呼ばわりした事を撤回・謝罪しろ……!!!!俺は貴様がオデルを殺したコトと並ぶ程の怒りを覚えた……!!!!!」

 

 ヒイロの怒りの問いに、リディはデュオの一撃でダメージを受けた顎で身の程を知らない発言を流す。

 

「何……がと(だと)?!!あご(あの)……ニューダイブ用MSい(に)乗っげいかやかが(っていたやつが)……あんが(なんだ)……といぐん……がっっ(というん……だっっ)、ぐぅぐぅうっっ?!!!」

 

 ヒイロは更に強くパイロットスーツのエリ元を締め上げる。

 

「……撤回するか、しないのか?!!謝罪するか、しないかっ?!!どうなんだっっ……?!!!」

 

「がぐぅっ……!!!!人形がんてっ(なんてっ)、本当の……ごどがろうがっっ(ことだろうがっっ)……!!!!」

 

「貴様っっっ―――!!!!」

 

 くわっと怒りの眼光を見開いたヒイロは、思いっきりリディの顔面をブン殴った。

 

 

 

 ゴグガァッッッ!!!!

 

 

 

「ごぉぇがっ……!!!?!げがっっっ……!!!おここかっっっ……!!!!」

 

 顔面に及んだ強烈なダメージに、リディはのたうち悶える。

 

 それを見ていたデュオも、視覚かつ錯覚的な痛みを感じ鼻をおさえる。

 

「うっわぁ……ヒイロやりやがった……かぁ~!!!痛ってぇ~!!!見てるこっちが痛み感じらぁ!!!」

 

「……トロワ、好きにやれ。コイツは超激痛を与えるにふさわしい。俺にも皮手とギンピーギンピーをくれ。そいつ以上に苦悶を与えるべき下衆がいる……!!!!!」

 

「了解した。片方をくれてやる。慎重に扱えよ」

 

 ヒイロはトロワからギンピーギンピーを預かると部屋を後にする。

 

 するとヒイロの後方より、ギンピーギンピーの毒針による形容しがたいリディの叫び声が聞こえてきた。

 

 ヒイロが向かったもう一つの捕虜を収容している部屋には、ベントナが拘束されていた。

 

 その部屋に何の挨拶なくヒイロが入り込む。

 

「ヒイロ!!?」

 

 取り調べをしていたクルーが突然のヒイロの入室に意外をくらう。

 

「……コイツから何か情報は吐き出せたか?」

 

「え?!あぁ。意外にもあっさりな。だが、信用の決め手がな……ん?!!なんだそれ?!!」

 

「拷問用の毒の葉だ。使うといい。信用問題ならば俺も立会う……いや、立会わせろ。奴の証言とゼロシステムが見せた要点と裏付けができる。それに、俺個人としても恨みの用がある……!!!」

 

「そ、そうか!!心強いな!!」

 

 ヒイロは腕組みしながらベントナを睨み付けた。

 

 一方、救出することができたムラサメ研究所の一部の被験者達に、適切な処置を施すべく、サリィが奮闘していた。

 

「……これでよし。あなたは当面は安静でね。では次の方の処置に移るから!!カトリーヌ!!臨時病棟指定した部屋にこの方運んでちょうだい!!」

 

「わかりました!!」

 

 サリィは被験者が頷くのを見届け、彼女も頷き返してカトリーヌに指示しながら次の被験者の処置に移る。

 

「ジュリ!!次の被験者の処置に移るから、またメモに指定した薬を持ってきて!!」

 

「はい!!」

 

「マユラは、点滴器具の新しいもの持ってきてね!!」

 

「はーい!!」

 

「サリィさん!!言われてた安定剤持ってきました!!」

 

「アサギ、ありがと!!そこに置いといて!!」

 

 サリィの手伝いにと、カトリーヌやジュリ、マユラ、アサギ、更にはマリーダも参加していた。

 

 サリィの下に舞い戻ったマリーダが指示をあおぐ。

 

「さっき指示された患者は指定された部屋に送り届けた。次はどうすればいい?」

 

「ありがと!!そうね……ここから先は、処置を終えた一人、一人にメンタルを治癒させるよう、声をかけていってもらいたい。カウンセリングと言うと素人には重く感じそうだけど……そう、励ましていってあげて!!」

 

「励ます……?」

 

「えぇ!!あなたは実際に強化処置の苦しい経験をして、今こうして克服して乗り越えてきている……リアルに経験した者じゃなきゃできないコトよ」

 

 サリィのその言葉を聞かされたマリーダは、ある種の気付き、衝撃を受けた。

 

「私でなければできない……?!!」

 

「そうよ!!自信持って、ボロボロになった彼らの心を救ってあげて!!頼んだわよ!!」

 

「あ、あぁ……わかった!!やってみせよう!!」

 

 新な何かを見出だせたマリーダは、再び臨時病棟の部屋に戻っていった。

 

 (確かに……私ならば彼らが味わってきた苦しみがリアルにわかる……!!!身を売り出されたあの日から昨今の強化措置まで、あれらのコトはとてつもなく酷い経験だった……だが、その経験は決して無駄じゃなかった……!!!)

 

 一方、既に医療処置を終えていたロニはカトルと二人の世界にいた。

 

 二人は長期に渡る疲労もあり、お互いに寄せ合いながら眠りについている様子だ。

 

 背もたれ式のベッドに寝るロニのお腹には、カトルが机に伏せるような体勢で寝ており、ロニのその右手はカトルの頭を撫でるように置かれている。

 

 カトルとロニの二人が願っていた状況がそこにあり、それはカトルの闘いが一旦の区切りを見せているようでもあった。

 

 サンクキングダム自衛基地において先程エイーダが打診した要望が届き、ミスズにオペレーターがそれを伝える。

 

「ミスズさん!!メテオ・ブレイクス・ヘルのネェル・アーガマより、電文!!!読みます!!!ワレ、キクンノコッカコクボウニ、ジョリョクス。アス、ミメイニモトウタツヨテイ。キョクトウニテキュウジョシタ、ジンタイジッケンヒガイシャボウメイモフクメ、ワレワレノキュウソクモキボウス……だそうです!!!」

 

「なんと……向こうからコンタクトを?!!しかし、本当に本物なのかわからない以上、最小限で返答しろ。場合によればOZプライズの奴らの姑息な罠も否定できない!!!」

 

 当然ながら、ミスズは唐突なメテオ・ブレイクス・ヘルからのコンタクトに対し、警戒する姿勢を見せる。

 

 耳元の髪をかき上げる仕草をしながら、警戒した上での返答を指示した。

 

「次のように打電しろ……いいか?」

 

「はい!!どうぞ、ミスズさん!!」

 

「リョウカイシタ。タダシ、マダヨウキュウハウケツケナイ。トウジツハコチラカラコッキョウフキンマデデムカエル。コッキョウテマエ、10マイルデカナラズテイシ、アイズセヨ……とな」

 

「はっ!!!」

 

 (もし本物であるならば、サンクキングダムの国防力は凄まじいものとなる!!!ふふふふっ、不思議なものだ。ついこの前まで敵であったはずの彼らを頼もしく思え、共闘できるとはな……リリーナ様やミリアルドにも早速報告しなければ!!!)

