新機動闘争記ガンダムW LIBERTY   作:さじたりうす

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不定期でご迷惑をおかけして申し訳ありません。

大変長らくお待たせしました。

エピソード24、始動します。






エピソード24「ラボコロニー強襲」

OZによる政権交代は、地球圏各地において多大な支持を得始めていた。

 

地球連邦政権の在り方の不平不満を募らせ続けてきた大衆の当然なる評価であり、同時に新たな期待のあらわれでもあった。

 

OZは連日のように、これまで歴史に隠蔽されてきた連邦の諸行を開示し、連邦への更なる失望とOZの支持を大衆に抱かせる。

 

無論、OZが暗躍した歴史は全て連邦にすり替えられたに過ぎない。

 

しかし、大衆は宇宙世紀始まって以来の政権交代にOZを疑う事をしなかった。

 

更にその流れはOZを攻撃したメテオ・ブレイクス・ヘルのガンダム達をも敵視する流れを生んだ。

 

「コロニーのガンダムは、悪の連邦を倒してくれたOZを攻撃した。それは大衆の敵になる行為だ」

 

「以前ガンダム、ガンダムって言ってたけど、ガンダムはコロニーを危険に導く存在さ。おかげで連邦からより一層の敵視を貰った」

 

「私は……OZを支持するわ。彼らならきっと宇宙世紀を変えてくれる。ガンダムは……ただテロばかり無作為にして、かえってコロニー市民をより一層肩身を狭くさせたわ……OZの今後に期待ね」

 

「ガンダムはどこに潜伏してるんだか……あいつらが中途半端に連邦を攻撃するから弾圧下に晒されるんだ!!責任とれよ!!!」

 

メディアに響く大衆の声や思想はOZに傾く。

 

それを潰すかのように、メディアの音声が消された。

 

「どいつも真実を知らん奴らばかりだな……民間なら当然か」

 

そう呟きながら音声を消し潰したのは、シェンロンガンダムのコックピットで地球圏のラジオ放送を聴いて小休止していた五飛だった。

 

大衆向けに編集された操作情報を信じ切っている人々の声に愚かささえ感じた五飛は、小休止を止めてグリップトリガーを握りしめた。

 

「真実にこそ悪が潜む……弱き者を虐殺するECHOESがな……では次のポイントだ……いくぞ、那托!!!」

 

 

 

 

L2 X-2658コロニー・ECHOES拠点基地

 

 

 

 

ECHOESの拠点が存在するコロニーにおいてサイレンが鳴り響く。

 

その最中で幾多の連続爆発が巻き起こる。

 

ECHOES拠点基地を破壊する何かがそれを巻き起こしていた。

 

荒れ狂う火炎が兵士達の宿舎に注ぎ込まれ、ECHOES隊員ごと吹き飛ばす。

 

ECHOESジェガン、ECHOESロトが緊急出撃していく中、MS格納庫にも爆発が巻き起こった。

 

巨大なジェット噴射のごとき火炎放射が注ぎ込まれ、周囲のあらゆる物体を吹き飛ばしながら次々にECHOESジェガンとECHOESロト達を爆発炎上させる。

 

その破壊を奮うはシェンロンガンダム。

 

出撃したECHOESジェガンとECHOESロトはビームバズーカとロケットランチャーをそのシェンロンガンダムへ撃ち放つ。

 

シールドで防御に転じ一身に攻撃を受け止める。

 

ECHOESジェガンは、ECHOESロトの援護射撃を得ながらシェンロンガンダムへ接近。

 

レフトアームにビームサーベルを握り、斬りかかった。

 

次の瞬間、シェンロンガンダムの目が光り、一気に攻撃に転じ、ビームグレイブをレフトハンドで振り回しながらECHOESジェガンを薙ぎ払う。

 

 

 

フォッッフォフフォッッ―――ザガギャアアアアア!!!

バズグバァアアアアアン!!!

 

 

 

更に、迫る4機のECHOESジェガンと3機のECHOESロトに加速するシェンロンガンダム。

 

射撃を敢えて食らいながら、ごり押しで攻め込む。

 

擬似GNDビームの着弾部が爆発し、装甲が僅かに凹んでいく。

 

 

ジュズガッ、ザシュガァアアアッ!!!

 

ゴゴバァガァアアアアッ!!!

 

 

 

一、二振りの一瞬のビームグレイブの斬撃が2機のECHOESジェガンを斬り砕き、そこからの大きな一振りで

一気にECHOESジェガンを斬り飛ばした。

 

 

 

ギャギュイッ、ダッガギィィイイイイッ……ドドゴゴバァアアッッ!!!

 

 

 

五飛の正義を乗せた破壊が統べる。

 

「貴様らには相応の鉄槌だ……組織を攻撃するならば、直接攻撃をしていた俺達で十分だったはずだ……!!!」

 

五飛の中でECHOESに対する怒りと共に、ECHOESに虐殺されていった同志達を弔う気持ちも混ざっていた。

 

様々な背景理由から連邦・OZを敵視する者達だった。

 

彼らの大半は、大きな報いが相応しいまでに暗い現実を連邦・OZに叩き付けられていた。

 

ECHOESはそんな彼らの命をいとも簡単に潰した。

 

その無念を正義の怒りに賭して五飛はシェンロンガンダムをECHOESロト達へ突貫させる。

 

キャノン砲やロケットランチャーの直撃をものとせずに、シェンロンガンダムはドラゴンハングを1機のECHOESロトに突き刺した。

 

そして、そのECHOESロトを別の2機のECHOESロトへと舞い上がりながら叩きつけた。

 

目を光らせたシェンロンガンダムは、半壊したECHOESロト3機に火炎放射を浴びせ、破壊とジェネレータ機器の誘爆を誘発させて爆破した。

 

「ここも壊滅させたな……次に向かうぞ、那托」

 

基地設備の壊滅確認をモニターデータで処理した後に、シェンロンガンダムを次のECHOES絡みのポイントへと向かわせた。

 

 

 

コロニーの区間を航行するMS輸送船。

 

ECHOESのMSを乗せた船舶である。

 

船内では既に出撃の準備がされており、ECHOESジェガンとECHOESロトが出撃体制に移行する。

 

「資源衛星・キルケーに到達。潜伏が確認されているネオジオン勢力を掃討する」

 

ECHOESのMS達のカメラアイが一斉に光る。

 

目的は資源衛星に潜伏するネオジオンの残存勢力の抹殺。

 

無情なるマンハンター達が潜伏するネオジオンの民に牙を向ける。

 

ネオジオンと言っても、ネオジオン兵士の家族や繋がりのある業者等の一般の人々もおり、MSは身を守る為の自衛手段であり、フロンタルのネオジオンのように大規模な反乱を巻き起こす為のモノではなかった。

 

だが、ECHOESは反乱の可能性と見なし容赦はしない。

 

資源衛星内にECHOESの特殊部隊がECHOESロトに乗りながら潜入し、蜘蛛の子を散らすように散開。

 

冷酷な機械感情の兵士達は、資源衛星内の街を駆け抜け、サイレンサーガンで一般人、老若男女問わず次々と射殺する。

 

全く気づかれずにピンポイントで急所を撃ち抜いていく業(わざ)は、悲鳴さえ上げさせない。

 

目指すはネオジオンの兵器庫と兵士達の宿舎だ。

 

到達したECHOES隊員達は、まさにアサシンの如くネオジオン兵士達を次々に射刺殺していく。

 

無情たる無慈悲な行動には全く容赦は見受けられない。

 

更には別の部隊が民間家屋に潜入し、婦人子供問わず次々とサイレンサーガンを頭部にあて、即死へ導いていった。

 

そして、ゲートを突き破りながら内部にECHOESロト部隊が突っ込む。

 

民間施設内を走行するロト部隊は、人が密集するエリア目掛け、ロケットランチャーを発射。

 

