第八降下部隊の目の前に現れたのは、行方不明になっていたガンダムデルタカイであった。
ガンダムデルタカイは先頭と左右両舷側にいたOZプライズMD輸送艦目掛け、メガバスターとバスターファンネルを撃ち飛ばした。
「う、うぉおおおおお!?!」
メガバスターと2基のバスターファンネルが放った三軸のビーム渦流が、MD輸送艦を3隻まとめて一撃で轟沈へと導く。
旗艦の轟沈に遅れながら起動したシルヴァ・ビルゴとサジタリウスα、βのカメラアイが光り、ガンダムデルタカイに向けて一斉に射撃を開始した。
ガンダムデルタカイはシールドバスターソードをかざし、この大量のビーム群を受け止めた。
直撃コースは確かにガンダムデルタカイに直撃していたはずであった。
どのMDも撃破認識し、攻撃を停止させてしまう。
だが、爆発からはガンダムデルタカイが飛び出し、バスターファンネルを展開射撃しながらメガバスターとシールドバスターソードにマウントされたハイメガキャノンを撃ち飛ばす。
乱発される高出力ビーム渦流が次々とMD部隊を消し飛ばすように破砕させる。
特にバスターファンネルは脅威であり、いわばオールレンジで縦横無尽かつ自由自在に動くバスターライフルのようなものだ。
嵐の如く放たれるビーム渦流群は瞬く間にMD第八降下部隊の四割を壊滅させる。
「MDのシステムをキルモード最大値に設定しろ!!!」
「は!!」
カメラアイを光らせたMD達はより破壊率を上げる攻勢に移り、高速で移動をしながらの射撃に打って出た。
ガンダムデルタカイに夥しい数の高出力のビームや小規模のビーム渦流が襲う。
それでもガンダムデルタカイは攻撃を躱し、中ってもかする程度にとどまっていた。
「……MD、人形めが……!!!機械ごときが目障りなんだよっっ!!!!」
ギンと両眼を光らせたガンダムデルタカイはメガバスターを連発して撃ち放ち、個々にMD機を破壊し続ける。
同時にバスターファンネルも射撃を繰り返しており、バスターライフル級のビームを撃ち放っては多方向の機体群を破砕させていく。
そこからガンダムデルタカイが高速で機体を加速させ、シールドバスターソードでシルヴァ・ビルゴを突き砕く。
MD達が次々に寄ってくる中、シールドバスターソードでそれらを薙ぎ砕いては突き砕いて見せる。
更にハイメガキャノンを解き放ち、一直線上のMD達を一瞬で爆発破砕せていくがこれだけに止まらず、機体を自転させながらのローリング・ハイメガキャノンが撃ち飛ばされた。
回転するビーム渦流軸が周囲の幾多のMDを吹き飛ばす。
成層圏上に爆発の華が広がるなか、畏怖のオーラを放ちながら両眼を光らせるガンダムデルタカイがいた。
そのコックピット内では、ゼロとナイトロの両システムが同時発動しており、ニュータイプの力を得ながらガンダムデルタカイのゼロシステムに操られていた。
二重のシステム負荷により狂人のような表情のリディが呼吸を荒げていた。
「はぁっッ、はぁっ、はぁっ、はぁっ……っくぅッ!!!!力は、潰す……!!!そしてニュータイプを駆逐する!!!ニュータイプを、人形を壊す!!!それの障壁になる、俺を邪魔する貴様らを排除するッッッ、ヴあああああああああああああ!!!!」
リディ自身はナイトロによりニュータイプとなっているにもかかわらず、ガンダムデルタカイのゼロシステムの命令により、ニュータイプを排除するという矛盾めいた叫びをあげていた。
リディの狂気の叫びと共に、バスターファンネルが呼応するように荒々しいビーム渦流を放ち、今度はローリング・バスターファンネルの荒れ狂う力を見せつけた。
その威力はまさにツインバスターライフルの威力に迫る脅威だった。
無論ながらこの状況はゼロシステムを通して、MDと戦闘中のヒイロに伝えられていた。
「……奴はシステムの生態端末と化している……システムには過ぎた力やニュータイプの排除を指示されている……そして上から来る。だが、どこの軌道から来るかは幾つものパターンで提示されるに止まっている……これも奴のゼロシステムとの影響か。奴は過ぎた力に反応しているようだが……」
ヒイロそこからリディを炙り出す。
過剰な力やニュータイプの排除を攻撃行動理念としているならば、自ずとそれはマリーダやロニ、はたまたムラサメ研究所の囚われた被験者達がリディの攻撃対象となり得る。
ならば同じゼロシステムを持つウィングガンダム・ゼロに注意を向けさせるのだ。
ヒイロはツインバスターライフルで第六MD降下部隊を壊滅させると、第七降下部隊の位置をゼロシステムとの連携で導き出し、遥か上空、成層圏上の第七MD降下部隊をロック・オンした。
「……最大出力で成層圏上の降下部隊を破壊する……!!!」
その一方の地上……OZ静浜基地及び周辺域では依然として攻防戦が展開していた。
だが、ガンダムが加勢したことにより事態は急転を迎え、かつては想像だにしなかったメテオ・ブレイクス・ヘルとOZの共闘戦線がそこにあった。
ガンダムデスサイズ・ヘルのアームド・ビームサイズの薙ぎ斬撃が一振りで4機のシルヴァ・ビルゴを斬り飛ばし、ガンダムヘビーアームズ改とサーペントのガトリング系の連携射撃が、壁を粉砕するがごとく三機種のMDをランダムに砕き散らせる。
その最中で、状況に応じてガンダムヘビーアームズ改がアームバスターカノンを放つ。
Ξガンダムもまたビームバスターとショルダービームバスターの高速連続射撃と縦横無尽に飛び交わせるファンネルミサイルとの連携をもって、面前のMD部隊を次々に駆逐させていた。
OZサイドのリーオー、エアリーズ部隊も士気を上げながら抵抗を押し進め続ける。
「イヅミ特尉、形勢逆転ですよ!!!あのガンダムが味方についてくれたんです!!!」
「ああ!!!だが、まだ意図がわからない以上、油断はできん。しかしながら……このような日が来ようとはな……つくづく時代というものはわからん……こちらも負けてはいられんな!!!」
イヅミ特佐はドーバーバスターをロックオンしたシルヴァ・ビルゴに向けて撃ち放ち、その高出力ビームは重厚な胸部を爆発させた。
この共闘戦線にデュオもまた意外過ぎるシチュエーションに言葉を漏らす。
「ったく、一昔前はぶっ潰す攻撃対象だった奴らと共闘するなんてなっ……人生、何があるかわからねぇ……なっっ!!!」
言葉を漏らしながらもデュオはサジタリウスβ4機を一挙に薙ぎ斬ってみせる。
「同感だ。俺達マフティーにとってもOZは連邦からすり替わった敵だった。それが今こうして守っている……変な気分になるな」
Ξガンダムのビームバスター高速連続射撃に、シルヴァ・ビルゴが次々に爆破・駆逐されていく。
「それほどまでに、プライズの連中の方がヤバいって訳だ……いずれにしろ地球圏規模で内乱だろうな」
ホバー走行しながらサーペントのダブルガトリング射撃がサジタリウスα、βを撃ち砕きながら回避と攻撃を両立させる。
「時代はまた大きく動こうとしている……それが悪しき時代ならば俺達が衝撃をまた与えてやればいい。少なくともこのエリアに関してのオペレーション・ノヴァは大失敗に至っているだろう」
ガンダムヘビーアームズ改はダブルガトリングとアームバスターカノン、バスターガトリングキャノン、ブレストガトリングのゴリ押し射撃を継続する。
シルヴァ・ビルゴやサジタリウスαは砕き散らされ、プラネイトディフェンサーを展開するサジタリウスβにはシールド許容を凌駕する出力のアームバスターカノンを見舞わせ、軸線上に破砕爆破させていった。
