新機動闘争記ガンダムW LIBERTY   作:さじたりうす

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2年以上にわたり大変長くお待たせ致しまして誠に申し訳ありませんでした。

 第二派のスランプや仮面ライダーダブルの二次小説開始、二次小説キャパオーバー(Xやオルフェンズ等他にやりたいガンダムが重なる)、酷道とキャンプの目覚めなど色々引き起こってしまった所存です。

 ここへ来てようやくモチベーションが元通りになりました。

 
 ギリギリ金曜日ですが、投稿いたします!!!

 本当に長くお待たせ致しました!!!




エピソード31 「ジェミナス・グリープ、出撃」

OZプライズ管轄 宇宙要塞・バルジ

 

 

 

数隻編成の高速宇宙戦闘艦がバルジより発進していく。

 

その内の一隻に禁忌のガンダムであるウィングガンダム・ゼロとガンダムデルタカイが搭載され、被験パイロットに選定されたキルヴァとリディが乗艦していた。

 

艦載格納庫に横たわるように格納されたウィングガンダム・ゼロを見ながら、相変わらずの狂喜の笑みを浮かべて語らう。

 

「キッヒヒヒヒ!!コイツがウィングゼロか!!間近で見ると高揚感がぱないぜっ!!!話によるとコロニーを壊滅させる性能があるんだってなぁ……!!!たまんねーなっ、デルタカイの兄ちゃんよぉ!!」

 

キルヴァはテンションを高くしながら、対象的に手摺にうつ向くリディの肩に手を回した。

 

「……気安く触れるな……馴れ馴れしい……」

 

「あぁ!!?んだ、てめぇえっ?!!」

 

キルヴァの腕を振り払うリディの素振りに、キルヴァは即座に苛立ちを露にし胸ぐらを掴んだ。

 

するとリディは虚ろな眼光をリディに当てながら話始めた。

 

「俺はな……メテオ・ブレイクス・ヘルのガンダムさえ破壊できればいいんだ……ガンダムデルタカイがそう俺に示すんだ……ヤツらのガンダムの破壊を、力の破壊をな……!!!」

 

「示すぅ……?!!意味不明なコト抜かすなぁっ!!!」

 

「解るさ……ウィングゼロはどうかは知らんが、少なくともシステムは同系統だ。ガンダムデルタカイは戦いという行動の意義を示す……力という力の破壊が戦いの根底に尽きる心理だっ……!!!」

 

リディはキルヴァの手を潰しかかるように握りしめ、しばらく眼光同士を膠着させる。

 

すると、意表を突き、攻撃的だったキルヴァの方が先に手を離した。

 

「へっ……そうかい!!!そうかい、そうかい……!!!ならその心理とやら、ウィングゼロでも見させてもらうぜ……!!!同じゼロシステムになぁ……!!!模擬戦……覚悟しとけよ……!!!」

振り返りながら威圧と慢心をばらまいてその場を後にしていくキルヴァ。

 

このやり取りを見ていたミヒロがリディを気遣いに寄り添い、リディもまたそれに気を許すように答えた。

 

「リディ……あんな強化人間なんかの図に乗ったらダメよ。あなたのペースがかき乱される」

 

「大丈夫だよミヒロ。むしろ心理をヤツに教えてやった。かき乱されてはいないよ……あぁっ、でもヤツと対峙した時、頭に、頭の中に『コロセ』って声がずっとしていた……俺……アイツ、殺しそうだ。あはは、ハハハハハハ!!!ハハハっ……ハハハ……ミヒロ……狂気に呑まれるよ……狂気にぃ……!!!ミヒロぉっ!!!」

 

「リディ……!!!」

 

ミヒロは話す中で次第に情緒不安定になっていくリディを母性的な衝動のままに抱き寄せた。

 

そのリディの精神状態はゼロとナイトロの両システムに呑まれ、ガンダムの生体端末と墜落している証拠であった。

 

(リディは……OZの、いえ!!OZプライズのせいでガンダムデルタカイの為の道具扱いになってしまった……私が居なきゃ、支えなきゃパイロットの時以外のリディはダメなんだ……!!)

 

今のリディに対し、恋愛感情の他に母性にも関わる感情も抱くミヒロは、怯え始めたリディの頭を撫でながら、より抱き締めた。

 

キルヴァは少しチラ見しながら去り歩きながら鼻で笑う。

 

「ベタベタしちまって……ま、俺はロニをメチャクチャに頂いたケドナ!!キヒヒヒヒヒ!!さぁっ……て……」

 

キルヴァはウィングゼロの側面を歩きながら持ち前の狂気をかり立たせ、欲望の野心を吐いた。

 

「破壊のガンダムってんだから、この俺様が破壊の限りを尽くしてデータに貢献しないとなぁ……!!!一度やってみたかったんだ……あらゆるモノの破壊をなっ!!!キシッヒヒヒヒヒヒハハハ!!!」

 

狂気を乗せた艦隊が月の方面を目指す一方、バルジの牢獄室に捕虜とされているデュオと五飛がこれから始まる狂気の模擬戦実験を危惧しあう。

 

デュオは寝そべりながら薄暗い天井を眺め、呆れた口調で五飛に投げ掛けた。

 

「はぁ~あっ……プライズの連中、遂に馬鹿ハッピャクなコトおっぱじめるぜ、五飛……ウィングゼロとデルタカイで模擬戦だとよ……こりゃ、他の部隊は勿論、周囲のコロニーや資源衛星が吹っ飛ぶぜ!!!OZの連中がどーなろーが知ったこっちゃねーけど、コロニーが巻き込まれんのはゴメンだ!!!」

 

対する五飛はあぐらの姿勢で壁に背もたれをしながらOZプライズ側の行動を見下すように否定した。

 

「……つくづく馬鹿な奴らだ。あのガンダムのシステムは必ず適性がある。簡単に言えば並外れた強固な精神力の有無だ。これが無ければ簡単にシステムに呑まれる」

 

「はいはい、どーせ俺は適性は有りませんよー」

 

「フン……別に貴様らを卑下はしていない。むしろ評価に価する。本当に精神が弱ければ精神崩壊、良くてシステムの生体端末になり果て、最悪死に至る」

 

「ったく、じーさん達も大層な代物ん造りやがったぜ。ケド、まっ……皮肉にも俺達のキリ札でもあんだよな……」

 

デュオは喋りながら寝そべった状態から反動を使って上体を起こすと、ため息混じりに再び天井を見つめた。

 

「あーあっ!!俺達もいつまでモルモット君してりゃいいんだかなー!!ったくよー!!」

 

「反逆者をこれ程長い間生き延びさせているというのは、軍を見ても俺達のような存在が希少という事だろう……俺達にもいずれ転機は来る。今は堪え忍ぶのが最善の抵抗だ。ラルフのヤツもその為にじっくりと今に至るまでに根回しをしている」

 

そう言いながら五飛はあぐらのまま姿勢を正し、精神統一の瞑想に入った。

 

「根回し……かっ……まだまだ気長に行くっきゃねーかっ!!頼むぜラルフ!!」

 

 

 

パラオ周辺宙域

 

 

 

OZプライズとマーサの私兵団がパラオを目指し、刻々と距離を近づけていく。

 

目的は長期潜入していたマーサの私兵の内通により確定した、マリーダとヒイロの確保かつユニコーンガンダムの鹵獲だ。

 

MD機であるリゼル・トーラスが高速先行していく中、後方からプライズ・リーオーが追従する。

 

尚、リゼル・トーラスのそのスピードは人間が絶対に耐えきれない域の加速をかけている為、決して追い付く事はない。

 

あのシナンジュよりも速いのだ。

 

無論、先行偵察を兼ねての先制攻撃の為、追い付く事に焦る必要もない。

 

