新機動闘争記ガンダムW LIBERTY   作:さじたりうす

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メテオ・ブレイクス・ヘルが連邦に対し破壊活動する一方で、オペレーション・ファントムを実行したネオジオンのMS達も連邦への破壊活動を行う。

現ネオジオンのリーダーであるフロンタルも自ら最前で部下のアンジェロと共に連邦基地を強襲していく。

その最中で、フロンタルとアンジェロはコルシカ基地へ背後強襲を謀るが、居合わせたゼクスとリディと激突することとなる。

激しい両者の激突は互角の激突となったが、結果は騎士道精神に乗っ取った引き分けに終わった。

その一方で、オルタンシアでヒイロとマリーダは、互いの機体修理を通し絆を少しずつ深めていく。

そんな中、メテオ・ブレイクス・ヘルのGマイスターメンバーの召集命令が出され、メンバーがオルタンシアに集結する。

その時、同じ遺伝子を持つプルとマリーダが邂逅するのだった…






エピソード5 「再起動する翼」

大空を航行するスマートな4機の輸送機の姿があった。

 

OZ所属の高速シャトル、ソニックトランスポーターである。

 

OZ所属の輸送機であるが、特例措置として、反乱ガンダム調査隊の移動手段で連邦軍も合同で使用する事となったのだ。

 

コルシカを後にしたゼクス達は日本にある連邦軍とOZの併用基地を目指していた。

 

目的はカスタマイズされたエアリーズの交替補充とリゼルの仕様変更、基地における演習である。

 

先頭を航行する機内ではオットー、ワーカーが操縦を勤めている。

 

その後ろでは、ゼクスがデータベースを打ちながら、

ワーカーが記録したシナンジュとギラズールのデータを登録していた。

 

「ワーカー、あの2機のデータ、登録させてもらったぞ」

 

「あ、了解です。お役に立てることができ、自分も嬉しいです」

 

「ふふ…あの高速戦闘の最中に戦闘のデータを記録してくれていたことは非常に評価ができる行動だ。ガンダムと遭遇した時もよろしく頼むぞ」

 

「そうおっしゃられると恐縮ですが、自分は特佐から教えられた『後の兵士の為に』をモットーとしております。これからもお役に立ちたいです」

 

ワーカーはゼクスの部下の中でオットーと並び、ゼクスに忠実な士官である。

 

ワーカーの働きにオットーも敬意を表して笑う。

 

「ははは!俺もワーカーに肖りたいものだ。後の兵士の為の行動をな」

 

「オットー特尉……」

 

「うむ…特に二人には期待している……ん!?」

 

その時、二番機のソニックトランスポーターから通信を受信したアラームが鳴った。

 

それに応じるゼクス。

 

リディ少佐からの通信であった。

 

「ゼクス特佐、急で申し訳有りません。ガンダムの事で………いや、我々の部隊の編成について腑に落ちないモノを感じまして…それで通信を…」

 

「腑に落ちない……それはなんだ?」

 

「連邦にはロンドベル隊があるのはご存じですよね?反乱ガンダムに対してなぜ我々がロンドベルに配属されなかったのかと思いまして………あのような事態には真っ先に動くべきなのはロンドベルではないのかと」

 

反乱ガンダムに対して真っ先に動くべき部隊。

 

シャアの反乱で最前線で戦った連邦軍屈指の精鋭部隊・ロンドベルこそがふさわしいのではとリディは感じていた。

 

だが、実際はガンダムの反乱に対し動く気配がなく、連邦とOZの合同部隊が結成されたのだ。

 

当初は感じていなかったが、シナンジュとの戦闘を目の当たりにしてからリディは疑問に感じていたのだ。

 

「ふ……それは確かに一理あるが……彼らの場合、各地の基地施設や部隊を攻撃目標にしている。動くにあたりMS部隊で動いた方が効率がいい。艦隊を使ってでの行動は逆に重くなる。それに、お偉いさん方は最後の手札としてロンドベルを取って置くつもりだろうからな」

 

「なるほど……」

 

「これまでの常識を覆す程の戦闘力を持ったガンダムだ。慎重にもなるさ。疑問符は晴れたか?」

 

「はい。ありがとうございました、ゼクス特佐!ではまた後程!」

 

リディの通信が終わり一息をつくと、ゼクスは目的地の基地について思いふけた。

 

(日本……JAPポイント・地球連邦軍静浜基地か………あいつとは一年ぶりか………)

 

旧世紀の時代に自衛隊があった施設を更に開拓して創られた静浜基地には、ゼクスと士官学校時代の同期である日本国籍の女性士官がいた。

 

漆黒とも言える黒髪のロングストレートに、凛とした美しさの女性士官。

 

海に隣接した基地故に潮風が彼女の髪をなびかせている。

 

彼女は、機動力が強化され、両翼にミサイルランチャー2基、ライトアームにビームライフル、更には両腰にビームサーベルを設置させたオーバーエアリーズを見上げていた。

 

「反乱ガンダムに対してのOZの次の策か……だが、情報からしてまだこれだけでは到底足りない気がするがな……」

 

「ミスズ・アキハ特佐!」

 

さっと振り向くミスズの視線先には、敬礼をしたOZの士官がいた。

 

「どうした?」

 

「はっ!!只今、反乱ガンダム調査隊からの通信がはいり、約一時間後に到着予定とのことです!!」

 

「そうか、了解した」

 

ミスズは、晴れ渡る空を見上げながらその方角の彼方にいるゼクスに向かって言った。

 

「ゼクス……私に甘えに来い………」

 

 

 

オルタンシアの甲板にヘビーアームズ、サンドロック、シェンロンの3機のガンダムのジェネレーターが鳴り響き、着艦した輸送機からはデスサイズと2機のジェミナスがスライドローダーで甲板工場へ送り出されていく。

 

迎えたハワードがオデルとラルフとで軽い打ち合わせをしていた。

 

「……話は一応は聞いておる。ここを拠点に地上での任務に対応するということだな?」

 

「はい。メテオ・ブレイクス・ヘルの本部から各々に通達がありました。当面はよろしくお願いします」

 

「こっちもそのつもりだ。それにこの設備は来たる時の為に造ったんだからな……」

 

ハワードが親指でオルタンシアの設備に指を指す。

 

「我々のガンダムをメンテナンスする為の設備か…なんとも仰々しい……」

 

オデルは広大なオルタンシアの設備を見渡しながら不満気なかのように呟く。

 

「なんだ?不服なのか、お前さん」

 

不満気な発言に当然ながら、ハワードは疑問を抱くが、真意は違っていた。

 

「いや、十分満足ですよ。ただ、自分達のガンダムをこんな立派な設備でメンテナンスさせてもらえるのが恐縮なんですよ」

 

「なら素直に喜べ!若い者が遠慮せんでいいぞ!!」

 

「はぁ…」

 

トロワ、カトル、五飛が各々にコックピットハッチを開き、それぞれのガンダムから姿を見せた。

 

ここにメテオ・ブレイクス・ヘルのガンダム7機が集結し、その光景をヒイロは表情を一切変えずに見上げる。

 

その傍らで、マリーダはかつての因縁の感覚と闘っていた。

 

(うっ………!!ガンダムがこんなに………!!!ガンダムは敵っ………だがっ………ガンダムは………闘う力だ!!)

