新機動闘争記ガンダムW LIBERTY   作:さじたりうす

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エピソード22「サイレント・ヴォイス」

オペレーション・プレアデス発動。

 

それはかつての歴史に類を見ない、地球圏規模のクーデターだった。

 

連邦と背中合わせに存在していた秘密結社・OZ。

 

彼らが今、歴史の表舞台に立ち、地球連邦政府の支配下にあった情勢が変革させようとしていた。

 

地球圏各地における大規模な攻防。

 

否、電撃的奇襲であったがゆえに、ほぼ蹂躙制圧に等しかった。

 

世界各地の地球連邦軍基地においてそれらは巻き起こる。

 

「オペレーション発動!!プレアデスは輝いた!!!各機、全ての連邦戦力を掃討せよ!!!この戦闘は宇宙世紀を変革させる戦いである!!!」

 

リーオー部隊とエアリーズ部隊とが連携し、陸と空からの攻撃を慣行。

 

MS同士の直接戦闘や格納庫への攻撃で進撃し、その後方よりリーオーキャノンによる援護射撃が叩きこまれていく。

 

近距離からのビームマシンガン、上空からのレーザーチェーンガン、後方からのビームキャノンとドーバーガン。

 

それらの攻撃は、重圧的に連邦サイドを押し潰していく。

 

政権交代は火を見るよりも明らかであった。

 

だが、連邦特殊部隊・ECHOESやベントナ達のような連邦関係者、一部の連邦兵士は既にOZと盟約と結んでおり、彼等もまたクーデターを幇助し、かつての同胞に銃を向ける。

 

「キヒヒヒ!!!駆逐、駆逐、駆逐ぅ!!!」

 

キルヴァ駆るΞガンダムによる蹂躙が、中東の地球連邦軍基地に牙を向けていた。

 

ファンネルミサイルを飛び交わせながら縦横無尽にジムⅢやジムⅡ、ネモ部隊を破壊させながらビームバスターの射撃を押し進める。

 

キルヴァは快楽的なものを得るかのような狂気の笑みを浮かべ、連邦の機体群や施設を容赦なく破壊していく。

 

「たまらねー!!!たまらねー!!!キヒャヒャヒャヒャー!!!エクスターミネート!!!!」

 

狂気的に開眼しながら更なるファンネルミサイルを追加発射し、更に多くのMS達を破壊する。

 

その最中、四方からΞガンダムに攻め混むジェガン、スタークジェガン、リゼルの部隊。

 

いずれの機種も三小隊分の機体群だ。

 

持てる火力を放っての捨て身の特攻だった。

 

だが、キルヴァはこれ等をわざと受け止めた。

 

Ξガンダムを包む爆発。

 

常識的に破壊に至る攻撃量に、誰もが攻撃の手を緩めた。

 

だが、嘲笑うようにオールレンジからファンネルミサイルが次々と四方の機体群の一部に突き刺さり、弾頭諸とも爆砕する。

 

爆発を振り払いながらΞガンダムはほぼ無傷の姿を曝した。

 

キルヴァはニヤリと笑いながらビームバスターをかざし、次々と四方へ高出力ビームを叩き込み、爆砕の限りを与える。

 

「ひゃっはー!!!シネシネシネ死ねぇえええ!!!死ね死ね死ね死ねー死ねー!!!キヒャヒャヒャヒャー……シャアア!!!!」

 

そして、スタークジェガンの小隊に襲いかかり、メガビームサーベルのを斬撃を狂ったように与えた。

 

斬撃たる斬撃を与えられたスタークジェガン隊は、爆砕の果てに藻屑と化した。

 

キルヴァはその後、施設を限り無いまでに破壊し、文字通り一人残らず壊滅させた。

 

炎立ち込める基地の上空に浮遊するΞガンダムの中で、キルヴァは任務後の情事ばかりを考えていた。

 

「キヒヒ……たまんねー……またロニと交わるのが楽しみだ……!!!さーて、次々に殺し回りますかぁっ!!!」

 

一方のロニはペーネロペーで中東エリアで展開していた連邦軍部隊を蹂躙して回る。

 

ロニも空中でビームバスターを繰り返し与え続けながら、ファンネルミサイルを飛び交わせて破壊の限りを与える。

 

だが、キルヴァのような積極的な破壊ではないように見えていた。

 

「同胞に……同胞に……攻撃……くっ!!!」

 

確かにロニはジムⅢやジムⅡ、ネモといった機体群を破壊していく。

 

だが、破壊する毎に躊躇が重なる。

 

その中で、ジムⅢやジムⅡ、ネモの部隊か特攻の勢いで迫る。

 

「く、来るな!!!来るなぁ……!!!」

 

ロニは破れかぶれにファンネルミサイルを飛び交わせ、嵐のごとくジムⅢ部隊達を破砕させていく。

 

更にロニは苦悩を重ねる。

 

「ぁあぁっ……くっ!!!これ以上はぁ!!!!」

 

ロニの乱れた精神に呼応するようにファンネルミサイルは狂ったように飛び交い、周囲のMSをOZ部隊諸とも破壊してしまった。

 

「OZがっ……OZが狂わせる!!!」

 

ロニは突如としてOZ部隊に襲いかかり、メガビームサーベルでエアリーズ部隊を叩き斬って回り始めた。

 

轟々たる斬撃がエアリーズを容易く破壊し、爆砕させていく。

 

「な……!?!連邦からの亡命機が攻撃を?!?」

 

「くそっ、これだから強化人間は……がぁあああ!?!」

 

「お前達がっ!!!お前達がぁあああ!!!!」

 

メガビームサーベルの乱舞でかき乱されるロニの精神の中で更に歪みが生じていく。

 

本来のロニの記憶にあったジオン残存の記憶もフラッシュバックし始めた。

 

ロニの精神は更に揺さぶられ、エアリーズを一気に5機を薙ぎ払うと、ペーネロペーを加速させながら狂ったように離脱させた。

 

「あああぁあああっ!!!」

 

そして、ロニはペーネロペーを近隣のアラブ国に突入していく。

 

奇しくも彼女の故郷だった。

 

それは更にロニの精神を歪ませた。

 

「あっ―――がぁあああっ!!!ここは!?!ここはぁ!?!頭がっ―――くぅっ―――!!!」

 

不安定な軌道を描きながらペーネロペーは、アラブの街に墜落していった。

 

 

 

オペレーション・プレアデスが展開される状況下の中、特に連邦の拠点であるルナ2やコンペイ島、グリプス2、そして、ネオジオンと共に来たアクシズ攻防エリアでは激戦となっていた。

 

最早その光景は戦争そのものだ。

 

特にアクシズに関しては地球への落下を絶対阻止させるべくOZは徹底して部隊を派遣していた。

 

OZ部隊のリーオーとリゼル・トーラスの混合部隊が一斉に火力を連邦サイドへぶつけていく。

 

バスターランチャーとメガビームランチャーの火力応酬で攻め混み、量産機の火力とは言いがたいまでにジェガンやリゼルクラスのMS達が圧倒され、砕け散っていく。

 

またあるエリアでは、ECHOES部隊のジェスタやジェガン、ロトの部隊が奇襲をしかけ、ゲリラ戦法で連邦のMS達を圧倒する。

 

更にこの日の為に、ECHOES全ての機体に疑似GNDドライヴを採用し、ガンダム然とした機動力と火力で蹂躙を実現させていた。

 

その情勢の最中、リディは新たな機体ガンダムデルタカイで駆け抜け、アクシズ攻防に介入するOZ部隊に通信をとっていた。

 

「こちら、元・地球連邦軍リディ・マーセナス、並びにミヒロ・オイワッケン!!ゼクス特佐からの亡命入隊了承を得ている!!体制立て直しのために貴艦に着艦許可を得たい!!亡命入隊証明書情報、送る!!!」

 

証明書情報を送信し、直ぐに着艦許可を得るに至る。

 

ゼクスのお墨付きは心強かった。

 

「情報を確認した。なお貴公達の階級は特尉とする。リディ・マーセナス、ミヒロ・オイワッケン両特尉の着艦を許可する」

 

「了解!!ミヒロ……いきなり激戦だ。これから着艦するOZの高速戦闘艦にいてくれ」

 

「うん。でもそうするしかないでしょ。正直、備えていたって言っても右も左もわかんないし……」

「まぁ……な」

 

リディはミヒロを高速戦闘艦に着任させて直ぐに出撃していく。

 