更に言えば、機械であるが故にニュータイプが感覚を関知する事もない。

 

ニュータイプとして敵意ある嫌悪感を感知することが出来るプルも例外ではなく、ガランシェールの寝室でアディンと一緒に居れる喜びに浸り、彼の腕に抱きついて夢中になっていた。

 

「アディーン……ふふっ♪」

 

「な、なんだよ、プル?は、離れろよな」

 

「誤魔化したってダメだよ☆アディンが嬉しがってる気持ち、あたしにはわかっちゃってるんだから~」

 

「くっ……あ、相変わらずいっつもそれで調子が狂うぜ~……ったく~!!すっかり元気になっちまいやがって!!」

 

「あたしはいつも元気だよ~!!」

 

更にピッタリとくっついてくるプルに対して、アディンもまたまんざらでもない様子だった。

 

その一方で、マリーダがその日の二回目になるサント家のクッキー作りに参加し、皆に振る舞っていた。

 

サント家と親交があるネオジオン兵士のパイロットとメカニックの夫妻であるテルスとジェトロも加えての一層賑やかな振る舞いの一時になっていた。

 

「サンドイッチとクッキーじゃ、ジャンルが違うけど、テルスもマリーダ中尉の味を見習って欲しい美味しさだよ。テルスも美味しさの威力で僕に衝撃与えて欲しいかなー……」

 

「えぇ?ジェトロー、ちょっとヒドイヨー。いつも頑張って想い籠めてるのに……」

 

「テルス……流石にこの前のサンドイッチの具は砂糖入れすぎだったって……でも、籠めてるのはいつも伝わっているし、今日は大丈夫だよ!」

 

すると上官にもあたるマリーダが付け足すようにフォローを入れた。

 

「テルス少尉のクッキー、今日初めて食してるが、ジェトロ機付き長が言うような違和感はない。普通に美味しく頂ける……」

 

それを聞いたテルスは表情を明るくさせてジェトロにその喜びを主張した。

 

「本当ですか~!?ありがとうございます!!……だって!ジェトロ!マリーダ中尉のお墨付きだよ」

 

「ははは!」

 

「マリーダ中尉も今度は一緒にサンドイッチ作りましょうよー。楽しいですよ~」

 

「そうだな。今日初めて料理やお菓子を作ってみたが、充実感があった。またサンドイッチは改めて作ろうか、テルス少尉」

 

「はい!また作るとき連絡しますね」

 

「うん、了解した!また頼む……さ、ヒイロの感想は?」

 

テルスとの会話の流れに繋げるようにマリーダはヒイロを見つめながら感想をねだる。

 

ヒイロもまたそのクッキーをかじり、静かに感想を言った。

 

「……うまい。さっきの料理もそうだが、初めてとは思えない……また食いたい」

 

「そうか……!!」

 

マリーダはヒイロのその一言だけで、いつにない笑みの表情が彼女に広がった。

 

その笑みを見たヒイロは、戦いの一線から引いている今のこの環境こそが、彼女の本来の在るべき環境なのだろうと思い、もう一言を言った。

 

「作ったクッキーもうまいが、今のマリーダの笑みもまたいい……」

 

「ヒイロ……!!」

 

赤くなるマリーダもまた、本来の乙女の在るべきカタチを示しているかのようだった。

 

テルスもそのやり取りに笑顔で言う。

 

「ふふふっ、マリーダ中尉とヒイロ君お似合いですね!きっと私達夫婦みたいになれますよ!」

 

「テルス少尉……!!」

 

「ひゅー!!マリーダ姉ちゃん、赤くなってるー!!」

 

「なってるー」

 

「るー」

 

ティクバのからかいの一言に弟と妹も兄の一言に続くと、当然の如くマリーダは赤くしつつもティクバを叱咤した。

 

「ティ、ティクバ!!大人の女性をからかうな!!」

 

「ご、ゴメンなさい!!」

 

皆の笑いに包まれる団らんの空間の中、ギルボアもまたマリーダの料理とクッキーを誉めた。

 

「はははは!マリーダ、息子にもっと言ってあげてくれ!!しかし、さっきの料理も初めてとは思えなかったからな!いいセンスあるんじゃないか?」

 

「そうか……私自身もこんな……うっ!!くぅっ……はっ……すまない、席を外す……!!」

 

「マリーダ姉ちゃん??」

 

「!!!」

 

突然蒼白めいた表情で席を立ち、ティクバに返答する余裕もなく去りはじめたマリーダを見たヒイロとサント夫妻は、直ぐにシナプス・シンドロームの発作と感じた。

 

「……マリーダっ!!」

 

場の空気が一変した中で、ジェトロがギルボアに今のマリーダの豹変に質問をせずにはいられなかった。

 

「サントさん、マリーダ中尉は……?!」

 

「以前、連邦サイドに拉致された時に酷い人体実験を受けてな……その後遺症だよ……」

 

「人体実験……!!!」

 

席を外したヒイロは苦しみを押さえ込みながら必死に廊下を歩くマリーダに向かい、彼女に添いながらサポートした。

 

「ひ、ヒイロ……こ、来なくてっ……いい……!!私は……!!」

 

「ムリをするな。シナップス・シンドロームがきたんだろ?それに、子供達の前で苦しむ姿を晒さないように徹している……必死にしているマリーダを俺は放ってはいられない!!」

 

「ダメ……だ、ヒイロに……せっかく、せっかく和んでいた私の……印象を崩壊させたく……ないっ……はっきり言って……苦しむ私を見られたくない……!!!」

 

「マリーダ、俺はそんなマリーダも受け入れている!!これまでにも一人で発作に耐えてきたんだろ?!今は……俺がいるっ!!!」

 

「ヒイロ……!!!」

 

マリーダはヒイロのその一言に、押し寄せる激痛の中で一層惹かれた感情を覚えた。

 

彼女の部屋に入り、ヒイロが一気にドアを閉めると、マリーダは張り詰めたモノが弾けたかのようにヒイロを振り払ってベッドに飛び込み、断末魔とも呼べるような悲鳴と叫びを入り乱しながらもがき苦しむ。

 

時間経過的に見て発作の激しさに落ち着きを見せはじめていたかに思えたが、今のマリーダに押し寄せる発作は初期の発作のような激しさだった。

 

否、それを超える苦しみが彼女を圧迫させていた。

 

今引き起こるシナップス・シンドロームはヒイロにマリーダへの医療対処の余地を与えることなく、彼女を暴れ苦しめさせる。

 

「マリーダっ……!!!」

 

想う女性が悲鳴を上げながら、狂ってもがき苦しむ様子に向き合うのは容易な事ではない。

 

無論、マリーダからしても本来であれば想いを惹き合う相手に今のような自分を晒したくはなかった。

 

ヒイロの強靭たる精神力とマリーダを想う気持ち、受け入れる気持ちが、彼女を苦しめるシナップス・シンドロームの現実に立ち向かわせる。

 

ヒイロは苦しむ彼女の右手を握りしめ、共にシナップス・シンドロームと闘う意志をマリーダへ示そうとし、サント夫妻もまた子供達に極力マリーダの苦しむ声が聞こえないように配慮し続けてくれていた。

 

和やかな一時が壊れた事に追い討ちをかけるかのように、接近していたリゼル・トーラス部隊がパラオに向けて一斉にメガ・ビームランチャーを放つ。

 

注ぎ込まれるように向かった小規模のビーム渦流群がパラオの岩盤壁に直撃すると、パラオ全体に震度3クラスの地震のような振動が響き渡り始めた。

 

ヒイロやギルボア、ジェトロとテルスの両夫妻は在宅の最中の攻撃を直感した。

 

「?!!パラオに振動……!!?」

 

