新機動闘争記ガンダムW LIBERTY   作:さじたりうす

44 / 52
エピソード44 「同時戦端」

 

 ガランシェールは現状待機のまま、船内でジンネマン達はルー達を保護していた。

 

 客室にてキャプテンとしてジンネマンが、コニーマンとルー、プルツー、シェルドを招き入れて挨拶を踏まえて、今回の状況を聞こうとしていた。

 

「改めて、俺は穏健派ネオジオン所属のスベロア・ジンネマンだ……我々の方でジュドー君の手当の方は無事済まさせてもらった。安静は絶対だ」

 

「そうですかっ……よかったぁ!!!本当にありがとうございます!!!」

 

 ほっと胸を撫で下ろすルーの礼に、手をかざしてジンネマンは謙遜の言葉を言った。

 

「いやいや……当然のことをさせてもらった次第だよ。礼には及ばんさ……」

 

「いやぁ、そないな謙遜せんでもええですやん!!また更に助けられましたなぁ!!ジュドー君にも色々教え教わられで、ええコなんよぉ!!ほんまにありがとうございますぅ!!!」

 

「いやいや……それにコニーマンさん、最後はあなたの機転があったから彼らが助かったんだ……こちらからも礼を言わせてもらうよ」

 

「いやいやぁ、ジンネマンさん!!私の方こそ大したことしてせんよぉ……それに、自分なんかにジンネマンさんがお礼というんは……??」

 

 そして、ジンネマンは視線をプルツーに視線を移して口元にかすかな笑みを浮かべる。

 

「それはですね……」

 

「な、なんだ?」

 

「その子を助けていただいた事にもなるからだ。お帰り、プルツー。今回は実に災難な帰還になってしまったが、プルと会うことが果たせたのは不幸中の幸いと言えよう。俺は言った通りネオジオンの人間だ。かつてプルの姉妹の生き残りの捜索をしている時があってな。その頃マリーダと名付けたプルトゥエルブを引き取った。今や俺はプルとマリーダの父親だ。俺としてもこうして会えたことが嬉しいよ」

 

 ジンネマンの話を聞いたコニーマンは頷きながら納得していた。

 

「ああ、なるほど、そういうことなんやね……いやぁ、ええ話ですわぁ~……」

 

 当のプルツーもジンネマンの話を聞かされ、感慨深く納得した様子の雰囲気を纏う。

 

「そうか……あたしは……」

 

 そうプルツーが言いかけた時、ジンネマンは肝心な事に気づく。

 

 (ん……待てよ……つい感動が先行して疑問すら懐くのを忘れたが、プルツーは当時11、12歳くらいであった……当時と容姿に変化が無さすぎる……もうマリーダのように成長していてるのが普通だ……ジュピトリスで冷凍冬眠?!いやバカな……)

 

 そんな疑問符を一人で張り巡らせるジンネマンに、心境を見通していたプルツーがふうとため息交じりに笑みを見せていった。

 

「……もしかして、当時とあまり変わらないあたしの容姿のことか?」

 

「あ、むぅ……うちのプルも断続的なコールドスリープをオーガスタ研究所でやられてしまっていた……もしや用途上は違えどジュピトリスにもそのような装置でもあるのかな??」

 

「そんなのないよ。もしかしたら初めてのプルのクローンで秘密兵器とされていたからかわからないが、一定の年齢から成長してないんだ。多分、そう遺伝子をいじられていたんだろ……グレミーのやつに……」

 

 少しダークに踏み入れてしまう話題になってしまったところへ、シェルドが良かれかつ、空気を変えようと発言する

 

「ま、まぁ、とにかくこれでお姉さんに続いて、お父さんもできたってことだよね?ホントよかったね、プルツー!」

 

「な、何を急に……!!!お、お前は余計なコト言わなくていい!!」

 

「はうぅっ」

 

「そうやってまた弱キャラ出す!!」

 

 そんなやりとりがあった中、ジンネマンはジュピトリスⅡがL2コロニー群に到達して間もなく襲撃を受けた事、自分たちが何のために行動しているかの説明などのやり取りをした上で、彼らの最大責任者である木星公社に連絡を取る運びとなった。

 

 その後ジンネマンはミーティングを開き、クルー達に今後の行動を説明した。

 

「これから俺達は木星公社に指定されたポイントにジュドー君達を送ることになった」

 

「ラプラスの座標にいくのは??」

 

「俺達の行動の性質上、本来ならば巻き込む必要のない人を戦闘に巻き込みかねない。よって延期する形をとろうと思う。長旅でようやく目前までくることができたが……」

 

 するとプルが反発するように発言した。

 

「あたしはガランシェールにはここで待機していてほしい!!じゃないと、コア3の方から感じる嫌な奴らが取り返しがつかないことをしてくるコトに巻き込まれると思う!!!あいつらは今すぐあたし達がやらなきゃいけない気がする!!!」

 

「プル!!仮にそうだとして、関係がなかった木星公社の社員をこれ以上戦闘に巻き込むわけにもいかん!!!」

 

「あたしだってわかってる!!けど今やらなきゃ……今やらなきゃ……!!!コロニーの大勢の人達が危険に晒されるかもしれない……!!!見たでしょ?!!メガ粒子砲!!!」

 

 プルがそう言うのには、先程のメガ粒子砲とあるビジョンが過った事が主張の根本であった。

 

 それはコロニーがヘリウム3爆弾と思われる兵器で甚大な被害がもたらされるものだった。

 

「おまえのニュータイプの力は理解している!!だがな……!!!」

 

 するとミーティングに客室にいたはずのプルツーが意見をしてきた。

 

「あたしはプルの言ってる事も大事だと思うよ。実際に嫌な感じがコア3の方から伝わってくる。さっきの襲撃やメガ粒子砲といい、敵はきっと何かしら行動する奴のはずだ」

 

「プルツー!!フォローありがとう!!!」

 

「いや別に……あたしも感じたから……さ」

 

 まさかのプルツーの意見に、ジンネマンは眉に指を当てながら言葉なく考え込み始める。

 

 いつもの親バカぶりがまたにじみはじめてきていると悟ったフラストもまた、ジンネマンに提案した。

 

「うぅん……キャプテン、こうするのはどうすか?アディンとプルにコア3に行ってもらっている間でもここで待機して、次の座標を出したら離脱ってのは?」

 

「フラスト、その間この船の護衛はどうするんだ?!キュベレイMK-Ⅱがあるだけだぞ!!!」

 

 ジンネマンのその発言から、プルツーはキュベレイMK-Ⅱがあったことを過らせ、自ら名乗り出た。

 

「っ!!!そうか……なら、あたしが護衛するよ。そのキュベレイを貸してくれ。助けてくれた礼だ。これは木星公社のあたしじゃなく、一個人の意思だ。やらせてくれ」

 

 プルツーの押し切る発言に、ジンネマンはやはりいつしかのマリーダとプルの我儘を赦した時の事を思い出す。

 

「っ……プルツー……!!!わかった……では船の護衛を頼む」

 

 その流れに乗るように拳をバシッと叩きながらアディンが発言した。

 

「じゃあ、戦闘時間も短期が望ましい電撃作戦ってことで俺とプルで出向いて、俺が嫌な奴らを一網打尽にしてやんよ!!!」

 

「アディン、プルの護衛いや、援護を頼むぞ。行っていつものように結果をキメて来い!!!」

 

「あぁ!!!もちろん!!!」

 

「では、ここでまとめる!!!アディン、プルはコア3へ赴き、敵性存在と思わしき勢力を打尽しながらラプラスプログラムの座標を開示。事が済み次第早急に帰還!!!その間にプルツーにこの船の護衛を行ってもらう……変更の件は木星公社にも俺が連絡しておく。以上だ」