 

 半ば半信半疑ながら、ミスズはミリアルドとリリーナにこの事を報告した。

 

 当然ながら兄弟揃って驚きを隠せなかった。

 

「何?!!メテオ・ブレイクス・ヘルがコンタクトを?!!」

 

「ミスズさん、本当なのですか?!!彼らはなんと??」

 

「はい。我が国の国防に助力してくれるとのことで、明日未明にもサンクキングダムに到達予定。救出した人体実験被害者達の亡命や彼ら自身の休息を要望してきました!!」

 

「……お兄様!!!」

 

「本当に彼らだとするなら、まさに宿願が叶う!!!」

 

「ですが、現時点では完全に彼らだという確証はないので、我が国境の手前で必ず停止するよう打電しました。明日は偵察兼ねて私が部下と赴きます」

 

「ならば私も行こう。万が一敵勢力の罠なら、私がいた方がいい」

 

「ミリアルド、あまり見くびらないでほしいな?国防の要の為にサンクキングダムに居てくれなくては困る」

 

「はは!!敵わないな、ミスズには……なら、ライトを連れていくといい。凄く面白いことになるだろう」

 

「面白いこと??」

 

「……ふふっ、ヒイロ・ユイ……私のライバルたるガンダムのパイロット……本物ならば奴はいるはずだ」

 

「ライトと瓜二つっていう方ですか??お兄様??」

 

「あぁ……できれば刃を交え、決着をつけたいが……今はそうは言ってられん。奴は本当に心強い……!!!」

 

「お兄様がそうまでおっしゃる方だなんて……ライトと瓜二つっていうのも気になります」

 

「会ったとしても、ライトと間違えるなよ?リリーナ?」

 

「もう、お兄様ったら!!」

 

 

 

 

 妹蘭の墓標から戻って来きた五飛と李鈴が再びコロニー内の拠点に戻る。

 

 戻ったと同時に李鈴は部下に状況報告を要求した。

 

「只今戻った。状況はどうだ?」

 

「今は機体のメンテを進めております!!李鈴隊長の機体も現在、予備の下半身を取り付ける作業をしています!!!」

 

「外の護衛隊からも異常を知らせる緊急通信はありません!!」

 

「形では我々がここを制圧した状況だ。このまま平穏なはずがない。奴らのテリトリー中のテリトリーの一部なんだ。油断するな!!!」

 

「了解!!!」

 

 そう言いながら、李鈴は五飛と共にその場を後にした。

 

 彼女のその姿を見た部下の二人がひそひそ話をはじめる。

 

「おい……隊長と一緒にいるあいつは、確かガンダムの……」

 

「あいつとか言うな。俺達の恩人中の恩人なんだぞ!!」

 

「わ、悪ぃ……それにしてもあのガンダムパイロット……小耳に挟んだが、昔の恋人が隊長と瓜二つらしい……」

 

「マジか?!!じゃあ、できてるのか?!!二人は?!!!」

 

「しぃっ!!!隊長に殺されるゾ!!!」

 

 するとキッと李鈴は二人を睨んだ。

 

「やべっ!!!」

 

 だが、李鈴は部下達からしれっと五飛に顔を向き直し再び歩く。

 

「ん?どうした?」

 

「……別に……ところで五飛、改めて妹蘭さんとはどんな人だったんだ?」

 

 五飛に向き直った李鈴はかつての妹蘭について尋ねずにはいられなかった。

 

「妹蘭は……強い女だった。先程言ったように、自らを哪吒と称し、正義を重んじていた。当時の俺は俗にいうインテリのような学問や理論を重視奴でな……正義という感情論には冷めていた。妹蘭とはまるで意見が合わなかったな……」

 

「え?!でも、結婚していたんじゃ……??!」

 

「結婚といっても龍一族のシキタリであって、恋愛感情関係なく14歳で結婚させられたのだ。だが、最終手的には分かり合えていたかもな。あいつが身を挺してシェンロンガンダムを守った時は……」

 

 深緑のリーオーヘッドのトールギスで出撃し、妹蘭はかつてティターンズが引き起こした30バンチ事件以来の毒ガス攻撃から故郷のコロニーを守るべく奮闘した。

 

 だが、トールギスの殺人レベルの加速Gの後遺症で死に至ってしまったのだ。

 

 だからこそ現在シェンロンガンダム、そしてそれが新たな力を得て生まれ変わったアルトロンガンダムには彼女の意思が宿っていると五飛は確信しているのだと……それらのエピソードを歩きながら五飛は李鈴に語って行った。

 

 改めて色々なエピソードを聞かされた李鈴は言いづらかったことを告げる。

 

「……なぁ、五飛……じゃあ、今……妹蘭さんは……私のことをどう思っていると思う?やはり……嫉妬されてしまっているだろうか?」

 

「ふッ……何を言い出すかと思えば……」

 

「な、何を笑う?!!」

 

「怒るな。妹蘭はそんな器が小さい女じゃない……それに実際にお前は戦士としている強い女だ。仮に妹蘭がお前を認める認めないで言えば……きっと認めるだろう」

 

「じゃあ……もう一度妹蘭さんのお墓に戻ろう……彼女に伝えたいコトがある……口に出してな……」

 

「そうか……ならば……」

 

 だが、五飛がそう言いかけたその時、コロニー内全体に警報が鳴り響き始めた。

 

「っ?!!何だ!?!」

 

「………敵襲かっ!!!」

 

 五飛いわく、コロニー外部では絶望的な大部隊の紅いリゼル・トーラスが押し寄せ、一斉射撃を行っていた。

 

「何で気づくのが遅れたんだ!??」

 

「わからねぇぇ!!!急にビームの大射撃がはじま……がぁああああああっっ!?!!」

 

