新機動闘争記ガンダムW LIBERTY   作:さじたりうす

43 / 52

大変、大変、大変長らくお待たせしました!!!ようやく錆びた指が再再起動しました!!!

 大変、大変、大変っ申し訳ありませんでした!!!


エピソード43「ジュピトリスⅡ、襲撃」

 

 

 

 オーブの一件より一週間余り。

 

 ヒイロ達の行動は地球圏に一つのうねりを与えていた。

 

 ケネスが放った事質上の「演説」は、各地でOZプライズと戦うOZ・トレーズ派や旧連邦・ネオジオン、ジオン残存軍の士気向上や、プロパガンダを刷り込まされてきた大衆の反発、論議などの流れをかけめぐらせる結果となる。

 

 決定打となったのは、ケネス達が演説中に流した「実際の映像」の威力が大きかった。

 

 オーブ軍ではない大量のOZプライズの息がかかった連邦系のMSとの戦闘や、解放されていくオーブ国民の映像等が視聴していた者達に強く刻まれたのだ。

 

 地球の各地でOZプライズと戦うOZの兵士達は、ルクセンブルクを主な集結ポイントとして、各地の戦闘活動エリア別に特定のエリアを集結ポイントとして共有していた。

 

 そのポイントにはOZの兵士達が召集し、その集結した物量と主張でOZプライズに対抗する。

 

 その中においては、かつてミスズが所属していた日本のOZ基地・OZ清浜基地もその一つであり、続々とリーオーやエアリーズが召集していた。

 

「同胞達が各地で集まっている。数を成せばMDに対抗できる!!!今に見ていろ、プライズ!!!」

 

「無人機を使用しての弾圧などあってはならん!!!OZとは名ばかりのプライズの愚行を民衆に知らしめる!!!」

 

 だがそれは、当事者のOZプライズと母体組織であるロームフェラ財団、そして世界の暗躍統括支配する秘密結社ブルーメンツにとっては極めて面白味のない流れであった。

 

 覇権支配の妨げにもなり、かつ、闇の伝統の一部がユセルファーの愚行が公となって晒されてしまったのだ。

 

 更には一応の正規軍として存在しているOZがオーブの支援に赴いていたのである。

 

「今こそ我々OZが動かなくてどうする?!きっとトレーズ閣下であればオーブを支援されるはずだ!!」

 

「さすがのプライズの連中も派手には動けまい!!」

 

 事実上暫定軍事政権としてOZが運ぶこととなったオーブ首長国連邦の現状に対し、ロームフェラ財団では一部のブルーメンツメンバーを招き入れた緊急会議を行っていた。

 

「この動きは大変良からぬものです。言論統制も今の世の中では到底抑え込むのは難しい」

 

「オペレーション・ノヴァをもっと大々的に展開し、示さねばならん」

 

「そのオペレーション・ノヴァそのものの足かせとなっているのが今回の事態だ。力の圧政を強めることの反発を恐れるのか、それ以上の力で屈服させるべきか……」

 

「どの道、まずは新生メテオ・ブレイクス・ヘルへの報復をせねばならん。犯行声明を発した以上、奴らの居場所は突き止めれるはずだが……」

 

「現在、特定不能という調査状況と聞いている」

 

 その時、デルマイユがバンと座していたテーブルを叩いて立ち上がる。

 

「たかが民衆や反骨テロリストを恐れてどうする!??我々はロームフェラ財団であり、今後の地球圏の統治していく存在だ!!!奴らは力により事を行った!!!ならばより強い力で証明すればいい!!!

 

「だが、デルマイユ公。それでは先のティターンズの二の舞にはならんかね?!行き過ぎた力の結果は歴史が語っている……!!!」

 

「ウエリッジ侯爵!!何を悠長な!!!」

 

「左様。今は歴史を動かし、利益と進化を促す時期に来ている。宇宙世紀も後数年で百年が経過するのだ。我々とティターンズとではそもそもの根本が違う。我々の今のやり方でこの一件を揉みつぶせばいい。絶大な力と技術でな……」

 

 穏健派のウエリッジの意見をデルマイユとブルーメンツのメンバーの上層階級の政治家が意見した。

 

「むうう……」

 

「そういう事ですぞ、ウエリッジ侯爵。では、オペレーション・ノヴァの強化とバルジⅡ、アジアエリアにおいてはサイコガンダムMk-Ⅲを使う運びで……後メテオ・ブレイクス・ヘルの奴らの追撃部隊を編制・投下を早期検討いたしましょう。そして、オペレーション・ノヴァのさらなる促進を!!!」

 

 会議が続く一方でトレーズは幽閉先で優雅にこの事態を閲覧して過ごしていた。

 

「彼らがまた大きく動いたな。闘い続ける姿勢は益々強みを帯びてきている……」

 

 ワインを注ぎながらそれを一口飲み、差し込む日差しに目を向ける。

 

「その闘う姿勢を見届け続ける事が……如何に歴史的価値ある事か……私は嬉しく感じてしまう。彼らガンダムの戦士達は時代に選ばれし者達なのだ」

 

 トレーズが向けた眼差しの遥か向こうでは、OZプライズの力による弾圧が展開していた。

 

 次々と降下するMDシルヴァ・ビルゴにMDサジタリウスα、βの部隊による一方的な高出力ビームの一斉射撃。

 

 ビームランチャーにビームカノン、パーシスタービームライフルのビーム渦流群や閃光たるビーム群が、リーオーやエアリーズ達の装甲を破砕し、焼灼破壊していく。

 

 更にはプライズリーオー、プライズジェスタによる一方的な蹂躙。

 

 疑似GNDエネルギーを得ているビームライフルやドーバーバスターのビーム群やビーム渦流が次々と反撃するリーオー、エアリーズを捩じ込めて破砕させる。

 

 止まることなく拡大していく激動する時代の縮図が、今の宇宙世紀を震わせていた。

 

 

 

 数日滞在したオーブを後にしたネェル・アーガマは、所々の無人島で休息兼ねた停泊をしながら南太平洋JAP近海エリアを目指して北上を続けていた。

 

 その状況に至ったのは、かつてゼクスやミスズがいたこともあったOZ静浜基地に、OZのMS達がOZプライズに対抗する為に決起招集する事態が起こった事に端を発していた。

 

 オーブを離れて間もない頃、ゼロシステムが示した予測(最早未来予知の次元であるが)に関してヒイロがケネスに意見具申する事があった。

 

 

 

 

 

 ・・・

 

 

 

 

「南JAPエリアに向かうべきだというのか?」

 

「あぁ。ウィングゼロが見せた予測では、ここにJAPエリア周辺のOZのMS達が招集する。そこに事態を鎮圧すべくOZプライズがMSとMD部隊、そしてサイコガンダムMK-Ⅲを投入してくるようだ。それにはカトルの深い関係者が乗せられている」

 

「そうか……あくまで組織的観点からすれば私的理由で動くのは何とも言えんが……彼の事情は以前から私も聞かされているし、我々は軍事組織ではない。重石を引きずったままサンクキングダムに行くわけにもいかないだろうしな」

 

「無論それだけではない。攻め入るOZプライズの戦力を削る事もできる。激戦が示されたがな……」

 

「かつて平和と謳われた国が激戦地と化すか……」

 

「それともう一つ……場所は確定できないが、今後地球のどこかにおそらくバルジ砲が地上に向けて放たれる……そんなビジョンもゼロは俺に見せた」

 

