新機動闘争記ガンダムW LIBERTY   作:さじたりうす

25 / 52

長らくお待たせ致しました。

質問にて、よく細部のご質問(ドーベンウルフ生産機数やゼクアインMSの所属等)
を頂きますが、この場を借りてお答えします。

あくまでも本二次小説は原作のパラレルワールドな世界観なので、相違点は多々あります。気にせずその点のご理解を頂ければ幸いです。


それでは本編をどうぞ……!




エピソード25「加速する運命」

北欧・サンクキングダム

 

 

 

OZの統制下に入り、連邦の支配が無くなった北欧の小国サンクキングダム。

 

だが、連邦の支配下における悪影響により国の機能は破綻しており、当面のOZのバックアップが必要であった。

 

国内にはリーオーやエアリーズが耐えず防衛体制敷きながら展開していた。

 

その光景をピースクラフト家の屋敷から見ていたリリーナは、ため息混じりに心中を吐露する。

 

「はぁ……周囲の脅威から守ってくださる抑止力とはいえ、この国に兵器が有り続ける事は好ましくない。正直遺憾でもあります。これまで散々連邦の支配下におかれ、ずっと完全平和主義がねじ伏せられてきた……」

 

するとライトが、空を翔るリゼル・トーラスとエアリーズを目で追った後に現時点の状況を踏まえた意見を投げ掛けた。

 

「けど、現時点この国はOZの協力がなければ建て直しは極めて難しい。すぐに兵器を無くすのは難しいさ、リリーナ」

 

「ライト……」

 

奇しくもその時ライトが見ていた空の光景に、ミスズのリゼル・トーラスも混じった。

 

彼女もまたサンクキングダムの領空警戒の任務にあたりながらミリアルドことゼクスを想っていた。

 

「ゼクス……ようやく奪還したこの国と、リリーナ嬢……お前が宇宙にいる間は私が守る……だから存分にガンダムと闘って来い!!」

 

ジェネレーター音を響かせて加速するリゼル・トーラスから視線をリリーナに移しながらライトは話し続けた。

 

「一歩国の外を出れば連邦やジオンの残党がゴロゴロいる。あぁやってやってくれているからには感謝する必要すらある。だからと言って兵器を肯定しない。完全平和主義にはキツイだろうけど今は堪え忍ぼう。リリーナ」

 

「堪え忍ぶ……確かに今は……勿論、解っています。ありがとう、ライト。兄が兵器に手を染めた事実も堪えます」

 

「ミリアルドさんは自ら敢えて兵器を手に取り、ここまで闘って来てくれたんだ。俺は尊敬する」

 

「お兄様を……?」

 

「あぁ。きっとリリーナ以上に苦しい時間を闘って来たんだと思う。主義を曲げてまでサンクキングダムの為に闘ってるんだよ?並大抵じゃない。今だって再び宇宙へ……」

 

リリーナはライトのその言葉に再び空を見上げ呟く。

 

「お兄様……」

 

完全平和主義を背負いながらも兵器に手を付けて闘う事の矛盾に複雑さを感じざるをえないが、その行動に感謝の気持ちに気付き、リリーナは瞳を閉じて兄・ミリアルドへの想いを宇宙に上げた。

 

たが、ゼクスは彼女達の想いと裏腹に、騎士道と任務の葛藤に囚われ続けていた。

 

「ガンダムの鹵獲……ガンダムとの決闘……私が望むのは……!!!」

 

ヒイロの機体と思わしきガンダムの進行情報を元に、ゼクス率いるバルジMS中隊は完全なる迎撃及び鹵獲態勢に入っていた。

 

その真っ只中での葛藤であった。

 

兵士としてか騎士としてか。

 

確信に迫るに至れないが、第六感は確信に感じずにはいられない。

 

屈辱的なまでに決闘に水をさされた勝負。

 

その続きが向こうから迫っているのだ。

 

「ゼクス特佐!!進行中のガンダムが、更にバルジに接近中との事ですが、L4を目指していた我が軍との接触情報も入っております!!こちらから援護に動く策もございますが、いかがされますか!!?」

 

部下からの通達に、ゼクスは昂る精神を抑えながら指示通達する。

 

「我々はあくまでガンダム迎撃に向け、このまま待機を継続する!!こちらから動かず、確実に仕留める!!それに既に奴らのガンダムと接触している時点でもう遅い……!!察せ!!!」

 

「は、はっ!!」

 

(私は今向かい来るガンダムがヒイロ・ユイであることを信じたくて止まない……!!!否……奴である!!!)

 

凄まじい加速と共にビーム攻撃を、ゴリ押しで装甲に受けながらウィングガンダムリベイクが突っ込んでいく。

 

そのコックピット内のヒイロは、鋭く真っ直ぐな視線をモニターに突きつけ、システムを戦闘モードに移行させた。

 

そして上部レバーをスライド操作して自機を可変させる。

リーオー部隊が放つビームライフルやドーバーバスター、ビームバズーカをかわし、時折被弾を受けながら、振り上げたプロトバスターライフルを真っ直ぐと構えるウィングガンダムリベイク。

 

銃口には既にエネルギー充填が開始されている。

 

ヒイロの瞳に映るロック・オンマーカーが赤に変わった瞬間、構えたプロトバスターライフルのビーム渦流が暴れ唸った。

 

 

 

ヴァズヴァアァアアアアァアアアアアッッ!!!

 

ドォズゥガァガァガァガァガァゴォバァァアアアアアアアアアアァァァ……!!!

 

 

 

一撃のビーム渦流が一挙に15機のリーオー部隊を爆発光に変えさせる。

 

ウィングガンダムリベイクは、間を置くことなく右側にプロトバスターライフルを放つ。

 

 

 

ヴァズゥダァアアアアアアアアアァァッ!!!

 

ドォゴバァッ、ドッゴォガゴォッ、ドドドドォァッグゴゴゴゴバァバァアアアアアァァ!!!

 

 

 

破裂する1機のリーオーを皮切りに、他のリーオーやリーオーキャノンが次々に破砕爆発する。

 

更にウィングガンダムリベイクは、1機のリーオーとすれ違う瞬間にシールドを刺突させ、これを撃破してみせた。

 

ウィングガンダムリベイクの攻撃に伴い、OZ側もまた攻勢に転じる。

 

「火力集中!!!ドーバーバスター放てぇ!!!」

 

リーオー部隊はドーバーバスターを集中的に放ち、ウィングガンダムリベイクに狙い定めた砲火を浴びせる。

 

ウィング部や肩、脚部に被弾するが、直ぐにウィングガンダムリベイクは体勢を立て直し、次に来た砲撃をシールドでガードする。

 

そしてプロトバスターライフルを三発の中出力で撃ち浴びせ、3機編成であるリーオー小隊を六小隊分壊滅させた。

 

機体を翻しながら加速離脱したウィングガンダムリベイクは、構えたプロトバスターライフルを接近するMS輸送船に向けて放つ。

 

唸り進むビーム渦流がMS輸送船の船体を吹き飛ばし、周囲で展開するリーオー4機を吹き飛ばした。

 

リーオー部隊は派手に暴れるウィングガンダムリベイクを追撃する。

 

各機が対ガンダム用のビーム出力を有したドーバーバスターを放つ。

 

ウィングガンダムリベイクは鮮やかな機動力でかわしていき、クラップ級の陰に飛び込んだ。

 

包囲型戦闘図式がウィングガンダムリベイクを囲むが、必然的に砲火が停止され、一時的に砲火が止む。

 

だが、次の瞬間に再びウィングガンダムリベイクはクラップ級の陰から飛び出し、その時点でプロトバスターライフルのチャージが開始されていた。

 

「この状況の周囲の敵機を破壊するは……この撃ち方が最良だ」

 

ヒイロはモニターに映し出された敵機群を流しながら視認し続け、それと共にウィングガンダムリベイクも銃身を構えながら自転旋回をする。

 

そして、その流れに乗ったままプロトバスターライフルの銃口から大出力のビーム渦流が吐き出された。

 

 

 

ヴァズゥダァアアアアアァアアアアアアアアッッ!!!