 コロニーの警備にあたっていた斗争のリーオーやジェガン、ハイザック、マラサイ等のMS達が次々とビームに撃ち貫かれ爆発する。

 

 その機体数はゆうに150機以上はいた。

 

 応戦しようにも、遠方射撃故に応戦しきれない斗争のMS達であったが、再びこの流星弾雨のごとしビームが撃ち止む。

 

「何だ?!?ビームが止んだだと?!!」

 

「とにかく報告しろ!!!」

 

 コロニーに警報が鳴り響く中、バイアランカスタムの機内で待機していたディエスに報告が入った。

 

「何?!!紅いリゼル・トーラスの大部隊だと?!!奴らめ……無人機で報復掃討するつもりか……!!!直ぐに出る!!!死ぬなよ!!!」

 

「はい!!!現在、何故か攻撃を止めて進撃中です!!!反撃します!!!」

 

「?!!下手に行動するな!!!待ってろ!!!……攻撃停止?!!何か変だ……!!!」

 

 状況の違和感を感じながらも、ディエスとバイアランカスタムはコロニー外部へと出撃した。

 

 一方、五飛と李鈴はMSドックへと向かっていた。

 

「奴らめっ!!!これは絶対報復攻撃だ!!!許すものか!!!」

 

「……李鈴!!!」

 

 駆けていた五飛は李鈴の背中に、かつての妹蘭の姿を重ねていた。

 

 シェンロンガンダムを守ろうとした彼女の姿を。

 

 その直後、五飛は言いようのない悪い予感を過らせた。

 

 同時に彼女の肩に手をかけ、互いに静止させる。

 

「まて!!!李鈴!!!」

 

「なんだ?!!どうしたんだ、突然?!!」

 

「……李鈴!!!MSに乗っても待機していろ!!!」

 

「な?!!何を言い出す!!!私は戦う!!!私は斗争のリーダーなんだぞ?!!仲間がやられるのを後ろで見てろと?!!!」

 

「違う!!!とてつもなく、嫌な予感がした……!!!その予感、正しければかなりの強者が襲撃するだろう……お前の役目は俺が引き受ける!!!」

 

「……五飛……まさか、妹蘭さんを私に重ねているとでも……??」

 

「っ……当たらずとも遠からずだな……俺は二度とあのような後悔はしたくない!!!とにかく!!!ここは俺とナタクに任せろ!!!いいな!!!」

 

「五飛……!!!」

 

「……ナタクっ、俺達は今あるこの時を守るぞ!!!歴史は繰り返させん!!!」

 

 五飛はかつての悲劇を繰り返さまいという決意を胸にアルトロンガンダムのコックピットに身を投じる。

 

 起動するアルトロンガンダム。

 

 中華覇権派OZプライズが押し寄せる現状況は、かつてOZが毒ガス攻撃を仕掛けてきた時に酷似していた。

 

 しかし、今は違う。

 

 シェンロンガンダムが双頭龍となったアルトロンガンダムがここにいる。

 

 今振るわずしていつ振るうのかという闘志を五飛は全身全霊にたぎらせていた。

 

「俺が……俺が正義だ!!!お同じ民族として恥ずべき悪しき連中は、この俺が叩き潰す!!!」

 

 ギンと両眼を光らせたアルトロンガンダムは、悪しき者たちが押し寄せる宇宙に向かい出撃していった。

 

 ディエス達は不気味に攻撃をしてこない敵機群に息をのみながら警戒する。

 

「必ずなにかある……!!!下手に動くなよ!!!」

 

「了解!!!ん?!!」

 

 突如なる敵機接近アラート……不気味に攻撃をやめたマリオネット達の反対側より、別働隊が接近しつつあった。

 

 五飛の故郷のコロニーは挟み撃ちの図式にはめられてしまったのである。

 

「ディエスの兄貴!!!この反対側のポイントに別の部隊が接近してやがるぜ!!!」

 

「何?!!確かにあちら側にも増えつつある……!!!出撃準備中の奴らに告ぐ!!メイン出撃ハッチの反対側にも大部隊が接近中だ!!!そちらにも回ってくれ!!!」

 

 その方を聞いた斗争のメンバーは反対方向から来た中華覇権派OZプライズにターゲット選定して向かっていった。

 

 次々と出撃していく斗争のMS達ではあるが、その物量差は明らかであり致命的であった。

 

 更にこちらの部隊は斗争のMS隊が接近すると、容赦のない攻撃を仕掛けてきた。

 

 中華リゼル・トーラスの大部隊によるビームランチャーの流星弾雨が降り注ぐ。

 

「こっちのやつらは攻撃してきやがるぞ?!!があああああ!!!」

 

「ちっくしょおおおおおお!!!」

 

 ジェガンやリーオー、ジムⅢ、ネモ、ハイザック、マラサイといった数々の斗争MS達が成すすべなく爆散していく。

 

 そもそもの攻撃有効射程距離が違い過ぎていた。

 

 一方のディエス達の側では不気味な静寂の中から1機のMSが接近しつつあった。

 

「くはははははは!!!こっちは壁でしかないリゼル・トーラスだが、あちらじゃあ攻撃加えてるからなア!!!挟み撃ちでじわじわ狩らせてもらうぜぇ!!!」

 

 紅烏が駆る真紅のユニコーンガンダム、ガンダムC-フェネクスであった。

 

「あれは……!!!ガンダム……?!!」

 

 その存在にディエスは驚愕した。

 

 敵として相対した時のガンダムの威圧感や畏怖、絶望感は壮絶なモノをディエス達に与えてくる。

 

「うあ……?!!!」

 

 既に敵にガンダムがいると分かった瞬間に戦意を喪失する者もいた。

 

「くひひっひひひ!!!感じるぜぇ……絶望感をなァあああああ!!!まずは貴様らだあああああ!!!!」

 

 凄まじき機動性で、ガンダムC-フェネクスはディエスのバイアラン・カスタムではなく、後方にいた斗争のMS達に狙いを定めた。

 

「まず一匹いいい!!!」

 

「ああああ……!!!」

 

 

 

 ギャズガアアアアアアアアア!!!

 

 

 ガンダムC-フェネクスに萎縮してしまったメンバーが乗るネモが、挨拶代わりと言わんばかりにレフトアームのアームドファングで破砕された。

 

 その一撃を皮切りに、アームドファングによる破砕攻撃をリーオーやジェガン、マラサイ、ズサ、ゲルググMに次々に浴びせ続け無双の限りを尽くしていく。

 

 更に次のハイザックに襲い掛かった瞬間、アームドファングのセンターからビームサーベルを発動させ、ズタズタに引き裂いて見せる。

 

 

 

 ザザギャアアアアアア!!! ガズシュッッッ、ズギガアアアアッ、ザシュガアアアアッッ!!!