戦争から逃れ、ひっそりと生活していたネオジオンの民に無慈悲な攻撃の雨が注がれた。

 

後に続き、ECHOESジェガンも同じポイントへ、ビームライフルを連発発砲。

 

人々の幾多の叫びが聞こえてくる。

 

その間にもマンハンター特殊部隊は、泣いてすがる母親も子供にも全く容赦せずに殺戮を継続していく。

 

これらの殺戮行動は、ECHOEにとっては至極当然の行為である。

 

反乱の芽の可能性は徹底的に排除するのだ。

 

ECHOES部隊は、数十分に渡り資源衛星内の住民を殺戮し、最終的に内部に設置した衛星破壊用爆弾・ブラストボマーを爆破させ、内部を完全に破壊し尽くす。

 

その間の凄まじい爆発・爆風は無慈悲なECHOES部隊の非情たる感情を表すかのようでもあった。

 

 

「キルケー内部を完全に破壊。反乱分子予備軍の掃討も完了。全部隊、離脱せよ!!」

 

キルケーにMS輸送船が接近し、ECHOESジェガンやECHOESロト達が帰投へと移行する。

 

だが、その次の瞬間、熱源のみをレーダーに示す存在が接近した。

 

「!!?っ……急速に接近する熱源を探知!!だが、MSの反応はない!!!」

 

「何だと!!?っ―――がぁっ?!!」

 

 

 

ドォガギャアァッッ―――ゴガァオオンッ!!!

 

 

 

急速に接近した何かに激突されたECHOESロトがぶっ飛び、MS輸送船の機首部に激突し半壊した。

 

突っ込んだ何かが止めと言わんばかりに接近し、何かを串刺しにした。

 

 

 

ズジュガァアアッッ―――ドッゴバガァオオオオ!!!

 

 

 

ECHOESロトを串刺しにしたのは、シェンロンガンダムのビームグレイブだった。

 

ECHOESロトはそのままMS輸送船と共に爆破する。

 

その爆破に照らされたシェンロンガンダムは、ビームグレイブを手にし、直ぐに別のECHOESロトに斬りかかる。

 

ビームキャノンやメガマシンキャノンの砲撃をシェンロンガンダムは真っ向から受けながら突っ込む。

 

「が、ガンダム!!ガンダム出現!!!応戦の限りを尽くせぇっ!!!」

 

「あのガンダムが昨今、我々ECHOESを攻撃しているガンダムなのか?!!」

 

ECHOESロト、ECHOESジェガンの部隊が反転し、次々にオレンジのビームを撃ち出して応戦していく。

 

このオレンジのビームは、擬似GNDドライヴの発動させるエネルギーの証拠だ。

 

通常よりも高いダメージの負荷がシェンロンガンダムに注がれ、装甲表面に幾つもの爆発が起こる。

 

だが、五飛は全く構うことなく攻めの姿勢で突っ込む。

 

「貴様らの悪の所業……俺が叩き潰す!!!」

 

 

 

ズバシャガァアアアアッッ!!!

 

ドッゴガァアアアンッッ!!!

 

 

 

ビームグレイブに叩き斬られたECHOESロトが爆発。

 

その爆炎を突貫し、ビームグレイブを振り回しながら3機のECHOESロトに斬り払いの一線を見舞う。

 

 

 

ブルルルルルルッ―――ジャズガァッ、ディギャイ、デッギャイィイイイイン!!!

 

ドドドゴバァアアアアアアアア!!!

 

 

 

「くそっ!!ECHOESをなめるなよ!!!」

 

一瞬にして4機のECHOESロトを破壊され、憤りの限りを覚えたECHOESジェガンのECHOES隊員達は、ビームライフルやビームバズーカの射撃をシェンロンガンダムに集中させた。

 

 

 

ドドドドドドトォォォォォ……ドォゴガァン、ディギャオン、ドドドガァアアアアアン……!!!

 

 

集中射撃を受け続けたシェンロンガンダムは幾つもの小爆発に包まれ、やがて爆発に呑まれた。

 

だが、ECHOESジェガンの1機はビームサーベルを抜き取り、そこへ攻め込んだ。

 

「やつらのガンダムならば、この程度では墜とせん!!!おおおっ!!!」

 

次の瞬間、案の定シェンロンガンダムが僅かに装甲を損傷させた状態で飛び出す。

 

ビームグレイブとECHOESジェガンのビームサーベルがぶつかる。

 

はしるスパークに五飛は口許に笑みを浮かべた。

 

「そうこなくてはな……卑劣な奴らが強ければ強いほど熱くなる……!!!」

 

ビームサーベルを捌いた瞬間、両者のビームの得物が幾度もぶつかり合う。

 

次の斬撃で両者の刃が振るえながら拮抗する。

 

拮抗している時点で、擬似GNDドライヴのパワーが窺える。

 

「ふっ……我々はECHOESだ。反乱分子の駆逐には手段を選ばない!!!」

次の捌きが始まった瞬間、ECHOESジェガンがシェンロンガンダムから突如として離脱する。

 

シェンロンガンダムは斬り損じた直後、宇宙空間上の四方向からビームバズーカの集中射撃を受けた。

 

 

 

 

ドドドドシュダァアアアアア―――ドッッゴバァガァオオオオオン!!!

 

 

 

シェンロンガンダムを爆発させるような爆炎が巻き起り、更にそこへ再びECHOESジェガンが斬り払いを見舞った。

 

 

 

ギャギィイイイイイッッ!!!

 

 

 

 

ビームサーベルの斬り払いでぶっ飛ぶシェンロンガンダム。

 

シェンロンガンダムの機体の装甲が少しではあるが、一部が破損していた。

 

度重なる擬似GNDエネルギーによるダメージに、確実に耐久度は下がりつつあった。

 

だが、それでも五飛はECHOESジェガンへ突っ込み、カウンターのビームサーベルの突きを受ける。

 

装甲の表面で爆発が起こる。

 

しかし、確実にドラゴンハングの牙がECHOESジェガンの胸部を貫いていた。

 

爆発に巻き込まれながら、シェンロンガンダムは次々にECHOESジェガンに取り付きながらドラゴンハングで装甲を破砕し続ける。

 

 

 

ダッガギャッッ―――ズドォガァッッッ―――ドッッガァギャォッッ―――、ガァギャガァアアアッッ!!!

 

 

 

この攻撃により、シェンロンガンダムはキルケーを蹂躙したECHOES部隊を壊滅させてみせた。

 

だが、五飛は宇宙へ上がって以降、ECHOESの拠点や任務エリアをハッキングした情報から攻撃をかけ続け、各地を転戦して来た。

 

故に機体は確実に今の戦闘で疲弊を加速させつつあった。

 

メテオ・ブレイクス・ヘルのガンダムと言えど機械である以上、逃れられない現実だ。

 

各部のエラーアラートがコックピットに鳴り響き続ける中、五飛は呟いた。

 

「那托……まだ俺達は終わらん……宇宙には馬鹿が多すぎる……理不尽な馬鹿達がな……」

 

五飛は瞳を閉じてしばらく瞑想に入るが、すぐに目を見開き、モニター操作でどこかの座標を調べ始めた。

 

「そろそろ貴様もメンテナンスが必要か……あいつらも戻っているはずだ。帰還するぞ、那托」

 

五飛はいよいよシェンロンガンダムもコンディションの限界と判断し、ヒイロ達が集結しているラボコロニーへの帰還を選択した。

 

 

 

L4コロニー群・ウィナー家ラボコロニー

 

 

 

ガンダムのメンテナンスブロックが見える施設内のカフェで、エナとカトリーヌがブラックコーヒーとカフェモカを口にしながら、カフェタイムに浸っている。

 

カフェタイムでも真剣な表情の二人から深刻な話をしている事が窺える。

 