 

「っしゃあ!!!」

 

 かくして、ガランシェールクルー達はコア3へ向けての行動に移る。

 

 出撃の間際、MSデッキにてコニーマンもまたガランシェールの護衛に名乗り出ていた。

 

「ええ?!マジで護衛してくれるっていうんですか?!!気持ちは助かりますが……」

 

「俺も護衛させていただきますよ。こっちとしての気持ちやし、プルツーちゃん一人に負担かかせるのもなんやからね。それにあの年頃のコ見てますと、コロニーに残してきている娘とダブってしまうんでほっとけないんよ」

 

 ディックやトムラはありがたい気持ちと不安感が隠せない表情でい続けた。

 

 何せ今の時代、旧式かつ宇宙に極限に不向きなはずのアッガイが彼の搭乗機だったからだ。

 

「しかし……おたくのアッガイは趣味志向の作業用じゃあないんですか??」

 

 するとコニーマンはニンマリしながら二人に答えた。

 

「ふっふふふ……俺のアッガイをナメテもらったらあかんよぉ……宇宙戦闘もできるんよ??開発段階のジュピタニウム合金で胸部一面と両腕を近代改修しとる上に、アームハンド双方に出力を強化したビームキャノン、頭部の四連ビームキャノン、で!!スペシャリティーな必殺技もできるように改造してあるんよ??もしもの時は任してもろてええですよ~」

 

 コニーマンのサムズアップサインに、メカニック歴の中で前代未聞状況にたじろぎながらもディックとトムラはサムズアップを返した。

 

 一方、ユニコーンガンダムにプルが乗り込む直前、プルとプルツーがそのコックピットハッチ前で佇む。

 

「これが……ガンダム??確かにさっきはガンダムだったはずだが……」

 

「今はあたしが乗るとガンダムに変形するんだ。このユニコーンガンダムはもうあたし専用のガンダムになってるの」

 

「そうなのか。ガンダムがプルの専用だなんて……なんだかすごいな……」

 

 プルはくすっと笑いながら自分の手を見ながらプルツーにユニコーンガンダムに乗ることになった経緯を説明した。

 

「あたしね……これを管理していた人達に文字通りの命がけで託されたの。ラプラスの箱っていうのを探し出すために……あたしが一番ふさわしい真のニュータイプなんだって……ラプラスの箱は多分この時代に必要なモノなんだなって思ってる……」

 

「プル……」

 

「それじゃあ、行ってくるから。プルツーはガランシェールのお留守番お願いね!!」

 

 プルはそう言いながらユニコーンガンダムのコックピットに身を投じ、バイオメトリクス・センサーに手をかざして機体を起動させる。

 

 するとたちまちコックピットシートや機体各部を可変させながら、ユニコーンガンダムはエメラルドグリーンの光を放ってガンダムの様相へ変身していった。

 

 プルツーはそのユニコーンガンダムの勇姿を間近に垣間見る。

 

「これが、ユニコーンガンダム……すごい!!!」

 

 プルツーはユニコーンガンダムに幻想的にすらも思える印象をいだきながら、ガンダムジェミナス・グリープにも視線を移す。

 

 彼女の反応を見るなり、プルツーも現在のマリーダ同様「ガンダムは敵」というマインドコントロールがいつからか解放されていたようであった。

 

「ガンダムジェミなんとか……どっちもあたしが知らないガンダム……か」

 

 そう呟きながらプルツーは、キュベレイMk-Ⅱのデッキへと向かう。

 

 すると、そこには機体色こそはプルのカラーリングであるが、かつての第一次ネオジオン抗争やジュピトリスⅡで使っていた愛機の姿があった。

 

「これで、また乗り換えか……あたりつく機体が皆キュベレイとはまた感慨深い……だが、今回は借りるかたちだ。少しの間だが、よろしくな……キュベレイ」

 

 ふっと笑みを見せながらプルツーはキュベレイMk-Ⅱに乗り込んだ。

 

 プルとアディン達がそれぞれに発進準備を整える中、共通通信でジンネマンからの通信が入る。

 

「目的はラプラス座標の開示。二人共無理強いはするな!!今は木星からのゲストを預からせてもらっている状況なんだからな!!」

 

「わかってるって、パパ!!!」

 

「俺も了解!!!」

 

「そして、プルツーと……ミスターコニーマンもガンダム2機が不在中の護衛、よろしくお願いする……」

 

「あぁ、任せろ」

 

「俺のアッガイは伊達じゃありませんよ~!!任しといてくんさい!!」

 

 先にガンダム2機が発進シークエンスに入る流れになろうとした時、プルが思いついたように外部通信を開いた。

 

「あっ!!あと、トムラさん、ファンネルシールドとビームマグナム持ってくから!!!今回のやつらは……多分、殺らなきゃダメな敵に感じる!!!」

 

「了解!!!調整はしてあるからいつでも大丈夫だ!!」

 

 プルの意思に呼応するように二つのファンネルシールドが動き始める中、ユニコーンガンダムの右マニピュレーターにビームマグナムが装備される。

 

 その一方で、気迫十分のアディンの声が響いた。

 

「俺がキメルぜ!!!アディン・バーネット!!!ガンダムジェミナス・グリープ、出……」

 

『あー、アディン!!忘れ物だ!!』

 

 アディンの出撃間際、突如ディックが通信を入れてくる。

 

「って……なんつータイミングで……あ~、忘れ物って?!?」

 

『ウィングのバスターライフルを一回り小さくしたタイプのライト・バスターライフルを射撃用に持っていけ!!そうすれば、メガ・パーティカルバスターキャノンとブースターをそのままで扱える!!!』

 

 アディンが左側モニターを確認すると、そこにはやや小振りにしたバスターライフルがあった。

 

「あれだけ兼用強調して結局か……でもま、確かに理にはかなってるな!!」

 

 格納庫ハッチと固定アームが動き、ガンダム2機がそれぞれが発進していく。

 

 ガランシェールの後部ハッチから発進した2機は、力強い加速をかけて2機はコア3を目指して宇宙空間に飛び込んでいった。

 

 その時、ちょうどジュドーが安静にしている医務室の窓から2機のガンダムが駆け抜ける姿が見えた。

 

「ルー、今の光を放ってたMS、ガンダムだったよな?!」

 

「そ、この船に所属しているガンダムなんですって」

 

「え?!この船はネオジオンの船なのに?!?」

 

「今はあたし達の時とは色々事情が違うみたいよ」

 

「ま……木星帰りって色々ギャップあるからなぁ……いつつつ!!」

 

「こらっ!!無理に体動かさない!!ジュドーは怪我人なんだからさ!!」

 

 窓越しに見えたユニコーンガンダムと、ガンダムジェミナス・グリープは両眼を光らせると、各々に更なる加速で機体を飛ばしていく。

 

 その時、遠ざかっていくガランシェールにプルは振り向いて視線を送る。

 

 そのタイミングでキュベレイMk-Ⅱとカスタムアッガイが発進し、ガランシェールの船外に展開するのを確認してプルは呟いた。

 

「護衛よろしくね、プルツー……パパは無理するなって言ってたケド……ちょっとは無理してくるよっ……あたし達がここで止めなきゃならないと思うから!!!さぁ、もっと飛ばすからね、ユニコーン!!!」

 

 プルはブースターペダルを更に踏み込ませた。

 

 

 

 一方、コア3ではギラ・ドーガやサイコ・ギラ・ドーガ、ヤクト・ドーガ、ザクⅢ、リゲルグ、Rジャジャ、バーナムジェガン、マラサイ、ハイザックといったヴィジランテの宙賊MS達が、リーダーであるクァンタン駆るアームドベース・クレヴェナールに追従する形で次々と出撃していた。