「この衝撃は……!!?まさか攻撃……?!!」

 

「あなた……!!」

 

「パラオが狙われた?!」

 

衝撃の直後、サイレンがパラオ全体に発令され、この状況と相まってサイレンから異様な戦慄を覚えさせる。

 

「こわい……」

 

「おっかい~……」

「大丈夫だ!!父ちゃんに、ヒイロ兄ちゃんがいる!!悪い連邦やOZなんかやっつけてくれるよ!!」

 

怖がる弟と妹に勇気づけるティクバを見たギルボアは、しばらく会えなかった間の長男の成長ぶりに、熱い感情を感じた。

 

ギルボアはティクバの両肩をしっかりと持ち、状況を託した。

 

「ティクバ!!これは攻撃を受けたアラートのサイレンだ!!父ちゃん、行かなきゃならん!!長男のお前が、しっ……かりと家族を守るんだぞ!!」

 

ティクバがこくんと頷くと、ギルボアはパンとティクバの肩を叩いた後に、サント夫人に抱擁して出発を告げる。

 

「……じゃ、行ってくる!!」

 

「必ず帰るんだよ、あなた!!」

 

ジェトロとテルスもまた、表情を変えて先にサント家宅を後にする。

 

「では、ギルボア少尉!!先に行ってます!!」

 

「あぁ!!二人共気をつけてな!!」

 

「はい!!行こう、テルス!!」

 

「うん!!」

 

そして出発前にギルボアがマリーダの部屋に入り、彼女に付き添うヒイロへとマガニーとハサンの診療所の場所と連絡先のメモを渡す。

 

「ヒイロ!!有事の際の医師達の連絡先だ!!携帯データベースも渡しておく!!」

 

ヒイロは頷きながらギルボアからのメモと携帯データベースを手にした。

 

 

 

リゼル・トーラス部隊が撃ち続けるビーム渦流群は絶えずパラオの岩盤壁を攻撃し続ける。

 

この衝撃は、攻撃を受けている岩盤壁付近の宇宙港に停泊中のガランシェールにはよりダイレクトに伝わる。

 

ジンネマンは身を乗り出す勢いでブリッジ入りし、ライトフードを食べながら持ち場に待機していたフラストやアレクに叫ぶ。

 

「敵襲か?!!今いるメンバーだけでもいいっ!!総員第一種戦闘配置だっ!!!」

 

「えぇっ?!!我々だけですよ?!!」

 

「そんくらいはわかっている!!直ぐに備えろということだ!!本当の出撃は揃ってからでいい!!」

 

「了解!!!」

 

船内で過ごしていたアディンとプルもまたこの事態に動こうとするが、意識が回復して間もないプルをアディンが止める。

 

「プル!!待てって!!」

 

「だって、パラオが攻撃受けてるんだよ?!あたしもユニコーンガンダムで力になりたい!!」

 

「ダメだって!!一度意識が飛ぶ程の力をプルはユニコーンガンダムで出してるんだぜ?!ハサンのおっさん達からも止められてるんだ!!みんなで心配してるんだからさ!!」

 

「あたしだって解るよ!!でも、せっかくアレナさん達があたしに託してくれたガンダムなんだよ……それにガンダムの力じゃなきゃダメなヤツも近づいてるんだよ!!嫌な感じが四つ!!!」

 

「何だって!!?」

 

この時、OZプライズのクラーツとブルムのカスタムリーオー、レオールとレオンが接近していた。

 

二人揃っての不敵な薄ら笑いは、遊戯感覚で戦闘を捉えているかのようだ。

 

更にプルが言う存在の三人目は、アディンの人生を狂わせた敵の一人であるヴァルダーの強襲揚陸艦グラーフ・ドレンデも接近する。

 

「まずは確定したニュータイプを炙り出すか拉致。そして絶対的な力でパラオに致命傷を与える……!!!」

そして、上半身に真紅の服を纏い、かつ巨大な翼を羽ばたかせるトールギス・フリューゲルが接近する。

 

機体を駆るはOZプライズのエース・ロッシェだ。

 

「パラオにいるという新型のガンダム、是非とも剣を交えたいものだな……!!!」

 

これらの存在達は、プルが感覚を感知できる範囲にまで接近していたのだ。

 

確かにプルはガンダム無しでは厳しい戦況が迫っている事を感覚的に確信していた。

 

するとアディンはプルの両肩に手を置いて確かめる。

 

「ガンダムの力……ガンダムの力ならいいんだな?!!」

 

「え?!!でも、あたし以外は二度とユニコーンガンダムは起動出来ないって……!!ヒイロのガンダムも修理中なんでしょ?!」

 

「いや……確かめないといけないけど、もう一つあるぜっ……!!!ディックさんとこに行ってくる!!!だから、プルは今一度大人しくしていてくれ!!!」

 

そうプルに言い聞かせると、アディンは直ぐに寝室を飛び出した。

 

「アディン!!」

 

プルは走り去るアディンへと手を伸ばしたが、直ぐにその手を胸元に置いて、迫る圧迫感を危惧した。

 

「アディン……危険だよっ……やっぱり近づいてるヤツラ、危険だよ……!!!」

 

 

 

アラートが鳴り響く中、自衛の為にパラオ内の各戦闘要員達が展開し、次々とギラ・ズールやギラ・ドーガ、ドライセン、ガザC、バウ、ズサ、ガルスK、ザクⅢ、リゲルグ等の機体群へと搭乗していく。

 

「パラオが直接攻撃を受けている!!!出撃できる者から出撃、攻撃してくる目標を撃破しろ!!」

 

「まだ敵が判らないのか!!?」

 

「おおかた、OZか連邦残党と相場は決まってる!!!」

 

「整備中に来やがって……なら、三番機のギラ・ドーガを出すぞ!!!」

 

「ザクⅢ、出す!!!」

 

「ナンバー3、5、8、14、24各ゲート、開けぇっ!!」

 

戦闘態勢に移行していくネオジオンの兵士達の声が錯綜する中、各機がモノアイに眼光を灯しながらブースターを点火させて出撃していく。

 

宇宙空間に各機体が投じ、サブブースターで態勢を整え、手にしたビームマシンガンやビームライフル、ビームバズーカ等のウェポンを構える。

 

だが、その直後に小規模のビーム渦流群が襲いかかり、瞬く間にギラ・ドーガ4機とガザC4機、ガルスKが破砕された。

 

「いきなりかよ?!!っく……敵機群、高速接近!!!各機、一斉射撃っ!!!」

 

ビームマシンガン、ビームライフル、ビームバズーカ、ミサイルランチャー等の火器が一斉に唸り、急接近するリゼル・トーラス部隊を追従する。

 

だが、セオリー無視の高速度で駆け抜けるリゼル・トーラス部隊は全く直撃をさせなかった。

 

直ぐに射撃攻撃は反撃の形で再度返ってくる。

 

一小隊3機編成のリゼル・トーラス達は、シュバッと超高速の△型軌道に散りながら一気にネオジオンサイドのMS部隊へ舞い戻り、メガ・ビームランチャーを放つ。

 

唸る中小規模のビーム渦流がギラ・ズールとギラ・ドーガ、リゲルグを直撃破砕させる。

 

更に可変したリゼル・トーラスは寸分の狂いなく、ギラ・ドーガやズサ、ガザCにメガ・ビームランチャーを直撃させ、更に斬り掛かろうとするバウにレフトアームのビームキャノンの高速射撃を浴びせた。

 

別のリゼル・トーラスにはガザDとギラ・ドーガがビームライフルとビームマシンガンの連発、連射撃を撃ち込み、それに続いてズサがミサイルランチャーを放った。

 

だが、その射撃はかわされ、メインカメラを点滅発光させたリゼル・トーラスがレフトアームを突き出す。

 

