新機動闘争記ガンダムW LIBERTY   作:さじたりうす

36 / 52
エピソード36「バルジ破壊」

 突如として起きたテロにネェル・アーガマからのガンダムの強襲、そしてウィングガンダム・ゼロの降臨……OZサイドからしてみれば、バルジは予期せぬ混迷の渦に呑まれていた。

 

 それはメテオ・ブレイクス・ヘル壊滅以降後に訪れた彼らの初の総力的反撃だった。

 

 リーオーやプライズリーオー、リゼル・トーラスがビームライフルやドーバーバスター、メガビームランチャーの射撃で迫りくる中へ近代改修された装備を振るい、ガンダムヘビーアームズ改とガンダムサンドロック改が攻め入る。

 

 「あいつらの脱出に邪魔な機体群はミサイルで破壊した。だが、当然のごとくそれだけでは足りない。新装備の試射を兼ね、奴らを消滅させる」

 

 ヴィギンッとメインカメラを光らせたガンダムヘビーアームズ改は、胸部のブレストガトリングを展開させながらアームバスターカノンとダブルビームガトリング、バスターガトリングキャノンの砲身をターゲット群へ突き出すように構えた。

 

 

 

 ジャカキンッ!! ヴィギュリィィィッ……バズダァアアアアアアアアアアアッッ!!! ディシュダァッッ、ディシュダァッッッ、ディシュダァッッ、ディシュダァッッ……バズダァアアアアアアアアアアアァッッ!!!

 

 ヴォヴァドゥルルルルルルルルルルルルルルゥウウウウウゥゥゥッッッ!!!

 

 

 

 一発の発射を皮切りに連発されるバスターライフルと同等の中小規模ビーム過流と、それに連動するかのように高速連射されるビームと実態の弾丸が一斉に面前のターゲット達を破砕乱舞する。

 

 その攻勢を維持させたままガンダムヘビーアームズ改は、少しづづ自転旋回をしながら次々に連発連射弾幕の直撃を浴びせ、リーオー、プライズリーオーの二機種部隊へ圧倒に圧倒を重ねていく。

 

 装甲を吹き飛ばされ爆砕する機体や装甲を砕き散らされボロキレの布のようになる機体……正に事の反撃を体現しているかのような爆光を拡大させていく。

 

 その最中、ガンダムヘビーアームズ改に向かい左側面方向より六小隊編成のリゼル・トーラスの部隊がメガビームランチャーとビームキャノンで射撃をかけながら先頭の6機がビームサーベルを取り出して迫る。

 

 MD故に狙いは間違いないものの、それを上回るトロワの回避技術がわずかな差でビーム弾雨を回避してみせる。

 

「火力支援に数機同時の白兵戦……実に有効な攻めだな……人形の割には優れているな。だが……」

 

 ガンダムヘビーアームズ改は、ダブルビームガトリングの連射撃で立て続けにビームサーベルで迫る3機のリゼル・トーラスを撃墜すると、接近を許したもう3機にブレストガトリングを放ち、内2機をハチの巣に破砕。

 

 これを躱したもう1機のリゼル・トーラスはウィークポイントと認知した胸部へ殴るようにビームサーベルを突き出した。

 

 直撃の瞬間にハッチを閉じながら刺突ダメージを食らい、ガンダムヘビーアームズ改は反動で後退するが、強化型GND合金には意味をなさない。

 

 ガンダムヘビーアームズ改は直ぐに体勢を立て直して次の斬撃を躱し、回り込むように背後からそのリゼル・トーラスをダブルビームガトリングで砕き散らす。

 

 その流れから反転し、ダブルビームガトリングで飛び交う5機を連続で撃ち墜としながら他の10機のリゼル・トーラスへ再びアームバスターカノン、ダブルビームガトリング、バスターガトリングキャノン、ブレストガトリングの全砲門発射態勢を取る。

 

「……圧倒的に高い火力の前では結果的に無意味となる……」

  

 放つ高速連射撃と高出力ビームの砲撃が、一挙に6機のリゼル・トーラス悉く爆砕させた。

 

 ガンダムヘビーアームズ改はそれらの爆発を突き抜け、散会した4機をダブルビームガトリングとアームバスターカノン、バスタービームガトリングキャノンで各々に仕留めながら再度全砲門砲撃を開始。

 

 次に迫るプライズリーオー、リーオー部隊はその火力の猛威に次々に砕き吹き飛ばされ、宇宙に爆光の連なりを拡げていった。

 

 だが、業を煮やすようにビームサーベルを手にしたプライズリーオーの1機がガンダムヘビーアームズ改の背後から襲い掛かる。

 

 その時、突如として連射撃で撃ち砕かれるようにそのプライズリーオーは破砕された。

 

 トロワが振り返ると、モニターにこちらへ向かうサーペントの機体を捉える。

 

「……ラルフか」

 

「背後は要注意だ、トロワ」

 

 そう言いながらラルフはサーペントをガンダムヘビーアームズ改の背部に就かせ、両手持ちにした実弾式の重火器・ダブルガトリングをスタンバイする。

 

「背面は任せろ。はっ……なんか昔の傭兵時代を思い出すな」

 

「あぁ。そうだな」

 

「……変わってるようで変わらんな。ま、今はここからの離脱だ!!!」

 

「無論だ」

 

 

 

 ガドゥルルルルルルルルルルルルルルルヴゥゥゥゥ!!!

 

 

 

 2機背中合わせでの攻勢が始まり、サーペントが放つ二基のダブルガトリングが、ガンダムヘビーアームズ改の後方から攻め立てるリーオーやプライズリーオー部隊を次々に撃墜していく。

 

そしてその反対側はガンダムヘビーアームズ改の隙が一切無い、ビーム渦流とビーム・実弾の連射破砕劇が展開する。

 

 かつての傭兵時代のバディーだった二人が今の岐路たる反撃に出た瞬間でもあった。

 

 サーペントのダブルガトリングの照準を次々に当てられた機体群が、バラバラに装甲をハチの巣に粉砕され爆発していく。

 

 中には爆発せずに、バキバキとスパークを起こしながらボロキレのように漂う機体もあった。

 

 四角型メインカメラを光らせたサーペントは、重力下でいう上方から迫る機体や下方から迫る機体にも弾幕射撃を浴びせ、砕き散らせ続けていく。

 

 今更ながらではあるが、ラルフはGマイスターの補欠要員でもあるが故に、トロワとも負けず劣らずのMS技術を持ち合わせているのだ。

ガンダムヘビーアームズ改とサーペントの2機の射撃は、バルジの戦力削減を秒単位で更なる促進をさせていった。

 

 その一方でガンダムサンドロック改もまた、僚機であるマグアナック・ラシード機と共にバルジに展開するMS、MDの攻め入る。

 

「ラシード、援護頼みます!!」

 

「お任せください!!」

 

「さぁ……いくよ、サンドロック!!!」

 

 

 

 ディシュウウウウウウッ!! ディシュッ、ディシュッ、ディシュッ、ディシュッ、ディシュウウウッッ!!

 

 

 

 マグアナック・ラシード機のビームライフルの支援射撃が、幾つかのリーオーやプライズリーオーを墜としていく中、カトルはこれまでの日々を思い返しながら想いを籠め、一新されたGNDブースターで加速をかけた。

 

 両眼のメインカメラを光らせたガンダムサンドロック改は、ライトアームに実装された破砕機・クロスクラッシャーをかざしながらマニピュレーターに握るビームマシンガンを撃ち放つ。

 

 

 

 ドドドゥヴィディディディディイイイイイッッ!!! ドゥディディッ、ドゥディディッ、ドゥディディディディディディディイイイイイイッッッ!!!

