新機動闘争記ガンダムW LIBERTY   作:さじたりうす

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オペレーション・メテオを発動させて以降、ウィングガンダム以外のガンダム達は各々に各地の連邦・OZの施設や勢力域に攻撃を次々と仕掛けていた。

ヒイロはマリーダやオルタンシアクルーの手を借りながらウィングガンダムの修理を続け、その中で、ヒイロとマリーダは少しずつ心をかよわせる。

メテオ・ブレイクス・ヘルが動く一方で、地球に降りたネオジオンもまた、破壊活動の動きを見せていた…


エピソード4 「閃光と彗星の激突」

メテオ・ブレイクス・ヘル所属輸送機。

 

デュオやアディン達を乗せたこの輸送機は、ハワードのオルタンシアへの進路をとっていた。

 

操縦席ではラルフが向かってくる空を見ながら、ひたすら操縦に集中していた。

 

(オルタンシアへ召集か……確かにあの超大型サルベージ船ならガンダムを匿うには違和感はないな。一応は正式なサルベージ船だからな。それにあのプルっていうコを保護してもらうには合理的な場所だ)

 

そこへ、オデルが操縦席へと入室する。

 

「ラルフ、入るぞ」

 

「どうした?」

 

補佐席へ座りながらオデルは用件を話し始めた。

 

「今の進路はハワイを通過するか?どうせなら任務を片付けながらオルタンシアへ向かった方が効率的にいいと思ってな。軍事工場とスペースポート破壊の任務がある」

 

「そういうことか。なら問題ない。今そのコースで向かっている」

 

「じゃあ決まりだな。デュオには話してある」

 

「ん?アディンは?」

 

「只今ジェミナスのコックピットでデート中。後でデュオが伝えてくれると言っていたよ」

 

「ははは、デートかっ」

 

オーガスタから保護したプルはそれ以降、アディンになついて彼の許を離れなかった。

 

ガンダムジェミナス01のコックピット内では、ゲーム感覚で戦闘シュミレーションをするプルがいた。

 

戦闘データをインストールして、それに基づいた敵機で戦闘訓練するシステムだ。

 

プルが座るシートの後ろで、アディンが立会う。

 

「それそれ!!墜ちちゃえ~!!」

 

プルはニュータイプとされているだけあり、シュミレーションとはいえ、既に10機以上の敵機を撃破していた。

 

ちなみにモードはハードの常態だ。

 

アディンは、プルの能力に目を見張っていた。

 

「すげーな、プル!!ハードモードで、もうこんなに撃破してるぜ」

 

「もっと倒すからごほうびにプァフェちょーだい!パフェ!」

 

デザートのパフェが好きらしく、プルはパフェをアディンにねだるが、無論輸送機にあるわけがない。

 

「はぁー?あいにく輸送機内にはねーよ、そんなもん」

 

「アディンのいじわる!!」

 

「しょーがねーだろ!でも、これから俺達は一度でかい船に集まるんだ。そこでだったらあるかもな……」

 

「本当?!やった♪」

 

「ほら、次の敵機が来るぞ」

 

「ほーい!パフェパフェー!!」

 

スタークジェガンが目の前からビームサーベルで斬りかかって突っ込んでくる。

 

更に後方よりリゼルが空中より攻撃をかけ、ロトが援護射撃を開始する。

 

これに対し、プルは嬉しそうにガンダムジェミナスを操作して、攻めに転じた。

 

「見えるよ!!それっ!!」

 

スタークジェガンのビームサーベルをシールドで捌き、アクセラレートライフルで零距離射撃して撃破。

 

画面スクリーンが、機体を上昇させた常態を映しだし、空中よりアクセラレートライフルを放つビームの映像が映る。

 

瞬く間に3機、更に攻撃をかけてきた3機のエアリーズを攻撃をかわしながら撃ち墜とした。

 

「楽々ー!!」

 

「並大抵のコができる技じゃねーな!」

 

そこへデュオから軽いのりの通信が入る。

 

「デートはどーだい?邪魔したか!?」

 

無論、アディンは否定するが、何故か赤面していた。

 

「馬鹿か!?何がデートだ!!」

 

「そームキになんなよ!オルタンシアへ行くついでにハワイを満喫していかねーか?」

 

「ハワイ!?」

 

「でか船に乗る前の息抜きでな。効率的にもいい。オデルの兄貴の提案だ……満喫場所は二手に別れるがどーだ?」

 

デュオは任務関係の事を、よく何かに喩えながら冗談混じりに言ってみせることが多い。

 

アディンはすぐに事を察し、比喩と冗談混じりに返す。

 

「そーいうことか……いいぜ!トロピカルにキメようぜ!!」

 

すると更にデュオは冗談混じりにアディンをからかった。

 

「ああ!!けど、プルの水着は見れないからな!がっかりすんなよ!」

 

「ぶぅわかかっっ!!!何が水着だぁああ!!!!まぁー…てわけでプル、これが終わったらシステムを切る。今日は終了!!」

 

「え~……でも、わかった!気を付けてね、アディン!」

 

戦闘シュミレーションをしながらプルはアディンの任務中の無事を気遣う。

 

デュオとの付き合いがあるアディンならまだしも、会って間もないプルがデュオのジョークを理解したのだ。

 

アディンは一瞬、唖然となるが、彼女がニュータイプということを思い出すと不思議に納得し、サムズアップして答えてみせた。

 

「―――ああ、もちろんだ!!Gマイスターは伊達じゃないぜ!!」

 

 

 

 

メテオ・ブレイクス・ヘルが連邦の軍事施設や勢力に対して攻撃をかける一方で、ネオジオンもまた連邦政府に対して攻撃をかけていた。

 

 

 

北米・地球連邦軍オークリー基地

 

 

 

ジムⅢやネモの部隊がビームライフルを放って応戦していた。

 

ビームを放った先には、各部所をカスタマイズしたジオン残党のザクⅡ達がいた。

 

ザクマシンガン、マゼラ砲といった旧式な武装でオークリー基地に対して攻め混む。

 

幾つかがジムⅢやネモに中るが、シールドや腕を破壊させるに止まる。

 

飛び交う実弾とビームの攻防。

 

無論、連邦側に軍配が上がり、徐々にザク達が被弾を食らい、撃破されていく。

 

その後方からホバー走行しながらビームをかわしていくバフカラーのヤクトドーガと、ビームライフルを構えながら迫るザクⅢの姿があった。

 

彼らもマリーダやフロンタル同様、オペレーション・ファントムで地球へ降下したネオジオンの戦士達だった。

 

ヤクトドーガはビームマシンガンを放ちながらファンネルを展開させて攻撃をかける。

 

ビームマシンガンで、ドドギャンと装甲を破壊されたネモが倒れ込んで爆発し、ジムⅢ2機をファンネルの

火線が射ぬいて爆発させる。

 

先代の屍を越えて、ザクⅢがビームライフルを放ちながら口からメガ粒子火線を撃ち放つ。

 

断続的に撃ち込まれる高出力のビームに2機のネモが撃破され、突き進むメガ粒子火線がジムⅢ2機を連続で射ぬいた。

 

装甲を溶かされて爆発していくジムⅢ。

 

ネオジオンの2機の戦士は、ホバー走行で回り込むように旋回しながら主武装で攻撃をかけてネモやジムⅢ達を翻弄させる。

 

応戦しながらも撃破されていく様は、先程の形勢を完全に逆転させていた。

 

その最中、基地の上を乗り越えるかのように1機のMSが跳ぶ。

 