そのリゼル・トーラスのMDシステムが選定した機体に向けてビームキャノンの連続高速射撃が放たれ、標的にされたガザDとギラ・ドーガが砕き散らされ爆発する。

 

同時に僚機のリゼル・トーラスが、迫るミサイル群に対して放ったメガ・ビームランチャーを左右に刻み振りながらミサイル群を一掃した。

 

ミサイル群を放ったズサもまた、そのメガ・ビームランチャーのビームに抉られるように吹き飛ばされ爆砕する。

 

その最中、メガ・ビームランチャーを放ち終えたリゼル・トーラスに向け、ギラ・ズールが放つビームマシンガンのビーム射撃が降りかかった。

 

撃ち注ぐビームはリゼル・トーラスの装甲を中破させ、更にはメガ・ビームランチャーの武器破壊の方向に導いた。

そしてシュツルムファウストを突き当てるように突っ込んでリゼル・トーラスを至近距離射撃で破砕させてみせた。

 

別の箇所ではカスタマイズされたギラ・ズールがビームトマホークを振りかざし、一気にリゼル・トーラスの胸部へと斬撃を打ちこみ、また別の箇所ではザクⅢがビームライフルの連発射撃を浴びせかけ、リゼル・トーラスを破砕させていた。

 

カスタマイズされた蒼いリゲルグもまた、狙い定めたリゼル・トーラスにビームライフルを撃ち浴びせ、更にビームナギナタの斬撃を止めに見舞って斬り飛ばす。

 

だが、次の瞬間にビームキャノンの連続射撃を受けて中破し、パラオの岩壁に激突した。

 

リゼル・トーラス部隊は僚機認識した機体同士でフォーメーションを組み合わせ、再度メガ・ビームランチャーの一斉射撃を繰り返し、MS群の爆発光を生む。

 

MDシステムAI機能が有利な戦次第にネオジオンサイドの出撃するMSが増え始め、戦闘状況は五分に近づいていった。

 

戦闘が展開する一方、ヒイロは発作が収まりを見せたマリーダに応急処置を施し、彼女の身をハサンとマガニーの所へ預けていた。

 

彼女の診察と医療処置をし終えたマガニーが、診察書類を部屋の奥で書きまとめる中、ハサンがヒイロに礼を述べた。

 

「ヒイロ君、改めて礼をいう。マリーダは正直危険な状態だった……君は以前にも彼女に応急処置をしてくれたそうだな?キャプテンから聞いているよ」

 

「……俺はマリーダが少しでも回復する方向にしようとしただけだ……俺にもそれなりの強化人間の医療処置知識があった。幼少の頃から俺は戦士として生きてきたからな……」

 

ヒイロはかつて、アディン・ロウから強化人間の医療処置を伝授してもらっていたことを思い出しながら少しばかり語った。

 

「成る程……君もまたある意味彼女と同じ境遇なのか。君の処置の行動はマリーダを想っての行動かな?はははっ、素直に言ってくれても良いという事だよ。彼女自身からもヒイロ君の事は聞いてるからな!」

 

「何?!っ……そうかっ……どこまで話を聞いた?」

 

「彼女の知る限りの一部始終を聞いたよ」

 

マリーダにある種の意表を突かれて静かに動揺するヒイロに、ハサンはかつての思い当たる強化人間の恋愛事情を思いかえしながら語りはじめた。

 

「強化人間との恋愛か……なんのジレンマか、私がこれまでに見たり聞かされてきた強化人間の恋愛事情には必ず悲劇があった……」

 

彼が思い当たる、広い意味も含めた強化人間の恋愛事情には、必ず悲劇が待っていた。

 

フォウ・ムラサメやロザミア・バダム、そしてもう一人のエルピー・プル等だ。

 

「悲劇……だと?」

 

「あぁ。どの娘達も悲劇の運命に呑まれた。今は君たち……アディン君ともう一人いたエルピー・プル、そしてヒイロ君とマリーダが恋愛事情にあるとみる……」

 

「……俺達にも悲劇があると言いたいのか?」

 

「否……君たちからはそんなジンクスを吹き飛ばしてくれるかのような何かを感じる……理屈は説明できんが、そう感じるのさ……」

 

「ジンクスなど興味はない。俺は感情のまま信じた行動に出るまでだ」

 

そう言いながらヒイロは部屋を後にしようとし、ハサンはそれを出撃と察した。

 

「いくのか?」

 

「あぁ。今俺が行くべき場所はここ、パラオの戦場だ……!!」

 

ヒイロが去り際に医療器具が取り付けられた安静中のマリーダの側に歩み寄ると、その時にゆっくりとまぶたを開けたマリーダと視線が重なる。

 

「……ヒイロ……」

 

「マリーダ……俺は出撃する。ここのバウを借りることにした」

 

「ヒイロ……戦場は感情の渦だ。その渦に呑まれたりはするな……お前は……」

 

マリーダは今おかれた自身の体よりもヒイロを気遣い、経験と感覚上のアドバイスをしようとした。

 

ヒイロは言いかけていた彼女の手をとり、静かに言う。

 

「安心しろ……そのようなモノは死ぬ程感じてきている。呑まれる間でもない」

 

「くすっ……生意気だ……」

 

「……行ってくる」

 

「あぁ……」

 

たったそれだけの会話の中に確かな信頼や心強さを交わし合い、マリーダはヒイロの背中を見送り、ヒイロは守るべきパラオ防衛に出撃する。

 

パラオのMSデッキ予めおさえていたバウのコックピットに座り、計器類の操作を済ませて機体を起動させた。

 

映し出された全周モニターには、カタパルトへ向かうベースレーンにより移動する光景がしばらく映し出され、やがてカタパルトデッキに至る。

 

カタパルト操作が譲渡された表示を目視確認すると、ヒイロは先に見える宇宙空間に眼光を刺す。

 

その中では時折宇宙空間にビームや爆発が視認できる。

 

「……ヒイロ・ユイ、MSバウ、出撃する」

 

コントロールレバーを押し込むと、バウはバウナッターを引っ張りながら火花を散らして宇宙空間に飛び込んだ。

 

ヒイロが去った医療空間で、マリーダもまた、天井を見つめながら新たな敵の接近を感じていた。

 

「ヒイロ……気をつけろ……迫る敵を感じ始めた……だが、ヒイロならば……大丈夫か……」

 

ヒイロの実力を知るが故に、マリーダは自然に憂いを感じなかった。

 

猛るようなスピードでかっ飛ぶヒイロ機のバウは、高速で旋回軌道を描きながら1機のリゼル・トーラスに飛び込んでいく。

 

そのまま両翼のミサイルを撃ち飛ばし、ミサイルが四基リゼル・トーラスを目掛け飛んだ。

 

だが、直ぐにレフトアーム装備のビームキャノンで、ミサイルは容易く撃ち砕かれてしまう。

 

ヒイロは瞬時にビームライフルに切り替え、ロック音の刹那に三発をすれ違いながら浴びせ、メガ・ビームランチャーと胸部に直撃させてみせた。

 

爆発するリゼル・トーラスから上昇するかのような軌道を描くヒイロ機のバウ。

 

そして本体機とバウナッターがフォーメーションをとりながら合体連結した。

 

そしてMS形態の可変を完了させたヒイロ機のバウは、モノアイを発光させながらビームサーベルを抜き取り、正面のリゼル・トーラスへと斬りかかった。

 

ヒイロ機のバウは、その一撃でリゼル・トーラスを寸断させた後にビームライフルを構え、五発のビームを放ち、2機のリゼル・トーラスを仕留めて破壊する。

 

「機体の基本可動動作、姿勢制御、各状態に問題はない。排除を続行する……!!!」

 

