新機動闘争記ガンダムW LIBERTY   作:さじたりうす

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 長らくお待たせいたしました。エピソード29、スタートです。


エピソード29 「ユニコーンと少女」

L1コロニー群・インダストリアル7近辺

 

 

 

ラー・カイラム級戦艦・ヨークタウンがインダストリアル7へと迫る。

 

艦載MSにはプライズ仕様のリーオーやリゼル・トーラス、擬似GNDドライヴ仕様のジェガンが艦載され、それらが次々に展開して出撃していく。

 

隊長機と思われる機から僚機に通信がはしる。

 

「ECHOES隊との連絡が途絶え、ダグザ隊長との連絡も途絶えた」

 

「連邦から寝返りしたECHOES……ここに壊滅ですか?ですがそんな事が起こるとすれば……!!」

 

「メテオ・ブレイクス・ヘルのガンダム……!?!」

 

「あぁ……可能性は高い!!まだ消息不明機が4機もいるんだからな!!情報では、コロニー内から正体不明の特異点が計測されているようだ。状況がわからない以上、MDを向かわせる!!」

 

「我々は高みの見物ですね」

 

「ま、そう言うことだ。第二小隊は先行させるMD部隊の監視任務に就け!!」

 

「了解!!」

 

プライズ・リーオーからのコントロール指示を受けたリゼル・トーラスが先行し、インダストリアル7へ飛び込むように加速していく。

 

そのMD監視任務を任されたプライズリーオー小隊もヨークタウンから発艦する。

 

その向こうにはニュータイプの奇跡たる力が発生していた。

 

プルとユニコーンガンダム。

 

この二つの結び付きがニュータイプの更なる力の覚醒を促す。

 

ユニコーンガンダムはエメラルドグリーンの光を発しながらそれを纏い、格納庫の周囲を照らし続けた。

 

神秘的たるニュータイプの光ともいえる力はプルを中心に発生しており、プルも自身から発生する力を全身で感じとっている。

 

閉じていた瞳をゆっくりと開き、ユニコーンガンダムに語りかけた。

 

「あたしを呼んでいた何かは、このコだった……この光はあたしを、みんなを導いてくれる光。さぁ……行こ、ユニコーン!!!」

 

ギンと両眼を光らせたユニコーンガンダムは、ユニットフレームを引き剥がし、力強い加速をかけて飛び立つ。

 

格納庫区画のハッチを腕部のビームサーベルで斬り開け、ユニコーンガンダムは更なる加速を持ってコロニーの区画ゲート内を翔んだ。

 

ニュータイプの光を纏ったユニコーンガンダムは、そのエメラルドグリーンの光をほうき星のようになびかせながら駆ける。

 

それとほぼ同時に先行したリゼル・トーラス部隊もまたユニコーンガンダムに急接近した。

 

「来たっ!!!ユニコーン、いくよ!!!」

 

瞬く間にコロニー外へ飛び出したユニコーンガンダムは、接近してきたリゼル・トーラスのへ滑り込むように

して鮮やかにビームサーベルを斬り込んだ。

 

 

 

フュズバァァアアアアアアンッッ!!!

 

ゴバァオオオオオオオオオオオオッッ!!!

 

 

 

超高速の斬撃で取りついたリゼル・トーラスを破壊すると、空間を舞い踊るかのような躍動を描きながらその空間にいた全てのリゼル・トーラスに斬り込んだ。

 

 

 

ザァバァンッッ、ズォバッッ、ドォガァズゥンッ、シュバァッッ、ジュズドォッッ、ザォオオオンッ、ザガァシュッ、ドォガァズッッ!!!

 

 

 

薙ぎ斬り、袈裟斬り、突き、右斬り上げ、突き、薙ぎ、袈裟斬り、突きと続く斬撃が、ほんの数秒で駆け抜け、一瞬にしてリゼル・トーラスを残骸に変貌させた。

 

「心も何もない危険な機械……!!!」

 

リゼル・トーラスを流れるような軌道の中で見つめるプルは、無心非情なマリオネットの排除にユニコーンガンダムを飛び込ませ続ける。

 

メガビームランチャーが撃ち込まれ、小規模のビーム渦流群がユニコーンガンダムに向かうが、かわしにかわされていく。

 

その最中、一瞬動きを止めたユニコーンガンダムにメガビームランチャーのビーム渦流群が撃ち注ぐ。

 

だが、全てがユニコーンガンダムを纏う見えない球体のバリアーに遮断され消滅した。

 

その正体は対ビーム装置のIフィールドだが、その能力はニュータイプの力によるものなのか、超高性能型レベルに跳ね上がっていた。

 

次の瞬間にはユニコーンガンダムの回し込むような薙ぎ斬撃が1機のリゼル・トーラスに入り、その爆発を突き抜けて更なる連続斬撃がリゼル・トーラスをバラバラにさせる。

 

その最中、先行リゼル・トーラス部隊よりも遅れてきた監視任務のリーオー小隊が空間を漂うウィングガンダムを捕捉した。

 

「……小隊長!!!空間を漂うガンダムを視認しました!!!」

 

「何?!!」

 

ウィングガンダムリベイクを捕捉した機はウィングガンダムリベイクに接近し、コックピットのサブモニターに拡大映像を映し出す。

 

OZプライズのパイロットは自機のマニピュレーターを駆使させながらウィングガンダムを確保した。

 

「目標を確保!!この機体は……消息不明だった奴ら(メテオ・ブレイクス・ヘル)のガンダムです!!!左ウィングバインダーや左腕が破壊されてはいますが、機体そのものは原形を止めております!!ハッチは開いており、乗り捨てられていた模様です!!」

 

「やはり、ECHOES隊はこのガンダムと……ならば、あのガンダムと思われる機体を動かしているのは……!!!」

 

「そう読むのが自然だ……現時点の戦闘はリゼル・トーラスに任せ、我々は一時帰投する!!!ガンダムを鹵獲を最優先にする!!」

 

「はっ!!!」

 

ユニコーンガンダムにGマイスターが乗っていると読んだOZプライズの兵士の読みは見事に外れの判断に至る。

 

当の本人は、重力装置が持続している瓦礫が散乱する裏通路をロトで走行していた。

 

だがそのコントロールを握るヒイロは奇抜な行動に出ようとしていた。

 

同乗したアディンもヒイロのその行動に理解ができなかった。

 

「ヒイロ!!正気か!!?わざわざラー・カイラム級に行くなんてよ!!!」

 

「あぁ。ウィングガンダムリベイクを餌にしておいてある。奴らは十中八九回収する。その間にヨークタウンに接近し、俺が事前に潜入して仕掛けたリモート爆弾のマイクロリモコンの周波有効内で操作すれば、ある程度の痛手を負わせる事ができる」

 

とんでもないことを淡々と言って見せるヒイロにため息まじりに落胆するアディン。

 