 

 

 

 マグアナック・ラシード機のビーム射撃と共に、リーオー、プライズリーオー部隊をけん制と兼ねながら次々に撃墜させていく。

 

 ガンダムサンドロック改は振りかざしたクロスクラッシャーのヒートショーテル部にGNDエネルギーを発動させ、両刃の刀身を赤熱化させる。

 

「はぁあああああああああっっ!!!」

 

 

 

 ディッッギィガァアアアアアアアンッッッ……ガズドォオオオオオオオオオッッッ!!!!

 

 

 

 すれ違いながらの薙ぎ斬撃から直進したガンダムサンドロック改は、ヒートショーテルの両刃の切っ先に付加させた惰性とパワーの刺突で2機のプライズリーオーを砕させる。

 

 その流れのままビームマシンガンで再び射撃を仕掛け、リーオーやプライズリーオーを連続撃破しながら一層の加速をかけた。

 

 そこから殴るようにクロスクラッシャーをプライズリーオーへ食らわし、並列上のもう1機を力強い薙ぎ斬撃で斬り飛ばして見せ、機体の出力パワーが秀でたガンダムサンドロック改の真骨頂たる攻勢を見せつける。

 

 その時、ガンダムサンドロック改の左肩装甲部にリゼル・トーラスのメガビームランチャーが直撃した。

 

 だが、その爆発からはほとんど無傷のガンダムサンドロック改が飛び出し、急加速をかけてリゼル・トーラスの部隊へ突っ込む。

 

「MD……無人機が戦争を始めたら……より一方的で愚かな殺戮ゲームになり果ててしまう!!!」

 

 きっと眉間にしわを寄せたカトルは危惧と怒りを覚えながらモニター画面先のリゼル・トーラス部隊にビームマシンガンを射撃する。

 

 3機程が撃墜するも鮮やかにビームマシンガンの射撃を躱した他の幾多のリゼル・トーラス達がガンダムサンドロック改へと迫った。

 

 どの機体もビームキャノンを放ちながらビームサーベルの攻撃に切り替える。

 

 1機が迫りながらガンダムサンドロック改へ斬りつけにかかる刹那、メインカメラを光らせたガンダムサンドロック改はレフトアームに手にした大型ヒートショーテル、バスターショーテルを振りかざした。

 

 

 

 ギュゴッッ――――ディッガギャアアアアアアアアアアンッッッ!!!

 

 

 

 GNDエネルギーを帯びた刀身を振るったカウンターの強烈な斬撃が叩き込まれ、そのリゼル・トーラスは無残に斬り砕かれ爆発していった。

 

 再度メインカメラを光らせたガンダムサンドロック改は、四方八方から襲い来るリゼル・トーラス達の攻撃を逆手に取りながらクロスクラッシャーとバスターショーテルを駆使して、真の防御に転じる。

 

 すなわち攻めだ。

 

 クロスクラッシャーの刺突で豪快に突き砕き、轟々たる斬り払いと斬り上げを駆使して砕き斬りながら更にバスターショーテルの斬撃で叩き斬っていく。

 

 リゼル・トーラス達は攻めれば攻めるほど機体が破砕され続け、時折放たれるビームマシンガンにも撃墜されていく。

 

 負の攻めの流れをカトルは自ずとリゼル・トーラス達に造り出していた。

 

 

 

 ディッガギャアアアアアアアアッッ!!! ダッギギャアアアアアアアアアンッッ、ガギィダァアアアアアアアアアアアンッッッ!!!

 

 

 

 クロスクラッシャーのヒートショーテルでの殴り突き砕きと薙ぎ斬り払い、バスターショーテルの叩き斬りの連続斬撃とカウンターの乱舞でリゼル・トーラスを撃破する最中、攻め込んできた1機をガンダムサンドロック改はクロスクラッシャーのヒートショーテルで挟み掴んだ。

 

 斜め縦に斬り込まれていくリゼル・トーラスの胸部の零距離にはビームマシンガンの銃口があった。

 

 ガンダムサンドロック改は、ヒートショーテルの両刃斬り込みでギリギリと破断を進行させながらビームマシンガンの零距離射撃を叩き込み、リゼル・トーラスを激しく破砕させてみせた。

 

 

 

 ギッギギギギィ……ヴィディドルルルルルルヴゥゥウウウウウゥゥッッッ……ドォドドドドドドドディディディディガガガアアアアアアアンッッ!!!!

 

 

 

 一方、ガンダムデスサイズ・ヘルが格納されているゲートへ突っ込んだデュオもまた、ガンダムデスサイズ・ヘルの起動に成功させていた。

 

 バルジ内部のゲート通路上に蘇った死神の姿がそこにあった。

 

 メガバイパージャマ―と同一となったGNDブースターに、死神のマントを彷彿させる防護シールド・アクティブクロークに身を包んだガンダムデスサイズ・ヘルが炎に照られながらバルジのゲート通路を歩く。

 

 その様は正に死神と呼ぶにふさわしい姿だ。

 

 コックピット内のデュオも意気揚々と愛機に語り掛ける。

 

「さぁて……ようやく自由の身で娑婆に出られるなぁ、相棒!!ここからは盛大に死神の復活祭といこーじゃねーかっっ!!!」

 

 その時、ゲート右側面からの敵機反応のアラームがコックピット内に鳴り響いた。

 

「お?!へへ……さっそくおでましか……!!!」

 

 デュオは迫る敵機反応に危機感を覚えるどころか、それを見越した上の愉しさを覚えながら、ニヤリと右サイドモニターを見る。

 

 バルジ内の格納ドックから新たに起動したシルヴァ・ビルゴ達が次々と動き出していた。

 

 その機体群達は不気味にジェガンタイプのカメラを光らせ、ビームランチャーやビームライフルを構える。

 

「これはこれは……新型がゾロゾロと……しかも散々乗せられた機体の奴だぜ……」

 

 ギンと両眼を光らせたガンダムデスサイズ・ヘルは、ライトアームに装備された鋭利な小型シールドの先端と一体になったアームド・ツインビームサイズをかざす。

 

 ビームサイズに比べてリーチが短くなったが、より一層の接近戦に特化した二連刃ビームとビームコーティングを施したシールドの攻防一体の機能を実現させていた。

 

 デュオは余裕の表情を見せながら愛機を敵機へと歩ませる。

 

 そして案の定、シルヴァ・ビルゴ達はガンダムデスサイズ・ヘルへ向け、ビームの集中砲火を浴びせ始めた。

 

 すべての高出力ビーム弾雨が注がれ、一点に集中し過ぎたエネルギーが大爆発を巻き起こす。

 

 あまりにもあっけない結果を認識したシルヴァ・ビルゴ達の各MDCPUは直ぐに構えていたビームランチャーの砲身を下ろさせていった。

 

 だが、その爆発の炎の向こう側よりマントを羽織った死神のシルエットが迫る。

 

 あれほどの高出力ビームの集中砲火にもかかわらず、ガンダムデスサイズ・ヘルは全くの無傷だったのだ。

 

 次の瞬間には、羽織ったマントが悪魔……否、死神の翼ともいうべきシルエットに変わり、アクティブクロークが展開された。

 

 同時にレフトアームのバスターシールドがかざされ、展開された先端より数発のビームの刃が放たれる。

 

 

 

 ディシュゥウウウッッ!!! ディシュッ、ディシュッ、ディシュゥゥウウウゥゥゥッッ!!!

 

 ドォズシャァアアアッッ……ディッキシュッ、ディッキシュッ、ディキシュウウウウゥゥ……ドォゴゴゴバァアアアアアアアアアンッッ!!!