「さぁ……ガンダムデルタカイ……OZとしての初陣だ……お前の力、試させてもらうぞ!!!」

 

リディは、ビームや砲弾が飛び交うアクシズ攻防宙域を目指し、ガンダムデルタカイを戦火に飛び込ませていった。

 

ミヒロは高速戦闘艦の待機室からそのガンダムデルタカイの姿を、窓に手をかざして見守った。

 

リディは機体を突っ込ませ、最近までは同胞だった連邦サイドのMS群に機首部のシールドバスターソードで砕き散らす。

 

その惰性に任せ、機体を高速で変形させると、主兵装のメガバスターを構え放つ。

 

安定された高出力ビーム渦流を連発させ、ギラズールやバウ、ドライセン、ガ・ゾウム、ジムⅢ、ジェガン

を破壊する。

 

更にシールドバスターソードに装備されたハイメガカノンを撃ち飛ばす。

 

ず太い高出力ビームが一直線に放たれ、ジェガンやリゼル、ギラドーガ、ガザD、リゼルを吹き飛ばして見せた。

 

リディは、自らがコントロールしているとはいえ、奮うその火力に次元の違いさえも感じさせられていた。

 

「これが……デルタカイ……!!!」

 

撃ち飛ばすメガバスターのビーム渦流は、出力は規定値に押さえられているが、ウィングガンダムのバスターライフル然としたビームと破壊力有する。

 

リディはメガバスターで射撃しながらネオジオンサイドに機体を突っ込ませた。

 

そしてドーベンウルフ目掛け、シールドバスターソードを突き刺す。

 

惰性に加えたガンダニュウム合金性のシールドバスターソードは容易くドーベンウルフを砕き散らす。

 

ドーベンウルフが刺さったままハイメガカノンを撃ち飛ばした。

 

爆砕するドーベンウルフから飛び出したガンダムデルタカイは、二つの主兵装を駆使して、更なる攻撃を加えた。

 

ガンダムデルタカイの攻撃は一気に爆発の華を咲き乱れさせていく。

 

「凄まじい……!!!これはまるで……メテオ・ブレイクス・ヘルのガンダムだ!!!」

 

それもそのはずである。

 

ガンダムデルタカイはドクターJ達の息がかかった機体であり、中身は完全なまでにヒイロ達のガンダムと同等のガンダムとなっていた。

 

無論、装甲はガンダニュム合金・GND装甲であり、ジェネレータもGNDドライヴである。

 

ガンダムデルタカイの凄まじい火力が連邦サイドとネオジオンサイドのMS群を破砕させていった。

 

その光景を遠方の宙域からフロンタル達が監視していた。

 

その行為はフロンタルが言うコロニー共栄圏理念が地球を切り捨てるかのように、同胞のネオジオンを切り捨てているかのような行為だった。

 

「彼らには気の毒ではあるが、相手がOZでは致し方無い……しかも地球圏規模のクーデターだそうだ。事実上ネオジオンは壊滅したに等しい」

 

「そんな……では、我々は!?!」

 

「アンジェロ、案ずる事はない。我々は事実上ネオジオンの核たるものだ。我々が生きている限り復活は成る。今は偲びがたき時を耐える時だ。体制を立て直すと言ったはずだ」

 

「はっ!!」

 

事実、フロンタル曰く、地球圏で展開していたフロンタル派と反フロンタル派の両ネオジオン勢力は、ここへ来て展開されたOZのオペレーション・プレアデスにより、壊滅に貧していた。

 

MD部隊は、ネオジオンを含めたOZ所属以外の全てのMSを標的にしていた。

 

徹底してOZによる地球圏掌握を図るためだ。

 

宇宙の各地でネオジオンのMS部隊や艦隊がリゼル・トーラスの駆逐対照にされ、次々と破砕されていった。

 

「我々しばらく歴史の表舞台から退き、あるものを探す」

 

「あるもの……それは一体!??」

 

「ラプラスの箱……と呼ばれるモノだ。連邦が崩壊する今、無意味にも思えるがいずれOZも動くやも知れん」

 

ラプラスの箱と呼ばれる存在にフロンタルは意表を動かし、それをてにいる行動をはじめていた。

 

 

グリプス2宙域

 

 

 

ジェガン、スタークジェガン、リゼル、ジムⅢの部隊が総戦力で駆け抜け、防戦的な射撃を慣行する。

 

そこに高出力ビーム群が撃ち込まれ、一気にその機体群が爆砕された。

 

リゼル・トーラスのオートマチックな戦闘方式による射撃だ。

 

放たれるメガビームランチャーのビーム群は、寸分の狂いなく、連邦のMS達を破壊していく。

 

「なんだ、この黒いリゼルの機動力は!?!有り得ん!!!」

 

「攻撃、全く中りません!!!逆に黒いリゼルは凄まじい命中精度です!!!」

 

「攻めるに他ならん!!スタークジェガン隊と連携して撃破する!!!」

 

ジェガン部隊もまたスタークジェガン部隊と連携して反撃に出るが、ビームやミサイル群は空しくリゼル・トーラスに躱されていった。

 

彼等もリゼル・トーラスに更なる反撃を重ねようとするが、逆にリゼルトーラスの高出力ビームが一斉に放たれ、ジェガン部隊の機体群へと注がれる。

 

「ダメです!!やはり全く中りません……がぁあああっ!!!」

 

「一体……一体なんなんなのだ!?!このリゼル共……ぁがぁあっ!!!」

 

「くそっ、くそっ、くそっ、くっ……ごはぁっう!!!」

 

一撃で各々の装甲が抉り吹き飛ばされ、爆砕。

 

演算処理の判断で、リゼル・トーラス部隊は更なるビームを放ち、爆発の華を拡大していった。

 

鮮やかなまでの爆発が生まれ消えるその向こうより、3機の高速機影が接近する。

 

それはアスクレプオス、メリクリウス、ヴァイエイトであった。

 

「MDでおおよその突破口が出来上がった。コロニーレーザーが放たれる前に一気にいくぞ!!!コントロール艦を叩く!!!」

 

「了解デース!!レッドメリクリウス、アレックス行きやーす!!!」

 

「粛正!!!粛正!!!ブルーエンジェル、ミューラ!!!粛正開始!!!」

ヴァイエイトのビームカノンが撃ち放たれ、ビーム渦流がジェガンやリゼル、ジムⅢの部隊をかき消して突き進む。

 

ミューラは狂喜の笑みを浮かべ、ビームカノンを何度も射撃し続ける。

 

それを皮切り合図にアスクレプオスとメリクリウスが突撃し、パイソンビームランチャーとビームガンを射撃しながら次々とジムⅢやジェガンの機体群を簡単に破壊していく。

 

その間にヴァイエイトは次のビーム渦流を撃ち放ち、

GNDエネルギーのビームの脅威を連邦サイドにあたえながらクラップ級を3隻を轟沈。

 

3機のデタラメにも思えるようなビーム射撃が、展開するジムⅢを、ジェガンを、スタークジェガンを、リゼルを無造作に破壊して攻め込んでいく。

 

「俺達は運がいい!!後ろには次世代の抑止力が控えている!!!」

 

トラントはパイソンクローでジェガンを砕き散らしながら誇らしげにそう言った。

 

アレックスはクラッシュシールドでリゼルとスタークジェガン部隊を斬り裂き続けながらトラントに問う。

 

「なんすか!?!次世代って!?!」

 

ミューラもまたビームカノンを振り回しながら問う。

 

何気なしに攻撃しているミューラであるが、その破壊規模はこれまでの戦闘の常識を逸脱させるほどのものだ。

 

ジェガン、リゼル、ジムⅢ、クラップ級艦と言った連邦の主戦力部隊が次々にビーム渦流に吹き飛ばされ爆砕していく。

 

ミューラは任務うんぬんよりも破壊そのものを楽しんでいた。

 

「新兵器かなんかすか!?!それっ……てぇ!!!ひゃっほー!!!」

 

「なんだ、知らなかったのか?俺の兄貴が設計したOZ宇宙軍・宇宙要塞バルジさ。まぁ……グリプス2はっ……払い箱ってわけだ」

スタークジェガンの胸部を破砕しながらトラントは不敵に笑った。

 

 

 

北欧圏・サンクキングダム

 

 

 

オペレーション・プレアデスが発動し、ゼクスは運命的かつ必然的な戦いに身を投じていた。

 