エナはため息をつきながらブラックコーヒーを置いて再び話す。

 

「ふぅ……いつかはと思ってはいたけど、お父様にこのラボの件がついにわかってしまった……ラボの責任者であるイリア姉様とカトル、それにリーダーのオデルが、ウィナー家の資源衛星視察中のお父様に呼び出されて……きっと近い内にウィナー財団にラボは差し押さえられてしまう」

 

「お父様はこれでもかって程に平和主義だからね……ガンダムなんか直ぐに解体されちゃうかもね。でもそうしたら……どうなっちゃうの?」

 

「対抗手段が無くなってしまう……そう……OZに対する対抗手段がね。今は戦うしかない……だからイリア姉様を中心に私達はメテオ・ブレイクス・ヘルのバックアップに尽力してきたの……」

 

「ボクが説得すればお父様は考えて下さるかな?一応、ウィナー家の末っ子の娘だから!えへへ!」

 

そう言ってカトリーヌはカフェモカのカップを両手に持って飲み始めた。

 

「もう……カトリーヌったら……そんなに簡単じゃない……こういう事はね。難しいんだから……」

 

カトリーヌの半ば無邪気な意見にエナは、妹の可愛らしさを感じながらブラックコーヒーを再び口にする。

 

その時、カフェルームにデュオとトロワ、アディンが姿を見せた。

 

デュオは相変わらずのひょうひょうとした口調を飛ばす。

「おっと!ご姉妹仲良くカフェタイムかぁ?」

 

「デュオ。トロワとアディンも……」

 

「トロワ!」

 

カトリーヌはトロワを見るなりテンションを上げた声を上げるが、トロワは坦々とカウンターでブラックコーヒーを注文する。

 

「俺はブラック」

 

それに続くようにアディンの分と合わせてデュオが注文した。

 

「俺達はウインナーコーヒーな!!」

 

「あ、俺、追加でスコーンも」

 

急に男子勢が増え、カフェルームに少し賑わい感が増す。

 

店主でルームオーナーのセルビア・アン・ウィナーもこの状況にコメントをこぼす。

 

彼女もカトルの姉の一人で、低い位置から髪を丸めたギブソンタックのヘアスタイル(※)がトレードマークの気さくで綺麗な女性だ。

 

 

※例:「ガルパン」のダージリンのヘアスタイル

 

 

エナやカトリーヌの姉であり、イリアの妹でもある。

 

「あらあら!男子達がくるだなんて珍しい!!帰って来たGマイスター君達ね?」

 

「そーそ!!死神にも休日が欲しいんで!」

 

「俺達、ずっとシュミトレやりこんでたからさ。たまには息抜きにって……」

 

そう言いながらアディンは、他の料理メニューに目を向ける素振りを見せるとたちまちあれこれ眺め始める。

 

セルビアは出来上がったブラックコーヒーの皿をトロワに渡しながら悩むアディンを横目にする。

 

「ゆっくりしてって~……あたしはこのカフェルームオーナーのセルビア・アン・ウィナーよ……よかったら軽い料理くらいおごるわ。当店オリジナルパスタ、おすすめよ」

「マジっすか!?やりー!!じゃ、それで!!トロワもそれでいいか?」

 

「あぁ」

 

「セルビアさん、気前いーねー!きっといい奥さんになれるぜっ!!」

 

「あら、ありがと!もしかして、惚れたかしら?」

 

「おっと、俺は今が一杯なんでな!またかんがえさせてもらおかな!あと、こっちのアディンにゃ、フィアンセがいるからよ!!」

 

「あらあら、いーじゃない!かわいいの?」

 

デュオは、アディンにプルの事を押し付けてアディンをからかう。

 

無論、アディンは否定する。

 

「何がフィアンセだ、バカヤロウ!!!」

 

カウンターでわいわいしている二人に、カトリーヌは冷めたコメントを呟く。

 

「セルビア姉さんのとこの二人、はしゃぎすぎ……それに比べ、やっぱりトロワは大人よね☆」

 

「そうか?だが、これまでの死線をくぐって来たあいつらも十分大人だ。子供であればあの過酷な状況を越える事はできないさ。カトリーヌはできるのか?」

 

「う……やらなきゃわかんない。でも、トロワとなら越えれるよ☆ボク、がんばる!」

 

「ふっ……カトリーヌらしいな……」

 

先程までウィナー家にも纏わり、Gマイスター達にも深刻な話になっていた空気が和らぐ。

 

エナは空気の変わりように呆気にとられていたが、はっとなり、トロワにも現在の状況を告げた。

 

「っ……トロワ」

 

「ん?」

 

「先程まで話していたのだけど……カトルとオデルが……」

 

「あぁ、知っている。遅かれ早かれ知られていた。今が乗り越える時だ。二つの意味合いでの身内間のぶつかり合いは避けられない」

 

「カトル……(お願い、お父様。カトルの事をわかってあげて……!!)」

 

エナが心中で父親にうったえる想いを呟く頃、父・ザイード・ウィナーの拳をカトルはもらい受けていた。

 

「うぐっうっ……!!」

 

「このっ……親不孝者がぁあっ!!!」

 

「お父様!!」

 

殴り飛ばされたカトルをかばうイリア。

 

だが、ザイードはかばうイリアを引き離し、カトルの胸ぐらをつかみ上げた。

 

「武力による反抗だと!!?ガンダムの力による変革だと!!?ふざけるな!!!武力ではっ、武力による行動では何も解決せんのだ!!!だからっ、あいつは……マハディ・ガーベイのやつは……!!!」

 

ザイードは盟友であった、マハディの死を思い起こすと共に、武力の愚かさを投げかける。

 

「武力を影で供給してきた結果、テロリスト共に妬まれ攻撃された……!!!武力に携わらなければそんな事にはならなんだはずだっ!!!それに……お前達はガンダムでは飽きたらずにコロニーにまで手を出したな……!!!」

 

「お父様!!!それらは全てOZによる情報操作です!!!カトル達は……カトル達は争いを世界に導くOZや支配を続ける連邦を倒す為、この世界の為に立ち上がったんです!!!」

 

続けてオデルも実体験を踏まえながら意見を訴えた。

 

「俺達バーネット兄弟は、連邦の戦艦に住んでいた資源衛星ごと家族や大切な人達を奪われた!!あなたは今いる資源衛星が、ウィナー家のコロニーが、お嬢様達がいるコロニーが、突如軍に攻撃されて消えるんですよ!!?それでも行動せずにいられますか!!?」

 

「オデルと言ったな……憎しみからは何も生まん!!!連鎖する争いだけだ!!!かえりみろ!!!宇宙世紀の歴史を!!!憎しみと争いが繰り返す歴史だ!!!お前達はそれに拍車をかけたばかりか、結果的にOZが世界を支配する形に導いてしまったのだぞ!!!」

 

実際にザイードの言うとおりの流れが今の歴史を作っていた。

 

オデルはしばらく、ぐうの音が出ない状況になるが、振り払うように自身の主張を放つ。

 

「確かに結果はそうかもしれない!!馬鹿げた反抗だったかもしれない!!だが、それはあくまで現時点の流れ!!判定は未来が決めることです!!!俺自身は結果ではなく、行動することに、行動したことに意義があると考えます!!!」

 

「どんな理由であれ、武力を持ってはならんのだ!!!いずれにせよ、お前達の言うラボコロニーは差し押さえる!!ガンダムも解体だ!!!」

 

「父上!!!今は戦う力が必要なんだっ!!!それだけはやっちゃならない!!!」

 

「では聞くがな、カトル!!!ガンダムで闘って戦争は終わったのか?!!答えは紛れもない今ある現実だ!!!戦争が終るどころか無力極まりないではないか!!!」

 

「っ―――……!!!」

 