 

かつて刷り込まれた感覚、感情と現在に得た概念が彼女の脳内で拮抗する。

 

それに伴い、もうひとつの感覚が彼女に起きていた。

 

(それに………さっきから私自身の感覚が近くに感じる………姉妹達は私以外戦死したはず………)

 

手を重ねるように頭抱えて苦しむマリーダ。

 

次第にその場へとしゃがみこんでいく。

 

「うぅ………!!」

 

「……!?どうした?」

 

マリーダの変調を察したヒイロは、マリーダを気遣うような行動をとった。

 

マリーダの肩にに手を差しのべようとした自分自身のその行動に、ヒイロは違和感を感じて一瞬立ち止まる。

 

「―――……!」

 

異性を気遣おうとする概念が欠如していた故に、ヒイロはそう感じてならなかった。

 

ヒイロの気遣いを感じたマリーダは、苦しみつつも変調の理由を話し始めた。

 

「……っ………感情でかつての柵を断ち切ろうとしている………お前が言った感情で行動する…っ……それを今、試しているっ」

 

「マリーダ………」

 

マリーダは、ガンダムの概念を変えようと試みるが、

かつてのマインドコントロールを断ち切ろうとする行為は、予想以上に彼女に苦痛を与える。

 

そして、マリーダのオリジナルである、プルが近づいたことで更に別の感覚が伴っていた。

 

「よぉーヒイロ!!」

 

そこへデュオの意気揚々とした声でやって来た。

 

「……デュオか」

 

デュオはすぐにヒイロが似合わぬ状況にあることに気づく。

 

「無事だったみたいだな………って、ああ!?おいおい………任務早々行方不明になったと思ったらこれまた随分なご身分で!お前も女性ツレ始めやがって~」

 

「お前も?どういう……」

 

デュオが来た後ろからはアディンとプルが来ていた。

 

それを見たヒイロは、「お前も」と言うデュオの言葉に納得する。

 

「そういうことか……」

 

アディンの左手首を握りながら、プルも頭を抱える仕草をしていたが、マリーダ程深刻ではなかった。

 

「さっきからどうしたんだ?口数が急に少なくなっちまってさ……具合でも悪いのか?」

 

「ううん……違うの。不思議な………あたしみたいな感覚がずっと……凄い近くに感じる……」

 

「あたしみたいな!?なんだそりゃ!?」

 

「…―――ああぁっ!!!」

 

「おぉ!?どうした?」

 

突然叫んでマリーダの方に指を指すプルに軽く驚くアディン。

 

デュオもプルの方を反射的に向いた。

 

「おぉ?なんだぁ?」

 

「……―――あたし………いた!!!!」

 

プルが放つ一言にヒイロ、デュオ、アディンの三人は呆気に取られる。

 

マリーダは、ゆっくりと顔を上げてプルの方を見た。

 

同じニュータイプの遺伝子を持ったもの同士が邂逅した瞬間であった。

 

「この感じ―――………姉さんなのか?」

 

マリーダの一言を後に、マリーダとプルはしばらく互いに見つめ合って固まった。

 

 

それより間もなくして、Gマイスター達のミーティングが開始され、ラルフがスクリーンモニターを使用しながら現在状況について説明をしていた。

 

ヒイロ達は腕を組ながらスクリーンに視線を投入させている。

 

彼らからは不敵なオーラが止まることなく溢れ出ていた。

 

「―――現在においての、連邦・OZの動きであるが、主に軍備増強及び反乱勢力掃討強化の路線に入っている。当然の動きであるがな………」

 

世界地図の図に各地の基地、勢力域が映し出される。

 

「流石に全ての基地を陥落することはできない。当初の予定通り主な要を押さえて叩いていく……――」

 

ラルフは、モニターリモコンを操作して追加表示を表示させた。

 

「連邦とOZの主な基地や駐屯地は、北米、ヨーロッパ、アフリカ北部、アジア、オーストラリアに点在している。これらのエリアへ随時赴いて破壊活動を展開させていく。GNDドライブで単独飛行が可能な我々のガンダムなら可能だ」

 

「どう分散させる?」

 

トロワが質問の一言を放つ。

 

「任務配分は基本的にヒイロとデュオ、トロワとカトル、バーネット兄弟、単独遊撃の五飛の配分だ。始めに現在いるアジアエリアの主だったポイントを叩いた後、今言ったように随時来る任務で各地へ行ってもらう形になる。任務の規模に合わせて、全7機、もしくはいずれかの組合わせでいってもらう。最終的にはダカールとルクセンブルクにある連邦とOZの本部を陥落させる」

 

「了解した。それならば一気に本部を攻める方がいい手かと思うが……」

 

もっともなトロワの意見であるが、それに対しても意図があった。

 

「確かにトロワの言う通りだが、これからの破壊工作はそれに至るためのアプローチ………例えるならボクサーのボディーブローを蓄積させる行為と思ってくれ。一気に攻める前にポイントを崩していく寸法だ」

 

「確かにそれも一理言える事だな。解った……」

 

「アジア………中東へはやはり僕らが行くようになりますか?」

 

トロワに続けてカトルが質問をした。内心、闘うロニが気がかり故に中東への任務を希望していた為だ。

 

「ああ。サンドロックは元々砂漠戦に特化した機体だからな。それにあのエリアは理不尽なテロリストがゴロゴロいる。任務の障害になれば駆逐対象になっている為、そこは臨機応変に頼むな」

 

「はい!任せてください!!」

 

再びロニの力に少しでもなれるチャンスに、カトルは内心的に胸を撫で下ろした。

 

五飛はこれ以上のミーティングの立会は無意味と感じ、すっとその場を後にしようとする。

 

「おいおい!まだミーティングの途中だぜ、五飛!どこ行くんだ?」

 

回りとは違う行動をする五飛にデュオは引き止めをかけた。

 

「調度アジアエリアの任務を残している所だ。ナタクのメンテナンスが終わり次第出撃する」

 

そう言い残して五飛はその場を後にし、ラルフもうなずきながら許可をする。

 

だが、デュオは微弱な遺憾に感じてならなかった。

 

「かああ~……アイツはホント協調性がないっていうか何て言うか…一匹狼っていうか…」

 

「くす、仕方がないですよ、デュオ。それが彼のスタンスなんでしょうから。好きなようにさせてあげましょう。元々彼はそのポジションを希望しているんですから」

 

五飛の身勝手さに呆れるデュオをカトルが宥める。

 

「ワンマンアーミーってことかい…しょうがねー、カトルがそう言うんじゃあな……」

 

「ふふ……まぁ、確かに協調性は必要なんですけどね!でも志は同じなのですから信じましょう!」

 

一通りのミーティングを終えると、ラルフはヒイロを引き止め、声をかけた。

 

ウィングガンダムの修理状況についてであった。

 

「ヒイロ、ウィングガンダムの修理状況はどうなんだ?」

 

「現在ウィングバインダーのオーバーホールの工程に入る。最低でも後、一週間はかかる」

 

作業工程上、時間を必要とする故に任務にも響く。

 

ラルフはデュオやトロワがメカに強いことを思いだし、一緒にいた彼らにも協力を指示した。

 

「そうか………ならば少しでも人手が多い方がいいな………デュオ、トロワ、手伝ってやってくれ。確かお前達はメカに強かったよな」

 

「ああ。ウィングガンダムが稼働すれば任務の効率性が上がる。少しでも完成を早める為にも合理的だ」

 

「まーウィングがいつまでもおねんねじゃしょーがねーからなぁ!この際手伝ってやんぜ!」

 

トロワはすんなりとラルフの指示に賛同し、デュオもまた頭をかきつつ、ウィングの修理に買って出る。

 

すると、カトルも協力の姿勢を示してきた。

 

「なんでしたら僕にお役に立てる事なら手伝います。一日でも早く皆さんでウィングを修理しましょう!」

 