「おぉおおお!!!」

 

亡国の奪還に燃えるゼクスは、いつになく熱く声を上げて攻め混みをかける。

 

乱射とも思えるようなドーバーガンの射撃が唸る。

 

だが、その射撃は狂いなくリゼルやアンクシャを次々と撃ち墜としていく。

 

サンクキングダムの空を翔るトールギスの様は、まさしくゼクスの異名・ライトニング・バロンであった。

 

ミスズもリゼル・トーラスを駆り、エアリーズ部隊を率いて攻め混む。

 

「亡国の奪還だ……いつになく熱いなゼクス……エアリーズ各機!!このまま進撃する!!」

 

リゼル・トーラスの放つメガビームランチャーがリゼル部隊を個々に吹き飛ばす。

 

それに続くように、エアリーズ部隊がレーザーチェーンガンと同時にミサイルランチャーを放つ。

 

それらの攻撃群は瞬く間にリゼル部隊とアンクシャ部隊を数で圧倒した。

 

「私に居間こそ……勝利を見せてくれ!!!トールギス!!!」

 

ゼクスの気迫に呼応するようにドーバーガンを駆使して、リゼル部隊やアンクシャ部隊を攻撃するトールギス。

 

ドーバーガンの凄まじい破壊力で、リゼルやアンクシャの機体群は激しく爆砕して砕け散る。

 

更に滑空しながらガンキャノンDとガンタンクⅡ、ネモⅢの砲撃部隊を砕き散らして駆け抜ける。

 

「サンクキングダム……我が亡国……今解放するぞ!!!」

 

砲撃部隊を更なるドーバーガンの射撃で破壊すると滑空しながら再び舞い上がり、リゼル部隊に突貫。

 

次々にドーバーガンで砕き散らし続け、ビームサーベルを取り出す。

 

高速で斬撃を食らわせ、次々に斬りかかった。

 

凄まじい速さの斬撃にリゼル部隊とアンクシャ部隊は瞬く間に爆砕し、爆発光と化していった。

 

そして、もう1機のトールギス、トールギスⅢの機体も駆け抜ける。

 

総帥たるトレーズが直々に最前線で戦っていた。

 

無論、奮う武装はビームソードである。

 

卓越した剣捌きの高速突きがリゼルをズタズタに破砕させる。

 

「この戦いは、これからの歴史の要となる」

 

爆発するリゼルから別のリゼルへ加速し、すれ違い際に斬り払い、また加速を乗せて次のリゼルを斬り断つ。

 

「宇宙世紀の歴史は……ここで流れを変えねばならない……」

 

更に加速を乗せて高速軌道でリゼル部隊へ斬り込むトールギスⅢ。

 

ビームソードの斬撃の乱舞に加え、ヒートロッドによる裂断がリゼルやアンクシャを断ち斬る。

 

ガンダニュウム性のムチが高速の斬撃を実現させる兵器。

 

トールギスⅢの斬撃主体の補助兵装として非常に利に叶っていた。

 

立て一直線に唐竹斬撃をアンクシャに食らわし、その爆発から飛び立つように加速上昇すると、ヒートロッドで2機のリゼルを斬り断つトールギスⅢ。

 

そして、更なる回転をかけた薙斬撃が、アンクシャを斬り飛ばした。

 

「ゼクス……君の価値ある戦いに貢献できる事が誇りに思う……」

 

トールギスⅢに斬り込んできた1機のアンクシャのビームサーベルの斬撃を捌き、華麗な連続突きを与え爆砕させた。

 

その爆発を越えて一気に滑空すると、トールギスⅢは地上から砲撃弾幕を展開させていたガンタンクⅡやロト、ネモⅢの機体群にヒートロッドで襲いかかる。

 

電光石火のごとき猛進で機体群を次々に切断させていく。

 

地上砲撃部隊は次々と爆砕していく。

 

そして、再び舞い上がる際にガンタンクⅡをビームソードで切断させた。

 

更に空中から攻撃をかけてきたリゼル部隊に突撃し、ビームソードの凄まじくも華麗な剣捌きで斬撃し続けた。

 

「宇宙世紀はここから変革する……故にこの戦いは地球圏の人々が刮目せねばならない………ディセット、現在状況はどうか?」

 

トレーズは撃破しきると、通信をディセットに繋ぎ現在状況を聞き出す。

 

「はっ現在、地球規模で既に八割の制圧が、宇宙では六割を掌握している状況です!!」

 

「そうか。更なる健闘を祈る。引き続き指揮を頼む」

 

「は!!サンクキングダムはいかなる状況で?」

 

「直に終わる……」

 

そう言いながらサンクキングダム城に突っ込むトールギスを視線で追った。

 

「おぉおおおお!!!」

 

モニター上に指令のダイゴ・オネゲルが映り、ゼクスは視線を決して離さなかった。

 

「トールギス……!!!ゼクスなのかぁああっっ!?!?時代!!!時代なのだぁああああっ、時代が私―――!!!」

 

「ダイゴ・オネゲルっっ―――覚悟!!!」

 

次の瞬間、ビームサーベルを突き立てたトールギスが、オネゲルのいた指令室諸ともサンクキングダム城に突っ込み、爆砕破壊を巻き起こした。

 

 

 

L1コロニー群のとあるコロニーの連邦軍基地。

 

基地内において、ECHOES部隊の無慈悲なクーデターが展開されていた。

 

ECHOES仕様のジェガン、ロト、そして、ジェスタが展開し、数分前まで同胞であった全ての連邦関係者を殺戮する。

 

ECHOES仕様のMSには全て疑似GNDドライヴが搭載されており、ガンダム的な脅威を示していた。

 

ECHOESジェガンのビームライフル、ECHOESロトのビームキャノン、ECHOESジェスタのビームライフルが一気に連邦仕様のMS達を駆逐していく。

 

管制塔、格納庫、宿舎、男女問わず兵士達への殺戮が続く。

 

出撃するジェガンやジムⅢであるが、直ぐ様ビームに撃ち抜かれ爆砕する。

 

1機のスタークジェガンがビームバズーカを放って突貫する。

 

不意を突かれ、ECHOESジェガンとECHOESロトが撃破された。

 

だが、次の瞬間にビームサーベルを抜いたECHOESジェスタが斬り込み、スタークジェガンを容易く切断させた。

 

外においてもECHOES部隊の蹂躙が展開。

 

連邦サイドのMSが次々にECHOESジェスタとECHOESジェガンにより撃破されていった。

 

「ダグザ中佐!!基地を掃討・制圧完了しました!!」

 

「了解した。後は指定されたエリアでOZと合流する!!」

 

 

 

地球圏規模で発動されたOZによるオペレーション・プレアデス。

 

ルナ2やコンペイ島においても大規模な艦隊戦が展開され、ビーム射撃やミサイル射撃を飛び交わせる激戦を極めさせる。

 

そして、どの戦場において共通することは、MDリゼル・トーラスとリーオー部隊の火力、そして電撃的な奇襲によりOZが優勢であることであった。

 

脅威的なる絶対的なMDの戦闘力。

 

火力強化されたリーオー。

 

疑似GNDドライヴを搭載したECHOESのMS部隊。

 

リゼル・トーラスと強化リーオー部隊、ECHOES部隊が、連邦軍を地球圏規模で壊滅へ追い込むのは最早時間の問題であった。

 

この状況は地球圏規模で報道され、全てのメディアが取り上げた。

 

L4コロニー群にあるウィナー家のコロニーに身を隠すデュオ達もテレビでこの状況を見ていた。

 

「やりやがったな……OZの連中!!!」

 

「あぁ。間違いなく歴史が変わるな」

 

「くそっ!!!皮肉なもんだぜ!!!俺達が初めにやろうとしていた連邦潰しを最終標的のOZにやられちまうなんてよ!!!今すぐぶっ潰しにかかりたいぜ!!!」

 

「あぁ。だが、今は堪え忍ぶべきだ。俺達は万全ではない」

 

「わかっちゃいるが……やりきれねぇぜ!!!カトルもあぁだしよ!!!」

 

「カトルは優しく純粋すぎる反面、えげつない現実にもろい……だが、だからこそあいつは今を越えるべきなんだ。無論、俺達もな。」

 

「……あんときは俺も頭に血が上ってエキサイトしちまった……今考えりゃ、えげつない現実の上に俺達の組織も崩壊しちまったんだ。カトルがヒスるのも無理もねー……っくそっ、突破口はどこだ!?!」