その戦闘の最中にもトロワは、ロニの救出の為に向かったカトルへの気回しを忘れなかった。
(カトル……こちらは何とかなる。お前はロニの為に自身の闘いに集中してくれ)
その時、カトルとガンダムサンドロック改には、サイコガンダムMk-Ⅲの零距離からの三連メガ粒子バスターのビーム渦流が襲い掛かっていた。
「くううううううっっうっっ!!!!」
一瞬、後退した直後に解き放たれたビーム渦流に押し戻されるように飛ばされ、山間に激突。
更に持続するビーム渦流がガンダムサンドロック改を押し込み、山岳ごと爆発の柱を巻き起こさせた。
「カトルッ―――!!!?そんな……っくっ、ロニ!!!今何をしたかわかるか?!!!今射った彼は、ロニにとっての大切な人だったんだぞっっ!!!いい加減に目を、覚ませぇえええ!!!」
マリーダはまさかの事態に、言い聞かせても聞き入れずに目覚めないロニへの悲しみと憤りを混ぜ合わせたかのような感情を懐き、思わずファンネルミサイルを放つ行動に駆り立てた。
それと同時にコックピット周りのサイコフレームも光りを生じさせていた。
ファンネルミサイルはΞガンダムのモノと違い、文字通りのサイコミュミサイルだ。
マリーダの意思による軌道を描きながら、急所を敢えて外す箇所にオールレンジ攻撃が撃ち込まれる。
「くっ、私を攻撃したっっ!!!やっぱり敵か!!!」
「違うっ!!!私はロニの友人だ!!!時に友の過ちに手を出さざるを得なくなる事もある!!!思い出すんだ!!!私を……カトルを……本当のロニを!!!」
「本当の……私を……だと?!!」
「そうだ……本当のロニを……思い出してくれ!!!カトルの事を……カトルの事を殺めてしまった哀しみにも……気づいてくれ……!!!」
「カトルを殺めた……哀しみ……?!!!」
その言葉にロニが一瞬、自分のしてしまった事に思考を停止させたその時、カトルからの通信がクシャトリヤ・リペアードのコックピット内に聞こえてきた。
「くすっ……マリーダさん、勝手に僕を殺さないでくださいよ」
「カトル?!!!」
「……僕達のガンダムは、打たれ強いんです。結構なダメージだったけどね……」
マリーダが全周モニター後方に目を向けると、爆発地点から上昇するガンダムサンドロック改の姿がった。
表面上は、装甲に多少の焦げと僅かな焼灼ダメージ痕があるに過ぎなかった。
リメイクされたヒイロ達の機体は共通してネオ・ガンダニュウム合金が胸部面に用いられており、ウィングガンダム・ゼロは元より装甲がネオ・ガンダニュウム合金であるのだ。
更に言えば直撃の瞬間にシールドで防御もしていた。
マリーダは一度冷静に自らを落ち着かせると、深いため息を吐きながら納得した。
「……ふうぅ……そうだったな。お前達のガンダムは常軌を逸していた……」
「それよりもっ……ロニを……ん?!!」
その時、サイコガンダムMk-Ⅲの全体から青黒いオーラがにじみ始める。
コックピットの中ではロニが独り言のように言葉を呟いていた。
「カトルを殺そうとした……カトルは誰??大切って何??私は、両親の仇を討たなきゃいけない……!!!OZを叩く邪魔はさせない……っっでもっっ、私は、私はっっ……違うッッ!!!私はなんだ?!!あああっっ……あああああああああああ!!!!」
ロニの中で本来の記憶が少し偽りの干渉しはじめ、一気に何かが膨れ上がったかのように彼女を狂わせた。
「な?!!これはッッ?!!」
「おそらくサイコフレームの影響による……波動!!!くッッ!!!」
ロニとサイコガンダムMk-Ⅲが放つサイコフィールドの波動は凄まじく、MSの機体をも押し退けようとするほどのものだ。
更に両眼を光らせたサイコガンダムMk-Ⅲは加速し始め、クシャトリヤ・リペアードに掴み掛かった。
レフトウィングバインダーを鷲掴みにすると、引き寄せて胸部目掛けパンチを打ち込む。
「うぐうッッッ!!!ロニッ……!!!」
凄まじい衝撃がコックピットを襲うが、もとより装備されていたエアバックシステムがショックを緩和させる。
だが、その鋼の豪拳は幾度もクシャトリヤ・リペアードに襲い掛かる。
ライトウィングバインダーで防御するも、弾かれた反動で胸部へのパンチを許してしまう。
「くあッッ……!!!あくぅッ……!!!ロニッ……やめ……ッ!!!」
「邪魔だ、邪魔だ、邪魔だ、邪魔だ、邪魔だァあああああああ!!!お前たちは私の記憶をかき乱す!!!!OZを壊滅させる障壁は排除する!!!!」
「ロニッ、やめるんだァああああ!!!!」
ガンダムサンドロック改が急加速でサイコガンダムMk-Ⅲにタックルした。
「くうッ!!!!特に、お前はッッ、お前はあああああああ!!!!」
タックルの反動で態勢を崩したかに見えたサイコガンダムMk-Ⅲは、態勢を持ち直してガンダムサンドロック目掛け殴り掛かった。
その拳をシールドで防御するが、その質量と威力に大きく後退させられてしまう。
するとサイコガンダムMk-Ⅲは追いかけるようにガンダムサンドロック改にも掴み掛かり、クシャトリヤ・リペアードと互いにぶつけ合うような動作をし始める。
サイコガンダムMk-Ⅲはガシャン、ガシャンと幾度も火打石のごとくガンダムサンドロック改とクシャトリヤ・リペアードをぶつけ合う。
その反復する衝撃の蓄積により、パンチよりも激しい衝撃をコックピットに与えていた。
「うッ、うああああッッ……!!!や、やめてくれッ……ロニ!!!」
「うううっくッ……!!!このままではッ……!!!」
一度強く2機をぶつけ合わせると、サイコガンダムMk-Ⅲは山岳地帯に投げ捨てるようにして叩きつけた。
ガンダムサンドロック改とクシャトリヤ・リペアードは激しく山岳帯の地表に激突させられてしまい、激しいコックピット周りの衝撃により、遂にカトルとマリーダは気を失わされた。
ロニはコントロールグリップを握りしめ、険しい表情で面前一面の景観を睨み続ける。
「この2機のパイロットの声、聞くだけで頭が痛くなるっっ!!!だが、何故か殺そうとすると何かが私の中で拒む……気持ち悪いっっ!!!私は……私はOZを破壊する……!!!ああああああっっ!!!」
自らの中でのたうち回るように何かと何かがひしめき合う。
ロニの本来の記憶とOZプライズの都合に合わせ操作された記憶とが闘っていた。
自然にその手は額に手を当ててしまう。
「私はっ……それ、だけだっ!!!私はぁっ……!!!私っ……?!!違う……違う……!!!私は、ロニ・ガーベイ……!!!あああっ!!!もういい!!!私は復讐を果たすだけだっっ!!!」
ロニは出かけた本来の記憶を埋めるような思いで、振り切ろうとサイコガンダムMk-Ⅲのコントロールグリップを再び握る。
だが、何故か彼女は叩きつけたガンダムサンドロック改とクシャトリヤ・リペアードの胸部を鷲掴みにさせる操作をしながら、OZ静浜基地方面に機体を加速させた。
焼津市の遥か上空で限界値までツインバスターライフルのエネルギーを充填させていたウィングガンダム・ゼロは、遂にそのエネルギーを更に遥か上空の成層圏に向けて解き放つ。
「目標、OZプライズMD第七降下部隊群……!!!」
ヴィディリリリリリリィィィ……ヴォヴヴァルァァアァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッ!!!!