ヒイロは機体の可動時の各部チェックを平行させながらビームライフルを数発見舞い、1機のリゼル・トーラスを撃墜させた。

 

その直後、別方向よりメガ・ビームランチャーのビーム渦流が襲う。

 

ヒイロ機のバウは全てかわしながらリゼル・トーラスへ接近し、1機をビームサーベルの薙ぎで斬撃し、もう1機にシールド三連メガ粒子砲を構える。

 

そして、近距離から小規模のビーム渦流の一撃を与えた。

 

リゼル・トーラスは一気に装甲を破砕され、爆発四散した。

 

その最中、ガザC ガザD、ズサ、ドラッツェの機体達が獅子奮迅するが、やはりリゼル・トーラスのMDシステムに敵わず、メガ・ビームランチャーやビームキャノンにより、立て続けに撃破されていく。

 

そして、テルスともう一人のドライセンエース・ザミュが駈るドライセンにもリゼル・トーラスが迫る。

 

「ザミュ!!この機体達は……!!?」

 

「前に出すぎるなよ!!!相手は流行りのMDだ!!!」

 

テルス機のドライセンを狙う1機のリゼル・トーラスに機体を体当たりさせるザミュ機のドライセン。

 

三連装ビームキャノンで応戦し、撃破させるもザミュ機のドライセンは数発のビームキャノンの反撃をくらってしまう。

 

肩アーマーが吹っ飛ばされ、ショルダージョイントが丸出しになってしまった。

 

「ザミュ!!?」

 

「気にするな!!次、来るぞ!!!」

 

迫るビーム渦流をかわし、テルス機のドライセンはビームバズーカを反撃の一撃にする。

 

だが、リゼル・トーラスをかわしながらビームサーベルを抜き取り、一直線にテルス機のドライセンに迫った。

 

が、テルスはかわさずにビームバズーカを放った。

 

数発かわされた直後に一撃がカウンター張りに直撃して破砕へと導いた。

 

「私にはジェトロが待ってる……絶対に死ねない!!!」

 

 

 

OZプライズ パラオ攻撃部隊拠点ポイント

 

 

 

高速戦闘艦艇数隻が待機する最中、カスタムリーオー・レオールとレオンがプライズリーオーを従えて閃光とビームが展開するパラオを眺めていた。

 

「リゼル・トーラス……流石のMD部隊。よい戦果です。ですが……彼らは機械故に融通が効きません……我々の獲物を全て奪い兼ねない……ブルム。リゼル・トーラスを撤退させましょう」

 

レオールのコックピットより高峰の見物でパラオの戦闘状況を見ていたクラーツは、リゼル・トーラスを撤退させる判断をした。

 

レオンのパイロットであるブルムもそれに賛同する。

 

「そうだな……あくまでリゼル・トーラスは挨拶だからな。そろそろ我々が出向く頃合いか!!」

 

展開していたリゼル・トーラス部隊が一斉にメインカメラアイを高速点滅させながら一気に戦場を離脱する。

 

ネオジオンサイドからしてみれば、全く理解できない展開だ。

 

ヒイロもビームサーベルで1機のリゼル・トーラスを斬撃して破壊したが、敵側の優位な展開からの急な離脱に違和感を感じざるを得なかった。

 

「撤退……?!!」

 

リゼル・トーラス部隊が帰還体勢に転じたことを確認すると、クラーツとブルムは一斉にプライズリーオー部隊を引き連れて機体を加速させた。

 

だが、機械から生身の脅威が入れ替えで迫る展開に切り替わった瞬間、プルとマリーダは直ぐにこれを察した。

 

「……!!!悪い、嫌な奴が来る!!!ハッキリ感じる、二つのヤツ……!!!」

 

「うっ……パラオが……危ない……それに、さっきからただならない嫌な何かを薄らに感じる……!!!」

 

マリーダも二人の嫌悪感に眉をひそめながらシーツを強く握った。

 

レオールとレオンは改良型の疑似GNDドライヴを搭載したカスタムリーオーであり、アスクレプオスやメリクリウス、ヴァイエイトに迫る性能を有していた。

 

更に従うプライズリーオー部隊も疑似GNDドライヴを搭載している為、従来の量産型機では蹂躙駆逐を思うがままにしてしまう。

 

更にOZプライズ精鋭のエリートパイロット達がトリガーを握っている為、より一層の脅威であった。

 

その脅威達がパラオへと機体を投じさせていくと、ものの数分でレオールとレオンの攻撃部隊がパラオの防衛エリアに到達する。

 

「来ましたね……!!!さぁ、狩りの始まりですっ!!!」

 

「破壊のセレナーデ……参る!!!」

赤いカメラモニターを発光させた2機は前衛のMS部隊を襲撃する。

 

レオールはビームランサーを十字に振り唸らせた後に、ギラ・ドーガに突撃して高出力ビームの槍を激突する勢いで刺突破砕させてみせる。

 

更にそのギラ・ドーガのみならず、ミサイルのごとき軌道で突き進み、ガ・ゾウム、ガザC3機、ギラ・ドーガ2機を連続で突き砕き爆砕させ続ける。

 

その連続爆発を巻き起こした先に行き着いたリゲルグとビームサーベルを交えたが、強力な突き押しを維持させた後に交えていたビームサーベルを捌き、ビームランサーの薙ぎの斬撃を見舞って破断爆砕させてみせた。

 

「そうそう!!狩りはこうでなくてはいけません……!!!」

 

レオールは更に進撃加速し、ビームランサーを振りかぶる。

 

次の狙いを定めたザクⅢに突撃し、ビームマシンガンをかわしながら胸部に斬撃を叩き込み、一瞬で斬撃破壊した。

 

そこから連続で取りつくようにリゲルグやズサ、ギラ・ドーガ、ギラ・ズール、に斬りかかっていき、次々に破壊した。

 

そして、ファンネルの射撃をも掻い潜り、ヤクト・ドーガの胸部にビームランサーを突き上げるように突き刺した。

 

その惰性で突き上げられながら装甲を抉られたヤクト・ドーガは、刺突部を剥ぎ取られながら吹っ飛び、偶然激突したドラッツェと共に爆発していった。

 

「これこそ……至福の時です!!!」

 

レオールは赤いカメラアイを発光させると、クラーツの狂気と共に更に突き進み、一瞬の薙ぎ斬撃の下にRジャジャを斬り飛ばす。

 

破断された隙間からレオールが姿を覗かせ、中のクラーツは狂気的な笑みを浮かべていた。

 

一方で、ギラ・ズールやギラ・ドーガ、ガザC、ドライセン部隊がビームマシンガンやナックルバスターの射撃を一斉に射撃を再開させる中をレオンが駆け抜ける。

 

ビームは時折レオンに直撃するが、そのずっしりとしたフォルム通りであるガンダニュム(中純度)の装甲が破壊を許さない。

 

「ふはははは!!!無駄だぁああっ!!!」

 

ブルムの満身たる戦意の下、レオンはビームソードを取り出し、手当たり次第にその豪剣の斬撃を食らわせ続ける。

 

「せあっ、せあっ、せあっ、せあっ、せあぁあああっ!!!我が剣の下、その身を散らせてゆけぇっ!!!」

 

袈裟斬りで叩き斬り、薙ぎ斬り、突き、また袈裟斬りで叩き斬った後に斬り飛ばす。

 

更に至近距離に接近したドライセンにレフトアームの拳を打ちこんでコックピットを破壊すると、縦横無尽の斬撃を乱舞し、突き進みながら自身両端のMS達を斬り捌いていった。

 

斬撃に次ぐ斬撃、刺突に次ぐ刺突。

 