 

 その後方にはヘリウム爆弾を引っ提げている機体達も確認できる。

 

 クレヴェナールはガンダムトリスタンをコアとした現代版デンドロビウムと言っていい機体だ。

 

「さぁ……!!!祭りの始まりだぁっ……!!!期は満ちたぜぇ……!!!後、同胞を殺りやがった連中に報復する!!!一部隊、別動隊でイケ!!!」

 

 クァンタンの指示に、1機のヤクト・ドーガと1機のRジャジャ、多数機のバーナムジェガンとハイザックが動いた。

 

 彼らの存在は、連邦やジオン問わず用済みとされていった強化人間達の集団であり、誰もが自分達を捨てた世界……すなわち地球圏に対する復讐を懐いていた。

 

 そこへ資金を回していたのがブルーメンツなのだ。

 

 惨劇に荷担しようが、最終的に統治支配と軍事資金利益強化に繋がれば手段を選ばない。

 

 ヴィジランテの宙賊の群れを光学迷彩で見つめる勢力がいた。

 

 それはグランシャリオであり、艦内CICブリッジでは、ヴァルダーが頬杖をしながらその光景を見つめていた。

 

「時代の廃棄物達が群れをなす。滑稽な光景だ。あれが……与えた物か?ミズ・マーサ?」

 

「えぇ……争いや惨劇は兵器で回して整える……今やOZプライズ、もといロームフェラ財団の一部となったアナハイムがオーガスタと提携して造った。ヘリウム船団を襲撃されたのは想定外だったけれども……」

 

「あれはやられては損害が凄まじい……時に、ミズ・マーサは何故我々とまた行動を?」

 

「それはもちろん、利害の一致上ラプラスの箱の在りかを探す為。一時期色々と取り乱してしまっていたけれど……」

 

 (ふっ……醜くくかつ、見苦しい程にな……)

 

「それに……我々の手中にあったユニコーンガンダムには居場所を発信する特別プログラムを組み込んだ。落ち着いて傍観して追跡していればいいようにね……」

 

「……超巨大MAの件と強化人間を解体する話は?」

 

「パトゥーリアは現在、被験体と共に月に向けて運んでいるわ。後者もムラサメ研究所にて被験体を選別中……そのあとDOMEシステムが造られたオーガスタへ運ぶ。いずれにせよ時間はかかるわ……ラプラスの箱の破壊を、私が携わった力で排除したいの……!!!」

 

 マーサは赤い口紅を強調した口元をニヤリとさせながら言った。

 

 

 

 南JAPエリア近海  夜間

 

 

 

 ネェル・アーガマは光学迷彩を展開した状態で、OZ静浜基地を目指す。

 

 距離からしてかなり近い位置に到達しつつあり、OZ静浜基地及び周辺一帯は、リーオーやエアリーズに加えてジェガンやリゼルまでもが続々と集まりつつあった。

 

 OZプライズの在り方(OZの吸収)をよしとしない、トレーズを慕うOZの兵士達やかつての連邦の兵士までもが志しを同じくし、OZが受け入れていたのだ。

 

 この状況はルクセンブルクを中心に世界中のOZの主要基地で展開する状況に至っていた。

 

 無論、ロームフェラ財団が黙っているはずもなく、オペレーション・ノヴァを促進させ、OZプライズの力による制圧に打って出ていた。

 

 静浜基地及び周辺にOZプライズが介入するのも時間の問題であった。

 

 ヒイロ達の目的はそこに介入し、OZプライズの戦力削減とゼロシステムが示したサイコガンダムMk-Ⅲの介入からロニを救出する事にあった。

 

 艦内の共用休憩室にて、カトルとトロワ、デュオ、ラルフ、マフティーがナイトカフェタイムをしながら男同士の語り合いをしていた。

 

「……こーして男同士語り合ってるのも悪かねーな!!」

 

 デュオがアメリカンコーヒーを口にしながらスコーンを手に取って言う。

 

「確かにな……俺もかつては野戦キャンプでラルフと語り合ったものだ……」

 

 そう言いながらトロワがピザをつまむとラルフもまたノンアルコールビールをあおりながら語る。

 

 有事に備えての飲酒操縦防止の為だ

 

「そうだなぁ……そんな頃もあったなぁ……ま、戦場を渡り巡る日々は今もむかしも変わらないがな……こうしている今だって次の戦場に向かっているわけだしな……」

 

「俺も今こうして共に戦わせてもらえている事に感謝している……本来あの襲撃がなければ、今規模の大きなバックアップができていた……」

 

 マフティーもまたノンアルコールのハイボールテイスト飲料を呑みながら言葉を溢す。

 

「けど、実際色々と手助けしてくれてると思うぜ、俺は!!オーブでも結果現れてるしよ!!もー、威風堂々とメテオ・ブレイクス・ヘルのGマイスター名乗ってもいいと思うぜ!!」

 

「デュオ……そうか……俺がGマイスターか……!!!ありがとう……そう言えばもう次の戦場は近いんだよな?」

 

 マフティーの質問に、カトルが答える。

 

「はい。いよいよ目前に迫る日本・OZ静浜基地……ヒイロが言っていたゼロシステムが示したっていうのが、ロニが乗せられているサイコガンダム……ようやく、彼女と会えるんです……!!!」

 

 意識と想いを熱くさせながらカフェモカをすするカトルの言葉に、マフティーは聞き慣れない名前に軽い疑問符を抱く。

 

「ロニ??」

 

 デュオがそのフォローも踏まえて危惧した意見を走らせた。

 

「カトルのフィアンセだ。訳あって敵さんの手中にいる状況になってるんだ……ケドよ、カトル!!会えるって言ったってよー、示されていたのがサイコガンダムなんだろ?!カトルの為にも言うが、それなりの覚悟も持っていた方がいいと思うぜ?!十中八九は戦闘は免れないだろうし、彼女さんだって奴らにひどい目に合わされているだろうしな……」

 

「デュオ!!!そんな事はわかっているさ!!!現に彼らのサイドに墜とされてしまったマリーダさんも相当ひどく扱われていたのだって聞いたよ……だから、ロニもきっと……!!!きっと……!!!あぁっ……!!!」

 

 辛気臭い空気が見え隠れする中、ラルフがカトルに諭すように言う。

 

「憂いを懐くのはわかる。そりゃあ、想い女性(びと)だからな……サイコガンダムに乗せられちまっている以上、強化処置はされていて間違いない。だが、そんな苦痛屈辱をひっくり返してやるのが、カトルの役目だろ?悲観的になってる場合じゃあない……」

 

「そうだ。カトル。戦う事になろうとも、ロニを助ける事に全力で集中するんだ。その時は俺達に他の敵を任せればいい」

 

「ラルフさん、トロワ……」

 

「そーゆーこと!!フィアンセを助けた暁には、極上のシャンパンで祝ってろーぜ!!カトル!!」

 

「デュオ……うん!!ノンアルコールでね!!」

 

「俺にもミヘッシャがいる。不安や心配な心境は理解できる。俺も救出に協力させてもらおう」

 

「ありがとうございます、マフティーさ……いえ、ハサウェイさん……!!」

 

 そんな彼らを見る女子グループがいた。

 

 カトリーヌやジュリ、アサギ、マユラ達である。

 

「デュオ……いるけれどなんだか男同士の雰囲気で入りづらいかなぁ……」

 

「男同士って……きゃー!!カトルくーん!!!」

 

「腐女子か!!!アサギ!!!」

 

 男同士というワードで変な想像をしたアサギにジュリとカトリーヌが突っ込みを入れ合う。

 

「兄さんで変な想像しないで下さい!!!というか……マユラさん以外みんな意中の男子がそこにいるパターンだよね??ボクもトロワが……」

 

「そーねぇ……てか……意外と恋愛模様賑かなんだね……ネェル・アーガマって!!」

 

「そーいうマユラはどーなのさー?!例えばあの冴えないメカニックのコ!!!今からMSドックいくー?!」

 

「は?!あのクシャなんとかの整備してる奴?!なんっでそーなんのよ?!?アサギ!!!」

 

「あぁ……デュオ……もっとおしゃべりしたい~」

 

 (女子会のつもりが変な展開に~……てかなんでボク達はコソついてるのー??)