 

「少なくとも今動くのは明らかに不利になる……耐えるしかない……俺達のガンダムとな」

 

ガンダムデスサイズ、ガンダムヘビーアームズ、ガンダムサンドロックの3機がウィナー家のコロニーラボに格納されていた。

 

修復は済んではいるが、この状況下の為に安易に出撃できずにいた。

 

その奥側にはウィングガンダムの改良機と思われる機体も格納されている。

 

ウィングガンダムリベイク。

 

ウィングガンダム自爆の一報を受け、ウィナー家のラボにて建造されていたのだ。

 

更にその奥には厳重なハッチが確認できた。

 

そのハッチには「ZERO」と表記されている。

 

カトルが使用を試みていた禁断のガンダムが奥に眠っているのだ。

 

そしてカトルは、その疲弊した心身の療養をしており、姉に付き添われながらラボ内を散歩を踏まえて廻っていた。

 

ロニを奪われ、汚れた現実と自分達が追い込まれた今の状況に人格を一時的に崩壊したカトルだったが、今現在は安定を取り戻しているようでもあった。

 

カトルをそのまま女性にし、髪をのばした感じのメガネの姉・エナ・ラバーバ・ウィナーと共に歩く。

 

彼女は数多くいるカトルの姉の一人であった。

 

「あなたは背負い過ぎてきた……今はここでしっかり休みなさい。何度も言ってるけど」

 

「うん……ありがとう、姉さん」

 

「……来たときに比べ、大分落ち着けてきたわね。一時はどうなるかと本当に気が気じゃなかった。そういえばカトル、ZERO……使おうとしたんだって?」

 

「うん。それしかロニを何とかする方法が思いつかなかったんだ。絶対な力しか……」

 

するとエナは、立ち止まってカトルの両肩に手を添えた。

 

「カトル。あれは絶対に乗ってはだめ。ヒイロ君と五飛君以外は適性が認められていないシステムなの……とても危険なの……」

 

「でも……ロニを、ロニを奪ったガンダムが強すぎるんだ!!!同時に憎しみも考えただけで溢れてしまうよ……!!!」

 

「だからこそ尚更危険なの!!!他の方法を考えて!!!でなきゃ、カトルはっ……カトルはっ……!!!」

 

涙ぐんできたエナは、帰ってきた直後に発狂しながら狂ってしまっていた変わり果てたカトルを思い出していた。

 

無論、姉として弟のそんな姿は見たくはない。

 

更にエナはカトルを抱き寄せて説得した。

 

「もっと自分とサンドロックを信じて!!あなたは強いコなんだから!!」

 

「姉さん……!!!」

 

 

 

カトルがエナに抱き寄せられている頃、崩壊したサンクキングダム城の地下で奇しくもまた一つの兄妹が抱き合っていた。

 

仮面を外したゼクスと実の妹・リリーナ・ピースクラフトである。

 

彼女は長きに渡り、連邦軍に幽閉されていたのだ。

 

ゼクスは感極まる腕でリリーナを抱き締め、謝罪する。

 

「長年……待たせてしまって本当にすまなかった!!!リリーナ!!!よくぞ無事でいてくれた!!!」

 

「ミリアルドお兄様……!!!」

 

「もう連邦に幽閉されることはない……!!!これからはOZを通し、国を再建させていく。本当に一人にしてすまなかった……」

 

妹との再会を果たしたゼクスを陰から見守るミスズの姿もあった。

 

腕組みをしながら笑みを浮かべる。

 

一方のリリーナはゼクスの言葉に首を振り、後ろに手をかざした。

 

「いいえ……一人ではありません、お兄様。ボディーガードの彼と出会い、ずっと私(わたくし)を守って下さいました」

 

ゼクスはその先に視線を送ると、目を疑った。

 

「な―――!??」

 

そこにはヒイロと瓜二つの少年がいたのだ。

 

「バカな……!!?ヒイロ・ユイ……!!!!」

 

ゼクスは驚愕と疑心と悦びを混ぜ合わせた感覚にとらわれた。

 

 

 

ダブリン近辺上空

 

 

 

世界が混迷に混迷を重ねる中、ヒイロ達はダカール基地からクシャトリヤを奪還し、遂にプルが示したマリーダのいる場所に迫る。

奇しくもそこはかつて、もう一人のプルがプルツーと

殺しあってしまった場所であった。

 

今生きるプルもこの場所にただならない感覚を感じていた。

 

「っ―――!!!なんかこの場所……ものすごく意味深い感じがするっ―――でもっ、同時に悲しい……なんで!??」

 

同じプル同士が共鳴するどころか死闘をしてしまった悲劇の地。

 

出撃前から様子がおかしくなっていたプルを気遣い、アディンはキュベレイMk-Ⅱへと通信を入れた。

 

「プル!!出撃前だけど大丈夫か?いや、なんかプルがマリーダがいるって言ってた場所に近づくにつれて様子が変わってきたからよー……」

 

何気に照れくさそうにして言うアディンに、プルは綻んだ。

 

「ありがとう、アディン。あたし自身は大丈夫だよ……ただ、悲しいんだ」

 

「悲しい!?」

 

「うん……あと、嫌な感じがしてならないんだよ」

 

「嫌な感じ……か。ニュータイプじゃなきゃわかんねー感覚なんだろな。とにかく無理に出撃するなよ。できれば俺達で安全確保してから出撃してくれよ、プル!!」

 

「わかった。マリーダが帰ってきたら宇宙へ帰るんだよね?」

 

「あぁ!!世間はクリスマス……どころじゃねーけどぱぁっと何か帰って来た記念やってやりてーな!!」

 

「クリスマスか……あたし、クリスマス初めてかも」

 

「そっか……プル、ずっとオーガスタの施設にいたんだもんな。しゃっ!!決定!!宇宙戻ったらクリパしてやんよ!!だから絶対に成功させてやるぜ!!!」

 

アディンのその言葉達にプルは微笑んだ。

 

「うん♪」

 

一方でヒイロは自身が駈る機体の最終チェックを進める。

 

「全ての武装良好。機体システムチェック異常なし……」

 

ヒイロはモニターに映るダブリンのデータに目をやり、迫るマリーダとの距離を想う。

 

「マリーダ……」

 

 

 

その頃、マリーダはダブリンのコロニー落とし跡において同じプルの遺伝子を持った少女達と模擬戦闘をしていた。

 

だが、模擬戦とは名ばかりの実質の殺し合いだった。

 

アームドファングのビームサーベルを発動させながら、滅多斬りに斬撃しては取り付き、滅多斬りにしては取り付いていく。

 

斬撃された3機の量産型キュベレイが次々に爆発。

 

次の瞬間には、次に取り付いた量産型キュベレイのレフトアームを掴み砕きながらもぎ取る。

 

そして、胸部にアームドバスターを突き刺し、零距離でビーム渦流を撃ち放った。

 

その量産型キュベレイはかき消されるように機体を吹き飛ばされて爆砕する。

 

プルトゥエルブはその行為に違和感を示す事無く、憎悪を押し出してアームドバスターを放つ操作をした。

 

「あぁあああぁっ!!!ニュータイプはっ敵ぃ!!!」

 

プルトゥエルブはベントナ達からの洗脳のままに量産型キュベレイを撃破していく。

 

量産型キュベレイもまたファンネルとビームキャノンで攻撃を仕掛けるが、Iフィールドによってビームが相殺される。

 

「あああぁっ!!!!死ねっっ!!!!」

 

次の瞬間、攻め込んできた量産型キュベレイの胸部を、振るいかざしたアームドファングが砕き潰す。

 

更にアームドバスターをかざし、向かい来る量産型キュベレイ達に撃ち放つ。

 

直進するビーム渦流を躱す量産型キュベレイ達であるが、掠めたエネルギー奔流により撃破されていった。

 

「ニュータイプはっ敵!!!」

 

プルトゥエルブは、量産型キュベレイを睨み付けると、アームドバスターを連発して放ち続け、更に量産型キュベレイを破壊する。

 

ガンダムバンシィの戦闘力は、ユニコーンガンダムの兄弟機だけあり、メテオ・ブレイクス・ヘルのガンダムに迫る。

 

アームドバスターを放ち続けたガンダムバンシィに対し、距離を置いた量産型キュベレイ達は一斉にファンネルを展開させた。

 