「バルジは確かあと2基存在したはずだ……そうか、宇宙にも警戒すべきか……」

 

 

 ・・・

 

 

 

 

 見渡す限りの海原を一望できる環境下で、ネェル・アーガマのCICブリッジクルー達が任に就く中、ケネスがエイーダに尋ねを入れた。

 

「エイーダ君、南JAP静浜基地にはあとどれ程で到達する?」

 

「あ、はい。大凡(おおよそ)半日もあれば到達できるかと……」

 

「そうか……各員、しばらく交代で休憩はとって構わない。まだ長旅になるだろうからな……」

 

 休憩を命じると、オペレーターのエイーダとミヘッシャ、砲術士のアルバとドリットが、操舵士のエンデがそれぞれに体を伸ばし、緊張にこわばった体をほぐす。

 

「私もしばし休憩をとる……交代要員への引継ぎも頼む」

 

 そう言いながらケネスはCICブリッジを後にしていった。

 

 オーブの激戦を越え、ヒイロ達がそれぞれの一時を過ごす。

 

 マフティーは落ち合ったミヘッシャとカフェタイムをし、トロワとラルフはチェス対決をしながら過ごし、デュオとカトルは気分転換に艦内を見て回り、ラシード一向は交代で対空警戒をし、そしてヒイロはマリーダの許を後にした後、ゼロシステムの機器類をばらしていた。

 

 そんな中、カトリーヌとジュリはサリィの医務室に赴いて保護したマユラとアサギの見舞に来ていた。

 

「先日の手術の経過だけども、二人とも下腹部の痛みや出血は改善してきてるわ。あんなことがあってまだ間もない……今は療養に集中してしっかり体と心のケア、安静を大事にして。特にジュリさんは友人なんだから、彼女達の心のケアの要よ?その友人のカトリーヌさんも一緒にこれからもサポートしてあげてね」

 

「はい!!任せて下さい!!」

 

「もちろんです……!!ありがとうございます、サリィさん!!でも、本当によかった……こうしてマユラとアサギにまた会えて……!!!」

 

「ジュリったら、また泣いちゃって……でも本当ありがとう。あいつらに侵略されてからは本当に地獄だったから……!!!」

 

「ジュリもマユラも湿っぽくなっちゃって……あたしまでまたもらい泣きしちゃうじゃん……ッ!!」

 

 女性の尊厳を踏みにじるようなユセルファー達の蛮行と、救われた今の環境のギャップが彼女達の涙腺を緩めさせた。

 

 カトリーヌも貰い泣きしながら涙を拭い、そんな彼女達を優しい眼差しでサリィが見守る。

 

 その時、カトリーヌは涙を幾度か拭いながら一つの提案を出した。

 

「そういえば、マユラちゃんとアサギちゃんもオーブではエンジニアしていたんだよね?心のケアも兼ねて、MSデッキ見学してみるのはどう?」

 

「ちょっと、まだ歩き回るような運動や立っぱなしは望ましくないわ。体に負担かけさせてはダメよ」

 

「ぐすっ……でも、少しは気分転換に行ってみたいかな?それに、この艦(ふね)のガンダムってあの時助けてくれたガンダムなんだよね??」

 

「あたしも興味あるかも……サリィさん、ちょっとくらいはいいですか?」

 

 早速サリィの医師としてのダメ出しが出るが、マユラとアサギも行きた気な発言をした為、サリィは「しょうがないわねぇ」という感じでふぅっとため息を出しながら彼女達に提案を出した。

 

「……そうねぇ……車椅子で移動するなら立っているよりは負担が軽くなるから、どうしてもというならそれを薦めるわ」

 

 ジュリがマユラの車椅子を、カトリーヌがアサギの車椅子を押し歩く形で四人は、早速MSドックへと向かった。

 

 現場では整備の活気があふれており、オーブ所属のスペースコロニー・ヘリオポリスにいた元連邦や元ネオジオン、ピースミリオンからのメカニック達で構成された各班が呼びかけ合ったり、黙々と作業していた。

 

 その光景を見学しながらジュリ達は一般通路区画を進む。

 

「うあぁ~、すごい~!!ガンダムが並んでるぅ~!!あ、あれジュリのアストレイだぁ!!」

 

 マユラが指さす方向にジュリのM1アストレイがある。

 

「私のはもうメンテナンス終わっているから、あっちまでいったらゆっくり見てこっ」

 

「うん!やっぱり母国のガンダム見ると安心感あるなぁ♪」

 

 マユラの車椅子を押すジュリもマユラの喜び方から出向いてよかったなと感じ、提案したカトリーヌにも思う感情を伝えた。

 

「カトリーヌちゃん、言ってくれてありがとね。病室から出てきてよかった」

 

「そんな、ボクは大したこと言ってないよ~」

 

 ジュリの言葉に謙遜するカトリーヌにアサギが振り返って尋ねる。

 

「そーいえばカトリーヌちゃんはお兄さんがガンダムのパイロットなんだよね?!どのガンダムなの~?」

 

「えっと……アサギさん!あの肩が鳥の翼みたいな形してるガンダムが兄さんのガンダムです。名前はガンダムサンドロック改!!中東の伝説の巨鳥・ロック鳥をモチーフにしたガンダムなんです」

 

 カトリーヌが指さす方向にガンダムサンドロック改の姿が見える。

 

「へぇ~、武器がごつくて強そうっ!!あれならどんな敵でも怖くなさそう!!あ、堅苦しいからアサギちゃんでいいよ、カトリーヌちゃん!!」

 

「え?!あ、うん!わかったよアサギちゃん!因みにそのゴツイ武器、クロスクラッシャーって言って実際に強力だよっ。てかみんな強過ぎなガンダムだからね☆」

 

 そんな会話をしながらガンダムデスサイズ・ヘルの所に訪れると、ジュリが妙にテンションを上げながら解説し始めた。

 

「あの時私達を助けてくれた、ガンダムデスサイズ・ヘル!!実はマユラとアサギを助ける以前に私自身がヤバい瞬間があったのね?その時本当に敵のガンダムに殺されそうだったんだけど、絶体絶命寸前の時に助けてくれたガンダムなの!!彼がいなかったら今こうしてマユラとアサギに会えてはいなかったんだよ……見た目は死神だけど、命の恩人のガンダム!!」

 

「そっか、このガンダムがそうだったんだぁ……ジュリもヤバかった時があったんだね。それにしても、なんだか急にハイテンションになってない?」

 

「え?!それはっ……勿論、助けてくれたガンダムだからっ……テンションくらい上がるわよ!!」

 

「クスクスっ」

 

「カトリーヌちゃん!」

 

 アサギはマユラの問いに対するジュリの反応と、少し笑ったカトリーヌの仕草に勘が働いた。

 

「ははぁ~ん……ジュリ、そういうことか……!!」

 

「え?!!何よ?!!あぁっ!!?」

 

 更に同様したジュリの視線先には散歩がてらネェル・アーガマを歩いていたデュオとカトルがいた。

 

「あ、あれはカトリーヌ達だ!ジュリさん達もいるね」

 

「あちらさんも散歩か!!にしたってどうして車椅子なんだぁ?怪我してたわけじゃないんだろ??」

 

「デュオ、彼女達は女性の尊厳を虐げられていたんだ。これはカトリーヌから聞かされたけど、彼女達は色々悩んだ末に手術したんだそうだよ。それ以上は言えない」

 

「……そういう事かっ。前にヒイロにデリカシーねーとか言われたからな。ここは配慮しますか……」

 