「……でもよ、もし下手して捕まったらどう扱われるか保障も無いんだぜ?!!宇宙さ迷ってる内にイカれたのかよ?!」

 

「ふん……軍に喧嘩を売った時、いや、それ以前の過程でイカれている。今更なことだ」

 

ヒイロはアディンも巻き込む気でいたが、それはユニコーンガンダムが覚醒に至った今を見越しての余裕だった。

 

「俺達が仮に捕まれば、バルジに連行されるだろう。現にデュオと五飛が捕まり、連日MSテストのモルモットになっている」

 

ヒイロの言葉からデュオと五飛の生存を知ったアディンの心境に、驚きと安心感が混ざった。

 

「マジか?!!無事だったんだな、あの二人!!!てか会ったのか?!!」

 

「いや……ヨークタウンに潜入した際、ハッキングでOZプライズの機密を調べて知った。どうやら俺達は利用価値の宝庫らしい」

 

「潜入にハッキング……」

 

プルのボディーガードを務めてきたアディンと、一人でサバイバル的に闘い続けているヒイロとではくぐる過酷さの限度が違った。

 

故に行動もそれに比例する。

 

ガタガタ揺れながら通路を突き進むロトの中で、アディンは一つの提案を出した。

 

「……相変わらず、ヒイロのやること成す事はすげーな……はんぱねー。そんなヒイロに一つ朗報がある。今、マリーダは穏健派ネオジオンの資源衛星パラオにいるぜ。同じパラオにいるプルとはニュータイプ的な事情で離れて暮らしてるけどな。この際ヒイロもパラオに来てみたらどうだ?」

 

「……!!!」

 

アディンのその言葉にヒイロは珍しく動揺し、ロトを更に加速させ、大型の瓦礫とECHOESジェガンの残骸に突っ込んだ。

 

ECHOESジェガンの残骸に乗り上げたロトはスキージャンプ台から滑空するような軌道を描きながら着地するも、キャタピラを破損させた。

 

「うおあああっ!!?どこ突っ込んでんだよ、ヒイロ!!」

 

「お前が俺を動揺させるような事を言うからだ……キャタピラがイカれた。MS形態でいく」

 

ヒイロはロトを変形させると、ブースター推進させながらマリーダについて問い質した。

 

「マリーダはあれからどうなんだ?」

 

「あの日から……ダブリンを離脱した時から患っていた人体実験の後遺症はまだ残っていて、今でも療養中……。マガニーっていう爺さんやハサンっていうおっさんの元軍医二人が日々治療に専念してくれてるんだけどな」

 

「……容態は?」

 

「正直、まだ良くならない。勿論、当初よりはいい状態になってきてはいるらしいけど……完治にはまだまだ時間がかかりそうだってよ……」

 

「そうか」

 

その後の会話に間が空く中、アディンはふとした閃きを覚え、ヒイロに意見提案な発想を振った。

 

「あ!!もしかしたら……ヒイロが来たら精神療法で治ったりしてな!!マリーダもきっと嬉しく思えるんじゃねーか?!」

 

「精神療法……!!!」

 

「ヒイロだってそうなんだろ?」

 

ヒイロはゼクスとの決戦の時にマリーダを想いながらプロトバスターライフルを放った瞬間を思い返した。

 

確かにマリーダの存在はヒイロの中で根強い影響を与えていた。

 

感情のままに行動する事が人の正しい生き方。

 

かつてもう一人のアディンに教えられた行動理念がヒイロを突き動かした。

 

ヒイロはロトを手早く巧みにコントロールしてみせ、インダストリアル7の外へ向かわせる。

 

その動きは軽快かつクイックで、あたかもヒイロの感情が乗ったかのような加速で裏経路を駆け抜けていく。

 

無論、同乗しているアディンは振り回され続けた。

 

「ぐおあっ!!!おいおい……!!!いくらなんでも入れ込み過ぎだっ!!!」

 

「……ガンダムの回収を確認した後でこの機体をヨークタウンの側面に航行させる。通信障害を装えば何とかいけるはずた……!!!」

 

「大々的過ぎだろ!!?」

 

「黙っていろ……ガランシェールもいるんだろ?どの道ここで叩かなければ追撃されるが関の山だ。やれる手があるときに手を打つ……!!!」

 

 

 

「無感情な危ない人形は、壊さなきゃいけないのよ!!!」

 

プルの意思を乗せたユニコーンガンダムの鮮やかな×状軌道の斬撃が、リゼル・トーラスを破断・爆砕させる。

 

その爆発したリゼル・トーラスの向こうには、空間に佇むユニコーンガンダムの姿があった。

 

リゼル・トーラス部隊を壊滅させたユニコーンガンダムは機体を閃かせながら宇宙を舞い、尚も光を放ちながらいた。

 

「ユニコーン……今できることは……みんなを守る事だよ。大切なみんなを……っ……!!!もっと来る!!!今度は、人だ!!!生身の……!!!行くよ!!!」

 

プルは次に来る攻撃部隊がMS部隊と感じつつ、ユニコーンガンダムを向かわせる。

 

この時、ガランシェールはインダストリアル7からの脱出と出港に成功しており、ユニコーンガンダムの戦闘宙域から後方およそ2マイルを航行していた。

 

ジンネマンやフラスト、アレク達も配置に戻り、第一種戦闘配置の状況を展開させていた。

 

「本艦はユニコーンガンダムの戦闘状況を観測しつつ航行。くれぐれも戦闘域から一定の距離を保て!!MDが襲って来ようものなら愛娘とガンダム小僧の帰る場所が無くなっちまうからな!!!」

 

「アイサー!!!」

 

「俺も女房と子供が待っているからなー!!むざむざ死ねませんよっ!!」

 

気合い十分なギルボアのコントロールの下、極力危険が及ばない距離を加速するガランシェール。

 

そのガランシェールにプルからの通信が入った。

 

「ガランシェールのみんな、聞いて!!もっとあたしとユニコーンにガランシェールを近づけて!!」

 

「何!!?」

 

プルからの要求は、わざわざガランシェールを危険に晒すような要求だった。

 

無論、ジンネマンは反論を叫ぶ他なかった。

 

「プル!!!何を言っているんだ!!?ラー・カイラム級にこの船を近づけたらどうなるかわかって言ってるのか!!?」

 

「そうだよ!!!やらなきゃなんない!!!もっとMSが来るんだよ!!!」

 

短時間でリゼル・トーラスが壊滅したこの状況は、監視体制を執っていたOZプライズのヨークタウンMS隊に衝撃を与えた。

 

「い、一瞬にして……派遣したリゼル・トーラスが全滅!!!正体不明の目標、こちらに接近します!!!」

 

「リゼル・トーラスは奴らのガンダムに対しそこそこの戦果のデータがある……それが、しかも全滅だと!!?PXとかいうシステムなのか……!!?」

 