 

 

 成すすべなく反撃の間さえ与えてくれないガンダムC-フェネクスの猛撃。

 

 ジムライフルをやっとに想いで撃ち放ったネモにアームドファングが容赦なく穿ち掴んだ。

 

 

 

 ガズグウウウウンッッ!!!

 

 

 

「くくくくひっひひひひははははあああ!!!!」

 

 紅烏は狂気の嗤いをすると、ネモを掴んだまま斗争のMS達に向け、ライトアームのアームドバスターを撃ち放つ。

 

 

 

 ヴウウウウッッ……ヴヴァルアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!!

 

 

 解き放たれたビーム過流は一直線に突き進んで、多数の機体群を爆砕させていく。

 

 中には中ってなくとも、高エネルギーのプラズマ奔流の影響で爆発していく機体もいた。

 

「たのしいいなあああああああ!!!!」

 

 

 

 ヴヴァアアアアアアアアア!!! ヴヴアアアアアアアアッ、ヴヴァアアッッ、ヴヴァアアアッッ、ヴヴァアアッ、ヴヴァアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!

 

 

 

 紅烏はとち狂ったようにアームドバスターを乱発しまくる。

 

 百発百中にその狂い放たれたビーム過流が直撃していき、斗争のMS達は爆炎光と化して壊滅的なまでに破壊されていく。

 

 しかも、紅烏はわざとディエスに攻撃せずにいたのだ。

 

 更にチャージしたアームドバスターを撃ち放ち、それを撃ち放ったまま振り回し、出撃していた斗争のMS達を壊滅させながら、コロニーにも被弾させてみせた。

 

 斗争のメンバー達は周囲に拡大する幾つもの爆発光と散っていった。

 

「ひひひっひひ……!!!なァ、怖いかぁ?!!」

 

「ひ?!!ああああ……やめッ、やめてくれ!!!」

 

 急に紅烏は掴み続けるネモのパイロットに畏怖を飛ばす。

 

 当然ながらネモのパイロットの戦意は当の前に崩壊していた。

 

「いいなあ?!!恐怖の命乞い!!!いいなあああ!!!!」

 

「ひいいいいい!!!いやだああああああ!!!」

 

 この時、ディエスは紅烏がビームサーベルを直に突き刺すと確信した。

 

「これ以上はやめろおおお!!!力量の差は歴然だ!!!そいつを開放して俺と戦えぇええええ!!!」

 

 ディエスはそう叫びながらバイアラン・カスタムをガンダムC-フェネクスへと飛び込ませる。

 

 だが、非情にもバイアラン・カスタムがビームサーベルを発動させた瞬間に、紅烏は口角を最大に上げながらビームサーベルを発動させてネモの胸部を貫いた。

 

「ひゃあふああああああああ!!!」

 

 そして奇声を上げながら串刺しにしたネモ諸共バイアラン・カスタムにぶつけてきたのだ。

 

「な……??!」

 

 

 

 ガズグウウウウンッッ!!!

 

 

 

「ぐおおおおお?!!」

 

 バイアラン・カスタムに物質的ダメージを与えながら、串刺しにしたネモを焼灼破壊させつつ執拗に繰り返しぶつけ続ける。

 

「ぎひ!!!ぎひ!!!味方で攻撃される気分どうだ?!!ききききき!!!」

 

「ぐうッッ……卑劣なああああ!!!」

 

 ディエスが下手にビームサーベルを中てれば確実にネモを破壊する。

 

 否、既に手遅れに等しかったが、それでも自らの手で同法を犠牲にはできないでいた。

 

 故に、ディエスは防戦一方となる。

 

「きいいいひひひひひ!!!もう飽きた!!!」

 

 そう言い放ったディエスは、ガンダムC-フェネクスを某新選組キャラの必殺技の体勢のごとく、斜に構えた体勢にさせると、かざしたアームドバスターを串刺しにしたネモに当てる。

 

 そしてネモをアームドバスターの至近距離射撃でえげつなく破壊させながらバイアラン・カスタムに向けて撃ち放った。

 

 辛くもそのビーム渦流を躱し、いよいよ怒りが頂点に達したディエスはビームサーベルでガンダムC-フェネクスに斬りかかる。

 

「貴様ァあああああああ!!!」

 

 しかし、驚異的な機動性にその一撃は難なく躱され、次の味方機の撃破を許してしまう。

 

 アームドファングによる繰り返しの執拗な破砕攻撃をマラサイに加え、その機体を次に襲い掛かったリーオーにブチ中てて、アームドバスターで2機まとめて吹き飛ばす。

 

 更に右サイド上にいたジェガン、ガルスJ、ガザD、ギラ・ドーガ達をアームドバスターのビーム過流で更に消し飛ばして見せた。

 

 紅烏は確実に面白半分で格下のMS達を一掃していた。

 

 その圧倒的恐怖に耐えかねた斗争のMSの面々は次々に敵前逃亡を開始する。

 

「だめだ!!!桁違いにも程がある!!!」

 

「に、逃げるしかない!!!」

 

 しかし、逃げようと離脱していく機体達に攻撃の手を収めていた中華リゼル・トーラス部隊が一斉に反応を示し、攻撃を加え始める。

 

 そのメガビームランチャーの一斉射撃により、本当にディエスを残して斗争のMS隊は壊滅してしまった。

 

 その爆発の光景を見ながら紅烏は嗤った。

 

「はひゃひゃああ!!!ひひひっひひ!!!逃げる機体には一斉攻撃っていうプログラムがしてあるんだ!!!ざまァみそらせぇ!!!」

 

「貴様は!!!貴様はァあああああああ!!!」

 

 ディエスの怒りのビームサーベルがガンダムC-フェネクスに迫る。

 

 それをアームドファング側のビームサーベルが受け止めた。

 

 互いに繰り返しビームサーベルをぶつけ合わせ、五度目の打ち込みでスパークを生じさせながらつば競り合いに持ち込む。

 

「貴様らはどこまで卑劣だ?!!何のためにここまでの非人道な事をする?!!」

 

「逆らったから報復したんじゃん?!!当然だろう?!!」

 

「それ以前のジェノサイドの事だ!!!」

 

「愚民だから我々に利益になってもらう。愚民の『中身』っていいマネーなんだぜ?!!全ては力だァ」

 