「くすっ、ジュリさんがいる時点で、デュオはもう配慮しているんじゃない??」

 

「いい?!!何言ってんだカトル?!!」

 

 双方のメンバーが対面し合うと、改めて挨拶を交わす流れになった。

 

 互いに存在こそは知っていたものの、マユラとアサギがデュオとカトルに会うのは実質初めてであった。

 

「……よっ!!そっちもMS見学してたんだなぁ!!」

 

「デュ、デュオ……う、うん!!気分転換にいいかなぁって……あ、改めて紹介するわね!!ガンダムデスサイズ・ヘルのパイロッ……あ、Gマイスターのデュオ!!」

 

「どーもーっ。改めまして、逃げも隠れもするけど嘘は言わない、デュオ・マックスウェルだぁ。よろしく、お嬢さん方!!」

 

「マユラ・ラバッツです!」

 

「アサギ・コードウェルです!」

 

「同じくGマイスターのカトル・ラバーバ・ウィナーです。お二人とも一週間前よりもお元気になられたようでよかったです!!あと、いつも妹がお世話になっているようで……今後もよろしく頼みますね!」

 

「もう、兄さんたら!!」

 

 彼、彼女達の談笑が響く中、それを見ていたメカニックの一人がいた。

 

 眼鏡をかけ、頼りなさ気な雰囲気の彼が整備担当していたのは、ガンダムデスサイズ・ヘルの向かい側で改修中のクシャトリヤだった。

 

 今、ネェル・アーガマではこの機体の作業に最も作業の人出を割いていたのである。

 

 現在、失われたライトレッグとレフトアームの回収、バックパックの増設、頭部改修等の作業をしていた。

 

 バックパックは予めピースミリオンで受け取ったものを取り付けるというものであったが、規格違いからあれこれと工夫と思考を凝らしてジョイントを取り付けていた。

 

 それ以外にも損傷した各部のパーツのオーバーホールをしており、彼はその作業に取り掛かっている最中だった。

 

「ボケ、コラ!!!なーによそ見してんだ!!」

 

「あれって……Gマイスター達ですよね??」

 

「あぁ?!!あぁ。基本、パイロットは休むのも仕事だからな。息抜きしてんだろ。てか、お前は手動かせ!!!」

 

「ひっ!!!すんませんっ!!!」

 

 再び作業に集中するしがないメカニックの少年だが、気にしているのはデュオ達だけではなかった。

 

「……オーブから来たってコ……タイプだなぁ……あのショートカットのコ……てか、一目惚れしたかもっ……!!」

 

「リオズ、聞こえてるぞ、独り言!!!結局女見てたのかぁ?!!うつつ抜かしてんじゃねー!!!バカたれ!!!」

 

 ガタイのよい先輩メカニックに罵声を浴びせられながらも、リオズと呼ばれた彼は黙々とクシャトリヤの新たな頭部カメラのオーバーホール作業に取り掛かった。

 

 一方でデュオとカトルの二人と会話をし終えたジュリ達が盛り上がっていた。

 

「~……あっはははは!!ジュリ、態度でわかりやすい!!デュオ君に惚れてるの丸わかりじゃん!!」

 

「アサギ!!」

 

「まぁわかるかなぁ、私は。デュオ君かっこいいもんね!!」

 

「マユラ!!絶対ダメだからね!!!」

 

「もぉ、冗談だってばぁ~、ムキにならない、ならない♪」

 

 (一時はどうなるかと思ってたけど、予想以上に早い回復で安心したな)

 

 女子トーク然とした三人のやり取りを見て、カトリーヌは危惧されていた彼女達の精神状態が、早い段階で回復に向かっていることを感じていた。

 

「でもあたしは、カトル君、可愛いなぁって思った!!」

 

「え?!アサギさ……アサギちゃん、兄さんが気になっちゃった……??」

 

「あははは、だってなんか安心感あるからぁ……」

 

「えっと、兄さんにはフィアンセのロニさんがいて……今は複雑な事情で会えない状態で……ザックリいうと彼女を助けるために今、向かっているんだよ」

 

「アサギ。フィアンセだってさ、残念!!」

 

「マユラ、うっさい!!」

 

「あ、でも元々ボク達の文化圏は一夫多妻制も認められているコロニーや地域だから、仮にフィアンセの人がアサギさんを認めてくれれば大丈夫かな……っていっても一夫多妻はボクの家みたいに元々資産家だったり、王族の末裔の人達だったりと大きな家系に限った話だけどね。一般的にはやっぱり古い考えって認識されてるヨ」

 

「え?!!一夫多妻ィ?!!」

 

 そんな会話ができている時点で、救出当初懸念する強い要因の一つだった男性恐怖症の心配はないことが伺えた。

 

 ジュリもカトリーヌも二人に対する心配事が拭い去れているのを感じていた。

 

 その時、ゴロゴロと少し大きめな球体状のものが前触れなくマユラの車椅子の足許に転がってくる。

 

「何これ??MSの……カメラ……かな??」

 

「あぁ~!!す、すいません!!」

 

 カメラらしき部品を拾い上げたマユラの許に、申し訳なさそうに駆け寄るメカニックの姿が近づく。

 

 それはリオズであった。

 

 彼にとっては一目惚れの類の女性の所に転がった部品がいくという、ある意味凄いシチュエーションであった。

 

「はぁっ、はぁ、はあっ……ごめんなさい、ケガとかしてないですか??」

 

「あ、大丈夫ですよ~」

 

「そっか、それはよかったぁ……間違えて置いてあった部品を蹴ってしまって……」

 

「あ~……あたしもエンジニアやっていた身なんで、最初の頃よくありますよ。はい」

 

 半ば緊張したような感じでマユラから部品をもらうと、リオズは照れ臭そうに会釈して再び現場へ駆け足で戻っていった。

 

 遠方から先輩にドヤされていた彼を見たアサギが一言もらす。

 

「あーあ、怒られてるよ……なんかおっちょこちょいな感じね。冴えなさそうでもあったし……」

 

「そう?あたしは彼の今のミス見たら初期の頃、上司のエリカさんに注意されてたの思い出したかなぁ……部品や工具を足下に置いてはダメってさ」

 

「えぇ?!何擁護してんの、マユラ?!あんなのがいいの?!」

 

「なんでそっちの話になるのよー?!」

 

 マユラとアサギの二人のやり取りから改めて彼女達の精神状態の不安が無くなり、ジュリとカトリーヌは顔を見合わせながらクスクスと笑い合った。

 

 

 

 

 旧コア3エリア……ここはかつて第一次ネオジオン抗争の最終決戦の部隊となった宙域だ。

 

 派閥を分裂させたネオジオン同士による戦闘に一部の勢力・エウーゴが武力介入する形式となり、結果は歴史が残している通りのものとなった。

 

 多くのネオジオン兵士達が散っていったこの宙域には、プルやマリーダの姉妹達が散っていった場所でもある。

 

 ラプラス座標開示の為にこの宙域に近づきつつあるガランシェールの一室で、休憩をとっていたプルはいつも以上にニュータイプの感覚を研ぎ澄ましていた。

 

「近づいてる……今向かってる場所も、あの時地球で感じた場所と同じ感覚だ……」

 

 プルは以前、ガンダムバンシイからマリーダを解放する時に邂逅したもう一人のプルやベントナ達の手で造られ散っていったプルクローン達の思念を思い出していた。

 