 

 カトリーヌが頭を抱えている中、一人の女性が声をかけてきた。

 

「あなた達、どうしたの??こんな角でこそこそ……??」

 

「え?!あ!!!」

 

 彼女達が振り替えるとその声はエイーダだった。

 

 だが、普段の段階では戦闘の通信以外では面識が無いため、マユラとアサギは誰なのかさっぱりであった。

 

「あ、いつも共有通信でナビしてくれてる~……」

 

 カトリーヌもジュリも顔は知ってても名前が出てこないパターンになっていた。

 

「オペレーターのエイーダです。覚えてね!それで何でこそこそ……??」

 

 カトリーヌとジュリが事情を話すと、エイーダは納得すると同時に笑う。

 

「なるほど……あっははははは!!あぁ、ごめんなさい……みんなうぶさんだなぁって……せっかく親睦深めれるんだし、更にここはカフェなんだから!!もっと堂々としていいと思うわ。それに女子に声かけられて嫌な男性なんてまずいないと思うしさ……私も、実はあのメンバーの一人に用あるから、みんな行きましょ!!」

 

「あ、エイーダさん!!」

 

 エイーダはカトリーヌの手を掴むや否や、ラルフやトロワ達の所へ歩みだした。

 

 一方のヒイロはウィングガンダム・ゼロのシステム整備を黙々と続けていた。

 

 そんなヒイロの許へノーマルスーツを着たマリーダが突然訪れる。

 

「ヒイロ。もしかして、今まで飲まず食わずで作業しているのか?」

 

「っ?!マリーダ……!!!」

 

 突然のマリーダの声に、あのヒイロが動揺して手にしていたプログラムディスクを落としてしまった。

 

「……俺は今、ゼロシステムのコピープログラムを作っている……いずれ戦闘指揮にも応用できるようにな……マリーダこそどうした?ノーマルスーツを着て……」

 

「あぁ。戦いの感覚を鈍らせない為にも、シュミレーショントレーニングに打ち込んできた。私もクシャトリヤもメンテナンス中だが、シュミレーションはできたからな……」

 

 ヒイロがそう言いながら作業を続けていると、マリーダはヒイロの肩に手を回して、いつにない積極的なスキンシップを求めてきた。

 

「ヒイロ……」

 

「っ……?!?」

 

「平時に体を休めるのもパイロットの務めだ。今日はもう休め……そして、今から私のいる部屋に来い。任務だ……くすっ」

 

 耳元でマリーダにそう言われてしまっては流石のヒイロも従わざるをえなかった。

 

 部屋に誘われたヒイロはマリーダと並びながらベッドに腰かけると、あるものを手渡された。

 

「まずは……これを飲み干すのを手伝え」

 

「なんだ?これは……」

 

 ヒイロに手渡されたのは、一見栄養補給食のようなモノであった。

 

「サリィさんから与えられている病院食だ。まだ私も万全ではないからな。コイツはハッキリ言ってマズイ。サリィさんには悪いが、とても全部は飲めたものじゃない。一緒に飲んで欲しい……」

 

「ふっ……任務とはこれか」

 

「ふふ、これは任務のうちの一つに過ぎない」

 

 思わせ振りな言葉の後に、二人で息を合わせるかのようにそれを飲み合う。

 

「……っぐっ……!!!」

 

「うっ……!!!」

 

「……っ、なんだ、これは?!」

 

「な?マズイだろ?!」

 

 共感を求めるようなマリーダの質問に対し、ヒイロは口を拭いながら答えた。

 

「あぁ、死ぬ程マズイぞ……」

 

「ぷっ……ふふ、あはははっ……あはははははっ!!」

 

 またもやいつにないリアクションで笑い始めたマリーダにヒイロは一瞬きょとんとするが、すぐに彼女の笑う姿に僅かな笑みを浮かべる。

 

「あははははは……すまない、なんだか可笑しくなってしまった……ん?あはははっ、そんなに見つめるな」

 

「いや、マリーダの表情がいつになく豊かだったからな……」

 

「もしかして、今度はギャップ萌えとか言うんじゃないだろうな?ヒイロ?」

 

「あぁ……そのつもりだ」

 

「あはははっ!!これ以上笑わせるな!」

 

「……マリーダ、他の任務はなんだ?」

 

「知りたいか?」

 

 マリーダはその瞬間にふうっと雰囲気を変えてみせ、ヒイロの肩に寄り添う。

 

「あぁ……っ、?!?なっ、なんだ?!」

 

 更にそこからすっと立ったマリーダは、ヒイロの目の前でノーマルスーツを脱ぎ、下着姿になってヒイロの肩に再び寄り添う。

 

 最早妖しい空気は否定できない。

 

「私からの任務……それは……」

 

「わかった……」

 

 耳元で囁くマリーダの声、雰囲気からヒイロは全てを把握し、言いかけのマリーダに先回り的な行動をしてみせた。

 

「っ……?!ぅっ……ん……」

 

 ヒイロはマリーダからのキスを逆に迎え撃つかのようにキスをマリーダに重ねた。

 

 二人の時間が止まったかのように流れる。

 

 マリーダもまたキスをしようとしたヒイロからの逆キスを受け入れ、瞳を閉じた。

 

 そして、一旦互いにキスを離し再び求め合うようにキスを重ね、抱き合うようにベッドに身を沈めた。

 

「ん……ヒイロ……もう……結局、ヒイロが攻めて私が受け身なのか……それじゃ、ヒイロの任務は一つ失敗だ」

 

「どういう事だ??」

 

「攻めずに私に甘えろ……」

 

「甘えろ……だと?!どうすればいいん……だっ?!?!」

 

 マリーダはヒイロを引き寄せるように、自分の胸元へ顔を伏せさせるように抱きしめた。

 

「っ……!!!」

 

「ヒイロはいつも、すごい事をやってのけてみせ、今の今までずっと闘い続けてきている。さっきもそうだ。今後の皆の戦いの為にウィングゼロの整備にずっと没頭して……決して自分にも甘えようとはしない。お前自身は平気かもしれない。だが、自身の気づかない心のどこかで何かが悲鳴を上げていたりする……だからたまにはいいんじゃないか?甘えたって……」

 

「マリーダ……」

 

 ヒイロはマリーダのふくよかな肌のぬくもりと、香りを感じながら彼女の言葉を受け入れるようにして瞳を閉じた。

 

「ふふ……ヒイロ……しばらくこのままでいよっか……」

 

「あぁ……」

 

 マリーダもまたヒイロを抱きしめ、時折ヒイロの髪を撫でながら互いの安らぎの時間を共有し合う。

 

 ヒイロも温もりの向こうからマリーダの鼓動を感じながら、パラオでの生活以来の、否、それ以上のやすらぎを感じていた。

 

「流石にヒイロ……この後の任務はわかるな……?言わなくても……」

 

「あぁ……無論だ……」

 

 それぞれが癒しの時間を送っていたその時、CICブリッジでは新たな敵機影を捉えていた。

 

 ミヘッシャがケネスに通達する。

 

「ケネス艦長、OZプライズの敵影を捉えました!!!向かう方向からしておそらくはOZ静浜基地に向かうものかと思われます!!!映像夜間モードに切り替えて拡大します!!!」