そのMSはジムⅢ達の背後を捉えると、着地しながら空かさず両腕に装備されたナックルシールドで殴りかかる。

 

ガガゴォッと瞬間的にナックルシールドを殴り散らす。その様はボクサーのようだ。

 

装甲を陥没されたジムⅢはそのまま倒れ込んで機能不全に陥る。

 

そのMSはシュツルムガルス。オペレーション・ファントムに参加した最新鋭のネオジオンのMSだ。

 

ギロリとモノアイをネモに向け、豪快に顔面を殴打し、胸部をボディーブローで陥没させた。

 

ビームサーベルに切り換えたジムⅢがシュツルムガルスに斬りかかる。

 

だが、シュツルムガルスはナックルシールドでジムⅢのライトアームを受け止め、胸部を激しく殴り込んだ。

 

バガギャアとジムⅢはふっ飛び、これもまた機能不全に陥って動かなくなった。

 

その最中、ヤクトドーガとザクⅢの無双劇が巻き起こり、ヒイロ達のガンダムさながらの善戦を展開させて攻撃をかける。

 

オークリー基地は瞬く間に陥落。

 

ヤクトドーガとザクⅢが基地を破壊する中、止めのシュツルムガルスの一撃が、ジムⅢを撃破した。

ズンと倒れ込んだジムⅢを踏み倒すシュツルムガルス。

 

モノアイを光らせて勝利を得たその姿は、ジオンの救世主たるにふさわしかった。

 

 

 

 

欧米・ベルファウスト基地

 

 

 

地球連邦軍の港施設があるベルファウスト基地においても戦闘が起こっていた。

 

基地の警備にあたっていたジムⅡが、鋭利なクローで貫かれ爆発する。

 

それを成したのはネオジオンの水陸両用MS・ゼーズールだった。

 

モノアイを光らせて次なる獲物へと襲いかかる。

 

ネモがビームライフルの銃口を向けようと構えるが、ゼーズールは素速い動きでネモの胸部を貫いた。

 

ゼーズールは3機行動をしており、ベルファウスト基地の各所で破壊工作を行う。

 

どの機体も機動力に長けており、俊敏な動きでジムⅢ部隊に攻撃をかける。

 

轟と襲いかかる爪がジムⅢの装甲を容易く斬り裂いて破壊してみせる。

 

クローはジオン系水陸両用MSの代名詞とも言える武装だ。

 

その攻撃方は実に独特かつ合理的な攻撃手段である。

 

1機のゼーズールがジムⅢの背後を捉えた。

 

ジムⅢは振り返る余地もなく、クローでボディーを貫かれ、撃破された。

 

このような形で各地において、ネオジオンを含むジオン系の勢力が反抗行動を起こし始めていた。

 

それには、メテオ・ブレイクス・ヘルの反抗行動が発端になっていることは言うまでもなかった。

 

それにともない、偶然にもネオジオンの地球降下作戦、オペレーション・ファントムと重なったことも起因しているのもまた、事実であった。

 

名目上、未だに闘い続けている同胞達を援護すると共に、連邦軍に打撃を与えるというものであるが、真の目的があった。

 

それが、地球連邦軍の総本部が置かれているダカール攻略である。

 

各地の連邦軍への攻撃は、その布石を兼ねた破壊工作であった。

 

 

 

欧米・地球連邦軍バレンシア基地

 

 

 

真紅の機体、シナンジュがビームライフルを構え、空中からジェガンやジムⅢの部隊に狙いを定める。

 

その銃口から、高出力のビームの火線が撃ち放たれる。

 

 

 

ヴィキュオォォオオオ!!!

 

ドシュアアアアアッ………ゴヴァガアアア!!!

 

 

 

その一発はジェガンの胸部を直撃し、装甲を瞬間的に融解させて円状の風穴を空けた。

 

穿った弾痕はビームの熱でオレンジ色に焼けている。

 

直後にジェガンは爆発して砕け散った。

 

シナンジュは、連続でビームライフルを放ち、寸分の狂いもなく、ドシュドシュと狙い撃ってジムⅢ3機、ジェガン2機を爆砕してみせる。

 

その後方からギラズールカスタムが、ランケブルーノランチャーを撃ち放った。

 

 

 

ヴヴァゴォオオオオオオ!!!

 

ドドドドヴヴァガアアアアア!!!

 

 

 

地表や基地を抉るようにビーム渦流が、ジムⅢやロトのMS部隊を一掃させて駆逐する。

 

「アンジェロ、このバレンシアを陥落させたら次の連邦軍施設を叩く。今暫くは同胞に希望を与え続けねばならない!!」

 

「はい!!大佐!!ネオジオンこそ、今のジオンの象徴です!!」

 

空中を気高く舞うシナンジュとギラズールカスタム。

 

2機は最新鋭のミノフスキークラフトを常備しており、空中を飛ぶことを可能にしていた。

 

基地を駆け抜けるように、ビームライフルとランケブルーノランチャーを放って基地を壊滅へと誘っていく。

 

地上から攻撃をかけるジムⅢやロトの部隊の攻撃をかわしながら、シナンジュが狙い撃ち、ギラズールカスタムが援護する型で残存機を施設ごと破砕させる。

 

その光景は正に電光石火。

 

シナンジュは低空を高速で駆け抜け、近付くジェガンやジムⅢを次々と撃ち斃す。

 

シナンジュのビームライフルのビームは最早、収束メガ粒子砲の類いの出力である。

 

その威力のビームが、寸分の狂いもなく高速で断続的に撃ち込まれるのだ。

 

シナンジュは、回り込むように旋回。捉えたターゲットを更に次々と撃ち斃した。

 

その最中、基地の主だった施設へ向けてアンジェロは狙いを定める。

 

モニタースクリーンに基地がアップで表示された。

 

「元より大佐の戦場を汚すまいとしていたが、大佐直々に攻撃許可をくださった。全ては同胞達の為だと………」

 

そう独り言をはしらせながら、アンジェロは冷徹な笑みでトリガーを弾いた。

 

ランケブルーノランチャーがビーム渦流を撃ち放って基地の主要部へと突き進み、施設を瞬時に破砕させる。

 

そのまま銃口を左回りに旋回させて、破壊域を拡げた。

 

シナンジュは1機のロトの上に着地し、そこから捉えているジェガン2機とロト3機を撃ち斃す。

 

そして、踏み台にしているロトへと、ビームライフルの銃口を頭上に突き付けた。

 

 

 

ドシュバァアアッッ!!!

 

ヴヴァゴォオオオオオオ!!!