「あたしの妹達が眠ってる場所なんだ……あの時みたいに逢えたらいいな……そっか、だから悪くない感覚してたんだ……あたし……でも、ジュピトリスが……はやく……つかない……かな……」

 

 プルはこれまでの旅路の疲れからか、ふぅっと寝落ちしてしまった。

 

 一方でジンネマンもブリッジで頬杖をつきながら、今向かう場所を思い返していた。

 

 (マリーダとプルの姉妹達が眠るエリアにラプラス座標……感慨深いもんだ)

 

「まさかこの宙域来ることになるなんてな……キャプテンも感慨深く感じていますでしょう?」

 

「ふん……よくわかるな、フラスト」

 

「わかりますよ。なにせあの場所は……今の我々にとって決して無関係ではいられない場所ですからね」

 

「一言で言えば、家族が眠る場所。毎年あの日にはここまで出向いて来ますからねぇ」

 

「あぁ……久しぶりのの墓参りだ。墓標こそはないがな……」

 

 ジンネマン達は毎年終戦の日に赴き、献花をしてきていたのだ。

 

 だが、このエリアは宙賊多発エリアという側面も持っているが為に、何時までも想い浸っているわけにはいかない。

 

「所で……今のところ周囲に変わりはないか?」

 

「はい。至って順調です。宙賊連中、やっぱりガンダムにビビってるんですかね?」

 

 ガランシェールの傍では、ガンダムジェミナス・グリープが共に航行しており、コックピットではアディンが簡易栄養ドリンクを口にくわえたままトリガーを握っていた。

 

「ふーっ……なんほなひは(なにもないな)」

 

 Gマイスター故の心の余裕からか、アディンは簡易栄養ドリンクをくわえたままひとり呟く。 

 

 レーダー上においても敵機反応を示す様子はなかった。

 

 ジンネマン達もまた、ガンダム2機とキュベレイMk-Ⅱを保有している時点で心理的余裕が生まれていた。

 

 ウィングガンダム・ゼロと同クラスのガンダムジェミナス・グリープに、実質的に現存するニュータイプ用ガンダムでは最強クラスのユニコーンガンダムがあり、更にユニコーンガンダムと共に行動できるキュベレイMk

‐Ⅱがあるのだ。

 

 しかし、皆が安心しきっている一方で、眠りについたはずのプルがはっと覚醒した。

 

 ジンネマンが手元に置いていたコーヒーを飲むタイミングで、プルが慌てた様子でブリッジに駆け込んで来る。

 

「みんな!!!凄い感じの感覚拾ったよ!!!」

 

「ぶはああっ!!?ゲホっ、ゲホっ、げほっ……急にびっくりさせるな!!」

 

「ゴメン、パパ!!でもっ、ホントにすごい感覚なの!!なんか初めてマリーダと会えた時の感覚に似てるの!!!」

 

 それを聞いたジンネマンは、ハッとして哀愁の表情に変わった。

 

「……プル!!!そうかっ……!!!そうかっ……!!!そうだ……今目指している場所には、お前の妹達が眠っている場所だ……!!!」

 

 コア3はプルの妹達が散っていった宙域であるが故にそう感じたんだとジンネマンは痛感する。

 

 だが、次の瞬間にプルの言葉から出た言葉は驚くべき言葉だった。

 

「うん!!もちろんそれも感じてた!!!でも、そういうんじゃない感覚!!!生きてるコだよ!!!でもね、同時に嫌な感じの奴らもいる!!!」

 

「何ぃ?!!」

 

「キャプテン!!!たった今、救難信号回線を受信しました!!!同時にMSの反応も!!!」

 

 更にフラストからの通達が重なる。

 

「救難信号にMS?!!回線開け!!!」

 

 フラストが信号受諾操作をすると、音声が入ってきた。

 

『ガガガッ……える……かっ!!こちら、ジュピトリスⅡ!!誰か聞こえるか!!!繰り返す!!!こちらジュピトリスⅡ!!!誰か応答してくれ!!!』

 

『怪我人もいるの!!!誰でもいいから助けてちょうだい!!!さっきから宙賊が……きゃああっ!!!』

 

「な?!!ジュピトリス?!!それに、この声は……!!?」

 

 ジンネマンは聞こえてきた声質が少女と女性であり、かつ前者は慣れ親しんだ声に似ていると気づいた。

 

 その瞬間にも、プルは飛び出すようにブリッジを出ていく。

 

「あたし、ユニコーンガンダムで出るよ(ジュピトリス……やっぱりあの時感じたのは、このことね!!それに、通信から聞こえた声、きっとあのコの声……!!!)!!!」

 

「あ、おい……!!!むぅっ……いきなり空気が忙しくなったな!!宙域の反応を改めて確認!!!」

 

「はい!!望遠映像出します!!!」

 

 フラストが望遠映像でそれを映し出した。

 

「これは……確かにジュピトリスクラスです!!周囲にも動き回るMSらしき機影も見受けられます!!!」

 

「宙賊が遂にお出ましか……機関、最大でいきますよ!!!」

 

 ギルボアがそう言いながら機関速度を上げると、ジンネマンは声を放つ者に返答を呼び掛けた。

 

「こちら、ネオジオン偽装貨物船、ガランシェール!!!そちらの救難回線を受諾した!!」

 

「キャプテン!!!偽装貨物船言っちゃダメでしょう?!!」

 

「のぉ?!!しまったぁ!!!」

 

 ジンネマンとフラストのコントめいた事が起こるのを尻目に、プルはガランシェールのMS格納庫に繋がる通路を駆ける。

 

「あのコだ……ダブリンでもう一人いたあたしと出会った時に言っていた……!!!もう一つのは……危険な感じがする宙賊達!!!」

 

 急な状況変化の中、アディンにもジンネマンに代わりフラストから通信がいく。

 

「アディン!!ジュピトリスⅡからの救難回線を受信したってよ!!プルと救出に向かえ!!ガランシェールの護衛は後回しでいいから、宙賊とドンパチしてこい!!!」

 

「救難回線にジュピトリス?!了解!!!ってわけで、ディックさん!!!……キメて来るぜ!!!」

 

「OK!!!行ってこい!!!」

 

 アディンの気合いと共に、ガンダムジェミナス・グリープが頭を持ち上げてギンと光らせると、ジュピトリスに向かって加速した。

 

 一方でプルもまた、颯爽とユニコーンガンダムのコックピットに滑り込み、手をバイオメトリクスセンサーに置いて認証起動させる。

 

「今のところ、あのコ達と宙賊の奴ら以外の感じは感じられない……多分、今の内なら大丈夫!!!トムラさん、ユニコーン出すよ!!」

 

「OK!!ゲートハッチ開けるぞ!!!」

 

 ガランシェール後部のゲートハッチが展開し、デストロイモードへと変形していくユニコーンガンダムがスタンバイする。

 

「ユニコーンガンダム、エルピー・プル!!行くよ!!!」

 

 ロックアームをパージしたユニコーンガンダムが出撃し、ガンダムジェミナス・グリープを追いかけるように加速した。

 

 ジュピトリスⅡは既にかなりの割合の区画が破壊されていた。

 

 基本的に木星公団社が運営するジュピトリスに関しての攻撃は戦争時においてすら禁じられている。

 

 この時代において木星圏でしか採取できない物資達は、民間・軍事船舶の主燃料をはじめ、地球圏の生活における極めて重要なファクターなのだ。

 

 それを襲撃している時点でテロ以外のなにものでもない。

 

 亡き父親が元々MO-5のエンジニアだったアディンも、十二分にそれを知っているが故に、その面前で起こっている行為に呆れるしかなかった。

 

「なんたってジュピトリスを攻撃しやがったんだぁ、そいつら?!!それだけ、この辺の宙賊はバカばかりかっ!!!そんなバカ連中には鉄槌が必要だな!!!」

 

 ギンと両眼を光らせたガンダムジェミナス・グリープは高速で一方的な戦端に飛び込む。

 

「おらぁ!!!ガンダムが介入するぜぇっ!!!」

 

 

 ザギュジャァアアアアッ、ディギィアアアアッッッ、ザシュバァアアアアアアンッッ!!!