「カトル、メカいじりできるのか!?」

 

デュオが意外なカトルの一面に驚く。

 

だが、カトルとしては手伝える範囲での話だ。

 

「皆さん程メカには詳しくはないですよ。作業的に手伝える所を手伝います」

 

「そう言うことか!まー、そうと決まったら作業おっぱじめようぜ!!」

 

デュオ、トロワ、カトルも加わり、ウィングガンダムの修理が再開される流れになった。

 

更にはアディンとオデルも加わり、時に細かい部分を黙々と組み立て、時に声を掛け合って大がかりなパーツを移動させ、作業が進められていく。

 

そこには男達の熱い友情ともいうべき雰囲気が流れていた。

 

いつの時代も、男同士の共同作業は熱いものがあるのだ。

 

 

一方、マリーダとプルは場所を海が一望できる開放的な部屋に移して過ごす。

 

彼女達は先程のような頭の違和感はなくなり、二人とも自然体でいられるようになっていた。

 

どうやら初期の邂逅の時のみに起こった感覚だったようだ。

 

海から来る風が心地よく二人の髪をなびかせている。

 

マリーダは、ヒイロに言われた言葉を瞳を閉じて思い返していた。

 

 

 

『頭痛が伴ったのは疲れもあるだろう……作業の方はいい。休めるときに休め。それにプルとか言う姉妹とも会えたんだからな』

 

 

(ふふ……ヒイロには色々と食わされるな)

 

ヒイロが年下故に、生意気かつ一杯食わされた感も感じつつマリーダは目の前にいるプルへ視線を送った。

 

プルは美味しそうにパフェをまくもくと食べている。

 

「パフェ美味し~!マリーダも食べる?あーんして!」

 

プルは笑顔で何の気なしにスプーンに掬ったパフェをマリーダに差し出した。

 

一瞬、きょとんとなるマリーダ。

 

「あ、ああ……」

 

今の今までにこのようなシチュエーションを味わった事がないマリーダは、恥ずかしくなり、ぎこちなくパフェを口に入れた。

 

「どう?美味しいでしょ!」

 

「……うん、美味しいな」

 

マリーダは口に広がる美味さをかみしめながら今の時もかみしめようとする。

 

初対面ではあるが、遺伝子的には姉妹の再会を果たせたのだ。

 

「へへ♪マリーダ、いい子いい子♪」

 

「む…」

 

とはいえ、明らかに年下のプルに撫でられたマリーダは、調子が狂いそうになる。

 

だが、同時にこそばゆくもあり、顔を赤くしていた。

 

「なんて言ったらいいんだ………確かにプルは姉さんなんだが……撫でられるとなんか調子が狂うな…」

 

「調子が狂うって、マリーダひどーい!もう撫でてあげないし、パフェもやんないよー!」

 

「私は特に食事に関してがめつくはない。残りのパフェは姉さんが好きなだけ食べればいい……」

 

大人の対応であしらうマリーダ。

 

言うまでもないが、最早完全にマリーダが姉である。

 

「もぅ…ノリ悪いんだからぁ…せっかく再会できたのにー」

 

プルは不機嫌そうに一人でぱくぱくとパフェを食べ始める。

 

そんなプルを見てもマリーダは幸せを感じてならなかった。

 

今の彼女にとって、唯一血の繋がった存在なのだ。

 

微笑ましく思ったマリーダは口許に軽い笑みを浮かべながらプルを撫で返してみせた。

 

「ふふっ、可愛いな……姉さんは」

 

可愛いと言われながら撫でられるプルは、恥ずかしそうに、かつ嬉しそうに笑う。

 

「え!?そ、そっかな~……えへへ……」

 

プルはパフェを一口飲み込むと、スッとマリーダに手をかざした。

 

突然のプルの仕草にマリーダは唖然とした。

 

「え……姉さん?」

 

「貴方のこれまでの事……感じさせて…」

 

瞳を閉じてマリーダのこれまでの事を感じようとするプル。

 

その表情はどこか大人びた表情になり、つい先程の子供っぽさが隠れていた。

 

プルは静かにマリーダを感じ始めた。

 

マリーダもならばと手をかざし、プルのこれまでの事を感じようと試みる。

 

「私も姉さんの事を……」

 

互いの経緯を確認し合う中で、潮風の音だけが聞こえていた。

 

 

 

ルクセンブルク・OZ本部では、OZ総帥であるトレーズが、データベースでこれまでのガンダムの被害を確認していた。

 

(彼らの与える被害は、これまでのMSの戦闘の常識を覆す。我々も次なる時代のMSが必要なのかもしれない………)

 

データベース上にトールギスとユニコーンのデータを見ながらトレーズは淡々と心で語る。

 

あたかも時代を掌握しているかのように。

 

(その為の布石がトールギスであり、ユニコーンなのだ。あれらの機体はこれまでのOZと連邦の常識を覆す性能を秘めたMS。選ばれし二人の戦士にそれを与えた選択は確かだ… )

 

続けて操作したデータベースに、トールギスⅡとトールギスⅢのデータが映し出された。

 

(私もゼクス達に続きたいものだ。次なる機体の手配をせねばな。私も彼らと剣を交えてみたいと欲してならない…)

 

トールギスⅡのデータを見ながらトレーズは静かなる闘志を昂らせた。

 

(だが、まだゼクス達はガンダムとは交戦してはいなかったな………彼らと交戦したとき………何が起こるのか……実に楽しみだ)

 

トレーズはデスクの通信ツールを起動させ、部下に通信をとる。無論、新たなトールギスの手配のためだ。

 

「私だ。単刀直入に通達する。2番目のトールギスの手配を頼む。敢えて期限を言うのならば来月にニューエドワーズ基地で開かれる連邦との大規模合同演習に間に合わせてもらいたい」

 

「はっ!!直ちに手配致します!!」

 

「頼む」

 

通信ツールを切ると、トレーズはその場を立ち、窓辺の景色を見る。

 

(今は機動性と火力を強化させたエアリーズを贈っておくぞ……ゼクス)

 

 

 

日本・地球連邦軍静浜基地

 

 

ミスズとゼクスが、部下達の演習を目で追いながら管制塔から見守る。

 

オットーやワーカー達が駆るエアリーズオーバーや、ホマレやガロムが駆るリゼルが高速で空を駆け抜けていく。

 

「本当に一年ぶりだな、ゼクスとは」

 

「ああ。その一年後とやらにこのような事態が発生するとは夢にも思わなんだよ」

 

「本当だ。まさか同胞の機体と瓜二つなMS達に敵視されてしまうなんて……まぁ…歴史を振り返ればガンダムMkⅡやΖガンダムの事例はあるが……」

 

過去のグリプス戦役の事例を引き出せばガンダムが連邦の敵になった事例はあった。

 

だが、今回の事例は極めて異質である。

 

「確かにそうだが、今回は極めて異例だ。ガンダムそのものが、アナハイム製ではなく、メテオ・ブレイクス・ヘルという未知のテロ組織が造り上げたガンダムだ。それに単機で基地や中隊規模の部隊を壊滅させるほどのガンダムだ」

 

「……ああ。もちろん解っている。だからこそ私達はこうして対抗策をやっている。エアリーズオーバーだけではまだ心もとないがな。今はゼクスと………」

 

「リディ・マーセナス少佐、射撃演習、行きます!!」

 

リディのユニコーンが滑走路から空中へと飛び立つ。

 

そして基地から射出されたバルーンダミーに向かい、ビームマグナムを撃ち放つ。

 

焼津市の空にビームマグナムが吸い込まれていく。

 

「彼が大きな頼りだ。ゼクスはトールギスで出ないのか?私はトールギスが見てみたい。もちろん、それを駆るゼクスもな」

 

「ふ……しばらく第三者視点で部下達の演習を見ていようと思っていたが、お前がそういうのであれば今からでも出るか」

 

ミスズの希望と少しでも早くトールギスをモノにする為にゼクスはその場を後にした。

 

前回、フロンタルと闘った時は凄まじい気力で人体の負担をカバーしていたが、その後の反動のダメージは拭いきれていなかった。

 

ゼクスは人体の限界をも克復させようとしていた。

 

仮面の下に苦痛を隠しながら。

 

(この程度の苦痛………直ぐにでも克復させて見せよう。こうしている間にもガンダムが強襲してくるかもしれんのだからな!!!)