最大出力のツインバスターライフルのビーム渦流が二軸となって空を突き抜け、一気に成層圏、宇宙空間に達した。
その射撃軸上に捉えた降下部隊の輸送船団の一部隊が呑まれ破砕爆破する。
だが、ビーム渦流はビームを持続させながらその射撃軸を動かし始め、更に輸送船団を呑み込み連続撃破させていく。
「な?!!なんだこれは?!!!」
「これも、やつらのガンダムの力なのかぁあ?!!!があああはあっ……!!!」
その二つのビーム渦流は、超巨大なビームサーベルといわんばかりの様相で尚も輸送船団を撃破させていた。
じわりと移動する二つの巨大なビーム渦流は、第七MD降下部隊を輸送船諸とも撃破し続け、やがて部隊そのものを壊滅させた。
発動しているゼロシステムのサポートもあるとはいえ、ヒイロの驚異的な射撃センスが成せた芸当だと言えよう。
だが、ヒイロは更に射撃軸を修正させ、ガンダムデルタカイが迫る方面に向けた。
ガンダムデルタカイは焼津市上空の成層圏を目掛け、大気圏突入態勢のウェイブライダーモードに変形して飛んでいた。
その最中、ツインバスターライフルのビーム渦流が撃ち墜とさんとばかりに迫り、ガンダムデルタカイにプラズマ奔流のエネルギー域ギリギリのビーム渦流が掠める。
「うくぅ……!!!!」
ツインバスターライフルの強力な力の威嚇は、ガンダムデルタカイのゼロシステムにも影響を与え、敵を明確にリディに示す。
リディの脳裏にもウィングガンダム・ゼロの映像がフィードバックする。
だが、直ぐにムラサメ研究所やサイコガンダムMk-Ⅲ、クシャトリヤの映像や、巡り巡りながら単発的にOZ静浜基地に召集するイヅミ特尉達のOZ部隊の情報もフィードバックしてきた。
ガンダムデルタカイのゼロシステムがニュータイプデストロイヤーに近い判断を持っているようで、ニュータイプ要素への攻撃を推進・優先させているかのような情報判断を思考に押し付ける。
大量に雪崩れ込む無茶苦茶な情報判断にリディは更に正気を失わされ、ゼロシステムの端末と化した。
「あああああ!!!ガンダムぅっっ!!!ニュータイプぅぅぅ!!!はぁああああぐぁあああはああっっ……!!!!」
リディは叫びながら機体を加速させ、本格的に大気圏突入させた。
この時、互いのゼロシステムの未来予知のぶつかり合いが起こり、幾つもの情報予知パターンを瞬間的に与えはじめていた。
「ゼロ……お前の判断はどれだ!!?やはり奴のゼロシステムとの干渉による影響か……こちらに誘き寄せたはずだが、進行進路予測が俺やカトル達、ムラサメ研究所、OZ静浜基地を去来している……!!!ならば、奴の行動軌道で判断する!!!」
ヒイロはゼロシステムの予測行動一択からゼロシステムをアシストに回し、シンプルにガンダムデルタカイの軌道を追跡する判断をした。
ギンと光らせたウィングガンダム・ゼロの両眼は、デルタカイを追撃する軌道でその場から加速していった。
一方、善戦に変化したと思われていたOZ静浜基地に、新たな敵機影が迫る。
それは、前夜に激突したトラント達、アスクレプオス、ヴァイエイト、メリクリウス、プロビデンスガンダムの姿であった。
「さぁ、昨晩のお礼祭りといこうじゃないか!!!」
「ひゃははは、それも良いけど不届き者達の粛清祭りもいいっすよ!!!」
「レッドメリクリウス、介入しまぁ~す!!!」
「さて……プロビデンスガンダムで蹂躙させてもらおうか」
無論、これを捉えたデュオ達にも警告反応を示すアラートが鳴る。
「昨晩のめんどくせー奴らがお出ましみたいだぜ!!!」
「やはり来たか……だが、MDはこちらの都合に合わせてはくれない……予想よりも状況が厄介だ」
「トロワ、俺はサポートに回る。MDを撃破しながら徐々に近づいて行きながら攻撃に回ってくれ」
「またアムロ・レイのクローンのガンダム……!!!」
イヅミ特尉達も新たな4機の増援に警戒を余儀なくされ、拡大映像から迫るその機影を視認した。
「イヅミ特尉、新たな増援です!!!」
「プライズの厄介所が揃い踏みということか……!!!弾幕を強化!!!ガンダムを援護しろ!!!」
弾幕の攻防戦が飛び交う中、アスクレプオスがパイソンビームランチャーを連発させながら滑空し、リーオーやエアリーズを次々に撃墜する。
次の瞬間きらは、その滑空の勢いをのせたパイソンクローの突牙乱舞が襲いかかる。
「ははははは!!!愉快な連中だっ!!!無駄極まりない!!!」
1機のリーオーにライトアーム側のパイソンクローを突き刺し、零距離射撃のパイソンビームランチャーでえげつなき破壊を見せつけると、両腕をかざしたパイソンビームランチャーの乱発を見舞った。
一方、降り立ったヴァイエイトはビームカノンとレーザーガンを放ちながら、他のMDと共にゴリ押し射撃でリーオーやエアリーズを破砕していく。
そしてチャージされたビーム渦流が放たれ、その射撃軸上のリーオー部隊を一気に壊滅に追いやる。
「ヒャッハー!!!粛清、粛清、粛清!!!粛清フィーバー!!!」
そして再びビームカノンとレーザーガンの連発式射撃で一掃させながら攻勢を強めた。
同時に降り立ったメリクリウスも、プラネイトディフェンサーを起動させながらのクラッシュシールドの斬撃の乱舞を見舞いながらリーオー部隊に突っ込む。
「ははははは!!!はははははは!!!爽快だぁあああ!!!」
メリクリウスの攻防一体の攻撃に次々に斬り裂かれ爆発していくリーオーやエアリーズ。
その姿を晒させ、圧倒と絶望を戦場にばら撒く。
そしてプロビデンスガンダムは戦場を眼下に見下ろすようなポジションからドラグーンファンネルを放ち、縦横無尽かつ意のままにリーオーやエアリーズを攻撃する。
多数の高出力ビームの閃光が、ドラグーンファンネルの鋭利な部位が装甲を抉り貫いては斬り裂く。
「ははははは!!!僕の攻撃に成す術あるまい!!!」
蹂躙に相応しい攻撃を繰り返した後、上空にドラグーンファンネルを集結させ、文字通りのビームの流星弾雨を降らせた。
降り注ぐビームは周囲の街諸ともMS群を破砕して見せた。
ガンダム達は各自MDを当たり障り撃破しながら彼らに接近していく。
「さぁ……!!!まとめて相手してやるぜ!!!」
ガンダムデスサイズ・ヘルはタイミングを見出だし、アスクレプオスを目指しながらメリクリウスにも挑発的に機体を突っ込ませ、バスターシールド・アローを刺突する。
「なぁっ?!!こいつ、いきなり突っ込んできやがった!!!」
「あいにくあんたのいつもの相手は大事な用事にお出かけしてんだ!!!代わりに相手してやるっ……ぜっ!!!」
デュオはそう言いながらバスターシールド・アローとすり替えるようにアームド・ツインビームサイズの斬撃を叩き込み、バスターシールド・アローをアスクレプオスに放った。
「ぐぁっ……!!!死神ヤロウ、2機同時に相手しようってか!!?はっ……ナメられたものだなっ!!!」
くわっと見開いたトラントはパイソンクローを突き出しながら一気にガンダムデスサイズ・ヘルに襲いかかった。
「大した自信だなぁ!!!」
アレックスはレフトアーム側のクラッシュシールドでアームド・ツインビームサイズを受けながら、ライトアーム側のクラッシュシールドの突きをガンダムデスサイズ・ヘルへ繰り出す。