 

「これは……!!!」

 

 ケネスが映像から確認する限り、かつてのラボコロニー最終決戦時にデュオや、トロワ、カトルのガンダムを追い詰めた3機……すなわち、アスクレプオス、ヴァイエイト、メリクリウスであった。

 

 更にそれに加え謎のガンダムらしき機影に多数のサジタリウスα、βを従えていた。

 

「おそらくは先遣攻撃部隊……いや、あれらの戦力だけでやる気なのか?!?奴らのやり方なら被害は恐らく……当初の敵であったはずのOZを守るか……皮肉なものだ……こちらには気づいていないか??!」

 

「はい……その様子です。光学迷彩とステルス機能で気付かれていないかと……」

 

「……よし、Gマイスター達だけを出撃させる!!各機種の状況は?!」

 

「整備中のウィングゼロ以外は出せる状況です!!!」

 

「虎の子のガンダムが出せんか……だが、それでも事足りるはずだ……構わん!!!Gマイスターに出撃命令!!!」

 

 

♪BGM O-RIZAER(ガンダム00より)

 

 

 ネェル・アーガマ艦内に戦闘態勢移行を知らせる武鐘が鳴り響き、カフェタイムをしていたGマイスター達は直ぐにその場からMSデッキへと駆け出し、エイーダもCICブリッジに向かう。

 

 ヒイロ以外のGマイスター達がそれぞれにコックピットへと乗り込む。

 

「ったく、せっかくジュリともカフェタイムできていたってのに……!!!がっかり貧乏くじだなー!!!」

 

『デュオさん、私情の文句は遠慮願います!!ガンダム各機のカタパルトタイミングを譲渡します!!!』

 

「同じメガネっ子さんでも手厳しいなぁ……デュオ・マックスウェル!!!ガンダムデスサイズ・ヘル、行くぜ!!!」

 

「カトリーヌには悪いことをする形になったが、いくらでも時間の埋め合わせは可能だ。問題ない……ここからはいつもの戦場だ。トロワ・バートン、ガンダムベビーアームズ改、出る!!!」

 

「前哨戦か……さぁ、行こうかサンドロック!!!カトル・ラバーバ・ウィナー、ガンダムサンドロック改、行きます!!!」

 

『ハサウェイ、どうか気を付けて……まだ、満足にデートいけていないし……』

 

「ははっ、ミヘッシャも私情を挟んでいるぞ!」

 

『あ、ごめんなさい……』

 

「いいって……いつかはそういう時間は欲しいと思ってる……マフティー・ナビーユ・エリン、Ξガンダム、出る!!!」

 

 ガンダムデスサイズ・ヘル、ガンダムベビーアームズ改、ガンダムサンドロック改、Ξガンダムの各ガンダムがネェル・アーガマから各々に飛び立ち、アスクレプオスを筆頭に飛ぶOZプライズ部隊を追撃していった。

 

 同じ頃、アディンとプルもまたヴィジランテの本体と激突していた。

 

 ガンダムジェミナス・グリープが高速で駆け抜けながらビームランスの斬り回しで連続斬撃を見回していく。

 

「おらぁあああああああっ!!!初っ鼻から全力でキメテやるぜぇええぇっ!!!」

 

 

 ズバシュッ、ディギャガァッ、ザシュガッ、ザシュバッ、ザギギャアッッ……シュゴッ―――バザァギャギギギギィガオオオオオオンッッ!!!!

 

 ドドゴバババババババァアアアアアア!!!!

 

 

 連続斬の後に、大振りの薙ぎ斬りで斬り飛ばされた多数機の宙賊MS達の爆発をバックに、ガンダムジェミナス・グリープは続けてライトバスターライフルを連発で撃つ。

 

 

 ヴヴァアアアアアアッッ!!! ヴァズアアアッ、ヴヴァダァアアアッッ、ズヴァアアアアアッッ!!! 

 

 

 一度の中出力のビーム渦流に標的機3機が同時に破壊され、ヴィジランテサイドのMS達は次々に爆砕されていく中、ガンダムジェミナス・グリープは更にチャージショットを見舞う。

 

 ヴヴィリリリリリ……ヴゥヴァオオオオァアアアアアアッッ!!!!

 

 ドドドドゴバババババゴァアアアアアアッッ!!!!

 

 一直線にはしる極太のビーム過流が宙賊のMS達を次々と呑み込んだ。

 

 プルもまたヴィジランテのMS達にいつになく容赦ない攻勢を見せていた。

 

「あなた達は、ここで止めなきゃならない!!!だからっ!!!」

 

 

 ヴィジヴゥウウウウウンッッ!!! ヴィジヴゥウウンッッ、ヴィジヴゥウウウンッッ、ヴィジヴゥウウウン、ヴィジヴゥウウウウウンッッ!!!!

 

 

 放たれるユニコーンガンダムのビームマグナムの一発、一発がターゲットを確実に破壊していく。

 

 

「シールドファンネル!!!」

 

 

 ヴィディリリリッッ、ヴィディリリリリリリィィ!!!

 

 ヴィディリリリリリリリリ、ヴヴィディリリリリリリリリリリリリリィィィィ!!!

 

 

 ディギャギャギガガラララララッッ、ドドドドゴバババババゴァアアアアアア!!!

 

 

 更にプルの意思通りに動く、2基のシールドファンネルのビームガトリングガンの連射撃が、攻めいるヴィジランテサイドのMS達を一網打尽にしていった。

 

 更に襲い来るビーム攻撃を超常的と言っても過言ではない程の軌道を描いて2機のガンダム達は攻撃を躱していく。

 

 そして、斬り掛かったリゲルグとザクⅢの斬撃を躱し、瞬く間に背後に回り込んだユニコーンガンダムはレフトアーム側で発動したビームサーベルの斬撃でリゲルグを、ガンダムジェミナス・グリープは強烈なビームランスの刺突でザクⅢを撃破した。

 

 

 一方、デュオ達も交戦状態に持ち込む流れを作る。

 

 まさかの遭遇にトラントは好戦的な笑みを見せて言う。

 

「まさかまさか……こんな所で奴らのガンダムと鉢合わせるとはな……!!!」

 

「トラント特尉ぃ……あいつら、なんかパワーアップしているように見えますぜ?まぁ、骨がなればいいに変わりはないっすけど……なぁ、ミュラー?」

 

「それもそーだけど見ろよ、アレックス!!!Ξガンダムまでいやがる!!!ちょーど新人の相手にいいんじゃねー?!」

 

 ミュラーがそう言いながら新型のガンダムに視線を送った。

 

 そのガンダムのサイズはΞガンダムと同等クラスのガンダムであった。

 

 

 

《プロビデンスガンダム》

 

 

 

「そうだね……Ξガンダムの相手はOZ初の強化人間……いや、ニュータイプの僕に相応しい。ネオジオン残党に『シャアの再来』と呼ばれる男がいるそうだが、さしずめ僕は『アムロの再来』かな。何せ僕は彼のクローン……アメンズ・レイ・アルマークなのだから……!!!」

 

 衝撃的な言葉を並べたアメンズに、トラントは敢えて攻勢の抑止をかける。

 

「ははははは!!!そういうことだ!!!だが、まずはMDをかませ犬に当てる。それが、相手の力量を測れるし、こういった場合のセオリー。俺達の攻撃はその後だアメンズ特尉」

 

「了解。トラント特尉」

 

 サジタリウスα、βの戦闘プログラムがキルモードで指示入力され、各機が迫るガンダムに攻撃をかけ始めた。

 

 一点集中で持続的な高出力ビームを放つパーシスタービームライフルを撃つサジタリウスα群、量産機では最高出力のビーム渦流を放つビームカノンで射撃するサジタリウスβ群。

 

 一斉に放たれるビーム群に対し、ガンダムデスサイズ・ヘルが先陣を切って突っ込む。

 

「出やがったなぁ!!!コピーヤロウ!!!」

 

 囚われていた時期のデュオと五飛の操縦データを持つ両サジタリウスだが、進化した本人とアップデートした愛機の敵ではなかった。

 

 向かい来る高出力ビーム群をモノともせずに、アームド・ツインビームサイズをかざして一気に斬り払う。

 

 

「似非人形は吹っ飛んでなぁあああッ!!!」

 

 

 

 ザシュバァアアアアアアアアアアァァッッ!!!

