新機動闘争記ガンダムW LIBERTY   作:さじたりうす

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 注意 :少しグロ寄りな描写注意なシーンあります。


エピソード49 「解放への闘い」

 

 A-0206コロニーに開かれる戦端を見つめていたアルトロンガンダムに、正義の眼光が灯る。

 

「行くぞナタク!!!」

 

 

 

 ヒュドアッ……ドォアアアアアアッ!!!

 

 

 

 加速していく先にはディエスのバイアランカスタムや李鈴のバウを筆頭に、中華覇権派OZプライズの高性能MS相手に獅子奮迅をするリーオーやジェガン、ジムⅢ、ネモ等のMS達がいる。

 

 バイアランカスタムは駆け抜ける戦端の中、ビームサーベルとメガ粒子砲を使い分けての攻勢をぶつける。

 

 ビームマシンガンモードの高速射撃で赤と黄色のツートンカラーリングの中華プライズジェスタと中華プライズリーオーを蜂の巣にし、止めに両腕のメガ粒子砲銃口から発動させたビームサーベルで斬り刻み爆破させて見せた。

 

「まずはこのコロニーから解放だ!!!イカレた体制は終いだ!!!」

 

 宇宙を舞うディエスと麒麟・バイアランカスタムは、両腕をかざして高出力モードの小規模ビーム渦流を撃ち飛ばし、2機の中華リゼル・トーラスを撃墜させて見せる。

 

 だがその一方で、ジェガンやリーオー、特に性能が劣るジムⅢやネモが悉く中華プライズリーオーと中華プライズジェスタのビームライフルに撃ち抜かれ、同カラーリングのリゼル・トーラスのビームランチャーに破砕されていく。

 

「次々に仲間達がっ……!!!おのれ!!!」

 

 李鈴は次々に失われていく仲間達にかつての中華ゲリラ・斗争の壊滅を思い起こして、一方的な攻撃に怒りの表情を表す。

 

 バウの放つシールドメガ粒子砲が、1機のリゼル・トーラスを仕留め爆砕へと導いた。

 

「流石、ネオジオンの高性能機!!!ジムなんかとは比較にならない火力……!!!そうだ!!!相手が高性能な人形でもやれるんだ!!!」

 

 次の標的を選定する中、中華プライズジェスタが李鈴のバウにビームライフルを放ちながら迫る。

 

 狙いは正確で、バウの装甲ギリギリを掠め、更に迫りビームサーベルを抜刀して斬りにかかる。

 

「流石にプライズだ!!!強い……だが、私のバウ龍飛(ロンフェイ)、伊達に龍の名を冠してないぞ!!!」

 

 ビームサーベルが振るわれる中華プライズジェスタのレフトアームにバウ龍飛はハイキックで蹴り上げて物理的に攻撃を相殺した。

 

 そのまま離脱しながら何発もビームライフルを胸部に撃ち込んで破砕、爆破。

 

 背後から迫っていた中華プライズリーオーにも振り向き際にシールドメガ粒子砲を放って大破させた。

 

「みたか!!!悪しき者達め!!!んっ?!!」

 

 だが、立て続けに撃破した事による一瞬の油断と有頂天が、リゼル・トーラス数機が一斉に放ったビームランチャーのを直撃を許してしまう。

 

 その攻撃のビーム渦流がシールドに集中し、バウ龍飛のレフトアームは爆発してしまう。

 

「くあああぅっ?!!しまったぁ……!!!は?!!」

 

 更に状況は更に悪い状況に移行しており、リゼル・トーラス達に囲まれていた。

 

 高速点滅するリゼル・トーラスのカメラアイがロック・オンを物語る。

 

 ビームサーベルとメガ粒子砲で戦っていたバイアランカスタムの援軍も届く位置ではなかった。

 

「くっ……!!!間に合わんっ……!!!」

 

 クローで中華プライズジェスタに殴り掛るディエスだが、カウンターを食らってしまいライトアームの先端部をビームサーベルで切断されてしまう。

 

「くそっ……!!!」

 

 直ぐ様レフトアーム側のメガ粒子砲を浴びせて中華プライズジェスタを破壊するが、その向こうには一斉に射撃を浴びて爆発するバウ龍飛の姿が映る。

 

「なんてこと……!!!目の前で女性が戦死など、フィーアだけで沢山だ!!!」

 

 ディエスは以前いた恋人であった連邦軍の女性士官・フィーアをこれまでの間に亡くしていた。

 

 繰り返されてしまう悲劇にひたすら怒りと悔やみがディエスを支配する。

 

 だが、その爆発から飛び出す機体があった。

 

 それは上半身のバウだった。

 

「な?!!そうか、あれには分離機構があったな!!」

 

 元々上半身と下半身が分離変形合体する機構設計であるがゆえに成せた芸当であり、破壊されたのは下半身であった。

 

「代わりの下半身のストックはある!!!こんな所でやられるかああ!!!」

 

 李鈴はビームライフルを乱発し、1機の中華リゼル・トーラスの右脚部を破壊した。

 

 それでも苦し紛れな反撃に他なく、直ぐ様背後からのロック・オンを許してしまう。

 

「だめかっ……今度こそやられるっ……!!!あいつが、あいつがっ……五飛がいてくれたらこんなやつら……!!!」

 

 李鈴は悔やみ紛れに五飛の事を過らせた。

 

 今は何処にいるかもわからない彼を。

 

「私は、腕を磨いてきたっ……あいつに戦士として認めさせる為にな!!!ちくしょう!!!ちくしょーっっ!!!」

 

 その時、未確認機接近のアラートがコックピットに響き渡る。

 

「新手!!?」

 

 ディエスもまた熱源反応に表示が示す方向を見た。

 

「あれは?!!あいつは……まさか?!!」

 

 中華リゼル・トーラスがその方向にターゲット変更をした直後、レフトアーム側のツイン・ドラゴンハングを突き当てながらアルトロンガンダムが乱入する。

 

 

 

 ガッギャガァアアアアアアアッッッ!!!!

 

 

 

「な?!!」

 

 その龍の牙は中華リゼル・トーラスの胸部に食らいつき、致命的に装甲や機器を破壊していた。

 

「ふんっ……こんな連中、恐るるに足らん!!!」

 

 アルトロンガンダムは破壊した中華リゼル・トーラスを他の中華リゼル・トーラスに投げつけ、その機体ごと背部のドラゴン・テールキャノンで撃ち抜いて2機まとめて爆砕させてみせる。

 

 そしてドラゴン・テールキャノンは意思を持ったかのように多方面に高出力ビームを撃ち放ち始め、超精密射撃で次々と中華リゼル・トーラス部隊や、中華プライズリーオー、中華プライズジェスタを破壊してみせた。

 

 高性能コンピューターで制御されている特殊ビーム武装であり、五飛がロック・オンした時点で敵機を認識登録し、その上で任意の自動射撃モードを使用する事でこのような射撃が可能となるのだ。

 

 高速で放たれていく高出力ビームの射撃無双が、コロニー外のMS達を壊滅にじわじわと追い込んでいく。

 

 苦痛なる状況に放たれた一矢の姿は双頭龍の無双であった。

 

「うそ……あのガンダムってまさかっ……!!!」

 

 驚愕する李鈴を他所に、アルトロンガンダムはツインビームトライデントを装備して中華プライズリーオーに襲いかかる。

 

 その間にもドラゴン・テールキャノンが別の中華プライズリーオーを撃墜させていく。

 

「覇ぁあああああああっ!!!」

 

 

 

 ディズギャアアッッッッ!!!

 

 ドグバァアアアアアアアッッ!!!

 

 

 

 ツインビームトライデントの高出力ビーム刃が力強く中華プライズリーオーの胸部を突き砕いて爆砕させる。

 

 その爆発を突き抜けたアルトロンガンダムは中華プライズジェスタにもう一方のツインビームトライデントをすれ違い際に斬りつけて破断し、更に面前に飛び込んだ中華プライズジェスタを薙ぎ斬る。

 

 

 

 ザバギャアッッ!!! ディギャイイイイイイッッ!!!