 

 ドォドドゴバァアアアアアアアアアアッッ!!!

 

 

 

 挨拶代わりにガンダムジェミナス・グリープは、三連続のビームランスの斬撃で宙賊カスタムされたギラドーガとリゼル、ジェガンを斬り刻んでみせた。

 

 更にズサ、リーオー、ジェガンカスタムがビームライフルで応戦するも、同じようにビームランスの連続斬撃により、宇宙のデブリと化す。

 

「やけに比較的新しい機体が混じってるな……切り捨てられた元連邦も混じってるのかぁ?」

 

 ガンダムジェミナス・グリープを視認した宙賊のMS達は、ガンダムに標的を変更して無謀にも攻め立てようとしてきた。

 

 リゲルグとスタークジェガン、ザクⅢがそれぞれの火器を放つ。

 

 ビームやミサイル、バズーカ、メガ粒子砲を浴びに浴びせる。

 

 だが、その攻撃は中るはずもなく躱しに躱されていき、彼らが気づけば懐にガンダムジェミナス・グリープがいる状況だった。

 

 

 

 ザズバァアアアアアアアンッ!!!

 

 ドゴバァアアアアアアアアッ!!!

 

 

 ジャキィッ、ヴゥッッ……ヴァズダァアアアアアアアアアアアアァァァァッッ!!!!

 

 

 

 一瞬でリゲルグが爆発四散し、直後にメガ・パーティカルバスターのビーム渦流が放たれる。

 

 瞬く間にスタークジェガンとザクⅢはビーム渦流に火器消され、更にその奥で展開していたバウとリーオー、シュツルムディアスを同時にビーム渦流に巻き込んで破壊した。

 

「へっ……秒で全滅するぜぇ?!さぁ、どうするんだぁ?!」

 

 更にガンダムジェミナス・グリープの攻めは続き、回し斬りや袈裟斬り、機体を回転させながらの回転斬り、そして再びメガ・パーティカルバスターを放つ。

 

 ガンダムジェミナス・グリープの攻勢に、宙賊サイドのMS達は成す統べなく次々に破壊されていく。

 

 その最中、ジュピトリスⅡの破損した一部船体に集中する多数のビームがはしる。

 

 直撃部が赤熱化して爆発に繋がった結果、爆発を重ねながらヘリウム格納庫が切り離された。

 

 その爆発を突き抜けて、MAクラスのサイコ・ドーガが姿を表した。

 

 ネオジオンのMA、αアジールをMSサイズにしたかのような機体だ。

 

 更にサイコ・ドーガと共にサイコ・ギラ・ドーガ6機が、証拠隠滅のように各所でファンネルによる連続攻撃をジュピトリスⅡに向けて慣行していき、この攻撃が更なる被害を拡大させていく。

 

「ニュータイプ機?!!宙賊にニュータイプがいやがるのかぁ?!!」

 

 ギンとモノアイを光らせると、サイコ・ドーガはガンダムジェミナス・グリープに向け、ファンネルビットを一斉に射撃した。

 

 初発の直撃を受けるも、リフレクトシールドにより威力はほぼ無効化だった。

 

 更に展開していた3機のサイコ・ギラ・ドーガが僚機に加わり、四方八方からのファンネルビットのビーム攻撃が展開し始め、攻撃の雨嵐にアディンは、うざさと苛立ちを覚えはじめる。

 

「っ……あっ~!!!うぜーっ!!!」

 

 アディンは苛立ちを吐き飛ばすかのように、メガ・パーティカルバスターを撃ち放った。

 

 その間にもジュピトリスⅡの各所で誘爆発が相次ぎ引きおこり、外観上においても犠牲者が多く出始めてきているのが見て取れる。

 

「もっと速くっ、ユニコーン!!!せめてっ、あたしの感じを感じれるあのコは絶対に助けたい!!!あッ……!!!」

 

 ユニコーンガンダムを飛ばすプルにニュータイプの直観がはしると、次の瞬間ファンネルの攻撃が襲い掛かってきた。

 

 だが、プルの力の影響で起動後のユニコーンガンダムは常にNT-Dが覚醒状態で発動している。

 

 華麗なる鮮やかな軌道でファンネルビットが放ち続けるビームを躱し、左右のアームをかざしながら発動させた両腕のビームサーベルでサイコ・ギラ・ドーガに斬り掛かった。

 

「あなたは、邪魔ぁッッ!!!」

 

 

 

 ザシュバッ、ズシュバアアアアアアアンッ!!! ズドォガアアアアアッッ!!!

 

 

 

 瞬時にレフトアームと下半身、頭部を斬撃破壊されるサイコ・ギラ・ドーガだが、爆発することなく宇宙空間に漂い流れていく。

 

 一方でアディンが放った一撃は4機に中ることなく躱されていた。

 

 ビーム過流を躱した宙賊ニュータイプ達は、ファンネルと同時にビームマシンガンや胸部メガ粒子砲を撃ち放つ。

 

 この集中砲火を受けながらも、アディンは余裕の笑みを見せた。

 

「へっ……じゃあ、そろそろ本気で避けてみるか??」

 

 アディンは、ガンダムジェミナス・グリープのメガ・パーティカルバスターのトリガーユニットを外しながら機体背部に装着させ、機能をメガ・パーティカルブースターに切り替えさせた。

 

 こうすることでダイレクトにGNDソニックドライヴァーからの出力を得られ、驚異的かつ破格な機動力を得るのだ。

 

 次のファンネル総攻撃の瞬間、ビーム攻撃の軌道内からガンダムジェミナス・グリープが出発的に移動した。

 

 ニュータイプの読みすらも見越したハイスピードレンジの回避が可能となったガンダムジェミナス・グリープは、サイコ・ドーガやサイコ・ギラ・ドーガの攻撃を次々と回避して見せる。

 

 ニュータイプの能力で直観的に「ここだ」と読んだポイントにファンネルビットの攻撃が向かう。

 

 だが、直撃の前にガンダムジェミナス・グリープの機体速度がビームの速度を超越しているのだ。

 

「アディン!!」

 

「プル!!こいつらニュータイプだ!!ユニコーンガンダムの力で一まとめ頼むぜ!!!」

 

 更にそこにプルのユニコーンガンダムが介入し、NT‐Dのサイコフィールドを展開する。

 

「任せて!!!嫌な奴ら、これ以上邪魔しないで!!!」

 

 マニピュレーターをかざしたユニコーンガンダムが放つサイコフィールドは、一気にサイコ・ドーガやサイコ・ギラ・ドーガのファンネルをジャックし、各々の機体に攻撃のブーメランを返す。

 

 

 

 ビイギュインッ!!! ビギィンッ、ビイギュインッ、ビギュイッ、ヴィビビビビビビビビギュイィィィ!!!

 

 ドヲドォドォドォドォドォドォドォゴゴッゴゴゴバアアアアアンッッ!!!