 

 

 

 シルヴァ・ビルゴ達の胸部にビームの刃が連続で突き刺ささり、刺突面より機体を激しく爆砕させる。

 

 バスターシールドのブースター機能を廃止し、発動するビームの刃そのものを撃ち出す趣向に一新された武装、バスターシールド・アローだ。

 

「ほんの挨拶さ……残念だったなぁ。勝ち目はないぜ……そんじゃ、盛大にいくかぁッッ!!!」

 

 小型のシールドとツイン化されたビームサイズユニットをライトアームに直接装備させた、アームド・ツインビームサイズが二連刃のビームを発動させたその瞬間、遂に新たな死神の旋風が吹き荒れた。

 

 シルヴァ・ビルゴの群れへと深く突っ込ませたガンダムデスサイズ・ヘルの死神の洗礼の一線の斬撃が奔る。 

 

 

 

ヒュゴッッッ―――ザァギャシャッ、ギャシュバァッッ、ディギャジャッッ、ザァガキャアアアアンッッ―――ドォズシュゥゥウウウウッッッ!!!!

 

 

 

 ドゥッッゴォバガァアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!

 

 

 

 アームド・ツインビームサイズによる一振り一線の斬撃が一気に4機のシルヴァ・ビルゴを斬り裂いた流れから、バスターシールド・アローの刺突を至近距離のシルヴァ・ビルゴに与えた。

 

 一斉に爆砕したシルヴァ・ビルゴ達を尻目に、次のターゲットへと斬り掛かりながら袈裟斬り軌道の斬撃を食らわせ、その右側面側にいたシルヴァ・ビルゴ数機に大きく斬り払いを見舞う。

 

 更に左側面側にバスターシールド・アローをかざし、順次に一発照射の一撃を撃ち放ってみせた。

 

 二連ビームの刃と鋭利なビームの刃がシルヴァ・ビルゴの重厚な装甲を容易く斬り裂き、貫き、破砕へと導く。

 

「撃ちながらってのも便利かつ新鮮なんだが……やっぱ、俺達は……!!!」

 

 デュオはリニューアルしたバスターシールド・アローの射撃機能に新鮮味を感じつつも、物足りなさ気な感覚を覚えていた。

 

 やはりデュオやガンダムデスサイズ・ヘルにとっての攻撃スタイルは「斬る」に尽きるのだ。

 

「斬って、斬って、斬りまくらなきゃなぁあッッッ!!!!」

 

 ギンッと光った両眼はまさに死神の無双乱舞の意志表示だった。

 

 パワーアップしたGNDブースターで突撃をかけながら大容量のハイパージャマーを散布し、アームド・ツインビームサイズをかざす。

 

 この瞬間、シルヴァ・ビルゴの敵機認識にハイパージャマーの影響によるエラーが生じた。

 

 MSで例えるなら、コックピットモニター上の敵の映像が消えるという状況だ。

 

 ハイパージャマーに晒され、攻撃を止めてしまったシルヴァ・ビルゴ達はもはやただの立ち尽くすマリオネットに過ぎなかった。

 

 そして呻り振るわれたアームド・ツインビームサイズの斬り払いが、力強くかつ高速でシルヴァ・ビルゴを斬り飛ばす。

 

 そこからアームド・ツインビームサイズ振り上げながら逆刃に相当する部位で隣接位置にいた機体を斬り捌いてみせた。

 

増した斬撃力を見せつけるようにガンダムデスサイズ・ヘルは高速の斬撃乱舞で駆け抜ける。

 

猛威を奮わせるアームド・ツインビームサイズの豪快な連続の斬撃に悉く撃破されていく多数のシルヴァ・ビルゴ。

 

デュオはその狙いやすい胸部に斬撃を集中させていた。

 

低純度といえど、ガンダニュウム合金を一瞬で焼灼切断させてしまうアームド・ツインビームサイズは、復活した死神に相応しい威力を証明していた。

 

更にバスターシールド・アローの射撃や刺突も改めて交え、その攻勢に拍車をかけていく。

 

 

ザジュガァアアッ、ディシュガァッ、ズバッシャアアアッ、ドゥシュッ、ジャギャアアアッ、ズドシュッ、ディシュッ、ディギャガァアアアアッッ……

 

 

 

「1機でも多くっ……こんなっ……物騒なっ……マリオネットはっ……潰さなきゃっ……なんねーっ!!!」

 

 

 

ゴッッ―――ディッキャインッ、ディシュガァッ、ズバシュガッッ、ザシャギャアアアッ!!!!

 

 

 

連続する斬り払い、叩き斬りの斬撃から繋げられたアームド・ツインビームサイズの広範囲に渡る大きな斬り払いが、4機のシルヴァ・ビルゴを連続で破断、爆破させる。

 

そしてその二連刃の死神鎌は、5機目のシルヴァ・ビルゴの胸部中心へと到達し、焼灼音と共にビーム刃を深く刺し込ませた。

 

周囲の炎上を背景に目を光らせるガンダムデスサイズ・ヘルのその様は蘇った死神そのものだ。

 

更にその姿勢からバスターシールド・アローでその射撃軌道上のシルヴァ・ビルゴの頭部を撃ち仕留めてみせ、その仕留めたシルヴァ・ビルゴは仰向けに倒れ頭部を爆発された。

 

「だろ??……相棒……!!!」

 

デュオのその問いかけの直後、串刺しにされたシルヴァ・ビルゴが破裂するように激しい爆発を巻き起こした。

 

無論、通常のMSで直面すれば軽く破壊されてしまう程の爆発だ。

 

だが、その荒れ狂う爆発をかき分け、ガンダムデスサイズ・ヘルが再びその姿を見せる。

 

屈辱と地獄の淵より復活した死神はマリオネットを屠り、威風堂々と無傷の姿で炎に照らされていた。

 

一方、別の区画では、翼を持つ双頭龍と生まれ変わったシェンロン……もとい、アルトロンガンダムが悪しきマリオネットを屠っていた。

 

両腕仕様となったツイン・ドラゴンハングを左右に伸ばし、双方のシルヴァ・ビルゴの胸部へその龍の牙を叩き込ませる。

 

 

 

ギュゴァァッ―――ディッガォオオッ、ディッギャガァアアアアッッッ!!!!

 

 

 

「悪の人形め……俺達から吸い取ったデータなど、ここで潰してくれるっっ!!!」

 

 

 

ヴィヴィキュアアアアアアアアッッ!!!!

 

ゴッッバァバァガゴォオオオオオオオオオッッ!!!!

 

 

 

双方のシルヴァ・ビルゴに突き刺さったままのツイン・ドラゴンハングの火炎放射機より青白い超高熱の炎が放出され、ダイレクトに内部機関・機器を焼却させながらシルヴァ・ビルゴを破砕爆破した。

 

「覇ぁあああああっっ!!!!」

 

五飛の気迫に呼応するようにギンと目を光らせたアルトロンガンダムは、近距離にいるシルヴァ・ビルゴへと殴り掛かるように襲いかかり、ドラゴンハングの牙の乱舞を見舞う。

 

 

 

ダッギャガァアアアアンッ!!!! ドガァオオオオオンッッ!!!! ガゴォァアアアンッ、ドッッギャガァ、ズガドォオオオオッッ!!!!

 

 

 

高強度かつ高純度のガンダニュウム合金……ネオGND合金の牙がシルヴァ・ビルゴの胸部を立て続けに穿ち、時折、ツイン・ドラゴンハングが潰した内部機器を引きずり出してえげつないダメージを与えていく。

 

更にボディとビームランチャーを装備したレフトアームを掴み咥えながら引きちぎり、引きちぎられたその側面にドラゴンハングの牙を叩き込ませる。

 

再び両端のシルヴァ・ビルゴを同時に破砕させると、背部に新たに実装された龍の尾を模した二連ビームキャノン、ドラゴンテールキャノンを展開させ、面前のシルヴァ・ビルゴに向けてビームを直撃させた。

 

 

 

ドゥヴィアアアアアアアアッ!!!

 

ズドガァオオオオオォッッ!!!