 

 ドグバァッッ、ゴバォオオオオオオオッッ!!!

 

 

 

 アルトロンガンダムは通常の機体では手強いはずの機体達を容易く破壊し続ける。

 

 その背後から斬り掛ろうとした中華プライズジェスタには、ドラゴン・テールキャノンのチャージショットによるビーム渦流が狙い撃たれた。

 

 

 

 ディッカインッッ……ヴディリリリリ……ヴズダァアアアアアアアアアッッ!!!

 

 ドォズゥバァアアアアアアア……ゴバゴォオオオオオオオッッ!!!

 

 

 

 ビーム渦流に撃たれたその中華プライズジェスタは上半身を吹き飛ばされ爆砕した。

 

 更にその正面から迫る中華プライズリーオーの斬撃に対し、レフトアーム側のツインドラゴンハングをカウンターでぶち当ててみせる。

 

 

 

 ディガォオオオオオオオオオンッッッ!!!

 

 

 

 中華プライズリーオーは頭部と胸部を穿ち砕かれ破砕した。

 

 

 

 

 瞬く間に敵部隊を一掃させたアルトロンガンダムは彼らにとって思いがけない強力無比な助っ人であった。

 

 ディエスは早速アルトロンガンダムに通信回線を開く。

 

「ふふふっ、はははははは!!!まさかここで再会するとはな!!!張五飛!!!」

 

「確かディエスと言ったな。貴様もよく生きていたものだ」

 

「それは互い様だ……決着を着けるぞ………と言いたいが、お預けだ。まずは奴らを排除させなければならん!!!」

 

「L5に入って間も無く、俺も奴らと闘ってきた。お陰で里帰りが思った以上に遅れてしまったがな」

 

「このコロニー、お前の故郷だったのか?!」

 

「あぁ。久しぶりに戻れば悪が蔓延る場所になってやがった……OZプライズのようだが何かが違う。何者なんだ?」

 

「流石だな。奴らはプライズであってプライズではない……中華覇権を掲げる中華覇権派OZプライズだ。俺は成り行きでそれに抵抗しようとするゲリラ達に協力していた」

 

「中華覇権……旧世紀の恥さらしな主義か……また掲げる馬鹿がいるとはな……お陰で本来の俺達の民族がかなり蔑まされた扱いを受けた歴史を記憶している」

 

「……欧州貴族が核のロームフェラ財団と中華覇権主義の中華思想の幹部や兵士達……OZプライズとは異質な連中故にその分裂は必須だったかもしれん……まだ、主な連中はコロニーの中だ」

 

 五飛とディエスが話す中、李鈴が割って通信回線に入り込む。

 

「やはり五飛なのか!!?というか私を無視するな!!!」

 

「……お前は……!?!」

 

「まさか忘れた……とは言わせんぞ?」

 

「ふっ……忘れるものか……忘れる方が無理あるぞ。李鈴」

 

 ここに来てディエスは初めて二人が面識があった事を知った。

 

「二人とも知り合いだったのか?」

 

「ああ。半年間世話になった事もある」

 

「そうか……五飛。決して亡くすなよ。俺の……フィーアの二の舞は沢山だからな……」

 

「貴様……何か勘違いしていないか?だが、俺もかつてあのコロニーで大切な存在を失った……その手の心境が理解できないわけではない……」

 

 五飛は亡き妹蘭を思い浮かべ、彼女の姿を脳裏に過らせる。

 

 するとディエスの次なる言葉が五飛に衝撃を与えた。

 

「奴らの覇権とは、不都合・不要と身勝手に決めつけた対象をジェノサイドすることも目的としている……老若男女、大人子供問わずな!!!こうしている今も、現在進行形でジェノサイドが進んでいる!!!」

 

「……ジェノサイドか。故郷のコロニーはあの日以上の苛烈さに見舞れているのか……!!!」

 

 五飛が睨みを向ける故郷のコロニー内ではムーンムーンのコロニー同様のジェノサイドが行われていた。

 

 龍(ロン)一族の男達は強制労働を強いられ、また別の龍一族の男達は生きたまま臓器を取り出され、女性達は強制避妊手術、妊婦に至っては赤子の強制摘出等、非人道の極みたる愚行に晒されていた。

 

「くそがっ……何時間働かしやがる……!!!こんな、クソな太陽光パネルなんざっ……ぐはっ……!!!」

 

「や、やめろっ!!!やめろぉぁいぐがはぶぐがががっ……!!!」

 

「嫌ぁああああ!!!私の赤ちゃん、赤ちゃん返してぇえええええ!!!いやああああっ……がぐはっ!!!」

 

 長期間強制収容労働により吐血し倒れる者。

 

 拒絶を叫びながら強制的に腹を捌かれる者。

 

 目の前に強制摘出された赤ん坊の亡骸を目の前に差し出された挙げ句に銃殺される妊婦。

 

 中華覇権派OZプライズの愚行は歯止めがなかった。

 

 またある一方ではコロニーに穴が空こうがお構い無しに中華リゼル・トーラスによるビーム射撃の虐殺か行われていた。

 

 そんなおぞましい狂気の沙汰に晒されたコロニーに、正義と真の中華民族の誇りをかけて五飛はアルトロンガンダムと共に向かう。

 

「ナタク……腐りに腐った悪を砕き潰すぞ!!!お前が守ろうとしたコロニーをこれ以上の惨状にさせる訳にはいかん!!!」

 

 気迫を込めて五飛は既に穴が空いた外壁部に機体を突入させた。

 

 薄暗いコロニーの通路を突き進み、ゲートをドラゴン・テールキャノンで吹き飛ばしながら強制的にコロニー空間に出る。

 

 広がるコロニーの情景には、一定区画に攻撃を強いる中華リゼル・トーラスの機体群がいることが確認できた。

 

 居住区画を拡大すれば、逃げている民に対して一方的な虐殺が行われているのが更に確認できる。

 

「き、貴様らあああああああっ!!!!」

 

 怒髪天を突かれた五飛は、轟々たる勢いで一気にアルトロンガンダムをそのポイントへと飛び込ませた。

 

 背後からの熱源反応に気づく中華リゼル・トーラス達であったが、射撃開始前に1機がツインビームトライデントの強烈な刺突を胸部に受けた。

 

 破砕と同時に爆砕し、次の瞬間にはツインビームトライデントの薙ぎ払いが振るわれ、一挙に3機同時に斬り捌いてみせる。

 

 メガビームランチャーを連発して攻勢にでる中華リゼル・トーラスの機体群であるが、その射撃の全てが躱される。

 

 だが、その高火力ビームの直撃は先程と同様、コロニーの外壁に穴を空け、更なる被害を拡大させる。

 

「流石人形だな!!!何も考えちゃいない!!!覇ぁあああああああああああ!!!!」

 

 レフトアーム側のツインドラゴンハングが伸び、1機を破砕すると、レフト・ドラゴンハングはそれを咥えたままもう1機の中華リゼル・トーラスにぶつけた。

 

 同機種を押し付けられた直後、レフト・ドラゴンハングの頬にあたる部分に装備された火炎放射機が火を吹く。

 

 ジェット噴射のごとき青白い超高熱の炎が放たれ、装甲や内部機器を溶解させながら原動機の爆破へと導く。

 

 更に他の中華リゼル・トーラスにも浴びせかけ、次々に連鎖爆破を巻き起こさせた。

 

 無論、この派手がましい状況が伝わらない筈もなく、コロニーに警報が鳴り響く。

 

「コロニーにガンダムが侵入した!!!現在、警備のリゼル・トーラスを破壊しながら龍一族収容区画を襲撃している!!!総員第一種戦闘配備!!!繰り返す!!!総員第一種戦闘配備!!!」

 

 中華プライズリーオーや中華プライズジェスタが出撃を開始し、植民地支配で築いた基地から各機がアルトロンガンダムの攻撃に向かう。

 

 急行した先では、アルトロンガンダムのレフト・ドラゴンハングとツインビームトライデントの乱舞により次々に中華リゼル・トーラスが破壊されていた。

 