 

ミスズはトールギスへ赴くゼクスに声をかけた。

 

「ゼクス!この演習の後、食事にしようか」

 

「ああ、そうさせてもらう」

 

「ここの地元の海鮮料理をおごってやる」

 

気高く強かな口調の中には、ミスズのゼクスへの想いが込められていた。

 

 

 

メテオ・ブレイクス・ヘルの事態を重く見た地球連邦政府は、更なる圧制体制をとろうとしていた。

 

連邦軍内の秘密結社OZと連携しての部隊や武装の強化、各基地のMS部隊の増設、反抗勢力弾圧強化。

 

更には過去のガンダムのデータを見直し、マイナーチェンジを兼ねての再生産の計画案が出されていた。

 

連邦本部が置かれたダカールでこの日も会議が行われていた。

 

「これは事実上のテロ以外の何者でもない!!!これらのテロが皮切りになり、各地の反抗勢力が活発化しはじめている!!更なる被害を防ぐためにも様々な分野の強化が必要だ!!」

 

「同感だ!!付け加え、宇宙側の圧制強化も行うべきだ!!更なる取り締まりの強化をスペースノイドに下す必要がある!!」

 

「ですが、それでは更に彼らのような存在を増やしてしまうのでは!?逆に暖和の方向へ…」

 

「ならん!!それでは連邦政府が奴等に屈したことになりかねん!!!強化は必然だ!!」

 

各意見が延々と飛び交う連邦政府の会議。

 

彼らのいい放つように、メテオ・ブレイクス・ヘルの行動が更なる圧制強化の引き金になるという皮肉な路線が生まれつつあった。

 

日時絶え間なく報道されるメディアもほとんどがこの話題や題材で持ちきりであった。

 

オペレーション・ファントムのMS所定のジオンの野戦キャンプ場へと降り立ったフロンタルとアンジェロ。

 

彼らもまたガンダム関連のメディアを閲覧していた。

 

「どうやら彼らのガンダムは、今の所我々の味方であると位置付けてもよいな。事実、彼らに助けられたジオンの同胞もいる」

 

「はい。そのようで…」

 

「彼らとは茶の席を儲けられそうだな、アンジェロ」

 

「茶の席を……ですか?」

 

「ああ。どうだ?共に飲んでくれるものかな?」

 

冗談を交えながらフロンタルは微笑を浮かべてアンジェロに話を振る。

 

アンジェロも微笑を浮かべてそれに答えた。

 

「大佐が出される茶ですから、きっと………」

 

「ふふふ………冗談はさておき、話を移すが、マリーダ中尉から連絡がない。彼女以外の同胞達はこうして合流できている。何かがあった可能性が最もなのだが……要の一つの戦力が最初からこうでは先が思いやられるな」

 

フロンタルは連絡がつかないマリーダを気に止めるが、どこか冷ややかな印象を持たせる。

 

アンジェロは輪をかけるように冷ややかな言葉を並べた。

 

「最もです。飛んだ強化人間だ、マリーダ・クルス。大佐に気を使わせるなどと!!合流できたのならば、失態に相応しい任務を与えましょう!!」

 

「アンジェロ、ムキになるな。何れにせよ彼女にはオペレーション・ファントムの仕上げをシャンブロと共に担ってもらう。シャンブロに次ぐ強力な戦力なのだからな」

 

「大佐、何をおっしゃるんですか。大佐のシナンジュこそが最も強力です。私はそう感じてます」

 

同胞とはいえ、少なくともフロンタルとアンジェロはマリーダを手駒として捉えていた。

 

部下想いのゼクスとは対照的な一面が垣間見えた瞬間であった。

 

一方でゼクスは演習でトールギスを駆っていた。

 

彼の体に激しいGが襲いかかる。

 

前回は闘争心が肉体を凌駕し、事なきを得ていた。

 

しかし今回ばかりはそうはいかない。

 

闘争心を掻き立てる対照がいない。

 

だが、闘争心とは別の感覚で肉体負担をねじ伏せていた。

 

「ミスズが見ている!!無様な演習はできんぞ、ゼクス!!」

 

ゼクスは自らに言い聞かせてトールギスを舞わせる。

 

トールギスは上昇し、宙返りした後にバーニアで姿勢を豪快に整えてみせた。

 

そこからドーバーガンを構えてバルーンダミーを一つ二つと次々に適格命中させて撃ち墜とす。

 

ミスズは腕組みしながらゼクスの演習を見守る中で、驚きを兼ねた笑みを見せる。

 

ミスズもMSに乗る故に、そのトールギスの動きがいかなるGを発生させるのかが解っていた。

 

(すごいな!!だか、あのような動きは相当なGがかかったはずだ……ゼクスは無事なのか!?)

 

演習が終わるとゼクスは、ミスズと海鮮料理の食事をとっていた。

 

正直和食は滅多に食さないので、ゼクスは違和感を感じてならなかった。

 

持っている箸の持ち方もぎこちない。

 

それを見て逃さないミスズが早速話しかけた。

 

「くすっ、和食はやはり慣れないか?」

 

「ん?ああ、滅多な食事ではないのでな。本当におごりでいいのか?ミスズ。私の部下達の分まで……」

 

「ああ、遠慮はしなくていい。言ったろ?私のおごりだ」

 

勝ち気かつ男勝りな性格故に、ミスズはゼクスのペースさえも掴んでいた。

 

地元名物である海鮮丼を食べながらミスズは演習の感想を述べた。

 

「トールギスの演習を見せてもらった。本当に乗り始めたばかりとは思えないような動きだった。しかし、あのような機体の動きでは、体への負担がかなりのもののはずだ。今、大丈夫なのか?」

 

トールギスの機動性の代償とも言える体への負担は、半端なものではない。

 

正直な所、食事をとるにもキツいものがあった。

 

しかし、せっかくのミスズの厚意にゼクスは痩せ我慢してみせる。

 

「ああ、問題はない…」

 

たが、ミスズはお見通しであった。

 

「嘘。ゼクスは痩せ我慢してる。昔から変わらないな」

 

「む……やはり判るか」

 

「くすっ、まぁ、疲れもたまっているのだろう……今日は基地でゆっくりするがいい。それに……お互いの夜も忙しくなるのだからな」

 

「おいおい………休ませてくれるのではないのか?」

 

ミスズは不敵なまでに自分のペースにゼクスを引き込む。

 

小悪魔を装うかのように、ミスズはゼクスに魅惑的に笑みを送った。

 

「ふふふ、その為に休ませてやるんだ。遠慮なく甘えに来たまえ」

 

「やれやれ…ミスズには敵わないな…むっ!」

 

ゼクスはミスズの誘惑めいた言動に観念せざるを得なかった。

 

ミスズのペースに引かれ、ぎこちない箸使いが更にぎこちなくなり、ご飯をこぼすゼクス。

 