これを躱しながら離脱すると共に、ガンダムデスサイズ・ヘルは突っ込んできたアスクレプオスのパイソンクローをバスターシールド・アローで受け止めた。
「大した反応だな!!!」
「そりゃ、どー……も!!!」
パイソンクローを押し退けて叩き込まれたアームド・ツインビームサイズとパイソンクローが交わり、その最中にクラッシュシールドの突きとバスターシールド・アローがぶつかり合う。
「2機同時はキツいか??やってみたら意外にめんどくせーぜ……!!!」
一方、蹂躙を楽しむように射撃を続けるヴァイエイトにダブルビームガトリングの射撃が撃ち込まれた。
「ちぃっ!!!俺の楽しみを邪魔しやがってぇっっ!!!」
ミュラーは怒り任せにレーザーガンを乱発するが、トロワはそれを躱しながらミュラーを挑発する。
「格下を相手に大量殺戮を楽しむか……極めて関心できんな」
「どの口が言ってんだぁ?!!テメーらも武力介入で散々やらかしてるだろうが!!!」
ビームカノンを撃ち放ちながら、ある意味最もな意見のような口調を放つミュラーだが、トロワは真っ向から静かに否定した。
「違うな。俺達はコロニーはもとより一般大衆の為に闘ってここまで来ている。決してキサマのように楽しみなどという感情を抱いてやってはいない……!!!」
トロワの静かなる怒りを賭したアームバスターカノンの一撃がヴァイエイトに放たれた。
Ξガンダムもまたビームバスターをプロビデンスガンダムのドラグーンファンネルに撃ち中てながら接近し、レフトアームにビームサーベルを抜刀する。
「来たね、ハサウェイ……!!!」
「何度でもな!!!」
Ξガンダムがドラグーンファンネルを払い退けながらビームサーベルを振りかぶると、メガビームサーベルを発動させたレジェンドガンダムの斬撃と激突する。
「やはり、こうでなくては。雑魚の掃除など退屈だ」
「キサマはそうやって人間を見下すか!!!」
「ニュータイプならば当然さ!!!」
マフティーとアメンズはビームの刃を互いにぶつけ合いながら、双方のサイコミュ武装を展開させてΞガンダムとプロビデンスガンダムのその武力を激突させた。
一方、ムラサメ研究では制圧状況が更に進み、次々に進展を見せていた。
周囲を旋回飛行するネェル・アーガマにもラシードからの状況報告がケネスに通達される。
「ムラサメ研究所の制圧状況は七割の状況となっております!!研究員の捕縛、連行状況も予想以上にスムーズです……制圧完了は目前かと」
「そうか……即興編成だったとはいえ、さすが実戦経験者達を選りすぐった甲斐があったな……」
「はい。私の部下達もその助力にあてさせて頂いております。後、被験者達の救助も始まりました。あともう一息という所です!!!」
その最中、ヴィンセントとアブドゥル達が遂にベントナのいる施設のドアを爆破し、内部へ突入した。
「一気に制圧する!!!」
「いくぞぉ!!!」
「おぉおっっ!!!」
アサルトライフルで研究員の行動力を次々に奪う中、ヴィンセントの目に放心状態のクロエを弄ぶ研究員達が目に入った。
「こいつら、被験者をなんだと思ってやがるっ……ん?!!!」
弄ぶ対象に視線を移したヴィンセントの視界に驚愕に値する少女の姿が映った。
「な……!!!クロエ……!!!?そんなっ……!!!?キサマらぁああああああああ!!!!」
ヴィンセントは、怒り任せに彼女を取り囲んでいた研究員達を射殺し、尚も彼女を先人切って弄んでいたベントナにアサルトライフルを殴りつけた。
「らっあああああああ!!!!」
「ごはぇっ!!?!」
間髪入れずにベントナを蹴り飛ばし、ヴィンセントはアサルトライフルを怒り任せかつ、破れかぶれにベントナに放った。
「がぃがぎゃああああああ!!!?!」
快楽から一転し、凄まじい激痛にのたうち回るベントナを他所に、ヴィンセントはクロエを抱き起こし、思わず抱き締めた。
「クロエっ……!!!クロエ、クロエ、クロエ!!!俺だ!!!ヴィンセントだ!!!ヴィンセントだよ!!!」
「ヴィンセント……??ヴィンセント……ヴィンセン……ト……?!」
「ああ。あれから18年以上の歳月が流れた。マルコシアス隊で一緒だった、ヴィンセントだよ!!!クロエ!!!やっと……やっと見つけることができたっ!!!やはり予感はあたっていた!!!ああああああっ……!!!」
歓喜の慟哭を上げるヴィンセントを見ていたアブドゥル達は同時に施設制圧の報告を受けた。
「そうか!!!了解!!!俺達はMSに戻って周囲警戒をさせてもらうよ!!!……よし、制圧完了だ!!!」
「おぉ!!!」
「やればやれるもんだ!!!」
「後は俺達であのうるさい奴を連行する」
アブドゥルは通信を終えると、制圧完了報告とヴィンセント達の配慮をし、のたうち回るベントナを拘束した。
「ぎゃああああああああ!!!ぎがががばああ!!!」
「やかましいっ!!!っ、とっとと来い!!!」
「アサルトライフルで撃たれたってのに、しぶてーゆで卵ヤローだ!!!キタネーもんも出したままでよ!!!」
銃弾や蹴り等の激痛によって喚き散らすベントナを強引にアウダとアフマドは連行していった。
アブドゥルはヴィンセントの肩に手を置くと、一言添えた。
「良かったな……本当に探していた女性が見つかって……施設も制圧を完了させた。今から被験者達の救助に移行するそうだ。あんたは、もうしばらく彼女と落ち着けるまでいな」
「あ、ああ……ありがとう……」
アブドゥルがその場を後にして間も無く、クロエはヴィンセントの名を呼んだ。
「ヴィンセント……ヴィンセント!!!」
「クロエ!!!思い出したんだね!!!」
「うん……ヴィンセント!!!会いたかった……会いたかった……!!!」
クロエも、現状に気付き、ヴィンセントを抱き締め返す。
「ごめんなさい……」
互いに涙を流して再会を喜び合うと、クロエはヴィンセントの頬に手を当てて何故か謝りの言葉を漏らした。
「何で謝る?!俺の方こそ今まで助けれなくてごめん!!!力が足りなさ過ぎた……!!!」
「違うの……私、汚されちゃったから……!!!」
「何言ってる!!!汚れなんか、俺が綺麗にしてやる!!!」
ヴィンセントは彼女の手を握り、情熱を賭した口づけを重ねた。
「っ……!!!」
他の箇所からも戦争孤児の少年や少女達、クロエ同様捕虜だった者達等に救助の手が差しのべられていく。
アブドゥル達はセッターにベントナを連行すると、再びそれぞれのマグアナックに乗り込んでラシードからの指示の下に警戒任務を継続した。
「お前達、ご苦労だった!!!引き続き警戒を続けてくれ!!」
「了解!!!」
「ここが済めば、後はカトル様達か。どうかロニ嬢の救助成功を……!!!」
ラシードがそう吐露すると同じタイミングで、カトルの妹であるカトリーヌもまた兄の成功を祈った。
「兄さん……こっちは成功したよ……私は今回警戒しかしてないケド……兄さんもロニさんを連れ戻して帰って来てよね!!!」
当の本人は気絶したままガンダムサンドロック改の中にあり、同行したマリーダもまた意識を取り戻せずにいた。
ロニはサイコガンダムMk-Ⅲにガンダムサンドロック改とクシャトリヤ・リペアードを握り締めさせたまま、遂に自機体を藤枝市の上空に到達させる。