「め、メテオ・ブレイクス・ヘルのガンダムを確認!!!リゼル・トーラスを破壊しながら進撃中!!!」

 

「相手はあのメテオ・ブレイクス・ヘルのガンダムだ!!!高火力を叩き込め!!!」

 

 ドーバーバスターやビームライフルの集中砲火を浴びせに掛る中華覇権派OZプライズ勢であるが、その攻撃は一瞬の間に躱された。

 

「な?!!!消えた?!!!はがぎぃぃ?!!!」

 

「がはあああ!!!」

 

「ぐごあああっ?!!」

 

 閃光の機動力で青白く光るアルトロンガンダムが駆け抜ける。

 

 PXシステムを発動させたアルトロンガンダムのツインビームトライデントの斬撃は、電光石火の如く一瞬にして幾多のMS達を駆逐させる。

 

 駆け抜ける残像の軌道上に連なる幾多の爆発が戦術の常識を土返しさせていく。

 

「何が中華覇権だ!!!その思想そのものが悪だ!!!俺が見定めた悪は、必ず滅ぼす!!!!そうだろう!!!?ナタク!!!!」

 

 ツインビームトライデントとツインドラゴンハングの轟々たる紅蓮のごとき攻勢が、コロニーを占領する中華覇権派OZプライズを壊滅へと追い込んでいく。

 

「だぁああああああっ!!!!!」

 

 突き上げたレフト・ドラゴンハングが中華プライズジェスタの胸部を貫通し、アルトロンガンダム自体が中華プライズジェスタを砕き散らせる。

 

 中華プライズジェスタを突き抜けたアルトロンガンダムは、間を置くこと無くドラゴン・テールキャノンの正確無比な乱れ撃ちを放った。

 

 PXシステムによる増大したGNDエネルギーの超高速ビーム射撃が周囲の敵機に次々と命中し、爆発に爆発を折り重ねていく。

 

 このアルトロンガンダムの攻勢によりMS部隊は更に加速的に次々に破壊され続けるに至った。

 

 増援として駆けつけた部隊もまた、ドラゴン・テールキャノンの超高速射撃でガラクタのように無惨に砕き散らされるだけだ。

 

「俺は逃げも隠れもしない!!!ジェノサイドをされた者の恐怖、その薄汚い精神に刻め!!!」

 

 五飛の怒りを体現するが如くアルトロンガンダムの猛撃は続いた。

 

 MSを壊滅させたその後も、五飛はコロニーを占領していた部隊の仮設基地を強襲し、敵兵士を一人残らず火炎放射器の超高熱で焼き払う。

 

「があああああ!!!がぐあああああ!!!」

 

「いぎぎがはぁっ、がはっ、があああああ!!!」

 

 五飛は生身の兵士達に対し、全く容赦せずに凄まじい苦悶を与える。

 

「貴様らが俺達の民族に犯したジェノサイドを思えば、これでも安いくらいだ!!!地獄の業火の前に今はナタクの炎に焼かれるがいい!!!」

 

 吹き放たれる青白い超高熱の炎は基地を焼き付くし、業火の海に変貌させた。

 

 連続する爆発が巻き起こる戦場を背に、アルトロンガンダムは雄々しくかつ威風堂々と立ち、両眼を光らせた。

 

 戦闘が沈静化し、五飛は収容施設を李鈴やディエス達と共に囚われた龍一族をはじめとする民衆を解放させるに至る。

 

 アルトロンガンダムに畏怖された中華OZプライズ兵士達は次々と投降するも全員銃殺、もしくはアルトロンガンダムの火炎放射器によって焼き払われ、壮絶な扱いの下報いに果てていった。

 

 解放された龍一族や一族に付き従う者、一般の民衆達が五飛や李鈴、ディエス達の許に集う。

 

 一族の長である老婆の龍老師が五飛と対面する。

 

「誠にかたじけない。五飛よ、お前の行動がこのコロニーの皆を救ったのだ。深く礼を言うぞ!!!」

 

「龍老師こそよくぞご無事で!!聞けば奴等は俺達のコロニーをはじめ、L5コロニー全域で占領や民族大虐殺をしていると聞きました!!!故に、しかるべき正義を執行したまでです!!!」

 

「うむ。それでよいのじゃ五飛。今後も迷うこと無くその正義を振りかざし、己で正義を決めるのじゃ!!!」

 

「はい!!!精進します!!!」

 

 あの五飛が身を低くして敬語で接している光景に李鈴は違和感を覚えてしまう。

 

 (なんか……拍子抜けするな……あの五飛が……)

 

 そして龍老師や龍一族の者達は斗争のメンバーに顔を向け重ねて礼を述べる。

 

「そなた達も協力してくれたのだな。重ねて深く礼を申すぞ……」

 

 会釈する龍老師達に対し、斗争のメンバーも会釈で返す。

 

「……私達は元々が反抗ゲリラだった。故にこの理不尽な状況に立ち上がったまでです……当然の……」

 

「っな?!!おおお!!!そ、そなたは……?!!なんという奇跡じゃ!!!」

 

 突然李鈴の言葉を遮るように龍老師は声を大きくして驚愕する様相をみせた。

 

「は、はぁ……?」

 

「妹蘭っ……妹蘭ではないか!!!」

 

「え?!!どういうコト……?!!!」

 

 老体を無理してでも李鈴に駆け寄り、彼女の両肩を握りしめた。

 

「あの日、亡くなった妹蘭が、ここにぃ!!!」

 

 全く状況が呑めない李鈴に五飛は割って入り、状況を説明する。

 

「龍老師!!どうか落ち着いて下さい!!勿論のことですが、彼女は妹蘭ではありません!!彼女の名は李鈴。反抗ゲリラ・斗争のリーダーです。確かに、妹蘭の生き写しといっていい程似てますが……!!!」

 

「そ、そうか……すまぬ。つい取り乱してしまったな……それにしても、驚いた。妹蘭と瓜二つの少女がおろうとはな!!!」

 

「は、はぁ……」

 

 李鈴は唐突な流れに唖然とした様相を見せる。

 

 同時に彼女と瓜二つと言われるが故、亡き妹蘭に不謹慎ながらも懐いた興味を無視できなかった。

 

「そんなに似ているのか……その妹蘭という女性……確認出来るなら見てみたいものだな……」

 

 その言葉を受けた五飛や龍老師達は、顔を見合せながら頷き合うと、返答と対応を李鈴に返した。

 

「うむ……そなたには是非とも妹蘭に会ってあげてもらいたいと思う。五飛よ、彼女を案内して差し上げなさい」

 

「はい!!」

 

 先ずは五飛の案内で、妹蘭が眠る彼女の墓に李鈴は案内された。

 

「……これが……妹蘭さんの墓か」

 

「ああ。ナタク……いや、妹蘭がここに眠っている」

 

 その五飛の返答から頭の片隅で抱いていた疑問符を五飛に投げかけた。

 

「五飛。確かよくお前のガンダムにもそう呼び掛けているよな?ナタクとはなんだ?」

 

「妹蘭自身が自らをそう名乗っていた。道教に出てくる少年神のコトだがな。その妹蘭はゲリラ攻撃をコロニーに仕掛けてきた連邦とOZに対し、未完成のナタク……シェンロンガンダムを守ろうと、MS・トールギスに乗り込み……戦って散った……だから、シェンロンガンダム……もとい、アルトロンガンダムには妹蘭の意志が宿っている……そう、俺は信じている」

 

「そう……なのか……」

 

 五飛の重い過去の片鱗や妹蘭への想いに触れた李鈴は、複雑な心境を表情に表して五飛から視線を逸らそうとした。

 

 すると五飛は墓に歩みより、設置されているタッチパネルを操作し、3Dモニター式の妹蘭の遺影を表示させる。

 

「李鈴、妹蘭だ」

 

「……っ!!!この人が?!!本当に私に似ている!!!本当に……私って、妹蘭さんの生き写しだったのか!!!」

 