 

 

 

 プルの意志に反応したファンネルのその総攻撃は、各関節ジョイント部のみに直撃しており、コックピットや誘爆の引き金になる部位への攻撃は避けられていた。

 

 それが彼女の戦い方だった。

 

 だが、まだサイコ・ドーガには胸部メガ・粒子砲があり、苦し紛れに放った一撃がジュピトリスⅡに更なる痛恨の一撃を加えてしまった。

 

「やろう……!!!やりやがったッ!!!」

 

「いけないッ、このままじゃッ……!!!あなたにはこうするしかないのねッ……ええええいッッ!!!」

 

 両腕のビームサーベルを発動させたユニコーンガンダムはサイコ・ドーガに飛び込み、胸部面を回転しながら輪斬りにし、止めに殴るように頭部ユニットにビームサーベルを突き刺した。

 

 

 

 ズバシュウウウウウウッッ……ザシュガアアアアアアアアアッッ!!!

 

 

 

 

 頭部を破壊されたサイコ・ドーガは頭部周りで小爆発を起こしながら機能を停止させた。

 

「……間に合って!!!」

 

「プル?!」

 

 プルは間髪入れずに意識が示す方にユニコーンガンダムを向かわせ、意識を集中させながらさらに被害を拡大させていくジュピトリスⅡの側面を駆け抜ける。

 

 全周モニター上に映る船体は、先ほどのサイコ・ドーガの放ったメガ粒子砲の一撃で赤熱化かつ爆発を繰り返しさせながら瓦解していく。

 

 一刻の猶予も無くなっていた。

 

 プルはテレパシーに近い能力で、感覚を示すブロックに接近しながら語り掛けた。

 

 

 

(あなたなら、あたしのこの声が聞こえるはず……聞こえていますか?!!)

 

 

(あたしの意識に声ッ……あ、ああ!!!聴こえる!!!あたしが解るのかッ……!!!)

 

 

(うん、感覚的に解るヨ!!頑張って!!!今、あたしはあなたを感じるところまで向かっているから!!!)

 

 

(あたし達は脱出艇に何とか乗り込めたんだが、こんな時にさっきの爆発の衝撃で推進機が壊れた。自力でジュピトリスⅡから離れられない)

 

 

(そんな?!!でも、絶対に助ける!!!)

 

 

 帰ってきたその声は確かにプルの性質に非常に似た声であった。

 

 プル自身は、ダブリンでのニュータイプの奇跡的邂逅の中で知ったマリーダ以外の姉妹なのだと確信する。

 

 だが、同時に一刻の猶予もない状況を突き付けられた。

 

 彼女達が乗り込んでいる脱出艇が爆発に巻き込まれるのは時間の問題だ。

 

 その一方でも、切り離されたヘリウムコンテナ区画を強奪していく宙賊の姿も見受けられ、RジャジャやガルスJ、ドライセン、ズサカスタムといったネオジオン系の機体達がそれらを回収し、離脱しようとしていた。

 

 その中には2機のサイコ・ギラ・ドーガも確認でき、この光景をガランシェールのクルー達も視認しており、フラストがジンネマンに言う。

 

「キャプテン。奴ら、やはりヘリウムの強奪が目的だったようですね。切り離されたヘリウムコンテナを次々に強奪していってますよ。更にニュータイプ、もしくは強化人間もいるみたいです」

 

「あぁ。付近に潜伏先があると見る……だが、今は絶望的ながらも少しでも可能性のあるジュピトリスⅡの救助を優先とする!!!ギルボア、船体にもっと接近させるんだ!!!」

 

「了解!!でも接近し過ぎは避けます。恐らくはあの様子からして爆発するかと……!!!」

 

「それは無論だ……しかし、また地球圏に凄まじい損害を及ぼしたな……!!!それに、俺達がここに来ていなければ、間違いなく残骸だけを残して闇に葬られていただろうな……」

 

 船体の爆発が進む中、ユニコーンガンダムにMAに可変したガンダムジェミナス・グリープが近づく。

 

「アディン!!」

 

「プル!!俺のガンダムならスピードが段違いだ!!!掴まって案内してくれ!!」

 

「うん!!!ありがとう!!!」

 

 ユニコーンガンダムはガンダムジェミナス・グリープのリフレクト・ウィングバインダーに掴まり、その機体を委ねた。

 

 同じ頃、脱出艇が取り残された区画にも誘爆が迫っていた。

 

 最早一秒の猶予すら危ぶまれる状況に晒されていた。

 

 そんな所に思いもよらないMSが姿を現し、その脱出艇に近づく。

 

 そのMSとはアッガイであった。

 

 旧世代かつ水陸両用のMSが宇宙空間に現れるという摩訶不思議な状況である。

 

 そのアッガイは適度な力加減で脱出艇をクローで掴み、その場から離脱をする。

 

 アディンとプルが到達する時、二人のモニター上にもそのアッガイが確認できた。

 

「あれだよ!!!アディン!!!」

 

「いいい?!!アッガイ?!!なんで宇宙に水中用MSがいるんだ?!!」

 

「そんなコトどーでもいいよ!!!あのアッガイが掴んでる脱出艇……あれに、あたしが感じているコが乗ってる……!!!ガランシェールまで案内してあげよう!!!」

 

「他の人達は?!!」

 

「あのアッガイの人と脱出艇の人達以外はダメ……感じ取れても……もう……生きてはいない叫びが聞こえるだけなの……!!!」

 

 アディンはハッとなり、プルのメンタルオーバーを配慮してニュータイプの感覚を無理強いさせるのを止める。

 

「プルッ、わかった!!!これ以上無理して感じ取ろうとするな……!!!僅かでも救えれることができたんだ……」

 

 2機がアッガイを先導して離脱を始めた矢先、プルに危機感的な直感が過る。

 

「っ……?!?!いけないっ!!!」

 

 プルは咄嗟にアッガイの背後に回り、その背部を押し出すように急速離脱を始めた。

 

「アディンも早く離脱して!!!」

 

「あ?!?ああ……!!!」

 

 そのわずか数秒後、高熱源アラートが鳴り響いた。

 

 その直後ジュピトリスⅡに更なる巨大なビーム渦流が襲いかかり、連続爆発を起こし続ける船体を一気に破砕轟沈させていった。

 

「な……?!?まだ別にいやがる!!!?」

 

「ヒドイ……!!!コア3の方からだっ……!!!やな感じがするっ……すごくね!!!」

 

 プルはモニターの向こうにあるコア3方面を見ながら感じる悪しき存在を睨んだ。

 

 

 

 かくして、ジュピトリスⅡの生き残った僅かな人員を保護するような形でアディンとプルはガランシェールに合流した。

 

 アッガイからは体格が大きいモヒカン風の中年男性が、救出された脱出艇からは乗組員の青年と女性、メカニックの少年、そしてニュータイプ用ノーマルスーツを着た少女がそれぞれガランシェール内に招かれていた。

 

 だが、青年の方は至る所を負傷しており、一刻も早い処置が必要だった。

 

「ジュドー!!しっかり!!あたし達、助かったんだから!!」

 

「あ……あぁ。みたいだな、ルー……」

 

 その男女とはかつて第一次ネオジオン抗争を戦い抜いたジュドー・アーシターとルー・ルカであった。

 

 ルーともう一人メカニックの少年に担がれながらジュドーは格納庫の通路に出た。

 

「ジュドーさん、もう一息頑張りましょう!!」

 