「な?!!このクソ外道共がああああああああああ!!!」

 

 押し当てたビームサーベルを弾き捌いたディエスは、最上級の怒りの攻勢に出る。

 

 繰り出される斬撃が幾度もガンダムC-フェネクスに撃ち込まれる。

 

 だがその度にスパークが生じ、紅烏は攻撃を受け止めながらわらっていた。

 

 一方、反対側では中華リゼル・トーラスの激しい攻撃は、斗争のMS達を撃破しながらコロニーの外壁にも攻撃を及ばさせていた。

 

 その最中、陣形が著しく崩され破壊されるリゼル・トーラスの機体群があった。

 

 アルトロンガンダムの無双猛撃が、中華リゼル・トーラスを撃破し続ける。

 

「覇ァああああああああ!!!」

 

 

 

 ヒュゴアッッ……ディギィギャガガガガガアアアアアアアアアアアアアッッッ……ドォドォドォドォドォゴバアアアアアン!!!

 

 

 

 ツインビームトライデントの薙ぎ一振りが周囲にいた5機のリゼル・トーラスをまとめて斬り飛ばし、連続爆発を巻き起こさせる。

 

 アルトロンガンダムの攻撃に絶える間はなく、テールビームキャノンによる攻撃も連動するように周囲のリゼル・トーラスを次々に撃ち墜とし続ける。

 

 

 

 ドォビァアアアアアアアアアッッッ!!! ドォビアアアアッ、ドォビアアアアッ、ドォビアアアアッ、ドォビアアアアッ、ドォビアアアアッ、ドォビアアアアッ!!!

 

 ヴィディリリリリリリ……ヴァズドォオオオオオオオオオオオオッッッ!!!

 

 

 

 その一撃一撃が確実に中華リゼル・トーラスを撃ち貫いて爆散させていき、更にはチャージショットでビーム過流の射撃を撃ち放つ。

 

 固まって陣形を執っていた中華リゼル・トーラス達は瞬く間に爆発光と化して拡がっていった。

 

「自分達の手は汚さす、MDに攻撃を仕向けさせるとは……どこまでも卑劣な馬鹿だな!!!ならば、俺という正義が、貴様たちの卑劣な極悪を徹底破壊してやる!!!」

 

 アルトロンガンダムのツインビームトライデントの強烈な刺突が1機の中華リゼル・トーラスの胸部を穿つ。

 

 

 

 ディギャズウウウウンッッ、ゴバオオオオオオンッッ!!!

 

 

 その中華リゼル・トーラスの爆発を突き抜けたアルトロンガンダムはレフトアーム側のツインドラゴンハングをブチ中て、その牙で豪快に中華リゼル・トーラス胸部を砕き潰すと、更に周囲の機体群に連続で襲い掛かる。

 

 ツインビームトライデントの突き、袈裟斬り斬撃からの横薙ぎで斬り飛ばす。

 

 

 

 ドォガオオオオオオオンッッッ!!! ザギャガアアアアッッ、ズギャダアアアアアアアアンッッ!!!

 

 

 

 更に振るう袈裟斬り斬撃が2機の中華リゼル・トーラスをまとめて斬り砕き、レフト側のツインドラゴンハングを側面側にいた中華リゼル・トーラスを砕き穿つと、大きくツインビームトライデントを振るい薙いで4機まとめて斬撃を浴びせた。

 

 

 

 ズバギギギャアアアアアアンッ、ゴバギャアアアアアアンッッ、ディギャギイイイイイイイインッッッ!!!

 

 ズザドォオオオッッ!!!

 

 

 

 更に背後からビームサーベルで斬りかかろうとした中華リゼル・トーラスに後部側のツインビームトライデントを刺突させ、その攻勢を許さない。

 

 その上、テールビームキャノンによるオート精密射撃により、その名の通りにアルトロンガンダムは格闘戦の攻勢をぶつけながらも、周囲の離れた中華リゼル・トーラスを射撃で自動掃討されていくのだ。

 

「俺の正義は誰にも止められん!!!でやあああああああ!!!」

 

 斬り上げと袈裟斬りの二連斬撃、右薙ぎ、左斬り上げ、唐竹、突き、左薙ぎ……五飛は絶えることなく中華リゼル・トーラス達に本格的な斬撃を浴びせ始めた。

 

 怒りかつ怒涛のツインビームトライデントの斬撃の乱舞が、繰り出される龍の牙が、龍の尾から放たれる高出力かつ精密射撃ビームがそれぞれの攻撃に組み合わさり、確実に悪しきマリオネットをより激しく一掃させていく。

 

 後方では援護する間も与えられない斗争の面々が固唾を飲み続けていた。

 

「す、すげぇ……!!!」

 

「あんなにいた敵機がもう半分近くまで撃破されていっている……!!!」

 

「すごいだろう?」

 

「え?!!リーダー?!!」

 

 すると彼らの後方には出撃を控えさせられていた李鈴がバウ龍飛で駆けつけてきていた。

 

 李鈴が追いつくと、一行はアルトロンガンダムの無双雄姿を見守り続ける。

 

「あれが以前、私達を助けてくれたガンダムだ。メテオ・ブレイクス・ヘルの龍のガンダム……よく見ておけ……あれがガンダムの正しき戦い方だ。正義をかかげ、理不尽な悪を討つ存在……!!!」

 

「ガンダムの……正しき戦い!!!」

 

 それから約五分程の時間で、彼らがいた側の中華リゼル・トーラスは壊滅した。

 

「はぁ……はぁ……まだだ。まだ向こう側に……ん?!」

 

 その時、李鈴の機体が出てきてしまっていたことを確認した五飛は、真っ先にその場所へ機体を向かわせた。

 

「あれ程出てくるなと言った!!!」

 

 李鈴達に向かう最中だった。

 

 突如としてビーム過流が側面上から走り、李鈴達の機体を呑みこんだ。

 

 

 

 ドォヴギュアアアアアアアアアアアアア!!!