 五飛のその言葉にモニターの遺影を見た李鈴は、無論の事ながら余りにも似ている事に対し驚愕を隠せなかった。

 

「俺も最初は本当に驚いた。似た者が三人いるというが、まさか戦場で妹蘭に似ている存在と会えるとは思わなんだ……だが、あの時は色々世話になった。だから今俺は闘えている。改めて礼をいう」

 

「……いや、私の方こそ礼をいう。あの時も今回も助けてくれたんだ……五飛が……本当にお前のガンダムは私達にとって誇りだよ。ありがとう」

 

「李鈴……」

 

 五飛の視点に映る李鈴に妹蘭の面影が、今までで最も強くだぶる。

 

 別人とはいえ、やはり意識上そう映らざるをえないのだ。

 

 五飛は拳を固く握りしめ、李鈴に放つ。

 

「……俺は、二度とあの悲劇は繰り返させない!!!このコロニーを、龍老師達を、そしてお前達を……死なせはしない!!!」

 

「五飛……!!!」

 

 

 

 L5コロニー群の別エリア、ムーン・ムーン。

 

 サラサ達光族は日々確実に滅亡の足音を聞かされ続けていた。

 

 来る日も、来る日も非人道なジェノサイドの餌食となり、命を散らしていく。

 

 当初は一気に大量にジェノサイドされたのが、嫌らしく削るように進行する方針に変わった。

 

 それまでは光族に圧倒的力を示すため、みせしめたのだ。

 

 そして現在は、人数を少数に削る。

 

 コロニー内は中華覇権派OZプライズの兵士達が、外部には中華覇権派の赤いカラーのリゼル・トーラス、プライズリーオー、プライズジェスタが常駐し続け、下手な脱出はできない。

 

 だがこの日異例な状況が起こっていた。

 

 収容施設から光族の家族グループがおよそ二十組が連行されている様子が伺えたのだ。

 

「ねぇ?私達は出られるの?もー、暗くて汚いあそこにいなくてもいいの?」

 

 幼い光族の少女が同じく光族の父親に尋ね、父親は小声で励ますように言う。

 

「あぁ。そのようだよ。やっと出られるんだ」

 

「何処にいくの?」

 

「お父さんにもそれはわからない……けどがんばろう!!」

 

「……うん!!」

 

 銃を突きつけられた光族の家族グループ達は何機かの宇宙輸送船に連行されていく。

 

 そして、順繰りに宇宙輸送船は出発していく。

 

 その船団が展開する中、進行方向に一際目立つ機体の姿が混じった部隊がいた。

 

 プライズリーオーやプライズジェスタに混じるその機体は、巨大なシール状のユニットを背負う紅いMS。

 

 一見すると赤い彗星の機体のようなそれはガンダムであった。

 

 サイコガンダムMkーⅣ……経緯が不明の域を出ないが、紛れもなくガンダム・Cフェネクスと並ぶ中華覇権派OZプライズのガンダムである。

 

 その名の通り、四番目のサイコガンダムであり、中では被験体の強化人間パイロットが肩を上下させながら呼吸を荒くしていた。

 

「敵……はぁっ、俺に……はぁっ、敵を……はぁっ、さっさとぶっ殺してやりたいんだぁ……!!!敵をくれ!!!敵をぉ!!!」

 

 サイコガンダムMkーⅣの強化人間パイロットは、ガンダムCフェネクスのパイロットの紅烏に引けを取らない狂人に仕上がっているようであった。

 

 監視する中華プライズリーオーやプライズジェスタのパイロットが宥めにかかる。

 

「落ち着いてくれ。なぁに、お前の求める敵はもうじき現れるさ」

 

「ぎぃ……本当にかぁ??」

 

「あぁ……(そろそろ頃合いか)」

 

 すると、その兵士は搭乗するプライズリーオーから信号弾を打ち放つ。

 

 それを確認した光族を乗せた宇宙輸送船を操縦していた兵士達が一斉に自動操縦に切り替え、自分達だけが離船を開始した。

 

 そして、並行していたプライズリーオーやプライズジェスタがかざし始めたマニピュレーター(手)に、兵士達は各々に掴まっていく。

 

「さぁ……ショーの始まりだっ!!!」

 

 信号弾が目映く光る中、サイコガンダムMk-Ⅳのパイロットに向けて通信が入る。

 

「あの光に照らされた船団が、キサマの敵だ!!!さぁ、今こそ恨みを晴らせ!!!」

 

 その通信はあからさまに罪なき光族を虐殺するように仕向ける行為に他ならず、目的はジェノサイドを兼ねた攻撃試験だった。

 

「げぎぎぎっ、敵ぃ!!!」

 

 ギンと敵意の眼差しを人機共々に光族の人々がいる船団に向ける。

 

 轟々たる勢いでサイコガンダムMk-Ⅳは船団に飛び込み、背部のサイコ・ディフェンスプレートを展開させた。

 

 細かく分離したサイコ・ディフェンスプレートは縦横無尽に宇宙空間を飛び交い、瞬く間に輸送船をズタズタに削り斬りはじめる。

 

「な!!?ど、どういうことだ?!!!我々は釈放されたのではなかったのかぁあっ?!!!」

 

「お父さぁあああん!!!怖いよぉおおお!!!」

 

 先ほどの光族の少年が泣き叫びながら父親にしがみつく。

 

 だが、父親にできることは息子を抱きしめる他なかった。

 

「っ……っ、くぅ!!!」

 

 何故、光族というだけで急激な非人道な理不尽を叩きつけられなければならないのか?

 

 その疑問符を巡らせた直後、サイコ・ディフェンスプレートが船内に突き刺さり、瞬く間にその親子を含めた光族の人々は悲惨な最期を遂げさせられていった。

 

 サイコ・ディフェンスプレートを飛び交わせながら連続で船団の輸送船を斬り潰していくサイコガンダムMk-Ⅳは、不気味に両眼を光らせながら両腕を広げるようなアクションをする。

 

「敵ぃ!!!敵ぃ!!!敵は滅べぇえええ!!!」

 

 更に攻撃を増膨させると、あろうことかサラサ達がいるムーンムーンのコロニーに意識を向けた。

 

「あそこにも敵ぃがいるぅのかぁあああ!?!!」

 

 ギンと狂気の沙汰の両眼がコロニーを捉える。

 

 その刹那、サラサもまたその狂気のプレッシャーを感じ取っていた。

 

 (っ―――!!!この感じは……!!!凄く邪な圧っ)

 

「サラサ様!?いかがされました?!」

 

「サラサ様?!」

 

 強化人間のパイロットが与えるプレッシャーを受けたサラサは周囲の光族の者達に心配を与える程の変調を表していた。

 

「……邪悪な気配が迫っています……ですが、同時に……光ある者達も……近づいています!!!」

 

 サイコガンダムMk-Ⅳがムーンムーンのコロニーへと轟々と迫る。

 

「敵ぃ、敵ぃ、敵ぃっ!!!ギャハハハ!!!」

 

 サイコ・ディフェンスプレートをファンネルのように展開し、再び攻撃体勢に入る。

 

 だが、次の瞬間にビームの束がサイコガンダムMk-Ⅳに襲い掛かった。

 

「?!!っでぃぎぃ?!!!」

 

 瞬時にそれをサイコ・ディフェンスプレートで遮断してみせる。

 

 

 

 ディシュアアアアアアアッ!!!