ネオジオンサイドのMS達を悉く駆逐するその脅威の豪剣は止まることなく、砲撃戦への体勢に移行しようとしていた重装型ギラ・ドーガ部隊やドーベン・ウルフ部隊へ向かう。

 

スタンバイした機体から順に砲撃を開始し、砲弾やビーム渦流の砲撃を開始していくネオジオンサイド。

 

だが、レオンは型に合わない機動力を見せつけながら砲撃部隊へと接近する。

 

「はぁあああああっ!!!」

 

轟と迫るレオンのビームソードの一撃が、重装型ギラ・ドーガを突き砕く。

 

そこから連続の斬撃を叩き込み、重装型ギラ・ドーガ達に薙ぎと袈裟斬り、刺突、左薙ぎを連続で見舞った。

 

爆発する重装型ギラ・ドーガ部隊を尻目にドーベン・ウルフに斬り掛かるレオン。

 

ドーベン・ウルフの胸部に突き出された強力な一撃の刺突が、ドーベン・ウルフを吹き飛ばすように爆発四散させる。

 

次の瞬間にはビームランチャーの銃身を斬り飛ばしながらの二連続斬り払い斬撃を、側面上のドーベン・ウルフにくらわしていた。

 

僚機を失わされた怒りを飛ばすようにビームランチャーのビーム渦流を撃ち飛ばす3機目のドーベン・ウルフ。

 

だが、すでに射撃した方向にレオンはいなかった。

 

そして、そのドーベン・ウルフのモノアイが上を向いた瞬間、直上よりレオンが襲い掛かり、ビームソードを一気に頭部へ突き刺して貫いた。

 

レオンは突き刺したビームソードで執拗に抉り、焼灼破壊を拡大させた後に、大爆発を巻き起こさせる。

 

至近距離の大爆発にもかかわらず、レオンは無傷で爆発から飛び出し、次に目を付けたザクⅢ改に襲い掛かった。

ザクⅢ改は一瞬ビームサーベルで攻撃を受け止めるが、直後にコックピットへ入ったレオンのレフトアームの拳の一撃により動きを止める。

 

ハッチに深く拳が食い込んでおり、パイロットは即死していた。

 

レオンはカメラアイを発光させると三連斬撃をザクⅢ改に浴びせ、破断爆砕させた。

 

2機の脅威が次々とネオジオンの戦士達を葬る一方で、プライズリーオー部隊もまた脅威を与える。

 

構えたビームライフルやドーバーバスターから薄オレンジのビームやビーム渦流を撃ち飛ばして攻め入り、ギラ・ズールやギラ・ドーガ、ガザCを次々に撃ち仕留めて撃墜していく。

 

特にドーバーバスターは対ガンダム用の兵器故に量産型MSからしてみれば、激しくオーバーキルな武装である。

 

唸るビームライフルとドーバーバスターはネオジオンサイドに対し、徹底的に畏怖を加味させた蹂躙を叩き付け、破砕、爆砕、爆破、爆発、かき消すような焼灼破砕と、多数に及ぶMSの爆発光をパラオに拡大させていった。

その最中、果敢にビームトマホークで斬り掛かるギラ・ドーガがいたが、ビームサーベルを斬り払ったプライズリーオーの一撃により破断され、一瞬で爆発四散する。

 

そのプライズリーオーは更にドラッツェを二連続斬撃で斬り飛ばした。

この戦局の変動をディスプレイで確認していたヒイロは、MDとの戦闘時よりも増して急激にレーダー上から消え始めた味方機の数に違和感を覚える。

 

「新手が展開している……!!MD部隊と差し替えたのか?!特に二つの反応が特異な動きをしている……だが、何であれ破壊する!!!」

 

ヒイロは展開するポイントへと機体を加速させて向かわせた。

 

吸い込まれるように戦闘宙域の光景が全天モニターに映し出され、ヒイロに向かい来る。

 

見据えるターゲットポイントは無論、レオールとレオンが展開するポイントだ。

 

その間にヒイロは遭遇するプライズリーオーと交戦し、ビームライフルの射撃をかわしながらレフトアームを唸らせたビームサーベルの一撃を斬り込む。

 

切断・爆発するプライズリーオーを尻目に、ヒイロは次に遭遇したプライズリーオーに向け射撃する。

 

二、三発がかわされた直後にバックパックに直撃し、誘爆を引き起こしてそのプライズリーオーは爆砕した。

 

そしてロック・オンしたレオール目掛けビームサーベルを振りかぶらせ、レオールのビームランサーと斬撃を交えスパークをはしらせた。

 

「この機体っ、カスタムリーオーか!!?」

 

「くはははは!!実に積極的な攻めですね?!!ですがっ……!!!」

 

だが、従来の核エンジンと最新鋭かつチューニングされた疑似GNDドライヴとでは力に差が生じ、直ぐにパワーで押され始める。

 

更にビームランサーとビームサーベルを交えた状態でレオールは加速を始め、ヒイロ機のバウを更に押し始めた。

 

「ちっ……!!」

 

「このまま……パラオの岩壁に貼り付けてさしあげますよっ……!!!」

 

加速エネルギーの殆んどを支配されて突き動かされるヒイロ機のバウ。

 

だが、ヒイロは瞬時に機転を効かし、このパワーを逆手にして、自機のビームサーベルのグリップ動力を回避と同時に解除した。

 

「何?!!」

 

抵抗となったビームサーベルの反力が解放され、レオールはミサイルの如くパラオ目掛け突っ込んでいく。

 

「やりますねぇっ……!!!しかしっ……!!!」

 

レオールはUターン軌道を描きながら機体を衝突から回避する軌道に修正した。

 

機体はパラオへの衝突コースを行くが、ビームランサーの破壊力を利用し、岩壁を削り取るように破砕させて再びヒイロ機のバウを目掛ける。

 

そして機体を減速させながらビームランサーを振りかぶらせ、斬撃の直撃軌道を見極めた薙ぎと袈裟斬りの中間の斬撃を打ち放った。

 

「仕留めますよっっ!!!はぁああああああっ!!!」

 

「っ!!」

 

斬撃がヒイロ機のバウを仕留める刹那、ヒイロは機体を分離させ、シールド下半分と下半身ユニットを犠牲に機体を離脱させた。

 

斬撃で破壊された下半身ユニットの爆発を眺めながらヒイロはレオール目掛け、ビームライフルとメガ粒子砲の射撃を連発した。

 

「この戦場においておそらく奴ともう1機の奴が強力な機体……このバウでどこまでやれる……?!!」

 

「雑魚から完全に逸脱してますね!!!ネオジオンにもこれ程の手練れがいたとは……!!!」

 

ヒイロが奮戦する一方、レオンの猛威がネオジオンサイドのMSを圧倒し続けていた。

 

振るうビームソードの豪剣は高性能機であるはずのリゲルグをも圧倒し、乱舞の斬撃で破壊・爆発させる。

 

「ネオジオンの雑魚は狩るが一番だっ!!!はーっははははははははは!!!」

 

声を笑い上げるブルムは、ビーム射撃群をかわし、時に機体に受け止めながらギラ・ドーガ、ギラ・ズール、ガザC、ズサ、更にはゲート内から砲撃するキケロガを斬撃に次ぐ斬撃を持って破壊し続ける。

 

周囲でもまたプライズリーオー部隊がネオジオンの機体達をビームライフルやドーバーバスターを持って駆逐させていく。

 

この時点でパラオの防衛力の半分が削ぎ落とされていた。

 

「好き勝手やってくれてぇ!!!」

 

そこに居合わせたザミュ機のドライセンが、ビームトマホークを振り回しながら怒りの斬撃をレオンに叩き込んで突っ込んだ。

 

「ふん!!!」

 

レオンは瞬時に斬撃を受け止め、それを更に押し捌いて圧倒すると、タックルを加えてザミュ機のドライセンを弾き飛ばした。

 