 

 

 

「きゃあああああああ?!!」

 

 

 

 その一撃で李鈴達の機体は爆発四散し、斗争は確実に全滅した。

 

「な?!!……ぇえええ!!!おのれぇえええええええええええ!!!!」

 

 五飛がモニターを向けた先には、ズタボロになったバイアランカスタムを串刺しにして迫るガンダムC-フェネクスの姿が映った。

 

 怒りに駆られた五飛に更なる怒りが付加される。

 

「李鈴達にディエスまでが……!!!!ふふふッッ、汚く巨大な卑劣外道な悪か……どうやら……俺を本気にさせたいようだな……!!!!」

 

 激しい怒りを通り越した五飛は静かな激しい闘気を纏い始めた。

 

 その時、ディエスの声が五飛に伝わってきた。

 

「五飛……逃げろ……いくらお前のガンダムでも……このガンダムは……!!!」

 

「ディエス……!!!」

 

「貴様との決着が……つけれなかったが……これで俺もフィーアの所にいけ……」

 

 その次の瞬間、ガンダムC-フェネクスは、至近距離からアームドバスターを串刺しにしたバイアラン・カスタムに撃ち放って粉砕させて見せた。

 

「……」

 

 最早五飛の怒りは形容しがたい域に及び、迫るガンダムC-フェネクスに不気味なまでの静かな闘志の眼差しで睨み刺していた。

 

 

「五飛……!!!みなやられちゃった……!!!みんなッ……う、うああああああ!!!ああああああっっ……!!!」

 

「李鈴?!!」

 

 幻聴か否か李鈴の声が、悲しみを交えて聞こえてくる。

 

 彼女が撃破された先の映像を見た五飛は、コロニーの外壁に背を向けたバウ龍飛の姿を確認した。

 

 実はビーム渦流の直撃の間際に、斗争のメンバーが咄嗟の行動で機体を彼女のバウ龍飛にぶつけ、撃破を免れさせていたのだ。

 

 張りつめていたものが弾けてしまった李鈴は、悲しみに声を上げて泣き始めた。

 

 この瞬間に五飛は彼女が無事であった安堵感と引き換えに、違う質の怒りが彼の怒髪天を通り越す。

 

「……李鈴……もう闘うな……俺の後ろにいろ……常にな……!!!見ていろ……これが俺と哪吒の本気だ!!!!」

 

「きええええええええええ!!!!」

 

 アルトロンガンダムに斬りかかるガンダムC-フェネクスのアームドファングの攻撃をレフト側のツインドラゴンハングで受け止めギリギリと軋ませる。

 

「貴様……真正の悪だな……!!!!」

 

「何ィ!!?きっひひひひ、おもしろおおおおい!!!!」

 

 ガンダムC-フェネクスは至近距離からツインドラゴンハングを吹き飛ばそうとアームドバスターを構えた。

 

 だが、次の瞬間……。

 

 

 

 ドォズダアアアアアアアッッッ……バガオオオオオンッッ!!!

 

 

 

「ぎ?!!」

 

 アームドバスターが放たれるより前に、アルトロンガンダムはアームドバスターそのものに対してテールビームキャノンを近距離から放ち、武器破壊に繋げた。

 

 その爆発を皮切りに、2機は大気圏内上でいう上昇する軌道で高速移動し、ツインビームトライデントとビームサーベルを激しく激突し合わせる。

 

 

 

 ディジュガアアッ、ズジュガッッ、ズギガアアッッ、ギャギイイイッッ、ダギャギイイインッッ!!!

 

 

 

 元よりNT-D状態のガンダムC-フェネクスに対し、アルトロンガンダムをPXを発動させて対抗していた。

 

 強化調整されたGNDドライヴや増設されたウィングバインダーの性能もあってか、その機動性は互角以上であった。

 

 弾きあっては激突し、また弾きあっては激突を幾度か繰り返した後、偶然にも李鈴のモニター画面上の視線先で鍔迫り合いの拮抗状態となる。

 

 高性能機であるバイアラン・カスタムですら歯が立たなかった相手にアルトロンガンダムが持てるその力を体現させていた。

 

「五飛……!!!」

 

 ギリギリと拮抗する中、べらべらと紅烏は喋り始める。

 

「これが噂のメテオなんとかのガンダムなのか?!!双頭龍とはしゃらくせえええ!!!」

 

 互いに弾き捌き、ガンダムC-フェネクスが斬撃や刺突を執拗に繰り出し始める。

 

 対し、アルトロンガンダムはツインビームトライデントでその攻撃全てを受け止め流す。

 

「……貴様らは何故このような無意味な覇権拡大を行う?」

 

「ああ?!!決まってんだろ?!!我が民族こそが地球圏の覇権を握るにふさわしい!!!OZプライズとOZが分断した今がチャンスなのさ!!!」

 

「旧世紀の悪しき思考を今に蘇らせるとは……貴様らの言う覇権拡大とは弱者を食い物にし、徹底的に虐殺することか……?!!」

 

「虐殺だァ?!!はひひひ、俺は楽しいからに決まってんだろおおお!!!上の奴らは愚民は労働力と利益って考えてるみたいだぜぇええ!!!あと、逆らう奴や不都合な存在は邪魔だってさあああ!!!」

 

「……それがジェノサイドの根幹か?」

 

「根幹もキンカンも知ったこっちゃねええ!!!お前らは逆らったから倍返しなんだよおおお!!!!この鳳凰、ガンダムC-フェネクスで俺は狩りつくすぜええええええ!!!!」

 

 紅烏のその言葉の直後の一撃を受け止め、再びパワーが拮抗する。

 

「……何が鳳凰だ……鳳凰とは中国に伝わる神聖な幻獣の一つ……それが人々を虐殺するわけがないだろう!!!貴様の駆るそれはただの悪しき害獣に過ぎん!!!そして覇権拡大という名のジェノサイドを強いる貴様らは真正の悪だ……!!!!」

 

 そして力強くアルトロンガンダムはアームドファングのビームサーベルの切っ先をツインビームトライデントで弾き捌き、刺突を繰り出す。

 

 それをガンダムC-フェネクスが受け止め、また両者が拮抗し合う。

 

「ぎいい?!!」

 

「それに我が民族だと……?!?ふざけるな!!!貴様らの言う我が民族は、貴様ら一部の醜悪な愚民族に過ぎん!!!ならば、本来の民族の誇りをかけて、俺は貴様たちを駆逐する!!!!」

 

 

 

 ジャギアッッ、ディッガイイイイインッッ!!!

 

 

 

 捌くと同時に薙ぎの一撃を繰り出して距離をとると、ツインビームトライデントを振り回しそれをガンダ

ムC-フェネクスに向かって投擲する。

 

 その一撃をアームドファングで弾き飛ばしたガンダムC-フェネクスが、それを振りかぶるように襲い掛かる。

 

 そしてアルトロンガンダムはライトアーム側のツインドラゴンハングを伸ばして迫るガンダムC-フェネクスに向かう。

 

 

 

 ディッガイイッッ、ディッガイイイイイインッッ!!!