ミスズのペースの中では流石のライトニング・バロンでも手の内に収まってしまうのであった。

 

 

一週間と五日後

 

 

 

遂にウィングガンダムの修理が完了し、ウィングガンダムはGNDドライブの起動音を響かせながら出撃を迎えていた。

 

ヒイロは素早いボタン操作で機体の最終的なセットアップを進ませる。

 

その隣では、ガンダムデスサイズをホールドしたハンガーが起き上がった。

 

「これでやっと任務に復帰できるぜ。急ピッチでやった甲斐があったな!!なぁ、ヒイロ!!」

 

デュオがモニター越しに威勢よくヒイロに話しかける。

 

「この借りは返す……」

 

ヒイロはその一言だけで済まし、操作を続ける。

 

「そうかい、期待してるぜ♪けど、俺だけじゃないぜ。トロワやカトル、アディンとオデルだってそうだろ?」

 

デュオは携わった他のメンバーへの貸しを仰ぐ。

 

無論、理の急かしなどではなく仲間意識からだ。

 

「ああ、無論だ」

 

ヒイロ達より一足先にガンダムサンドロックとガンダムヘビーアームズが、ハンガーから離れて空中へと飛び立つ。

 

カトルがコックピットから久々の任務故にヒイロ達に気遣う。

 

「それでは僕とトロワは先に行きます!約一週間ぶりの任務です。みなさん、感覚は鈍っていませんか?」

 

「……感覚が鈍ることはない」

 

「なーに言ってんだ、カトル!俺はいつも万全だぜ!けどまぁ、さすがにオルタンシアに缶詰めだったのは堪えたけどな」

 

ヒイロとデュオに続け、トロワとオデルも答えた。

 

「問題はない」

 

「ははは、同じく。休暇は終わりだ!みっちり任務に就かせてもらうさ……なぁ、アディン!」

 

2機のガンダムジェミナスのハンガーも立ち上がり、出撃のスタンバイに入った。

 

「あ!?あー…おえがいふもほーひにひめへはるぜ(俺がいつも通りにキメてやるぜ)!!」

 

アディンは口にサンドイッチを頬張ったまま答える。

 

プルが作った手作りのサンドイッチだ。

 

「馬鹿か!口にサンドイッチ入れたまま喋るな!!飲み込んでから言え!!」

 

オデルは弟のみっともない態度に突っ込まざるをえない。

 

だが、アディンは強引にサンドイッチを押し込んだ後にオデルに反発する。

 

「んがぐっ………話ふったのは兄さんじゃねーか!!」

 

「だから食った後でと言っている!!」

 

「どーせよ、そしたらそしたらでシカトするなとか言うんだろ!?」

 

「あのな!!」

 

兄弟喧嘩の通信やりとりにプルが割って入いり、全体通信の為、全員のサイドモニターにプルの顔が表示される。

 

「こらこら!兄弟仲良くしなきゃダメでしょ!あたしとマリーダは仲いいよ!それで、あたしが作ったサンドイッチ美味しかった!?」

 

「ああ!!うまかった!!けっこーイケてたぜ!!兄さんのせいで最後味わってくえなかったけどな」

 

「人のせいにするな!!お前自身が食ったんだろうが!!」

 

「うるせー!!話振んな!!」

 

「任務をピクニックに錯覚するな!!!バカ野郎!!!」

 

「だからー!!兄弟仲良くしなきゃダメー!!にんむにもひびいちゃうよ!!」

 

ああ言えばこう言う口喧嘩に再びプルが待ったをかけた。

 

メンバーの調子が平常運転である事を確認したカトルは、軽く笑いながら任務へと赴いた。

 

「くすくすっ……確かにいつも通りのようですね!では、皆さんの武運を祈って……行きます!」

 

カトルはロニから貰ったアクセサリーをきゅっと手に握ってからレバーを押し込んだ。

 

ガンダムサンドロックとガンダムヘビーアームズがそれぞれGNDドライブの出力を上げて加速をかけて大空へと突き進んでいった。

 

「アディン、任務から戻ったらまた何か美味しいの作ってあげる☆だから任務、頑張ってきて!!」

 

「ああ!!キメてくるぜ!!ジェミナス、ハンガーパージ!!アディン・バーネット行くぜ!!!」

 

プルのエールを受け、気合いをみなぎらせるアディン。レバーを握る手にも力が入る。

 

慕ってくれる存在の価値観を見出だせた表れでもあった。

 

「フィアンセのもとへ戻るためにも、ヘマするなよアディン!!オデル・バーネット、ジェミナス02出る!!」

 

「だ・か・ら!!!そんなんじゃねーって兄さん!!!」

 

バキャンと2機のハンガーがパージされて、ガンダムジェミナスが飛び立つ。

 

ヒイロの方もセットアップが完了し、出撃準備が整った。

 

ヒイロはバーネット兄弟の口喧嘩を遮るように全体通信を切り、サイドモニターに場所や座標など任務データの詳細を記したデータを映し出す。

 

「次の任務は太平洋沖・西日本近海の地球連邦軍・沖縄洋上基地の破壊と、そこへ向かっている輸送中の空戦部隊を叩く……軍備増強を図るためにエアリーズとアンクシャの部隊が増設されるようだ……更に新型MSが試験配備されている。これも破壊する」

 

デュオもヒイロと同じく任務のデータを見ていた。

 

敵機の新型データには百式に酷似したMSが表示されている。

 

「ここはアジアのOZ軍事拠点の要の一つでもあるんだな………増設部隊に新型か…で、どう攻める?ヒイロさんよ?」

 

「……俺が単独で洋上基地と移動中の増設部隊を叩く」

 

「あぁ!??マジか!??」

 

「お前の任務の手間はぶきだ。それが俺なりの貸し返しだ」

 

ヒイロはデュオの負担を負う事で借り返しをすることを決めていた。

 

「へいへい、そいつは有りがたい……じゃあ、俺はのんびりと害虫駆除に勤しむぜ。その近海でやる演習にお邪魔させてもらうぜ」

 

そう言いながらデュオは任務エリア近海で演習予定のOZ所属の空母の駆逐任務を選択した。

今回のターゲットの基地に所属の空母でもあった。

 

そして、GNDドライブの駆動音を響かせながら、ウィングガンダムとガンダムデスサイズの2機が加速しながら飛び立つ。

 

ウィングバインダーをギュウィっと展開させて飛び立つウィングガンダムの姿が、実に雄々しい。

 

そしてそれを追うようにクシャトリヤも飛び立った。

 

コックピット内のマリーダは、モニター越しにハワードへ改めて礼を述べる。

 

「本当に世話になった。改めて礼を言う」

 

「なぁに…ただサービスしてやっただけだ。また寄るときはいつでも気軽に寄ってくれい。メンテしてやるぞい」

 

「ふふっ、了解した」

 

そこへプルからの通信も入り、彼女の表情が映し出された。

 

「マリーダ、また帰ってきてね。あたしもできればマリーダ達の所いきたいけど、ここなら安全だし、アディンが帰ってくるし……だから……」

 

「ああ、解っている。姉さんを戦場へ連れていくわけにはいかない。私は姉さんの中を見た………姉さんには直接戦う意志はない。姉さんは戦いの道具なんかじゃない………」

 

マリーダは手をかざしあった時にプルが、ニュータイプ研究所で上部だけの優しさに囲まれ、戦争の道具としての価値観に晒されていた事を知った。

 

故に、今はプルをネオジオンと合流させるわけにはいかなかった。

 