 

 

アルトロンガンダムの正面で破砕爆破するシルヴァ・ビルゴが砕け散る。

 

 

ドゥヴィアアッ、ドゥヴィアアッ、ドゥヴィアアッ、ドゥヴィアッ、ドゥヴィァッ、ドゥヴィアアアアァァァ……!!!!

 

 

 

ドラゴンテールキャノンはクイックかつフレキシブルな動きで次々とシルヴァ・ビルゴをオートロックし、放つ二軸射線の高出力ビームが直撃していく。

 

攻撃システムをONにすれば、射撃は全てCPUの内部AIにより処理されている為、五飛は格闘に集中できるのだ。

 

 更にはチャージショットも可能であり、その圧縮したGNDエネルギーのビーム過流を撃ち放って、ドミノ倒し方式にシルヴァ・ビルゴ達を一掃する。

 

 

 

 ギュリリリリリリ……ヴァアアアアアアアアアアアアアッ!!!

 

 ドォッゴォコォォアアアオオオオォォ……ドォッゴゴゴゴゴバガオオオオオオオオン!!!

 

 

 

そして、アルトロンガンダムは、ライトアーム側のツイン・ドラゴンハングを折り畳ませ、新たな接近装備、ツイン・ビームトライデントを手にしてロッドユニットを展開させた。

 

展開したロッドの両端に形成される高出力の三又ビーム刃が形成されると、アルトロンガンダムは巧みなマニピュレーター捌きでこれを振り回して構えてみせる。

 

「さぁ……真骨頂の力だ!!!!いくぞ、那托!!!!」

 

メインモニター画面に広がるマリオネット達に対し、これまでの屈辱を糧にした五飛が叫ぶ。

 

ゴッッと飛びかかるアルトロンガンダムが、一気にツイン・ビームトライデントを凪ぎ払う。

 

その高速の斬撃が、いくつもの焼灼破断の斬撃音が重なって5機のシルヴァ・ビルゴを一斉に凪ぎ斬った。

 

 

 

ザヒュガァァッッ―――!!!!

 

ザシッッディディャギャガガガガアアアアアアアッ―――ドッッゴゴゴゴバァアアアアアアアアッ!!!!

 

 

一斉に爆破炎上するシルヴァ・ビルゴの爆煙を突き抜け、アルトロンガンダムはツイン・ビームトライデントの突きで矛先のシルヴァ・ビルゴの胸部を突き潰す。

 

 

ズゥドガォオオオオオオオッッ!!!!

 

ゴッッバォオオオオオオッッ!!!!

 

 

その一撃を皮切りに、荒ぶる双頭龍の連続無双が始まる。

 

 

 

ディッギャ、ディシュガッ、ザギィシャッ、ザァガギャッ、ザシギャアアアアアアア……!!!!

 

 

袈裟斬り、凪ぎ、突きを組み合わせた乱舞を見舞うアルトロンガンダムのその様は、正に古の武将さながらだった。

 

1機のシルヴァ・ビルゴへと突き穿ち、ボディを抉りながら反したビーム刃で二段構えの凪ぎを4機に見舞う。

 

そこから袈裟斬りを決めて1機を破壊した直後に、片手で振り回しながらの連斬ダメージをもう1機に与え、ツイン・ビームトライデントのもう一方の刃を叩きつけるような轟速の斬撃で斬り砕く。

 

激しい斬撃で潰されたシルヴァ・ビルゴは斬り口から爆発を起こして破砕した。

 

「俺達は宇宙の悪を叩き潰す……そうだろ?!!那托っ!!!」

 

 バルジのCICにおいても削れるはずのない戦力が削れていく状況が把握され、緊迫と重みのある空気を流れさせていく。

 

「外部からの強襲に、鹵獲していないメテオ・ブレイクス・ヘルのガンダムを2機と他の敵機6機を確認!!!MS隊、MD隊が次々に撃墜されていきます!!!」

 

「ゲート02ゲートにも何かが突入し、バルジ内部に更なる爆発及び火災被害が拡大!!!シルヴァ・ビルゴの格納庫にまで損害が!!!」

 

「別のシルヴァ・ビルゴ格納庫区画においても破壊が拡大中!!!これは……おそらく新型のガンダムの可能性が……!!!」

 

「ウ、ウィング・ゼロもバルジに……!!!バルジの上面に停滞中……距離はほぼ零に等しい距離です!!!鹵獲・撃破は……やはり失敗のようです!!!」

 

「何だと?!!」

 

「ですがっ、ウィング・ゼロの行動は、明らかに他のガンダムと同じ行動をしています!!!あの被験体であれば無差別に襲い掛かっていても不思議ではないはずです!!!」

 

「つまりは……討伐に行かせたガンダムのパイロットがウィング・ゼロを奪取したということか……!!!」

 

 ウィングガンダム・ゼロとガンダムデルタカイの暴走から端を発した一連の事はバルジに危機的状況を晒すに至った。

 

 ディセットは辛酸を絶えず飲まされる想いで歯ぎしりをしながら拳を叩き、ここにはいないトレーズに疑問を投げかけた。

 

「結局……否、所詮、ガンダムのパイロット達は我々の敵っ……!!!トレーズ閣下……エレガントとは……エレガントとはっっ……一体何なのですかっっ……?!!」

 

トレーズは財団関係者達に連行されながら、ロームフェラ財団本部の広大なる廊下を歩く。

 

その最中にディセットに応えるかのように心中で呟いていた。

 

(時代の流れ……激動が織り成す情勢……そこに必要な役者を立たせ、あるいは下ろして流れ止まない歴史に立ち会う。戦友(とも)であれ敵であれ、役者は常に必要なのだ……そして今、私は敗者を選択し、こうして幽閉された。それ故にOZも二つに分断されるだろう……財団と私を支持してくれる者達とに……ディセット。その時は君が指導者として導いてくれ……)

 

トレーズは瞑想していた瞼を開くと、流れる景色に目を向け、その情景を流転・激動する昨今の情勢、時間、歴史、等に当てはめた。

 

(宇宙世紀を揺るがすこの激動の時代をガンダムのパイロット達は……何を感じ、如何に闘っているだろうか……)

 

皮肉にもトレーズが想う従者と戦士は相対する運命……否、刻の流れにあった。

 

 ディセットは今一度状況をモニターで確認し、現時点の最善策を模索する。

 

「この状況……まずは援軍の要請を出す!!!バルジ周囲の基地及び部隊に大至急の援軍を要請!!!」

 

「ディセット特佐……その援軍の要請なのですが、付近のOZ勢力域の基地部隊に要請しても連絡が付きません!!旧連邦軍から接収したコンペイ島も破壊されたとの情報も入っております。おそらくは既にウィング・ゼロによって……!!!他のエリアからは援軍は最低でも到達に数時間は時間がかかります!!!」

 

「な……!!?援軍はこの距離では直ぐには望めんか……むしろいたずらに戦力を削るに等しい……なんてガンダムを野放しにしてしまったんだ!!!そして今、そのガンダムがここに……どの道同じならば……!!!先行するMDの部隊を奴らのネェル・アーガマに向けろ!!!あれで一斉離脱することなど目に見えている!!!我々も苦痛を叩きつけるのだ!!!展開中のMS隊と出撃可能な新型MDでガンダムへの火力を集中せよ!!!MDへ直ちにプログラム指示を!!!」

 

「は!!!」

 

 ディセットも手を打つ中、ウィングガンダム・ゼロが既にバルジに降臨していた。

 

 それも本来のゼロシステムの適格者であるヒイロの手によって。

 

 ジャキンと構えたツインバスターライフルの銃口先には、新たに起動を開始した別動部隊のシルヴァ・ビルゴ達が展開していた。

 

 ウィングガンダム・ゼロの反応を捉えたと思われる機体達が一斉にバルジの上方を目掛けて向かい始める。

 

 精密なロック・オンマーカーが幾多のシルヴァ・ビルゴを次々にロック・オンして捕捉していく。

 

「ターゲットロック・オン……敵機、新型MD……破壊する……!!!」

 

 

 

 ヴィギュリリリリリリィィィ……ヴァォアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!!