無数のファンネルが、ガンダムバンシィを囲むように飛び交い、一斉にビーム射撃を放つ。

 

だが、装備されたIフィールドが無限にビームを遮断。

 

更にプルトゥエルブは憎悪的な感情を増幅させ、NT-Dの真骨頂であるファンネルジャックを実行。

 

飛び交っていたファンネルが、量産型キュベレイ達に牙を向け、一斉にビーム射撃を連続で放ち始めた。

 

それは次々に量産型キュベレイを撃ち抜き、破裂させるかのように機体を爆破させていく。

 

「いやあぁ―――!!!」

 

「あぁあああっっ―――!!!」

 

「うぁあああぁ……いやっ―――!!!」

 

「きゃああああ!!!」

 

「くぁああうっ!!!」

 

「うぐぅあっ―――!!!」

 

その瞬間、今までに聞こえてこなかったプルクローン達の悲鳴、断末魔が幾つも重なってプルトゥエルブの脳裏に入り込んできた。

 

「な!!?こ、声……声がっ……うぐぅっ……!!!おのれっ!!!惑わすなぁ!!!!」

 

プルトゥエルブは、入り込むプルクローン達の声をねじ伏せるようにガンダムバンシィを残り3機の量産型キュベレイ達に突撃させる。

 

爪を立たせたアームドファングをグワッとかざし、一気に量産型キュベレイの胸部へ叩き込む。

 

胸部をひしゃげさせられて吹っ飛ぶ量産型キュベレイ。

 

「し……死にたく……ない」

 

「うぐぅっ!!!黙れ!!!!」

 

プルトゥエルブの感情に、ジャックしたファンネルが反応し、吹っ飛ばした量産型キュベレイをビームで蜂の巣にし破砕する。

 

「きゃああああっ!!!」

 

「あぐっ―――黙れと言ってるっっ!!!」

 

更に量産型キュベレイに襲いかかったガンダムバンシィは、アームドファングで胸部を握り掴むと、そのパワーで握り潰しバキバキに破壊。

 

止めにアームドファングセンター部のビームサーベルを発動させ、量産型キュベレイのコックピットを焼き貫く。

 

「いやぁああああ―――!!!」

 

プルクローンの叫びをプルトゥエルブに訴え聞かせるように量産型キュベレイが爆発四散した。

 

ガルダ内ではベントナがそのデータ計測し、更にマーサが監視する。

 

「素晴らしいバンシィの戦闘データです!!これはいいデータが……!!!ユニコーンよりいいデータが取れましたよ!!!」

 

「あ、そう……ふふふっ」

 

「ミズ・マーサ?」

 

「戦闘データうんぬんより……同じプルシリーズ同士の殺し合いがたまらないわ……特に同じプルに手をかけた罪を重ね続ける様がね!!!」

 

「そ、それは、それは!!!お気に召されたようでなにより!!!プルクローンはまだまだ作れます!!!」

 

「言い変えれば……いえ、別の観点から見ると……プルトゥエルブを支配し、使役している事が恍惚なのよ!!!あはははっ!!!!さぁ、あと少し、とっとと殺してしまいなさい!!!」

 

マーサは最早当初の目的であり、自らが掲げていた「オペレーション・プレアデス前にユニコーンガンダムを破壊する」という任務を忘れ、私欲の限りにとらわれていた。

 

今はマリーダという先の大戦の強化人間を我が物にし、彼女を使役する事が何よりの悦びとなっていた。

 

マーサは不敵に嗤う。

 

「はい……マスター……あうぐぅっ!?!ダメ……気持ちがっ、悪い!!!できない!!!声がっ……!!!」

 

「プルトゥエルブ?何今さら躊躇しているの?ワケわからない言葉はいらないマスター命令よ!!!」

 

「ぅううっ……くぁああうあっ……うぁあああぁあ!!!」

 

錯乱し始めたプルトゥエルブは、残りの量産型キュベレイを次々に斬り裂き、同じプルの遺伝子を持った姉妹をことごとく葬り去った。

 

プルトゥエルブとしてマーサとベントナに人格も運命も翻弄され弄ばれ続ける。

 

更に同じプルの遺伝子を持つ妹達の命を強制的奪わされ、その罪を背負わされる。

 

戦闘終了後、プルトゥエルブは疲弊しきった表情で途方に暮れていた。

 

罪が、悲しみが、忠誠心が、敵意が、後悔が、様々な感情・感覚が彼女に凄まじく去来する。

 

そして、全てを吐き出すように声にならない声で発狂し、悶え苦しむ。

 

ガンダムバンシィそのものが牢獄ともいえるように、巨大な負の感覚にマリーダを閉じ込めていた。

 

 

それから間も無くし、ヒイロ達はガルダを捕捉した。

 

ガランシェール全体に待ちわびていた瞬間の高揚感と緊迫する緊張感が同時に立ち込める。

 

その中でジンネマンは、マリーダ救出を目前にした言葉を出撃前に述べた。

 

「これまでの長きに渡り、我々はマリーダの消息が掴めなんだ。だが、今。マリーダの姉であるプルと、メテオ・ブレイクス・ヘルのガンダムのパイロットをメンバーに加え、事が動き出そうとしている!!プルがこの先にいるガルダにマリーダを感じた!!!確かに理屈的な裏付けはない。しかし!!ここはニュータイプであるプルの感覚を尊重し、マリーダの居場所を突き止めたと捉えている!!!連邦の連中だ……考えたくはないが、強化が加えられてしまっている事も前提にする……そのネガティブを減し曲げる諸君らの全身全霊の健闘を祈る!!!」

 

出撃間際、ヒイロにジンネマンが直接通信を入れる。

 

「ヒイロ。改めて思うが本当にすまない……お前達を遠回りさせてしまって。本当は直ぐにでも宇宙へ帰って同胞の敵を討ちたいだろ?」

「ジンネマンが謝る必要はない。元々交渉契約の利害の一致とも聞いている。遠回りでも何でもない。それに、状況の流れもあるだろうがこれは俺達の意思だ。特に俺のな……」

 

「ヒイロ……マリーダをどう想っている?」

 

「……俺は物心ついた時から戦いの環境にいた。マリーダは同じ境遇を感じさせてくれる存在だ……今は敢えて多くは語らない……語る時になったら語ってやる」

 

「ふっ……そうか……マリーダを頼む」

 

「任務了解」

 

ガランシェールからエアリーズカスタムがブースターを唸らせて出撃し、ガンダムジェミナス・バーニアン02もバーニアンユニットを爆破然とした加速をかけて出撃する。

 

「ガルダには恐らくかなりの戦力があるはずだ。まずはそれらを叩く。そこからマリーダの救出に出る。ヒイロは敵機を叩きつつ、内部突入の行動に移行していってくれ。状況を安定させたらプルとヒイロでマリーダを状況に応じて説得してくれ。だが……このOZのクーデターが行われている中で堂々と飛んでいるのも何か引っ掛かる」

 

「オデル。それは重要ではない。やつらの都合に過ぎん。敵に変わりはない。叩くだけだ」

 

「それもそうだな……中は頼んだぞ!!ヒイロ!!」

 

「了解した」

 

アディンは出撃前にヒイロ同様にジンネマンから言葉を貰っていた。

 

「かつて、もう一人のプルはこの地で命を散らした。彼女の姉か妹かは今ではわからんが……アディン!!!今いるプルを絶対に死なせるな!!!頼んだぞ!!!」

 

「任してくれ!!!そして、俺がキメる!!!」

 

「あっちをキメたらお前を殺し上げるがな」

 

「は!?!?何言ってんの、キャプテン!!?」

 

「ははは!!緊張感ほぐす愛敬だ!!ガンダム小僧!!」

 

ジンネマンの気遣いも感じながらアディンはプルにも通信を入れる。

 

「ヘヘ……びびるぜ……よっしゃ!!そんじゃあ、邪魔な連中は俺達で掃除するからよ、プル!!マリーダが強化されちまってたら説得頼むぜ。もしそうならマリーダの心開けるのは直接行けるプルとヒイロなんだからさ」

 

「うん。マリーダは今すごく苦しんでる……戦いさえできないくらい……悲しみが、苦しみがマリーダを……!!!アディン、必ずキメてきてね!!!」

 

プルはサムズアップでアディンを送り出す。

 

アディンも強気な笑みでサムズアップし、愛機を出撃させた。

 