「戦闘エリアにて、正体不明の光も発生しています!!!観測される光は……アクシズショックのものと酷似している模様!!!」

 

ニュータイプの脅威。

 

通信を艦長に入れるMS部隊長がこの状況に対し、意見具申をする。

 

「艦長!!我がプライズ・リーオーは擬似GNDドライヴの改良型が搭載されています!!同仕様のジェガン共々出撃させることを具申します!!!何れにせよ攻め込まれます!!!」

 

それから文字通りに間も無くヨークタウンのMS隊とMD部隊の半数が出撃した。

 

残り半数は艦の防衛に回り、迎撃体制に移行して進んだ。

 

そして行き違うように先程のウィングガンダムリベイクを鹵獲したリーオー小隊がヨークタウンに通信を入れた。

 

「こちらヨークタウン第二MS小隊!!戦闘宙域近辺でメテオ・ブレイクス・ヘルのガンダムを1機確保!!既に機体にパイロットは既に居ない!!現在帰投中!!!戦闘はMDに任せている状態です!!」

 

その報告に艦内はどよめきを見せ、クルー達は驚愕を隠せなかった。

 

クルーの一人のオペレーターが映像を拡大すると、プライズ・リーオーが確かにウィングガンダムリベイクを抱えて帰投してくるのが確認できた。

 

「確かに……奴らのガンダムです!!!連邦製ではありません!!殲滅作戦時に消息不明となっている4機の内の1機です!!」

 

「危険な任務の中ご苦労。鹵獲したガンダムは直ちに本艦へ収用せよ!!」

 

「はっ!!」

 

ヨークタウン艦長の指示の下、ウィングガンダムリベイクがヨークタウン艦内に収容された。

 

MSハンガーにウィングガンダムリベイクが連結され、艦内にて完全に鹵獲した状況が整う。

 

ロトのコックピット内にて、ヒイロは携帯データベースでウィングガンダムリベイクの状況をモニターしており、ヨークタウンへの更なる接近を図る。

 

そしてその接近を図った直後に案の定、ヨークタウンからの通信が入った。

 

「こちらヨークタウン!!ECHOES隊!!これより貴官らの救出にかかる!!応答されたし!!繰り返し呼びかける!!応答されたし!!」

 

ロトの狭いコックピット内に響くヨークタウンの通信士の声。

 

「……」

 

「通信っっ……くぉ!?」

 

ヒイロはアディンが喋ろうとした矢先にアディンの口を掴み塞ぐ。

 

無論、ヨークタウン側に現在タイミングで声紋照合等をされない為であるが、思いの外に握力が入り、アディンにダメージを与えた。

 

ヒイロは口パクで「黙っていろ」とだけ伝えると、再び通信に注意を効かせる。

 

「ECHOES隊、応答願う!!ECHOES隊!!」

 

平行するロトの位置が、携帯データベースに表示されるウィングガンダムリベイクとの自爆信号有効内にランデブーした。

 

いよいよヒイロが狙っていた瞬間が来た。

 

「……応答者はいないっ……!!」

 

「な?!」

 

敢えて声紋を認識エラーさせてリモートコントロールスイッチを押したヒイロは、ロトを巧みに方向転換させ、プルのユニコーンガンダムが舞う宙域へ機体をフルブーストで加速させる。

 

その次の瞬間、ベストなリモート周波数エリアに機体が入り、遂にヒイロはヨークタウン艦内に仕掛けた全てのリモートコントロール爆弾を爆発させた。

 

「なっ……?!!がぁああああっ━━━!!」

 

ヨークタウンは内部からのリモートコントロール爆弾による爆発から継ぐ誘爆で、機関部が致命的な破壊を受けて大爆発を巻き起す。

 

一気にヨークタウンの船体を折る程の破砕爆発から轟沈へと導く。

 

機関部付近に仕掛けたリモート爆弾の爆発からなる誘爆が最大の原因だった。

 

更に周囲に展開していたプライズ・リーオーやジェガンをもその噴き弾ける爆発に巻き込まれ、次々と爆発光と化させていく。

 

轟爆発を連鎖しながら起こし、沈むヨークタウンは、たった一人の破壊工作により大打撃を受けたのだ。

 

一方、ユニコーンガンダムに接近する機体のパイロット達は、進撃途中の最中にその緊急事態を目視する。

 

離れ行く母艦が爆発を起こしながら二分している光景がモニターにあった。

 

「た、隊長!!ヨークタウンがっ!!」

 

「何だと?!!轟沈……している!!?くぅ……っっ!!!我々はガンダム攻撃を優先とする!!!否、それしかない!!!各機、ガンダムに攻撃をかける!!!」

 

プライズ・リーオーや同じワインレッドのカラーリングに識別されたプライズ・ジェガンが、プルが乗るユニコーンガンダムに接近し、ドーバーバスターや同用途に加えた精密射撃兵器・スナイパーバスターを構えて攻撃体勢に突入する。

 

「ターゲットを明確に捕捉!!これは、一戦から引き、行方不明になっていたユニコーンガンダムです!!!」

 

「何?!!」

 

ユニコーンガンダムがクロスの斬撃を食らわせ、プライズ・リーオーを破断に斬り散らしながら舞い、そして停止する。

 

「やるしかない……キュベレイ……力貸してね」

 

プルは接近する敵部隊を見据えながら瞳を閉じ、自身集中させながらニュータイプの力を発動させる。

 

すると、波紋状のエネルギー波が腕を広げたユニコーンガンダムから発生し、周囲にその神秘的な光の輪が拡がった。

 

そしてそれは、ガランシェールにも到達した。

 

ジンネマン達がいるブリッジからも観測され、誰もがその光景を目の当たりにする。

 

だが、驚愕する様子は見せず、じっと戦ってくれているプルを見据えていた。

 

「プル……」

 

ジンネマンは無意識に愛娘の戦う姿に、父親としての性(さが)からか彼女の名を吐露する。

 

その時、MSドックから内線通信がジンネマンの所に入る。

 

「俺だ」

 

『キャプテン!!!キュベレイが、キュベレイが勝手に動き始めた!!!』

 

「何だと?!!」

 

トムラからの内線通信からは、俄には信じがたい情報が入ってきた。

 

実際にガランシェールの格納庫では、無人のキュベレイMk-Ⅱが固定ハンガーを外そうとするかのようにもがいていた。

 

「無理やり固定ハンガーがもがれようとしている!!このままじゃ、ヤバイ!!」

 

キュベレイMk-Ⅱは今にもハンガーをもぎ取らんばかりの力を出していた。

 

そこに、プルからの通信が入る。

 

「ガランシェール!!今、きっとキュベレイが出たがってるでしょ!!?出してあげて!!あたしが呼んでるの!!」

 