 

ドドドドドドドドガゴォッバァン、ゴゴゴゴバァバァガガガゴォオオオオンッッ!!!

 

 

 

砲撃を放っていたリーオー部隊は次々と木端微塵に爆砕し続ける。

 

更に自転旋回するウィングガンダムリベイクは、ジャイアントスイングの要領で唸るプロトバスターライフルの銃身を振り回し始めた。

 

 

ヴァガァアアアアァァァアアアアアァァアアアアアァァァァアアアアアアアアァァ!!!

 

 

ドドドドドドドドォァッ、ゴゴゴゴバァ、ゴゴゴゴバァッガゴォッガガガガァアアアアアッッドドドドォァッゴゴゴゴバァッ……!!!

 

 

 

幾多のMSが爆砕され、爆発光を幾多も発生させ、壊滅へ追いやっていく。

 

そしてウィングガンダムリベイクは、プロトバスターライフルのエネルギーが終息する前に真下のクラップ級に銃身を向けて破砕させた。

 

 

 

ドドドドォァッゴゴゴゴバァガァアアアアッッ!!!

 

 

 

アラブ・カタール国境付近上空

 

 

 

中東の空で巻きおこる戦闘。

 

L4コロニー群でメテオ・ブレイクス・ヘル掃討作戦が展開する一方で、Ξガンダムとペーネロペーが、巨大な鋼の機体を弾き合わせるように幾度も激突し、互いの命を削り合うかのようにメガビームサーベルをぶつけあっていた。

 

その激突と同時に周囲の空間を引き裂くかのようなスパークがはしる。

 

幾度も重なる斬擊の激突の直後、互いの力が拮抗し合った。

 

Ξガンダムの斬擊にはキルヴァの狂気が、ペーネロペーの斬擊にはロニの憎悪が賭され、双方の感情が爆発する。

 

 

「お前はっ!!!お前だけは許せない!!!私の全てを汚し、失わせ、弄び………狂わせた!!!」

 

「キヒヒャ!!!俺は何もしてねー!!!」

 

「どの口が言うっ!!!散々弄びながら!!!」

 

「お前もその気全快だったんだぜぇ……理不尽だなぁ、おい!!!」

 

メガビームサーベルを弾き捌き、唐竹の斬擊に繋ぐΞガンダム。

 

ペーネロペーは即メガビームサーベルで受け止め、ビームバスターを突き付ける。

 

だが、Ξガンダムは蹴りをペーネロペーに食らわせ、離脱。

 

ぶっ飛ぶペーネロペーに後退しながらビームバスターの連発を食らわす。

 

「くぁぁあああうっ!!」

 

連発を受け、少しずつ装甲表面が爆発と共に破損するペーネロペー。

 

「おのれっ……!!!」

 

ロニの憎悪が宿りに宿ったファンネルミサイルが高速で放たれ、一気にΞガンダムへと集中。

 

無数の杭のごとき連擊がΞガンダムを襲った。

 

 

 

バグズズゥゴォオアアアアッ!!!

 

 

 

「残念っ……!!!俺様のΞガンダムは更なる特注装甲にしてもらったんだよ!!!」

 

爆発から飛び出したΞガンダムは多大なダメージを受けたにもかかわらず、軽微損傷であった。

 

突っ込みながらΞガンダムはシールドをペーネロペーへと刺突。

 

 

 

ガギャガァオオオン!!!

 

 

 

ペーネロペーの右肩アーマーが損傷し、へこみが生じる。

 

「きひひぃ……!!!俺はベントナのおっさんに、ヒロインをクレって言っただけだぁ!!!」

 

「何がヒロインだ!!!」

 

瞬発的な怒りの感情でビームバスターを至近距離から連発させるロニ。

 

直撃を重ねながら爆発の反動でΞガンダムは後退していく。

 

「貴様がっ!!!貴様が仕向けなければ、同胞を裏切らずに済んだ!!!カトルも裏切らずに済んだ!!!」

 

怒りの感情を持続させながらペーネロペーのメガビームサーベルを二刀流にして斬り込む。

 

「あのコは純粋だ!!!貴様のせいでっ!!!相当の絶望をっ……!!!」

 

非情なまでにカトルを突き放した記憶と今の本来のロニの感情が混ざり、悔しさも加味した憎しみが増幅する。

 

メガビームサーベル同士の激しいスパークを走らせながら、ペーネロペーはパワーの限りΞガンダムを圧倒しようとする。

 

押されながら不利になったと思われた矢先にキルヴァはニタリと嗤う。

 

ペーネロペーに直に圧倒されていても尚余裕の姿勢を見せていた。

 

「あのガンダム共の一人かぁ?!!愉快だな!!!いずれにせよ……お前はまたヒロインになってもらうさ!!!」

 

ビームバスターを至近距離で放ちながら、ペーネロペーをビームの爆発で押し退け、更に今度は本格的な蹴りをコックピット周りめがけて見舞う。

 

 

 

ガズゥガァアアアアアッ!!!

 

 

「あぐぅあっ……!!!」

 

凄まじい鋼の激突の振動がコックピットを襲った。

 

ロニは全身を叩きつけられるかの衝撃に揺さぶられる。

 

それでもロニはモニターのΞガンダムを睨み付け、反撃の一手に踏み切る。

 

「おのれっ……貴様のような外道などっ……!!!」

 

ロニは特殊なコントロールレバーを引き出し、怒り任せに手前に引いた。

 

するとペーネロペーを纏っていた禍々しいシルエットのアーマーが単体でΞガンダムめがけ射出。

 

一気に加速し、Ξガンダムを目指す。

 

キルヴァは敢えてかわす事無く、この攻撃を受け止めた。

 

「キヒヒャ!!!こんなのが通用するかよ!!!笑わせてくれるぜっ!!!」

 

「ふんっ……これでもか?!!」

 

ロニは不敵に笑いながら特殊レバーのトリガーを握った。

 

 

 

キュウィイイイッ―――ヴァズグバガァアアアアア!!!

 

 

 

ペーネロペーユニットが自爆し、Ξガンダムを諸共爆発の渦に巻き込んだ。

 

オデュッセウスガンダムのコックピットの中で、ロニは憎しみの対象の最期に大きくため息をつき、かすかに震えながら安堵した。

 

「……ふぅぅ………カトル……っ!!!」

 

だが、それはつかの間だった。

 

ロニの感覚がそれを察し、ロニの表情をくわっとひきつらせた。

 

「ヒャッハー!!!」

 

 

 

ザガギャァアアアアア!!!

 

 

 

「あぁぁあああぐっっ……!!!」

 

猛烈な勢いで爆発の中からほぼ無傷のΞガンダムが、メガビームサーベルを突き出してオデュッセウスガンダムに突っ込んだ。

 

それは一瞬でオデュッセウスガンダムの頭部ユニットを貫いていた。

 

更にメガビームサーベルで貫いたままの頭部ユニットをちぎり飛ばし、あたり構わず再度至近距離からビームバスターを乱発させてみせた。

 

「効くわけねーだろ!!!お前は俺から逃れることができねー!!!」

 

 

 

ドゥバウッ、ドゥバウッ、ドゥバウッ、ドゥバウゥァアアアアア!!!