 

 

「敵っ?!!!ひはっ!!!キタあ?!!!」

 

 本当に自機を狙う敵の出現に、驚きと笑みの表情を口元に見せる強化人間のパイロット。

 

 その眼前にムーンムーンのコロニーを守るように、キュベレイMk-Ⅱが現れた。

 

「あんたが、この辺の狂気の元凶だな!!!無論、他の雑魚連中も酷いがな……相手はあたしだ!!!来な!!!」

 

「ぎしゃああああ!!!」

 

 プルツーは威風堂々と狂気に立ち向かう。

 

 キュベレイMk-Ⅱの矛のごとしファンネルのビームとハンドランチャーのビームと、それを受け止める盾のサイコ・ディフェンスプレートがぶつかった。

 

「はぁあああああああ!!!」

 

 機敏に動く多数のファンネルとサイコ・ディフェンスプレートが宇宙空間に舞う。

 

 細胞のように細かい盾は、幾つかがカッターのごとし凶器に変貌する。

 

「あぎいいい!!!」

 

 そしてそれはプルツーの意思を宿すファンネルを撃墜してみせる。

 

 対してサイコ・ディフェンスプレートはビームを弾く。

 

「なっ……!!!この禍々しいガンダム、クセがある……!!!」

 

 ビームを弾く無数の細かいサイコミュシールドとファンネルの相性は一方的に前者に優位性を与える。

 

「ビームがうざいシールド弾かれ、更にそれがファンネルを狙う……ざかしいね!!!なら、本体に飛び込むまでだ!!!」

 

 プルツーはビームサーベルに武装を切り替えて、サイコガンダムMk-Ⅳに斬りかかった。

 

 だが、サーベルが届こうとした刹那にサイコ・ディフェンスプレートが防御し、更に広範囲から矢のように仕向ける。

 

「な?!!こいつ!!!」

 

 プルツーは何とか瞬間的なひらめきと判断で、サイコ・ディフェンスプレートを辛くも掠りながら離脱して躱す。

 

 だが、その方向に一斉にサイコ・ディフェンスプレートが集結して一つの壁を作り、キュベレイMk-Ⅱの行く手を阻んだ。

 

「くそっ……!!!」

 

 そして一気にサイコガンダムMk-Ⅳが迫り、サイコナックルとも言うべき負のニュータイプ的力を宿した鋼の拳をキュベレイMk-Ⅱの胸部に叩き込んだ。

 

 

 ドガォオオオオオオンッ!!!

 

 

「きゃあぁああああああああ!!!」

 

 プルツーの悲鳴と共にキュベレイMk-Ⅱは激しい衝撃とダメージに吹っ飛ばされてしまう。

 

 その一方で、アディンのガンダムジェミナス・グリープが斬り込みにかかり、ビームランスの一薙ぎで4機の中華プライズリーオーを一掃する。

 

 

 

 ザシュバァギギギギガァアアアアアアアアアッ!!!

 

 ゴババババガァアアアアアアアア!!!

 

 

 

「プルツーが……!!!ちっ!!!うざいMSども!!!とっとと消えやがれぇ!!!」

 

 その多重爆発を突き抜けたガンダムジェミナス・グリープはプルツーを助けるべく、行く手を阻むかのように周囲に蔓延る中華プライズジェスタの機体群に飛びかかり、滅多斬りの斬撃を浴びせた。

 

 ザシュガッ、ジュバガッ、ズザドォッ、ザギンッ!!!ディギャガガガザバァァアアアアアア!!!

 

「あっという間に二個小隊が……!!!この出鱈目なメテオ・ブレイクス・ヘルのガンダムなのか?!!!何故ここにぃ?!!!」

 

「A-0206コロニーに現れた機体とは別の機体か?!!場所が離れている!!!っ?!!がぁああああ……!!!」

 

 

 

 ザズドォオオオオオオッ!!! バゴァアアアアアアアア!!!

 

 

 

 中華プライズジェスタの胸部にビームランスの刺突が直撃し爆発破砕。

 

 更にその背後にいたもう1機の中華プライズジェスタも巻き込み爆砕させる。

 

 アグレッシブかつハイスピーディーな軌道を描いて、体勢を宇宙空間の一点に止めると、レフトアームのライトバスターライフルを構え、迫る中華プライズリーオーの二個小隊に銃口を向けた。

 

 

 ジャキンッ!!! ヴゥゥイィッッッ―――ヴヴァダァアアアアアアアアアアアアッ!!!

 

 

 ドォヴォバァアアアアアアアアアァァァ……ドォドォドォゴバァッッ!!! ドドォドドドゴバァガァアアアアアア!!!

 

 

 ビーム渦流の直撃を受けた3機の中華プライズリーオーが破砕爆破し、ビーム渦流を躱した他の5機がビーム渦流に帯びた高エネルギープラズマ奔流の影響を受け誘爆を巻き起こす。

 

 その後方では、レディが高速宇宙戦闘艦操縦を一任し、護衛の為にノインが専用の白いリゼル・トーラスを駆り、メガビームランチャーを迫り来る中華プライズジェスタに直撃させていた。

 

 彼女もまたエースパイロットレベルのスキルを持ち合わせていたのだ。

 

 

 ヴィギュアアアアアア!!! ヴィギュアアァアアアアア!!!

 

 

 ドズゥゴアッッ、ドォドォゴォオオオオ!!!

 

 

「こいつらが中華覇権派か……機体だけだ!!恐るるに足らん!!!」

 

 

 

 ヴィギュアアァアアアアアア!!!

 

 

 

 ノインはメガビームランチャーを撃ち続け、連続で中華プライズジェスタやリーオー撃破していく。

 

 その最中で改めて鬼神のごとき無双をするガンダムジェミナス・グリープにノインはモニター越しに確認する。

 

「あれが……メテオ・ブレイクス・ヘルのガンダム……実際にこの目で初めて見たが本当に……凄まじい強さだ……!!!フフフ、心強いという言葉では収めきれん……な!!!」

 

 そう言いながら、ノインは照準を合わせ中華プライズリーオーを撃破してみせた。

 

 その爆発を視認しながら、レディはノインに一時的な離脱を提案する。

 

 無論ながら負のプレッシャーから体調を崩しているプルやメカニックのシェルド、そしてユニコーンガンダムをのせているからだ。

 

「レディ!!私達はできるだけ彼らの戦闘エリアから離れよう!!!こちらにはプルと彼女のガンダム、メカニックも乗っている!!」

 

「了解した!!!」

 

 ノイン専用リゼル・トーラスはメガビームランチャーのチャージローリングショットを撃ち放ち、周囲の敵機を一掃してみせた。

 

 だが、艦内ではプルが負のプレッシャーによる体調の不良を押しきり、ユニコーンガンダムに乗り込もうとしていた。

 

 そんな彼女をシェルドが止めようとする。

 

「プル!!!大丈夫なの?!!無理強いして出撃したらダメだよ!!!」

 

「シェルド……ダメ。このままじゃ、プルツーがやられちゃう!!!絶対にそんなことあっちゃいけない!!!だから!!!」

 

「アディンさんがいるじゃないか!!」

 

「ダメ……結果的に邪魔する存在が迫ってる……!!!」

 

「え?!!」

 

 プルのその言葉通り、サイコガンダムMk-Ⅳに迫るガンダムジェミナス・グリープを阻むかのようなビーム渦流が注がれた。

 

 だが、そのビーム渦流は中華プライズリーオーや中華プライズジェスタにも直撃し撃破していた。

 

「何?!!友軍も撃ったのかよ?!!」

 

 直後、あの男からの通信が入る。

 

「久しぶりだな!!!ガンダム!!!いや、アディン・バーネット!!!こんな所で会うとはな!!!」

 

「な?!!ロッシェ・ナトゥーノ!!!味方機まで撃ってまで俺とやり合おうってか?!!!」

 

「味方?勘違いするな!!!奴らはプライズを組織的に裏切った粛清対象に過ぎん!!!我々は偵察も兼ねて可能とあらば騎士道と人道を度を超えて踏み外した愚か者達の粛清の為に来たのだ!!!」

 

 その言葉と共にロッシェが駆るトールギス・フリューゲルがビームサーベルを斬り下ろすような軌道でガンダムジェミナス・グリープに武力介入を切り込んだ。

 

「野郎……!!!だったら、邪魔すんな!!!」

 

「問答無用!!!決闘の続きだ!!!」

 

「ちくしょう……!!!だったら無理でも全力でこじ開けるっっ!!!」

 

 強者と強者の強力なつばぜり合いがはじまり、同時に僚機のプライズリーオー達が中華プライズサイドのMSと戦闘を開始する。

 

 三つ巴の勢力図が発生する中、キュベレイMk-Ⅱは劣勢に立たされていた。

 