 

 

 

 龍の牙と鳳凰の牙、もしくは爪が激突し合い、拮抗し合う……まさに双頭龍と鳳凰の激突となった。

 

 だが、既に戦闘のイニシアチブはリーチに有利なアルトロンガンダムにあり、レフトアーム側のツインドラゴンハングが更なる一撃打を与えんと繰り出す。

 

 それをライトアーム側のマニピュレーターで受け止めるも、その驚異的な咬合力でライトアームごと砕き潰した。

 

「覇ァあああああああああ!!!」

 

 五飛の気迫が一気に解き放たれ、アルトロンガンダムのレフトアーム側のツインドラゴンハングの一撃がガンダムC-フェネクスに撃ち込まれる。

 

 

 

 

 ディゴガアアアアアアアアアッッッ!!!

 

 

 

「ぐぎいいいいい?!!!」

 

 

 

 右側胸部にその一撃が炸裂した部位の装甲を噛み砕きながら、アームドファングと拮抗させていた方のツインドラゴンハングに更なるパワーが加えられる。

 

 

 

 ギガギギギギギッッ………バキギャアアッ!!!

 

 

 

 ガンダムC-フェネクスのレフトアームがもぎ取られた瞬間を皮切りに、左右連続で双頭龍の牙が悪獣と化した鳳凰を狩り始めた。

 

 

 

 ディッガッッ、ガディガッッ、ドォガギャッ、ガギャガアッッ、ガズドォッッ、ギャギイッ、ダガギャア、ズガアアッッ、ドォドォドォドォドォガガガガガガッッッ……!!!

 

 

 やがてその攻勢はラッシュになり、ガンダムC-フェネクスの堅牢な装甲をも剥ぎ砕いていく。

 

 

 

 ディッガギャガガガガガガガドォドォドォドォドドォドォドガッガガガガギャギャッッッ!!!!

 

 

 

「ぐあああああああッッ!!!ぎゃああああああああッッ!!!勝てねえええ、勝てねえええよおおおおお!!!」

 

「悪は……蔓延る歪んだ貴様らは……この俺が斃す!!!!正義は……俺が……」

 

 胸部に穿つレフトアーム側のツインドラゴンハングのこの一撃で、一瞬呼吸を溜めた直後に渾身の一撃をライトアーム側のツインドラゴンハングで見舞った。

 

「決めるッッッ!!!!」

 

 

 

 ディッガギャアアアアアアアアッッッ!!!!

 

 

 

 その一撃はガンダムC-フェネクスの頭部を砕き飛ばした。

 

「ひ、ひいいいいいい!!!!」

 

 勝てないと踏んだ紅烏は、先程とは正反対の精神状態となり、一気に機体を離脱させる。

 

 その時、李鈴が五飛に呼びかけた。

 

「五飛、仇を……みんなの仇をとって!!!」

 

 バウ龍飛がツインビームトライデントをアルトロンガンダムに投げ与える。

 

「李鈴……!!!」

 

 先程投擲されたツインビームトライデントだったが、それを李鈴が回収に成功させていたのだ。

 

 ツインビームトライデントを受け取ったアルトロンガンダムは、一気に追撃する。

 

「まだっ……じにたくねぇ!!!おれはぁ……!!!」

 

「散々命をゴミのようにあしらった貴様が言う台詞かあああああああっっ!!!!?」

 

「な、にぃい?!!」

 

 紅烏が五飛の声に気づくも、既に側面上には追撃してきたアルトロンガンダムがいた。

 

 平行追撃していたアルトロンガンダムは更に加速し、ガンダムC-フェネクスを追い抜くと、ツインビームトライデントを振り回しながらの強烈な刺突を超高速で打ち込む。

 

「己よりも格下の命を散々弄んだ、至極当然の報いだっっっ!!!!」

 

 

 

 ドォズギャァアアアアアアアアアアッッッッ!!!!

 

 

 

「がぁはあああ……!!!?」

 

 その一撃は胸部に打ち込まれ、胸部周りのサイコフレームも完全に破壊していた。

 

 そして止めにアルトロンガンダムはPXによる残像を描きながら舞い上がり、強烈なツインビームトライデントの唐竹斬撃を浴びせた。

 

 

 

 ザァディギギャアアアアアアアアアアァンッッッッ!!!!

 

 

 

「ヴぃぎゃああああああああああああっっ!!!!!!」

 

 刺突から繋いだその一撃は、完全なまでに装甲やサイコフレームを破砕させながら、ガンダムC-フェネクスを真っ二つにし、紅烏の左半身を焼灼・蒸発させ、苦悶を与えた。

 

 

「あがががががげがぎがぎぃういいいっっいっっ……!!!!!!」

 

「もう一度いう……正義は俺が決める!!!!」

 

 

 

 ズバァアアアアアアアンッッ……ゴゴバガガァァッ、ドゴォバォアアアアアアアアアアアッッッッッ!!!

 

 

 

 更に真っ二つになったガンダムCフェネクスに薙ぎ斬撃を入れながら、アルトロンガンダムはコロニー側に振り返る。 

 

 それよりオーバーキルダメージを受けたガンダムCフェネクスは、激しく爆砕して宇宙に弾き散っていった。

 

 PXを解除させた五飛は、まだ駐留している中華リゼル・トーラス部隊やそれを指揮している母艦を叩く為に戦闘を継続させた。

 

「まだだ。まだ叩くべき奴らがいる……!!!」

 

 中華リゼル・トーラスが蔓延る宙域に飛び込んでいくアルトロンガンダム。

 

 メガビームランチャーが飛び交い、戦端が巻き起こる中、怒涛の獅子奮迅で闘う。

 

 振りかぶったツインビームトライデントを後部と前部の二連撃の刃で薙ぎ払い、レフトアーム側のツインドラゴンハングで掴んだ中華リゼル・トーラスにテールビームキャノンを至近距離で放って粉砕させ、飛び掛かった中華リゼル・トーラスに対しては後部のツインビームトライデントの刃で突き刺して爆破させる。

 

「力による報復を強いるならば、更なる力でひれ伏せさせる……俺が正義を証明してやる!!!」

 

 攻勢を絶えさせることなく、ツインビームトライデントの乱舞を繰り出しながらテールビームキャノンのチャージショットで一掃させ、その間にレフトアーム側のツインドラゴンハングを叩き込んで一撃破砕を幾度も繰り返し、そして数多の中華リゼル・トーラスを壊滅させてみせた。