ちなみに、ジェミナスのコックピットで戦闘シュミレーションしていたのはあくまで、ゲーム感覚からであり、プル自身は戦闘意思は無かったのだ。

 

「……宇宙に帰る時が来たら、その時に一緒に帰ろう。宇宙には姉さんの帰る場所がある」

 

「帰る場所か……うん!わかった!楽しみにしてるよ!!それじゃ頑張って、マリーダ!!」

 

「じゃあ、行ってきます。姉さん」

 

マリーダは一度瞳を閉じて再び瞳を見開くと、ヒイロに通信をとる。

 

ウィングガンダムのコックピットモニターにマリーダの表情が映し出された。

 

ウィングガンダムとクシャトリヤも並列しながら飛行している。

 

「マリーダ…」

 

「本当に色々世話になったな。礼を言う。それに、ガンダムの概念………少しづつだが変わろうとしている。ヒイロのあの言葉のおかげだ。それを含め、お前の任務で世話になった借りを返す。今からお前の同行しよう」

 

「いや、これは俺の任務だ。ウィングの修理を手伝ってくれただけで充分だ」

 

「しかし……」

 

ヒイロはあくまでも自分がやると決めた任務を貫く姿勢でいた。

 

「俺の任務は俺がやる。マリーダはマリーダの任務を果たせ」

 

「ヒイロ………ふふっ、お前には本当に色々と食わされてしまうな。解った。私は私の任務に就く。またどこかの戦場で会えたらよろしくな。それに、たまに姉さんに会いに来るかもしれないから、その時にも会えるかもしれない……」

 

「ああ」

 

互いに戦場へ行くが故に、マリーダのまたヒイロと再会したいという気持ちが自然に前に出る。

 

「まぁ、いい。この際あえて言おう。またどこかで再会したい。いや、再会する……それがお互いの任務だ。それでいいな?」

 

マリーダは再会したい気持ちを任務と位置づけてヒイロに伝えた。

 

ヒイロは約束の一言で返答し、満更でもない様子だった。

 

「ああ、任務了解…」

 

「くすっ…ならばよし。マリーダ・クルス、任務を再開する!!ヒイロ・ユイ……グッド・ラック!」

 

マリーダはそう言いながら、モニターのヒイロへ向かい、人差し指と中指をビッとさせたサインを贈って通信を切る。

 

「っ―――」

 

ヒイロはマリーダのその仕草に一瞬釘付けになるが、直ぐに我に帰り、鼻で笑ってみせた。

 

「フッ……」

 

同時にクシャトリヤもウィングガンダムから離れ、向かうべき空路に切り替えてその場を離脱した。

 

ヒイロもウィングガンダムをバードモードへと変形させ、任務へと向かった。

 

 

 

地球連邦軍・沖縄太平洋沖洋上基地へと向かうガルダ輸送機。

 

機内には20機に及ぶアンクシャが搭載されていた。

 

更に後続するもう1機のガルダにはエアリーズが20機搭載されていた。

 

計40機に及ぶまさに軍備増強であった。

 

ガルダの機内では基地との通信がとられていた。

 

「こちら、連邦軍及びOZの第3航空中隊!後約一時間で沖縄洋上基地へ到達する!」

 

「航路も視界良好……問題はな……なんだ!?あれは!??」

 

機内の兵士の肉眼に巨大な鳥のようなシルエットが飛び込む。

 

バードモードのウィングガンダムであった。

 

「未確認機と遭遇!!データにもレーダーにも把握できない!!」

 

「あ、アンクシャ部隊を緊急発進させる!!OZにもエアリーズを出せと伝えろ!!」

 

ウィングガンダムのコックピットモニターに2機のガルダが捕捉されていた。

 

「ターゲット確認………排除開始!!」

 

上部レバーをスライドさせてウィングガンダムを変形させるヒイロ。

 

各部を変形させたウィングガンダムが、バスターライフルの銃身を真っ直ぐに構える。

 

モニターのロック・オンマーカーがターゲットを絞り込んだ。

 

その時、ガルダから数機のアンクシャとエアリーズが発進していく映像が確認された。

 

ヒイロはあくまでもガルダへ狙いを集中させ、バスターライフルの銃口にエネルギーをチャージさせた。

 

次の瞬間、高エネルギープラズマ渦流の図太い巨光が撃ち放たれた。

 

 

 

ギュヴヴァアアアアアアアァァァァッッ!!!

 

ドォギュゴガガァァァッッ………ドドヴゴォバアァアアアアッッッッ―――!!!

 

 

一直線に突き進んでいったビームが、2機のガルダを抉るように撃ち貫く。

 

この一撃が搭載された多数のアンクシャやエアリーズをガルダ諸とも爆砕させた。

 

二つの眩い爆発光の華が空中に咲いた。

 

「ガルダ2機破壊。飛び出した残存部隊を叩く」

 

難を逃れた7機のアンクシャと6機のエアリーズが各々に展開し、アンクシャはMS形態へと変形した。

 

両腕に装備されたビームライフルを発射してウィングガンダムに攻め込む。

 

ヒイロは巧みにウィングガンダムをコントロールして、攻撃を回避する。

 

ウィングバインダーを展開させながらハイスピーディーに機体を回転させて弾道から離脱する。

 

ウィングガンダムの機動能力はクシャトリヤと交戦した初期よりも上がっていた。

 

「機動性、ウィングバインダーの機能に問題はない。それに、修理の際にウィングバインダーの中身をチューンしておいた。機動性は上昇している」

 

アンクシャの攻撃に加え、エアリーズのビームチェーンガンやミサイルランチャーの攻撃も空中を奔る。

 

だが、これらもウィングガンダムはかわしていく。

 

ビーム弾雨の中を駆け抜け、一気に加速してみせるウィングガンダム。

 

反転しながらガギャンとバスターライフルを構え、展開するMSにバスターライフルを発射した。

 

 

 

ギュヴヴァアアアアアアアッッ!!!

 

ギュバァドォオオァァ………ドォドォドォドォドォゴォバアァアアアアン!!!

 

 

アンクシャ3機、エアリーズ2機がバスターライフルのビーム渦流に呑み込まれ爆砕された。

 

ギュオンとウィングガンダムに加速しながら1機のアンクシャが、ビームサーベルで斬りかかる。

 

唸る斬撃をウィングガンダムは容易くかわし、バスターライフルを至近距離から撃ち放って、グガシャアとかき消し去るようにアンクシャを撃破する。

 

直後に斜め上より来るエアリーズの攻撃もかわし、ウィングガンダムはバスターライフルでこれに対し、反撃に出る。

 

ヴァズドォと放たれるビーム渦流が、4機のエアリーズを砕き散らして粉砕する。

 

残り3機のアンクシャが、フォーメーションをとってウィングガンダムに攻撃をかけた。

 

向かい来る左右の2機のアンクシャから撃ち放たれるビームライフルの直撃を受けるウィングガンダム。

 

だが、全て中央のアンクシャに攻撃を絞っての行動だった。

 

ヒイロはターゲットのアンクシャから目を離さない。

 

そのアンクシャは左右の僚機が離脱すると同時にビームサーベルを装備して振りかぶる。

 

その刹那にヒイロはウィングガンダムを加速させ、レフトアームのシールドをアンクシャに刺突させた。

 

加速の勢いで威力が増し、アンクシャは爆発しながらバラバラに砕かれた。

 

そしてウィングガンダムは、残りのアンクシャ2機にバスターライフルを放った。

 

だが、2機は直撃を免れるために、寸前で回避する。

 

しかし、バスターライフルのビームが発生させるプラズマ放流のエネルギーの影響を直に受け、2機は爆発を起こして粉砕された。

 

その爆発を突き抜けながら再びウィングガンダムはバードモードへと変形する。

 

「増強戦力の壊滅任務完了、セカンド・フェイズに移行。沖縄洋上基地を叩く!!」

 

真っ直ぐに加速しながらウィングガンダムは洋上基地を目指した。

 

それから間も無くし、海上で演習中のエアリーズ部隊にスクランブル要請が出た。

 

展開中のエアリーズ部隊は個々の小隊を組んでホバリングを開始させた。

 

その最中、水中から黒い影が急浮上した。

 

その黒い影はエアリーズの一小隊の背後を捉える。

 

ガンダムデスサイズであった。

 

「??!」

 

 

 

ズバジュガァァァァァァンッッッ!!!