 

ヴァズグゥァアアアアアアアアア!!!

 

 

 

「きゃああああああああ!!!」

 

至近距離からの高出力エネルギーの乱発はオデュッセウスガンダムを大きく破壊し、その爆発の影響をコックピットに響かせた。

 

コックピット内に入り込んだ爆発に揺さぶられ、ロニは意識を失った。

 

Ξガンダムは落下する半壊状態のオデュッセウスガンダムを掴み上げ、空域を飛び去る。

 

「キヒヒャッ……もっと相応しいガンダムが密かにあるんだとよ……もっともっと俺様の女でいてもらうぜ!!!」

 

スパークが時折はしる破損したコックピットの中で、ロニは鳥籠に捕らわれた鳥のように写る。

 

再び汚れと狂気の手中に収まってしまったロニが僅かに取り戻した意識の中で呟いた。

 

「か……カトル……っ」

 

呟いた言葉はカトルの名だった。

 

そのカトルは過酷な戦場駆け抜けていた。

 

リゼル・トーラスに出くわす毎にヒートショーテルの斬擊を見舞う。

 

 

 

ディッキャイン、ディッキャインッ!!! ザギャガァアァアアアアア!!!

 

 

 

「この闘い……勝算は今まで以上に、極度に薄い!!!でもっ、アディンのガンダムの新たな装備なら打開できるかもしれない!!!せめて姉様達やカトリーヌだけでもここから……!!!」

 

この状況からイリアやカトリーヌ達の脱出いかに繋げるかを闘いながら模索するカトルにリゼル・トーラス部隊の精密射撃が襲う。

 

 

 

ギュズダッ、ギュズダッ、ギュズダァアアアアアッ!!!

 

ドォズドォゴァアアアアアア!!!

 

 

 

「うぁぁあああ?!!っく!!!」

 

メガビームランチャーの集中攻撃にぶっ飛ぶガンダムサンドロック。

 

ガンダニュウム合金故に破損状況は装甲表面の小中規模融解に止まっていた。

 

ガンダリウム製であれば限りなく破壊されるダメージだ。

 

カトルは機体を素早くブースター制御操作し、ガンダムサンドロックをリゼル・トーラスに突っ込ませた。

 

そして2機のリゼル・トーラスに目掛け、ヒートショーテルを振りかぶる。

 

十八番のクロススラッシュの斬擊の構えだ。

 

「はぁああああああああ!!!」

 

 

 

ディッギャィイイイイインッッ!!!

 

ヴァズゥグアァァアアアアア!!!

 

 

 

強力な斬擊に、2機のリゼル・トーラスは爆砕しながら砕け散る。

 

だが、撃破直後に新たなビーム射撃がガンダムサンドロックに集中する。

 

「うぁあああっ!!!」

 

その爆発を背景に奮戦するガンダムヘビーアームズもまた、リゼル・トーラス部隊が撃ち込むビームキャノンやメガビームランチャーの射撃を胸部や肩に被弾し、装甲面を焦げ付かせる。

 

「っ……!!!この命中精度……並大抵な精度ではない!!もしや人外……機械によるものか!?!」

 

トロワは回避率が極めて高い相手に通常の戦闘時以上に神経集中させてトリガーを握る。

 

ガンダムヘビーアームズは面前のリゼル・トーラス部隊にビームガトリングを撃ち放つ。

 

 

 

ドォヴォルルルゥゥッ!!! ヴォバダルルルルルル!!!

 

ドゥヴォルルルルルルルルルルゥゥッ!!!

ドドドドゴォバァッ、ガギャラララガァアアアアン!!!

 

ヴォドガラララゴゴガァアアアアア!!!

 

 

 

連続でリゼル・トーラスを撃破させていくガンダムヘビーアームズ。

 

だが、次に選定した敵機群にビームガトリングを放った瞬間、リゼル・トーラス部隊は「Δ」軌道を描いてかわし、反撃の射撃をガンダムヘビーアームズに集中させた。

 

「ちっ……!!!」

 

咄嗟にシールド防御の判断をしたトロワは、ガンダムヘビーアームズを集中砲火の中へ追い込んでしまう。

 

更には四方八方からの斬擊を食らわせてくる機体までもがいた。

 

トロワは次の斬擊軌道を先読みし、機体を構えた。

 

注視するリゼル・トーラスは、案の定の軌道で帰って来る。

 

リゼル・トーラスの斬擊がガンダムヘビーアームズに突っんだ刹那、ガンダムヘビーアームズはライトアームのアーミーナイフを展開した。

 

 

 

ディギャバガラァァアアアアッッ!!!

 

 

 

すれ違い時の惰性、加速が加わった強力な実体斬擊がリゼル・トーラスを破砕させた。

 

更に重なりながら迫るリゼル・トーラス3機の斬擊も連続カウンターの斬擊で破砕へ導いた。

 

しかし再びビームが集中し、ガンダムヘビーアームズは防戦を強いられる。

 

 

一方のデュオのガンダムデスサイズもまた翻弄させられていた。

 

「ちっきしょーがっ!!!」

 

四方八方からの高出力ビーム射撃が、ガンダムデスサイズの装甲を穿ち続ける。

 

回避しては中り、回避しては中る。

 

その最中を駆け抜け、ガンダムデスサイズは中りついた1機のリゼル・トーラスに十字の二連斬を見舞う。

 

「だぁりゃああああああ!!!」

 

 

 

ディズガッ、ザガギャァアアアアンッ!!!

 

ゴバガァアアアアアアアン!!!

 

 

 

デュオの怒りと気迫が入った斬擊は、リゼル・トーラスを一瞬で斬り刻み、更なる斬擊に繋がる。

 

 

 

ザギャガァアッ、ディッガギャアアッ、ザバガァアアアアアッ!!!

 

 

 

怒濤の勢いを加え始めた斬擊は、連続でリゼル・トーラス3機を順巡りに斬り払い、4機目でビームサイズの切っ先を叩き込んで頭部と胸部ユニットを中心に爆砕させてみせた。

 

ザズシュゥウウウッ………ヴァズグゥァアアアアア!!!

 

 

 

爆発の中から目を光らせた死神は、更にマリオネットたるリゼル・トーラス達を地獄へ誘わんと飛び出す。

 

 

「さぁ、さぁ!!!斬り刻んで斬り刻み込んでやんぜぇっ―――」

 

 

 

ゴバガァアアアアアアッ、ドズゥグゥアアァアアア!!!