 

 

 

零距離射撃がロトを粉砕させた。

 

フロンタルは、基地の破壊とMS隊の壊滅をモニターで確認する。

 

「うむ………あと少しの基地の破壊で暫くはこのエリアの同胞の負担は軽くなるだろう。アンジェロ、次のターゲットはコルシカだ」

 

「はい!!」

 

「情報では、同胞達がコルシカ島の連邦軍施設に夜襲をかけるそうだ。どうやら敵の新型がロールアウトされるとの情報だが、その基地への攻撃は無謀な行動であることに変わりはない。我々が力添えせねばならん」

 

「大佐、例のガンダムは来ますかね!?」

 

「判らん………もし彼らのガンダムが来れば、その時は見定めさせてもらうまでだ。敵か否かな……」

 

フロンタルはそのままシナンジュを飛び立たせ、コルシカ基地へと向けた。

 

 

 

その頃、コルシカ基地からトールギスとユニコーンを隊長・副隊長機とした反乱ガンダム調査隊が離陸しようとしていた。

 

だがこの時、既にコルシカ基地へジオンの残党が迫っていた。

 

基地のレーダーにもそれらを捕捉していた。

 

「これは!?本基地の近海に熱源を捉えました!!識別照合………これは………MS群です!!恐らくジオン残党のモノと思われ、かなりの数が確認されています!!ボナーバ司令!!」

 

「ええい!!直ちに警戒体制を執れ!!ちょうど精鋭部隊もいる!!奴らにあたらせろ!!」

 

コルシカ基地にサイレンが鳴り響く中、トールギスのコックピットにもコルシカ基地からの情報が通達される。

 

「反乱ガンダム調査隊に告ぐ!!たった今、本基地は敵に狙われている事が判明した!!直ちにこれを迎撃せよ!!敵は基地の正面と北西から接近中!!」

 

「何!?後手に回ったか……!?だが、問題はない。先手にせよ後手にせよ………我々の力量が試せるのだ。こちら反乱ガンダム調査隊、迎撃体制を執る!!」

 

「こちらの基地からもMSを順次に出撃させる!!」

 

赤い彗星の再来の追撃に臨もうとしていたゼクスであるが、突如の敵襲に断念せざるをえなくなった。

 

だが、トールギスの力量を試せる機会に変わりはない。直ぐに思考を切り替えてゼクスは部下達に指示をした。

 

「調査隊各機に告ぐ。これより我々は海から攻めてきている敵の迎撃行動に入る!!リディ部隊は基地に待機し、海上から来る敵を迎撃!!私の部隊は北西方面から来る敵を迎撃する!!」

 

「はっ!!」

 

ワーカーやオットー達の返事を受け、ゼクスは悦びにも似た感情でコントロールレバーを押し込み、トールギスを離陸させる。

 

「さぁ………相手は変わったが、トールギスよ………私に勝利を見せてくれ!!!」

 

2基の大型バーニアを起動させてトールギスが夜空へと舞い上がる。

 

舞い上がるトールギスに続くように、ワーカーやオットー達の7機のエアリーズが甲高いジェット音を響かせて離陸する。

 

リディ達もゼクスの命令を拝命し、迎撃体制を執った。

 

「リディ機了解!!聞いての通りだ!!各機、海上の敵の迎撃行動には入れ!!」

 

「了解!!」

 

リディの命令と共に、ガロム機、ホマレ機をはじめとする7機のリゼルが飛び立ち、ホバリングしながら変形して迎撃体制を執った。

 

各機がビームライフルを構え、銃口を海上へと送る

 

「この防備に突っ込む馬鹿がいるとはな…敵連中は何を考えているのか……」

 

ユニコーンのモニタースクリーンにコルシカ基地周辺の現在状況を映し出され、リディは現状把握をした。

 

「確かに数が多い……だが、返り討ちにするまでだ!!」

 

ユニコーンは海上に向け、ビームマグナムをガキャンと構えて迎撃体制を執った。

 

 

 

その頃、オルタンシアではハワード達が月を見ながら酒を飲んでいた。彼らの仕事の後の恒例行事である。

 

「かーっ……仕事後の酒はまたたまらんのー!!」

 

「ドクターハワード!!飲みすぎないでくださいよ!!」

 

甲板に飲みスペースを作り、ビールやらつまみやら

を用意し、意気揚々と酒の時間に浸る。

 

ハワード達が酒のたしなみをしてる時にも、ヒイロはひたすらウィングガンダムの修理に没頭していた。

 

人手が足りない状況下を効率よく利用し、機体のシステムチェックをしながらコックピット内で、データの書き込みをしていた。

 

「機体のシステムチェックか?」

 

そこへマリーダがすっとコックピットを覗き込んで問いかけた。

 

ヒイロはデータベースを打ちながら答える。

 

「……ああ。今の内に全てやっておく……」

 

「そうか……だが、少しは外へ出ないか?ここの人達も外で酒を飲んでいたぞ。籠りっきりよりも地球の夜風にあたるのもいいと思うのだが……」

 

またマリーダがヒイロの作業を中断させるシチュエーションが発生する。

 

しばらくデータベースを打っていたが、ヒイロはため息をつきながらデータベースをパタンと閉じた。

 

オルタンシアの甲板で夜風に吹かれながらマリーダとヒイロは紅茶を手に月明かりが灯る夜空を見上げていた。

 

「地球から見る月は綺麗だな。夜風も心地がいい………地球はなにもかも珍しいな」

 

「……ああ」

 

マリーダはダージリンをすすると、また月を見上げた。

 

夜風が月明かりを受ける彼女の髪をなびかせる。

 

「……本当に綺麗な月だ。今頃地上で戦う同胞達も見ている頃だろう………」

 

「同胞達か………」

 

しばらくマリーダとヒイロは満天の夜空を見上げてそれぞれの想いを馳せる。

 

ジンネマン、フラスト、ギルボア、関わるネオジオンの兵士達……今のマリーダにとって家族に等しい存在を思い浮かべた。

 

そしてヒイロは、各地で戦う仲間達を思い浮かべた。

 

「私には……同胞と言うより家族に近い感じの仲間が宇宙にいる。地球へ降りるときもその仲間に送り出された……いや、もっと言えば父親に相応しい人だ」

 

「父親…」

 

マリーダはヒイロにジンネマンの事を話し始めた。

 

もとより、プルの系統の女性は気になる異性に心を許して固執する傾向があった。

 

実際にネオジオン抗争時に生きていたプルは、当時のZZのパイロットに固執していたとされている。

 

マリーダは成人女性故に極端な行動は示さないものの、ヒイロに対し心を許して積極的になりつつあった。

 

「ジンネマンという人で、私はマスターと言っている。私を救ってくれた方だ。一見は大胆で気性の荒い人のようだが、全く違う。情熱的で温かい人だ……初めて会った時からそれは解っていたがな」

 

ヒイロはダージリンを飲むマリーダの仕草を横目に、ダージリンのコップを片手で回しながら、マリーダの話に耳を傾け続けた。

 

「……私は第一次ネオジオン抗争で戦っていたが、戦線を離脱した。恐怖と哀しみの余りでな………」

 

「第一次ネオジオン抗争………やはりその頃から戦っていたのか」

 

「ああ。当時の私はプルトゥエルブというコードネームで、姉妹達と共に戦場で戦っていた」

 

マリーダは、ダージリンをこくと飲むと話しを進める。

 

「だが、姉妹達も戦いで殆んどが死んでいった。その後の私は………ひたすら闇の社会をさ迷い、身体的にも精神的にも屈辱な日々を過ごし、女性としての自我も崩壊寸前までになった…」

 

だが、女性故に明確な事までは言えず、少しはにごす。女性として異性に知られたくない部分だからだ。

 

「そんな所へマスターが救いの手を差しのべてくださった………その手がなければ………今こうしていられなかっただろう。本当に感謝している…」

 

瞳を閉じてマリーダはダージリンを飲みながらジンネマンを想う。

 

ヒイロはマリーダの話から昔世話になった人物を思い浮かべていた。

 

ヒイロの回想に浮かんだ男……彼がヒイロを戦闘のプロフェッショナルとなる礎を作ったアディン・ロウという男だ。

 

名はバーネットのアディンと同じだが、偶然であり関係はない。

 

マリーダが目を閉じている間、ヒイロは自分の過去を振り返っていた。

 

また瞳を見開いたマリーダ。この時、彼女の視線に流れ星が映った。

 

「流れ星……あれも初めて見る。そういえば、地球へ降りるときも流れ星を見た。意志のある流れ星をな。今思えばヒイロの仲間達だったのだと判る……どの星からも強い意志を感じた……」