 

 ディッギガンッ、ディッギガンッ、ディッギガアンッッッ……ドォドォドォゴバアアアアアアッッ!!!

 

 

 

 その一振りでサジタリウスαと2機のサジタリウスβを撃破してみせ、追加攻撃にバスターシールド・アローを2機のサジタリウスαに向けて発射する。

 

 

 

 ディシュイッッ、ディシュインッッ!!!

 

 

 ズドォシュガンッッ、ザスダァアアアンッッッ……ゴババゴガアアァアアアアンッッッ!!!

 

 

 

 胸部と頭部にそれぞれビームアローが突き刺さり、あえなく爆破した。

 

 その編隊の最期の1機にアームド・ツインビームサイズを振るうガンダムデスサイズ・ヘルだが、プラネイトディフェンサーでその攻撃が遮断されスパークがはしった。

 

「何ッ?!!やろぉおおっっ!!!」

 

「デュオっ!!!フォーメーションだ!!!離脱するんだ!!!」

 

「お?!!あいよぉっ!!!」

 

 カトルの合図にデュオがフォーメーションでガンダムデスサイズ・ヘルを離脱させると、アームバスターカノンを構えたガンダムヘビーアームズ改の姿が現れた。

 

「この手のディフェンサーは強力だが、量産機故にメリクリウス程ではない……!!!」

 

 

 

 ヴウゥゥッッ……ヴヴァオアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!

 

 ダギュヴァアアッッ……ゴゴゴゴアッ……ズギュシャアアアアアアアアアッッ……ドォゴバオアアアアアアアアアアッッ!!!

 

 

 

 放たれたチャージショットのアームバスターカノンのビーム渦流を一時的に受け止めるも、直ぐにプラネイトディフェンサーが限界を迎え、再びはしったビーム渦流が機体を吹き飛ばした。

 

 トロワはそのまま攻勢を終わらすことなくダブルビームガトリングガンの射撃に切り替え、2機のサジタリウスαに素早く射撃する。

 

 

 

 ヴィドゥルルルルルルルルッッッ!!! ヴィディドゥルルルッルルルルゥゥゥッッ!!!

 

 デディギャラララララダダガガギャアアンッッ、ドォドォドォバララガアアアアアアアンッッ!!!

 

 

「トロワっ、更に上方にも射撃を!!!」

 

「あぁ、破壊する」

 

 

 

 そこから上方向に射撃体勢でいたサジタリウスαとβに向け、ガンダムヘビーアームズ改はバスターガトリングキャノンを撃ち放つ。

 

 

 

 ヴォヴァルルルルルルルルッルルルッルルルルヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴゥゥゥゥ!!!!

 

 ディヴァルゥヴダダギャラララランッッッ、ドゥバラララララゴバババヴァララランッッ!!!!

 

 

 

「これで更に突破口を開きます!!!マフティーさん、ファンネルミサイルを!!!」

 

「俺にもフォーメーションを?!!よしッ、ファンネルミサイルッ!!!いけ!!!」

 

 

 

 シュヒュシュシュシュシュゴゴアアアアアアアアアアッッ!!!

 

 ドゥズバアアアアアアアアッッッ!!! ドゥズバアアアアッッ、ドゥズバアアアッッ、ドゥズバアアアアア、ドゥズバアアアアアアアッッッ!!!

 

 

 

 ファンネルミサイルと同時にビームバスターの射撃もサジタリウスα、βに向けて放つΞガンダム。

 

 縦横無尽に飛び交う超硬質のファンネルミサイルが2機種のサジタリウスを撹乱エラーを引き起させながらダメージを与え、その間にビームバスターの高出力ビームが次々と撃破に追い込む。

 

 

 

 ディギャガガガガガガガディググギャギャギャガガァァァァァ……ズドォゴバァンッッ、ディズグアアアッッ、ダディガアアアアンッ、ゴバオオオオオンッッ!!!

 

 

 

「散り散りになった!!!デュオ!!!残りを各個撃破してくよ!!!」

 

「あいよ!!!」

 

 散り散りになったサジタリウス達に向け、ガンダムサンドロック改とガンダムデスサイズ・ヘルが向かう。

 

 

 

 ヴィディドゥルルルルルルルルウウウッッ!!!

 

 ディギャギャギャギャラランッッ、ゴバアアアアアアアンッッ!!!

 

 

 

 ガンダムサンドロック改は接近しながらクロスクラッシャーと同時装備したビームマシンガンで1機のサジタリウスαを撃墜すると、一気に間合いを接近させてクロスクラッシャーとバスターショーテルの斬撃でサジタリウスαとβを破断して見せる。

 

「はぁああああああっっ!!!」

 

 

 

 ザギャガァアアアアアアアアッッッ、ディッガイイイイイイインッッッ!!!

 

 

 

 そして残りのサジタリウスαに飛びかかったガンダムサンドロック改は、1機をバスターショーテルで叩き斬り、もう1機をクロスクラッシャーでホールドかつ破断しながら零距離ビームマシンガンの射撃で撃破する。

 

 

 

 ダッッギャギイイインッッ!!! ダァガオオオオオオンッッッ……ギギギギギィィ……ヴィディリリリッリリリッリリィイイイイイイッッッ!!!!

 

 ゴバババディギャララララガアアアアアアアンッッ!!!!

 

 

 

「マリオネットはさっさとぶっとべぇえええ!!!」

 

 

 

 ザズシュガアアアアアアアアアンッッ……ディカイィッ、ディッガイイイイイイイン……ゴゴバガギャオオオオオオオオオンッッッ!!!

 

 

 

 ガンダムデスサイズ・ヘルによる大振りかつ一線のアームド・ツインビームサイズの薙ぎが払われ、サジタリウスβ2機が破壊された。

 

 そして4機のガンダム達はこの攻勢を畏怖させるがごとく両眼を光らせた。

 

 

 

 

 一方、アディンとプルもまた圧倒的な攻勢で攻め迎え撃ち続ける。

 

 メガ・パーティカル・ブースターのチート的な機動性にファンネルすらも太刀打ちできずに躱されていき、ガンダムジェミナス・グリープが一気にかけた瞬発的加速で間合いを詰める。

 

「らあああああっっ!!!」

 

 

 

 ズドォギャアアアアアアアアッッッ!!!!

 

 ヴァズグウウウウウウウウウウウンッッッ!!!! ザディガアアアアアアアアアアアッッッ!!!!

 

 

 

 ビームランスで貫通するかのようにヤクト・ドーガを刺突爆破し、その向こう側にいたリゲルグに袈裟斬りの高速斬撃を浴びせた。

 

「PXいくぜッッ!!!!」

 

 爆発の中でPXシステムを発動させたガンダムジェミナス・グリープが、読んで字のごとく電光石火の閃光と化して宙域にいる宙賊MS群に飛び込み、駆け巡る超高速のその斬撃とビーム渦流は瞬く間に宙賊達を一網打尽に駆逐する。

 

 ユニコーンガンダムもまた、カートリッジリロードをしながらビームマグナムを浴びせ続けると共に、シールドファンネルのビームガトリング一斉射撃を慣行し続けて圧倒する。

 

 

 ヴィシュヴゥウウウウウンッッ!!! ヴィシュヴンッ、ヴィシュヴンッ、ヴィシュヴウウウウウウウンッッ!!!