 

 

「がぁぁあああ?!!くそっっ!!!」

 

ガンダムデスサイズを撃ち中てるメガビームランチャーの高出力ビーム。

 

次の瞬間には、両サイドからリゼル・トーラスのビームサーベルの斬擊が襲い掛かる。

 

「そーくるかよっっ……!!!」

 

デュオは即座の判断で、ビームサイズとバスターシールドで受け止めた。

 

凄まじい激突の反動と共にスパークが眩くはしる。

 

デュオは歯軋りしながらガンダムデスサイズと共に拮抗する力に耐える。

 

「ぐっくっ……!!!っておいおい……こいつらリゼルのパワーじゃねーよ……っっ!!!」

 

疑似GNDドライヴが掻き出す出力は、白兵戦においてもオリジナルにも引けをとらないパワーだった。

 

怒り任せながらも、デュオはガンダムデスサイズのヘッドバルカンで牽制射撃を撃ち込み、拮抗を崩す。

 

その一瞬で双方のリゼルのアームユニットを弾き上げ、ビームサイズの斬り払いとバスターシールドの刺突を食らわせ擊破してみせた。

 

そして再びビームサイズを振りかぶり、敵陣へ飛び込んでいく。

 

ガンダムジェミナス・バーニアン02がガンダムデスサイズとすれ違うように駆け抜け、執拗なリゼル・トーラス達の追撃に機体を反転させる。

 

「しつこい……女性に嫌われるタイプだな!!!」

 

敢えて冗談を加味しながら二挺持ちのアクセラレートライフルを乱れ撃つ。

 

 

 

ヴィギュダッ、ヴィギュダッ、ヴィギュダッ、ヴィギュダッッ、ヴィギュダァアアアアアッ!!!

 

ズゥディギャッ、ディギュズヴァッ、ディギガァアアンッ―――ヴァズゥグゴバガァアアアアアアァッ!!!

 

 

迫り来るリゼル・トーラスの部隊の内の3機が撃ち仕留められ爆砕。

 

他の機体群は散会・回避し、メガビームランチャーやビームキャノンを撃つ。

 

ガンダムジェミナス・バーニアン02は回避行動に動くが、高出力ビームはギリギリを掠めていく。

 

その最中を2機のリゼル・トーラスが串刺しにするように、左右からビームサーベルでガンダムジェミナス・バーニアン02へ襲い掛かる。

 

「近づき過ぎだっ……!!!」

 

串刺しにする勢いで突っ込む左右のリゼル・トーラスに、二挺のアクセラレートライフルの銃口を突き付け、近距離から高出力ビームを撃ち込ませた。

 

 

 

ズゥヴァダダァァアアアアアッ!!!

 

ヴァズゥゴバァァアアアアアッ!!!

 

 

 

瞬く間に撃破してみせるが、メガビームランチャー群がが間を与えずに襲う。

 

これを左右のシールドで防御したガンダムジェミナス・バーニアン02は、再度アクセラレートライフルを乱れ撃ち、2機を破砕。

 

更に二挺のアクセラレートライフルの銃口を突き出し、チャージショットを撃ち放った。

 

 

 

ヴィギュルゥヴァァアアアアア!!!

 

ズゥシャガァアアァ…………ズズズヴァガラガァアアアアア!!!

 

 

 

叩き放たれたビーム渦流に4機のリゼル・トーラスがかき消されるように破砕され、多重爆発を巻き起こす。

 

だが、メガビームランチャー群の高出力ビームの雨は耐えず襲い掛かる。

 

「くぅっ……!!!」

 

オデルはビーム群を睨みながら機体の回避コントロールをしてみせるが、それでもMDシステムの精密射撃は被弾を許してしまう。

 

リゼル・トーラスのMDシステムによる精密射撃の命中精度は確実にガンダム達を疲弊させていた。

 

現時点での耐久性はなんとか維持できていた。

 

だが、このペースで被弾が重なれば、やがてガンダニュウム合金もとい、GND合金と言えど破壊数値に達して破砕する事になりかねない。

 

ラボコロニーの戦闘領域にいるGマイスター達の誰もがその危惧と隣り合わせで闘っていた。

 

だが、1機だけは別であった。

 

その機体が駆け抜ける方向を見ながらオデルは期待の意識を飛ばした。

 

「この戦況……打開するには、アディン!!お前が頼りだ!!!」

 

絶望的な戦力差は必至であったが、今アディンが駆るガンダム、ガンダムLOブラスターはこれを打開しうる戦闘力を得ていた。

 

「新たなユニットシステム、ライナー・オフェンス・ユニット……!!!機動性といい、加速力といい次元が違う!!!」

 

ガンダムLOブラスターの新たなコントロールフィーリングを感じながら、アディンはリゼル・トーラスやリーオーの高出力ビームを回避しながら駆け抜けていく。

 

装備されたライナー・オフェンス(以降LO)・ユニットがハイスピードレンジの驚異的高出力加速を実現させていた。

 

飛び交う高出力ビーム群はこれに追い付けない。

 

容易く攻撃を回避しながら、メガビームランチャーやビームバズーカ、ドーバーバスターの射撃で向かい来るリゼル・トーラスやリーオーにアクセラレートレールガンを撃つ。

 

 

 

ヴィギュギィイイイィッッ、ヴィギュギィイイィッ、ヴィギュギィイイイィッッ!!!

 

ドォバラァッ、ズギャラガァッ、ゴォバラァガァアアアアアアアッ!!!

 

 

 

ビームマシンガンを遥かに上回る超高速のビーム弾がリゼル・トーラス3機を一瞬に砕き散らす。

 

レールガン特性のGNDエネルギー弾は、ビーム出力は勿論のこと、超高速のビーム射出により強力な破壊力を実現させていた。

 

例えるなら針のバスターライフル。

 

一度ロックされたターゲットは、次の瞬間に破壊されるのだ。

 

突き進んでいくアディンは、次から次へと表示される敵機にアクセラレートレールガンを連続で乱れ撃つ。

 

「邪魔だっっ!!!砕き散らしまくるぜ!!!」

 

 

 

ヴィヴィギュギィッ、ヴィギュギィッ、ヴィギュギィッ、ヴィヴィギュギィイッ、ヴィギュギィ、ヴィギュギィイイイッッ!!!

 

 

 

「撃ちキメ続けるっ!!!」

 

 

 

ヴィヴィギュギィイイイッ、ヴィヴィギュギィイイイッッ、ヴィヴィヴィギュギィイイイッッ!!!

 

ドドォガンッ、ドバガラァッ、ディギガァッ、ヴォゴガッ、ドドドドゴババオッッ、ズギャラァッギャズガガガガァァアアアアアン……!!!

 

 

 

アクセラレートレールガンの射撃に、幾多のリゼル・トーラスとリーオーの機体群が瞬く間に破砕四散。

 

ガンダムLOブラスターが駆け抜けた左右と後方に爆発光が連なる。

 

高速進撃を維持し続けながら、アディンはガンダムLOブラスターの両肩のシールド型のユニットを作動させる操作をした。

 

「うぜーリゼルを一掃する!!!」

 

サイドサブモニターの立体タッチパネルを立ち上げるアディン。

 

それはガンダムLOブラスターの両肩サイドのユニットシステムの操作に関するディスプレイだ。

 

アディンは予め頭に入れておいたコードを打ち込む。

 

「スラスト・ビームブラスター、スタンバイ!!!」

 

LOブースターの速度を維持したまま、ガンダムLOブラスター機体左右のスラスト・ビームブラスターがユニット先端を持ち上げながら展開を開始する。

 

同時にコックピット内のモニター正面に専用の立体ターゲットスコープが立ち上がる。

 

機体左右のスラスト・ビームブラスターの外部シールドユニットが拡がり、嘴とも爪とも言えるような砲身ユニットが姿を見せた。

 

モニター上の進撃方向に映し出される幾多のリゼル・トーラスの機影に、映る機影分のロック・オンマーカーが囲む。

 

射撃軸線上はレール状のモニター表示が映る。

 

銃口ユニットの空間内に決め細かな稲妻状のGNDエネルギーがチャージされ、銃口ユニットの先端には球体状のエネルギーも発生した。

 

「いくぜ!!!スラスト・ビームブラスター、ファイア!!!」

 

アディンが専用のトリガーを引くと充填されたエネルギーが解放した。

 

 

 

ジュギィォォ……ヴァズゥダァァアアアアアアアアアアアアアアアアァァァ!!!