「ぐあぁあっ!!?」

 

「ザミュ!!」

 

弾き飛んだザミュ機のドライセンをテルス機のドライセンが受け止める。

 

「ザミュ!!大丈夫!!?」

 

「テルス?!!馬鹿っ!!!前に出るなって言ったろがっ!!!しかもよりによってこんなヤバイ奴に?!!」

 

「でも……!!!」

 

「お前には帰りを待つジェトロがいるだろがっ……うっ……!!!」

 

ザミュは豪剣を打ち下ろそうとしているレオンに戦慄した。

 

だが、刹那の判断で彼が得意とするトライブレードのジャイロ戦法を放った。

 

だが、トライブレードは空しくレオンの装甲に弾かれ宇宙空間に弾き飛んでいった。

 

「逃げろテルス!!!」

 

「ザミュ!!!」

 

ザミュは自機のドライセンの渾身のパワーで、テルス機のドライセンを突き放した。

 

「あぅっ……!!!」

 

この瞬間の反動で、不意にテルスの手が操作パネルに当たり、テルス機の外部通信がONとなる。

 

「幸せにしろよ……テルスっ―――」

 

叩き込まれたレオンの斬撃がザミュ機のドライセンを斬り潰して激しく爆砕させた。

 

「ザミュゥぅうううう!!!うわぁぁああああ!!!」

 

テルスはコンビを組んできたある意味のパートナーのザミュを失い、哀しみと怒りに駈られた。

 

その感情を込めてビームバズーカをレオンに何発も撃ち放った。

 

「よくも!!よくもザミュを!!!墜ちろ!!!墜ちろ!!!墜ちろぉおお!!!」

 

だがその行為はビームコーティングまで施されたガンダニュウム合金のショルダーユニットに空しく阻まれる。

 

更に先程の外部通信が開かれた事で、テルスの声がブルムにも筒抜けていた。

 

この事が余計にブルムの狂気に拍車をかけた。

 

「女か……くはははは!!!ならばじわじわと殺してやる……!!!」

 

ブルムはレオンのビームソードの出力を上げ、まずビームバズーカとレフトアームを斬り捌く。

 

「きゃあ!!?」

 

「その悲鳴を聞かせろ!!!ははは!!ははははぁ!!!」

 

レオンは高速の連続突きを繰り出し、敢えてコックピットを狙わずにテルスのドライセンを滅多突きにしていく。

 

頭部が突き飛ばされ、両肩も突き飛ばされ、挙げ句に胴体部の際どい部分を突き始める。

 

機体の損壊が激しさを増しながら絶妙にコックピットを生かす。

 

だが、その絶え間ない衝撃はいつ死んでも不思議ではない恐怖をテルスに与え続け、彼女を泣き叫ばせた。

「いやぁぁああああ!!!いやっ、いやっ、いやぁぁあああ!!!助けてよっザミュ、ジェトロ、ジェトロぉおおおおお!!!」

 

「素晴らしい!!!素晴らしい悲鳴!!!もっと聞かせろ!!!聞かせろぉ!!!」

 

「いやぁぁあああああ!!!」

 

 

 

その頃、プルは戦場に渦巻く数多くの感情をガランシェールの寝室で感じていた。

 

何気に彼女自身が広範囲の規模の戦闘領域の戦場に自身の身を投じるのは初めてであり、雑踏が波を帯びてひしめくかのような感覚に見回れていた。

 

「色々な叫びが感じる……パラオの人達が、戦ってくれてるパラオの人達が死んでいく……消えていく……これが戦争なの……?!!」

 

マリーダのように戦場に身を投じ続けている戦闘のプロの強化人間にはこの感覚にある程度の慣れがある。

 

だが、プルはニュータイプの感覚とMSの操作センス、ある程度の戦闘経験があるものの、広域戦闘の感覚は未経験だった。

 

「しかも、みんな一方的に殺されてる……うっ……!!?」

 

『逃しませんよっ、生意気なネオジオンめ!!!』

 

『ちっ……まだだ。まだ俺は死ねない……パラオにはマリーダがいる……!!!』

 

「ヒイロ?!!」

 

クラーツのレオールの攻撃から機体を可変させて逃げるヒイロの感情がピックアップされたようにプルの感覚に作用した。

 

『きゃぁぁああああ!!!いやぁぁあああ!!!』

 

『泣け!!!叫べ!!!そしてもうすぐに死ぬっ!!!そらそらそらぁぁあ!!!』

 

更にテルスとブルムの一方的な蹂躙戦闘の感情もプルに過った。

 

この時、ブルムの攻撃が遂にコックピットに及ぼうとしていた。

 

「これ以上の悲しみ……苦しみ……止めたいっ……お願いっ、アディンっ―――!!!」

 

 

 

 

「俺がキメるぜぇえええええっ!!!!」

 

 

 

 

「な?!!」

 

プルの願いに召喚されるかのようにアディンのあのセリフの音声が唐突に回線に殴り込まれ、突然の謎の叫びにブルムも攻撃を中断した。

 

その次の瞬間、超高速で新型機と思われる黒い翼を持ったMAがレオン目掛け突っ込んだ。

 

 

 

ディガォオオオオオン!!!

 

 

 

「え?!!」

 

「がぁぁあぁぁあぁぁあぁぁぁぁっ!!?」

 

一気に弾き飛ばされたレオンは機体を豪快に回転させながらぶっ飛ぶ。

 

完全に状況が変革した瞬間だった。

 

テルスも何が起こったのか把握できなかった。

 

超高速でかっ飛ぶそのMAは、その勢いのまま1機のプライズリーオーの胸部に激突し、機首の先端を突き刺したままパラオの宙域を飛ぶ。

 

そして機首に取り付けられている砲門にエネルギーがチャージされ始めた。

 

「食らいなっ、プライズさんよぉ!!!メガ・パーティカルバスター、ファイアッ!!!」

 

 

 

ギュリュリリリィィィ……ヴァズダァァアアアアアアアアアアアアッッッ!!!

 

ヴァズシャゴォバァガァアアアアアアアアアッ!!!

 

 

 

零距離からのバスターライフル級のビーム兵器、メガ・パーティカルバスターの一撃に、プライズリーオーはえげつないまでに機体を破砕させながら爆砕する。

 

アディンの駆るMAは高速Uターン軌道を描きながら、機体右舷側の下部に装着された碇状のビームランスを発動し、ミサイルの如くプライズリーオーに機体を突入させた。

 

アディンのMAはそのプライズリーオーを一瞬で破砕させると、高速で各部を可変させていく。

 

そして、MAがMSへと変形を遂げた瞬間、新たに生まれ変わったガンダムジェミナスがその姿を見せた。

 

 

 

《ガンダムジェミナス・グリープ》

 

 

黒い翼・リフレクト・ウィングを背に、右手にビームランス、左手に攻防一体のメガ・パーティカルバスターを装備し、胸部に追加装甲を、両腰に新たなブースターを、両脚に強化改良されたバーニアンユニットを施していた。

 

カメラアイをギンと発光させた直後、1機のプライズリーオー目掛け超高速で飛び込むガンダムジェミナス・グリープ。

 

アディンの気迫と共に振るう斬撃の一線がビーム射撃で抵抗するプライズリーオーにはしった。

 

「だぁあああああああっ!!!」

 

 

 

ギャシュバァアアアアアアンッッッ!!!

 

ゴバァガァアアアアアアンッッ!!!