 

「そうか……」

 

「お前達も、連邦軍を敵としている。同じコロニー側の戦士としての意味では同胞だな。ネオジオンの兵士としても、私個人としても心強い……」

 

攻撃を仕掛けられた当初からしてみれば、矛盾している発言ではあるが、今となれば互いを認識しているためになんら問題はない事を示唆していた。

 

ヒイロはダージリンをゴクっと飲み干し、穏やかな表情のマリーダに向いて言葉を放つ。

 

「俺達のガンダムは反抗の力の象徴だ。連邦とOZに対して俺達は独自に戦いを挑んでいる……そう言ってくれれば、俺達の存在意義にも強みが出る」

 

マリーダは垣間見たウィングガンダムの戦闘を思い出す。

 

バスターライフルのプラズマ渦流を射ち放って、リゼル部隊を壊滅させているビジョンや、実際に交戦したビジョンが回想する。

 

「ふふっ……そうか。ヒイロのガンダムのお陰で、私の中のガンダムの概念が変革しそうだ。だからといって昔のマインドコントロールが無くなるとは限らないが……」

 

「それに対してのアドバイスになるかは解らないが、感情で行動することが人の正しい生き方だ。マリーダがそう思えば……そのマインドコントロールを断ち切りたいのなら、その通りに思って行動すればいい」

 

ヒイロは「ガンダムは敵」というマインドコントロールにコンプレックスを感じてならないマリーダにアドバイスを言ってみせる。

 

その言葉にマリーダは軽い衝撃を受けた。

 

感情で行動することが人の正しい生き方。

 

ジンネマンからも教えられていない考えだった。

 

「感情で行動する………!」

 

「俺が昔、アディン・ロウという父親のような男から教えられたことだ………」

 

アディン・ロウという男が、かつてヒイロに諭した教えが、時を得てマリーダに継承された瞬間だった。

 

マリーダは新たな概念を教えられ、何故かヒイロに一杯食わされた感じが可笑しくなった。

 

「ふふふっ!」

 

「?」

 

「ふふふ……いや、ただ何となく可笑しくなっただけだ。ヒイロに一杯食わされた感じがしてな……」

 

「調度いい。今日明日頃に一度ここに俺達のガンダムが招集する。試してみるといい…」

 

「そうなのか!?ふふふ…なら試させてもらう。感情で行動する感覚をな」

 

「ああ…」

 

 

 

コルシカ基地

 

 

 

警戒を強めていたコルシカ基地に、ジオンの水陸両用MS達が攻め込む。

 

ズゴックE、ハイゴック、ズゴック、ゴックの四機種が、それぞれが持つビーム兵器を駆使して攻め込む。

 

対し、リゼル部隊も迎撃を開始。ジオン勢の攻撃を機動力を持ってかわしていく。

 

飛び交うビームの攻防の中、流れ弾ならぬ流れビームが基地の施設を直撃する。

 

リゼルが放つビームライフルが、攻め入る敵機に直撃する。

 

「ははは!!笑わせるぜ!!」

 

ホマレ機のリゼルが放つビームライフルが、ゴックの胸部を穿ち、爆発させてみせる。

 

「きたきたぁ!!」

 

ガロム機のリゼルが意気揚々とビームライフルを連発し、ズゴックを射ち斃す。

 

性能差は歴然としており、コルシカ基地のサポート無しでも問題はないくらいだ。

 

この攻撃の中、リディは1機のハイゴックに標準を定めた。ロック・オンマーカーがハイゴックを絞る。

 

「馬鹿達が来たか!!歓迎してやる!!!」

 

そしてユニコーンがビームマグナムを射ち放つ為のチャージを始める。

 

銃口に球体状のエネルギーを発生させた数秒後、紫と赤が混じった高出力のビームが射ち放たれた。

 

 

 

キュイィィィ………ヴィシュヴゥゥゥゥン!!!!

 

 

ヴィギュゥゥゥゥアアアア………ヴヴァガアアアア!!!

 

 

 

まさに一撃。ハイゴックのボディーを容易く撃ち抜いた直後、ハイゴックはビームの形を象られたように熔解して爆砕した。

 

バスターライフルの小型版とも言うべき兵器だ。

 

「すごいな………ユニコーン!!!」

 

リディは、ユニコーンを前進させながら眼下から来るビームをかわしていく。

 

時折直撃コースのビームが来るが、シールドをかざしてIフィールドをさせ、ビームを相殺させる。

 

そしてビームマグナムを構え、一発、一発をズゴック3機、ゴック3機に直撃させていく。

 

その様子は天上の神の制裁とも言える光景だ。

 

次々と撃ち放たれるビームマグナムのエネルギー弾丸が、ハイゴック、ズゴックE、ゴックと順に撃ち抜いていく。

 

1機のズゴックEが、ブースターで上昇してユニコーン目掛けてクローを突き上げて突っ込む。

 

だが、近距離からのビームマグナムの一撃にズヴァグアンと撃ち抜かれ無惨にズゴックEは粉砕していった。

 

 

コルシカ基地の周辺・北西方面

 

 

 

コルシカ基地から北西方面へ進んだエリアの上空。

 

トールギスを筆頭にエアリーズ達が三角の字の配列で続く。

 

各機が放つジェット音がスピード感を伝えてくれる。

 

トールギスのコックピット内。ゼクスがモニタースクリーンに映る敵影のレーダーを注視する。

 

すると敵影を示す赤い点状の表示が現れ始めた。

 

「敵影が迫ってきた。各機、戦闘体制には入れ!」

 

「了解!!」

 

各機が戦闘体制に入り、ビームチェーンガンとミサイルランチャーをスタンバイさせた。

 

ギュゴアッと加速するトールギスとエアリーズ。

 

トールギスの加速は高速飛行をするエアリーズを一瞬で引き離した。

 

ワーカーやオットーもそのトールギスの姿を勇ましく捉える。

 

「流石はトールギス!!凄い加速だ!!」

 

「おぉ……!!まさしく、ライトニング・バロン!!!」

 

この時ゼクスの身に異状を感じていた。

 

「ぐっ………!!!!なんという加速だ!!!!体が………持つのか!??だが………どんな機体だろうと………乗りこなしてこその………!!!!」

 

加速による強烈なGによるものだった。

 

だが、ライトニング・バロンのプライドがゼクスを突き動かす。

 

「ライトニング・バロンだ!!!!」

 

気迫と共に、トールギスを加速させるゼクス。

 

更なるGがゼクスの身を襲う。

 

最早、気迫が体を凌駕するか否かが生死を別けると言っても過言ではなかった。

 

「おぉおぉぉっっっ!!!!」

 

ギュバゴッと二基のバーニアがゼクスの意思に答えるようにトールギスを加速させた。

 

眼下の地表が高速で流れるように映る中、敵機群が迫る。

 

否、速度上、ゼクス達が敵機群に向かっていた。

 

ズゴックEとハイゴックの部隊が、跳ねて加速しては着地を繰り返し進撃する。

 

更に海側にはジオンのユーコン級の潜水艦が3隻浮上していた。

 

この潜水艦がミサイルを垂直に射ち放つ。

 

そしてそれらは一斉にコルシカ基地を目指して突き進んだ。

 

「なっ!!?やられた!!海上からか!!!」

 

「ゼクス特佐!!ミサイル群が!!!」

 

オットーとワーカーが過ぎ去るミサイル群に、悔しさを堪えながらゼクスへと呼び掛けた。

 