 

 ビュヴィディディディディディディリリリリリリリィィィィィィッッ……!!!

 

 

 

 その射撃に対抗しようと口部メガ粒子砲を放ったザクⅢや、ビームトマホークを奮いながら襲い掛かったドライセンもビームマグナムの射撃とシールドファンネルのビームガトリングにより穿かれハチの巣にされて爆砕する。

 

 その次の瞬間にプルは次の攻撃を感じ取った。

 

「……ッ!!!来たッ!!!」

 

 ファンネルの一斉射撃がユニコーンガンダムに注がれたが、Iフィールドによってビームが相殺される中、対峙するサイコ・ギラ・ドーガは執拗にユニコーンガンダムへと攻撃を仕掛ける。

 

 だが、戦う相手が不向き過ぎたが故にそれは一気に不利の状況に繋がる。

 

「しつこいな、もう……ファンネルもらうよ!!!」

 

 ユニコーンガンダムが手を振りかざし、サイコフィールドを展開させた。

 

 その波動はサイコ・ギラ・ドーガのファンネルをジャックし、シールドファンネルと共に元の主へと一斉射撃させる。

 

 ユニコーンガンダムが尻目にして駆け抜ける背後で、サイコ・ギラ・ドーガはあえなく爆砕していった。

 

 悉く手下達が屠られていく中、後方でこの光景を目の当たりにしていたクァンタンの怒りは頂点に達する。

 

「くそったれがァ……!!!あれだけ準備してきた復讐劇がこうも簡単にぶっ潰されるなんてよぉ……!!!消し飛べやああああああ!!!!」

 

 怒りに駆られたクァンタンの一撃が放たれる。

 

 

 

 ヴィディリリリリ……ヴヴヴァアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!

 

 

 

 放たれるメガビームキャノンとHSDキャノンのビーム渦流。

 

 それはまさしくジュピトリスⅡに止めを与えたビーム渦流であった。

 

「このビーム……!!!さっきの……!!!あいつが放っていたんだ……!!!」

 

 更に後方よりギラ・ドーガやバーナムジェガン達が2基のヘリウム爆弾をミサイルの原理で発射する。

 

「ひゅーッ、図体がでかいやつが来やがったな……あ?!!

 

 軽くビーム渦流を躱すアディンとプルだったが、アディンはヘリウム爆弾、もといミサイルが向かってくることを視認した。

 

「あれ、まさかヘリウムなのか?!!ヤバイやつが放たれやがった!!!」

 

 アディンはサーチ機能を使用して向かってくるヘリウムミサイルの詳細データを割り出す。

 

「……おいおい、爆発したらガンダニュウム合金の破壊数値に到達するレベルの威力だぜ……爆発規模も半端ない!!!」

 

「できれば返したかったけど……あの2基だけは破壊するよ!!!ファンネル!!!」

 

 プルの意思で放ったファンネルの攻撃が2機のヘリウムミサイルに直撃する。

 

 すると莫大な爆発光が発生し、周囲にいたギラ・ドーガやバーナムジェガン、ズサカスタム達を軽く呑みこんで消滅させていった。

 

 無論このような規模の威力を誇る兵器がコロニーや地上に命中すればどのような被害になるかは想像に難くない。

 

「貴重な兵器がッ……貴様らあああああ!!!」

 

 クァンタンの感情は爆発し、マイクロミサイルランチャーを撃ち放つ。

 

 しかしアディンとプルからしてみれば、ガンダムの機動力もあってこれらのミサイル群を躱すのは造作もない事であった。

 

 ユニコーンガンダムがエメラルドグリーンの光の軌道を描きながら躱し続け、ガンダムジェミナス・グリープはミサイル群に対し、ライトバスターライフルのチャージショットを見舞って一掃する。

 

「ちいいいい!!!あのガンダム共ぉぉおおおゥうううっっ!!!」

 

 更に荒れ狂うクァンタンは、クレヴェナールのアームドベースボデーから2基のユニットが射出させた。

 

「へっ……またミサイルかぁ??」

 

 だが、アディンの予想を裏切り、大出力の紅いレーザーが乱発かつ拡散形式に放たれる。

 

「いいっ??!拡散レーザー!!?!またトリッキーだな!!!」

 

「……やばっ!!!くっ……!!!」

 

 レーザーはビームとは性質が異なる。

 

 即ち、Iフィールドやリフレクトシールドが通用しない。

 

 プルはニュータイプの直感的感覚で見抜いて躱し、一方のアディンはレーザーがランダムに放たれる故に、リフレクトシールドで咄嗟に防御する。

 

 レーザーが中る度に爆発に見舞われるが、やはりガンダニュウムの強度が耐えしのぐ要素となっていた。

 

「確かに……プルの言う通りだっ……こんなヤロウがコロニーとか襲ったら……はんっパネェ……!!!」

 

「っ……絶対にガランシェールには行かせない!!!」

 

 飛び交う高出力拡散レーザーに交え、クァンタンは再び上部HSDキャノンとメガビームキャノンを同時に放ちはじめる。

 

「俺達はなぁ……セカイに捨てられた身なんだよ……!!!ゴミのようになぁっ……!!!」

 

 

 ヴァズグヴァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!!

 

 

 

 高出力レーザーポッドの拡散射撃の中を二つで一つになったビーム渦流がはしった。

 

 その攻撃を躱すアディンとプルだが、この時、プルはじわじわと悪しき精神波の影響を感じていた。

 

「なんて強い憎しみッ……負の感情……!!!」

 

「くひひゃああああっ!!!狩るぞおおおおおおお!!!!」

 

 クレヴェナールは下部左右のアームユニットからメガビームサーベルを発動し、見た目に似合わない機動力でユニコーンガンダムに襲い掛かった。

 

「さらに攻めてきたッ……!!!」

 

 プルは襲い来る二連斬を躱し、間合いの距離を離そうとするそのタイミングの最中でシールドファンネルとファンネルとで射撃する。

 

 だが、それはクレヴェナールのIフィールドによって攻撃が遮断される。

 

「そっか……Iフィールドをやれば……え?!!」

 

「死ねよっ!!!」

 

 プルがビームサーベルの攻勢に転じた瞬間、クレヴェナールはアームユニットを射出し、ファンネルのごとく斬り掛かる。

 

「くっ……!!!」

 

 ユニコーンガンダムに襲い掛かる素早い斬撃一つ一つを左右双方のビームサーベルで受け止め続ける。

 

 更に次の瞬間、クレヴェナールは左右からアームクローユニットを射出し、それをユニコーンガンダムに向かわせた。

 

「邪魔はさせねえぇ!!!邪魔されたからにはとことんいたぶり尽くすっッ!!!」

 

 躱し受け身の防戦を強いられていく中、斬撃を躱すタイミングでアームクローユニットが遂にユニコーンガンダムを捉えた。

 

 

 

 ガギャアアアアンッッ!!!