「呼んでる?!!これも……プルとあのガンダムとが合わさった力なのか!!?トムラ!!プルがキュベレイを呼んでいた!!ハンガーとハッチ、開放してやれ!!」

 

「そういうことですかっ!!了解!!ハンガー、ハッチ解放だ!!」

 

ガランシェールの1番ハッチが固定ハンガーと共に解放され、キュベレイMk-Ⅱは解き放たれた鳥のごとく飛び立つ。

 

既にキュベレイMk-Ⅱにも微かではあるが、エメラルドの光が纏われていた。

 

プルのゆかりのMSであるキュベレイMk-Ⅱが、新たな力を覚醒させたプルの許へと飛んでいく。

 

ジンネマンらガランシェールクルーの一同はその光景を見守った。

 

「キュベレイがプルの許へ……ユニコーンガンダムはニュータイプの力を、可能性を体現するガンダムなのか……?!!」

 

ジンネマンは改めてプルとユニコーンガンダムが放つ力を垣間見、神秘的な感覚を覚える。

 

その間にも、展開を開始したプライズ・リーオーやプライズ・ジェガンがビームライフルやドーバーバスター、スナイパーバスターの射撃でユニコーンガンダムへと攻撃を仕掛ける。

 

だが、手をかざしたユニコーンガンダムの前に、背部を離れたlフィールドシールドが展開し、あらゆるビーム渦流をシャットアウトして見せる。

 

「パパ達はやらせないんだから!!」

 

ニュータイプの力とユニコーンガンダムの秘めた力が重なり、本来のlフィールドの能力を上回る現象が発生していた。

 

空気のようなエメラルドの波状エネルギーの前にビームエネルギーが弾かれては消えていく。

 

「これは!!?」

 

「lフィールドにしては異常に広範囲過ぎる!!これもアクシズショックの光の力か?!!」

 

この時、後方支援でスナイパーバスターを放っていたプライズ・ジェガンのパイロットの内の一人が、ユニコーンガンダムの後方を航行するガランシェールを確認してしまう。

 

「ユニコーンガンダム後方にネオジオンの船舶を視認!!恐らくガンダムはあれを守っている可能性が!!」

 

「ネオジオンのニュータイプがユニコーンガンダムに乗っているのか?!っ……?!!増援!!?」

 

隊長機のプライズ・リーオーがキュベレイMk-Ⅱの機影を捕捉し、それに連なり各機が増援を捕捉していく。

 

「増援はキュベレイです!!光のようなものを纏って突っ込んでくる!!」

 

「キュベレイに各機攻撃を仕掛けろ!!」

 

「了!!」

 

プライズ・リーオー、プライズ・ジェガン各機が、持てる高出力ビーム火器を一斉に放つ。

 

だが、ユニコーンガンダムが展開させているlフィールドシールドが高速で動き、ビーム速度に合わせて遮断していく。

 

プルはキュベレイMk-Ⅱが舞い込むと、更にニュータイプの力を拡大させ、キュベレイMk-Ⅱにファンネルを展開させた。

 

そしてユニコーンガンダムと共にMS部隊に攻め込む。

 

「いくよ!!キュベレイ!!」

 

キュベレイMk-Ⅱはプルのニュータイプ波動の意志で動き、ファンネルを一斉に舞わせながらマシンガンのように敵部隊を撃つ。

 

 

 

ビギュイッッ、ビギュイッッ、ヴィビビビヒギュギュイィイィィッッ、ヴィビビビビビビビギュギュイィンッ!!!

 

ディガガッ、ドゥガガガッッ、ギャガァガァアッッ、ドドドガゴォゴォババァアアンッッ!!!

 

 

 

次々にビームに射ぬかれ、兵装やジョイントを致命的に破壊されていくOZプライズサイド。

 

ユニコーンガンダムも高速で突っ込み、ビームサーベルの高速斬撃がプライズ・リーオーやプライズ・ジェガンをバラバラに斬り刻む。

 

 

 

ヒュズバッッ!!! ザシュバッ、ザシュギイッッ、シュバァッッ、ディガィィイィッ!!!

 

 

 

キュベレイMk-Ⅱがファンネルとハンドランチャーの併用射撃で圧倒し、ユニコーンガンダムが斬撃の乱舞を見舞いながら駆け抜ける。

 

一見、完全に破壊しているかのようなその攻撃は、しっかりとパイロットを生かすように与えられており、あくまでも機体を戦闘不能にさせていた。

 

キュベレイMk-Ⅱも同じく、ファンネルによる攻撃を戦闘不能レベルの破壊に止めていた。

 

「確かにこの人達は敵だけど、無闇な殺戮は今のあたしにはできない。だって、このコは殺戮マシンじゃないから!!!宇宙や地球のみんなに希望を示すガンダムなんだから!!!」

 

プルはユニコーンガンダムから感じるモノを理解し、戦いながらも相応の示し方を体現しようとしていた。

 

それは宇宙の希望へと繋がる力を宿したガンダムだからだ。

 

ユニコーンガンダムはキュベレイMk-Ⅱと共に巧みな連携で斬撃と射撃を組み合わせ、制御をかけた破壊を拡大させていく。

 

ユニコーンガンダムの両腕に唸る斬撃は躍動するようにプライズ・リーオーやプライズ・ジェガンの両腕と上下半身を斬り飛ばし、頭部を突き飛ばす。

 

その後方よりキュベレイMk-Ⅱはファンネルの連射撃の嵐をあてながら、無力化へと導く。

 

2機が舞い示す圧倒的な力は凄まじくもあるが、同時に何か殺戮の対になるモノを感じさせていた。

 

プルが放つニュータイプの陽の力とでもいうべきか。

 

その光景をロトのコックピットからヒイロとアディンも見つめていた。

 

「……キュベレイ、誰が動かしてるんだよ?!!プル以外のニュータイプはガランシェールに居ないぜ!!?」

 

プルがユニコーンガンダムに搭乗していることは認知の上だが、キュベレイMk-Ⅱが動いている事実には軽く混乱しているアディン。

 

「おそらくはユニコーンガンダムの力。すなわちプルが思考でキュベレイをファンネルのように操っている。それ以外は考えられない」

 

アディンに対してヒイロは、流石なまでの洞察力で起こっている事実を鋭く見抜いていた。

 

「え!!?MS単位で操れるのか?!!」

 

「かつてのネオジオンにも大々的ではないが確かにそのような技術があった。更に技術進化したユニコーンガンダムでできても不思議じゃない……それにプルはどういう訳か敵を生かしながら戦っている」

 

「何?!!生かしたら後で追撃されるハメになりかねないぜ!!!てか、何でわかるんだよ、ヒイロ?!」

 

更にヒイロは破壊された敵機の状況からもパイロットの安否を洞察していた。

 

「機体が1機も爆発していない。攻撃力を奪い、完全に無力化に徹している」

 

「何の為に……?!!」

 