「お父様!!カトルは、コロニーの事を!!今後の宇宙世紀を想って行動してしたんです!!!並大抵の同じ年代の子にはとてもできない過酷な選択肢をしてここまで来たんです!!!少しくらいは評価を……!!!」

 

ぐうの音も出ないカトルを庇うように、イリアはカトルの主張をザイードにうったえた。

 

「正当化をするな!!!如何なる理由があろうと武力をかざす事は愚かな行為に他ならん!!!もうよい!!!お前達はラボコロニーとやらに帰れ!!!準備が整い次第私は赴くからな!!!」

 

断固として武力を否定するザイードの考えは、如何なる主張を持ってしても止められない。

 

カトル達は呼び出されたあげくにラボコロニーへ強制的に帰らされる事になった。

深刻な空気の中でイリアがカトルとオデルに話し出す。

 

「一度決めたこと、それも反戦争主義の事ならお父様は絶対に妥協はしないわ。直ぐにでもラボコロニーの差し押さえに行動するでしょうね。急いで戻ってお父様の差し押さえを止めるか、時間稼ぐかをしなければ……」

 

オデルはいつ来るかわからない敵と同時に、身内とある意味の形で闘わなければならない状況に眉を潜めながら言う。

 

「くっ……皮肉だな!!!OZと同時にザイード当主とも戦わなければならないとは……!!!」

 

「確かに父上はラボコロニーを差し押さえてきます。ですが、身内ですから命のやり取りはありません。ですが、ECHOESが来た場合は……想像したくありませんね……」

 

「はぁ……とにかく今はガンダムを誇示する事が先決だ。俺達はGマイスターなんだ!!ガンダムを持って現状を打開しよう!!!ECHOESに先を越される前にこちらの方から動くぞ!!!」

 

「はい!!!」

 

カトルの返事の後にイリアも頷きながら輸送船の舵を握り続ける。

 

だが、女性の勘か否か、ただならぬ嫌な予感を感じていた。

 

(急がなきゃいけない気がする……ラボコロニーへ一刻も早く戻らなければ!!!)

 

 

 

L4コロニー群宙域

 

 

 

イリアの抱いていた勘は確実性を増してきていた。

 

ディセットが指揮するOZ宇宙軍も同じ座標を目指す。

 

ディセットのメテオ・ブレイクス・ヘルのガンダムを徹底的に叩き潰す意志は確たるものだ。

 

彼らのガンダムの存在を征する事自体が、地球圏を征するに等しいからである。

 

連邦より接収したクラップ級艦隊やOZ高速戦闘艦艦隊、OZ輸送船船隊が幾つもの編隊を成して航行する中でディセットやダグザ達は、改めて立体モニターを使って作戦を確認していた。

 

「我々OZ部隊は、まず始めに艦隊による牽制砲撃を仕掛け、コロニーを攻撃する。十中八九奴らのガンダムは出撃するはずだ。それを見計らい、リゼル・トーラス部隊で攻撃を開始・継続。その間にECHOESはコロニーへ対人と対施設に別れて攻撃をかける。捕縛か皆殺しかは任せるがな」

 

「コロニー施設内部は大半は素人の女が管理していた。規模が広いが、それ以外は容易い。捕縛にしろ、皆殺しにしろ直ぐに済むはずだ。我々もまたタイミングを見計らいながら精鋭をガンダムへ攻撃させる」

 

「了解だ。この作戦はいかにガンダム達を追い詰め、パイロットを手に入れるかにある。これまでの宇宙世紀の軍事常識を遥かに越えている存在を手にすることが我々を更に飛躍させる要素になるだろう」

「あぁ……OZとECHOESのこの作戦がこれからの歴史を左右する!!!そして、捕らえた開発者が造ったガンダムを直接手にいれる事にもまた意味がある!!!」

 

その大部隊の中で、それぞれの戦士達がガンダムに対する闘志を燃やす。

 

「メリクリウスがどこまで奴らのガンダムに通用するか……今から疼いて堪らないぜ!!!」

 

「くっくくく……俺も早く破砕させてぇ!!!」

 

「いつかの死神ガンダム……今こそ復讐の怨み籠めたアスクレプオスで撃墜してやる!!!」

 

ガンダムとの戦闘を心待ちにするアレックスとミューラ、ガンダムデスサイズに撃墜された復讐を果たさんとするトラント。

 

彼らのメリクリウス、ヴァイエイト、アスクレプオスはメテオ・ブレイクス・ヘルのガンダム開発者により開発された機体だけあり、ガンダム撃滅に期待が掛かるMS達だ。

 

そして、航行するガンダムデルタカイと、レフトアームに再びバスターランスを装備したバルジに待機中のゼクスのトールギス。

 

ガンダムと善戦的な戦いをしてきた二人であるが、心境の次元や現状状況は明らかに異なっていた。

 

これまで騎士道精神に目覚め邁進しようとしていたリディであったが、ガンダムデルタカイに組み込まれたあるシステムにより、人格が豹変してきていた。

 

脳裏にはガンダムジェミナスの破壊に囚われていた。

呼吸を既に荒くさせているリディは2機のガンダムジェミナスの破壊イメージばかりを巡らせる。

 

「はぁ……はぁ……っガンダムっ!!!破壊する……破壊する!!!」

 

眼光も血眼になり、その精神から騎士道等は当に逸脱していた。

 

一方のゼクスは、遅れて着任した事と編成部隊のリーオーの搬入遅れもあり、バルジにて待機していた。

 

「ガンダムとの戦いに決着を着ける……だが、ヒイロとの決着が着ける事ができなかったのが口惜しすぎる……ならば私に挑んできたガンダムを倒すしかあるまい……!!!」

 

ゼクスは悔やみ切れない現実に悔しさを去来させ続ける。

 

だが、ゼクスの望みなる決着は、自らやって来ようとしていた。

 

ラボコロニー内部のMSドックに、スラスター音が鳴り響く。

 

ドック管理しているカトルの姉達もざわめきながら管制室から制止を呼び掛ける。

 

「待ちなさい!!!いくらあなたのガンダムでも、現状的に無茶だわ!!!今すぐ引き返して!!!」

 

管制室の管制モニターに、ヒイロの姿が映るとヒイロはカトルの姉達に信念とも言うような意思を告げる。

 

「先手でバルジを攻撃する。この機体ならば十分にやれるからだ。バルジには主砲がある。やられる前にやる……ここがバルジに狙われる前にな!!!」

 

「ちょっと……!!!」

 

通信が切れると同時に、ウィングガンダムリベイクがラボコロニーから電光石火のごとく発進した。

 

ヒイロの行動は誰も止められない。

 

その時、帰還したカトル達の輸送船とヒイロのウィングガンダムリベイクがすれ違う。

 

「ヒイロ!!?一人で出撃したっていうの!!?」

 

「たった1機で行ったのか!!?いくらなんでも……って言いたいが……ヒイロだからな。言っても聞かないだろ」

 

「はい。それに、彼の行動にはいつも裏付けがありますから……」

 

動揺するイリアをよそに、オデルもカトルもヒイロの行動を同じGマイスターとして信頼し切っていた。

その直後にヒイロからの通信が入る。

 

「先行してバルジを叩く。ウィングリベイクなら可能だ。場所は現在バルジがあるL1方面だ。後は頼んだ」

 

「はい!!頼むよ、ヒイロ!!」

 

「了解だ。バルジは任せたぞ」

 

「あぁ。中枢にプロトバスターライフルを撃ち込めば十分破壊可能だ。俺もラボは任せた」

 

たったそれだけのやりとりで済む。

 

ヒイロ達の信頼関係の感覚にイリアは着いていけず、空いた口が塞がらなかった。

アディンもまた、デュオとトロワの協力を得ながらガンダムジェミナス01のショルダーとバックユニットの仕様を換装していた。

 