 

 

 

 ウィングガンダム・ゼロがギンと両眼を光らせた直後にヒイロはトリガーコントロールをした。

 

 チャージされたツインバスターライフルの銃口より、イエローやオレンジの光が入り混じった凄まじいビーム過流が撃ち出され、一直線にバルジ下方を目掛けて走る。

 

 そのビーム過流が一気に降り注ぐようにしてシルヴァ・ビルゴの群れを砕き潰す。

 

 

 

 ヴァズゥシャアアアアアアアアアアアッッッ……ドォズゥドォドォドォゴゴゴゴゴバァガガグワガァァアアアアアアアアンッ!!!!

 

 

 

 直撃で破砕爆発される機体もいればビーム過流を躱す機体もいたが、躱せた機体もビーム過流に帯びたプラズマ弄流により次々と爆砕されていった。

 

 シルヴァ・ビルゴは確かに脅威であることに変わりはないが、ウィングガンダム・ゼロクラスのガンダムや、ヒイロレベルのGマイスターからしてみれば些末な機体に過ぎなかった。

 

 進撃するカトルやトロワ達もバルジに奔ったそのビーム過流に気づいていた。

 

「あのウィングゼロ、もしかしてヒイロなの?!!」 

 

「……間違いない……あれは奴だ」

 

「……スペシャルエースの少年!!!」

 

 カトルの問いかけた疑問符にいつになく理屈抜きの感覚でトロワが答え、ラルフがニヤリと言ったその直後に通信を拾っていたヒイロが二人に割って答えた。

 

「こちらヒイロ・ユイ。時機にデュオも出てくるだろう。俺達はこのままバルジの戦力を殲滅させる」

 

「え?!!で、でも殲滅よりも退路を確保すべきじゃぁ……??!」

 

「近代改修した俺のヘビーアームズ改とサンドロック改、サーペント、これから戦闘に加わっていくデスサイズ・ヘル、アルトロン、そしてスーパーハイスペック機であるジェミナス・グリープとウィングゼロ……これらの戦力がそろえば事実上バルジの戦力殲滅が可能になる……!!!」

 

「トロワの言うとおりだカトル。ゼロも殲滅がベストの選択肢を示している……それにまだガランシェールの安全が確保できていない……戦闘を継続する……!!!」

 

 ヒイロが直ぐに通信を切り上げると、ウィングガンダム・ゼロが高速でガランシェールを狙うシルヴァ・ビルゴの機体群目掛けて急加速していく。

 

 重力下でいえばターゲットに対する直上急降下に等しいアングルだ。

 

 攻め入るヒイロの姿勢に同調し、トロワとカトルは互いにモニター越しに頷き合って更なる攻めに転じた。

 

「ガランシェールをやらせはしない……!!!」

 

 ロック・オンしたシルヴァ・ビルゴの機体群へ再びウィングガンダム・ゼロがツインバスターライフルのビーム過流を撃ち放つ。

 

 

 

 ヴズドォァァァアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!

 

 ドォダァガァアアアアアァァァッッ……ドォゴババババババァゴオオオオオオッッ!!!!

 

 

 

 ガランシェールの後部を捉えていたシルヴァ・ビルゴ達が爆散していく中、ウィングガンダム・ゼロはツインバスターライフルを二分割にして二挺持ちに切り替えながら、撃ち漏らしたシルヴァ・ビルゴへ襲撃を仕掛ける。

 

 

 

 ディッシュダァアアアアアアッッッ!!! ディシュダァアアアッ、ディシュダァァアアアッ、ディシュダアッッ、ディシュダァァッッ、ディシュダァアアアアアアアアアアアッッ!!!

 

 

 ウィングガンダム・ゼロが低出力のツインバスターライフルを交互に放ちながらの射撃をシルヴァ・ビルゴへ見舞っていく。

 

 個々に撃破されていくシルヴァ・ビルゴは、装甲を瞬発的なビーム過流に吹き飛ばされる形で破砕されていく。

 

 無論、低出力でもその威力は並大抵の威力ではなく、ビームマグナムの威力に相当する程の威力を持っていた。

 

 

 

 ヴォドゥルルルルルルルルルルルゥゥゥゥッッッ!!!

 

 ドドディギガガガガガガガガガガギャララララアアアッッ!!!

 

 

 その最中にビームサーベルで襲い掛かるシルヴァ・ビルゴの1機をマシンキャノンで胸部面から砕き散らせ、面前に捉えたシルヴァ・ビルゴ達にレフトアーム側のツインバスターライフルの銃口を向ける。

 

 

 

 ヴァシュダァアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!! 

 

 ドォゴババォオオオオオオオオオオオッッ……!!!!

 

 

 

 シルヴァ・ビルゴ達は見事にツインバスターライフルから放たれた中規模のビーム過流によって多重爆砕していった。

 

 その爆発の向こうでツインバスターライフルを構えたウィングガンダム・ゼロの両眼が光る。

 

 ウィングガンダム・ゼロが体現した無双たるその怒涛の様は、ヒイロの帰還と同時にメテオ・ブレイクス・ヘルの揺るぎない復活と反撃の意志を感じさせるものだった。

 

 一難去ったガランシェールのブリッジではフラストが安堵に近い溜息を混じらせ心中を吐露する。

 

「はぁああ~……た、助かったぁ……」

 

「馬鹿者!!これしきで油断するな!!!全然安全圏内ではないんだ!!!」

 

「へ、へい!!!すいやせん、キャプテン!!!」

 

「キャプテンの言うとおりだ、フラスト!!進路上にはまだ敵が飛び交ってるんだっっ!!!」

 

「う……ッ!!!新たな熱源探知!!!側面側からのMS部隊だ!!!」

 

「それみろ!!!」

 

 ウィングガンダム・ゼロがガランシェールに近づくシルヴァ・ビルゴ達を一掃した直後、ビームライフルやドーバーバスターのビーム射撃が走り始めた。

 

 その射撃を仕掛けるプライズリーオーやリーオー部隊に流れるようにターゲットを選定したヒイロは、ツインバスターライフルの二挺持ちを継続し、ターゲット群をロック・オンした。

 

「OZプライズとOZの混合部隊か……」

 

 

 

 ジャカキンッ……ヴィギュリリリリリリリィィィ……ヴァズァダァアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!

 

 ギュズォオバァアアアアアアアアアアアアアアッ……ドォゴバァッ、ドォドォドォドォズズズガクワッゴゴゴゴゴバァァアアアアアアアア……!!!!