日本史上最大の戦火人災の予感を引き連れながら、その巨体を焼津市のOZ静浜基地に向かわせる。
「もう目前だ……OZが集う場所に……!!!ぐぁうっ?!!!」
ロニが広大に広がる市街地の向こうに視線を集中させたその時、不意にサイコガンダムMk-Ⅲのサイコミュシステムが暴走を開始し、ロニの感情を揺さぶり始める事態が引き起こった。
「ああああ!!!ああああ!!!私は、私は、私はぁああああああ!!!」
サイコガンダムMk-Ⅲは飛行しながら見下ろす街に目掛け、三連ショルダービームキャノンと胸部の三連装メガ粒子バスターを、更には両脚部のメガ粒子バスターを撃ち放った。
放たれたビーム渦流や火線は一気に街の家屋や道、車両、公共施設等を吹き飛ばし、爆炎を吹き上がらせた。
それは一撃で終わらず、進行をしながら何度も周囲に向けて撃ち放つ。
その破壊のうねりは日常的な存在全てを根こそぎに奪っていく、無差別破壊に他ならなかった。
避難した市民達が集う場所にもメガ粒子バスターは行き届き、一瞬に蒸発させた。
「うあああああああああ!!!」
ロニは叫びながら各部位のビーム兵器を乱発しながら一気にOZ静浜基地に向けて機体を飛ばす。
サイコガンダムMk-Ⅲの機体認証はOZプライズのままであるが、実質的には敵味方関係なく攻撃する殺戮マシンに成り果ててしまっていた。
その状況も知らず、トラント達は挟み撃ちの状況にできたつもりでいた。
「時期に強力な遊軍が来る!!!サイコガンダムがな!!!」
「こちとら知ってるよ!!!ま、仲間がサイコガンダムのお嬢様を説得できていれば逆転だがな!!!」
デュオがパイソンクローを弾き捌くと、次はクラッシュシールドを受け止める。
「わけわかんねーもーそーをほざくな!!!」
「どーかな?!!何事も何がどーなるかわらんぜ!!!」
ガンダムデスサイズ・ヘルはクラッシュシールドをはね除け、再度両者と刃を交えた。
しかしながら、デュオの言葉は角度を変えて当たっていた。
サイコガンダムMk-Ⅲは破壊の限りを尽くしながらガンダムサンドロック改とクシャトリヤ・リペアードを遂に地表へ叩き落とす。
そして塞がっていたフィンガーメガ粒子バスターを撃ち始め、一層の被害を拡大させた。
トロワは、ヴァイエイトと戦闘しながらも接近しつつあるサイコガンダムMk-Ⅲの存在に気を向ける。
「新たな敵影に多数の熱源反応……カトル達はサイコガンダムを止められなかったのか……?!!いや、そもそも何故絶え間なく熱源が……?!!サイコガンダム特有のメガ粒子砲の一種なのか……?!!」
「余所見してるんじゃねー!!!」
ヴァイエイトのビームカノンのビーム渦流、がガンダムヘビーアームズ改へと迫る。
「キサマ、場合によれば共に巻き込まれるかもな」
「ああ?!!何がだっ……ぐあ?!!」
トロワは攻撃を躱しながら反撃しつつ、ダブルビームガトリングをヴァイエイトに直撃させてみせる。
「何らかの原因でサイコガンダムが暴走している可能性が高い。最早迎撃以外に撤退しかないだろう」
「ごちゃごちゃうるせー!!!」
ミュラーは敢えて警鐘を促すトロワの言葉に耳を貸す事なく、攻撃を続ける。
しかし、マフティーとアメンズはニュータイプの気質により、既に禍々しい感覚を感じ取りながら刃を交えていた。
「ふふっ、感じるかい?禍々しい感じを」
「ああ!!!(サイコガンダムの感じが近づきつつある!!!説得は失敗したのか?!!!)」
「あれをご覧……」
アメンズは一旦刃を捌くと、遠方からサイコガンダムMk-Ⅲが各所のメガ粒子バスターを放ちながら接近する姿に目を向ける。
間違いなく、それは無差別破壊をしながら攻めて来ていた。
「僕達の任務はMDの援護とOZの部隊の壊滅だった。だが、あれなら放置していても事を達成できよう」
「キサマ、サイコガンダムを利用する気か!!!」
再びぶつかる刃と刃だが、その最中でアメンズは否定する。
「違うね。OZの不届き者たちの排除という本来の任務に事が戻るだけさ。僕は今回はこれまでにさせてもらうよ」
プロビデンスガンダムは刃を再び弾き捌くと、ファンネルミサイルと事を交えていたドラグーンファンネルを自機に収容させた。
「アメンズ!!!逃げる気か!!?」
「武運を祈ろう、ハサウェイ」
「キサマっ……!!!どこまで見下すっ!!!」
どこまでも見下すようなアメンズの言動に憤るマフティーを他所に、アメンズはプロビデンスガンダムを早々に撤退させ、駿河湾方面へ飛び立って行った。
その直後、戦闘中のトラント達にアメンズからの通信が入る。
「トラント上級特尉。そろそろ撤退しましょう。恐らくはサイコミュの影響か、厄介になってしまった友軍機……サイコガンダムMk-Ⅲが迫っています。面倒ごとに巻き込まれる前に……一度上昇してみてください」
「なんだと?!!っくうっ……!!!」
ガンダムデスサイズ・ヘルと牙と刃をスパークさせている最中の通信回線だった故に、トラントの集中力に欠落が生じ、アスクレプオスが若干押され気味なる。
「おらおらどうしたあ?!!」
デュオが強気で挑発する中、アスクレプオスはグググッと力を拮抗させながら、一瞬の隙をもって裁き流し上昇した。
同時にメリクリウス、ヴァイエイトまでも同じ行動をとった。
「な?!!逃げんのか?!!」
「いや、いい。行かせてやれ。もう迎え撃つ相手は別にいる状況にある」
追撃しようとしたデュオに、トロワがまったをかけた。
「ああ?!どーいうことだ……あ?!!熱源アラート?!!」
熱源接近のアラートがガンダムデスサイズ・ヘルのコックピットに響いた。
「デュオ。そういうことだ。おそらく説得は失敗になっちまったんだ!!!」
ラルフもまた状況を把握しており、ため息の後にイヅミ機のリーオーに通信を入れた。
「こちらメテオ・ブレイクス・ヘル。あんたらに撤退を進める。もうアラートが鳴っているとは思うが……少々……いや、大分厄介な敵影が近づいている」
イヅミ特尉は依然として攻め入るMDと戦闘をしながら通信を受ける。
「我々に撤退はない。気持ちだけは請け負う。OZプライズの所業と我々の闘い続ける姿勢、生き様を世に知ってもらいたかったからだ……覚悟は全員できている!!!」
「そうかい……」
同じ仲間ならまだしも、利害の一致のような間柄に過ぎない以上、ラルフも強くは引き止めなかった。
トラント達もホバリングしながら、確実に迫りくるサイコガンダムMk-Ⅲとそれが放つ幾つものビーム過流を視認した。
「こちらOZプライズ、トラント・クラーク。サイコガンダムのパイロット、聞こえるか?」
「私は……私は、そうだ!!!あはははははは、あははははは!!!全てを破壊する!!!」
聞こえてきた支離滅裂なロニの応答に、トラントは首を振る素振りをしながら撤退を開始した。
「だめだ。これだからいつの時代もサイコ兵器は不安定で信用ならん!!!ミュラー、アレックス!!撤退する。それに、放置していてもアレが掃除してくれる」
「ちぇっ、それじゃ挨拶して帰るか」
不満気なミュラーは眼下のリーオー部隊にエネルギーを重点させたビームカノンの一撃を放ってみせる。
一直線に伸びたビーム過流がリーオー達を吹き飛ばしていった。
「あーあ、しょーがねーな、ミュラー!!おめーはよ」