 

 

 

青白い光を帯たバスターライフル級のビーム渦流が、二軸線に解き放たれた。

 

唸り突き進むビーム渦流は、軸線上のリゼル・トーラスやリーオーを一気に吹き飛ばして破砕し続ける。

 

 

 

ヴァギュズギャラァァァガァアアアアアッッ―――!!!

 

ゴヴァガァッ、ゴババオッ……ズギャラァッ、ヴァズゥグゥッ……ドドドドゴゴバォァアアアアアッッ!!!

 

 

 

直撃を受ける機体、かわし切れなかった機体、掠めた機体……どの機体も平等に爆発光と化す。

 

アディンは進撃をし続け、スラスト・ビームブラスターの出力調整操作をした上で連発式に放ち始める。

 

それでも威力はバスターライフルの通常出力と変わらない。

 

「連続で仕留め続ける!!!連発可能レンジでいくぜ!!!」

 

 

 

ヴァズゥダァァアアッッ、ヴァズゥヴァアアアッッ、ヴィヴァガァアアアアッッ!!!

 

ヴァズガガァアッッ……ゴヴァガァッ、ヴァズゥガギャラアアア!!! ゴバォガァガァアアアアアンッッ!!!

 

 

 

短間隔で唸るビーム渦流が進撃方向のリゼル・トーラスとリーオーの機体群を連続で破砕し続ける。

 

 

 

ヴィギュギヴァアアアアア!!! ヴィギュギィイイイァアアアアア!!! ヴァズゥグゥァアアアアア!!!

 

 

 

放つスラスト・ビームブラスターの量軸線のビーム渦流は、小隊規模の機体数を破砕させながら爆発光を拡げていく。

 

 

 

ギュズヴァアアアッ……ヴァズゥヴァアアアァ……ヴァズゥゴォアアアアア!!!

 

 

ズギャラァッガァァアアア……ゴヴァッゴォゴォガァアアアッッ……ヴァズゥグゥァアアアアアッッ!!!

 

 

 

進撃中に遭遇したクラップ級艦3隻が、スラスト・ビームブラスターの直撃を受けて轟沈。

 

破砕を重ねながら破砕していく傍らをガンダムLOブラスターが駆け抜ける。

 

「このまま敵陣へ突っ込む!!!俺がっ……キメル!!!」

 

アディンはガンダムLOブラスターを更に敵陣に飛び込ませ、アクセラレートレールガンとスラスト・ビームブラスターを合わせた射撃を重ね合わせながら絶望的と思われた敵機を削り跳ばしていく。

時折受けるビーム攻撃も、対ビーム処理を施したディフェンスシールドに弾かれる。

 

進撃をしながらの猛攻に対し、2機のリゼル・トーラスがビームサーベルを握りしめて真っ向からガンダムLOブラスターへ突っ込む。

 

「斬りつける気か?ならばっ……!!!」

 

アディンはLOブースターユニットを更に加速させ、スラスト・ビームブラスターの銃口を左右から迫る2機のリゼル・トーラスにぶつけた。

 

 

 

ギャズゥガァアッ!!!

 

 

 

左右のリゼル・トーラスに銃口が突き刺さったままガンダムLOブラスターは更なる奥面へ飛び込んでいく。

 

そして、リーオー数機をアクセラレートレールガンで撃破するとアディンは機体を停止させ、シールドユニットを最大限に展開させた。

 

「スラスト・ビームブラスター、バーストシュートモード!!!」

 

スラスト・ビームブラスターはシールドユニットの展開幅の検出からビーム出力を任意に設定できる。

専用のモニターにロック・オンマーカーを展開させ、モニター上のMS、MD、艦隊全てをロック・オンするアディン。

 

エネルギーのボルテージが既に92%まで高められていた。

 

チャージを開始し、GNDエネルギーの圧縮が開始される。

 

2機のリゼル・トーラスが刺さったまま、砲身ユニットにエネルギースパークが発生し、エネルギー充填が高まっていく。

 

表示ボルテージも上昇し続け、125%まではね上がっていた。

 

アディンは闘志をトリガーに籠め、面前に広がる敵陣を睨み付け、見据える。

「この状況をっ……絶望的な今を突破してっ……俺達はっ、生き抗う!!!そして……コロニーに必ず安息の日々を……だから俺が……!!!」

 

アディンの中でコロニー市民やMO-5での出来事、亡きMO-5メンバー、カトルの姉達、そして共に今を戦うGマイスターとガランシェールクルー、プルの姿が過った。

 

より今を切り抜ける闘志が増したアディンは、かっと見開いてトリガーを更に握った。

 

「俺達がっ……キメるぜぇええええ!!!」

 

 

 

ヴィジュジギィイイイィィ……

 

ヴァズゥヴヴァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァアアアアアァァ―――ッッ!!!

 

 

 

突き刺さったリゼル・トーラスが一瞬で融解破砕され、凄まじいまでのビーム渦流が暴れ唸る。

 

直進する戦略兵器レベルのビーム渦流の直撃を受けたMD、MS部隊は瞬く間に爆発光に変わり果て、幾多の光を拡大させた。

 

更には艦隊も呑み込まれ、破砕爆発巻き起こして轟沈する。

 

 

 

ヴァズゥグゥァアアアアアァァァァアアアアアアアアァァァァアアアアアァァ―――!!!

 

ゴババオッ、ダギガァッ、ゴゴゴゴバァッ、ドドドドガゴォッ、ガガゴォバッ、ゴゴゴゴバァ、ゴゴゴゴバァッガゴォッガガガガズズズァアァァ!!!

 

 

 

「まだまだぁぁあああ!!!」

 

アディンは機体を自転旋回させ、横方向へとスラスト・ビームブラスターのビーム渦流を移動させる。

 

更なる破砕に次ぐ破砕が織り成し、破壊範囲を拡大させ、展開していたMD部隊やMS部隊、艦隊は押し寄せるビーム渦流に潰し飛ばされていく。

 

一瞬にして形勢が逆転していくこの状況と光景に、イリア達は歓喜に満たされ笑みを浮かべる。

 

「イリア姉さん!!敵陣営、一気に壊滅していきます!!」

 

「敵陣損耗率30……40……50……すごい……!!!どんどん%が上昇していく!!」

 

「これならいける……!!!これが……ガンダムLOブラスターの力!!!確かにウィングガンダムゼロを引き出さずともいける……!!!」

 

勝利を確信したイリアは士気を上げる為、通信回線を開いて皆の精神を勇気付ける方向に持っていこうと行動する。

 

「みんな!!!今アディンが形勢逆転をしてくれているわ!!!勝利は……みんなで生き残れる確率は一気に上がった!!後はGマイスター達がそれぞれのガンダムを信じて戦い抜いて!!!」

 

このイリアの声はシェルターにも繋がり、避難していたカトリーヌやエナ、セルビア達にも安堵と少しの笑みが拡がる。

 

「聞いた?もう少しの辛抱だよ、カトリーヌ……」

 

「うん……!!そしたらまた兄さん達やトロワといられるんだよね?」

 

「そ!!だから今の内にデートいくコロニーとか考えておきなさい。好きなんでしょ?」

 

「も、もう!エナ姉さんたら!!」

 

「あら?その前に告白じゃない?カトリーヌ?まずは想い伝えなきゃ~」

 