ゼクスはGに耐えつつ、指示を伝えた。

 

「……ぐぅっ!!!!……っく、仕方がない!!!!ミサイルは諦めろ………それよりも前の敵を討て!!!!私が海上の敵へ攻撃をかける!!!!」

 

「はっ!!!」

 

ゴバァオッと加速するトールギスに続くようにドドォっとエアリーズ各機が加速した。

 

コルシカ基地の上空からミサイル群が降り注ぎ、グワン、グワンと施設のあらゆる箇所に直撃する。

 

一基のミサイルが管制塔へと直撃する。

 

「ミサイル群が接近………ぐああああ!!!」

 

ドドォガァと爆発を起こして管制塔が砕け散る中、指令のボナーバがいる指令室にもミサイル群が降り注いだ。

 

「海上からか!?……ぐおぁあああ!!!!」

 

ゴバァオと降り注ぐミサイルは、瞬く間にコルシカ基地の機能に障害をあたえた。

 

リディ達はミサイル群に囚われ、敵機の進撃を許してしまう。

 

だが、反転しながら各機が射撃をかけ、突破したズゴックやゴックを背後から撃ち抜いて破壊し、ビームマグナムのエネルギー弾がハイゴックを砕き散らす。

 

「遠距離ミサイルだ!!各機、上空に警戒しろ(くそ!!なかなかの攻撃をしてくれる!!狙いはトールギスとユニコーンかもしれない……)!!」

 

敵側に基地の情報がリークしている可能性を危惧しながら、眼下の敵機へと断続的にビームマグナムを放っていく。

 

一撃で機体の大半を熔解させて撃ち抜く光景は、改めてビームマグナムの威力を物語っていた。

 

ゼクス達は、進撃してくるズゴックEとハイゴックの部隊へと攻撃を仕掛ける。

 

トールギスは高速飛行から減速しながらドーバーガンを構え、試射を兼ねて撃ち放った。

 

 

 

ドゥヴァウウウウウウッッ!!!

 

ヴァヴォガアアアアアアッッ!!!

 

 

 

超高速で撃ち放たれたドーバーガンのプラズマ状のビーム弾丸がハイゴックに直撃。

 

凄まじい勢いと破壊力で機体を木っ端微塵に爆砕させる。

「このドーバーガン………リーオーのモノとは桁違いの破壊力だ!!」

 

トールギスはホバリングしながら射程距離のズゴックE3機とハイゴック3機に向けてドーバーガンを連続で撃ち放った。

 

ドゥバァウッというドーバーガンの射撃音が、響き渡る。

 

まるで玩具のごとき様で、バギャガンと砕け散っていくズゴックEとハイゴックの部隊。

 

その攻撃に続くように後続するエアリーズ部隊が、ビームチェーンガンを撃ち放ちながらミサイルランチャーを撃ち放つ。

 

シュゴォォっと突き進むミサイル群が、侵攻するハイゴック部隊に襲いかかる。

 

巻き起こる爆発の中、エアリーズ部隊は更に一撃離脱戦法でビームチェーンガンを撃ち浴びせ、敵機を各個撃破させていく。

 

「後は頼んだ!!」

 

ゼクスは左右に旋回するエアリーズ部隊を視認すると、トールギスを加速させた。

 

ヴンとバーニアがチャージされ、ドバオンと爆発的に加速するトールギス。

 

無論、その衝撃はゼクスの負担も加速させる。

 

「がはっ………!!!まだだあああああ!!!」

 

内臓に負担がかかり吐血するゼクス。

 

だが、ゼクスの不屈の精神が肉体を凌駕させていた。

 

加速するトールギスは、ハイゴック部隊の頭上を駆け抜け、一気にユーコン級の真上上空に到達する。

 

ガキンと構えられたドーバーガンの銃口が、ユーコン級を捉え、超高速の三発のビーム弾丸がヴォバァウと撃ち混まれる。

 

着弾した瞬間に艦の装甲が木っ端微塵に砕かれ、ユニコーン級は破裂するかのように爆発し、轟沈した。

 

2隻のユーコン級は、ミサイルをトールギスに向けて撃ち上げた。

 

眼下から攻め来るミサイル群がトールギスへと襲いかかる。

 

だが、トールギスは次々と来るミサイルをかわしながら、ドーバーガンを撃ち放つ。

 

その動きは実に俊敏で素早い。

 

それに伴って2隻のユーコン級は、瞬く間に破砕された。

 

ドーバーガンの強烈な破壊力が、ものの数秒で2隻のユーコン級を沈めたのだ。

 

だが、パイロットであるゼクスの体の負担はかなりのものであった。

 

しかしながら、ゼクスは未だに肉体を凌駕する精神を維持し続けていた。

 

「はぁ………はぁ………っく……トールギス……とんだじゃじゃ馬だな………だが、私は必ず貴様を手足にしてみせるぞ!!!ライトニング・バロンのプライドにかけて!!!!」

 

ゼクスが再び引き返そうとしたその時、センサーが接近する新たな機影を捉えた。

 

「新たな機影!?たった2機か!??」

 

スクリーンに映る機影を注視するゼクス。

 

その機影の一つが、僚機と思われる機影の三倍の速度で迫っていた。

 

「1機が異常に速い……もしかしたら向こうから来てくれたのかもな」

 

ゼクスは赤い彗星の再来だと確信する。

 

更に精神が昂り、肉体負担を更に凌駕した。

 

ライトニング・バロンと赤い彗星の激突が刻々と迫る中、僚機もただ者ではないと確信し、リディ達を呼び出す。

 

「リディ少佐、捉えているか!?」

 

リディのユニコーンのスクリーンにも迫る敵機を捉えていた。

 

「はい!!敵機の増援、確認しています!!真っ直ぐこちらへ接近中です!!」

 

「機数からして、ネオジオンかガンダムだ。だが、1機が僚機の三倍の速度で迫っている………十中八九………前者だ!!」

 

「赤い彗星の再来………!!!」

 

リディも闘志が上昇する。

 

エースパイロットとしてのプライドが彼を昂らせる。

 

「リディ少佐は僚機の方を頼む。連邦のエースパイロットとして、赤い彗星と戦いたいと思っているかもしれないが、すまない。私もライトニング・バロンとしてのプライドが譲れないのだ。わがままに付き合ってくれ!!」

 

正直、リディは図星であったが、ライトニング・バロンと赤い彗星の激突も拝見したいという気持ちもあった。

 

「はははっ……確かにゼクス特佐の言う通りです。ですがここは譲りますよ!ライトニング・バロンの戦いを……騎士道精神を目に焼き付きさせていただきます!!」

 

「すまない!!」

 

リディは、ミサイル群に壊滅されたコルシカ基地を後にしてゼクスの部隊との合流に赴く。

 

「俺はゼクス特佐の援軍に向かう。残りの部隊は基地の防衛に徹してくれ!!」

 

「は!!」

 

 

 

その頃、ハワイの地球連邦軍の軍事工場とスペースポートにおいて、ガンダムが強襲を仕掛けていた。

 

軍事工場に二つのビームが連続で撃ち込まれ、施設が激しく爆発していく。

 

ガンダムジェミナス01、02が放つアクセラレートライフルの攻撃だ。

 

2機のガンダムジェミナスは、ホバリングしながら並列を維持して、アクセラレートライフルを連続で撃ち込んでいく。

 

軍師工場のあらゆる設備が破壊され、爆発に呑まれていく中、兵士達も吹っ飛ばされて蹂躙されていった。

 

「兄さん、ここを壊滅させたらオルタンシアに合流するんだよな?」

 