「ダメだ!!!このままじゃ、やられる!!!間合いを……あぁうっっ!!!」

 

 再びサイコナックルが襲う。

 

 更にサイコガンダムMk-Ⅳはサイコ・ディフェンスプレートにキュベレイMk-Ⅱを押し当て貼り付けにさせた。

 

 そして負のプレッシャーを押し付けながら機体フレームを狙うサイコ・ディフェンスプレート攻撃が迫る。

 

「ぐぅう……イヤだっ……!!!死にたくないっ……!!!シェルドッッ……もっと素直になってあげたかった……!!!」

 

 プルツーは本音を吐露しながら、悔しげに溢す。

 

 モニターの目の前には、醜悪なサイコガンダムMk-Ⅳの顔面があった。

 

「フフフ、感覚からわかる。こいつもサイコガンダムか……因縁なんだな……これも。プル、あたしもそっちにいくよ……きっと因果応報ってやつなのかな……??」

 

 悔し涙を弾かせるプルツーに迫るサイコ・ディフェンスプレート。

 

 その向こうでガンダムジェミナス・グリープとトールギス・フリューゲルの、スパークが弾き光るハイレベルな高速軌道の一騎討ちが展開する。

 

「こぉんのやらぁあああああああっっ!!!」

 

「ガンダムゥゥウウウウウウウッッ!!!」

 

 プルツーに後一歩で阻まれた決闘にアディンは苛立ちを掛した怒りでビームサーベルにビームランスをぶち当てまくる。

 

 つばぜり合いに持ち込み、アディンはロッシェに怒りをぶつける。

 

「今回ばかりはテメーは最低な騎士だぜ!!!クソ野郎!!!」

 

「何ぃ?!!!」

 

「お前がこうして邪魔してくれているせいで、女の子一人が奴ら中華プライズによって死ぬかもしれないんだよ!!!」

 

「何だと!?!不覚……決闘に固執し過ぎたようだ!!!私の行動で、レディを危機に晒してしまうとは……!!!」

 

「遅ぇんだよ!!!ちくしょう!!!」

 

 アディンは薙ぎでトールギス・フリューゲルのビームサーベルを振り切り、プルツーの危機にPXシステムを発動させた。

 

 GNDソニック・ドライヴァーとの組み合わせにより、ガンダムジェミナス・グリープは一気にサイコ・ディフェンスプレートの攻撃の間に飛び込もうとする。

 

「プルっっ、シェルドっっ―――!!!」

 

 プルツーはかつて殺めてしまった方のプルと、今不器用ながら想いを寄せているシェルドを想いながら死を受ける覚悟をする。

 

 

 飛び込むガンダムジェミナス・グリープだったが、突如として、ユニコーンガンダムが飛び込む。

 

「な?!!!プル?!!!」

 

 激突回避の急軌道で、ガンダムジェミナス・グリープはユニコーンガンダムを躱す。

 

 そしてファンネルシールドがサイコ・ディフェンスプレートを弾き、更にユニコーンガンダムがかざしたライトアームからサイコ波動が放たれ、一気にサイコガンダムMk-Ⅳを弾き飛ばす。

 

「プル?!!」

 

「はぁっ……!!!良かった!!!間に合った!!!はぁっ、はぁっ、はぁ……!!!」

 

 プルは負のプレッシャーに無理くり押しきる形でユニコーンガンダムと共に飛び込んでいた。

 

「プル!!!プレッシャーは大丈夫なのか?!!!」

 

「うん……!!!お姉ちゃんがしっかりしなきゃね☆それに、ユニコーンガンダムに選ばれたんだから……このガンダムを信じて戦う!!!」

 

 サイコフレームから放たれるエメラルドグリーンの光りが目映く光り、その光りが更に強くなる。

 

「ギギギギ!!!敵ぃいっっ!!!ぎぃしゃあああっっ!!!」

 

 サイコガンダムMk-Ⅱは吹っ飛ばされながらも体勢を立て直し、ユニコーンガンダムに狂気のプレッシャーを放つ。

 

 嫌悪感や倦怠感を誘発させる負のプレッシャーがプルに襲いかかる。

 

「くぅっっ!!!あぅっうっ……うぅぅっ!!!」

 

 プルは一身に浴びる、まだまだ不慣れで無理あるプレッシャーに苦痛の声や表情を見せるも、なんとか耐えてみせるているようだった。

 

「プル!!!」

 

 プルツーは憂いに叫ぶ。

 

「……負けない!!!負けちゃったら、妹を、プルツーを守れない!!!それに……このパイロットも!!!」

 

「え!?!奴は敵だぞ?!!」

 

 プルツーを守りたい想いと、強化人間パイロットも救いたい一身で、プル自身にエメラルドグリーンの光が宿り、ニュータイプの超常的な力が発現する。

 

「わからない?プルツー……もっと感じ取ってみればわかるよ。このヒトの奥にある哀しみと助けを求める心が!!!」

 

「なんだって?!!」

 

 プルにそう指摘されたプルツーは、改めて敵の精神の感応を感じ取りはじめる。

 

 すると、プルの言う通りの奥底に助けを求める哀しみという言葉の感覚を感じ取ることができた。

 

「これは……!!!」

 

「わかったでしょ?だから殺しちゃいけない……!!!」

 

 プルはそう言いながら瞳を閉じてニュータイプの力を更に強め、まるで機内から風が吹くように髪をなびかせる。

 

 コォオオオと立ち込める神秘的なその力は、浄化するようにプルの身体から嫌悪感、倦怠感をかき消した。

 

「……ふぅ……プルツー、アディン……あたしはもう大丈夫。それに今は共に同じ敵だから、OZプライズの紅いMSの人達と協力しあってコロニーの中の人達を救ってあげて!!!こいつの相手はあたしがするから!!!」

 

 プルからのその言葉を聞いたアディンは、PXを解除させながら良い意味で一枚取られた感覚になった。

 

「へっへへへ……だとよ、ロッシェ・ナトゥーノ。今は共闘が良いんだとさ」

 

「バカな!!!誰が小娘の言いなりに!!!」

 

「ロッシェ、今の小娘撤回しろ……!!!腹立つんだよ!!!」

 

「何?まさか貴様……!!?あんな女子供にうつつをぬかすとは……私は貴様をみくびっていたようだな……!!!」

 

「何ぃ!?!てめぇっ!!!何が言いたい?!!」

 

「何とでも言ってやる!!!このロ……」

 

「二人とも無駄ないがみ合いは止めろ!!!今はこのコロニーの人達を助けるのに協力し合いな!!!」

 

 ロッシェの発言にアディンが熱くなりかけたが、プルツーからの一喝が二人の間に入り、何故かアディンとロッシェはまるめこまれるかのように返事をしてしまう。

 

「は、はい……」

 

「じゃあ、お願いね!!プルツー!!」

 

「あぁ!!こっちこそ助かった!!サンキュー、プル姉!!コロニーの方は任せな!!!」

 

 プルはプルツーと信頼の頷き合いをしながらムーン・ムーンコロニーの方をプルツーやアディン、ロッシェ達に任せる。

 

 ロッシェは引き連れた部下の僚機部隊にも通信を入れる。

 

「諸君!!!急遽ではあるが、合理性を最優先して奴らのガンダムと一時的に共闘する運びとなった!!!ならず者達である中華プライズに対し、偵察から粛清に切り替える!!!せめて目に止まる場所の奴らに正規のプライズの鉄槌を下す!!!」

 

「了解!!!」

 

 先導するトールギス・フリューゲルと共に8機のプライズリーオーが続く。

 

 それに続く中、アディンは意表を突く展開の感想をプルツーに吐露した。

 

「しっかし、成り行き上とはいえ、まさか敵のプライズと……それもロッシェ・ナトゥーノと共闘する時が来るなんてなぁ~……」

 

「OZプライズって奴らが敵でも今の状況的に見て、あからさまにコロニーを占拠してる奴らの方が突出して禍々しいからな」

 

「あっちにとっても敵。敵の敵は味方か……レディさん、ノインさんにも連絡だ!!」

 

 その流れになった旨をアディンは待機していたレディ達にも通達する。

 

「そうか!!そんな流れになるとはな……了解した。我々は引き続き待機・警戒する……聞いたか?ノイン」

 

「あぁ……聞いた。本当にわからないものだ。だが、あちらはとても我々が介入できる領域ではないな……」

 

 ノインがモニター画面越しにサイコガンダムMk-Ⅳと対峙するユニコーンガンダムを確認していた。

 

 ユニコーンガンダムは鮮やかなまでの光りを放ちながら、サイコガンダムMk-Ⅳと向き合う。

 

「あなたは……ここから出ていけぇ!!!」

 

 そしてプルのユニコーンガンダムから先制を仕掛け、放たれるその陽のサイコプレッシャーを当ててみせる。

 

「ギギギギ?!!」

 

 押し下げられたサイコガンダムMk-Ⅳに、更に三基のファンネルシールドのビームガトリングが撃ち込まれた。

 

 

 

 ヴィヴィヴィヴィビィディリリリリ!!! ヴヴィヴィヴィヴィィディディディリリリィィィィ……!!!