トロワが作業アームを操作し、デュオとアディンを始めにしたメカニック達とで新たなユニットの取り付け作業を行う。

 

その隣ではガンダムジェミナス02がアクセラレートライフルとシールドのツイン化実装を施していた。

 

「新たな火力強化ユニット、LOブラスターユニット!!左右のブラストビームキャノンとバックパックのライナーオフェンスブースター!!これで一気に火力と機動力がアップするぜ!!!」

 

「今を乗り切る打開策ってわけだ……相棒の調整も済んでるし、俺も準備万端だ……ま、油断はできねーけどな!!」

 

「あと、スペシャルパーツ……がんだむじぇみなす!!」

 

アディンがスペシャルパーツと言って取り出した物は、以前にプルが作ったガンダムジェミナス01のマスコットであった。

 

「は?!!」

 

流石のデュオもこればかりは唖然を食らった。

 

「前にプルが作ってくれたガンダムジェミナスのマスコットだ!!お守りっつーか、励みみたいなもんさ!!」

 

「やれやれ……アディンも色気づきやがってよ~……大事の前っての忘れんなよ……っておいおいっ!!プルっていくつだ!!?」

 

「大体俺の四つ下くらい12、3か?」

 

「アバウトだな……犯罪の域じゃねー?」

 

「あのな……!!」

 

デュオがふと視線をやると、作業待機中のトロワに肩を叩いて、人差し指を振り向いた頬に当てる

カトリーヌの愛らしい行動が目に入った。

 

デュオはヒイロ、カトル、アディン、ときてトロワにもそれなりのパートナー的存在がいることを認識する。

 

「やれやれ……ま、いーんじゃねーか?そー言った存在ってのもよ。やベーってときに踏ん張れる要素になると思うぜ……」

 

「なんだよ?急に……まさかうらやしいのか?」

 

「いや、俺はいいんだ……大切な存在は昔に置いてきたからな。死神は死神らしく孤高なまでにな……誰も巻き込まないさ……俺は」

 

「デュオ……」

 

ふと見せたデュオの影に、アディンはそれ以上は言わなかった。

更に見えない所では、なんとエナが合間を見計らってオデルを呼び出していた。

 

雰囲気的に見て、明らかに告白であった。

 

オデルは未だにトリシアを半ば引きずっていたが為に返事は保留にした様子であった。

 

エナも頷き受け入れていた。

 

カトルはロニからもらったアクセサリーを握りしめ、ガンダムサンドロックのコックピットの中で向かい来る闘いの覚悟を今一度改める。

 

だが、当のロニは胸に銃弾を撃ち込まれたまま、Ξガンダムとの戦闘に身を投じさせていた。

 

彼女に撃ち撃ち込まれた弾丸は、彼女自身が作ったアクセサリーが身代りのごとく受けていたのだ。

 

キルヴァはモニター越しにロニのペーネロペーを見ながら不敵なまでに笑いを見せながらビームバスターを浴びせ続け、対するペーネロペーはダメージを物ともせずにビームバスターを連発。

 

ロニはこれまでの記憶を本来の人格を基盤におこし、憎悪の限りに攻撃を繰り出し続ける。

 

飛び交うビームバスターのビームは、空中を突き進んでは着弾し、突き進んでは着弾する。

 

更に互いにファンネルミサイルを展開させ、ほぼ同時に双方の機体目掛け、甲高い音を唸らせながら突き進む。

 

ファンネルミサイル同士が相殺し合う中で幾つかが空中をすり抜け、Ξガンダムとペーネロペーを直擊し、爆発を巻き起こした。

 

だが、2機は一部分を小破させながら爆煙を突き抜け、メガビームサーベルを発動。

 

狂気と憎悪を剥き出しにした斬擊が交わった。

 

一方、五飛はラボコロニーに向かいながら李鈴と回線を繋いで珍しく会話を交わす。

 

画面越しではあるが、李鈴もどこか嬉しげな様子を見せていた。

 

更にまた一方、プルもギルボアの家族であるサント家と料理の買い出しに出掛けながらアディンを想い、パラオの天井を見上げ見る。

 

その時、マリーダは手をジンネマンに握られながら、人体実験の後遺症の発作に苦しみ悶えながらも自身を見舞う理不尽な痛みと闘っていた。

 

ヒイロはウィングガンダムリベイクのトリガーグリップを握りしめながら突き進む宇宙空間を見据える。

 

その最中で今を闘うマリーダを想う。

 

(マリーダ……今俺は俺にできる最大の方法で闘っている。マリーダもマリーダを蝕む理不尽な後遺症と最大限に闘い貫いてくれ!!!)

 

先の連邦軍掃討の際に観測されたバルジ砲は、コロニーを沈めるには十分過ぎる超エネルギーだ。

 

ヒイロはバルジ砲の可能性を危惧し、誰よりも早く行動したのだ。

 

 

 

そして―――宇宙世紀0096・1月未明……遂にその瞬間が訪れた。

 

ラボコロニーの管制室のモニターに、OZの攻撃部隊が姿を見せた。

 

イリアは腕を組みながら、睨むようにモニターを見据える。

 

「識別、OZとECHOESの艦隊、尚も接近中!!敵、予想砲撃ポイントまで約2マイル!!」

 

「艦隊数、およそ20隻、MS、確認できるだけでもおよそ200機以上!!!」

 

「思い切って出て来たわね!!!待機中のGマイスター達に出撃指示を通達して!!!」

 

「イリア姉様!!お父様の船もこちらに向かっているとの事です!!」

 

「なんですって!!?」

 

事もあろうか、ザイード当主が自家用シャトルで自らラボコロニーの差し押さえに向かってきていた。

 

無論、ウィナー財団の要人達も多く赴いていた。

 

万が一の事があれば、ウィナー財団の主力勢がいなくなり、財団の存続の危機に瀕する。

 

直ぐにイリアは待避勧告を伝えた。

 

「お父様!!!イリアです!!!すぐに引き返して下さい!!!」

 

「イリアか……言った筈だ……差し押さえるとな」

 

「そうではなくて!!!今すぐ待避して下さい!!!OZの艦隊が目前に迫っているんです!!!」

 

「知っている……」

 

「えぇ?!!では何故来るんです!!?」

 

「全く……馬鹿息子の為に馬鹿娘達が世話を焼くからこうなる……だから逃げなければならなくなったのだぞ……」

 

「はい?!!一体どういう事!!?」

 

ザイードの脳裏には、ウィナー財団が保有するL4コロニー内部の悲劇が過る。

 

ECHOESによるウィナー財団関係も一斉掃討だった。

 

事前にラボコロニーの存在を察知していたECHOESは、ウィナー財団の関与を突き止めており、メテオ・ブレイクス・ヘルを畳み掛けた時と同じく、組織という組織を潰す行動を起こす。

 

ECHOESの兵士達がサイレンサーマシンガンを駆使してウィナー財団関係者を容赦なく殺害していく。

 

更には、火炎放射機を導入し、女性や子供であろうと非情極まりなく焼く。

 

響く叫びは正常な精神を持つ者を、否応なしに締め付けるものであった。

 

ウィナー財団関係者各社員、家族、親族、友人が各地で無惨に虐殺されていく。

 

その規模はコロニー規模に及んでおり、それはガーベイ・エンタープライズの二の舞であった。

 

ECHOESは徹底的かつ超法規的に反乱の要素を潰しにかかっていた。

 

「ECHOESが……OZが……我々の抹殺に動き出したのだ。今や逃げ場はない……だが、それでも逃げるのだ」

 

イリアは嫌な予感を覚えていた。

 

避難させた筈のエナやセルビア、カトリーヌ達にも危険が迫っている。

 

そう感じてならなくなったイリアは、直ぐに妹達へ指示を下した。

 