「帰る挨拶♪」
虐殺に近い所業をかましておきながらも、ミュラーはアレックスと他愛もないと言わんばかりの言葉を交わしながら機体を撤退させていった。
それからまもなくして、遂にサイコガンダムMk-Ⅲの三連装メガ粒子バスターとフィンガーメガ粒子バスター、ショルダービームキャノンの夥しいビーム過流、火線の一部の砲撃が到達し、多数のリーオーを吹き飛ばし始める事態になった。
「どうか……トレーズ閣下に栄光を……!!!!」
そしてその流れ弾的なビーム過流は、一瞬の間にイヅミ機のリーオーとその周囲のリーオーの機体群をふき飛ばしながら破壊していった。
「おいおい、いくらなんでも豪快すぎだろ、カトルのフィアンセはよお!!!」
「迎え撃つしかない……のか??!」
「これまた派手派手しいなっ……!!!」
「禍々しい……あれが、サイコガンダム!!!」
デュオ、トロワ、ラルフ、マフティーが各々に反応を示しながらサイコガンダムMk-Ⅲが迫る方面にモニターを向けた。
ロニもまた、眼下に広がるリーオー達を次々にオートロック・オンさせ、挙句にはMD達をもターゲット選定してしまう。
サイコガンダムMk-Ⅲは鬼神のごとく、胸部、五指、脚部のメガ粒子バスターを、両肩のパルスビームを撃ち放って大多数の機体群を破砕させていく。
リーオーやエアリーズ、シルヴァ・ビルゴ、サジタリウスα、プラネイトディフェンサー無発動のサジタリウスβ諸共に破砕に破砕を重ね続ける。
「お前たちがああああああ!!!お前たちがああああああああ!!!」
奇声に近い叫びをあげながらロニは、住宅や公共施設、車両群、幹線道路等を諸共に巻き込み、更なる破壊の限りを尽くす。
そのビーム過流は地下シェルターすらも貫通させてえぐり飛ばし、避難民を無差別に蒸発させていき、プラネイトディフェンサーを展開しているサジタリウスβの防御許容をオーバーさせ、破壊に導く。
この瞬間、友軍機と認識した機体からの想定外の執拗な攻撃を受けた各MD達は、認識エラーを起こしてその機能を停止させていった。
市街地が抉り飛ばされる程の凄まじい破壊は、旧世紀の核爆弾に次ぐ惨状であった。
サイコガンダムMk-Ⅲは一度大地に降り立って更にビーム過流の嵐を巻き起こした。
「あはははは、あははははははは!!!燃えてる、燃えてる!!!みんな燃えてる!!!」
ロニが狂気の笑い声を上げてしまっていたそのとき、機体全体に突如として衝撃がはしった。
「くうう?!!なんだ?!!っ……この感じ、またお前たちか!!!」
バックパックにはガンダムサンドロック改が取りつき、正面の焼け野原と化した幹線道路帯には回り込むように旋回軌道を描きながらクシャトリヤ・リペアードが着地した。
二人は意識を取り戻していたのだ。
「ロニ!!!もうやめてくれ!!!これ以上罪を重ねないで!!!今度こそ僕は君を止める!!!そして、本当の君に……戻ってくれぇえええっ!!!」
「その激しい感情は、忌まわしい人物達によって作られた偽りの記憶だ!!!これ以上の悲劇を巻き起こすな!!!」
クシャトリヤ・リペアードは両腕を広げながらその先を守るような姿勢でサイコガンダムMk-Ⅲの前で止まり、胸部のサイコフレームを発光させた。
「ロニ……何度も言う!!私はお前の友人であり、私にとっても数少ない友人なんだ。はっきり言う。私はロニを救いたい……!!!」
そう言い切りながら瞳を閉じたマリーダは、自身の力を解放させるようにエメラルドの光を帯びながら陽のサイコ波動を解き放った。
「くううっ……!!!あああああああ!!!」
対し、ロニは紫のサイコ波動を解き放つ。
エメラルドとパープルのドーム状サイコ波動同士がぶつかり合い、周囲一帯に衝撃波が巻き起こる。
その最中にもカトルは自機をサイコガンダムMk-Ⅲのバックパックにしがみ付かせていた。
「僕は、絶対に離さない!!!離れない!!!君が元に戻るまで!!!一緒に帰るまで!!!」
「うっとおしい、離れろ!!!第一私に帰る場所など……帰る場所など無いんだっ……!!!それに、お前は何様だ!!?」
「一緒にいる未来を約束した、カトルだよ!!!カトル・ラバーバ・ウィナー!!!君は、君はフィアンセなんだ!!!」
「フィアンセ?!!」
「そう。将来お互いに結婚を約束したんだ。もう今はOZのせいで僕たちの会社はお互いに潰されてしまった。確かにOZが僕たちをひどい目に合わした。でも今の記憶を植え付けられている君のOZの記憶とは違う……君のお父さんはテロリストに殺され、お母さんは君が幼いころ病で亡くなられたんだ。それに、僕は君の目の前でお父さんの敵を討ったよ」
その時、モニターの正面にサイコフレームの共振の影響に伴い裸体のマリーダのイメージが現れ、そっとロニのほほに手をかざした。
「本当のロニは優しい。戦う事も誰かの為に戦える、強く優しい心の持ち主だ。ダカールで共闘した頃を思い出してほしい……私はそこでロニと出会った……」
マリーダには既に強化人間とは違うニュータイプの力が発現し始めており、その力が影響してかそれまで頑なに拒まれてきた本来のロニの記憶を少しずつ脳裏で紐解きはじめた。
「わたし……は……私は……うううっっ!!!ああああっ……!!!」
一方、制圧したムラサメ研究所では、再会できた二人の時間を終えたヴィンセントとクロエが忌まわしき部屋を後にしようとしていた。
「……いこうか?クロエ」
「うん……」
「今俺が所属しているところにも、君と似た境遇の人がいるし、女性の元軍医の人もいる。まずは心と体をケアいていこう」
そう言いながらヴィンセントは上着を裸のクロエに羽織らせ、彼女の手を取りながらその場を後にした。
だがその頃、ネェ・アーガマのCICブリッジにヒイロからの緊急通信が入っていた。
「今すぐ早急に離脱させろっっ……!!!ガンダムデルタカイが……ムラサメ研究所に軌道を変更した!!!奴の狙いは、被験者達だ!!!」
「なんだと?!!何故ここまで連絡が遅れたんだ?!!ゼロシステムの予測は?!!」
「奴にもゼロシステムが搭載されている!!!互いのシステム同士のぶつかり合いが影響を生じさせてしまったようだ!!!無論、俺は最善を尽くす!!!対空警戒を促せ!!!」
ヒイロからの通信はそこからONのまま途切れた。
ケネスはこの時、ヒイロの言葉の向こうから聞こえる音から緊迫した戦闘状況であることを悟る。
「ヒイロ……!!!ムラサメ研究所の警戒任務中のMS隊に告ぐ!!!上空より敵影接近の報あり!!!対空警戒を厳となせ!!!繰り返す!!!対空警戒を厳となせ!!!」
マグアナックやM1アストレイが各々にビームライフルの銃口を向ける中、上空ではビームサーベルとシールドバスターソードの激しい激突が繰り返されていた。
「くううううう!!!ガンダムぅううう!!!」
「ガンダムデルタカイ……!!!今ここで破壊する!!!」
ウィングガンダム・ゼロとガンダムデルタカイのもつれあう激突の中、2機はムラサメ研究所上空へと降下していき、幾度もビームサーベルとシールドバスターソードをぶつけ合う。
その最中、ガンダムデルタカイのゼロシステムがリディにニュータイプ壊滅を最優先にさせる指示を出し、リディを一度ウィングガンダム・ゼロから突き放させる。