「あ~もう!!セルビア姉さんまで~!!」

 

「恋は大事、大事!この件が終わったらあなた達の為にうちのカフェ再開しなきゃね!エナもオデルさんに伝えたんでしょ?」

 

「ちょっ……セルビア姉さん!!」

 

シェルター内に談笑すら浮かびさえする中、話題に上がったトロワとオデルも想いを理解しながら奮起させつつあった。

 

「……またカトリーヌの小生意気なわがままが待っているのか……別にその為に死線を潜り抜ける訳ではないが……今は死ねないな……」

 

「エナ……答えを伝えるまで待っていてくれ!!!」

 

ラボコロニー周辺に進撃してきている幾多のリゼル・トーラス相手により一層の反撃に出るガンダムヘビーアームズとガンダムジェミナスバーニアン02。

 

ビームガトリングと二挺のアクセラレートライフルが唸り散らされ、次々にリゼル・トーラスを撃破させて見せる。

 

デュオも猛然と斬りかかり、闘志をぶつける。

 

「らぁぁぁあああ!!!斬って、斬って斬り潰す!!!」

 

滅多斬りにリゼル・トーラスを斬り刻んだ後に後方から迫っていたリゼル・トーラスにビームサイズを振り払って突き刺す。

 

「カトル!!!これを切り抜けたらお前の恋沙汰に付き合ってやんぜ……だらぁぁぁあああ!!!だから……もう自暴自棄に……なんなよなっ!!!」

 

「デュオ……ありがとう!!!必ず切り抜けて地球へ……ロニを連れ戻す……!!!覇ぁぁあああ!!!」

 

デュオの励ましも加わり、カトルは一層の闘志をクロススラッシュに籠めてリゼル・トーラスを破砕した。

圧倒対圧倒が状況を覆し始める戦況。

 

ディセットが指揮するガンダム特別攻撃部隊の旗艦内では、あわただしくオペレーターの声が飛び交う。

 

「ガンダム、我が軍の大部隊を圧倒しながら突っ込んで来ます!!!たったの1機です!!!」

 

「既にデータにある高出力ビームの類いの攻撃と酷似しているようですが、データに無い二門式武装による攻撃です!!!」

 

「艦隊の艦艇、MD、MS部隊、次々に破壊されていきます!!!損耗率、78%!!!想定外の損耗です!!!」

 

事態の急変を垣間見たディセットは改めてメテオ・ブレイクス・ヘルのガンダムの脅威を思い知った。

 

「やはりなんらかの隠し球があったか……しかし、余りにも予想と常識が逸脱し過ぎている!!!」

 

ダグザはこの状況に直ぐに対応した判断を下す。

 

「ディセット特佐。コロニー内部にいる我々の部隊の半数をガンダム攻撃に投入させ、タイミングを把握した上で対人攻撃も命じる!!!既に我々の対人部隊によるサーモグラフィー索敵で内部にいる対象を把握済みとの情報とブラスト・ボマー設置完了の報告もある」

 

「そうか……ならば我々も次のフェーズに移行!!ガンダム特別攻撃部隊に攻撃を通達!!MD部隊を後退させ、援護に回せ!!!彼らは今回の為に編成したガンダムと対等に……否、それ以上に戦える部隊だ!!」

 

「ディセット特佐!!まだ1機が合流していません!!!」

 

「……例の傭兵か?構わん……自由行動の特権を与えている奴だ。どこかで相応の行動をしている筈だ」

 

新な聞いていなかった存在が浮上し、ダグザはディセットに問い質す。

 

「傭兵!!?初耳だが!!?」

 

「失敬……中佐に報告し忘れていた……安心してくれ……彼は凄く頼もしいガンダムに乗っている」

 

「……頼もしいガンダム……だと?!!」

 

「あぁ……」

 

そう答えながら戦況モニターを見据えたディセットの表情はどこか誇らしげなものを感じさせていた。

 

するとそれに加えての通達情報がディセットに通達された。

 

「それと……増援派遣で向かっていた部隊が全滅したとバルジからたった今通達が入りました!!!おそらく戦闘区域に確認されていないガンダムに……!!!」

 

「何?!!っ……だが、これからが反撃だ!!!電撃的にモノを言わせてやるさ……!!!」

 

 

 

シェンロンガンダムが孤軍奮闘しながらドーバーバスターやビームバズーカ装備のリーオー部隊、リゼル・トーラス部隊と交戦していた。

 

部隊規模は、ラボコロニー攻撃部隊よりも小さくはあるが、戦闘の連続による機械的な劣化を起こしていたシェンロンガンダムにはかなりの過酷を強いるものだ。

 

「覇ぁああああああっ!!!」

 

 

 

ギャズアッ、ギャガガァ、ザシュガァアアアアア!!!

 

ゴゴゴバゴァアアアアアアアアッ!!!

 

 

 

五飛の気迫を乗せたビームグレイブの斬擊が3機のリーオーをまとめて斬り裂き飛ばす。

 

その場から二連続ブースター加速をかけ、ビームグレイブで滅多斬りなまでの連続斬擊を繰り出し、リーオーというリーオーを斬り刻み潰していく。

 

不意にドーバーバスターの射撃を近距離から受けてしまうが、シールドで攻撃を受け止め、ビームグレイブを突き刺して爆砕させた。

 

「こんなものか、貴様らは!!!怖れるに足りなさすぎる!!!」

 

ドラゴンハングで掴みかかり、掴んだリーオーを別のリーオーにぶち当て、更なる誘爆を巻き起こさせ3機を爆破させた。

 

だが、対ガンダム武装のドーバーバスターの射撃が遂にシェンロンガンダムの肩と胸部に中たり、機体をぶっ飛ばした。

 

「くぅっ……!!!」

 

吹っ飛ぶシェンロンガンダムは体勢を改めて立て直そうと試みるが、その最中にリゼル・トーラスのメガビームランチャーの集中砲火を受ける。

 

バランサーやセンサー類が次々にエラーを起こし、挙げ句には装甲に歪みが生じはじめた。

 

「くっ……ふふっ……ハハハハ!!!ハハハハハハハハ……!!!」

 

遂にはシェンロンガンダムのGマイスターである五飛自身も狂喜的な高笑いを上げはじめた。

 

攻撃を受けながら五飛は笑い続ける。

 

「ハハハハハハハハっ……ハハハハ!!!戦いの中でここまで敵が大きく、汚く見えたのは初めてだ!!!以前にもあったような気がするが……最早気のせいか……!!!」

 

五飛は不敵なまでの表情で、遂にシェンロンガンダムのPXシステムを発動させた。

 

青白く輝きはじめたシェンロンガンダムは、電光石火の如く空間を駆け抜ける。

 

 

 

 

ギャギギギガッッ―――ズゥヴァギィギィギィギィギィガゴォッアアア!!!

 

 

超高速で飛び交うシェンロンガンダムは一瞬にして6機のリーオーと5機のリゼル・トーラスをビームグレイブで破砕させた。

 

更にドラゴンハングで抉り砕き散らし出す。

 

 

 

ダガギャアッ、ガズゥガッ、ガガガゴォァアアッッ、ザギガァアアアッッ、ガァダガギャラガァッッ!!!

 

 

 

MSの常識を逸脱した超高速の斬打撃が飛び交う。

 

更に超高速のビームグレイブ連続回転斬りやドラゴンハングの連打撃が繰り出されていき、優勢だった筈のOZサイドは一気に劣勢に立たされていた。

 

青白く輝く龍の閃光は圧倒的な限りを尽くしていた。

 

「ガガ、ガンダム!!!突如として超性能を発動!!!応戦不可能……がぁぁあああぁぁあああっ!!!」

 

 

 

ザギガッッ―――ヴァガァギガォアアアア!!!