 

 

 

 そのビームはプルのニュータイプ能力も付加された状態になっており、サイコ・ディフェンスプレートを弾き飛ばし始める。

 

 キュベレイMk-Ⅱのファンネルのビームは防御していたが、ユニコーンガンダムと負のプレッシャーに打ち勝ったプルのニュータイプ能力が掛け合わさり、サイコガンダムMk-Ⅳのサイコミュパワーを凌駕していたのだ。

 

 「ギギギギぐぅう、あああああっっ!!!敵めがああああああ!!!」

 

 対し、強化人間のパイロットは敵意を持続かつ増幅させながら細かいカッターに変異したサイコ・ディフェンスプレートがユニコーンガンダムに襲いかかる。

 

 縦横無尽に飛び交うカッター状のサイコ・ディフェンスプレートだが、ユニコーンガンダムは瞬時に攻撃を躱す動きをみせる。

 

 ただ躱すだけではなく、次々に来るサイコ・ディフェンスプレートの攻撃を軽快な軌道で全て躱していくのだ。

 

「あだらないっ?!!!ぐぎぃしゃあああっっ!!!」

 

 苛立ちを増幅させながら滅茶苦茶に攻撃を仕掛けるが、流水の流れのようにあしらわれて次々に躱され続ける。

 

「見えるんだってば!!!あなたが殺意を向ければ向ける程っ!!!」

 

「があああああ!!!」

 

 サイコガンダムMk-Ⅳは両腕をかざし、悪意に満ちたサイコフィールドを放つ。

 

 ユニコーンガンダムのエメラルドグリーンのサイコエネルギーの波動に対し、紫のサイコエネルギーの波動が襲う。

 

 

 一瞬押されたが、ユニコーンガンダムは背部のビームマグナムに手を回して銃口を構えた。

 

「させない……!!!」

 

 

 

 ヴィシュヴゥゥウウウウウウウウウウウウウウンッッ!!!

 

 

 

 撃ち放たれたビームマグナムがサイコガンダムMk-Ⅳへと突き進む。

 

 サイコガンダムMk-Ⅳもまた、最大限にサイコ・ディフェンスプレートを活かして防御に出る。

 

 

 

 ディギュイィィィ!!!

 

 

 

 ビームマグナムの初弾は防いでみせる。

 

 立て続けにユニコーンガンダムは一発、二発と連続で射撃してみせ、四発目の着弾でサイコ・ディフェンスプレートを破壊に導いた。

 

「があああ?!!!くそがあああああ!!!」

 

 サイコガンダムMk-Ⅳは残りのサイコ・ディフェンスプレートをカッターの刃の如く突き向かせる。

 

 対し、ユニコーンガンダムはバッとレフトアームをかざし、サイコフィールドを放ちマニピュレーターを握りしめる。

 

 攻撃の意を宿した多数無数のサイコ・ディフェンスプレート達は刃を反転させ、サイコガンダムMk-Ⅳへと逆に襲いかかる。

 

 ファンネルジャックだ。

 

「なにぃ!!!あああああああ!!!」

 

 怒りを吐き飛ばしながら、飛び交う自らのサイコ・ディフェンスプレートに斬り刻まれていく。

 

 サイコエネルギーを賭した上にプルとユニコーンガンダムのサイコエネルギーが付加され、より上乗せされたサイコパワーの刃が機体にダメージを蓄積させていく。

 

「ギギギギ……!!!」

 

「もう、抵抗させない!!!」

 

 更にファンネルシールドのオールレンジ射撃にビームマグナムの射撃を加え、その連携射撃でプルはサイコガンダムMk-Ⅳの無力化を図る。

 

 

 ヴィヴィヴィディディディルルルルルルリリリリリリィィィィィ!!!

 

 ヴィシュヴゥゥウウウウウウウン!!! ヴィシュヴゥ、ヴィシュヴゥウウウウウウウウウンッッ!!!

 

 

 

 ディディディギャギャギャギャガガガララララァアアァァァァッッ……!!!

 

 

「ギギギギアアアアあああぐぅっっ……!!!」

 

 

 ビームガトリングのサイコエネルギーを宿した無数の連射ビームがガンダリウムの装甲を蜂の巣にさせると共に、攻撃に利用するサイコ・ディフェンスプレートも破壊していく。

 

 

 

 ディゴバァンッッ、ズドォバァンッッ、ダディバァンッッ、ドォズヴァガァァアアアアアアン!!!

 

 

 

「がああああああ!!!ぐぅぎぃっ……!!!ぐぅっ……」

 

 更に連続で撃ち放たれたビームマグナムの高出力ビーム渦流弾は、肩と脚にあたる各ジョイント部を吹き飛ばした。

 

 サイコガンダムMk-Ⅳは無力化され、搭乗者の強化人間も闘志を失い、行動もまた静止する。

 

 プルはその闘志を失ったサイコガンダムMk-Ⅳにユニコーンガンダムを近づけていく。

 

「……これで、もうあなたは戦わなくていいんだよ?あたし達が助けてあげるから」

 

 プルは直前まで明らかな敵意を示してきていたはずの相手を救おうとしていた。

 

「乗ってるヒト、確かに強い狂気を持ってた。でもその狂気の向こうには、哀しみと助けを求めてる感じがした……!!!」

 

 プルはそう言いながら頭部と胴体のみとなったサイコガンダムMk-Ⅳに語りかけた。

 

「聞こえる??これからはあたし達があなたを救ってあげるから……!!!」

 

「あ……ぐぅうあっ?!!!」

 

 プルはエメラルドグリーンの光を放つサイコエネルギーをユニコーンガンダムのレフトマニピュレーターを通じて、直にサイコガンダムMk-Ⅳに解き放つ。

 

 目映いその鮮やかたる光が彼の状況を変えていく。

 

「ああっ……ぐぅっ……あぐぅ……」

 

 狂気に囚われていた表情が徐々に穏やかな様相が強化人間のパイロットにみられはじめた。

 

「あぐぁっ……っう、ここ……あれ……一体……俺は??」

 

 更には本来の彼の人格をもプルとユニコーンガンダムの力で呼び起こしていた。

 

「あっ、気がついた!!?あなた、自分がわかる?!!」

 

「お、俺は……俺は……ユッタ……ユッタ・カーシム……」

 

「ユッタっていうんだね!?あたしはエルピー・プル!!!今あなた達を助ける為に動いてるの!!!とりあえずあなただけでも今から助けだすから、来てくれる?!!」

 

 プルは早速ユニコーンガンダムにサイコガンダムMk-Ⅳを抱えさせ、レディ達の所に向かった。

 

 その一方で、アディンやロッシェの部隊、プルツーがムーン・ムーンを占拠する中華覇権派OZプライズを相手に暴れに暴れの限りの猛撃を繰り広げていた。

 

 電光石火たるガンダムジェミナス・グリープのビームランスの高速多角軌道の斬撃。

 