 

ズズズガゴォオオオン!!!

 

 

 

ガンダムデスサイズが振るうビームサイズがエアリーズ3機を一振りで葬り去る。

 

エアリーズ部隊が一斉にガンダムデスサイズを狙い定めて攻撃を開始する。

 

「へへ、あらよ!!」

 

ガンダムデスサイズは機動性が長けている上に、パイロットであるデュオの回避アビリティーも高いものであった。

 

ガンダムデスサイズは攻撃をかわしながらビームサイズで斬りかかり、エアリーズを次々に斬り砕いていく。

 

機動性を活かし、縦横無尽に空中を駆けるガンダムデスサイズ。

 

動く度にエアリーズがビームサイズで斬り払われていく。

 

「そらそらぁ!!!死神が舞うぜぇ!!!」

 

エアリーズはなすすべなく死へ誘われていく。

 

勢いよく振るわれたビームサイズがエアリーズを熔断し、断面の空間からガンダムデスサイズが顔を覗かせた。

 

爆砕されたエアリーズの残骸が墜落し、出撃前のエアリーズを破壊させる。

 

更に次のターゲットを斬り上げた直後にヒイロから通信が入る。

 

「デュオ、離れてろ。空母を破壊する!!」

 

「あ!!?ちょっと待て!!おらぁあああ!!!」

 

ガンダムデスサイズはがむしゃらなまでにビームサイズを振るわさせて、上昇しながらエアリーズを斬り飛ばし、斬り払い、斬り捌く。

 

「よっしゃ、いいぜ!!空母の真上上空に離脱した!!!」

 

間も無くして、ウィングガンダムが演習エリアに到達し、MS形態へ変形する。

 

ホバリングしたまま、バスターライフルを構えた。

 

「ターゲット、ロック・オン……OZ所属空母艦を破砕させる!!」

 

通常よりも長めにチャージし、バスターライフルの銃口にエネルギーがフルチャージされる。

 

そして撃ち放たれるビーム渦流が、最大出力で発射された。

 

 

 

ギュヴァズゥゴォオァァァァァァァァ!!!

 

 

 

迫り来る巨光の渦が、展開中のエアリーズ部隊ごと空母を押し潰すかのように抉り砕きながら激進。

 

エアリーズ12機と空母艦体を瞬く間に破砕させ、強烈な爆発を巻き起こす。

 

ビームのプラズマ放流の衝撃波の高熱で、海水も爆発と共に激しく吹き上がった。

 

「空母は破壊した。後は残りの駆除だ。これで借りは返したぞ」

 

デュオはこの時、実際のバスターライフルの威力を初めて垣間見た。

 

それは実に洒落にならない兵器であることを実感させられた瞬間であった。

 

「おいおい……こいつは返し過ぎだぜ!!MSの演習部隊諸とも空母をかき消しちまいやがった!!!」

 

「なんか最初と言ってる事がビミョーに違う気がするんだけどナ……ま、確かに俺が楽になった―――」

 

その会話の最中、残存のエアリーズの内1機が下方向から迫ってくる。

 

ガンダムデスサイズに向かって特攻とも言える攻め方で、ビームチェーンガンを連射して突っ込む。

 

「な!!!」

 

だが、デュオは会話の流れに乗せたまま、突っ込むエアリーズにバスターシールドを刺突させ、砕き散らさせた。

 

ウィングガンダムは、次のターゲットポイントへと再び変形して飛び立つ。

 

「洋上基地を破壊する!!」

 

高速で加速するウィングガンダム。

 

コックピットモニターには海面を滑るかのように突き進む映像が映し出されている。

 

ヒイロは無言でモニターを注視している。

 

やがて洋上基地が水平線上に捉えられた。

 

洋上基地では輸送機の撃墜を受けて、配備中のMS各機が戦闘配置に就いて迎撃体制に移行していた。

 

リーオーフライヤー、スタークジェガン、ロトの部隊が武装をスタンバイさせて待機している。

 

そして、彼らの視線上にウィングガンダムが映る。

 

ウィングガンダムのコックピットモニターには複数のロック・オンマーカーが展開し、基地に展開するMS部隊がオートロック・オンされた状態で映し出されていた。

 

「ターゲットポイント到達。洋上基地を破壊する!!」

 

ギュウィィっと変形しながらバスターライフルを構えた。

 

メインロック・オンマーカーが基地を捉え、バスターライフルの銃口にエネルギーが充填され始める。

 

同時にMS部隊が砲撃を開始する。

 

リーオーフライヤーのドーバーガン、スタークジェガンのビームバズーカ、ロトのキャノン砲がウィングガンダムへ撃ち放たれていく。

 

いくつかの弾丸がウィングガンダムに直撃していくが、ウィングガンダムは微動だにしない。

 

そしてバスターライフルのビームが撃ち放たれた。

 

 

 

ギュヴァオオオオオオオオオオォォォォッッ!!!

 

 

ヴァズゴォオン………ズズズガゴォオオオァァァ!!!

 

 

 

突き進むプラズマ渦流が基地に最大出力で撃ち込まれ、リーオーフライヤー3機、スタークジェガン3機、ロト2機を巻き込みながら基地の半分を抉り飛ばした。

 

激しい破壊音と共に基地の構造体やMSが熱蒸発でかき消す。

 

その時のプラズマ衝撃波で直撃を免れたロト3機やスタークジェガン2機を誘爆させて吹き飛ばした。

 

バスターライフルのビーム渦流が奔った痕には、熔鉱炉の溶けた鉄のようにオレンジ色の断面が焼け爛れている。

 

ウィングガンダムのサイドモニターに、バスターライフルのエネルギーの警告アラートが表示される。

 

「エネルギーゼロ………エネルギー充填させる」

 

ヒイロは、バスターライフルをシールドの先端にマウントさせる操作をした。

 

バスターライフルは、最大出力射撃した場合、発射回数が約3発になるように設計されていた。

 

過ぎた力に制限を持たせる事を意図しての設計だ。

 

シールドに接続すると、シールドを介してGNDエネルギーが充填され、一定時間後に再び使用できる仕組みだ。

 

基地にはMS部隊が残っている状態である。

 

ヒイロはビームサーベルを選択し、シールドからビームサーベルグリップを取り出す操作をし、ウィングガンダムに装備させる。

 

そして、ターゲットを絞り込むと、ウィングガンダムを高速で加速させた。

 

ウィングバインダーが展開し、ギュゴウッとスタークジェガンへ斬りかかる。

 

 

 

ザシュゴォオオオオッッ!!!