 

ズズズドドドドガゴォッバァァアアアアアン!!!

 

 

 

現状通信をしていたリーオーに、ドラゴンハングの牙が突き刺さり、そのまま超高速で旗艦であった高速輸送艦のブリッジに直撃。

 

ドミノ倒し式に爆発を巻き起こし、一瞬にして宇宙の塵と化した。

 

「那拓!!!俺達は更に強くならなければならない!!!そうだろう!!?」

 

五飛が問いかける最中、機体内のエラー警報がいくつも鳴り響く。

 

無茶な戦闘の連続とそれに重ねたPXシステムの起動により、早期にオーバーロードを起こす寸前にあった。

 

更にスパークと共に小爆発が起こり、

次第に機体自身が損壊し始める。

 

最早シェンロンガンダムは限界を越えて運用されていた。

 

それでも五飛は破壊・殲滅をし続けた。

 

間もなくしてシェンロンガンダムはOZ部隊を殲滅仕切った。

 

シェンロンガンダムは各部を自壊させた状態で宇宙を漂う。

 

最早戦闘力は風前の灯火に過ぎなかった。

 

「宇宙には倒す奴がいすぎるからな……!!!さぁ……壊れたついでに強くなろうじゃないか……」

 

後先を考えずにPXをした五飛はシェンロンガンダムに宛のない強化の促進を語りかける。

 

だがその時、突如として謎の通信が五飛の言葉に答えた。

 

 

 

「ならばその機体は我々が頂き、修復してみようか?」

 

 

 

「何?!!!」

 

五飛が謎の通信に反応した刹那、突如としてシェンロンガンダムの左肩アーマーユニットと胸部ユニットに多連装ビームが撃ち込まれた。

 

 

 

ドゥディッギャイン、ドズゥガァアアン!!!

 

 

 

破壊数値を越えた多連装ビームの威力により、遂に装甲が破砕。

 

更に高出力のビーム渦流がドラゴンハングを吹き飛ばした。

 

 

 

ヴィァズガァアァアアアアアッッ!!!

 

 

 

「がぁぁあああ!!!那拓っっ……!!!」

 

 

 

ズガァウゥウウウンッッ―――!!!

 

 

 

そして更なるビームソードの一撃がシェンロンガンダムの頭部を突きはねた。

 

シェンロンガンダムの頭部が突き刺さったそのビームソードを持つ手はシェンロンガンダムのドラゴンハングの如く、腕が伸びていた。

 

更に開放された胸部はある種の悪魔の表情のようだった。

 

「こちらシャギア・フロスト……目的のガンダムの1機を鹵獲する……ふふふふ……流石に我がスポンサーの息がかかった次世代のガンダムには及ばなんだか……まぁいい……これで本隊の新鋭機も期待できよう……」

 

異形のガンダムを駆るシャギアと名乗る男はラボコロニー方面を見て薄ら笑いを浮かべた。

 

 

 

ラボコロニーからはECHOESのMS部隊が飛び出し、ガンダムに向けて一気に奇襲をかける。

 

GNDエネルギーの砲火はデュオ、トロワ、カトル、オデルのガンダムに多方向から注がれる。

 

その猛擊は確実に彼らの疲弊を強いる。

 

「なんだこいつら!!?いつの間にラボコロニーに侵入しやがったんだよ!!?ちぃっ……くしょ!!!PXだっ!!!」

 

「デュオ!!無闇に使うな!!!奴らの思うツボだ!!!」

 

デュオはトロワの制止を怒り任せの勢いで振り切り、PXを発動させた。

 

鮮やかな青白さを纏った死神が、怒りの限りにECHOESジェガンやECHOESロトを斬り刻み駆け抜ける。

 

「デュオ……ん?!!」

 

その時、青白い光を纏いながらガンダムデスサイズに突っ込む新型のMSの姿をトロワは垣間見た。

 

それはガンダムデスサイズを吹っ飛ばす。

 

だが、次の瞬間にはトロワの所にビーム渦流が駆け抜ける。

 

「バスターライフル?!!くっ!!!」

 

ギリギリで直撃を回避し、トロワはビーム渦流が迫って来た方向に射撃するが、それをかわした青いMSが更なる射撃を叩き込む。

 

「トロワぁっ!!!うっ!!!」

 

カトルはトロワに気をかけた瞬間にセンサーよりも先に迫る敵に反応した。

 

弾速の速いビーム弾を、重ね合わせたヒートショーテルで防御するガンダムサンドロック。

 

赤い新型のMS、メリクリウスがシールドから突き出たビームサーベルをかざし、ガンダムサンドロックに突っ込んだ。

 

ビームとGND熱エネルギーがぶつかる。

 

「新型!!?OZもそのような機体を……?!熱源!!!」

 

戦闘の最中に響いた熱源アラートに反応したオデルは、回避に移る。

 

だが、通常ではあり得ない角度から連続したビーム渦流が放たれ、ガンダムジェミナスバーニアン02に襲いかかった。

 

「ちっ……ぃっ!!!」

 

PXでかわすオデル。

 

だが、次の瞬間に驚異的な速度で新型のガンダムが突っ込み、シールドバスターソードでガンダムジェミナスバーニアン02をぶっ飛ばした。

 

「がぁぁあああ!!!」

 

更に追い討ちをかけるように攻め入ったMSは、アスクレプオス、ヴァイエイト、メリクリウス、そしてガンダムデルタカイであった。

 

OZ選りすぐりの機体達は、各々に取りついたターゲットのガンダムと対峙し、攻撃を与えながら通信回線を開いていた。

 

トラントが積年の屈辱を籠めながらパイソンクローをガンダムデスサイズへ食らわし続ける。

 

「ハハハハ!!!ハハハハ!!!貴様に受けたこれまでの屈辱っ……今こそ万倍にして返す!!!そしてこのアスクレプオスで栄光を掴む!!!」

 

「くぅっ……そがっ!!!いや、こちとら死神なんでな……色んなヤローから恨み買って当然かっ!!!それにっ、PXまで使われちまっちゃ……世も末だぜ!!!」

 

PX同士のパイソンクロークローとビームサイズが激突し合い、超高速の捌き合いが加速する。

 

攻めと攻め、意地と意地の激突。

 

だが、刹那的な隙をトラントが制し、ガンダムデスサイズのレフトショルダーをもぎ飛ばす。

 

更に遠心力をかけたパイソンクローの一撃を胸部に食らわされ、吹っ飛ばされながらパイソンビームランチャーを食らい続ける。

 

破壊数値を超え、装甲を破壊されたガンダムデスサイズは、再び襲ったパイソンクローの一撃でラボコロニーの外壁に激しく押し付けられた。

 

「うぐぅっ……あ!!!」

 

「死ね!!!」

 

そして零距離のパイソンビームランチャーが胸部に撃ち込まれガンダムデスサイズは遂に爆発を上げた。

 

「がぁぁあああ!!!」

 

その一方、次元差が激しい撃ち合いが展開し、ガンダムヘビーアームズをヴァイエイトのビームカノンが追いやるようにビーム渦流を吐き散らす。

 

それも友軍であるECHOESの機体やリーオーを捲き込みながら射撃していた。

 