 

 

 

その爆砕するプライズリーオーを尻目に、ガンダムジェミナス・グリープは先程まで我が物顔でネオジオンを駆逐していたプライズリーオー部隊に向かう。

 

突入と共に、1機、2機、3機と薙ぎ斬り、斬り潰し、突き砕く。

 

4機目を斬り上げ下げの二連撃で斬り捨て、その勢いのままに4機のプライズリーオーを同時に斬り飛ばして見せた。

 

斬り飛ばされたプライズリーオーの断面からガンダムジェミナス・グリープが顔を覗かせ、爆発が拡がる。

 

その時、残りのプライズリーオー部隊はネオジオンサイドへの攻撃を中断し、一斉にガンダムジェミナス・グリープに火力を集中させた。

 

対ガンダム用兵器であるドーバーバスターを筆頭にビーム射撃が、ガンダムジェミナス・グリープに叩き込まれた。

 

だが、ガンダムジェミナス・グリープはリフレクト・ウィングで機体を防御しながら攻めに向かう。

 

ビーム射撃群の攻撃はリフレクト・ウィングの表面で完全に弾かれていた。

 

「対バスターライフルを想定したリフレクト・ウィングだ!!!全く効かないぜっ!!!」

 

そう言ってアディンはメガ・パーティカルバスターの砲門をプライズリーオー部隊に向かい突き出し、7機まとめてロック・オンした。

 

 

 

ギュゥヴゥリィィ……ヴァズダァアアアアアアアアアアアアッ!!!

 

ジュズゥガァアアアアアアァァッ―――ドドドドドドドゴゴババガァアアアアアアァァッ!!!

 

 

 

撃ち放ったビーム渦流が一気にプライズリーオー部隊を破砕させ、先程まで猛威を奮っていたOZプライズサイド勢力が一気に覆された。

 

クラーツは驚愕と憤りを覚えながらレオールの機体出力を上げてガンダムジェミナス・グリープを目指した。

 

「なっ……なんですか?!!あの機体は!!?我がプライズの機体を一瞬にしてっ……?!!おのれぇっっ!!!!」

 

更にビームランサーの出力を最大にし、高速で突っ込んでいくレオール。

 

その反応アラートが、ガンダムジェミナス・グリープのコックピットに響く。

 

「へっ……スピード勝負なら得意分野だぜっ……PX、オーバードライブッッ!!!」

 

アディンは虎の子たるPXシステムを発動させると、青白く発光させた機体をレオール目掛けて飛ばし、亡き兄・オデルに語りかけ始める。

 

「兄さん……見ていてくれ……ガンダムグリープの設計データを移植させたこの機体で……新たなガンダムジェミナスで俺は……!!!」

 

ガンダムジェミナス・グリープとレオールが青白く輝きながら正面から突き進む。

 

そしてレオールのスピードを遥かに上回るガンダムジェミナス・グリープがビームランスを振りかぶらせ、そのままカウンターアタックを打ち込んだ。

 

「何っ―――??!」

 

「闘ってぇえええっっ!!!」

 

 

 

バッッッギャラガァアアアアアアアアアッッッ!!!!

 

 

 

レオールは一瞬にして自身の加速力を加えながら激しく破砕した。

 

そのままアディンは視線をガンダムジェミナス・グリープのカメラアイと共に残ったレオンへ向ける。

 

「守ってぇえっ……!!!」

 

レオンを目掛けてかっ飛ぶガンダムジェミナス・グリープは、残像が残る程の超高速を見せていた。

 

迫り来るガンダムジェミナス・グリープに対し、ブルムは屈辱を噛み締めながら迎撃態勢に挑む。

 

「くぅっ!!よくもコケにしてくれたな!!!キテレツな機体めっ……来いっっ!!!その槍、受け止めて返り討ちにしてくれるっ!!!!」

 

レオンがビームソードを振りかぶらせて身構えた次の瞬間、凄まじい青白い閃光がはしる。

 

「キメるぜぇえええっっ!!!」

 

叫ぶアディンの声と共に、ガンダムジェミナス・グリープの強烈なビームランスの刺突が、ビームソードのビーム刀身を破断させながらレオンの胸部に超高速で突き刺さる。

 

 

 

 ディギャギィイイイイイイイイイイッッッ―――ギャドガァアアアアアアッッ!!!!

 

 

ガンダムジェミナス・グリープは一瞬にして突き穿いたレオンを突き穿ったまま、遠方にいた高速宇宙戦闘艦を目指す。

 

そして超高速の弾丸と化したガンダムジェミナス・グリープは、激突と重ねながら一気に高速宇宙戦闘艦にレオンを潰し当て、艦艇もろとも激しく爆砕させた。

 

 

ドォズゴォオッッ―――ゴォッバドォドォドォゴバァァアアアアアアン!!!!

 

 

 

その爆発を駆け抜けた先で、ガンダムジェミナス・グリープはPXを解除しながらゆっくりとパラオに振り返り、勝利の眼光を放った。

 

 

「一体なんだ貴様らは!!?くっ……!!!」

 

だがその頃、マリーダが安静にしていたハサンの診療所に、黒ずくめの不振な男達が押し掛け、ハサンとマガニーにハンドガンを突き付けていた。

 

「何の目的だね?今さらご老体をつついてもなんも出ぬよ」

 

黒ずくめの男の一人がハンドガンを突き付けて言う。

 

「プルトゥエルブの専門医だから敢えて丁重に扱っているんだ。だが、下手な真似はよすんだな」

 

「マリーダ……あんたらが言うプルトゥエルブをどうするつもりだ?!」

 

「我々はただ忠実に任務をこなしているだけだ……今は淡々と指示にしたがって頂きたいな……是非とも!!!」

 

そしてマリーダに他の黒ずくめの男が囲み、身柄を押さえ込んでいた。

 

「貴様らだったのか!!!嫌な……感じはっ!!!狙いは私なんだな!!?ならば医師達は……!!!」

 

気を強く持った姿勢で叫ぶマリーダに対し、黒ずくめの男の一人が銃のような白い器具をマリーダの首筋に当てた。

 

瞬時に鳴ったブシッという音の直後に、マリーダは意識を失わされた。

 

「丁重に運べ………こちら実行隊A班。B班はどうしている?」

 

実行隊の一人である黒ずくめの男が、指示をしながら別動隊に連絡を入れた。

 

その別動隊はガランシェールを目指し、パラオ内の裏通路を駆け抜けていた。

 

「現在、目標の偽装貨物船を目指してます!!もう時期に到達する!!」

 

更にそれに加え、ネェル・アーガマの同型艦・グラーフ・ドレンデがパラオに接近していた。

 

そのキャプテンと思われる男は影に目元の表情を隠したまま、にたりと笑う。

 

戦闘が終息したことにより、プルは接近する負の感覚が一気に明白化するのを感じていた。

 

「……まだ……終わらないよ……一番嫌な感覚が来るっ……!!!」

 

 

 

To Be Next Eepisode

 

 

次回予告

 

 

 ガンダムジェミナス・グリープの出撃によってパラオの戦況は変わった。

 

 しかしその機体はまだ不完全な状態だった。

 

 アディンは新たな好敵手・ロッシェと刃を交えるも、次第に機体は不調になっていく。

 

その最中、かつてMO-5を沈めたOZプライズの幹部・ヴァルダーがネェル・アーガマ型二番艦・グラーフ・ドレンデを持って介入する。

 

えげつないまでのヴァルダーの脅迫にヒイロ達はなす統べなく捕縛されてしまう。

 

マリーダとプルもまたマーサ一味の狂気に晒されていく。

 

一方、キルヴァとリディをテストパイロットにしたウィングゼロとデルタカイの模擬戦試験が実施段階に入っていた。

 

だが、試験ポイントに向かう最中、2機のガンダムはそれぞれに暴走を開始するのだった。

 

次回、新機動闘争記 ガンダムW LBERTY

 

エピソード 32「逆行する負の運命」

 

 


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