 

 

 

ウィングガンダムは脇を絞めるように構えられたビームサーベルを一瞬で斬り払い、スタークジェガンを斬り飛ばして高速で離脱する。

 

その先で機体を折り返させ、再び高速で斬りかかる。

 

振りかぶられたビームサーベルが、リーオーフライヤーを寸断させ、離脱。

 

更にその先にいたもう1機のリーオーフライヤーを斬り払った。

 

二つの爆発と共にリーオーフライヤーが焔の華と化す。

 

ウィングガンダムは、間をおかずに更にその攻撃を繋げた。

 

低空加速しながらロトのキャノン砲撃をかわし、空中へ上昇。

 

マシンキャノンの弾丸を真上から連射して1機の

ロトを撃破。

 

更に急降下して、もう1機のロトにビームサーベルを頭上から串刺しにし、爆砕させた。

 

着地するウィングガンダムが、強烈な強さのオーラを纏って聳え立つ。

 

その時、撃ち込まれるビームマシンガンのビームが、ウィングガンダムの胸部に直撃する。

 

だが、効果は全く無く、ウィングガンダムは再びウィングバインダーを展開させてリーオー3機に襲いかかる。

 

一瞬で斬り払われたビームサーベルの斬撃が、リーオー3機をまとめて斬り飛ばした。

 

ウィングガンダムの面前で爆発が巻き起こる。

 

その時、新型機・デルタプラスが飛び立つ。

 

同胞の敵を討たんとばかりに、ウェイブライダー形態で離陸し、加速しながら飛び立つ。

 

そして旋回飛行しながらウィングガンダムへ攻撃を仕掛けてきた。

 

ビームライフルのビーム、ミサイルランチャーが放たれ、ウィングガンダムに直撃させていく。

 

シールドで攻撃を遮らせながら、ヒイロはターゲットデータを確認する。

 

「デルタプラス………あれが新型機か!!」

 

デルタプラスはウィングガンダムの周囲を駆けめぐり、一撃離脱戦法を繰り返す。

 

パイロットの視点では、ウィングガンダムへ迫る映像を全周囲モニターが映し出していた。

 

カチカチとトリガーを引き、ビームライフルをウィングガンダムへ連続で撃ち込んでいく。

 

ビームライフルのエネルギーが切れるまで撃ち込むと、次の旋回時に機体をMSに変形させた。

 

その姿は、Zガンダムのシルエットを持つ百式だ。

 

ビームライフルを捨て、ビームサーベルを取りだし一気にウィングガンダムへ斬りかかる。

 

ヒイロもビームサーベルで対抗する。

 

2機のビームサーベルが激突し、激しいスパークが発生する。

 

互いにビームサーベルを斬り捌き、何度も刃を弾き合わせ、再び拮抗させる。

 

「流石は新型だな。パワーもあるようだ」

 

ギャンと捌き合うと、デルタプラスは一旦引き下がり、加速しながら斬りかかる。

 

ウィングガンダムは、その一太刀をスッとかわす。

 

だが、次の瞬間に薙ぎの斬撃がウィングガンダムに激突した。

 

「!!!」

 

だが、デルタプラスのパイロットは、伝わる手応えの違和感に動揺を隠せずに唖然としてしまう。

 

あたかも鉄パイプで鉄の固まりを殴るかのような感覚。

 

斬るに斬れないのだ。

 

同胞の敵と斬れない焦りが斬撃に現れ始める。

 

その精神状態が生死を別つ。

 

三度続いた斬撃の次の瞬間、ウィングガンダムはデルタプラスのライトアームをザバシュンッと斬り上げ、そこからデルタプラスのヘッドユニットを斬り飛ばした。

 

そしてビームサーベルをコックピット目掛けズドォガンと突き刺す。

 

ジュオォと言う音を上げてスパークするデルタプラス。

 

パイロットはコックピットごと焼灼され、既に消滅していた。

 

ウィングガンダムを巻き込んで、デルタプラスは爆発して機体を砕き散らした。

 

だが、ウィングガンダムは全くと言って爆発の影響は受けていなかった。

 

ビームサーベルを突き出したまま悠然と立ち聳えていた。

 

バスターライフルのエネルギーが充填され、再びバスターライフルを基地に構える。

 

上空から構えられたバスターライフルからプラズマ渦流が発射され、基地に撃ち込まれた。

 

撃ち注がれる爆発的なエネルギーの直撃を受けた海洋基地は、凄まじき炎の柱を噴き上げて大爆発と共に陥落した。

 

「任務…完了」

 

ウィングガンダムの後方にガンダムデスサイズが駆けつけていた。

 

デュオは、連続で任務を達成させたヒイロに改めて感服した。

 

「あいつ………三つ連続立て続けに任務を達成させちまいやがった………大したもんだぜ」

 

任務を終えた2機のガンダムが、立ち上る黒煙を見つめていた。

 

 

一方で、マリーダも己の任務に当たっていた。

 

「掃討部隊に先を越される前に蹴りをつける!!!ファンネル!!!」

 

クシャトリヤから放たれた幾つものファンネルが、地上で展開するジムⅢ部隊を追うように向かう。

 

そしてマリーダの意思に呼応し、ファンネル達が連続でビーム火線を撃ち放つ。

 

瞬く間に5機のジムⅢの装甲が撃ち砕かれ、爆砕された。

 

マリーダは上空を見上げながら、クシャトリヤを上昇させる。

 

その鋭い視線上にはアンクシャとアンクシャに乗るジェガン部隊がいた。

 

個々のファンネルがターゲットをマリーダの意思と連動して狙いを定め上昇していく。

 

「ファンネル、奴等を一掃するぞ!!!」

 

そして敵部隊と同じ高度に到達すると、マリーダは瞳を一時的に閉じ、直ぐに瞳をかっと見開いた。

 

 

 

ビビビビビィン、ビビビビビビビィン、ビビビビビビギュイン!!!

 

ズズズドォドォガガガゴォオオオン!!!

 

 

ファンネル達が撃ち出す幾つものビーム火線が、単機のアンクシャ4機、6組のジェガンとアンクシャを一瞬で破壊する。

 

更に後方から迫るリゼル部隊に振り向くクシャトリヤ。

 

ファンネルを全面に展開させ、迎撃体制をとった。

 

「黙らせる!!!」

 

ファンネルと胸部のメガ粒子ブラスターを組み合わせたブラストアタックを敢行するクシャトリヤ。

 

夥しいビーム火線と、四連ビーム渦流がリゼル部隊へ襲いかかる。

 

 

 

ビィビィビィギュギュゴォヴァウウウウ!!!

 

ズズズガシャアアア………ギャズズズガゴォオオオンゴォオオオン!!!

 

 

 

瞬く間にリゼル8機が消滅した。

 

止めにクシャトリヤは敵機の母艦であったガルダに同じくブラストアタックを放つ。

 

「これで止めだ!!!」

 

文字通り、突風のごときビーム群が、ガルダの巨体を穿つ。

 

機体を貫かれたガルダは空中で大爆発を巻き起こし、バラバラにくだけ散った。

 

下方の地上では、ありがとうと言わんばかりにザクやドムトローペン達がガシャガシャと武装を上下に動かしてクシャトリヤにエールを贈っていた。

 

マリーダも救われた同胞の姿に笑みを溢す。

 

「ふふ………助かったみたいだな。一足遅ければ間違いなく同胞達がやられていた……ん?」

 

更に手を振るアッガイの姿を確認するマリーダは思わず一言溢した。

 

「か…可愛い………ふふっ♪」

 

マリーダは愛くるしさに満たされながら、ヘルメットを取った。

 

「任務完了………さぁ、本隊に合流するぞ!クシャトリヤ!」

 

任務を終えたマリーダは、クシャトリヤに呼び掛けると、フロンタルが待機しているポイントへとクシャトリヤを加速させた。

 

 

 

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