 

 

 

 二軸線に放たれたビーム過流が走り、幾多のリーオー達が立て続けに爆散の華と化していく最中、ウィングガンダム・ゼロはウィングバインダーを展開させて更にその火中に飛び込んでいく。

 

 残存するプライズリーオーやリーオーにツインバスターライフルの低出力の瞬発的なビーム過流や中出力のビーム過流を浴びせながら吹き飛ばしていく最中、ヒイロが見据えていたのはもう一機種のMD、リゼル・トーラスの部隊だった。 

 

 先ほどのディセットの指示によりネェル・アーガマを標的に捉えていたその機体群は、既に先行部隊がネェル・アーガマに到達しようとしていた。

 

 ネェル・アーガマのCICにおいてオペレーターのエイーダがその警戒状況を叫ぶ。

 

「敵MS、いえ、MDが本艦に向けて一斉に急接近を開始しました!!!なんてスピード……!!!もう距離がありません!!!」

 

 急遽迫る一刻の猶予もない状況に、ケネスは眉間にしわを寄せて手をかざしながら指示を放った。

 

「対空、対MS、MD戦闘用意!!各砲座弾幕展開!!護衛のMSチームも弾幕を張って本艦を徹底的に守れ!!ただし、死に至る程身を呈してまでとは言わん。彼らを出迎えるにあたり、皆で生き残っていなければ意味がないからな。無論、矛盾めいた指示ではある。だが、ここに集う者達は様々な苦境を経て今この艦にいるのだ。私の意図と思ってもらいたい!!!」

 

 ネェル・アーガマには、ケネスやエイーダといったOZクーデターから逃れ、かつ今に至るまでの政府の在り方に疑問を持った元連邦軍人やヒイロ達のような反連邦・OZのテロリスト、それらを幇助する者達、現役や元の旧ジオン、ネオジオンの兵士達といった様々な勢力からの事情を抱えた者たちが集っていた。

 

 故にケネスは一人も欠けさせたくはない信念を持っているのだ。

 

 かつてのMSパイロットから転属した砲術長のアルバ・メルクルディと彼がスカウトした元戦争孤児の砲術士ドリット・ドライが弾幕展開に移行させる。

 

「メガ粒子砲、主砲、副砲、各砲座CIC指示目標撃ち方はじめ!!対空レーザーシステム、AAWオート!!ドリット、シュミレーション通りにやればいい。落ち着いていこうか」

 

「あぁ。けど気遣われる間でもないさ。やってやるよ!!対空レーザーAAWオート……メガ粒子、撃ち方はじめっ!!!」

 

 ネェル・アーガマに装備されたメガ粒子砲砲塔が展開し、上下の主砲、左右カタパルト先端側面部の副砲より、メガ粒子ビームが放たれ始め、対空弾幕のレーザー砲がオートで接近するリゼル・トーラスを狙う。

 

 だが、どのリゼル・トーラスもそれらをいとも簡単に躱し、高速で機体をMS形体へ変形させビームキャノンの高速射撃やメガビームランチャーの砲撃を開始する。

 

 ネェル・アーガマが被弾していく中で、時折撃墜される機体もいた。

 

 それに一役買っていたのがマグアナック隊だった。

 

 母国の防衛やカトルの護衛などの戦闘経験豊富な彼らが先頭に立ち、アブドゥル機やアウダ機はビームライフルやアフマド機はビームマシンガンとアームビームキャノンの射撃で応戦し、ネェル・アーガマの戦闘火器よりも高い命中精度を見せていた。

 

 マグアナック共通のビームライフル自体が高出力で、ガンダリウムの装甲にも十分なダメージを与え込むことが可能だ。

 

 無論、アフマド機のビームマシンガンはそれを連射式にしたものである故、より一層の弾幕防衛に効果を発揮しており、付け加えてアフマド機のレフトアームそのものが武装となったアームビームキャノンはメガビームランチャーと同等の威力を誇り、中る敵機を一撃で破砕させて見せていた。

 

 その彼らの後方では、カトリーヌのマグアナック、ジュリのM1アストレイもビームライフルで応戦する。

 

 特に彼女達は戦闘経験はシュミレーションのみであり、初の実戦だった。

 

 恐怖やドキドキ感、エキサイト感が複雑に入り混じった感覚に満たされるコックピットの中で互いを励ましあう。

 

「こんなにいっぱい……!!!ジュリちゃん、絶対死なないでね!!シュミレーション思い出しながらいこうよ!!!」

 

「カトリーヌちゃんもね!!あたしだって、オーブにいってアサギやマユラ達の安否確かめるまで死ねないから!!!」

 

 カトリーヌは今自分にできる弾幕を張ることに集中する中、最前線で獅子奮迅する兄・カトルのガンダムサンドロック改の姿を見る。

 

 カトリーヌはその勇猛さを伝わらせる姿に次元の凄まじさを感じてしまう。

 

「兄さんて……やっぱりすごい!!!恐さのねじが飛んでるのかな??でも、ボクだってその兄さんの妹なんだからこんな次元で怖気づいちゃいられない……みんなのために戦うんだって!!!」

 

 カトリーヌは自分にも流れているカトルと同じDNAを信じ、自らの選んだ選択肢を言い聞かせた。

 

 だが、彼女たち以上に緊迫するのはマグアナック隊のアウダとアブドゥル、アフマド達だった。

 

「いいか?!!絶対にお二人を死なせるなよ!!!カトル様の妹様、カトリーヌ様とそのご友人なんだ!!!」

 

「あたりまえだ!!!ていうか、それ以前にこんな状況に出させるなよな!!!なぜ止めなかった?!!」

 

「カトリーヌ様ご自身の意志だからだ!!!カトル様も妹様のお気持ちを汲んでの判断なん……だっ!!!」

 

 アウダは通信で返答しながら急接近した1機のリゼル・トーラスにアームクローの一撃を食らわせた。

 

 貫抜いた胸部からアームクローを引き抜いて掴み、その動かなくなったリゼル・トーラスを弾幕の中へ投げ込んだ。

 

障害物認識されたそれは瞬く間に同機種の攻撃とネェル・アーガマサイドの攻撃とに破砕されていった。

 

その最中、更にリゼル・トーラスの機体群がネェル・アーガマに接近し、これを把握したオペレーターのソフィが青ざめる。

 

「……!!!敵MD機体群、更に接近!!!弾幕が追い付ける状況じゃありません……あぅっ!!!」

 

彼女が状況をナビゲートする最中、更なる被弾の衝撃が襲う。

 

「くっ……これが慈悲無きMD!!容赦はしないか……!!!対空弾幕レベルを最大値に設定!!!」

 

「はいっ……―――!!!MD、本艦ブリッジ、CICに急接近!!!」

 

 エイーダが新たに叫んだ直後、リゼル・トーラスの1機がメガビームランチャーをネェル・アーガマのブリッジに突き付けた。

 

慈悲無きMD故にその瞬間、ブリッジ兼CICのクルー達は凍りついた。

 

 

 

ダガギャアアアアアッッ!!!

 

 

 

死へのスローモーションの直後、クルー達が気づいた時には既にリゼル・トーラスはいなかった。

 

リゼル・トーラスは駆けつけたウィングガンダム・ゼロのシールドに刺突されて吹っ飛んでいたのだ。

 

「ネェル・アーガマを防衛する。ターゲット敵機群、リゼル・トーラス……!!!」

 

ウィングガンダム・ゼロは中小出力のツインバスターライフルを交互に放ちながらある程度のリゼル・トーラスを破砕させていくと、ネェル・アーガマの真上に停滞し、展開する味方機に注意を促す。

 

「これより広範囲の攻撃を仕掛ける。展開中のMSは、極力ネェル・アーガマに機体を召集しろ!!!」

 

ウィングガンダム・ゼロは左右にツインバスターライフルをハの字に広げて構え、銃口にエネルギー充填させていく。

 

周囲にいるリゼル・トーラスを次々にロックしていき、多数のロックマーカーがレッドマーカーになっていった。

 

「ツインバスターライフル、広域ロック・オン。GNDエネルギー充填圧縮率125%の最大出力で発射する……ターゲット群、排除……開始!!!」

 

 

 

ヴィギィリリリリリリリリィ……ヴァオオァァアアアアアアアアアァァァァアアアアアアアァァァッ!!!!

 

ゴォババババドォドドドドゴォアォオオオンッ、ドォドォゴババドォゴゴゴォドォドドドドォッッ!!!!