 

 

 

「あうっっ!!!きゃあああああああああッッ!!!」

 

 常時覚醒状態のユニコーンガンダムは、サイコフレームを介してパイロットの意思で機体を動かせると同時に、機体ダメージの感覚もまたフィードバックするようになる。

 

 故にプル自身にそのダメージが伝わるのだ。

 

「ああああああああッッ!!!」

 

 更にギリギリと締め付けながら、ユニコーンガンダムを串刺しにさせる軌道でアームユニットを向かわせた。

 

「いい悲鳴だあああ!!!!ゥオオオオオオオ!!!ぞくぞくするねええええッッ!!!!」

 

 迫り来る二つのメガビームサーベル。

 

 スローモーションで事態が流れた瞬間、ユニコーンガンダムを中心に両者に精神干渉の波が広がった。

 

 コア3へ広がる精神波の世界。

 

 狼狽えるクァンタンにプルが語り掛ける。

 

「何ぃィい?!!なんだっってんだ?!!」

 

「強すぎる憎しみ……何があなたをそこまでさせるの??」

 

「ああ?!!うるせえッッ、ガキ娘が!!!妙な力放ちやがってぇぇッ!!!俺達を捨てた世界に対する復讐に決まってるだろがぁあああああ!!!」

 

「なんて憎悪なんだろ……本心も極めて……!!!うっ!!!」

 

 精神干渉の世界の中においても相容れないクァンタンの姿勢と憎悪に、プルシスターズの思念体が語りかけた。

 

『彼は強化人間の成れ果ての人生の一つ……復讐に満ちた感情が、狂気に囚われている』

 

『その狂気は悲劇を重ねるしかない』

 

『同じ境遇なのに……悲しすぎないか??』

 

『憎しみとエゴによる狂気……』

 

 複数の別の声が語り掛ける。

 

 それはかつてこの宙域で戦死していったプルクローン達の声であった。

 

「な、なんなんだぁ??!」

 

「ここはあたしの妹達が……ニュータイプ部隊として産み出されて、戦って散っていった空間……強化人間達は誰だって苦しい想い背負ってるの!!!憎しみ抱いたって不思議じゃない!!!けど、それを今を懸命に生きている人達に、何もしていない人達に八つ当たりするように狂気をぶつけるなんて、絶対に間違ってるっ!!!」

 

「くくくくっ、ははははははは!!!これが噂に聞いたニュータイプ同士の精神干渉って超常現象か!!!くだらねぇっっ!!!てかガキに説教されるなんざふざけてんなア!!!」

 

「何故なの……この人??何も共感性を示さないし、感じれない……!!!」

 

『本当に狂気に吞まれ、狂気と一つになってしまった人……』

 

『この空間に身を投じても分かり合うことができない存在だ』

 

『決して彼を人々の所に行かせてはダメ』

 

「ごちゃごちゃうるせえなっっクソガキどもがっ!!!俺はなアっっ、憎しみ恨みを連ならせちまってんなら、せっかく強化人間として授かった力でブチ晴らしたいのさっっ!!!そして、同志を集めて大量殺戮破壊ってのもやりたかったのさア!!!!これ以上邪魔させんなあ!!!!」

 

「そうか……やるしかないんだね……ニュータイプの力を持った者同士って解りあえるんじゃなかったの⁇」

 

『一定数悲しくもいる……』

 

『けど絶望まではすることなんてない……』

 

『それはそれで斃すに値する存在であり、そうすることで被害を止まらせることもできる』

 

『彼を止めて、この先のコロニーを守れるのはあなた達しかいない……これ以上の悲劇を……止めて……』

 

 

「わかった……ここでの悲劇以上の悲劇なんて繰り返させない……だから今一度力を示してっ、ユニコーン!!!!」

 

 ユニコーンガンダムの放つサイコフレームの光が一気に増幅して放出され、それがクァンタンの狂気をも吹き飛ばす。

 

「何イっ?!!ぐうう!!!!」

 

 再び現実の領域に戻った時、ユニコーンガンダムのサイコフレームの光がクローアームとアーム両ユニットを吹き飛ばしていた。

 

 同時に2基のハイパーレーザーユニット目掛け、PXシステム全開でガンダムジェミナス・グリープが突っ込み、これを爆砕させて見せていた。

 

「鼻からこうすりゃよかったな……一気にぶっ潰すぜ!!!デンドロビウムモドキヤロー!!!」

 

 ビームランスを振り払いながら、ガンダムジェミナス・グリープがクレヴェナールめがけ高速直進する。

 

 ユニコーンガンダムもまた、ビームマグナムを放ちながらクレヴェナールの攻撃ユニットであるクローアームとアーム両ユニットを破壊する。

 

「ちいいっっっ!!!くそがあああああ!!!」

 

 クレヴェナールは一旦離脱し、メガビームキャノンとを放とうとする。

 

 乱発する高出力ビームであったが、その砲身にガンダムジェミナス・グリープが突っ込んで激しく破砕させた。

 

「撃たせるかっっ!!!ついでにこいつも斬り飛ばすっ!!!」

 

 HSDキャノンの砲身をも、折り返しに舞い戻るガンダムジェミナス・グリープのビームランスによって斬り飛ばされた。

 

「うぇがああああああああっっ!!!」

 

 クァンタンが怒りの唸り声を放ったこの瞬間、斜め気味の軌道で斬り込んだため、Iフィールド装置の破壊にも成功していた。

 

「アディンッ、ビーム撃つの合わせて!!!あいつをやっつける!!!」

 

「よっしゃッ!!!」

 

 ユニコーンガンダムとガンダムジェミナス・グリープは、タイミングをシンクロさせるような軌道で左右に舞う。

 

 そしてビームマグナムとライトバスターライフルの銃身を同時にクレヴェナールへと向け、その悪しき機体をロック・オンした。

 

「狂気はあたし達がここで止めるっっ!!!」

 

「ああっ、キメルぜっ、プル!!!」

 

 

 

 ヴィリリリリリリリッリイイイイィィィィ……

 

 ヴィシュヴヴァダァアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!

 

 ギュグドォバッグウウアアアァァッ……ドォズウヴヴァガアアアアアアアアアアアアッッ!!!!

 

 

 

 同時に突き進んだ二つの高出力ビームはクレヴェナールの核であるガンダムトリスタンに直撃し、そのアームドベース諸共その狂気を爆砕させた。

 

 

 

 

 その後プルとアディンは崩壊しているコア3内へ向けて飛び込み、ラプラスの箱の次なるルートの開示を試みる。

 

 エメラルドのサイコ・フレームの輝きが溢れる中、しばらく瞳を閉じていたプルがゆっくりと瞼を開き、開示モードのモニターを見た。

 

「……次の座標は……L5コロニー群の……ムーンムーン……?!!」

 

 

 

 そしてその頃、日本近海上空にてデスサイズ・ヘル、ヘビーアームズ改、サンドロック改、Ξの4機のガンダムが、アスクレプオス、ヴァイエイト、メリクリウス、プロビデンスガンダムとの強豪MS同士の激突の戦端が開かれようとしていた。

 

 時を止めたかのような睨み合いが、拡がる夜空の空間に流れ続けた。

 

 

 

 To Be Next Episode

 

 

 

 次回予告

 

 夜の上空でデュオ、トロワ、カトル、マフティー達四人が因縁ある敵機と戦闘を繰り広げる。

 

 その敵とはトラント、アレックス、ミュラーの三人に加え、アムロ・レイのクローンを名乗るアメンズ・レイ・アルマークだった。

 

 アムロを誇りかつ見下すように語るアメンズがマフティーとの戦闘を選定する。

 

 その頃、旧コア3宙域でアディンとプルが戦闘していた同時刻、ガランシェールにもテロリスト・ヴィジランテの脅威が迫っていた。

 

 対し、プルツーのキュベレイMk-Ⅱとコニーマンのアッガイが出撃する。

 

 プルから借りたキュベレイMk-Ⅱでプルツーが善戦する中、コニーマンのアッガイはガンダムに匹敵する驚異的なスペックをテロリスト達にみせつけるのだった。

 

 

 次回、新機動闘争記ガンダムW LIBERTY

 

 エピソード45「コニーマン・アッガイ、無双」

 

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。