「おうよ!!!アディン・バーネット、ガンダムジェミナス・バーニアン01、キメるぜぇ!!!」

 

バーニアンユニット全開でガランシェールからかっ翔んでいくガンダムジェミナス・バーニアン01。

 

先に出撃したヒイロとオデルに一気に合流し、ブースター調整しながらアディンも平行飛行に転じた。

 

2機のガンダムジェミナスとエアリーズカスタムが翔ぶ。

 

ガランシェールからコロニーの戦士達が飛び出し、マリーダの救出へ向かうその後ろ姿に、ジンネマンはこれ以上ない心強さを感じ、重ねて頼んだ。

 

「頼んだぞ……コロニーの戦士諸君……!!!」

 

ガルダ内に警報が鳴り響く。

 

突然の事態に、ベントナやマーサをはじめとする機内クルー達があわてふためく。

 

「何事!?!」

 

「一体、何がどうした!??」

 

「ミズ・マーサ、ドクター・ベントナ!!所属不明機が接近中とのことです!!しかも……ガンダムだとの報告が!!!」

 

「所属不明機のガンダム!?!Ξやペーネロペーは中東だ……一体!?!」

 

すると、テンパるベントナを口許で笑い、マーサが言う。

 

「所属不明機……我々が知るガンダム以外のガンダム……彼らしかないじゃない!!!」

 

「まさか……メテオ……・ブレイクス・ヘル!!!」

 

直ぐ様マーサは目の色を変えて、プルトゥエルブの出撃を指示した。

 

「プルトゥエルブを出しなさい!!!」

 

「それが……先の模擬戦を境に容態を急変させまして、現在緊急療養を!!!戦闘は無理です!!!」

 

「ガンダムが来たというのに!!!くっ……使えない小娘ね!!!」

 

プルトゥエルブとして無理矢理戦闘を継続させられたマリーダは、精神異常をきたした上に、それが引き金となったのかこれまでの実験の負担の反動が彼女を苦しませていた。

 

「あがっ……うぁあああぁっ!!いやっ、いやっ、殺したくない……かはっ……苦しい……かなしぃっ、いやいやいやぁああ!!!」

 

言葉で言い表し切れない程にマリーダは滅茶苦茶にされてしまっていた。

 

そこへ凄まじい形相をしたマーサが現れた。

 

腹黒さを滲ませたように、マリーダを見て嗤う。

 

ガルダのハッチが開き、OZ識別所属となったアンクシャやリゼルの部隊が一斉に出撃。

 

その攻撃対象は、2機のガンダムジェミナス・バーニアンとエアリーズカスタム。

 

「物量でモノを言わせようとする魂胆が丸見えだな」

 

「力押しか……ま、俺達のガンダムに意味ないけどな!!!ガチにキメるぜ!!!」

 

「……いくぞ!!!」

 

僅かに先行されたビーム射撃群へ向かうように3機が突撃した。

 

ガンダムジェミナス・バーニアン02は高速でビーム群を躱しながら、アクセラレートライフルを撃ち放ち、アンクシャを個々に破砕させていく。

 

高出力ビームが、アンクシャの機体群の装甲を簡単に吹き飛ばし、爆砕させる。

 

オデルはその名の通りのバーニアユニットを駆使して、加速、回避、旋回と機体の機動力という機動力を見せつけてみせる。

 

「ガルダ級は流石だな。MSの数は伊達に積んでいない!!」

 

空飛ぶ円盤よろしく、次々と旋回しながらアンクシャ部隊が回り込む。

 

ガンダムジェミナス・バーニアン02は、2、3機を通常出力で叩き潰すように撃ち砕くと、銃口にチャージを開始し、そのまま撃ち放つ。

 

放たれたビーム渦流が、アンクシャ3機を吹き飛ばし破砕。

 

直撃を免れ、掠めた機体群はプラズマ奔流の余波が爆砕へ導かれた。

 

バーニア出力の強弱をかけながらガンダムジェミナス・バーニアン02は縦横無尽に駆け抜け、アクセラレートライフルの通常射撃や近距離射撃、チャージショット、連発射撃等を組合せ、アンクシャの機体達を、駆逐させる。

 

「いくぜぇえええっ!!!」

 

そして、気合いと気迫を全開にしたアディンのガンダムジェミナス・バーニアン01が、バーニアを駆使させたアクセラレートライフルの乱れ撃ちを叩き込む。

 

アディンの狙いの大半はアンクシャに直撃し、外しても掠めた際のエネルギー奔流でアンクシャを爆砕させてみせる。

 

リゼル部隊も飛び出し、ビーム射撃を慣行する。

 

「キメて、キメて、キメてぇええっ―――キメまくってやらぁああああ!!!」

 

乱れ撃ちからのチャージショット。

 

次々とリゼルがビームに撃たれ爆砕したあげく、4機がまとめてビーム渦流に砕き飛ばされ爆発する。

 

「このまま一気に突っ込む……!!!」

 

更にアンクシャとリゼル、更にはアンクシャに乗ったジェガン部隊までがガルダから出撃した。

 

ビーム射撃主体の戦闘が展開され始める中で、アンクシャが変形と合わせてビームサーベルでガンダムジェミナス・バーニアン01に斬りかかる。

 

「あぶねーな!!!っのやろっ!!!」

 

斬撃を躱すと、アディンは至近距離からアクセラレートライフルを撃ち放ってそのアンクシャを破壊し、ビームソードに装備を切り替えた。

 

「そっちがその気なら……いくぜぇっ!!!」

 

一気に加速したガンダムジェミナス・バーニアン01は、縦横無尽に飛び交い、斬撃という斬撃を浴びせる。

 

容易く切断されていくアンクシャとリゼルの機体達は瞬く間に連続爆発を空中に咲かせる。

 

そして、ビーム射撃に徹するアンクシャに搭乗するジェガンを手当たり次第の流れに任せ、斬り飛ばし、叩き斬り、斬り砕く。

 

「おおおおぉ!!!」

 

更に向かい来る連邦サイドのMS部隊に一瞬のPXを発動させ、超高速の加速をかけるアディン。

 

一瞬で走る一閃の斬撃が一気にはしり、リゼル4機、アンクシャ4機、ジェガン4機が爆発四散する。

 

更に牽制の流れに乗り、再びアクセラレートライフルをガルダに見舞う。

そして、バーニアンユニットのバーストブーストで一気に離脱する。

 

ヒイロのエアリーズカスタムもまた、ビーム射撃を自転回避やバーニアの加減測で躱し、機体を更に加速させる。

 

「狙いが甘すぎる……!!!」

 

エアリーズカスタムのコックピット内のヒイロは、余裕の表情でエアリーズカスタムを巧みに操る。

 

機体を加速させながら旋回の軌道を描いてガルダを周回し、アンクシャ部隊の背後を獲る。

 

ヒイロは無言で敵機群をロック・オン。

 

そのトリガーを操作し、ミサイルランチャーを一気に撃ち放つ。

 

ミサイル群は次々とアンクシャに追い付き、木っ端微塵に爆砕させる。

 

コックピット内に弾数ゼロのアラートが鳴り響くと、ヒイロはミサイルランチャーユニットをパージさせ、プロトバスターライフルを次の射撃手段に選定した。

 

「プロトバスターライフル、ロック・オン……低出力で十分だ。破壊する」

 

モニターに捉えている残りのアンクシャ部隊をロック・オンし、低出力で撃つ。

 

プロトバスターライフルの銃口から撃ち放たれた高出力ビームが、突風の如く1機のアンクシャを吹き飛ばし、更なるプラズマ奔流によるエネルギーでビーム周囲のアンクシャを次々に誘爆した。

 

低出力でもビームマグナムと同等の威力を誇るのだ。

 

そして、ヒイロはエアリーズカスタムをメインのビームガトリングのビーム射撃をガルダに見舞い続け、外壁と対空機銃を破壊した。

 

内部の格納庫内部にその爆発が巻き起こり、ベントナやマーサ達に爆煙の爆風圧が襲う。

 

「うぁあああぁああああああ!!!」

 

「突撃する……!!!」

 

ヒイロはエアリーズカスタムを撃ち破った外壁穴へ突入させた。

 

モニターの映像システムを総動員させて、ガルダ機内をサーチする。

 

「マリーダ!!どこだ!?!マリーダ!!!どこにいる!!!」

 

感情が前のめりになる感覚の中、ヒイロは奥行き側にセンサー視点を合わせる。

 

その時だった。

 

 

 

ガダァギャアアアア!!!