「全避難ブロックエリアを完全に隔壁閉鎖!!攻撃や侵入者に備えて!!!」

 

「はいっ!!お姉さま!!」

 

だが、指示の直後にラボコロニーカタパルトで待機していたデュオとオデルから声が上がる。

 

2機はラボコロニー内部のカタパルトにそれぞれ配置についており、任意で射出できる状態であった。

 

「やれやれ……ったくよぉ!!!こういう時はやられる前にやるがセオリーだぜ!!!デュオ・マックスウェル!!ガンダムデスサイズ、いくぜぇっ!!!」

 

「エナ達が危ないのは火を見るよりも明らかだ!!!先手を取るぞ!!!オデル・バーネット!!ガンダムジェミナスバーニアン02、出る!!!」

 

火花を散らすカタパルトレールユニットが、ガンダム2機を射出させた。

 

ガンダムジェミナスバーニアン02はバーニアンスラスターで驚異的な加速をかけて飛び込む。

 

ガンダムデスサイズも瞬発的にPXをかけて加速した。

 

「ジェミナスバーニアン02、デスサイズ出撃!!イリア姉様、この際にガンダム全機発進を……

!!!」

 

「えぇ!!無論よ……ガンダム各機発進……」

 

「イリアよ!!!戦ってはならんのだ!!!」

 

「な!!?お父様!!!」

 

ザイードの主張がイリアの発進指示を妨げる。

 

ザイードの放つ声質は、全てを受け入れていたかのような声であった。

 

「私は逃げてきたのだ!!!戦う事なく逃げてきたのだ!!!如何なる理由があろうと戦ってはならん事を教えてやらねばならん……!!!」

 

ザイード達のシャトルがラボコロニーの前に立ちはだかるように近づいていく。

 

その時、カトルが回線をザイード達へ開き、決死の想いで待避を訴えた。

 

「父上!!!今すぐ逃げてください!!!目の前にはOZの大部隊が来ているんです!!!」

 

「そうだ!!戦わず逃げる姿勢こそが正しいのだ!!カトルよ……逃げる闘いだ!!!逃げる闘いを忘れるな……ウィナー家の……!!!」

 

「ダメだ!!!父上……!!!」

 

その時、ウィナー親子を引き裂き裂くかのようなタイミングでディセットの口許が動いた。

 

「ガンダムが出たか……目標、ウィナー財団・コロニー、及びガンダム……全艦隊、一斉射撃……放て!!!」

 

宇宙空間から一斉にメガ粒子の夥しいビーム群が突き進み迫る。

 

それは容易くザイード達のシャトルを撃ち抉りながらラボコロニーに直撃した。

 

そのビーム群を受ける瞬間に、ザイードはカトルと娘達に向けて最後の言葉を放つ。

 

 

 

「ウィナー家の誇りを託す―――!!!」

 

 

 

通信が切れると同時にラボコロニーに地震のごとき衝撃が響き続けた。

 

「父上!!!父上ぇぇぇっっ!!!」

 

「お父様―――!!!」

 

凄まじい衝撃が響き渡る中で、ウィナー家の残された文字どおりの後継ぎ達が悲しみの絶句し続ける。

 

泣き崩れるイリア、茫然とする姉妹達。

 

ラボコロニーの外壁が少しずつ破壊されていく。

 

重なり続けるダメージと轟音。

 

避難ブロックにいるカトリーヌ達も言い様の無い恐怖の中にさらさらされ、姉妹達は寄り添いながら耐えしのぐ他無い。

 

艦隊より途切れることなく迫るメガ粒子のビーム群。

 

ガンダムデスサイズとガンダムジェミナスバーニアン02はビーム群を回避し続けるが、皮肉にも先手を取ると出撃したことが敵の先手の繋がりを許してしまった。

 

「おいおいおいおいっ!!!いくらなんでも撃ち過ぎだぜ、おい!!!」

 

「逆に先手を打たせてしまったか!!!くそ!!!ラボコロニーが……!!!」

 

劣勢たる劣勢に、更なる追い討ちが襲う。

 

「全弾目標コロニーに直撃しました!!」

 

「MD、リゼル・トーラス部隊、並びにリーオー部隊攻撃開始!!」

 

「ECHOES部隊も出撃!!対人処理班とガンダム攻撃班に別れ展開!!まずは内部制圧とブラスト・ボマー設置に専念せよ!!!」

 

ディセットとダグザの命令の後にクラップ級艦隊やMD輸送船より、リゼル・トーラス部隊が次々に出撃。

 

あらかじめ展開していたリーオー部隊もビームバズーカや対ガンダム用に開発されたドーバーバスターによる高出力ビーム射撃を展開する。

そして慈悲を知らぬマリオネット達は、掲げたメガビームランチャーの銃口をラボコロニーへと向け、一斉に高出力ビーム群を放つ。

 

重々に押し寄せるビームの波がラボコロニーを更に揺るがす。

 

その最中、秘密裏にラボコロニーに侵入していたECHOESの対人部隊もこの攻撃を合図に動き出す。

 

タンク形態のECHOESロトの部隊が一斉にラボコロニー内部の通路を走行していく。

 

それらの部隊は、ラボコロニーの内部各地を寄生虫のごとく蝕むように展開を開始した。

 

内部と外部からの同時攻撃。

 

猛攻の流星弾雨の中をガンダムデスサイズとガンダムジェミナスバーニアン02が駆け抜け、敵機群に攻め込む。

 

「デュオ!!敵機に新型の識別が出ている!!気をつけろ!!!」

 

「あぁ!!!しかもうじゃうじゃいやがる!!!けどまぁ、ここまで来たら気をつけ切れねーぜっ!!!」

 

「確かにな……!!!がむしゃらなまでにやらせてもらうか!!!」

 

加速する2機は一気にリゼル・トーラスの部隊群に到達。

 

二挺装備になったアクセラレートライフルと振りかざされたビームサイズでアタックを開始した。

 

「ツインアクセラレート、ロック・オン!!!」

 

「相手は色黒なリゼルっ!!!ぶった斬るぜぇえええっ!!!」

 

放たれる二つのビーム渦流。

 

振るわれたビームの死神鎌。

 

だが、リゼル・トーラス部隊は容易いまでに攻撃をかわした。

 

「速い!!!」

 

「かわしやがった?!!」

 

空間の中心から参方向に拡散するかのような軌道と、斬軌道を紙一重でかわす動き。

 

更にリゼル・トーラス部隊は高速接近し、一撃離脱の高出力射撃を仕掛けてくる。

 

小規模とはいえ、狂い無く叩き込まれる高出力ビーム渦流は、ガンダムジェミナス02に爆発と反動をあたえる。

 

「くぅっ……!!!」

 

ガンダムデスサイズの攻撃をかわしたリゼル・トーラスはガンダムデスサイズから見た頭上より、レフトアームのビームキャノンを高速射撃して連続ダメージを爆発と共に与えた。

 

「ぐあぁあああっ!!!こいつら……!!!」

 

リゼル・トーラス部隊は、ガンダムとラボコロニーの二手に別れて攻撃を展開する。

 

メガビームランチャーによる連続ダメージがラボコロニーを襲い続け、ラボコロニー内の各カタパルトドックにも攻撃の振動が響き続ける。

 

更に後方からのリーオー部隊の援護射撃も加わる。

 

四方から攻撃を受け続けるガンダムデスサイズとガンダムジェミナスバーニアン02は、回避と被弾を繰り返しながら反撃に転じた。

 

「ちぃっ……!!!攻撃がっ……素晴らしくうぜーんだょぉおおっっ!!!」

 

ガンダムデスサイズはリーオー部隊に突っ込み、ビームサイズを振るい、破壊と同時に陣形を崩しに掛かる。

 

 

 

ゴッッ―――ズザバァアアアアアンッ、ザシュガッ、ザズバン、ズシュガァアアア!!!