トロワも狂ったミューラの射撃に対し反撃に移るが、その攻撃は威嚇射撃にしか映らない。

 

「ヒャハハハハハハハハ!!!粛正、粛正!!!俺達がガンダムを粛正してやるぅ!!!おらおら、どうしたぁ?!!」

 

「くっ……バスターライフル級のビーム……!!!距離を置けば置くほど手強いか!!!ならば……!!!」

 

トロワは、距離を詰める為にPXを発動させ、展開したアーミーナイフの一撃をヴァイエイトに与えた。

 

だが再び折り返した瞬間に反撃の一撃でビームガトリングの銃身を失う。

 

それと引き換えるようにトロワはアーミーナイフの一撃を与えんと迫る。

 

「ヒャハハハハ!!!うぜー!!!」

 

ビームカノンの一撃が放たれ、アーミーナイフを展開したライトアームも吹き飛ぶ。

 

ガンダムヘビーアームズがヴァイエイトに突っ込むが、バッティングの要領でビームカノンの銃身の一撃に晒された。

 

そして狙いを改めて定めたビームカノンのビームが放たれる。

 

ガンダムヘビーアームズは装甲純度が高いシールドでビーム渦流を受け止めるが、ビームに押し負けてラボコロニーの宇宙港に突っ込む。

 

直後、宇宙港周りが激しい爆発を巻き起こした。

 

「トロワァァアアアアア!!!っくう!!!」

 

クラッシュシールドの滅多斬りの斬擊をヒートショーテルで受けながら撃破されるトロワを見てしまったカトル。

 

だがその動揺にアレックスは容赦なく攻め入る。

 

「レッドメリクリウス!!!目標を鹵獲、もしくは破壊する!!!おらおらどうした、どうしたぁ?!!ガンダムが廃れるぜ!!!」

 

防戦一方を強いられるカトルは一瞬の隙を見切り、クラッシュシールドを弾き上げた。

 

この期を逃さまいとクロススラッシュの一撃をメリクリウスに与えた。

 

トロワを、デュオを助けたいが為に一心に斬り込む。

 

「はぁああああああああ!!!」

その刹那にアレックスは薄ら笑いをした。

 

ヒートショーテルの一撃が入る瞬間にメリクリウスの特殊ディフェンスユニット、プラネイトディフェンサーが展開。

 

完全にガンダムサンドロックの攻撃を遮断した。

 

「な?!!これは?!!くっ!!!」

 

カトルは動揺を捩じ伏せるようにヒートショーテルの斬擊を連続で叩き込む。

 

だが、スパークをはしらせるばかりに止まり、斬擊は虚しく遮断されていく。

 

「くっ……くくくくくく!!!プラネイトディフェンサー……メリクリウス最大最強の防御装置だ。いくら打ち込んでもムダ……何せ俺達のMSはあんたらのガンダムを超えたMSなんだよっっ!!!」

 

クラッシュシールドの唐竹斬擊がガンダムサンドロックの胸部に打ち込まれ、この一撃を皮切りにして直接の滅多斬りが襲いかかり、その衝撃がカトルを襲った。

 

「うああああああ!!!」

 

メテオ・ブレイクス・ヘルのガンダムを超えたMS3機の猛攻。

 

これまでの屈辱を晴らすように、彼らの存在を否定するかのように圧倒する。

 

オデルもまた飛び交う2基のバスターファンネルに翻弄されながら回避のみを強いられていた。

PXで回避をし続ける事がやっとであった。

 

無論、システムのリミットオーバーでPXが解除されてしえば被弾は免れない。

 

「くっ……このままでは……被弾する!!それにこのガンダムっ……何か違う!!!」

 

二挺のアクセラレートライフルの射撃を予め予知しているかのような動きを見せていた。

 

それはナイトロシステムと禁忌のシステム、ゼロシステムにより、リディの身体、精神が異常に高められている為であった。

 

「ガンダムっ……!!!ガンダムはっ……!!!破壊する!!!」

 

リディの精神はシステムの狂気に囚われており、執拗にガンダムジェミナスバーニアン02に攻撃を放ち続ける。

 

バスターファンネルのビーム渦流が連続で狙い撃ち続け、更にはメガバスターの射撃までもが襲う。

 

回避と攻めの駆け引きがひしめき合う最中、遂にPXがリミットオーバーし、ガンダムジェミナスバーニアン02のバーニアンユニットとベッドユニットにガンダムデルタカイの猛攻が直撃。

 

GND合金が破壊数値に達し、ガンダムジェミナス02の両肩諸ともバーニアンユニットが破砕し、ベッドユニットが爆破した。

 

更に加えてメガバスターの連発がボディーやレッグユニットに撃ち込まれ、ガンダムジェミナス02の機体そのものを破砕する。

 

「うっぐぅあぁああああぁっっ……!!!」

 

コックピット内に反動の爆発が起こり、この瞬間にオデルの血が飛び散って、破損したディスプレイにかかる。

 

オデルは右腕を失い、左半身全体に火傷を負った。

 

ガンダムデルタカイがシステムを介してリディに示すは破壊。

 

只、只の破壊だ。

 

「ガンダムっっ……!!!死ねぇ!!!」

 

バスターファンネルが半壊したガンダムジェミナスバーニアン02を完全に捉え、更にチャージされたメガバスターが捉えていた。

 

数々のアラートが鳴り響く中、超えた激痛中でオデルはMO-5時代、トリシアと過ごした日々と忌まわしい記憶、メテオ・ブレイクス・ヘルとして戦い始めたこれまでの仲間達との日々、エナに告白された時間、そして弟・アディンとの日々を去来させる。

 

薄れゆく意識の中でオデルは手を伸ばした。

 

「アディン……俺はっ……果たせないようだ……みんなの無念をっ!!!」

 

アディンは幾多のリゼル・トーラスをスラスト・ビームブラスターで蹴散らしながら、ラボコロニーへと駆け抜けるように舞い戻る。

 

「兄さんっ……みんな……!!!」

 

形成を変えんと駆け抜けるアディンを嘲笑うようにリゼル・トーラス部隊はメガビーム・ランチャーの砲撃を浴びせかかり、行く手を阻む。

 

「エナ……君に、答を答える……事もっ!!!」

 

手を震わせながらスパークがはしるモニターに手を伸ばすオデルにエナの振り向く仕草が浮かぶ。

 

その指先が垂れ下がった計器に触れた瞬間、目映い閃光が包んだ。

 

三つのビーム渦流が風前の灯火のごときガンダムジェミナス02に撃ち注ぐ。

 

光る爆発が、迫っていたアディンに非情かつ無慈悲な現実を叩きけ、悲痛なる叫びを上げさせた。

 

「に、兄さぁあああああああああんっっ!!!」

 

 

 

 

To Be Next Episode

 





次回予告


熾烈化する戦場の中でオデルの命がリディのガンダムデルタカイによって散った。

悲しみと怒りに駆られたアディンは、リディに至るまでに立ち塞がるMS達に、その感情を撒き散らして駆け抜ける。

だが苛烈な運命は加速を増し、ラボコロニーのウィナー姉妹達にECHOES部隊の牙が向いた。

更なる悲劇的な絶望を叩きつけられた状況下でもガンダム達は抗い、疲弊し、闘っていく。

その戦場はメテオ・ブレイクス・ヘルの終焉の場所なのか?

そして、ヒイロとアディンはそれぞれの運命の敵に到達した。


次回、新機動闘争記 ガンダムW LIBERTY

エピソード 26「JUST WORLD BEAT」


任務、了解……!!!



▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。