 

 

 

「がっっ―――ぐぁあああっ!??」

 

エアリーズカスタムのボディーを掴み捕らえたガンダムバンシィが、一気にガルダ格納庫の壁にエアリーズカスタムを叩きつける。

 

一瞬にして機体各部が損傷し、ヒイロ自身も自爆の傷のダメージが襲った。

 

「がっ……くっ!!!が、ガンダムだと!??ぐっ……!!!」

 

更にエアリーズカスタムの機体を持ち上げ、幾度も叩きつける。

 

ヒイロは凄まじい衝撃の後、機体のコックピットハッチを開け、ハイパーマグネットワイヤーガンを放った。

 

スイッチの電源を入れると超強力の磁力を発生させる工作用アイテムの一つだ。

 

マグネットワイヤーガンはガッチリとガンダムバンシィの装甲を捕らえた。

 

ヒイロはコックピットから飛び出し、飛び降りながらワイヤーガンを巻く。

 

迫る装甲を蹴り飛ばし、ワイヤーを巻きながらガンダムバンシィのコックピットハッチに取り付いた。

 

『虫けらめ……去れ!!!私の近くに来るなぁ!!!!』

 

響く外部スピーカで、直ぐにヒイロはマリーダと解った。

 

「この黒いガンダム……マリーダなのか!?!マリーダなら答えてくれ!!!」

 

『マリーダじゃない!!!!プルトゥエルブだぁああああ!!!私はっ、私はぁあああああ!!!』

 

錯乱したかのように、ガンダムバンシィは滅茶苦茶にアームドファングでエアリーズカスタムを殴り始めた。

 

エアリーズカスタムの機体は一瞬にしてひしゃげ、凄まじい損壊に至る。

 

更にガルダ内部にアームドファングを殴り付け、ビームサーベルを発動させて格納庫の壁を焼灼。

 

ヒイロは暴れ狂うガンダムバンシィにしがみつきながら、マリーダが洗脳と強化をされてしまっていることを悟る。

 

「マリーダ!!やはり強化と洗脳を……!!!くっ……!!!」

 

「どうしたというの!?!」

 

「だから言ったのです、ミズ・マーサ!!!今のプルトゥエルブはまともに機能できんのです!!!」

 

「本当に使えない小娘ね!!!!」

 

「今は身の安全が最優先です!!」

 

プルトゥエルブの暴走によるガルダ内部の混乱と破壊に、マーサとベントナ達は最早プルトゥエルブは手を付けられないとし、脱出を図る行動に移った。

 

暴れ馬さながらに暴れるガンダムバンシィに、ヒイロはテコでも動かない勢いでしがみつく。

 

最早自爆の痛みなど関係はなかった。

 

目の前にいるマリーダの説得と救出。

 

ヒイロはプルトゥエルブと名乗るマリーダの意思に添い、自らを意識させようと試みる。

 

「ならばプルトゥエルブ!!!俺の声を聞け!!!俺はヒイロ・ユイだ!!!俺とお前は既に出会っている!!!俺の声と名は記憶にあるはずだ……!!!」

 

「ヒイロ……ユイ……!!!」

 

「俺だけではない。フラスト、ギルボア、トムラ……そして、ジンネマンとプル!!!本当のお前の愛機クシャトリヤも俺達は奪還した!!!お前が帰るべき所は、ガランシェールだ!!!」

 

ヒイロはマリーダに彼女の最もな関わりがある名を言い聞かせた。

 

「っ……ジンネマン……プル!?!私はプルトゥエルブ!!!私は……私は……!!!」

 

「思い出してくれ……マリーダ!!!ガランシェールクルー達を!!!共に戦った俺達Gマイスターを!!!姉であるプルを!!!マリーダ・クルス!!!」

 

「くっうっ……マリーダ・クルス……!!!」

 

マリーダの中でプルトゥエルブとマリーダ・クルスの人格がせめぎ合う。

 

同時にこれまでのヒイロやプル、ジンネマンとの記憶も、プルトゥエルブの人格に抗うようにマリーダに断片的なイメージをおくる。

 

「マスターに姉さん……ヒイロ……うっくっ!!!」

 

「マリーダ……ハッチを開けてくれ」

 

僅かに先行した本来の記憶が、ガンダムバンシィのコックピットハッチを開けさせた。

 

ヒイロは直ぐ様マリーダの前に身を乗りだし、面と向かって叫んだ。

 

「マリーダ!!!もう一度向き合ってくれ!!!俺がわかるか!?!」

 

「誰だ?貴様は……っっはっ、ヒイロ……うくっ、近づくな……!!!ヒイロっ……!!!あっ……ぐっ、うっ……かはっ……ヒイロっ、誰だ!?!」

 

マリーダは去来する記憶に悶えあがく。

 

身を裂かれる激痛と苦痛を覚え、疲弊させていく。

 

目の前に苦しみもがくマリーダがいる。

 

ヒイロは耐えかね、去来する全ての感情をマリーダに放った。

 

「くっ……マリーダァァァっ!!!」

 

ヒイロはマリーダを思いっきり抱き締めた。

 

「マリーダ!!帰って来い!!!マリーダ……俺はっ!!!」

 

ヒイロはマリーダの被る専用メットを外し、一瞬視線を合わせると、感情のままに行動した。

 

ヒイロとマリーダの唇が重なった。

 

それはヒイロの恋愛感情と任務完遂の使命感とが拍車をかけた行動だった。

 

止まる二人の時間。

 

ヒイロと交わすキスが引き金となるかのようにマリーダの記憶が一気に開放されていく。

 

(ヒイロ……!!!)

 

(マリーダ……!!!)

 

手を重ね合わせ、ヒイロからの熱い想いを感じながら、マリーダは駆け抜ける風のような感覚で記憶を取り戻していく。

 

ベントナから受けた汚れの接吻などではない、純粋で力強い熱い想いが籠ったキス。

 

だが、マリーダには妹達を手にかけてしまった凄まじい負の重荷が背負わされている。

 

それを自覚したマリーダはキスをやめ、崩れるようにシートに背を伏せた。

 

「マリーダ!?!」

 

「私は……私は妹達を殺してしまった!!!殺してしまったんだ!!!ここ、ダブリンで!!!ヒイロ、私を殺してくれ!!!」

 

「何だと!?!」

 

突然、陰と陽が入れ替わると、マリーダはプルトゥエルブの人格でしてしまった罪を涙を流して叫んだ。

 

「模擬戦などと言われ……妹達の乗るキュベレイと戦わされた……多くいた妹達を!!!妹達を殺してしまった……!!!私は許されていいはずがない!!!」

 

「っ……できるかっ!!!任務でも絶対に俺はマリーダを殺さない!!!」

 

「ダメだ!!!殺してくれ!!!!私はニュータイプを敵としてっ……!!!」

 

『プルトゥエルブ!!!我々は脱出する!!!お前も来い!!!お前のマスターも、ミズ・マーサも言っている!!!プルトゥエルブ!!!』

 

突然飛び込むベントナの通信が、再びマリーダの人格を後退させてしまった。

 

「あぐぅっ、私はっ、私はプルトゥエルブ!!!ニュータイプっ殺す!!!ニュータイプ、ガンダムっ敵!!!」

 

「また記憶が!?!マリーダ、戻れ!!!」

 

『プルトゥエルブ!!プルトゥエルブ!!おい!!!実験人形がシカトするな!!!プルトゥエルブ!!!』

 

「ちっ!!!」

 

連呼するベントナのその言葉で、怒りにかられたヒイロは、ハンドガンで計器類やモニターに銃弾を叩きこんだ。

 

「私はニュータイプを駆逐するプルトゥエルブだ……違う……マリ……否……プルトゥエルブ……だっ」

 

「マリーダっ!!!」

 

「うるさい!!!うるさい、うるさい、うるさい!!!!私なんかっ、消してやる!!!!」

 

奇声めきながら叫び、マリーダは機体の側面にビームサーベルを押し当てた。

 

 

 

「自分をいじめちゃダメ!!!マリーダ!!!」

 

 

 

その瞬間に突然プルの声が飛び込む。

 

ヒイロが振り返ると、そこにはプルのキュベレイMk-Ⅱがいた。

 

「プル……!!!」

 