「そうだな、シェルド……けどまさかまた彼女に助けられるなんてな……不思議だぜ……」

 

「え?!」

 

「なあに……昔を思い出したのさ……今回もありがとな」

 

 ジュドーはふと後ろにいるニュータイプ用ノーマルスーツの少女に振り返りながら言った。

 

 彼女はメットを被ったままであったが、どこか恥ずかし気に視線を逸らすような仕草をした。

 

「あ、あたしは別に……ジュドーは今は自分の状況を心配しろよな……それに、本当に助けたのは……」

 

 彼らの許へ早速、彼らをガランシェールの責任者として、ジンネマンが手を貸した。

 

「こいつはいかんな……軍医はあいにく不在だが、処置はできる……アディンも手を貸してくれ!!まずは担架だ!!担架!!医務室へ運ぶ!!」

 

「OK!!」

 

「……どうもすんません……くぅっ!!」

 

「ジュドー!!」

 

「後は俺達で運ぶ!!しかし、とんでもない災難だったな。しがない輸送船だがまずは休んでくれ。プル!!案内してやってくれ!!」

 

「え―――??」

 

 ジュドーとルーは信じられない表情を見せてジンネマンが指示を向けた方向を見た。

 

「嘘、でしょ……あのコが生きて……そんなはずは……?!!」

 

「ぷ、プルなのか……あの?!!」

 

「え?!に、似てるっっ?!!」

 

 メカニックの少年、シェルドもまた動揺する素振りで、ニュータイプ用ノーマルスーツの少女の方を見る。

 

 彼女はぷいっとするように明後日の方向に首を向けた。

 

 三人に駆け寄って来たプルは何気ないように彼らを案内する。

 

「それじゃぁ、あたしが休憩室まで案内するから!!ついてきて!!」

 

 担架の準備を待つジュドーとプルに案内されたルー達は呆気にとられたままそれぞれに別れた。

 

 先導するプルは、少し振り返りながらクスっと笑ってみせる。

 

 一方、ジュピトリスⅡから出てきたアッガイも収容され、ディックとトムラが興味津々に出迎えていた。

 

「こいつはまたトンでもないMSが出てきたな!!」

 

「何てレアだ……!!!宇宙用に改造したアッガイかぁ……!!!」

 

「珍しいでしょ?自分、アッガイ好きなんですわぁ。この機体は勿論一年戦争の時のもんなんやけどね、ジュピトリスⅡの中で近代改修施して、宇宙で使えるようにいじり倒したんよ。あ、私コニーマン・コニシっていうもんですぅ」

 

 アッガイの操縦士コニーマンは、話せば西JAPエリア方面の親しみある口調で話し出した。

 

「いやぁ、ほんま助かりましたわぁ!!!私もね、実際結構危なかったんよ、ほんまに……今回の一件で大勢の乗組員仲間が逝ってはりましたわ……いやぁ、ほんまに赦せませんわ、宙賊の奴らは……!!!」

 

「この度は……心中お察し致ししますよ。俺はトムラ。この船、ガランシェールのメカニックをやっている。よろしく、コニーマン!!」

 

「今はこの船で世話なってるメカニック、ディックだ!!」

 

「よろしゅう、お二人さん!」

 

 トムラとディックがコニーマンと握手を交わす一方、担架でジュドーを運ぶアディンとジンネマンにジュドーが、痛みに苛まれる中、当然ながらの問いかけをする。

 

 何故ならば彼はかつての戦争でプルと共に過ごした事があるからだ。

 

「……な、なぁ……さっきのコ、プルって言ってたけどさ……うっ……本当にプルなのか??」

 

「え?!!お兄さん、プルを知ってんの?!!え??どこのコロニーで会ったんだ??一緒に行動してた俺は記憶にないぞ??」

 

 そう反応するアディンに、ジンネマンが補足的に説明した。

 

「アディン。恐らくこの兄ちゃんが言っているのは、先の大戦の時のプルの事だろう。ケガ人にあれこれ問いだすのも余りいいものではないが、兄ちゃんは第一次ネオジオン抗争経験者か?」

 

「あ、ああ。そうだよ。俺達はアーガマに乗ってあっちこっち転戦していた。その中で出会って、うくっ……別れた……あのコは俺をかばって……戦死してしまった。複雑な運命に彼女は……」

 

「そうか……やはり対面があったか。これも深い縁かもな。ちなみにさっきいたプルは、紛れもなくエルピー・プルだ」

 

「どういう……ことなんです??」

 

「強いて言えば、『もう一人いたプル』かな?俺が初めて彼女に会った時はオーガスタ研究所から彼女を救出する時だった。今は15歳くらいだけど、当時は13歳くらいで……コールドスリープを断続的にされてしまっていたらしい……」

 

 アディンのその答えに続くようにジンネマンもジュドーに続きを答えた。

 

「今となっては詳細はわからないが、あのコがいた場所が場所なだけに、生粋のプルのクローンなのだろうと俺は思っている。もしくは生粋の双子の片割れか……だが……いずれにせよクローンであれ、ないであれ、今は俺の大切な娘さ。そういえば、助けたメンバーにニュータイプ用ノーマルスーツの少女がいたが……」

 

「はい……彼女は……」

 

 一方で休憩室に案内する最中、ルーもまたプルに質問を投げかけていた。

 

「あなたって、本当にプルなの?!!」

 

「そだよ?あたしはエルピー・プル。以前はオーガスタ研究所にずっといたんだけど、すごい色々あって今はこの船で住んでる」

 

「じゃあ、このコが意思を通じ合わせていたのはあなただったということ?あ、何かごめんなさい、お礼の前に驚きの方が大きくなってしまって……改めてお礼を言うわ。ありがとう」

 

「絶対に助けたかったから助けたの。感じ取れた妹が死ぬなんて嫌だったし、できることやれることをしたかったから……まぁ、それはそれで……」

 

 プルは三人に振り向きながら立ち止まると、ニュータイプ用ノーマルスーツの少女に問いかけた。

 

「恥ずかしがってないでさ、そろそろメット脱いでよ?プルツー」

 

「ふ……何でもお見通しか……ふふっ、お互いに意思を通じ合えていたから当然か」

 

 プルに名を呼ばれたプルツーはメットを取り、その瞬間に髪が凛と僅かになびく。

 

「あ……!!」

 

 その仕草をみていたシェルドは何気に赤くなっていた。

 

「今回の一件は助かった……導いてくれてありがとう。でも本当に驚きだ。もう一人プルがいたなんて……」

 

「あたしもこんなに早く会えるなんて思わなかった。とある理由からあたし、プルツーのコト知ってさ……木星で頑張ってるって……ずっと会いたかった」

 

「プル……目の前のプルがあの日のプルじゃないのはわかってる……でも、ずっと謝りたかった……取返しなんて到底不可能だけど……でも……!!!」

 

 かつての過ちを悔いるプルツーにプルは首を振る。

 

「いいの。もう、過ちに囚われる事なんてないよ。あたしも、もう一人のあたしから聞かされたんだ。彼女もあなたのこと応援していることを……」

 

「プルが?!!それはどこで?!!」

 

「ダブリンに行くことになった時……不思議な体験をしたんだ」

 

「ダブリン……!!?そうかっ……!!!」

 

「後ね、もう一人いるんだ!あたし達の妹が!!いつか必ず会わせてあげたい!!」

 

 今のプルがプルツーとの再会に、もう一つ叶えたい事……それはマリーダとプルツーを会わせる事だった。

 