 

 

 

左右斜めに発射されたツインバスターライフルのビーム渦流はネェル・アーガマからリゼル・トーラスをシャットアウトするかのように放たれ、その機体群を砕き潰すように破砕爆破させ圧倒する。

 

そしてウィングガンダム・ゼロはネェル・アーガマの真上を軸に自転旋回を開始し、ネェル・アーガマ近辺のリゼル・トーラスを旋回と伴うビーム渦流で見る見る内に排除させていく。

 

カトリーヌとジュリは恐怖と危険視を覚えたMDが、いとも簡単に排除されていく光景と回転するビーム渦流の光に息を飲み続け、途方もない次元を感じていた。

 

ローリング・ツインバスターライフルのビーム渦流が回転を維持しながら徐々に発射角度が上げられていく。

 

そしてウィングガンダム・ゼロの広げた両腕と平行になった瞬間、持続発射されるビーム渦流に更なるビーム渦流エネルギーの発射が重なる。

 

「ツインバスターライフル、追加出力エネルギー装填」

 

 

 

ヴァアアアアアアアァァァァ……ドォヴァダァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァッッ!!!!

 

ドォドドドドゴバォッ、ドォドドドドゴォアッ、ゴバババババドォドドドドォッ、ズズズドォドドドドシャアアアアァァ……ゴゴゴゴゴゴゴゴババババゴドォドォドォドドォゴゴゴゴオオオオォォォ!!!!

 

 

 

機体の旋回速度を速めながらの広範囲に渡る二本のビーム渦流が次々にリゼル・トーラスを破砕させていく。

 

そしてようやくビーム渦流が終息を迎え、ウィングガンダム・ゼロが旋回を停止させると、周囲には爆発光と化したリゼル・トーラスの多重爆発の連鎖が拡大していった。

 

「リゼル・トーラス、排除完了。バルジ戦力の75%を削減させた……敵は壊滅させたに等しい。残るはバルジか……!!!」

 

ウィングガンダム・ゼロはウィングバインダーを展開させた加速をかけると、再びバルジの方向へと向かった。

 

 それと同時タイミングの頃合いでガンダムデスサイズ・ヘルとアルトロンガンダムもバルジから飛び出し、出くわすリーオーやプライズリーオーを次々にアームドツインビームサイズやツインビームトライデントで斬り潰しながらネェル・アーガマを目指す。

 

「そらそらっ……死神様のっ……お通りっ……だっ!!!おっ……五飛も出てきたみたいだな!!」

 

「邪魔だっっ!!!那托の進む道を阻む者は叩き潰す!!!荒ぶる双頭龍は解き放たれた!!!もう誰にも俺達を止められんっっ!!!」

 

 怒涛の勢いで駆け抜ける2機のその後に残るのはデブリと化した機体の残骸だ。

 

 時折ビームサーベルで斬りかかるプライズリーオーやリゼル・トーラスのビーム刀身もろとも斬り砕く瞬間もあり、以前よりも増して格が跳ね上がった事を証明させていた。

 

その一方、ガランシェールの前方ではガンダムジェミナス・グリープが高速かつ縦横無尽の軌道でビームランスの斬撃を乱舞させ、獅子奮迅に死守する。

 

 GNDソニックドライヴァーからのダイレクトエネルギーを供給するメガ・パーティカルブースターが驚異的機動力を実現させていた。

 

 無論、敵の射撃も中ることがない。

 

 

 

 ズバシュッ、ディガギィィィッッ、ギャシュンッッ、ザガギャアッ、ザシャアンッッ……ギュイッ、ズゥディギギギギギャアアアアアアアアッッ!!!! ザシュドォオオッ、ディギシュイィィィィッ!!!!

 

 

 

 リーオーやプライズリーオーを突きや叩き斬り、斬り払いで1機、1機を斬り仕留めたり、振りかぶった広範囲の斬り払いの一撃で4、5機を斬り飛ばしたりしながら、無双がかった斬撃の様を見せつけてガンダムジェミナス・グリープは一層の攻勢に駆け抜ける。

 

「ガランシェールはっ……プル達の帰る場所だッッ!!!こんな陳腐なエリアで墜とさせはしないぜっっ!!!」

 

 プルとマリーダ……彼女達の戻る場所を守るという信念と反撃の意志がアディンを奮わせていた。

 

 

 

 ズシュドォオオッ!!!! ギュゴッッッ―――ズギャギィィッ、ザシュバッ、ディガギャアアンッ……ズドォシュッッ……ディギャガアァアアアアッ!!!! 

 

 

 

 GNDソニック・ドライヴァーの特性機動力を活かし、高速でシルヴァ・ビルゴの背後に回り込んで刺突。

 

そこから一層の加速をかけての三連斬、突き上げ、斬り払い……ビームランスのビームの刃が、低純度のガンダニュウムの装甲を一瞬に焼灼させながら斬り裂かせていく。

 

 その攻撃と軌道はアディンが思い描くイメージ通りにガンダムジェミナス・グリープへ反映されていた。

 

 破格的に俊敏な機動性を前に、シルヴァ・ビルゴ達は射撃反応の遅れを強いられていき、その間にもビームランサーに突き貫かれては斬り裂かれ、叩き斬られては斬り払われていく。

 

 その最中、1機のシルヴァ・ビルゴに振るわれた強烈な薙ぎが炸裂し、一瞬にして機体胸部を破断させた。

 

 断面の隙間の向こうからガンダムジェミナス・グリープが顔をのぞかせ、その両眼が光った直後に断面部からの爆発が広がる。

 

そして背面のメガ・パーティカルブースターをライトアームに装備したメガ・パーティカルバスターを向け、高火力のビーム渦流を叩き込んだ。

 

 

 

ジャキッ、ヴゥヴァオアアアアアアアアアアアアッ!!!!

 

ゴォアアアアアォォッ……ドォドドドドゴォババァアガァアアアアアアアア!!!!

 

 

 

シルヴァ・ビルゴの機体群が突き進むビーム渦流によっさて、一斉に削り取られるように機体を吹き飛ばされていく。

 

ガンダムジェミナス・グリープはシルヴァ・ビルゴ達を壊滅させると、多方向にいるリゼル・トーラスやプライズリーオー、リーオーに向け、連発でメガ・パーティカルバスターを放ち、一発で2機、3機づつ破砕させていく。

 

 再起したメテオ・ブレイクス。ヘルのガンダム達は、MSの歴史と常識を完全に破壊したポテンシャルを証明させていた。

 

そして再び加速したガンダムジェミナス・グリープは、多角形軌道を描きながらビームランスの斬撃を繰り出し、凪ぎ払いや叩き袈裟斬り、機体を瞬間的に自転旋回させながらの回し斬りと言った斬撃を敵機群に見回せ、更なる爆発光を拡大していった。

 

その怒濤の攻勢の様は、今のアディンの想いと闘争心そのものを体現しているかのようであった。

 

ジンネマン達は自分達が長年を経て経験したMS戦闘の常識を逸脱する光景に息を飲み続ける他なく、同時にかつてない心強ささえも覚えていた。

 

「あいつがいてくれれば……必ずマリーダとプルを助けられる。あの釘づけにされてしまう戦いっぷりを見ると、妙な安心感がわく……そう感じさせられる。俺の娘たちを任せられるな」

 

「キャプテン、あのガンダム小僧を認めるんですね?」

 

「実力は当の昔に認めてる。あいつらだからな」

 

「え?彼と娘さん達のお付き合いじゃないんすか?」

 

「な?!!バカか、フラスト!!!それは別だ!!!」

 

秒単位で戦力が削減されていく一方、バルジCICに、追い討ちをかけるかの情報が飛び込む。

 

「なっ?!!トレーズ閣下が、拘束・幽閉された?!!何かの情報ミスではないのか?!!」

 

「わかりません!!まだ情報が錯綜しており、事実確認を急いでいます!!ですがっ、そのような情報が今、プライズを含めたOZ全体の情報網に流れています!!!」

 

「トレーズ閣下っ……っ!!!」

 

予期できない、認めることなどできない状況がディセットをはじめとする、トレーズを支持するOZ兵士達に衝撃を駆け巡らせていた。

 

しかし、その事実は紛れもなく真実であり、トレーズを乗せた財団関係の車両が財団本部敷地内の路上を走り出す。

 