 

「醜悪な人形共は……壊滅させた……これが、俺が掲げる正義の力だッッ……既に本丸は捉えている……逃がしはしない!!!」

 

 更にその場所から約3マイル先に逃亡する艦隊を補足した五飛びは、短時間の追撃の末に中華リゼル・トーラスをコントロールしていたMS輸送艦隊に次々と襲い掛かる。

 

 ツインビームトライデントの斬撃で縦に斬り下ろされ機首が真っ二つに爆発する艦や、船体を横一線に加速両断される艦、機首にビームの刃を突き刺した上に何発もテールビームキャノンを浴びせられて轟沈する艦……五飛の正義と怒りを体現した無双が容赦ない報いを与えていった。 

 

 残存の旗艦と数隻の輸送艦を残して航行の状況に既に指揮は崩壊しており、最早保身しか能がなかった。

 

「が、ガンダムにより、次々と我が艦隊は壊滅に追い込まれています!!!」

 

「くそッッ、高みの見物がこのような事態になるとは……!!!我々だけでも逃げきれるか?!!!」

 

「無理です!!!既に後方の2隻が轟沈……!!!追付かれま……あああああああ?!!!」

 

 回り込むようにして現れたアルトロンガンダムの眼光が光り、旗艦のMS輸送船の中華覇権派OZプライズ兵士達に絶望を刻みつけた。

 

「これで終いだ……覇あああああああああああ!!!!」

 

 機首部に突っ込みながらアルトロンガンダムの全武装の斬撃、打撃、射撃の乱舞が見舞われ、ツインビームトライデントにツインドラゴンハング、テールビームキャノンの混合攻撃によって船体は文字通りのズタボロとなり、止めの打ち下ろし斬撃により激しく船体を切断され、MD輸送艦隊旗艦は轟沈した。

 

 残骸が漂う中、五飛は再び故郷のコロニーに視線を向ける。

 

「今回の一件は奴らに相当のダメージを与えた。故に報復が危ない。当面はコロニーを守らなければならないな……だが、同時に俺と哪吒の存在が抑止力になってくれれば越したことはないがな……」

 

 そう言いながら五飛が振り返った次の瞬間、敵機アラートと共に突如として謎の通信が入る。

 

「ここにいたのか……あの龍のガンダムは……OZプライズの助っ人依頼で先乗りしてみればとんだ偶然だ」

 

「?!!」

 

 周囲を見回した五飛がモニターに捉えたのは、いつしかのシェンロンガンダムを容易く鹵獲したガンダム、ガンダムヴァサーゴの姿※だった。

 

 

 

 ※容姿は原作のガンダムヴァサーゴ・チェストブレイク

 

 

「その声とその醜悪なガンダム……覚えがあるな……あの屈辱は忘れん!!!」

 

 残骸が浮かぶ宇宙空間に佇むガンダムヴァサーゴに対し、アルトロンガンダムはツインビームトライデントの切っ先を突き向けた。

 

 一方でロームフェラ財団もまた、分裂した中華覇権派OZプライズを危険視し、各地で掃討作戦の準備を進行させる。

 

 従来の拠点ポイントより、衛星軌道上に極力接近させたポイントにバルジⅡを、ユーラシア中華圏エリアにオペレーション・ノヴァによる通常の三倍のMD部隊の降下作戦を、そしてL5にはOZプライズ正規部隊の大艦隊を派遣する手筈をとっていた。

 

 それどころか宇宙にもいるOZ(トレーズ派)が中華覇権派根絶の為に結集し、L5を目指し始めていた。

 

 今、三勢力が激突する構図が歴史に刻まれようとしている。

 

 また一つの大きな歴史のうねりが起ころうとしている。

 

 幽閉の空間の中にその動向を見届ける男・トレーズ・クシュリナーダがモニターを閲覧しながらリアルタイムの歴史を観察する。

 

「かつてアジアの脅威となった思想や愚行が……また悲しき歴史がこの宇宙世紀に蘇ってしまった……OZは分裂に次ぐ分裂を重ねていく……さぁ、流れる歴史よ……私にドラマを見せてくれたまえ……」

 

 そして席を立ち、その部屋にあった大画面モニターを表示させる。

 

 そこには彼が計画して建造に成功した次世代のガンダム……ガンダムエピオンの姿が表示されていた。

 

「いつでも迎える準備はできているぞ……ミリアルド……」

 

 

 

 

 To Be Next Episode

 

 

 

 

 次回予告

 

 地球圏は再び激動の時代に突入していくのか。

 

 中国大陸各地では中華覇権派OZプライズを掃討すべく、OZプライズの掃討作戦部隊が激突する。

 

 宇宙ではOZ正規軍も加わる状況で、中華覇権派OZプライズとの激突のカウントダウンが始まる。

 

 その戦闘は双方の格差をみせはじめた戦闘となっていく。

 

 一方、無事に難民達を安全圏のコロニーに送り届けたプル達だったが、殿として闘っているアディンの帰りを待つ最中に夢を見る。

 

 リタという少女とヨナという男の存在を知った上に、リタからは助けを求められる。

 

 プルは夢にリアルな引っ掛かりを覚えた。

 

 明日、L5コロニー群にある中華覇権派OZプライズの拠点コロニーにおいて、OZプライズに加えトレーズの側近であったディセット率いるOZ正規軍が加わりついに激突がはじまり、事態は更に激震していく。

 

 一方でも、OZプライズ新増の宇宙巨体戦艦・リーブラも動きだす。

 

 そしてL5コロニー群の戦場にはロッシェとシャギアが合流し、OZの内乱は更に加速していく。

 

 

 次回、新機動闘争記 ガンダムW LIBERTY

 

 エピソード51「内乱の攻防戦」

 

 

 

 





 今さらですが、ミリアルドのヒロインの立ち位置にいるオリキャラのミスズは「殺生丸×桔梗」でひらめいて生まれたオリキャラです。

 そっくりとまではいかずとも、ミリアルド(ゼクス)と殺生丸にはロン毛×イケメン×冷静×強いの四大要素が共通してたので、「桔梗にOZの軍服(今はサンクキングダム近衛師団長服)着せたキャラでいいんじゃね?!」となり生まれました。

 元々桔梗推しなのも影響してますがwww

 せっかく二次小説でクロスオーバーできるのなら、色々してみたかったのです。

 尚、本二次小説のノインは「ヒイロやアディン達をサポートする、ピースミリオンに所属するカッコいいおねーさん」ポジションでございます。

 

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