 

 

「圧倒的だが、圧倒には圧倒で対抗する!!!」

 

 

ズヴァウッ、ズヴァウッ、ズヴァウ、ズヴァウ、ズヴァダァアアァアアアッッ!!!

 

ドドゴバババガァアアアアアア!!!

 

 

二挺のアクセラレートライフルの乱発からチャージショットを撃ち込み、リーオー部隊を破砕した。

 

その直後にメガビームランチャーの集中攻撃を四方から受けた2機は、再度リゼル・トーラスの破壊を仕掛けた。

 

ゴリ押しと旋回軌道射撃による攻めだ。

 

ガンダムデスサイズはビームキャノンを浴びながら爆発に包まれ、それを撃破と認識した為、リゼル・トーラスは攻撃を止めた。

 

「だりゃああああああ!!!」

 

 

 

ドズガァアアアッッ……バズグァガオオオオ!!!

 

 

爆煙を突き破ったガンダムデスサイズは、バスターシールドをリゼル・トーラスの胸部に刺突。

 

突き刺さったバスターシールドのその一撃が、リゼル・トーラスを破砕・爆破させた。

 

「らぁああああっ!!!」

 

デュオは更に斬擊を繋げ、2機のリゼル・トーラスをビームサイズで斬り払う。

 

 

ザシュガァッ、ザガギャアアアアアッ!!!

 

ドグバァガァガァアアアアアアッ!!!

 

 

 

更にビームサーベルを手にし、高速で斬り掛かる3機のリゼル・トーラスに対し、振りかぶったビームサイズの斬擊を高速で個々に食らわす。

 

「そらよぉおおっ!!!」

 

 

 

ザァズバッッッ、ザバシイッッッ、ザギャドォッッ!!!

 

ズドゴババガァアアア!!!

 

 

 

鎌の捌きで発生した爆発の華に身を照らすガンダムデスサイズ。

 

デュオは目の前に展開しながら迫るリゼル・トーラスの部隊に、呆れたような笑みをしながら吐きこぼす。

 

「やれやれ……随分とまた賑やかに来るじゃねーか!!!こっちも覚悟決めて対応させてもらいますかね……!!!」

 

メインカメラを光らせ、被弾しながらもリゼル・トーラスの機体群に鎌を振りかぶりながら突き進み、狙い定めたリゼル・トーラスを斬り潰してみせる。

一方のガンダムジェミナスバーニアン02は、バーニアンユニットを活かした旋回加速をしながら二挺のアクセラレートライフルのビーム射撃を撃ち込む。

 

高速で交互に撃ち出される高出力ビーム。

 

幾つもかわされるが、その最中でオデルは感覚を研ぎ澄ませていく。

 

「確かに速い……ただのリゼルとは違う……かと言ってPXは無闇に使うわけにはいかんっ……ならば俺自身の感覚を頼るっ―――!!!」

 

オデルは加減速を駆使しながらリゼル・トーラスの射撃をかわし、アクセラレートライフルの射撃を続行した。

 

連続する旋回射撃の高速加速射撃が、やがてMDの反応速度にオデルの感覚がリンクし始め、2機を撃ち貫く。

 

そして何かを見切ったかのような眼光を飛ばし、ガンダムジェミナスバーニアン02をリゼル・トーラスの機体群が展開する宙域に突っ込ませた。

ガンダムジェミナスバーニアン02は、リゼル・トーラスの機体群の中でアクセラレートライフル二挺を乱れ撃つ。

 

 

 

ヴィギュギュダッッ、ズヴァヴァウッッ、ディシュドドッッッ、ドドヴァウッッ、ヴィヴィギュイッ、ヴィギュダッウィギュァアアアアア!!!

 

ドドゴバババガァドドアアアアアア……!!!

 

 

 

その爆発群の中から加速して飛び出したガンダムジェミナスバーニアン02は、回避と防御を組み合わせながら駆け抜け、アクセラレートライフル二挺の銃口をリゼル・トーラス達へ向けた。

 

 

 

ヴゥゥゥッッ……ヴィギュルヴヴァアアアアア!!!

 

ギュズダァアアアァアアア……ヴァズガッ、ゴグバッ、ドドドグゴバァァアアアアアン!!!

 

 

 

二挺のアクセラレートライフルから放たれたチャージショットのビーム渦流が6機のリゼル・トーラスを総なめにするように吹き飛ばした。

 

それまで優位を我がモノとしていたリゼル・トーラス部隊であったが、この瞬間からGマイスターに攻めのカードが回り始める。

 

その間にもラボコロニーに直接メガビームビームランチャーを撃ち込まれ破壊が進む。

 

押し寄せるように迫るリゼル・トーラス部隊は、MDシステムによるAI制御の為、全く容赦がない。

 

破壊による振動轟音がコロニー内部のシェルターに響き渡り、絶え間無い恐怖をカトルの姉達や妹に与えていく。

 

体験したことの無い恐怖に、カトリーヌはエナにしがみつきながら怯え、エナもまた恐怖に切迫されながらカトリーヌを撫でる。

 

リゼル・トーラス部隊はラボコロニーに更なる攻撃を仕掛けようと接近した。

 

その最中突如ラボコロニーの外壁が連続射撃的な爆発を起こし、何かが飛び出す。

 

ガンダムヘビーアームズだった。

 

飛び出した直後にビームガトリングの銃身をかざし、銃口をリゼル・トーラス部隊に向けて射撃する。

 

 

 

ヴォドドゥルルルルルッ!!!ヴゥダドドドドルルルゥゥゥゥ!!!

 

ディギャガガガガァン!!! ダダドギャァン!!! ヴォゴゴゴバッ、ドドドギャガガァッッ!!!

 

 

 

AIの反応ラグの不意を突かれた4機のリゼル・トーラスが超高速のビーム弾丸に砕き散らされ爆砕。

 

ガンダムヘビーアームズはその勢いを継続させながらビームガトリングで周囲のリゼル・トーラスを連続で次々に撃破していく。

 

「これ以上は待てない。故に任意で出撃した。後は徹底的に破壊する」

 

高速射撃のビーム弾丸が宇宙空間を突き進む中、リゼル・トーラス達は散開し、3機編成の四小隊で展開しながらメガビームランチャーをガンダムヘビーアームズに食らわす。

 

回避判断をしたトロワだが、被弾は免れなかった。

 

胸部や脚部、スカートアーマーに被弾し、被弾部面で爆発を起こす。

 

「っ……その判断は正しいなっ……狙いもいい。ならば!!」

 

トロワはモニター上の敵機群を連続でロック・オンし、赤いカーソルでリゼル・トーラスを固め、トリガーを引いた。

 

 

 

ドドドドドドドドドシュゥウウウウウッッ!!!

 

 

ホーミングミサイルとマイクロミサイルが暴れるように解き放たれ、近距離付近にいたリゼル・トーラスを次々に撃破した。

 

だが、遠距離側の機体群はMDシステムを活かした精密射撃を開始し、ビームランチャーとビームキャノンでミサイル群の殆どを破壊していく。

 

「正しい判断だ―――くっ!!!」

 

ガンダムヘビーアームズは再び被弾し、更に集中するビーム群に追いやられる。

 

その最中の一方で、父親の死との直面を味わい、黙ったままうつむき続けていたカトルが顔を上げる。

 

カトルの瞳には泪に満たされていたいたが、狂気染みた悲しみの表情ではなかった。

 

「父上っ……姉様達っ……カトリーヌ……!!!これ以上の悲しみは増やさせないからっ…!!!」

 

カトルの眼差しにリンクするように、ガンダムサンドロックのカメラアイが発光。

 

そしてGNDエネルギーを発動させたヒートショーテルでゲートハッチを斬り開き飛ばし、宇宙へ飛び出した。

 

ラボコロニーから加速したガンダムサンドロックは、その直進軸上にいたリゼル・トーラスの部隊に飛び込む勢いで機体を攻め込ませる。

 

ビームキャノンの射撃をゴリ押しに受けながらも、被弾部を爆発させながらヒートショーテルの回転斬りを見舞う。

 

 

 

ディギガガギャアアアアン!!!