「ぐううう!!!」
ゼロシステムに駆り立てられたリディは、大きく捌き退けると一気に急降下を開始した。
「奴は……くっっ、させるか!!!」
ウィングガンダム・ゼロもそれを追撃する。
マグアナック隊にも敵影急接近のアラートが鳴り響く。
「各機、撃ち方用意!!!」
カトリーヌとジュリも緊迫状況に息をのみながらビームライフルを構えた。
「……っっ、撃ち方始め!!!」
ラシードの指示が下され、各機が一斉に対空射撃をする。
だが、いとも簡単にガンダムデルタカイは射撃を縫うように潜り抜けていき、マウントされているバスターファンネルを放った。
「くっっ……ゼロっっ!!!」
ヒイロが更に加速させ、ビームサーベルをバスターファンネルへ斬り付けに掛かる。
だが、ガンダムデルタカイはこれを守るようにして再びシールドバスターソードで斬撃を受け止めた。
ウィングガンダム・ゼロとガンダムデルタカイの力と力が拮抗する。
「貴様っっ!!!人体実験を強いられた罪もない被験者達を殺す気か?!!」
まれに見るヒイロの激昂に対し、リディはニタリと嗤った。
次の瞬間、ゼロシステムに囚われたリディの狂気の思考によって、二つのバスターファンネルが上空よりビーム過流を撃ち放つ。
そのビーム過流は、救出されていくはずであった被験者たちの頭上上空を見事に的中させるようにはしり、一瞬にして救出に当たっていたネェル・アーガマクルー達諸共施設ごと抉り潰す。
もう一つのビーム渦流はヴィンセントとクロエが歩む区画を容赦なく目指す。
「え……?!!」
二人が空を見上げた刹那にビーム渦流が二人を呑みこみ、やっと再会することが果たせた二人を嘲笑うように一瞬の熱エネルギーで蒸発させてしまった。
「ニュータイプはぁっ!!!強化の人形はぁっ!!!滅びちまぇええええっっ!!!!」
更に執拗なまでに幾度もバスターファンネルを撃ち放つリディの凶行は、ムラサメ研究所そのものを灰塵に導いていく。
ビーム渦流の流星弾雨は壮絶なまでに破壊を拡大させた。
その最中、かろうじてマグアナック隊の位置への直撃は免れていた。
ラシード、アブドゥル、アウダ、アフマドの機体がシールドをかざし、カトリーヌ機とN1アストレイを死守する。
「野郎共!!!なんとしてもカトリーヌ様とジュリ嬢を守れ!!!」
「おおおおお!!!」
「……なんてことっっ……これもガンダムの力なの?!!」
「デュオっっ……怖いよ……!!!」
凄まじい光景と状況が面前に起こり、カトリーヌとジュリも戦慄を覚えざるを得ない状況だった。
「リディ・マーセナス……!!!貴様ぁあああああ!!!!」
ヒイロの怒りの感情を付加させたウィングガンダム・ゼロが、ガンダムデルタカイのシールドバスターソード目掛けてツインバスターライフルを至近距離で撃ち放った。
その一撃にガンダムデルタカイは一気に突き押し退けられていく。
ガンダムデルタカイのパワーとガンダニュウム合金の強度、ビーム渦流が拮抗する最中、ハイメガキャノンユニットが爆発した。
「ぐううううううっっっ!!!ああああああ!!!!」
ガンダムデルタカイは力づくでビーム渦流を捌き、滅茶苦茶になった姿勢から再び姿勢を立て直して見せ、メガバスターを何発も放った。
その攻撃を躱しながらウィングガンダム・ゼロもツインバスターライフルを何度も見舞う。
互いに射撃戦の応酬になるかと思いきや、一瞬の隙をついてウィングガンダム・ゼロが一気に間合いを詰めにかかる。
メガバスターの射撃軸をヒイロ自身で読みながら接近し、一気にビームサーベルで右斬り上げの強烈な斬撃を打ち込んだ。
シールドバスターソードと激しく激突、拮抗し合う。
一瞬の力の誤差でウィングガンダム・ゼロの斬撃が振り切り、ガンダムデルタカイの態勢姿勢が崩れる。
更にその瞬間にレフトアームのツインバスターライフルを撃ち放ち、ガンダムデルタカイを仰け反らせるようにふっ飛ばして見せた。
その激しい激突の最中にガンダムデルタカイは吹っ飛びながらもバスターファンネルを引き寄せ、再びそれらをマウント装備させるとウェイブライダーに変形して舞い上がる。
そして事もあろうかOZ静浜基地方面へと飛び立った。
すかさずウィングガンダム・ゼロもネオ・バードモードへ変形し、加速しながら飛び去るガンダムデルタカイを追撃していった。
ウィングガンダム・ゼロとガンダムデルタカイの両者の激しい激突の一方、クシャトリヤ・リペアードとサイコガンダムMk-Ⅲもまたニュータイプの力同士が拮抗し続けていた。
だが、その拮抗は波動と波動であり、核となるものが説得という「対話」であることが決定的な違いであった。
「ロニ……ゆっくりでいいよ。少しずつ思い出していくんだ。本当の記憶を……思い出を……」
サイコガンダムMk-Ⅲのバックパックに取りついたガンダムサンドロック改からもカトルが説得を促し続ける。
「私の……本当の記憶……思い出……っううううっ……!!!」
「幼い頃の僕は、よく『ロニお姉ちゃん』ってよく懐いていた……本当の弟みたいに僕を可愛いがってくれていた……」
「カトルと比べれば、間柄が半年とは短かかったが……私とロニは敵の牢獄に監禁され続けていた中で互いに励ましあった……だから、私も自我を保て、心もロニに救われていた……あの時から私は友人としてロニを好きになれた……ありがとう」
カトルに続きながらマリーダがそうロニに告げた。
そしてマリーダの精神体がロニを抱き締め、クシャトリヤ・リペアードもまた一層の光を拡げ放った。
「あ、ああああっ、ああっ……!!!私っ、私っ!!!」
精神体のマリーダが放った光が、洗い流すようにロニの偽りの記憶を溶かしていき、それは本来の彼女の人格を呼び覚まさせた。
「マリー……ダ……カトル……っっ……私はなんてことを……ごめんなさいっ……ごめんなさいっっ!!!」
「ロニ!!!謝らなくていいよ!!!悪いのは君をそうさせたやつが悪いんだ!!!だからっっ……!!!」
「だからって……だからって……こんな、こんなことが許されていいはずないじゃない!!!」
眼下に広がる廃墟の海を見ながらロニが叫んだ。
彼女に本来の記憶が戻ったということは、これまでの経緯、経験も本来の記憶、人格に反映することも意味し、その罪の所業や莫大な罪悪感が彼女の精神を一気に押しつぶそうとする。
皮肉にもロニはマイナス干渉波を放ち始め、マリーダのオーラを押し返し始めた。
「ロニ!!!私も、そうだった!!!けど、やむえないことだってある!!!行動をしたのは確かにロニだ。だがそうさせ続けたのは、ロニをそうさせた者に他ならない!!無理に!罪を背負うことはないんだ!!!」
必死の説得をするマリーダの側にロニの精神体が現れ、ひしめく罪悪感と贖罪の叫びを伝える。
「私は、この街やOZや連邦の兵士、そしてジオン残存軍の人たちを大量虐殺、ジェノサイドをしてしまったのよ!!!この手で!!!それだけじゃない……私は、本来カトルにゆだねるはずだった女性の尊厳を……ないがしろにしてしまった……!!!!カトルを裏切ったのよ!!?!」
「ロニ……!!!」
そのロニの心の叫びを聞いたカトルは自分の素直な気持ちをぶつけた。