「さぁな。俺ならば必ず破壊する。後で彼女自身に聞け……」

 

そして戦闘は瞬く間に収束し、周囲にはプライズ・リーオーやプライズ・ジェガンの断骸機が無数に浮かぶ。

 

ユニコーンガンダムも同時に各部を変形させて通常化し、キュベレイMk-Ⅱもまた力が解除されて空間を漂った。

 

ヒイロとアディンのロトが残り僅かな推進剤でユニコーンガンダムに接近し、アディンは戦闘を終えたプルを迎えに行きながらユニコーンガンダムのハッチを開こうとする。

 

「プルっ……あ!?あ、ヤベ!!プル生身だった!!!あぶね、あぶね!!」

 

だが、ハッチの解放寸前で彼女がノーマルスーツやアストロスーツを着ていない事に気付き、アディンは思い止まる。

 

一息つきながら何故か慌てようとする心を止め、一旦心を落ち着かせた。

 

だが、暫く経ってもユニコーンガンダムは微動だにせず、そのまま静観し続けている。

 

「プル?」

 

人懐っこいプルがじっとしている筈もなく、違和感を覚えたアディンは直ぐにユニコーンガンダムのハッチを叩いた。

 

「プル!!おい、プル!!大丈夫か?!!おい!!」

 

離れた位置からも異変に気づいたジンネマンは、直ちにガランシェールを最大戦速で向かわせる。

 

「機関、最大!!!ユニコーンガンダムに向かえ!!さっきから機体が停止したままだ!!!様子がおかしい!!」

 

「了解っ!!!」

 

ギルボアは直ちにジンネマンの指示に答え、ガランシェールをユニコーンガンダムの方面へと向かわせた。

 

「プルに何かがあったのか……?!!待っていろ!!!」

 

急ぐジンネマンに呼び掛け続けるアディンの憂いの中、プルはコックピットシートに身を委ねながら静かに意識を失わせ続けていた。

 

 

ガランシェール隊は再びヒイロを加え、一刻も早く展開した領域からの離脱の為にパラオへの帰路を急ぐ。

 

その最中のMSドックでは、閉じ込められ続けているプルの救出の為、内部からロックされたユニコーンガンダムのハッチを解放する作業が進行する。

 

一方の隣のドックでは強大な爆発に対して驚異的な強度を誇るように殆ど現時点の原形を留めて回収されたウィングガンダムリベイクの姿があった。

 

それはガンダニュウム合金装甲故の誇りとも言えるものであるかのようだった。

 

ヒイロが意図していた確かめたい存在意義とは、改めて自分達ガンダムが、自分達の意志の如く硬くある存在であるかを確かめたい事であった。

 

ヒイロは一時的にウィングガンダムリベイクに視線を送り、存在意義を確認した後に再びユニコーンガンダムに視線対象を移した。

 

全身サイコミュの機械たるユニコーンガンダムに、初めてそれに携わった者以外がメカニカルのメスを入れていた。

ヒイロのしている作業は、いわばMS版のピッキングのようなモノであるが、ユニコーンガンダムはヒイロ達のガンダムとはまた異なる特殊構造であり、通常であればMSメーカーエンジニアの一部の人間でなければできないスキルが要求される技だ。

 

メカニッククルーのトムラもその技量に固唾を飲む。

 

そして作業開始より一時間が経過する頃、ロック解除アラームと共にハッチが解除された。

 

「成功した」

 

見事にハッチを外部から解放させたヒイロのスキルに、固唾を飲んでいた一同はその技量に驚きを、同時に閉じ込められていたプルが解放された安心感を覚えた。

 

直ぐ様ジンネマンは、娘たるプルに駆け寄る。

 

「プル!!しっかりしろっ、プル!!プル!!」

 

プルを揺すり起こそうとするジンネマンの表情は、憂いや不安、焦りを隠せないでいた。

 

まさかの事態を覆す裏付けを確かなものにすべく、プルの首もとに手を当て、確かに脈と体温が彼女にあることを確認した。

 

養父親として当然の事であり、アディンもまた憂いに駆られてコックピットを覗き込むように呼び掛けた。

 

「おいっっ!!プルは、プルは無事なのか?!キャプテン!!!」

 

「アディン!!プルは……気を失ってしまっているっ……!!どうやらこのユニコーンガンダムが見せた力がプルに負担をかけさせたらしいっ……くっ!!!結局ラプラスの箱の為にプルは負担を背負わされたのか!!?」

 

「このガンダムが……ラプラスの箱がプルに……!!でも、プルは陽の感じがするって……このガンダムが呼んでるって言ってた……俺はプルのその感覚を信じるぜ、キャプテン!!とにかく今は介抱しようぜ!!」

 

「無論だ!!」

 

プルを抱き抱えながらアディンと共に出てきたジンネマンは、デッキ上で相対するヒイロに改めて礼を述べる。

 

「ヒイロ……マリーダの時も、今回も……また助けてもらったな。何度も恩に切る!!」

 

「礼を述べられる程じゃない。できる事をやっただけだ……続けて今の内にカーディアスという男が言っていたラプラスプログラムの解析に入る。後アディン」

 

「なんだよ?ヒイロ」

 

「しばらくはプルの傍にいてやれ」

 

「ヒイロ……お前なあっ……!!!ちぇっ、お前もパラオ行ったらマリーダに会ってやれよな!!!」

 

「言われる間でもない。そのつもりだ」

 

そう言ってヒイロはユニコーンガンダムのコックピットに入って行った。

 

仲間ながら改めてヒイロの掴み処の無さにアディンは認める一言の後に、ジンネマンに進んで手を貸す。

 

「……やっぱりヒイロはスゲーよ……キャプテン、プルは俺が抱えて……」

 

「馬鹿ヤロッ!!!プルを抱えるなんざ認めん!!!」

 

「いいっ?!!」

 

 

 

OZ、OZプライズ共に反抗勢力との戦闘を重ねる情勢の中、特別戦闘部隊が宇宙と地球の各地で反抗抑止の戦闘を展開させていた。

 

主に両勢力のリーオーがOZのエアリーズと共に地上と上空とでの連携体制で掃討作戦を実行。

 

ジェガンやスタークジェガン、ジムⅢ、ジムⅡ、ネモ、ガンキャノンDといった連邦の機体群が抵抗を示す中、OZ所属機のリーオーとリーオーキャノンの部隊がビームマシンガンやビームバズーカ、ドーバーガン、ビームキャノンを駆使し、火力と物量を持ってジリジリと迫る。

 

ビームマシンガンで蜂の巣にされるジムⅢや高出力ビームに穿ち砕かれるジェガン、ドーバーガンやビームキャノンを食らい、破裂するように砕け散るスタークジェガン、ガンキャノンD……近代改修を実施したOZのリーオー達は確実なる差を知らしめさせる。

 