 プルのその言葉と希望にプルツーは良い衝撃を受けた。

 

「妹っ……!!?いるのか、妹が?!?」

 

「うん!!名前はマリーダって言って、今は色々あって地球に行っているんだけどね。最終的にはまた合流するつもりでお互い行動してるんだ!」

 

「そうか……マリーダか……会ってみたいな」

 

 それらの事を知ったルーはプルツーの肩に手を据え置きながらプルツーにとっての吉報に喜びをみせた。

 

「よかったじゃない、プルツー!どうあれ、これもあたし達を追いかけてきたから得られた奇跡なんだから!あなただけでも今は喜んでいいんじゃない?」

 

「ルー……ありがと。けど、今回の一件で世話になった多くの人達が……あたしだけってのも……」

 

 プルツーは今回の状況下で自分だけ幸せを得るのは罪悪だと自らの幸せを拒む。

 

 すると今度はシェルドが鼻頭をかじりながらちらちらとプルツーに視線を送って口を開いた。

 

「確かにそうだけどさ……僕はルーさんの言ってることも合ってると思うよ。一度に二人の姉妹に会えたんだからさ……それに、できれば僕も力になりたい……かな?」

 

 これに対しプルツーは満更でもないような反応を一瞬だけ見せ、ダメ出しに口を走らせる。

 

「き、気持ちは嬉しいが……機付長代理のお前がどうやって力になれるんだ?あたしの問題よりもお前は今の状況の事の方に気を向かせるべきじゃないのか??」

 

「うっ……プルツー……うぅー……」

 

「『うー』じゃない!!あんたも男なんだからさ、シャキッとしろよ!!まったく!!いい加減ジュドー見習いな!!」

 

 縮こまるシェルドを突き放すように言うプルツーであるが、そんな彼女の言動を見ていたプルはニコニコと、一方のルーはニヤニヤしはじめていた。

 

「な、なんだよ?!二人とも?!」

 

「プルツー、ツンデレ屋さんなんだね!!」

 

「そーなのよー、このコいつも素直じゃないのよー!!」

 

 二人の言動にプルツーは真向から赤面気味に反発した。

 

「う、うるさいな!!何がツンデレだ!!こんな弱キャラにどうやってデレるっていうんだ?!」

 

「女の子には母性本能っていうのがるんだよー。あたしはプルツーの心読めちゃってるから丸わかりだよー。ただでさえ姉妹なんだしー」

 

「なっ……!!!くっ……てか、ここで立無駄話をいつまで続ける気だ?!!さっさと客室に案内しろよ!!それがプルの今のやることだろ!!?」

 

「あははー、そうだったねー☆じゃあ、いこっかー」

 

「なんか腹立つ言い方だなっ……せっかくできた対面と今さっきの感動を返せ!!」

 

 どこかプルが一枚上手かつプルツーの一方的なような姉妹喧嘩の流れになってしまい、たじろぎ気味にシェルドはルーに言う。

 

「ルーさん、早速姉妹喧嘩が……僕のせいだったのかな?」

 

「いい事じゃなぁい。感動の対面からあっという間に喧嘩できるほど仲がイイって証拠よ。シェルドのせいって言えば否定しきれないけど……」

 

 そう言いかけるとやや小声気味に言いなおしながらルーはシェルドに言い続けた。

 

「言い換えれば、あんなにプルツーがムキになるくらいあなたは意識されてんのよ!!喜びなさい!!」

 

「そ、そうなんですか?!!でもやっぱり実際に自分がそう言われると、プルツーの言っている事も確かだなって……個人の喜びが許されるのかな??」

 

「シェルド……今は少しでもポジティブにいきましょ?あたし達が助かった意味って何かしらあるんだから、成せれなかったみんなの為に進まなきゃならないんだからさ!!」

 

「ルーさん……はい(なんてポジティブ……)」

 

 その時も、先頭のプルとプルツーは言い合う中で先ほどの嫌な感覚を感じ取っていた。

 

「感じてた?!プルツー……!!!」

 

「あ、ああ。この先に嫌な奴らが……いる!!」

 

「……でも、任せて。今ここにあるガンダムならやれるから!!」

 

 プルツーはガランシェールに入る際に見た2機のガンダムを過らせた。

 

「あのガンダムの事か……!!!」

 

 プルは頷くサインを見せると、客室を目指した。

 

 その先にあるコア3跡には先ほどの襲撃を行った部隊や更に待機していたMS達が展開しており、コア3は最早宙賊達のアジト的要塞と化していた。

 

 そこへ巨大なコンテナを引っ提げ、護衛のMSと共に灰色のMSが入って来た。

 

「リーダー!!計画どおり、今年帰港予定のジュピトリスⅡからヘリウム強奪できやした!!!」

 

「そうか、そうかっ!!でかしたなぁ!!!こっちも闇のスポンサー様からブツをもらってきた……」

 

 キルヴァに負けず劣らずの狂気的な表情をした青年が乗ってきたのは、オーソドックスなガンダムをコアとする巨大なアームドベースだった。

 

 「このガンダムアレックスを近代改修したよーなトリスタンもそりゃまぁいい機体だが……こいつはもっといい!!!俺達を強化人間の実験体として宇宙に捨てやがったこの世界に対して暴れる時が来たんだぁ……!!!記念に試し撃ちしてやったぜ!!!」

 

 その青年は狂気の笑みを浮かべながら、集う手下達に言い放つ。

 

「たった今、俺達は強大な力を手に入れた!!!早速だがヘリウム爆弾の製造と、デカブツの最終調整にかかれ!!!俺達を捨てた宇宙世紀の世界に対する復讐の時は今日だっっ!!!」

 

「おおおっっ!!!」

 

「……ブルーメンツのスポンサー様の息がかかっているからなぁ……少なくとも連中は認めたわけだ、俺達をな……!!!見ていろぉ……俺達ヴィジランテが、俺様クァンタン・フェルモ様が世界に決起する!!!」

 

 OZの図式が二分する激動の中、密かに別勢力が狂気を持って動こうとしていた。

 

 

 

 To Be Next Episode

 

 

 

 次回予告

 

 

 轟沈していったジュピトリスⅡから救えたのは僅かな人数だった。

 

 その中にはかつての第一次ネオジオン抗争経験者である、ジュドーとルー、そしてプルツーがいた。

 

 負傷したジュドーの手当を終えたジンネマン達は、木星公社社員である彼らを保護しながらの今後の行動を議論するが、ラプラス座標が示すコア3ではクァンタン率いる宙賊集団・ヴィジランテが狂気の行動を画策していた。 

 

 一方、南JAPを目指すネェル・アーガマでは、戦士達やクルー達にひと時の休息の時間が流れる。

 

 だがその最中、ネェル・アーガマは日本へ向かう敵機を捕捉する。

 

 それはMD部隊を引き連れた、ラボコロニーでガンダム達を追い詰めたあの3機と新たなガンダムだった。

 

 OZ静浜基地に集結したOZへの攻撃と読んだケネスは先制攻撃の判断をし、デュオ、トロワ、カトル、マフティー達が出撃する。

 

 アディンとプルもまた、ヴィジランテの凶行阻止の為、コア3へと戦いに身を投じていった。

 

 そして、クァンタンが駆るアームドベース、クレヴェナールが二人に立ちはだかる。

 

 

 次回、新機動闘争記ガンダムW LIBERTY

 

 

 エピソード44 「同時戦端」

 

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。