 同じく高速軌道を絵描いてのトールギス・フリューゲルのビームサーベルによる連続斬撃と刺突。

 

 プライズリーオー部隊によるビームライフルの射撃とビームサーベルの斬撃による粛清攻撃。

 

 中華プライズリーオーやジェスタを撃破しながらのジェノサイド実行部隊に対するキュベレイMk-Ⅱの雨のようなファンネルの攻撃。

 

 この事態にコロニー中から占領戦力である全MS部隊が戦端が巻き起こるエリアに向かっていく。

 

 だが、その部隊もまた、ガンダムジェミナス・グリープとトールギス・フリューゲルによる無双たる攻勢により、次々と撃破させられていく様子をみせていた。

 

 それはやがて、ムーン・ムーンを占領していた中華覇権派OZプライズの部隊を事実上の壊滅に追い込んだ。

 

 いつ増援が来るかは油断できない状況下ながらも、光族の人々を解放させる事に成功したのだ。

 

 その状況を光族を代表して、サラサが光族解放に荷担したアディン達やロッシェ達に礼を述べる。

 

「この度は我々光族を彼らの悪しきジェノサイドから救って頂き、誠に感謝御礼申し上げる。あなた達はまさに光族の救世主です……!!!」

 

「いやいやぁ……目に止まる危機だけでもっ助けるって……俺達にできる当然のコトしただけだよ」

 

「同じOZプライズから出てしまった毒の被害の影響をこのコロニーに与えてしまった事を謝罪する。無論、我々とコイツらのガンダムは敵であるが、中華覇権派OZプライズに対しては共通の敵とし、一時的に共闘した次第だ。たが、アディン・バーネット。勘違いをするなよ?」

 

「あたりめーだ!!!お前は敵だからな!!!」

 

「フン……わかればいい」

 

 二人のやりとりを見てもサラサはにこやかに話す。

 

「確かにOZプライズそのものは地球圏の脅威です。ですが、少なくともここにいらっしゃるOZプライズの方々からは悪意は感じられません。ですからいずれ解り合える時もくるでしょう」

 

「ミス・サラサ……」

 

 そしてサラサはプル達にも歩み寄り感謝を述べた。

 

「そして、彼らに人体実験されてしまったユッタも救って下さり、本当にありがとうございました。彼以外にもこれまでに多数の光族の少年や少女が拉致され、強制的に強化人間の手術を施され、多くが犠牲に……」

 

「そうだったんだ……あたしも、アディンと一緒。できることをやっただけだよ。でも、助ける事ができてホントあたしもよかったと思える」

 

 すると、光族の中から一人の少女がサラサより前に飛び出し、プルの元に駆け寄った。

 

「?!サキ?!!」

 

「あなたが、プルって人?!!」

 

「え!?そだよ?きゃう?!!」

 

 するとサキという少女は涙ぐんでプルに抱きついた。

 

「ありがとう!!!ユッタ救ってくれてありがとう!!!本当にありがとう!!!うっ……うぅっ」

 

 プルは一瞬驚きながらも、直ぐに彼女の気持ちを直ぐに理解して彼女を抱き寄せた。

 

「くすっ、ユッタって人の大切な人なんだね……よかった……」

 

 その光景を見ながらプルツーも含み笑いの笑みを見せた。

 

「彼女はサキ・メントー。ユッタの幼馴染みです。もしよろしかったら彼女もユッタの治療に連れて行って頂きたいのです。きっと彼の心にも……」

 

 サラサはサキを治療の為に高速宇宙戦闘艦に搬送され、現在レディとノインにより応急処置を施されているユッタのそばにいさせてあげるよう申し出る。

 

 無論、戦闘のリスクはあるが、彼らの身を考えればそれも自然……更にはかつての自分を重ねそれをアディンは快く受けた。

 

「……いいっすよ!!!やっぱりそういう存在が男子には必要ですからね!!!」

 

 だが、その時プルとプルツーが、更にはサラサもまたほぼ同時に嫌な感覚を覚え顔色を一変させた。

 

「―――っ?!!」

 

「どうした?!なんかまた感じたのか?!!」

 

「アディン……うん。嫌なのが近づいてる!!!サキ!!今すぐあたし達の船に急いで!!案内するから!!!」

 

 

 

 

 それから間も無くして中華覇権派OZプライズの増援の報がロッシェに伝えられた。

 

「何?!!……小娘……いや、プルという少女が言ったことは本当に……!!!」

 

「現在、大部隊が二つの方面から向かっているとのことです!!!我々の部隊は先程要請を出したばかり……恐らく救援要請を受けた奴らの部隊かと……!!!」

 

「直ちに使える輸送艦を確保!!!光族を避難させる算段を!!!お前達はそれに加え護衛に専念しろ!!!」

 

「了解です!!!ロッシェ特佐は?!!」

 

「私は殿(しんがり)をするさ。トールギス・フリューゲルは伊達ではない!!!」

 

 それを聞いていたアディンも拳で左手を叩きながら乗り気で口角を上げながら言う。

 

「っしゃあ……俺も返り討ちにしてやるぜ!!!待ってな、真っ赤な外道プライズ共!!!」

 

 サキを連れてきたプルもまた次の行動を決心していた。

 

「あたしはこの船と輸送艦の護衛に回らなきゃ!!!プルツーにも伝えよう!!!」

 

 プルツーもキュベレイMk-Ⅱに予備のファンネルをシェルドに取り付けてもらっている状況の中で、プルからのテレパシーでそれを聞いた。

 

「そうかい……わかった。あたしも護衛にまわるからさ……あぁ……また後で」

 

「プルツー?何かあった?」

 

「今回戦った外道部隊の増援が接近中だってさ!!!シェルドは早くファンネル追加作業すすめな!!!」

 

「わ、わかったよ!!頑張る!!!」

 

 

 

 そして、ムーン・ムーンを一時的に脱出する編隊が急遽編成され、ユニコーンガンダムとキュベレイMk-Ⅱをはじめ、ノインのリゼル・トーラスやプライズリーオー部隊で護衛を固めながら出撃した。

 

 そして殿を務めるべく、ガンダムジェミナス・グリープとトールギス・フリューゲルが迫り来る中華覇権派OZプライズの部隊に向かっていく。

 

 2機が吸い込まれていった宇宙空間の先では戦端の爆発光が拡がる。

 

 プルは光族の輸送船団の護衛に就きながら、ユニコーンガンダムのコックピットから遠方に見えたその戦端に振り返った。

 

 彼女のその眼差しは、大丈夫とわかっていても拭いきれないアディンへの憂いの想いを秘めているようにも見えていた。

 

 

 

 

 

 To Be Next Episode

 

 

 

次回予告

 

 

 アディンとロッシェは押し寄せる中華覇権派OZプライズの増援に対する殿(しんがり)を務め、敵機群に獅子奮迅する。

 

 ジェミナス・グリープとトールギス・フリューゲルのその性能は絶大的に敵機群を圧倒する。

 

 一方、ネェル・アーガマではサンクキングダムとの打電のやり取りがされる。

 

 だが、その裏では捉えたロッシェとベントナにそれぞれが抱える憎悪がぶつけられていた。

 

 その頃、故郷に戻っていた五飛のコロニーに狂気宿した鳳凰のガンダムが襲撃する。

 

 文字通りの狂った中華覇権派OZの強化人間・紅烏が駆るC-フェネクスは、次々に李鈴達の仲間を駆逐していく。

 

 狂った鳳凰のガンダムに対し、五飛は怒りを爆発させアルトロンガンダムを出撃させるのだった。

 

 

 

 次回、新機動闘争記 ガンダムW LIBERTY

 

 エピソード50 「双頭龍 VS 鳳凰」

 

 

 

 

 

 





 今年こそ、クリスマスには……と獅子奮迅しましたが、結局間に合いませんでした。ですが、「意地でも今年はクリスマスエピソード書く!!!」という謎のコダワリの意地で書きあげれたので、追々上げていきます(本日2023最後の『金曜日』を予定!!!)

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