上空からもエアリーズ部隊とプライズ・リーオーがレーザーチェーンガンと擬似GNDエネルギー式ビームライフルで空爆を仕掛ける。

 

連邦のMS達は空中からのレーザーとビームの射撃に成す術なく次々に駆逐され、爆発に爆発を重ねて果て散る。

 

別のポイントでは、エアリーズとアンクシャ部隊が交戦体制になろうとしていたが、エアリーズ部隊の遠距離からのミサイルランチャーによるギガハープーンの一斉射撃がアンクシャ部隊を襲う。

 

アンクシャ部隊はビーム射撃で迎撃するが、ギガハープーン群を撃ち墜とすことなく、撃墜されていった。

 

尚、ギガハープーンの材質は低純度ではあるが、ガンダニュウム合金製であり、並みのビームや実弾では容易に撃ち墜とせない材質だった。

 

ギガハープーンを掻い潜り、エアリーズの死角である近接戦闘を狙うアンクシャ部隊もいたが、接近中に全機体がレーザーチェーンガンによって撃墜に撃墜され、駆逐されていった。

 

 

 

地球圏規模で中小規模の戦闘が展開する情勢の最中、裏でメテオ・ブレイクス・ヘルの支援のパイプラインを持つオーブ首長国連邦が、それとは別の理由でOZプライズに狙われる事態に見回れようとしていた。

 

尚、この攻撃には一切の警告をせず、突然の一方的な奇襲での侵攻であった。

 

そしてこの侵攻作戦にはOZプライズ所属の特殊部隊・バーナム所属のガンダム、カラミティガンダム、フォビドゥンガンダム、レイダーガンダムが投入され、OZプライズ切っての弾圧強行主義者、ユセルファー・ツーセンタ特佐は、中立を貫こうとするオーブ首長国連邦を反抗幇助国と見なし、侵攻を実行に移していた。

 

この行為はユセルファー特佐のOZプライズの特権を利用した私刑に他ならないのは明らかな事実であった。

ユセルファー特佐はSソニックトランスポーターの後部座席に座し、頭ごなしの理不尽を下す。

 

「気に入らないな……実に!!あくまでも中立を貫こうとし、ガンダムを模したMSを保持する国、オーブ……我々への反抗幇助以外の何物でもないな!!!例の3機を投入しろ!!!」

 

オーブ首長国連邦を前に、3機の三凶ガンダムが輸送機より投下され、3機が島国の小国を目指す。

 

「珍しく俺達が揃うとはなぁ……!!!」

 

「久しぶりー。みんなで殺しまくろーぜ」

 

「ひゃっはー!!!抹殺、滅殺ぅう!!!」

 

3機は後から投下された僚機のバーナム・ジェガン部隊を従えてオーブの領海を侵犯しながら突き進む。

 

この3機のガンダムやバーナム・ジェガンにも擬似GNDドライヴが搭載されているため、空中加速や運用も可能なのだ。

 

ユセルファー特佐は直に3機のガンダムに私見極まりない命令を下した。

 

「私はOZプライズに反抗する、若しくはそれを幇助する存在が気に入らない……徹底的に潰してくれたまえ!!!これはOZプライズの在り方を示す戦闘だ!!無論、罪は全てメテオなんとやらに譲渡する。諸君らも気に入らない存在、目障りな存在は存分に潰せ!!!」

 

「了解!!!」

 

狂喜の笑みを見せながら三人は各々のガンダムを加速させる。

 

対しオーブ首長国連邦からは、ウェイブライダーを模したかのような航空機が多数でスクランブル発進していく。

 

オーブの航空戦力・ムラサメ(※旧連邦ニュータイプ研究所とは無関係)である。

 

それらを捕捉したオルガ、シャニ、クロトは一斉に猛撃の攻めを開始した。

 

滑空しながらカラミティガンダムは、引っ提げた全砲門からのビーム渦流をぶつける。

 

ムラサメの機体群は真っ向からのビーム渦流群に一気に砕き潰されていく。

 

フォビドゥンガンダムもまた、フレスベルグとエクツァーンの併用砲撃を、レイダーガンダムはバードモードでクロープラズマキャノンのアフラマズダとツインビームキャノンのフレイア、両肩のアームジョイントのツインビームキャノン、機種部のトップバスターを放ち、次々にムラサメ部隊を撃墜する。

 

高出力ビーム火器の雨嵐。

 

直撃を食らうムラサメ部隊は脆く破砕され、爆砕していく。

 

撃墜を免れた数機が、3機のガンダムの後方にいたバーナム・ジェガン部隊と交戦に突入する。

 

「おこぼれはあいつらにやらせとけ!!!このまま突っ込むっっ!!!」

 

「はいよー」

 

「滅殺ヒャッハー!!!あ?!!」

 

その時、次に迫るムラサメ部隊が一斉にMSへと可変し、どの機体もガンダムの頭部を模したフェイスを見せる。

 

しかし、どの機体の射撃も見かけ倒しの域を出ない。

 

特にフォビドゥンガンダムに関してはゲシュマイディッヒパンツァーによってビームを湾曲させられてしまう。

 

「意味ない、意味ない……意味ないって、ばーか」

 

シャニは例の小馬鹿にしたセリフを吐き、容赦なく砲撃を浴びせながら近づくムラサメ部隊を連続破砕させていく。

 

「なんだコイツら!?ガンダムなのは頭だけか?!笑わせるぜっっ……消え散れやっっ!!!」

 

「ギャハハハっ!!!コイツらガンダムの皮被った雑魚ばかりだぜっ!!!」

 

オルガのカラミティガンダムとクロトのレイダーガンダムもまた得意な砲撃分野でムラサメ部隊を木っ端微塵に仕上げる。

 

展開する高出力ビーム渦流の波状攻撃が、拡がるようにムラサメ部隊を破砕、駆逐していった。

 

瞬く間に3機はオーブの軍事施設の領域に侵攻し、3機揃っての高出力ビーム渦流砲撃を更に撃ち飛ばす。

 

一気に突っ走る多重ビーム渦流群は、アスファルトや格納庫諸とももう一種のガンダムタイプ量産型MS、M1アストレイ達を一切の迎撃を許さずに砕き散らす。

 

爆炎が一斉に噴き上がり、オーブ首長国に轟音を轟かした。

 

スライド着地したカラミティガンダムは、より一層の全砲門砲撃を加え、M1アストレイ部隊を民間施設ごと破砕の限りに激しく破砕させていく。

 

吹き飛ぶM1アストレイの機体群と共に、民間人達や建造物を破砕消滅されていた。

 

更にビームサーベルで斬り掛かって来たM1アストレイにシールドを突き刺し、ケーファーツヴァイの至近ビーム射撃を叩き込んで爆砕させて見せる。

 

そこから更にケーファーツヴァイの連続射撃をM1アストレイ達に浴びせ、駆逐の限りを尽くして見せた。

 