 

 

 

更に間髪を入れること無く、正面のリゼル・トーラスを叩き斬り潰し爆砕させた。

 

 

 

ガッギギャァアアアアアンッッ!!!

 

ドドガゴバァアアアアア!!!

 

 

 

その爆発を突き破り、ガンダムサンドロックは高速の立ち回りでヒートショーテルの逆刃でリゼル・トーラスを真っ二つに斬り上げた。

 

その直後、四方から受けるビーム射撃に耐えながら、次々に敵機に攻め込み、ヒートショーテルの斬擊を与え続ける。

 

軽快なまでの連続斬擊からヒートショーテルを大きく振りかぶり、交差斬擊で2機のリゼル・トーラスを同時に斬り潰してみせた。

 

 

 

ディッッギガァアアアアアアアンッッ!!!

 

グバァガゴバァアアアアアアアアアッッ!!!

 

 

 

「みんなで……みんなでこの状況を斬り開く!!!父上っ!!!今は武力でなきゃ闘えない!!!でもこの闘いは未来の武力無き世界の為に繋がっているはずなんだ!!!」

 

過酷な状況の中、カトルは先の未来を信じての行動を抗いというカタチで示そうとする。

 

デュオ、トロワ、オデル達も斬擊と射撃で抗いながら行動を続行。

 

幾多の流星弾雨をかわしては被弾し、かわしては被弾しながらリゼル・トーラスとリーオー先賢部隊をビームサイズで斬り裂き、ビームガトリングで撃ち砕き散らし、二挺アクセラレートライフルで破砕させていく。

 

ガンダム達の反撃により最前線で展開していたOZの陣形に乱れが生じ始め、オペレーターがディセットとダグザに報告をする。

 

「ガンダムが反撃に転じ始めました!!前線の陣形に乱れが生じています!!リゼル・トーラスも既に10機以上が破壊されている模様!!」

 

「多少の陣形の乱れは承知している!!相手はメテオ・ブレイクス・ヘルのガンダムだ!!!問題の範囲ではない!!リゼル・トーラスのテストやドーバーバスターの試射を兼ね、現状の戦闘を継続!!後にリゼル・トーラス部隊とリーオー部隊、艦隊による高出力ビーム砲火を命ずる!!」

 

「はっ!!」

 

「ECHOES部隊から入伝!!『内部市街制圧。シカシヒトノソンザイハカクニンデキズ。ヒキツヅキサイブヲソウサクス』」

 

電信の報告を聞いたダグザは、独特な眼光を放ちながらオペレーターにラボコロニーへの配慮を命じた。

 

「おそらくシェルターか、なにかしらの施設にいるはずだ……我が部隊が引かない以上、コロニーの破壊は適度に留めさせろ。内部から我々で破壊する」

 

「は!!」

 

現状維持の戦闘展開が続く中、アディンのユニット換装されたガンダムジェミナス、「ガンダムLOブラスター」がテイクオフしようとしていた。

 

計器類機器最終チェックと操作、セッティングを終えると、アディンはプルから貰ったがんだむじぇみなすのマスコットを握りしめ、強かな眼差しをメインモニターへ向ける。

 

アディンにはMO-5の状況の記憶が去来していた。

 

幾つものジェガンがビーム射撃を開始し、ネェル・アーガマがハイパーメガ粒子砲を放ち、強烈なビーム渦流で居住区区画が抉り飛ばされる。

 

「MO-5の二の舞だけは絶対にさせやしない!!!この状況、俺がひっくり返してキメてやるぜ!!!」

 

「アディン、頼んだわよ!!今のこの状況を打破出来るのはあなたの機体しか無いんだから!!!ゼロが使えれば話は違うんだけどね」

 

「イリアさん、そいつができてたら闘いは当に終わってるって!!!じゃあ、行くぜ!!!ガンダムLOブラスター、アディン・バーネット、出る!!!」

背部のライナー・オフェンス・ブースターから高出力のGNDエネルギーが噴射され、更に溜め込んだ加速エネルギーを解き放つ。

 

カタパルトから超加速して飛び出すガンダムLOブラスター。

 

加速しながらアクセラレートレールガンを撃ち放ち、リゼル・トーラスやリーオーを粉砕させ、敵陣営に自ら飛び込むように突き進んでいく。

 

一方、シェンロンガンダムはOZの別動隊と接触し、苛烈なまでの闘いを強いられようとしていた。

 

だが、五飛は不敵な笑みを絶やすこと無く、むしろ楽しむかのように挑もうとする。

 

「……面白い……俺は逃げも隠れもしない!!!正々堂々と闘い貫くまでだ!!!」

 

そう吐き捨てた五飛びは無謀なまでの闘いへと身を突っ込ませた。

 

そして、バルジを目指してヒイロのウィングガンダムリベイクが宇宙を突き進み続ける。

 

その最中、敵機接近のアラートが鳴り響く。

 

ヒイロはモニターの前方から迫る敵影群を拡大視認すると静かに呟く。

 

「敵影……クラップ級1、MS輸送船7……進行座標からしてラボコロニー攻撃の増援か……いずれにせよ任務の障壁に他ならない!!排除する!!」

ヒイロはOZの増援部隊を睨むと、ウィングガンダムリベイクを飛び込ませていった。

 

 

 

その最中、ガンダム攻撃部隊として控えていたアスクレプオス、ヴァイエイト、メリクリウス、ECHOES部隊、ガンダムデルタカイ各機種がラボコロニーを望む。

 

更に別動隊らしき異形のガンダムまでもが単機で宇宙を突き進んでいた。

 

バルジにて迎撃かつ鹵獲体勢を展開させるゼクスのOZ部隊。

 

宙域から見える地球をトールギスからゼクスは望む。

 

「奴は……来るか?!!否、来る!!!進行軌道上故にな!!!だが、任務は鹵獲……か……私は正々堂々と闘いたかった………ミスズっ!!!私の理性が騎士道なる精神に刷り替わった場合……OZを裏切るかもしれん……その時はリリーナを頼む!!私は裏切りと引き換えに勝利を掴む……!!!」

 

ゼクスはこれから起きうる覚悟をこの場にいないミスズに告げた。

 

宇宙世紀0096。

 

反乱のガンダム達とそれに取り巻かれた者達は、真の流転の運命に向かって吸い寄せられていた。

 

 

 

 

To Be Next Episode

 




次回予告

ウィングガンダムリベイクを駆り、バルジを目指しながらOZの増援部隊を駆逐するヒイロ。

理不尽な狂気を放つキルヴァと中東の空で激突する自らを呼び戻したロニ。

ラボコロニーに迫る新鋭MD部隊と交戦し続けるカトル、デュオ、トロワ、オデル。

各々が過酷な戦場を駆け抜ける。

その最中、アディンは新たな力を換装したガンダムLOブラスターで出撃する。

過酷な運命に抗うかのごとく、怒濤の破壊を展開させ、新たな兆しさえ予感させる。

一方、孤軍奮闘する五飛に謎のガンダムが迫り、疲弊したシェンロンガンダムを圧倒する。

その謎のガンダムとはOZと契約した傭兵のガンダムだった。

そしてカトル達にもガンダムを越えるMS達が迫り、遂には機体のシステムで狂気に駈られたリディのガンダムデルタカイまでもが襲う。

運命は更なる過酷を叩きつける。


次回、新機動闘争記 ガンダムW LIBERTY

エピソード25 「加速する運命」


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