「自分を粗末にしないで、マリーダ!!それにここは、ダブリンは、あたし達にとって特別なトコ!!!今こうして巡りあえて、再会できてるのは偶然じゃないんだよ!!!マリーダ!!!」

 

キュベレイMk-Ⅱが、ガンダムバンシィに手をかざして胸部に押し当てた。

 

「帰ろう、マリーダ!!!」

 

 

 

 

『そう……帰るべきトコに帰って。あなた達はそれができる……』

 

 

 

プルとマリーダはその瞬間、もう一人のプルの声を聞いた。

 

そしてエメラルドのような幻想的な光りが拡がった。

 

 

 

 

拡がるエメラルドの光の空間で、マリーダとプルはこのダブリンでかつて起きたプルとプルツーの闘いをタイムリープするかのように体感する。

 

「これは……なんだ!?!」

 

「わかる……もう一人のあたしの記憶。ここで……当時プルとプルツーは……」

 

サイコガンダムMk-ⅡとキュベレイMk-Ⅱの死闘、更にはZZガンダムを交えての戦闘。

 

その記憶の中でZZガンダムを庇い、リフレクタービットの集中放火を受けて爆破するキュベレイMk-Ⅱの姿が過る。

 

『確かにこの時、あたし自身プルツーに殺意を持ってた。でも、あたしは死んで初めてプルツーのコト知った……』

 

『そして幾度かプルツーの心に触れたりした……プルツーの本当の居場所に戻すため』

 

クインマンサを駆り、第一次ネオジオン抗争最終局面へ身を投じていくプルツーの記憶。

 

プルとマリーダに、その時のプルツーの苦悩が伝わる。

 

「っ……!!!」

 

「ぅっ―――姉さんも、またマシンに苦しまされ……!!!」

 

度重なる戦闘とニュータイプ能力の負担が重なり、強化人間の身体を蝕む。

 

その感覚がマリーダとプルに伝わる。

 

更にはゲーマルクと戦闘した当時のプルの姉妹達の記憶と感覚も過る。

 

まだ11、2歳の少女達が過酷な戦場に駆り出され、理不尽に戦場に散っていく。

 

『こんな悲しいコトは……もう繰り返さないでいいんだよ……もう一度言わせてね。帰るべき場所へ帰ろう、マリーダ』

 

思念体のプルがマリーダに手をさしのべる。

 

せめぎあう記憶を抱えながら、マリーダはその手を掴んだ。

 

「っ―――!!!私は―――っ!!!?」

 

この時、マリーダの中でせめぎ混ざっていたマリーダの記憶がプルトゥエルブの洗脳を完全に一掃した。

 

プルトゥエルブのどす黒い洗脳を一掃させるかのように、本来のマリーダの清んだ記憶が洗い流していく。

 

だが、同時に新たな多くの妹達を手にかけてしまった罪悪感も押し寄せる。

 

つい先程の感覚だ。

 

「あ、あぁっ―――!!!私は!!!私はぁっ―――!!!」

 

頭を抱えながら悲鳴を交えたように叫び、絶句。

 

精神的な苦しさに何度も頭を振るう。

 

だが、そんなマリーダを思念体のプルが優しく抱いた。

 

『いいんだよ、マリーダ。貴方は悪くない。何も悪くない……あなたは洗脳され、意思を支配されてしまっていたんだから……大丈夫……もう、マリーダは本来のマリーダに戻れたから。それにみんなも解ってるから……』

 

「えっ……!?!みんな……」

 

マリーダはゆっくりと涙を伝わせる顔を上げて、光の周りを見る。

 

すると、口許に笑みを浮かべた姉妹達がいた。

 

各々がマリーダにうなずく。

 

感極まったマリーダは、更に涙を止めどなく流しながら顔を手で覆い声にならない声で泣いた。

 

そして今生きるプルも寄り添い、優しくマリーダに言う。

 

「マリーダ……帰ろ?みんなが、パパが、ヒイロが待ってるよ……」

 

『生きて……あたし達の分まで……まだ旅はこれからだよ……そしていつか、木星に旅立ったプルツーに再会してあげて……あの子、今でも頑張ってるから』

 

「……うん。必ず」

 

更なる光が目映く彼女達を包括した。

 

 

 

「マリーダ!!」

 

 

 

再び現実の世界観がマリーダの意識に訪れる。

 

ゆっくりとまぶたを明けるとそこにはガンダムバンシィのコックピット内でマリーダを呼ぶヒイロがいた。

 

今の不思議な瞬間はニュータイプだけが感応できたようで、ヒイロは全くその感応を味わった様子はなかった。

 

「マリーダ!!マリーダ!!!帰って来い!!!」

 

疲弊しきったマリーダを前に、ヒイロはいつになく感情的になっていた。

 

マリーダはそんなヒイロの頬に手をかざした。

 

「ヒイロ……心配を……かけてしまったな……」

 

「マリーダ!!!そうかっ……ようやく戻ったか!!!マリーダ!!!」

 

ヒイロは思わず脱力し、その勢いでマリーダの胸元に顔を埋めそうになってしまう。

 

マリーダは自らヒイロの両肩を受け止め、更に抱き締めた。

 

「ヒイロ……ありがとう……」

 

「マリーダ……」

 

再び顔を向け合うと、ヒイロとマリーダは再びキスを交わした。

 

その後、ヒイロとマリーダはキュベレイMk-Ⅱの手のひらに乗りながらガルダを脱出する。

 

プルはキュベレイMk-Ⅱの手のひらの二人を見ながら微笑む表情をみせた。

 

その後方でガルダは2機のガンダムジェミナス・バーニアンのアクセラレートライフルの多重射撃を食らい次々に機体各部を爆発させる。

 

そして、諸事情を把握したアディンとオデルは、怒りの感情を乗せたチャージショットを撃ち込み、そのビーム渦流は、忌まわしきガンダムバンシィを乗せたまま墜落していくガルダを爆砕していった。

 

その間にベントナとマーサはシャトルで大気圏を離脱し、L2コロニー群を目指す。

 

ベントナの傍らにはマリーダの遺伝子サンプルが置いてあり、今後も非人道たる行為を続ける意思を示していた。

 

長きに渡るマリーダ捜索任務を完遂させたヒイロ達は次々と加速し、ガランシェールへと帰還していった。

 

そして空にはマリーダの帰還を祝福擦るかのような雪が降り始めた。

 

アディンとオデルも不思議な感覚を味わう。

 

「おー!!おー!!雪だぜ!!雪!!!実際初めて見るな!!!メリクリ~!!!」

 

「はしゃぐな、みっともない!!だが、マリーダを救出すると同時に降るとは……不思議なものだな」

 

そのオデルの言葉を裏付けるような感覚をプルは感じていた。

 

「わぁ~!!雪だぁ!!雪、ゆき……あ、そっか……もう一人のあたしからなんだね……ありがとう……」

 

はしゃぐのを止め、過ったニュータイプの感覚に浸る。

 

プルの感じがどこか大人びた感じを見せていた。

 

「これが雪……初めて見る」

 

マリーダが雪に手をかざしてみせ、初めての雪を体感する。

 

「あぁ。俺も地球の雪は初めて見る。今日はクリスマスだそうだ。ホワイトクリスマスだな」

 

ヒイロがそう言うと、マリーダは瞳を閉じてジンネマンとのクリスマスの思い出を巡らせる。

 

完全にマリーダの記憶を取り戻した事も改めて確認すると、再び瞳を開け、目の前にいるヒイロを見て言った。

 

「ヒイロ……賭け代えの無いクリスマスプレゼント、受け取った。メリークリスマス、ヒイロ」

 

「あぁ……メリークリスマス……」

 

 

 

 

To Be Next Episode

 




オペレーション・プレアデスは電撃的な成功を見せるが、連邦軍はまだ抵抗を止めていなかった。

その抗いに絶大な力が迫る。

ヒイロとマリーダ達は双方の行くべき道を行き、ヒイロ達はL4へ、マリーダ達はパラオへと帰還した。

だが、マリーダは度重なる実験による後遺症が残っていた。

そして遂に歴史の流れは連邦をねじ伏せ、OZの地球圏制圧の図式を描かせる。

それはメテオ・ブレイクス・ヘルのガンダムを、撲滅に向かわせる狼煙を上げた。

安息を許さない力がヒイロ達に向けて迫る。

次回、新機動闘争記 ガンダムW LIBERTY

エピソード23「バルジの巨光」


任務、了解っ!!!

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