一方のフォビドゥンガンダムは、スライド着地しながら変形し、その惰性の勢いのままニーズヘッグを振りかざして、執拗なまでにM1アストレイを連続で斬り刻みまくる。

 

ガンダニュウム性……すなわちGND合金の鎌の刃でM1アストレイに取り付いては斬り飛ばし、取り付いては斬り飛ばす。

 

狂気の沙汰たるその連続斬撃は、M1アストレイ達を旋風のごとく斬り潰し続けた。

 

レイダーガンダムはフレイアを撃ち込みながらM1アストレイを連続撃破して突っ込むと、破砕球・ニョルミル

を当たり着いたM1アストレイに殴り叩き込み、それを皮切りにして次々に砕き潰していく。

 

そして吐き散らすようにツォーンを左右に連続砲撃斉射し、ことごとくM1アストレイ部隊を破砕させていく。

 

レイダーガンダムの攻撃は止まることなく突き進み、フレイアの銃口を突き刺しての零距離射撃、ニョルミルによるコックピット破砕、至近距離からのツォーンによる爆砕射撃と過激さが増していく。

 

警予告無しの襲撃故に、民間人もより一層の犠牲を伴っていった。

 

3機のガンダムの存在感は外見上のインパクトからしてメテオ・ブレイクス・ヘルのガンダムと言われても何ら不思議ではなく、民間に対して更に悪性のイメージを植え付けてしまう。

 

無論、情報操作により報道上はメテオ・ブレイクス・ヘルという事にされている為、民間の誤解の影響は計り知れない。

 

メテオ・ブレイクス・ヘルに更なるマイナスイメージを与えるにはえげつない程の手段であった。

 

この情報は直ぐに緊急放送で地球圏の報道に流れた。

 

オーブ首長国連邦が所有するL3コロニー・ヘリオポリスにもその情報が流れると、各地でどよめきが聞こえ始めた。

 

「オーブ首長国が……ガンダムに?!!」

 

ヘリオポリスに身を寄せていたカトルが驚愕する。

 

カトルは改修を加えたガンダムサンドロック改のセッティングをしていた感じであったが、直ぐに手を止めてその情報を伝えに来たトロワと共に中継を見た。

 

トロワもまた、メテオ・ブレイクス・ヘル壊滅以降、カトルやカトリーヌと共にヘリオポリスに身を寄せていたのだ。

 

中継を見ながら新たなガンダムを確かに確認し、えげつなく姑息な見出しに遺憾を覚えた。

 

「OZプライズの奴ら……かなりの姑息な人種の集まりらしい。既にあの謎のガンダムを俺達のガンダムと偽られている……どうやらそろそろ反旗の翻し時なのかもな」

 

「メテオ・ブレイクス・ヘルによる新たな攻撃との見方ありっ……くっ!!!情報操作だね!!!でも、まだヒイロやデュオ達がいない……反抗を開始するにはまだ戦力が不十分だ……これからようやくバルジへの強襲プランを立ててもいくんだからね。悔しさが尽きないけど、まだ僕達の体制は整ってない……!!!」

 

「いずれにせよ動く。最低でもバルジを機能停止に追い込まなければな……屈辱と罪ははらさねばなるまい。一年前に散っていった仲間達の為にもな」

 

トロワはいつになく言葉数を多く並べる。

 

トロワの感情はそれほどまでに静かなる怒りを宿していた。

 

カトルもまたあの日の悲劇と今のオーブの状況を重ねる。

 

「うん!!!それにしてもオーブの状況……僕の姉さん達やオデルさんが犠牲になったあの日の二の舞だ……!!!」

 

既にカトル達は多大なる恩情を抱くまでにオーブに救われていた。

 

故に行動しようにもできない現状に歯がゆさを感じざるを得なかった。

 

「焦りはマイナスだ。前に進み打開する意志を忘れなければいい。恐らくオーブは十中八九OZプライズの手に堕ちる。時が満ちた時、恩の意で奪還させたいな」

 

「そうだね。僕もトロワのその考えに賛同だ。メンバーが揃ったら直ぐに行動しよう!!」

 

「ロニの救出が先じゃなくていいのか?」

 

「ありがとうトロワ。もちろん、今すぐにでも行動したい……でもまずは彼らに恩を返したい。オーブのバックアップがあったから今こうしていられるんだ!」

 

「そうか。カトルが構わないならばいいんだが……余り無理はするなよ」

 

「うん!大丈夫だよ、トロワ。ありがとう」

 

一方、カトリーヌはオーブから長期に渡りメテオ・ブレイクス・ヘル製ガンダムのメカニック研修(極秘)に来ている少女・ジュリ・ウーニェンと共に、ランチの最中でテレビ中継でこの事態を認識していた。

 

「え?!そ、そんな……嘘でしょ!!?オーブが……?!!」

 

「ジュリちゃん?!」

 

「じっとなんて……無理だよねっ!!」

 

唐突な故郷の危機を知ったジュリは、気を動転させながらパスタを絡めていたフォークを落とし、蒼白した表情でテレビに駆け出した。

 

カトリーヌは直ぐにフォークとスプーンを置き、彼女の背に駆け出した。

 

当然のごとく周囲には、オーブの危機にどよめきが重なりに重なる。

 

故郷の国、もしくはビジネス等で密接な関係国の危機は、誰であれ衝撃を受けるものだ。

現にカトリーヌも故郷を失う痛烈かつ苛烈な衝撃を心身に経験している。

 

あの忌まわしい日をフィードバックさせるカトリーヌは、ジュリをはじめ、ヘリオポリスの人々が懐かせる不安や絶望が理解できた。

 

「なんで……!!?なんで急にこんな事にっ……?!!」

 

「あそこには、マユラやアサギ達がいるんだよ?!!」

 

彼女の仲間、マユラ・ラバッツやアサギ・コードウェル、その仲間の女性チーム達が今まさにモニターの向こうで危機に晒されていた。

 

彼女達はメカニックの他に独自にカスタムしたM1アストレイのテストパイロットという側面もあった。

 

ジュリにはブルーフレーム(以降BF)、マユラにはレッドフレーム(以降RF)、アサギはイエローフレーム(以降YF)と呼ばれるカラーリング機体のテストパイロットをしていた。

 

他にも彼女達のチームにはスカイブルーフレームやグリーンフレーム、メタリックレッドフレームの機体達もあった。

 

故に彼女達が戦闘の最中に身を投じているのがテレビ中継に映ったM1アストレイから見て取れた。

 

「マユラにアサギ……?!!やっぱりアストレイチームのみんなが戦ってる……!!!みんなで研修に来ていればよかった……そしたら!!!そしたら……っ!!!」

 

彼女の今回の長期研修は相談し合った結果、ジュリが一人代表的に選抜され、アサギ達は有事に備えてオーブに残る事を選んでいた。

 