非常事態に更なる非常事態……それもOZという組織規模のものだ。

 

過度の逼迫した状況に痺れを切らしたディセットはバルジに留まる責任位置に在ることを解りつつも、部下に投げ掛けた。

 

「すまない!!!この場を預かってはくれぬか?!!無論、解っている!!!私にはバルジに留まる、指揮する責任がある……しかしながらっ、事実確認を自らを持って確認せずにはならん……!!!」

 

「行って下さい!!ディセット特佐!!あなたはトレーズ閣下の側近であります……御身を持って、トレーズ閣下のご無事をご確認される使命がございます!!!」

 

「ディセット特佐、行って下さい!!!」

 

「後は我々に……!!!」

 

「お前達っ……本当にすまないっ!!!」

 

部下達の理解を得たディセットは、バルジの後部ゲートレーンに停泊していたシャトルに乗り込み、複雑な心中を抱きながらバルジを後にする。

 

ディセットがシャトル内で振り向いたバルジ前方には、絶える間がなく大中小の爆発の爆発やビームが飛び交っている。

 

戦域にウィングガンダム・ゼロがいる時点でバルジの運命も見えていた。

 

「バルジ……!!!」

 

 その最中、遂にウィングガンダム・ゼロが姿勢制御しながら構えるツインバスターライフルの銃口をバルジへと向けた。

 

 ターゲットとしてモニターセンタースクリーンにバルジをロックオンし、精密射撃モードのロック・オンマーカーへと切り替わる。

 

「デュオやカトル達もこっちへ離脱しつつあるな。ツインバスターライフル、スタンバイ。攻撃目標、OZ・OZプライズ宇宙要塞バルジ」

 

 通常のロック・オンマーカーではなく、両サイドからレールのように奔るロックオンマーカーに精密な数値表記や詳細な文字表記も随所に表示されている。

 

 そして完全にバルジを捉え、ロック・オンマーカー表示が赤色に変わる。

 

「ターゲット、ロック・オン……この一撃から俺達の反撃は始まる……マリーダも必ず取り戻す……っ?!!」

 

 強い意志を固め、コントロールグリップを握る力を強めたその時、ヒイロの感情に呼応するようにゼロシステムがマリーダに関するイメージ情報を脳裏に投影させた。

 

「……マリーダ……っっ……!!!」

 

 彼女がこれまでに置かれた状況、所在、関連する人物などの情報が目まぐるしくヒイロの思考に過っていく。

 

 死には至ってはいないものの、彼女へもたらされた非情な現実の情報が投影され、驚愕を覚えたヒイロの感情が直ぐに怒りに変わった。

 

 眉を顰めながら冷静な感情に怒りを灯させ、より一層の強い握力に感情を反映させた。

 

 

 

『まだ間に合う……怒りと憎しみに囚われないで』

 

 

 

「っ?!!声?!!」

 

 その最中、謎の女性の声が助言するように過り、その性質はマリーダのようだったがどこかが違う違和感を感じさせた。

 

 直後、ゼロシステムが見せる情報が終わり、再び捉えたバルジのモニター投影に戻る。

 

「マリーダ……いや、違う感じがしたが今の声は……?!!まだ間に合う……そう言っていたな。ゼロシステムの声なのか何の声かは知らんが了解した。待っていろ、マリーダ。必ず迎えに行くっ……攻撃目標バルジ、破壊する!!!」

 

 

 

 ヴヴィリリリリリ……ヴォドォルゥヴァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!

 

 

 

 最大出力で放たれたツインバスターライフルのビーム過流が敵残存機を破砕させながら一気にバルジへと突き進む。

 

 ツインバスターライフルの荒れ狂うような図太いビーム過流は、見事にバルジ砲に直撃して、一気に内面を突き進みながらあらゆる区画を連続で破砕爆破させていく。

 

「がぁあああああああああ?!!」

 

 バルジCICにも高エネルギー破砕流が押し寄せ、下からマグマのごとく噴き上げるように兵士達を巻き込んだ。

 

 その破壊エネルギーはバルジの外壁面を満たしながら貫き、その外壁面も次々と爆発を噴出させていく。

 

 ヒイロは発射を持続させながら先ほどのローリングシュートの時のように、次発射エネルギーを装填させながら更なる高出力を重ねて撃った。

 

 オーバーキルというべき大ダメージを与えられたバルジは、爆発を巻き起こしながら強い光を放ち、遂に臨界エネルギー爆破を巻き起こして、強力な爆発エネルギーを拡散させながら宇宙の塵と化していった。  

 

 反撃の強力な一手を下したヒイロ、デュオ、トロワ、カトル、五飛、ラルフ……そして彼らをサポートした面々がそれぞれにバルジの爆発の光を見届ける。

 

 宇宙世紀に類を見ない不可能を可能にした軍への反抗が成された瞬間だった。

 

「バルジの破壊を確認。反抗プロジェクト・フェーズ1、任務完了……ゼロ。俺達の次の任務はマリーダ達の救出だ……!!!」

 

ヒイロの硬い意思に呼応するように、ゼロシステムが発動し、目映いモニター光でヒイロを包んだ。

 

 一方、マリーダとプルを捕らえたグラーフ・ドレンデは地球を目前にしていたが、再度地球を離れ宇宙を航行する。

 

 ラプラスプログラムが次に示したポイントが地球からまた遠ざかる位置を示していた為であり、マーサの思惑がまた変動を起こしていた。

 

「彼女をオーガスタ、もしくはムラサメ研究所で解体する計画がまた伸びたのだけど……どの道次はコア3跡とか言ってたわね。もうこの際、DOMEプロジェクトをすっ飛ばして直接彼女に生体ユニットになってもらいましょう……ベントナに計画変更とマニュアル情報のデータ要求を」

 

「御意、ミズ・マーサ!!」

 

 マーサは私兵に指示を命じた後、マリーダを幽閉している部屋のドアに手を当て、不気味な笑みを浮かべた。

 

 その部屋では、憔悴しきった虚ろなまなざしのマリーダが壁に手を当てながらその壁を見つめていた。

 

「……マスター……姉さん……ヒイロ……会いたい……会いたいっ……!!!」

 

 マリーダは連想される者たちを想い、悲痛に呟きながら壁に顔を伏せた。

 

プルとも艦を同じくしても直接会っていなかった。

 

そのプルはユニコーンガンダムのコックピットでひたすら膝を抱え続け、その表情には以前の明るさはなく、彼女の目には涙が流れ出ている。

 

 マリーダが監禁された半重力状態の部屋とユニコーンガンダムのコックピットには、彼女達が流したその涙たちが浮かんでいた。 

 

 

 

 To Be Next Episode

 

 

 

 次回予告

 

 

 メテオ・ブレイクス・ヘルは遂にバルジを破壊した。

 

 それは組織が二分する状況を示唆し始めていたOZにも痛手を与える。

 

 ヒイロ達は合流したネェル・アーガマ、ガランシェールと行動を共にすることとなる中、ネェル・アーガマがかつて資源衛星MO-5を破壊した戦艦と同一艦であることにアディンは私怨の恨みに囚われてしまう。

 

 その一方、パラオからジンネマン達の捜索に赴いていたネオジオンの部隊とグラーフ・ドレンデが戦闘状況にあった。

 

 艦内ではマーサによる拷問がマリーダを苦しめ、パラオのネオジオン兵達は一方的な戦力差に目前にいるマリーダを助けれない状況に辛酸をのまされていた。

 

 その絶望的な状況の闇の中、ユニコーンガンダムの中で膝を抱えながらいたプルが感じたものは、その状況を覆す光だった。

 

 

 次回、新機動闘争記 ガンダムW LIBERTY

 

 

 エピソード 37 「救出への総攻撃」

 

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。