「ああ、地球へ降りて以降、メンテナンスやブリーフィングをしていないからな。それを考慮しての招集だ」

 

「確かにいくら俺達のガンダムが頑丈でも、メンテナンス無しじゃ元も子もないからな!!メンテナンスあってこそ強さが維持出来るんだ!!」

 

「はははっ、解っているじゃないかアディン!!」

 

「な、馬鹿にするなよな、兄さん!!!」

 

モニターに映る映像を見ながら会話するアディンとオデルから余裕が見てとれる。

 

その間にも、工場警備のジムⅢやジェガンが格納庫から出撃していく。

 

更にはネモやジムⅡといった旧型機も応戦する。

 

各機がビームライフルを構え、迎撃体制に移行する。

 

射撃が始まり、ビームライフルのビームがガンダムジェミナスへと襲いかかる。

 

何発も撃ち込まれていくビームだが、GND合金の装甲でビームが弾かれ、全く歯が立たっていなかった。

 

「それに、いつまでも女の子を輸送機で連れ回す訳にもいかないしな!!」

 

「お前の彼女の事か?」

 

「あのな、兄さん!!標準がぶれる!!大体、彼女じゃねーし!!!」

 

アディンはオデルと会話を続けながらMSへと標準を絞り、ロック・オンするが、何故かアディンはプルの事を言われ動揺した。

 

当のプルは輸送機内の寝室で、すやすやと寝ていた。

 

「んー……ぷぁふぇたべたいー……アディンー……」

 

アディンとの夢を見ているようで、彼の名を寝言に漏らしていた。

 

そのアディンはグリップトリガーを弾き、アクセラレートライフルを撃つ。

 

ヴィギュアっと撃ち放たれたアクセラレートライフルがジェガンを仕留め、それを皮切りに撃破したジェガンの周囲のMSをタイミンング良く撃ち仕留めていく。

 

ジェガンやジムⅢが破壊され爆発を巻き起こし、更に設備への被害を拡大させた。

 

ガンダムジェミナス02もジワリと攻め続ける。

 

格納庫から出撃したジムⅢとネモの部隊が反撃の余地なく次々と撃ち砕かれ、連発されるアクセラレートビームがそれらと同時に工場施設の要の設備に直撃していき、設備を粉砕させていく。

 

それに加えてチャージショットも合わせて撃ち出す。

 

3機のジムⅢと3機のネモがビームの渦に呑まれ、バゴヴァアと撃破された。

 

ゴゴと立ち上る炎の上に着地する2機のガンダムジェミナス。

 

2機は同時にガキンとアクセラレートライフルを構え、銃口を施設へ向けた。

 

「これでキメルぜ!!!」

 

アクセラレートライフルの銃口にビームがチャージされ始める。

 

ギュリリリというチャージ音を鳴らしながら二つの高出力ビームが撃ち込まれた。

 

 

 

ヴァダアアアアァァァァッ!!!

 

ギュゴバァガアアアアアァァ………!!!

 

突き進む二つのビーム渦流は、残存していたMS部隊や建造中のMSを呑み込み、一気に破砕させていく。

 

そしてそれは、後方の山をも抉り飛ばし、アクセラレートライフルの高エネルギーの異状熱が全てを爆発させる。

 

工場施設は原形を跡形もなく抉られ、完全に破壊された。

 

残るのは崩壊した施設の一部だけだ。

 

2機のガンダムジェミナスはアクセラレートライフルをかざしたらまま、任務完了の意思表示とするかのように、ギンと両眼を光らせた。

 

一方で、ガンダムデスサイズが同じハワイにある地球連邦軍のスペースポートへと強襲をかける。

 

ジェガンやジムⅢがビームライフルを撃ちながら、要人シャトルを護衛していた。

 

だが、ガンダムデスサイズは長けた機動性でビームをかわしながら加速し、自ら接近して当たり付いたジェガンやジムⅢを邪魔だと言わんばかりに斬り飛ばす。

 

 

 

ザバシュバンッ、グゴバ!!! ドバオォォ…ズバシャアン!!! ギュゴア…ズバドォオオ!!! ゴァオオ……ザガギャアア!!!

 

 

 

 

加速しながら一気に敵機に踏み込んでは斬り飛ばし、また加速しては斬り飛ばす。

 

瞬く間に破砕されていくMS部隊に心許ないのは隠しきれなかった。

 

「おらおらぁ!!!死神様のお通りだぁ!!!」

 

対面したジェガンを一気にズバドォオオと斬りあげる。

 

斬り上げられたジェガンの分断面からガンダムデスサイズの姿が現れるが、直ぐに爆発で見えなくなる。

 

「大事な要人達が乗っておられる!!!なんとしても打ち上げろ!!!」

 

ビームライフルで応戦する2機のジェガンと3機のジムⅢ。その背後では、スペースポートを目指すシャトルが動いていた。

 

だが、瞬く間にガンダムデスサイズがシャトルへ接近する。

 

踏み込まれたジムⅢ3機は、ザシュバァアンと一気に斬り刻まれて爆発する。

 

そして、バスターシールドを展開させ、ジェガンの胸部へ殴り込むようにビームの刃を刺突させた。

 

破裂するかのように爆発するジェガン。

 

残りの1機のジェガンは、ビームライフルを連発させるしかない。

 

「うああああ!!!化け物ガンダムめぇ!!!!」

 

抵抗空しく、ジェガンは直ぐに懐へ踏み込まれ、バスターシールドで斬り払われた。

 

機体を分断されながら砕け散る様を見届けると、デュオはシャトルへと標準を絞り狙いを定めた。

 

「薄汚いお偉いさんよぉ………あんたらの罪はこの世じゃ償いきれないぜ…死神様がジャッジしてやるよ………!!!」

 

バスターシールドをシャトルへと向けたその時、1機のスタークジェガンが、ミサイルを撃ちながらバズーカを片手に突っ込んできた。

 

ゴバンという爆発の衝撃ガンダムデスサイズを襲う。

 

「おわ!?な……まだいたのか!!!」

 

スタークジェガンは一気にガンダムデスサイズの懐に突っ込んで、バズーカの銃口を胸部に押し当てた。

 

「くたばれぇ!!!!」

 

零距離からここぞとばかりにバズーカをガンダムデスサイズに撃ち込むスタークジェガン。

 

通常のMSであれば、間違いなく即死レベルの攻撃だった。

 

「…………ちぃっ………!!!!うざってぇんだよっっっ!!!!」

 

苛立ちを溜め込んだデュオの気迫と共に、ズガシュアッとスタークジェガンの胸部へバスターシールドのビームが貫く。

 

更に串刺しにしたままスタークジェガンを持ち上げた。

 

バズーカの零距離射撃も全く効かないガンダムデスサイズを前に、グバガンと爆砕するスタークジェガン。

 

シャトルはスタークジェガンの攻撃の際に加速レーンに入り、一気に加速してスペースポートから打ち上げられようとしていた。

 

だが、シャトルがスペースポートを加速中にスペースポートが爆発を起こし始め、レーンに沿って加速していたシャトルも爆発に巻き込まれて破砕した。

 

ガンダムデスサイズはスペースポートの爆発を見届けると、ビームサイズを担いだ。

 

「ったくよ~……狙った獲物は斬る主義なのによ!!爆弾仕掛けておいても気持ち良くねーよ……後味悪っ!!」

 

デュオは、標的の叩き方にこだわっていたようで、今回のケースに文句を漏らす。

 

斬るというスタンスがデュオのステータスなのだ。

 