「僕はもう、その事実は受け入れてるよロニ!!!それらを含めた上で君を大切な人だと思ってる……!!!君は僕に必要な女性なんだ!!!それにロニの罪は、罪じゃない!!!何度も言うように君をそこまで追い詰めた人たちが悪いんだ!!!」
「そんな綺麗ごとなんていい!!!考えてもみてよ!!!そんな綺麗事の道理が被害者遺族に通じると思って?!!私自身、目の前でお父様を殺されたからわかる!!!!私がジェノサイドに加担したに変わらない!!!もう、私の居場所なんてない!!!!あるとしたら……このコックピットの中だけだ!!!!」
そう叫んだロニの精神体がマリーダの前から消え、直後にロニはサイコガンダムMk-Ⅲを浮上させ、あてもない進撃を始めた。
「ロニ!!?どこへ行く?!!」
「私は、もう後戻りできない……後戻りなんかっ、できない……!!!」
ロニは涙を流しながら無意味に機体をホバー方式で加速させる。
ベントナ達に狂わされた彼女をここまで追い込む必然性などどこにもない。
強制的に人体実験を強いられた挙句に大罪を犯させられた……これ程の理不尽があろうか。
依然としてしがみついていたカトルは、その理不尽に対して怒りと悲しみが入り混じった感情を覚え、無言で震えていた。
そんなカトルを突き放すようにロニが言う。
「カトル……もういいよ。私なんかほっといて……いまの私がカトルのフィアンセになる資格なんてない。いい加減に離れて……!!!こんな大量殺戮者の女なんかっっ……絶対嫌でしょう!!?ねぇ……せめて、あなたの手で私を殺して……カトル……」
ロニのその言葉に、カトルの中で今の今までに溜めてきたロニを想う心が爆発した。
「……絶対にいやだっ!!!そんな馬鹿なことができるもんか!!!絶対に離れるもんか!!!僕はっ、僕はずっと君に会いたかった!!!捜していた!!!ゼロシステムが君を示したのを手掛かりにここまで来たんだ!!!君がどんなになろうと、ロニを想う気持ちは変わらない!!!変わったのだとしたら、前以上に想いが、好きという気持ちが大きくなった!!!!だから、必ず君を連れて帰る!!!!ロニの居場所はあるっっ!!!!ネェル・アーガマと、友人であるマリーダさん……そしてロニの事が好きな僕だっっ!!!!」
そのカトルのロニに対する想いが、彼女のニュータイプの力を通して心身を駆け巡り、ロニの止めどない負の涙を正の涙に変えた。
「カトル……!!!」
その変化をマリーダも感じ取り、安堵の感覚を覚えた。
「ふぅ……やはり最後は愛の力が勝るか……カトルの強いロニを想う心が事態を変え……っっ!??嫌な感覚が来るっ!!!」
安堵は文字通りの束の間であった。
突如と接近する嫌な感覚がマリーダにはしる。
同時に二つのビーム渦流がサイコガンダムMk-Ⅲの巨体に撃ち注がれ、両脚関節を破砕させた。
サイコガンダムMk-Ⅲを撃ったのは2基のバスターファンネルであった。
「うあああああ?!!」
「きゃああああああ?!!」
旋回しながら現れたウェイブライダーは、旋回飛行と共にガンダムデルタカイへと変形を遂げ、地表に倒れたサイコガンダムMk-Ⅲの頭上に降臨した。
「あいつは?!!ガンダム?!!っっ、このままではロニがっ!!!」
ガンダムデルタカイが直ぐにヤバい存在と感じつつも、マリーダはロニ達を守るべくビームトマホークを振りかざして応戦した。
「はぁああああっっ!!!」
振るわれたビームトマホークは、シールドバスターソードに阻まれた。
若干拮抗するものの、直ぐにパワー負けして圧倒されてしまう。
「くっ!!!このままじゃっっ……!!!」
「ニュータイプと巨大な力が一度に居やがった……ニュータイプの人形風情が……不快なんだよ!!!」
リディの理不尽かつ狂気の発想の意のままに動いたバスターファンネルが二手に狙いを定めた。
「何が革新だ!!?何が可能性だ?!!そんな可能性、棄てちまえっっっっ!!!!この人形どもめぇがぁああああああああ!!!!」
突如乱入したガンダムデルタカイはリディの狂気のまま、クシャトリヤ・リペアードと立つことができないサイコガンダムMk-Ⅲに向けてバスターファンネルのビーム渦流を撃ち放った。
両者共にコックピット直撃コースで迫り来るビーム渦流。
それを目の前にしたマリーダは、逃れられない死の運命を感じながら瞳を閉じ、プル、ジンネマン、ロニ、そしてヒイロへの想いを走馬灯のように過らせ、ロニもまた涙を流しながらカトルに一言を告げる。
(姉さん……お父さん……ロニ……ヒイロ……私は……!!!)
「カトル……哀しいね……」
「ロニぃいいいいいいっっっ!!!!」
ディギュアァイイイイイイイイイイイイイッッッッ!!!!
同時に同じ系統の激しい音が二重に響き渡った。
だが、それはMSを撃破した音ではなく、ガンダニュウム合金が高出力ビームを受け止めた際に響くことのある特有音であった。
逃れられない死を目前にしたはずのマリーダとロニは、死を受け入れながらも少しずつ瞳を開きながら意識がある事を認識した。
「……ん……??生きている……??あぁ……?!!」
「……私、生きてる……??あぁっ、カトル?!!」
彼女達が瞳を開いた先のモニターには、それぞれの想い人の化身たる姿があった。
マリーダにはヒイロのウィングガンダム・ゼロが、ロニにはPXシステムを発動させたカトルのガンダムサンドロック改がそれぞれの想い人を守っていたのだ。
「ロニに……これ以上の理不尽は、絶対に許さない!!!!」
「俺の敵は……コロニーを脅かすモノ、仲間の命を狙う者、居場所を奪おうとする者、そして……マリーダの命を狙う者だ……!!!!リディ・マーセナス、お前を殺す……!!!!」
ヒイロとカトル、双方の想い人に殺意を示したガンダムデルタカイとリディに対し、ガンダムウィング・ゼロとガンダムサンドロック改が搭乗者の怒りを代弁するかのような眼光を灯した。
To Be Next Episode
次回予告
マリーダとロニ向けたリディの愚かな狂気は、ヒイロとカトルの怒りを買うに至る。
ヒイロとカトルはそれぞれに狂気を受け止めた。
ウィングガンダム・ゼロとPXを発動させたガンダムサンドロック改はリディのガンダムデルタカイを怒涛の勢いの猛撃で追い詰める。
そして遂にカトルは掛替え無い勝利の報酬を手に入れ、その後、ヒイロ達の介入もあり、OZ静浜基地のOZの軍勢もまた決起に勝利した。
だが、間もなくして中華覇権を叫ぶ特定のOZプライズの新たな動きがロームフェラ財団と地球圏に衝撃をはしらせる。
一方、ジンネマン達は合流したピースミリオンで一時の休息をしていた。
その最中にもアディンとプル達は次なるラプラスの箱の行く末を辿るべく、座標が示したムーンムーンへと赴く。
だが、そこには既にL5コロニー群を掌握した中華覇権派OZプライズの常軌を逸した狂気が張りめぐっていたのだった。
次回、新機動闘争記ガンダムW LIBERTY
エピソード48「ムーンムーン・ジェノサイド」
どうもです。ラストのこの展開構想したのはガンダムユニコーンの最終エピソードがリリースされた年でした。
あれから紆余曲折あって、ようやく!!!ようやく今回の展開に至りました!!!
次回はゼロとサンドロックがリディに炸裂します!!!くぅ~!!!
では……