だが、その有事が3機の未知のガンダムの襲撃という最悪の形となって訪れたのだ。

 

アサギのM1アストレイYFは、ニーズヘッグを振りかざしながら禍々しく攻め入るフォビドゥンガンダムにビームライフルを撃ち続ける。

 

他の戦闘中のM1アストレイのチームもまた、カラミティガンダムの全砲門射撃やレイダーガンダムのツォーンやニョルミルを用いた狂気の攻めに次々に破砕され続けていた。

 

「確かにこのご時世、有事は免れない……けど、一方的過ぎだよ!!!こんなの……ただの殺戮じゃない!!!」

 

アナウンサーの緊迫した現場レポートが流れる最中、ジュリはカトリーヌに寄り添いながら、届かない痛烈な気持ちを溢した。

 

「アサギ……マユラ……みんな……無理しないで……逃げたっていいんだよ?お願いだから死ぬのだけは……!!!」

 

実際に逃げて仲間との命脈を維持できているカトル達もいる。

 

決して逃げるが罪とは限らない。

 

無事を祈ることしかできないジュリだが、皮肉にもM1アストレイYFはジュリの想いに反して、ビームライフルを捨ててビームサーベルを取り出す。

 

更にはマユラ機のM1アストレイRFも加勢した。

 

「アサギ、マユラ……やめて!!!逃げてってばぁ!!!」

 

そして次の瞬間には中継をしていたレポーター達にビーム渦流が迫り、一瞬にしてジュリからマユラやアサギ達を引き離すようにして画面が消えた。

 

まるでその先に起こることを二人に隠すように。

 

リアルな記者達の死に、一同は茫然と立ち尽くすしかく、やがてジュリは泣き崩れた。

 

彼女達の泣く声が周囲の空気に流れ始め、カトリーヌのかける声もさ迷う。

(気持ちは解るのに……かける言葉がわからない……!!ボクも同じ想い……解るはずなのに……!!!)

 

彼女達の姿を見たカトルは、その場を後にしようと振り向いて歩きだした。

 

「カトル?」

 

「トロワ……ラルフさんに連絡を。もう僕達は動き始める時だった……!!!やっぱり考え改めるよ!!!」

 

「感情的に動きすぎるのは薦めれないが……いや、違うな。俺も理屈を外せば同意見だ……反抗プロジェクトの早期をやつに具申しておく」

 

「ゴメン、トロワ。頼んだよ」

 

「あぁ。奴とは長い付き合いだ。心配は無用だ」

 

カトルは再び近代改修を施したガンダムサンドロック改に戻り、機体の前で立ちながら先程のジュリの涙に悲しむ妹・カトリーヌを思い出す。

 

そして新たな力を纏いし愛機に語りかけた。

 

「……サンドロック。もう一度始めようか……オペレーション・メテオ!!リ・オペレーション・メテオを!!!」

 

 

 

 

L1・廃棄コロニー郡宙域

 

 

 

廃棄コロニー郡の中に生まれては消え、また生まれては消える閃光群。

 

その閃光を造りし存在が同じく閃光のごとく自身の翼をはためかせて駆ける。

 

OZプライズのロッシェが駆るトールギス・フリューゲルであった。

 

高速でギラドーガやギラズールのビーム射撃を掻い潜り、ビームサーベルの斬撃と突きを打ち出して立て続けに6機を撃破。

 

更にそこから多角軌道を描くようにして1機、1機を薙ぎ斬り、幾つもの爆発光から飛び出したトールギス・フリューゲルは、ビームマシンガンの一斉射撃に飛び込んでレフトアームのバスターシューターを並列軌道射撃で撃ち込んだ。

 

小中規模のビーム渦流が8機のギラドーガと3機のギラズールを連続破砕させたトールギス・フリューゲルは、突然に飛び込むビーム渦流砲撃をかわし、それを放った4機の重装型ギラドーガに向かい駆ける。

 

一瞬にしてトールギス・フリューゲルのビームサーベルの突きが1機の重装型ギラドーガの胸部を穿つ。

 

次の瞬間には、ビームシューターが3機に撃ち込まれ、ガザD数機を巻き込んで撃破した。

 

残存勢力のギラドーガ、ギラズール、ズサ、ガザDが一斉射撃するも、全てがかわされた後にビームシューターの洗礼を受け、破砕に破砕を重ねて朽ち果てた。

次の瞬間に、トールギス・フリューゲルは上よりビームトマホークを振りかざして襲い来るギラズールに、ビームサーベルを突き刺す。

 

「そのような斬撃……通用せん!!!」

 

ロッシェのその言葉に止めを受けたかのごとくにギラズールは爆砕した。

 

「前哨戦としてはこんなものか……そこそこのハンティングの慣らしにはなったな……」

 

ロッシェはサイドコントロールパネルを操作し、サブモニターである座標データとOZプライズの作戦プランを表示に引き出した。

そこにはジンネマン達の生活の場であるパラオが写し出されていた。

 

「資源衛星パラオ。ここにはネオジオンの残存勢力、そしてガンダムを隠しているとの情報がある。噂の域を出ない為定かではないが……それ故に今、パラオへ向けプライズの部隊が動いている。ガンダムが実際にいるならば……このロッシェ・ナトゥーノも手合わせ願いたいな……念には念だ。参らせて頂こう……!!!」

 

ロッシェがコントロールグリップを握り締め、パラオへ出向く意を引き締めているとき、ロッシェが言ったOZプライズの部隊もまたパラオを目指してバルジから発進する。

 

高速輸送艦2隻の中に、リゼル・トーラス、プライズ・リーオー、そして2機のカスタムリーオーで編成された部隊が息を潜ませるように格納されていた。

 

そのカスタムリーオーのMSデッキで二人の男が機体を見上げていた首をパラオ方面に向けた。

 

「まだ距離はあるが、新たな狩りに出撃だなクラーツ」

 

「えぇ……ラー・カイラム級が沈んだだの騒がしいですが、我々は我々で存分にいきましょう、ブルム……景気よきネオジオン狩りに……!!!」

 

 

 

 

To Be Next Episode

 

 

 

 次回予告

 

 

 地球圏は絶えず反抗勢力とOZ、OZプライズとの対立によって一層の戦火を拡大させていく。

 

 その情勢の中、オーブ首長国連邦はOZプライズの特殊部隊に侵攻され、メテオ・ブレイクス・ヘルを騙る新たな3機のガンダムの襲撃に晒される。

 

 一方、ヒイロとアディンはジンネマン達と共に一時的な休息の為、資源衛星パラオを訪れていた。

 

 そこでヒイロを待っていたのは戦場とはかけ離れた日常とマリーダとの安らぎの時間だった。

 

 

 

 次回、新機動闘争記 ガンダムW LIBERTY 

 

エピソード30 「マリーダとの再会」

 

 

 


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