ビームサイズを担いだガンダムデスサイズの向こう側から朝日が昇る。

 

「それにしても………地球は妙な環境だぜ。ついさっき朝日浴びたと思えばまた朝日か…」

 

 

 

コルシカ基地周辺上空

 

 

 

急接近する二つの機影が、ついにトールギスのコックピットモニターに映る。

 

「遂に来るか…!!!赤い彗星の再来!!!!」

 

映し出されているモニター映像には確かに赤い機体が迫っていた。

 

更にピンポイントズームされ、シナンジュとギラズールカスタムの姿が鮮明に映し出された。

 

それと同時タイミングでリディのユニコーンが合流を果たす。

 

「ゼクス特佐!!」

 

「リディ少尉、来たか!!先程言ったとおりだ。僚機を頼むぞ」

 

「任せてください!!」

 

リディは余裕を持っていたためか、不敵な笑みを口許に浮かべながらビームマグナムをスタンバイさせる操作をした。

 

一方でフロンタルは、サイドスクリーンのモニターで、同胞の安否を注視していた。

 

「先程まであった同胞達の反応が消えている………間に合わなんだか」

 

「大佐、前方に新型の部隊が!!」

 

アンジェロが新型の確認を報告する最中、フロンタルはタッチパネル操作で、トールギスとユニコーンを拡大して確認していた。

 

「アンジェロ、解っている。あの2機が恐らく情報にあった新型だ。必ず我々や同胞達の驚異となるだろう。ここで仕留める!!!アンジェロは一角の新型を叩け」

 

「はい!!大佐!!」

 

フロンタルとアンジェロは、グリップレバーを押し込み機体を加速させた。

 

シナンジュは、ウィングバインダーにブーストをかけながら、ドバオンッと加速していく。

 

加速していくシナンジュを追うようにギラズールカスタムも加速する。

 

フロンタルを心酔するアンジェロは、狂喜に近い感情が沸き上げる。

 

「はははは!!大佐の神聖な戦場………勝利の花添えをお手伝いさせていただけるなんて!!!光栄限りない!!!!」

 

そしてフロンタルは、不敵なにやけを口許に浮かべながらシナンジュを更に加速させ、ゼクス達の部隊へと突っ込んでいく。

 

「ふふ……見せてもらおうか…新型機の性能とやらを………!!」

 

トールギスのモニターに捉えていた標的のスピードが上がる。

 

ゼクスも対抗の意思表示に、トールギスを加速させた。

 

「っ………私に挑んでくる相手を、無下にはできんだろう……!!!」

 

バッゴアアッと加速する赤と白の彗星。

 

互いの銃を構え、ドーバーガンとビームライフルが、同時に撃ち放たれた。

 

銃口から放たれたプラズマ弾とビームが超高速で互いの機体を掠める。

 

そして互いの機体が迫り、バゴァアンッという衝撃波を発生させながらトールギスとシナンジュがすれ違った。

 

「――――!!!!」

 

ギュバオンと機体姿勢バランスをとりながら2機はスピーディーに反転し、ビームライフルとドーバーガンを撃ち合う。

 

奇しくも互いの放った二発が相殺し合い、空中で激しく爆発を弾けさせた。

 

その間にアンジェロは、フロンタルの命令に忠実に従い、エアリーズ部隊へとランケブルーノランチャーを構えた。

 

ユニコーンもギラズールカスタムへ標準を定め、ビームマグナムを撃ち放つ。

 

「墜とさせてもらう!!!!」

 

一発、二発、三発と放たれる高出力のビームが、ギラズールカスタムへ襲いかかる。

 

「ぬぅ………!!!!邪魔をするな!!!!」

 

アンジェロは、ビームマグナムをかわしながら 怒り任せにランケブルーノランチャーを撃ち放つ。

 

ヴァダアアと放たれたビーム渦流がユニコーンへと直撃コースで迫る。

 

だが、すぐさまにユニコーンはシールドをかざした。

 

バシュキィとビーム渦流が何かに相殺されたかのように消える。

 

「最新型のIフィールドだ……効くものか!!!」

 

リディは、きゅっと眉間を動かしてギラズールカスタムを睨み付け、再びビームマグナムをロック・オンさせた。

 

ビームマグナムをバッと構えたユニコーンは、ヴァヴシュウンとビームマグナムを連発させて撃つ。

 

向かってくる高出力ビームに、アンジェロは回避行動をとって機体を上昇させてかわした。

 

「おのれぇっっ!!!」

 

アンジェロの悔しみを込めて撃ち放たれたランケブルーノランチャーを再びユニコーンはシールドで受け止め、Iフィールドでビーム渦流をかき消す。

 

ユニコーンはビームマグナムをガキンと構え、上昇しながら射撃してギラズールカスタムへ接近する。

 

「無駄だ!!素直に墜ちろ!!!」

 

「貴様ぁぁぁ!!!」

 

ズバドォ、ヴィシュヴゥンと両者のビーム兵器が飛び交う。

 

ユニコーンとギラズールカスタムが銃撃戦を展開させる一方で、トールギスとシナンジュは、更なるハイスピードレンジの高速銃撃戦を展開させる。

 

2機は射程距離を保ちながら並列に高速で加速していく。

 

トールギスはドーバーガンをドゥヴァウとプラズマ弾を唸らせ、シナンジュの方向へ連続射撃する。

 

対するシナンジュも、高速でビームライフルをヴィギュイイッと撃ち放ち続ける。

 

だが、両者の放つビームは中る事はない。

 

トールギスは、激しい衝撃波を発生させながら機体を上昇させてドーバーガンをシナンジュへ向ける。

 

連発させて唸り続けるドーバーガンのプラズマ弾が、下方のシナンジュへ向かう。

 

シナンジュも、上空にいるトールギスへビームライフルを放つ。

 

両者が放った攻撃が互いのシールドを掠めた。

 

「赤い彗星の再来………流石と言ったところか!!!」

 

「この白い新型………予想以上にやるな!!!」

 

ギュゴアッと加速してドーバーガンの弾道をかわすシナンジュ。同時に真っ直ぐビームライフルを構え、射撃する。

 

トールギスは機体を二転三転と翻した後に、ギュバオンと加速させながら素早くドーバーガンで何発も射撃した。

 

かわしかわされ、掠め掠める。

 

切りがない高速の銃撃戦が幾度も続く。

 

ゼクスは既に体の負担さえも忘れていた。

 

戦士としての高揚感が凌駕していたのだ。

 

「この程度の銃撃戦では礼儀の範囲ではないだろう………やはりこうあるべきた!!!」

 

ゼクスはシナンジュの銃撃を回避しながらドーバーガンからビームサーベルへと武装を変換させた。

 

ガングリップをリリースし、シールドに収容されたビームサーベルを取り出してビームをビギュイッと発動させる。

 

これをモニターで確認したフロンタルも、シナンジュの武装を変換させる操作をした。

 

「……おもしろい!!!」

 

シナンジュは腰のマウント部にビームライフルを取り付け、アームに内蔵されたビームサーベルを発動させる。

 

そして互いの機体が、ドゥヴァウンと加速。機体同士が激突する勢いでトールギスとシナンジュが激突した。

 

 

 

ギィディギュイイイイッッ!!! ジュジジュアァァァァ………

 

 

 

ビームサーベル同士の刃が激突して激しくスパークを誘発させる。

 

拮抗する互いのパワーとパワー。

 

ギュイインッと互いのビームの刃を捌き合い、再び激突させる。

 

そしてギャイン、ギャインとビームの刃を二度三度弾き合わせ、2機は弾き合うかのごとくその場を離脱した。

 

「確かにシャアの…赤い彗星の再来と言われるだけの事はあるな!!実に骨のある相手だ!!!」

 

「連邦側は、ガンダム以外にも高性能な機体を有していたか!!!パイロットもなかなかの者だ……!!!」

 

再び2機は加速し、ビームサーベルを激突させる。

 

二つの彗星は、高速で弾き合うように移動しながら互いの刃を交えていく。

 

この戦闘を目の当たりにしたリディとアンジェロは戦闘を忘れ、唖然とモニターに釘付けになっていた。

 

 

 

ギュゴアッ…ヴィギャイン、ギャイン、ズバドォ………ギュゴアアアッ、ズビィギィッッ、ヒュドゴォオオオ…ズバギャアアア!!!

 

 

 

端から見れば光りと光りが幾度も激突し合うような光景だ。

 

トールギスとシナンジュは一歩も譲らず刃を交え続ける。

 

ゼクスはビームを捌き、トールギスを上昇させ、上空より一直線にビームサーベルでシナンジュに斬りかかる。

 

対してシナンジュは、轟とビームサーベルを斬り上げた。

「おおおお!!!」

 

「はぁぁっっ………!!!」

 

 

 

ザジュガアアアアァァ!!!

 

ビィシュイッ………ギャイイイイィィ!!!

 

捌き合い、互いに回転をかけてビームサーベルを激突し合う。

 

拮抗を繰り返す終わらない斬撃戦闘。

 

ライトニング・バロンの名と赤い彗星の名を課せた二人の男達のプライドの激突でもあった。

 

「こうも私と張り合えるとはな!!!ならば!!!」

 

フロンタルは一瞬の隙を突き、シナンジュのレフトレッグでトールギスを激しく蹴り飛ばした。

 

 

 

ドォガオォォンッッ!!!

 

 

 

「ぐぅっっ!!!!」

 

激しいまでの衝撃がトールギスのコックピット全体を襲う。並大抵のパイロットならば気を失うか否かの衝撃だ。

 

だが、トールギスがパイロットに与える衝撃よりは若干威力は低い。

 

更にゼクスは蹴りを食らった瞬間に機体を後退させ、衝撃を緩和させていた。

 

後退しながら吹っ飛ぶトールギスは要のバーニアを使い、ディギュオッと機体を上昇させた。

 

「やってくれる!!!づぁあああ!!!」

 

トールギスはバーニアを駆使させて、シナンジュに高速の飛び蹴りを繰り出した。

 

 

 

ギュドォアアッッ―――ディガオォォオオオンッッ!!!

 

 

 

「ちぃぃいいいっっっっ!!!」

 

フロンタルは、トールギスの反撃に憤りを覚えながら攻撃の衝撃を耐えしのぐ。

 

激しくトールギスの蹴りを食らったシナンジュは、トールギスの加速蹴りで吹っ飛ぶが、海面に叩きつけられる寸前で、ズバドォと瞬発加速をして事なきを得た。

 

2機は各部のスラスターで、バシュバシュと機体体勢を整え、ホバリング体勢をとって落ち着く。

 

トールギスとシナンジュは、睨み合うかのようにビギュイとビームサーベルを振りかざし、静止した。

 

「素晴らしく骨のある相手だ!!!改めて実感させてもらった」

 

「これ程までに私を圧倒させるとは……!!!」

 

そして2機はぶつかり合う勢いで加速する。

 

「おぉおおおおおお!!!!」

 

二人の気迫の一声が重なり合い、ビームの刃がすれ違い様に交えて激突し合った。

 

 

 

ヴィギャィイイイイイ!!!

 

 

 

駆け抜けてすれ違う2機。

 

次の瞬間、トールギスのドーバーガンのジョイントと、シナンジュの右側のプロペラントタンクが斬り落とされた。

 

フロンタルは、この瞬間を引き際と判断してアンジェロに命令する。

 

「アンジェロ、離脱する!!撤退だ!!!」

 

「撤退!?は、はッ!!」

 

フロンタルに忠実なアンジェロは、撤退に違和感があっても素直に従い、機体を離脱させた。

 

「逃がすか!!!!」

 

リディは、離脱するギラズールカスタムを追撃しようとする。

 

だが、ゼクスがそれを止めた。

 

「よせ、もういい。リディ少佐。あのような敵は引き際を心得ている。それを仕留めようとするのは兵士としての姿勢に反する。追うな」

 

「しかし…!!!」

 

「それも騎士道精神の一貫だ。戦士としての礼儀と捉えるんだ。いずれまたぶつかる日も来よう…」

 

「戦士としての礼儀…」

 

リディは改めてOZの戦士としての姿勢に気づかされ、連邦軍人のみでは知り得ない考えを知った。

 

「赤い彗星の再来………本当にシャアの亡霊なのかもな…だが、次は本題のガンダムと刃を交えたいモノだ…」

 

トールギスとユニコーンは、去り行く2機の光を見届けるかたちでホバリングを続けていた。

 

 

 

カタール ガーベイ邸

 

 

 

オルタンシアへの召集を受けたカトルが、ロニとの一時的な別れを迎える。

 

「あまり無茶な事はしないで。いざというときには、マグアナック隊に駆けつけてもらうように頼んでおいたよ」

 

「ありがとう、カトル。でも、少しは無茶もするわ。私ができることは精一杯するつもりよ。私達の地を連邦やOZに好き勝手させたくはないから…」

 

「ロニ…」

 

ロニの闘おうとする意志は変わらない。

 

ロニはそう言いながら、ポーチから手作りのアクセサリーを取り出した。

 

カトルの任務中に作っていたアクセサリーだ。

 

「はい…これをカトルにあげるわ。あなたの無事を籠めて作ったんだから、無くしたら承知しないんだからっ」

 

「ありがとう!綺麗なアクセサリーだよ、ロニ!」

 

「お揃いのアクセサリー、この通り…私も持っているから。お互いに繋がってるって感じで……」

 

ロニはネックレスを少し強調するようにカトルに見せる。確かにお揃いのアクセサリーだ。

 

「ははっ、本当だ……ならどこで戦っていても近くに感じられるね!大切にするよ!」

 

「また無事に帰ってきて………私の可愛いカトル」

 

「あ…ロニ…」

 

ロニは、カトルを引き込むように抱擁した。

 

カトルは、伝わるロニの温もりを噛み締めながら瞳を閉じる。

 

「ロニを想えば幾らでも闘い続けられる……頑張るよ」

 

カトルもロニをすっと抱擁した。

 

守るべきものを再確認して。

 

 

 

翌日、オルタンシアには続々とGマイスターが召集してきていた。

 

ガンダムヘビーアームズとガンダムサンドロックが着艦し、オルタンシアまで後3km付近をシェンロンガンダムが航行する。

 

そして、デュオ、アディン、オデル達の輸送機が着艦体勢を整える。

 

ウィングガンダムの作業へ向かうヒイロが、甲板でガンダムヘビーアームズとガンダムサンドロックを見上げ、空にも視線を送った。

 

「来たようだな…」

 

クシャトリヤのテスト始動をしていたマリーダは、直感めいた感覚を覚えて、空を見上げる。

 

「この感覚は………!!?」

 

同時に輸送機内の部屋で、プルもただならぬ感覚を覚えていた。

 

「え!?何、この感じ!!?あたし………!??」

 

Gマイスター達の集結とマリーダとプルの邂逅の瞬間が刻々と迫っていた。

 

 

 

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